説明

周波数逓倍回路

【課題】製造コストおよび消費電力を低下させることができる周波数逓倍回路を実現する。
【解決手段】本発明の周波数逓倍回路1は、電圧制御発振器を備え、上記電圧制御発振器のトランジスタ差動対Tr1・Tr2のエミッタから上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を取り出している。すなわち、電圧制御発振器と回路を共用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波送受信機等に用いられる電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を生成する周波数逓倍回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波送受信機における局部発振器として、電圧制御発振器をPLLで制御する方式が主に使用されている。ところで、上記局部発振器が、高い周波数で動作する必要がある場合、高い周波数では上記電圧制御発振器や上記PLLは良好な特性を得ることが困難である。
【0003】
そこで、上記電圧制御発振器を所望の発振周波数の半分の周波数で発振させ、周波数逓倍回路で上記周波数を逓倍して所望の周波数信号とする方法がとられている。これにより、上記電圧制御発振器および上記PLLの動作周波数を下げることが可能となり、良好な特性を得ることができる。なお、上記周波数逓倍回路としては、特許文献1等に開示されているギルバート型の乗算回路を利用した周波数逓倍回路や特許文献2等に開示されている全波整流回路を利用した周波数逓倍回路などが挙げられる。
【0004】
図7は、高周波送受信機のミキサ付近の回路構成を示す図であり、PLL51、電圧制御発振器52、周波数逓倍回路53、およびミキサ54が示されている。図示のように、周波数逓倍回路53を接続する位置としては、電圧制御発振器52の後段に設けることとなる。
【特許文献1】特開平7―235837号公報(1995年9月5日公開)
【特許文献2】特開2003−283251号公報(2003年10月3日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、周波数逓倍回路53は、電圧制御発振器52の後段に接続されるため、例えば、上記局部発振器の回路規模が周波数逓倍回路53を設けた分大きくなる。その結果、上記局部発振器、該局部発振器を備えた回路の製造コストの増大、さらに、消費電力の増大という問題を生じる。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電圧制御発振を行う回路と周波数逓倍を行う回路とを含む回路の製造コストおよび消費電力を低下させることができる周波数逓倍回路を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る周波数逓倍回路は、上記課題を解決するために、バイポーラトランジスタで構成された差動型ゲインセルを有する電圧制御発振器を備え、上記差動型ゲインセルを構成するバイポーラトランジスタの共通エミッタから上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を取り出すことを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を上記差動型ゲインセルを構成するバイポーラトランジスタの共通エミッタから取り出している。すなわち、本発明に係る周波数逓倍回路は、電圧制御発振器と回路を共用している。これにより、上記電圧制御回路と周波数逓倍回路とを別々の回路として用いる場合より回路規模を小さくすることができ、その結果、電圧制御発振を行う回路と周波数逓倍を行う回路とを含む回路の製造コストおよび消費電力を低下させることができる周波数逓倍回路を実現することができるという効果を奏する。
【0009】
本発明に係る周波数逓倍回路は、上記課題を解決するために、電界効果トランジスタで構成された差動型ゲインセルを有する電圧制御発振器を備え、上記差動型ゲインセルを構成する電界効果トランジスタの共通ソースから上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を取り出すことを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を上記差動型ゲインセルを構成する電界効果トランジスタの共通ソースから取り出している。すなわち、本発明に係る周波数逓倍回路は、電圧制御発振器と回路を共用している。これにより、上記電圧制御回路と周波数逓倍回路とを別々の回路として用いる場合より回路規模を小さくすることができ、その結果、電圧制御発振を行う回路と周波数逓倍を行う回路とを含む回路の製造コストおよび消費電力を低下させることができる周波数逓倍回路を実現することができるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係る周波数逓倍回路は、上記差動型ゲインセルを構成するバイポーラトランジスタのベースもしくはコレクタから上記電圧制御発振器の発振周波数の信号を取り出すことを特徴としている。
【0012】
