説明

呼吸器系疾患または症状を処置および予防するためのグリセロリン酸カルシウム

グリセロリン酸カルシウムは、呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置および予防する際に有効であることが判った。該疾患、障害および/または症状は、呼吸気道の閉塞症状または拘束症状と関連がある。該疾患、障害および/または症状は、呼吸気道炎症性疾患、呼吸気道狭窄または鼻腔炎症性疾患、例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、反応性気道機能不全疾患(RADS)、鼻炎、気管支炎、細気管支炎、鼻づまり、副鼻腔炎、扁桃(腺)炎または喉頭炎、後鼻漏(PND)およびその関連合併症、炎症性脱顆粒および非脱顆粒マスト細胞活性、杯細胞から粘液分泌を引き起こすあらゆる刺激呼吸困難、拘束、閉塞;通気道気道狭窄または封鎖または粘液干渉;睡眠時無呼吸症、いびき、空中または非空中のアレルゲンまたは刺激物質に対する炎症性または非炎症性応答;身体のあらゆる領域において問題を引き起こす鼻のまたは鼻以外の気道炎症または刺激;および呼吸器系に対する物理的損傷であり得る。方法、組成物および装置は、呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置および予防するためにグリセロリン酸カルシウムを用いるために記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
呼吸器系の疾患、障害および/または症状は、先進国および発展途上国の双方においてよく発生する。それらは、病気に関連した欠勤に関する全日数の大きな割合を占める。呼吸器系の疾患、障害および/または症状に関連した罹患率は低下していない。
【背景技術】
【0002】
それ故に、呼吸器系疾患、障害および/または症状を処置および予防するための比較的安価な手段を開発する必要がある。好ましくは、かかる手段は、非毒性であって、有害でなく、また有意な副作用がないものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(発明の簡単な概要)
本明細書において、グリセロリン酸カルシウムが、呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置および予防する際に有効であることが判った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防する方法に関する。該方法は、経口または経鼻投与のために製剤された組成物において有効量のグリセロリン酸カルシウムを被験対象の呼吸器系に投与することを含む。
【0005】
別の一般的な局面において、本発明は、被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するための組成物に関する。該組成物は、有効量のグリセロリン酸カルシウムを含んでおり、そして経鼻液滴、鼻スプレー、ゲル、鼻洗浄液、迅速に溶解する錠剤、吸入用パウダー、経口吸入用溶液または懸濁液、シロップ、機械的間欠液体パルサー(例えばWater-Pik(登録商標))、吸入器、人工呼吸器、トランスピレーター(transpirator)、アトマイザー、噴霧器、ネビュライザー、エアーマスク、吸気器(insufflator)、直接的な物理的または機械的用途(例えば、綿棒)等の手段により、被験対象の呼吸器系に経口または経鼻投与するために製剤される。
【0006】
さらに別の一般的な局面において、本発明は、被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するための装置に関する。該装置は、有効量のグリセロリン酸カルシウムおよび被験対象の呼吸器系に該有効量のグリセロリン酸カルシウムを投与するための手段を含む。
【0007】
他の局面において、本発明の特徴および利点は、本発明の詳細な説明およびその好ましい実施態様ならびに添付の請求項を含めた下記の開示から明らかである。
【発明の詳細な説明】
【0008】
(本発明の詳細な説明)
グリセロリン酸カルシウムは、表皮および上皮細胞上で抗炎症性物質として、ならびに表皮細胞に加えて体の他の部分の歯茎および粘膜の軟組織、例えば膣に対する創傷治療剤として機能することが既に示されている。この試験は、鼻の粘膜および呼吸器系の他の部分に対するその使用に拡大されている。
【0009】
別途規定がなければ、本明細書に使用された全ての技術用語および化学用語は、本発明が関係する当業者には通常理解される意味と同じ意味を有する。あるいは、本明細書に使用した特定の用語は、明細書に記載したような意味を有する。本明細書で引用された全ての特許、公開特許および刊行物は、本明細書に全て記載されたように、出典明示により参照により組み入れられる。その内容が別途明記されていなくとも、本明細書に使用したように、または添付の請求の範囲において、単数形には複数形の意味が包含されることに注意すべきである。
