説明

含水有機汚泥等の減容・減量装置及びその方法

【課題】より少ない燃料で含水率の高い汚泥等の廃棄物を処理する装置及び方法であり、乾燥により発生する悪臭を乾留ガスとともに燃焼し、悪臭を分解する他、汚泥等の産業廃棄物を大幅に減容・減量すること、並びにガス化溶融炉を含む溶融炉一般で含水率の高い汚泥を前処理し、安定的かつ経済的な溶融炉の運転を可能とする溶融原料を供給することを目的とする。
また、乾燥乾留品は炭化物として鉄鋼業における還元剤等に使用が可能であり、廃棄物を処理するばかりでなく、リサイクル製品製造可能な技術の提供を目的とする。
【解決手段】内筒と外筒からなる乾燥機の後工程に、内筒と外筒と中心筒からなる乾留炉を備え、乾留炉の内筒から発生した乾留ガスを燃焼させて熱風を発生させる熱風発生炉を備え、この熱風を乾燥機の内筒と外筒の間に導入する手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機汚泥や剪定枝、畜産廃棄物・食品廃棄物等の高水分含有産業廃棄物を乾燥し乾留を行い、発生する乾留ガスをエネルギーとして利用し、減量化並びに減容化を行い廃棄物の処理を行うとともに、有害なダイオキシン類を含むものに関しては、薬品により無害化し、製品として炭化物を取り出し、有用な資源として再利用する処理方法、並びに水分の多い有機汚泥を溶融する際に水蒸気爆発等の防止のための前処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に関する社会の関心が高まる中で、産業廃棄物として約70%を占める汚泥、並びに高水分含有廃棄物などを無害化処理し、且つ、より少ないエネルギーで資源化してリサイクルする技術開発が求められている。また、廃棄物等の埋立場の建設が付近住民の反対により出来ない状況が続き、埋立場の不足が問題化している。
【0003】
特に汚泥に関しては、含まれる水分量が90%以上であるものが多く、廃棄物の重量のほとんどを占めている。
そのため、水分を分離し、廃棄物の重量を減少させることは重要である。従来は脱水機などを用いる場合が多いが、有機汚泥の場合には脱水直後の含水率はそれでも80%程度である。
完全に水分を分離するためには加熱蒸発が最も有効であるが、そのためには多量の化石燃料或いは電力が必要であり、多くのエネルギーを消費する。
また、近年一般的に用いられている溶融炉は、処理物に多量の水分が含まれていると水蒸気爆発や溶融不良の原因になる場合が多い。
従って、含水率の高い汚泥を溶融処理する場合には、脱水等の前処理が必要であり、含まれる有機物を有効に利用する手法が確立されていない。
乾留ガスを用いて、乾燥する方法は特開平8−253771号公報、特開平9−174031号公報、特開平9−210333号公報、特開平11−138133号公報で開示されているが、いずれも多量の含水率を持った有機汚泥等を乾燥乾留し、炭化物として回収する方法は提示されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平8−253771号公報
【特許文献2】特開平9−174031号公報
【特許文献3】特開平9−210333号公報
【特許文献4】特開平11−138133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような技術的課題に鑑み、より少ない燃料で含水率の高い汚泥等の廃棄物を処理する装置及び方法であり、乾燥により発生する悪臭を乾留ガスとともに燃焼し、悪臭を分解する他、汚泥等の産業廃棄物を大幅に減容・減量することを目的とし、それはガス化溶融炉を含む溶融炉一般の原料の前処理にも利用できる。
また、乾燥乾留品は炭化物として鉄鋼業における還元剤等に使用が可能であり、廃棄物を処理するばかりでなく、リサイクル製品製造可能な技術の提供を目的とする。
さらに有害物を含んだ汚泥の場合、例えばダイオキシン類の分解薬剤と混合することにより、有害物は分解できる。
【0006】
特に、本発明は、多量に水を含んだ汚泥等を、最小のエネルギーの利用で減量し、同処理に係る経費を削減でき、且つ、不足する最終処分場の延命に貢献する技術である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明技術的要旨は、内筒と外筒からなる乾燥機の後工程に、内筒と外筒と、好ましくは中心筒からなる乾留炉を備え、乾留炉の内筒から発生した乾留ガスを燃焼させて熱風を発生させる熱風発生炉を備え、この熱風を乾燥機の内筒と外筒の間に導入する手段を備えたことを特徴とする。
より具体的には、回転円筒からなる内筒を備えた乾燥機並びに、回転円筒からなる内筒を備えた乾留炉を設備し、且つ乾留炉で発生した乾留ガスを、熱風発生炉で燃焼させ、熱量調整の目的で設置されたバーナー装置で混焼することにより発生した燃焼ガスにより、内筒に投入した汚泥を外熱方式で乾燥する点に特徴がある。
【0008】
この場合に、有機汚泥等は連続的に系内に導入でき、回転円筒内に攪拌用の羽根を供えると、水分の蒸発効率の促進を図ることもできる。