本発明に係る周波数逓倍回路は、上記差動型ゲインセルを構成する電界効果トランジスタのゲートもしくはドレインから上記電圧制御発振器の発振周波数の信号を取り出すことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、周波数逓倍回路は、上記差動型ゲインセルを構成するバイポーラトランジスタのベースもしくはコレクタ、または、電界効果トランジスタのゲートもしくはドレインから上記電圧制御発振器の発振周波数の信号を取り出すことができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振周波数の信号と、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号とを切り替えて出力する切替手段を備えることを特徴としている。
【0015】
周波数逓倍回路は、既に説明したように、上記電圧制御発振器と回路を共用しているため、上記電圧制御発振器の発振周波数の信号と、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号とを一度に取り出せる。これらの信号は、それぞれ別々の回路で使用される場合があると考えられる。そこで、本発明に係る周波数逓倍回路は、上記切替手段を備えている。該切替手段により、それぞれの信号を適宜適切な回路へ容易に供給することができるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係る周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振振幅を検出し、上記検出結果に基づいて、上記電圧制御発振器の発振振幅を制御するための信号を調整する検出手段を備えることを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、周波数逓倍回路は、上記検出手段を備え、上記電圧制御発振器の発振振幅を制御するための信号を調整している。これにより、上記電圧制御発振器の発振振幅を制御することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係る周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振振幅を一定とするように、上記信号を調整することを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振振幅を一定とするように、上記信号を調整している。これにより、安定した上記電圧制御発振器の発振周波数の信号と、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号とを出力することができるという効果を奏する。
【0020】
本発明に係る周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を、単相入力信号を周波数が同じで位相が180度異なる2つの信号に変換する差動信号変換手段を介して出力することを特徴としている。
【0021】
周波数逓倍回路は、既に説明したように、上記電圧制御発振器の発振周波数の信号と、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号とを一度に取り出せる。このため、高周波送受信機等に用いれば、非常に有効である。この場合、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号が入力される回路としては、ミキサや90度移相器などが挙げられる。これらの回路は、差動信号を入力することで良好な性能を得られるものが多い。そこで、本発明に係る周波数逓倍回路は、上記差動信号変換手段を備えている。これにより、上記ミキサや90度移相器に、差動信号に変換した上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を供給することができるというさらなる効果を奏する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る周波数逓倍回路は、以上のように、バイポーラトランジスタ、もしくは電界効果トランジスタで構成された差動型ゲインセルを有する電圧制御発振器を備え、上記差動型ゲインセルを構成するバイポーラトランジスタのエミッタ、もしくは電界効果トランジスタのソースから上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を取り出している。
【0023】
これにより、電圧制御発振を行う回路と周波数逓倍を行う回路とを含む回路の製造コストおよび消費電力を低下させることができる周波数逓倍回路を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図3に基づいて説明すると以下の通りである。
【0025】
図1は、本実施の形態1に係る周波数逓倍回路1の構成を示している。
【0026】
周波数逓倍回路1は、図示のように、トランジスタ差動対Tr1・Tr2(NPN型)で構成された差動型ゲインセルを有する電圧制御発振器であり、該電圧制御発振器は、直流電流源I1、直流カット用コンデンサC1、C2、可変容量VC1、VC2、インダクタL1、L2、逓倍出力端子O1、および直流電圧源V1、V2を備えている。なお、直流電圧源V2は、可変容量VC1、VC2に入力する発振周波数制御信号を生成する。