【0010】
本明細書に使用したとおり、用語「被験対象」は、処置、観察または実験の対象である哺乳動物を指す。被験対象の例は、ヒト、家畜動物(肉牛および乳牛、ヒツジ、家禽等)、または愛玩動物(イヌ、ネコ、ウシ等)であり得る。
【0011】
本明細書に使用したとおり、用語「呼吸器系」とは、気道のあらゆる部分、即ち呼吸中の鼻から肺胞への空気の通路を指す。呼吸器系には、呼吸に関係がある臓器、例えば鼻、咽喉、喉頭、気管、気管支および肺が挙げられる。
【0012】
本明細書に使用したとおり、用語「呼吸器系の疾患、障害および/または症状」は、呼吸器系の閉塞性または拘束性の症状に関するあらゆる疾患、障害および/または症状を指す。呼吸器系の閉塞性症状は、肺に入る空気流および肺から出る空気流の割合を妨げるあらゆる症状を包含する。呼吸器系の拘束性の症状には、肺の機能容量を低下させるあらゆる症状が包含される。気道の閉塞または拘束は、例えば喘鳴、息切れ、呼吸困難、胸部圧迫感、および咳嗽等の兆候を引き起こし得る。呼吸器系の疾患、障害および/または症状は、例えば、気道炎症性疾患、気道狭窄、または鼻腔炎症性疾患が挙げられる。
【0013】
呼吸器系の疾患、障害および/または症状の例示には、喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);気腫、反応性気道疾患(RADS);鼻炎;気管支炎;細気管支炎;鼻づまり;副鼻腔炎;扁桃(腺)炎;喉頭炎;後鼻漏(PND)およびそれに依存する任意および全ての合併症;炎症性脱顆粒化および非脱顆粒化マスト細胞活性;呼吸困難、呼吸拘束および/または呼吸閉塞をもたらす杯細胞またはその他からの粘液分泌をおこすあらゆる刺激;気道狭窄または気道閉塞または気道との粘液干渉;睡眠時無呼吸;いびき;あらゆる空中のまたは他のアレルゲンまたは刺激物質に対する炎症性または非炎症性の応答;その他の身体領域の問題により引き起こされる鼻または他の気道炎症または刺激;呼吸器系に対する物理的損傷、例えば鼻血、外科的治療、外傷損傷;空中のまたは季節性アレルゲンまたは刺激物質により引き起こされるあらゆる呼吸疾患、障害および/または症状、上記のいずれかにより起こる組織のあらゆる腫れ等が挙げられるが、これらに制限するものではない。
【0014】
本明細書に使用したとおり、用語「喘息」は、殆どの症例において、可逆性の気道障害および/または狭窄を特徴とする慢性症状を指す。気道は、喘息に対する1以上のトリガーに応答する際に、炎症を起こし、過剰量の粘液に覆われる。喘息のトリガーには、環境刺激物質、例えばアレルゲン(ブタクサ、ハウスダスト、動物体毛、花粉等)、冷気、温風、湿気、温度または湿度変化、上気道感染、運動、激しい作業、身体的または精神的ストレス、煙、ウイルス疾患、例えば一般的な風邪によりもたらされるウイルス疾患が挙げられるが、これらに限定するものではない。用語「喘息」には、マスト細胞、脱顆粒および粘液滲出が関与していようがいまいが、また悪化要因(exacerbant)が同定されていようがいまいが、または原因が空中であろうがなかろうが、一次影響が細胞の炎症および/または刺激である喘息のあらゆる原因により引き起こされるものが包含される。用語「喘息」とは、最も広い範囲を網羅されるべきであり、急性とは殆ど知覚出来ない程度の全ての呼吸困難が包含されるべきである。
【0015】
喘息の例示には、気管支喘息、幼児性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性喘息、ステロイド難治性喘息、非アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、アスピリン喘息、心臓喘息、運動誘発性喘息、感染性喘息、気道拘束または狭窄により開始されるあらゆる喘息が挙げられるが、これらに制限するものではない。
【0016】
本明細書に使用したとおり、慢性閉塞性気道疾患(COAD)として知られる用語「慢性閉塞性肺疾患」あるいは「COPD」はまた、完全に可逆的ではない気道内の空気流の制限を特徴とする進行性の呼吸疾患を示す。COPDは、強制呼気が遅くなる、小気管支の永続的または一時的な狭窄を包含する。COPDの例示には、慢性気管支炎、気腫および病因学的にまたはより具体的な用語を適用できないその他の不全の範囲が挙げられる。COPDは、他の空中の刺激物質、例えば炭塵、アスベストまたは溶媒、ならびに亜硝酸塩を含有する保存肉が原因となる可能性があるが、最も多いのが喫煙である。
【0017】
本明細書に使用したとおり、用語「反応性気道疾患(RAD)」は、トリガー、例えば刺激性蒸気、煤煙または煙の高レベルに一度暴露した後に、進行した喘息様症状を示す。本発明の特定の実施形態において、用語「RAD」は、診断試験をうけるに十分成長した時に、喘息であることが確認されるかもしれない幼児の喘息様症候が含まれる。