【0009】
ここで、さらに熱風発生炉で発生させた熱風を、乾燥機の内筒と外筒の間を通過させた後に、さらに乾留炉の内筒と外筒の間に導入する手段を備えると、乾留炉の熱源として乾燥機の廃熱を利用できる。
また、廃熱をより有効に使用するために、中心筒にも熱風を通過させることも出来る。
その廃熱を利用した外熱式乾留炉へ乾燥した汚泥を導入するため、熱源と分離されており、灰分が少ない品質の良い炭化物を製造できる。
【0010】
また、乾留ガスは有機汚泥等バイオ由来の原料が多いことから、その燃焼により発生する地球温暖化ガスとして問題視されている二酸化炭素はカーボンニュートラルの考え方により、地球上の二酸化炭素濃度の上昇の原因にはならない。
さらには、乾燥機の内筒から発生した乾燥後の排ガスを熱風発生炉に導入する手段を備えて、熱風発生炉にて再加熱利用するとエネルギーの有効利用がはかれる。
また、減容・減量装置を用いて、高含水有機汚泥を乾燥機で乾燥後に、乾留炉で乾留して炭化物を得ることができる。
有害物を含む原料の場合には、例えばダイオキシン類を含むものは、ダイオキシン類分解抑制薬剤を原料に混合することにより無害化が可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内筒と外筒からなる乾燥機の後工程に、内筒と外筒からなる乾留炉を備え、乾留炉の内筒から発生した乾留ガスを燃焼させて熱風を発生させる熱風発生炉を備え、この熱風を乾燥機の内筒と外筒の間に導入したので、ひとつの系内で、含水率の高い有機汚泥を非常に少ない燃料で乾燥し、乾留できる。
また、乾燥時に発生する悪臭は熱風発生炉にて燃焼分解され、外部に放出されることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態による有機汚泥、剪定枝、畜産廃棄物、食品廃棄物、或いはその混合物の乾燥乾留処理システム及び処理方法(含水有機汚泥の減容・減量)を図1を参照して説明する。
【0013】
処理対象物である有機汚泥や剪定枝、畜産廃棄物、食品廃棄物等産業廃棄物は定量フィーダー3に投入する。投入方法は重機による手動投入方法でも、一旦、ホッパー等に有機汚泥や剪定枝、畜産廃棄物、食品廃棄物等産業廃棄物を仮保管し、一定量ずつ自動的にベルトコンベア或いはスクリューフィーダー等で定量フィーダー3に投入しても構わない。
【0014】
定量フィーダー3から乾燥機1内に一定量づつ原料は投入される。
有害物を含む有機汚泥等産業廃棄物を処理する場合、及びダイオキシン類の分解が必要な場合には、定量フィーダー3内で分解用薬剤と定量ずつ混合する。
【0015】
乾燥機1は内筒(回転円筒)1aと外筒1bとで構成し、内筒と外筒の間に熱風を通過させることができる。
内筒は、回転円筒になっていて1°〜2°程度の傾斜角がつけられており、駆動モーターを動力とする回転によるすべりにより、有機汚泥や剪定枝、畜産廃棄物、食品廃棄物等産業廃棄物は回転円筒内を一定時間移動し、排出される。
回転円筒には汚染物をかきあげるリフター、あるいはパドル羽根が装着されていても良い。
【0016】
乾燥機1の内筒1aの外壁を覆うように外筒1bによる熱風の通過壁が設けられており、その熱が乾燥機1の回転円筒に伝わり、処理対象物である有機汚泥等の産業廃棄物を加熱する。
【0017】
加熱源である熱風の温度は800℃以上であり、熱風発生炉6から供給される。熱風は乾燥機1の回転円筒の内側とは分離されており、乾燥時に発生するガスと混合することは無い。
【0018】
乾燥機1の内筒と外筒との間を通過し、排出された熱風はおおむね500℃程度の温度を保ち、後述する乾留炉2の内筒(回転円筒)2aと外筒2bとの間に導入する。
また、乾留炉の内筒の内側に中心筒2cを設けた場合には、中心筒にも上記熱風を通す。
【0019】
乾燥機1の回転円筒内を通過した乾燥処理物は乾燥機1から排出され、スクリューコンベア9で定量ずつ乾留炉2の回転円筒へ導入する。
乾留炉2の回転円筒には1°〜2°内の傾斜角がつけられており、回転によるすべりにより乾留炉2内回転円筒内を一定時間移動し、排出される。
回転円筒内には汚染物をかきあげるリフター、あるいはパドル羽根が装着されていても良い。
【0020】
乾留炉2には、内筒2aの外壁を覆うように外筒2bを設け、かつ熱風の通過壁とし、また、内筒の内部に同じく熱風が通過する中心筒2cを配置した。
これにより、その熱が、処理対象物である乾燥した有機汚泥等産業廃棄物を加熱・乾留する。
【0021】
乾留が終了し排出された炭化物はスクリューコンベア10で製品保管庫11へ搬送される。スクリューコンベア10は間接水冷されており、排出された製品を冷却する。なお、製品保管庫に至るまでに十分な冷却時間がある場合には、間接水冷は必要ない。
【0022】
乾留炉2の内筒内を乾燥した原料が通過する際に発生する乾留ガスは、サイクロン20で微粉炭を除去し、熱風発生炉6に導入される。熱風発生炉6には熱量調整用のバーナー15が装着されており、重油サービスタンク7から供給される重油を油ポンプ8でバーナー15に供給している。