【0027】
トランジスタ差動対Tr1・Tr2は、それぞれのエミッタが互いに接続され、その共通エミッタには直流電流源I1が接続されている。また、トランジスタTr1のベースとトランジスタTr2のコレクタとが直流カット用コンデンサC2を介して接続され、同様に、トランジスタTr2のベースとトランジスタTr1のコレクタとが直流カット用コンデンサC1を介して接続されている。なお、上記共通エミッタが、逓倍出力端子O1である。
【0028】
また、トランジスタTr1のコレクタには、直流電圧源V1がインダクタL1を介して接続され、同様に、トランジスタTr2のコレクタには、直流電圧源V1がインダクタL2を介して接続されている。また、トランジスタTr1のコレクタと、インダクタL1との接続点には、可変容量VC1の一端が接続され、同様に、トランジスタTr2のコレクタと、インダクタL2との接続点には、可変容量VC2の一端が接続されている。また、可変容量VC1の他端と、可変容量VC2の他端とが接続され、その接続点には、直流電圧源V2のプラス端子が接続され、直流電圧源V2のマイナス端子は接地されている。該インダクタL1、L2および可変容量VC1、VC2は、タンク回路2を構成している。
【0029】
次に、周波数逓倍回路1の動作について、図2を用いて説明する。
【0030】
直流電圧源V1により電圧を印加すると、周波数逓倍回路1は、タンク回路2の定数で決定される、図中の上段に示すような発振周波数f1で発振する。該発振周波数f1は、直流電圧源V2にて生成され、可変容量VC1、VC2に入力される発振周波数制御信号により電圧制御される。
【0031】
次に、タンク回路2にて発振された信号が、トランジスタ差動対Tr1・Tr2に入力されると、トランジスタ差動対Tr1・Tr2が、図中の中段に示すように交互にオン・オフを繰り返す。トランジスタTr1がオンで、トランジスタTr2がオフのとき、トランジスタ差動対Tr1・Tr2の共通エミッタの電圧Veは、上記タンク回路2にて発振された信号の電圧からオン時のベース−エミッタ間電圧Vb1分低い電圧になり、トランジスタTr1のベース電圧とほぼ同じ波形になる。一方、トランジスタTr2がオンで、トランジスタTr1がオフのときのトランジスタ差動対Tr1・Tr2の共通エミッタの電圧Veは、上記タンク回路2にて発振された信号の電圧からオン時のベース−エミッタ間電圧Vb2分低い電圧になり、トランジスタTr2のベース電圧とほぼ同じ波形となる。
【0032】
これらの動作を交互に繰り返すため、トランジスタ差動対Tr1・Tr2の共通エミッタの電圧Veは、図示のように、トランジスタTr1、Tr2のベース電圧を全波整流した波形となり、発振周波数f1の2倍の周波数で動作する。この信号を取り出すことにより、発振周波数を逓倍(2倍)した信号を取り出すことができる。
【0033】
また、逓倍しない信号(上記タンク回路2にて発振された信号)は、トランジスタ差動対Tr1・Tr2のコレクタから取り出せる。しかし、上記逓倍しない信号を取り出せる箇所は、コレクタに限定されるわけではない。図3に示すように、トランジスタ差動対Tr1・Tr2のベースからも取り出せる。
【0034】
なお、上記逓倍しない信号は、図示のような、例えばNPN型トランジスタで構成された周知の差動増幅回路3を介して出力してもよい。この場合、周波数逓倍部1A(周波数逓倍回路1と同じ。以下に示す実施の形態2〜4においても同様)と差動増幅回路3とを含めた回路11が周波数逓倍回路11となる。
【0035】
以上のように、本実施の形態1の周波数逓倍回路1では、上記逓倍しない信号と、該信号の発振周波数f1を逓倍した信号とを一度に取り出すことができる。すなわち、周波数逓倍回路1は、電圧制御発振器と回路を共用していると言える。これにより、電圧制御回路と周波数逓倍回路とを別々の回路として用いる場合より回路規模を小さくすることができ、その結果、電圧制御発振を行う回路と周波数逓倍を行う回路とを含む回路の製造コストおよび消費電力を低下させることができる周波数逓倍回路を実現することができる。
【0036】
なお、本実施の形態1の周波数逓倍回路1では、NPN型バイポーラトランジスタで差動対を構成したが、この構成に限られるわけではなく、PNP型バイポーラトランジスタを用いてもよいし、電界効果トランジスタを用いてもよい。電界効果トランジスタは、nチャネル型でもよいし、pチャネル型でもよい。よって、本実施の形態1においては、上記逓倍しない信号はトランジスタ差動対Tr1・Tr2のコレクタやベースから取り出し、上記逓倍した信号はトランジスタ差動対Tr1・Tr2の共通エミッタから取り出しているが、これに限られるものではなく、回路構成によって適宜最適なノードから取り出せばよい。例えば、トランジスタ差動対Tr1・Tr2に電界効果トランジスタを用いる場合には、上記逓倍しない信号をドレインやゲートから取り出すことができ、上記逓倍した信号を共通ソースから取り出すことができる。
【0037】