【0018】
本明細書に使用したとおり、用語「鼻炎」は、鼻の粘膜の炎症を引き起こすあらゆる疾患、障害および/または症状を指す。鼻炎の例示には、アレルギー性鼻炎、花粉症、急性鼻炎、慢性鼻炎、異常肥大鼻炎、鼻中隔湾曲症等が挙げられるが、これらに制限するものではない。鼻炎の兆候には、鼻水、鼻詰まりおよび後鼻漏などが挙げられるが、これらに制限するものではない。米国で完了した最近の治験によれば、5000万人以上の米国人が現在鼻炎に罹っている。鼻炎は、鼻、咽喉および眼だけなく悪影響することが判っている。睡眠障害、耳の問題とも関連しており、さらに学習上の問題とも関係している。鼻炎の出現が起こり得る原因には、食物反応、解剖学的欠陥、免疫欠損疾患、線毛運動障害、環境トリガー、感情的トリガー、職業上のトリガー、ホルモン様トリガーなどが挙げられるが、これらに制限するものではない。
【0019】
本明細書に使用したとおり、用語「グリセロリン酸カルシウム」または「CGP」は、「グリセロホスフェート・カルシウム」としても知られ、その無水形態においてC3H7CaO6Pの分子式を有する化合物を示す。「CGP」は、また一水和物および二水和物を包含する水和物としても存在することができる。グリセロリン酸カルシウムの例示には、CGPの3つのアイソマー、即ちβ-グリセロリン酸カルシウム塩((HOCH2)2CHOPO3Ca)およびD(+)およびL(-)-α-グリセロリン酸カルシウム塩(HOCH2CH(OH)CH2OPO3Ca)のいずれか1つ、または2以上のあらゆる組み合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0020】
グリセロリン酸カルシウムは、当業者には既知の方法を用いて合成され得る。グリセロリン酸カルシウムもまた、様々な市販製品から得ることが出来る。該市販のCGP製品には、AkPharma Inc. (Pleasantville、NJ 08232)、Astha Laboratories Pvt. Ltd.(B-4、Industrial Estate、Sanathnagar、Hyderabad-18、India)、およびSeppic Inc. (30 Two Bridges Road、Fairfield、NJ 07004)から購入できるものが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0021】
本明細書に使用したとおり、用語「処置」、「処置する」または「治療」には、患者が、かかる疾患、障害または症状に罹患する場合に、疾患、障害または症状に関する悪化の防止を指すものであり、好ましくは少なくとも開始状態の維持、およびより好ましくは疾患、障害または症状の緩和、さらにより好ましくは疾患、障害または症状の解消を指す。
【0022】
本明細書に使用したとおり、用語「予防法」、「予防する」または「予防」とは、疾患、障害または症状に関して、該疾患、障害または症状が、発症しないか、発症を遅延させるか、または発症するが発症の程度が低いように、かかる疾患、障害または症状が発症する前に、ある種の処置を行った場合を指す。
【0023】
本明細書に使用したとおり、疾患、障害または症状に関して広い意味での用語「処置」または「予防」とは、それらに対して行うあらゆる医療行為を指し、また診断、治療、予防、予後診断等のあらゆる行為を指す。
【0024】
呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するために使用した場合、グリセロリン酸カルシウムを、該疾患、障害および/または症状の出現または発作中、例えば喘息の出現に使用される緩和薬剤として、該出現または発作の緩和のための緩和薬剤として使用できる。グリセロリン酸カルシウムはまた、長期制御のために使用される制御剤として使用して、症状の出現または発作の発生を予防することもできる。発作を制御または予防することは、該発作を改善または緩和することに関して同じく重要であるので、実質的には呼吸器系自体の疾患、障害および/または症状の治療である。当業者は、呼吸器系の疾患、障害および/または症状に関する治療または予防のために好適な用量のグリセロリン酸カルシウムを使用することができる。
【0025】