なお、サイクロン20は原料の性状により装備しなくとも良い。
温度調整は温度指示調節計16にて定量フィーダーへ投入する原料の投入量を制御し、乾燥機1内回転円筒内温度を管理する。
温度指示調節計19によりバーナー15を制御する。
【0023】
発生した熱風は乾燥機1の内筒1aと外筒1bとの間の熱風通過壁から乾留炉2の内筒2aと外筒2bの間の熱風通過壁及び中心筒2cをとおり、熱交換器12へ導入される。熱交換が行われた排ガスは乾留炉1の回転円筒内圧力を一定に保つために設置された圧力指示調節計17で制御され、排煙ファン13で吸引され、排突14から外気へ放出する。或いは、既設の排ガスダクトへ導入する。
【0024】
炭化製品を製造する場合にも、乾留ガスを完全燃焼させるための特別な排ガス処理装置は不要である。
有害物質を含んだ有機汚泥、剪定枝、畜産廃棄物・食品廃棄物等を原料とする場合には、排ガス処理装置すなわち急速減温塔やバグフィルターを通過させる方が良い。
【0025】
熱交換器12で熱交換された高温の空気は乾燥機1の回転円筒内1aに導入される。乾燥機1の熱風通過壁からの熱に加え、導入する高温空気により効率的に乾燥を行う。蒸発した水分とともに乾燥機1の回転円筒から排出され、サイクロン4で飛散した原料と分離する。
【0026】
分離されたガスは排気ファン5で熱風発生炉に燃焼用空気として導入する。排気ファン5は温度指示調節計18により回転円筒の外筒温度を調節する。排気ファン5が送風するガスには多量の水分が含有しており、熱風発生炉から発生する熱風の酸素濃度は低く保持される。
【0027】
なお、図1にて、TIC:温度コントロール、PIC:圧力コントロール、INV:インバーター制御を意味する。
【実施例】
【0028】
本発明に係る装置を試作し、水分量80kg/hからなる含水有機汚泥180kg/hを処理した結果、水分量0kg/hの製品(炭化物)8kg/hが得られた。
従って、原料は概ね4.4重量%まで減量したことになる。
【0029】
本発明の規模は概ね処理用として100kg/h〜10t/h程度に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】汚泥処理プラントフロー図の例を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 (外熱式)乾燥機
1a 乾燥機の内筒(回転円筒)
1b 乾燥機の外筒
2 (外熱式)乾留炉
2a 乾留炉の内筒(回転円筒)
2b 乾留炉の外筒
2c 乾留炉の中心筒
3 定量フィーダー
4 サイクロン
5 排気ファン
6 熱風発生炉
7 重油タンク
8 重油ポンプ
9 スクリューコンベア
10 水冷式スクリューコンベア
11 製品タンク
12 熱交換器
13 排煙ファン
14 煙突
15 バーナー
16 温度指示調節計
17 圧力指示調節計
18 圧力指示調節計
19 温度指示調節計
20 サイクロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と外筒からなる乾燥機の後工程に、内筒と外筒からなる乾留炉を備え、乾留炉の内筒から発生した乾留ガスを燃焼させて熱風を発生させる熱風発生炉を備え、この熱風を乾燥機の内筒と外筒の間に導入する手段を備えたことを特徴とする含水有機汚泥の減容・減量装置。
【請求項2】
熱風発生炉で発生させた熱風を、乾燥機の内筒と外筒の間を通過させた後に、さらに乾留炉の内筒と外筒の間に導入する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の含水有機汚泥の減容・減量装置。
【請求項3】
乾燥機の内筒から発生した乾燥後の排ガスを熱風発生炉に導入する手段を備えて、熱風発生炉にて再加熱利用することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の含水有機汚泥の減容・減量装置。
【請求項4】
前記乾留炉は、内筒の内側に中心筒を備えたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の含水有機汚泥の減容・減量装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の減容・減量装置を用いて、高含水有機汚泥を乾燥機で乾燥後に、乾留炉で乾留して炭化物を得ることを特徴とする含水有機汚泥の減容・減量方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−205027(P2006−205027A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19181(P2005−19181)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(392019857)株式会社アクトリー (27)
【Fターム(参考)】