また、電圧制御発振器の回路形式も差動型のゲインセルを用いるものであれば、どのような回路構成であっても本実施形態と同様な効果が得られる。これらは、以下に示す実施の形態2〜4においても同様である。
【0038】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図4に基づいて説明すると以下の通りである。
【0039】
図4は、本発明の他の実施形態に係る周波数逓倍回路21の構成を示している。
【0040】
ところで、上述したように、周波数逓倍部1Aは、上記逓倍しない信号と、上記逓倍した信号とを一度に取り出せる。したがって、高周波送受信器の局部発振器に用いれば、非常に有効である。そこで、本実施形態の周波数逓倍回路21は、周波数逓倍部1Aを高周波送受信器の局部発振器に用いた場合を想定し、その場合に有効な構成を有するように考慮されたものである。以下、詳細に説明する。なお、ここでは、周波数逓倍回路21をPLLおよびミキサに接続する場合を例として説明する。
【0041】
周波数逓倍回路21は、周波数逓倍部1Aと、周波数逓倍部1Aから出力される上記逓倍しない信号を増幅する、例えばNPN型トランジスタで構成された周知の差動増幅回路4と、周波数逓倍部1Aから出力される上記逓倍した信号を増幅する、例えばNPN型トランジスタで構成された周知の増幅回路5と、差動増幅回路4の出力信号および増幅回路5の出力信号から所望の信号を出力するスイッチ6(切替手段)とを備えている。
【0042】
なお、上記説明から明らかであるが、差動増幅回路4の入力は、周波数逓倍部1Aのトランジスタ差動対Tr1・Tr2のベースもしくはコレクタに接続され(図中では、周波数逓倍部1Aのトランジスタ差動対Tr1・Tr2のベースに接続)、また、増幅回路5の入力は、周波数逓倍部1Aのトランジスタ差動対Tr1・Tr2の共通エミッタに接続されている。
【0043】
次に、スイッチ6(スイッチ6A〜6C)は、図示のように接続する。詳細には、PLLには常に上記逓倍しない信号(差動増幅回路4の出力信号)を入力するように、差動増幅回路4の出力とPLLの入力との間にスイッチ6Aを接続し、ミキサには上記逓倍しない信号と上記逓倍した信号(増幅回路5の出力信号)とを切り替えて入力するように、差動増幅回路4の出力とミキサの入力との間にスイッチ6Bを接続し、増幅回路5の出力とミキサの入力との間にスイッチ6Cを接続する。なお、スイッチ6A〜6Cの動作は、例えば、外部から入力される制御信号を用いて制御すればよい。
【0044】
上記構成により、一つの発振周波数で二つの周波数の信号を上記ミキサに供給することができ、上記ミキサのローカル信号に必要な周波数範囲が広い場合に、回路規模の縮小に貢献できる。また、上記逓倍しない信号と上記逓倍した信号とを一つのミキサに出力し、発振器の発振周波数の3倍の周波数信号を得るなどの構成にしてもよい。
【0045】
なお、周波数逓倍回路21の後段に、上記ミキサおよび上記PLLを設けること、周波数逓倍部1Aとスイッチ6との間に、差動増幅回路4および増幅回路5を設けること、さらにスイッチ6の設け方等が一例であるのは言うまでもない。
【0046】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について図5に基づいて説明すると以下の通りである。
【0047】
図5は、本発明の他の実施形態に係る周波数逓倍回路31の構成を示している。
【0048】
周波数逓倍回路31は、周波数逓倍部1Aと、周波数逓倍部1Aの発振振幅を検出し、上記検出結果に基づいて、周波数逓倍部1Aの発振振幅を制御するための信号を調整する振幅検出回路(検出手段)7とを備えている。
【0049】
上記実施の形態1において上述したように、上記逓倍した信号は、上記逓倍しない信号を全波整流したものである。よって、上記逓倍した信号から直流成分を取り出すことにより、周波数逓倍部1Aの発振振幅を検出することができる。
【0050】
そこで、図示のように、トランジスタ差動対Tr1・Tr2の共通エミッタに振幅検出回路7を接続し、上記逓倍した信号を取り出し、周波数逓倍部1Aの発振振幅を検出する。該検出した周波数逓倍部1Aの発振振幅に基づいて、周波数逓倍部1Aの発振振幅を制御するための信号を調整する。例えば、周波数逓倍部1Aの発振振幅が一定となるように、上記信号を調整する。その後、直流電流源I1に上記信号を与え、直流電流源I1の定電流を制御する。
【0051】
これにより、周波数逓倍部1Aの発振振幅を一定とすることができ、その結果、安定した上記逓倍しない信号と上記逓倍した信号とを得ることができる。例えば、周波数逓倍回路31を高周波送受信機の局部発振器として用いた場合、後段に設けられるミキサや90度移相器等の回路の出力も安定したものを得ることができる。
【0052】
また、上記構成により、良好な位相雑音特性が得られる発振振幅時の回路電流が、最低限で済むように定電流を制御することで、消費電力を抑えることができる。
【0053】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施形態について図6に基づいて説明すると以下の通りである。
【0054】
図6は、本発明の他の実施形態に係る周波数逓倍回路41の構成を示している。
【0055】
周波数逓倍回路41は、周波数逓倍部1Aと、周波数逓倍部1Aから出力される上記逓倍した信号を、単相入力信号を周波数が同じで位相が180度異なる2つの信号に変換する差動信号変換回路8(差動信号変換手段)とを備えている。
【0056】
上記実施の形態3で記載したミキサや90度移相器としてよく用いられる、ギルバートセル型ダブルバランスミキサやTフリップフロップを用いた90度移相器などは、差動信号を入力することで良好な性能を得られるものが多い。そこで、差動信号変換回路8により、上記逓倍した信号を差動信号に変換し、上記ミキサや90度移相器に供給することで良好な性能を得ることができる。なお、差動信号変換回路8は周知の構成で実施できる。
【0057】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、高周波送受信機に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、周波数逓倍回路の要部構成を示す回路図である。
【図2】上記周波数逓倍回路が備えるトランジスタ差動対の各端子の信号の波形を示す図である。
【図3】上記周波数逓倍回路から逓倍しない信号を取り出すための構成を示す回路図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示すものであり、上記周波数逓倍回路にスイッチを設けた場合の回路図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示すものであり、上記周波数逓倍回路に振幅検出回路を設けた場合の回路図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示すものであり、上記周波数逓倍回路に差動変換回路を設けた場合の回路図である。
【図7】高周波送受信機のミキサ付近の回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
1 周波数逓倍回路
6 スイッチ(切替手段)
7 振幅検出回路(検出手段)
8 差動変換手段(差動変換回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラトランジスタで構成された差動型ゲインセルを有する電圧制御発振器を備え、
上記差動型ゲインセルを構成するバイポーラトランジスタの共通エミッタから上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を取り出すことを特徴とする周波数逓倍回路。
【請求項2】
電界効果トランジスタで構成された差動型ゲインセルを有する電圧制御発振器を備え、
上記差動型ゲインセルを構成する電界効果トランジスタの共通ソースから上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を取り出すことを特徴とする周波数逓倍回路。
【請求項3】
上記周波数逓倍回路は、上記差動型ゲインセルを構成するバイポーラトランジスタのベースもしくはコレクタから上記電圧制御発振器の発振周波数の信号を取り出すことを特徴とする請求項1記載の周波数逓倍回路。
【請求項4】
上記周波数逓倍回路は、上記差動型ゲインセルを構成する電界効果トランジスタのゲートもしくはドレインから上記電圧制御発振器の発振周波数の信号を取り出すことを特徴とする請求項2記載の周波数逓倍回路。
【請求項5】
上記周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振周波数の信号と、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号とから所望の信号を出力する切替手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の周波数逓倍回路。
【請求項6】
上記周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振振幅を検出し、上記検出結果に基づいて、上記電圧制御発振器の発振振幅を制御するための信号を調整する検出手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の周波数逓倍回路。
【請求項7】
上記周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振振幅を一定とするように、上記信号を調整することを特徴とする請求項6記載の周波数逓倍回路。
【請求項8】
上記周波数逓倍回路は、上記電圧制御発振器の発振周波数を逓倍した信号を、単相入力信号を周波数が同じで位相が180度異なる2つの信号に変換する差動信号変換手段を介して出力することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の周波数逓倍回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−150753(P2007−150753A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342764(P2005−342764)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】