本明細書に使用したとおりの用語「有効量」は、研究者、獣医、医師またはその他の医師により探求されている、処置される疾患または障害の兆候の緩和を含めた組織系、動物またはヒトにおける生物学または医薬的応答を誘起する活性な化合物または医薬剤の量を意味する。有効量のグリセロリン酸カルシウムを被験対象に投与することにより、臨床的に観察出来る有益な効果がもたらされる。臨床的に観察出来る有益な効果とは、呼吸器系の観察出来る疾患、障害および/または症状が、さらなる進行または悪化から守られるか、または本発明の該組成物を投与しないよりも低い程度で進行する状態であり得る。また、臨床的に観察出来る有益な効果とは、本発明の組成物が呼吸器系の疾患、障害および/または症状が観察出来る前に被験対象に投与された場合に、呼吸器系の疾患、障害および/または症状は、発症が予防されるか、またはその後に本発明の組成物を投与しないよりも低い程度に発症する状態であり得る。本発明の一実施態様において、有効量のグリセロリン酸カルシウムは、有効量のグリセロリン酸カルシウムが投与されていない被験対象が示した程度よりも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%のいずれかの程度まで、被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を緩和するかまたは改善する。
【0026】
本発明の実施形態に従って、グリセロリン酸カルシウムの治療上および予防上有効量を決定するための方法は、当分野では知られている。予め決定した用途のための有効量(例えば、治療上有効量)を確認するための有用なアッセイは、標的疾患から回復する程度を測定することである。実際に投与された量は、処置されるべき個人に依拠する。この量は、有意な副作用がなく所望の効果を得ることができるように至適化されるのが好ましい。予防上または治療上有効量の決定は、当業者の能力の範囲内である。任意の化合物の予防上または治療上有効量は、細胞培養アッセイまたはあらゆる好適な動物モデルのいずれかを用いて推定され得る。動物モデルを、所望の濃度範囲および投与経路を達成するために用いる。さらに、かかる情報を使用して、ヒトにおいて投与するために有用な用量および経路を決定することが出来る。
【0027】
化合物の治療効果および毒性は、細胞培養物または実験動物における標準医薬方法により決定される(例えば、ED50、全体の50%に有効な治療用量;およびLD50、50%までの全体の致死用量)。治療および毒性効果の間の用量比率は、治療上の指標であって、ED50/LD50の割合として表され得る。高い治療的指標を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養物アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトに使用するための用量範囲を公式化するために使用できる。かかる化合物の用量は、毒性が少ないかまたは毒性がないED50を包含する循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。かかる用量は、用いた投薬形態、患者の感受性および投与経路によってこの範囲内で変更してもよい。特定用量および送達方法についてのガイダンスは、当業者に既知の刊行物に規定される。この正確な用量は、処置されるべき患者の症状を考慮して個々の医師により選択される。用量および投与は、活性な部分の十分なレベルを提供するために、または所望の効果を達成するために調整される。
【0028】
CGPの有効量は、マイクロドーズ(micro-dose)からメガドーズ(mega-dose)までの任意の用量範囲内にある。CGPは非毒性であって有害でなく、副作用が知られていないため、メガドーズのCGPを効果的に使用できる。マイクロドーズのCGPを有効に使用できる、これはCa2+およびグリセロリン酸アニオンの双方が、非常に低いレベルで生物学効果を示し得るシグナル伝達分子であることを理由とする。
【0029】
本発明の実施形態において、CGPの有効量を、約0.05%-15%(w/w)、好ましくは約0.5%-10%(w/w);最も好ましくは約1%-5%(w/w)のCGPを含有する組成物にて被験対象に投与する。試験された高レベル、例えば約7.5% (w/w)以上では、グリセロリン酸カルシウムは、恐らくは血液凝固に対するカルシウム効果を理由とする、鼻血を止血する場合の助けとなり得ることが発見された。しかしながら、該組成物中のCGP量は、約0.05%-15%(w/w)に限定されない。
【0030】
一態様において、本発明の実施形態は、被験対象において呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防する方法に関する。該方法は、有効量のグリセロリン酸カルシウムを被験対象の呼吸器系に投与することを含んでおり、ここで該グリセロリン酸カルシウムは、経口または経鼻投与のために製剤された組成物にて、被験対象の呼吸器系に投与される。経口または経鼻投与のために製剤された該組成物は、液体、固体、ゲル、シロップ、粉末、またはミストの製剤であってよい。
【0031】
グリセロリン酸カルシウムは、呼吸器系の疾患、障害および/または症状のタイプに依り経口または経鼻投与に関する1以上の手段により、被験対象の呼吸器系に投与され得る。例えば、喘息、COPD等の場合には、MDI、BDIまたはネブライザー等のアトマイザー型の吸入器を、吸入のために使用してもよい。例えば、鼻炎の場合には、吸収および吸入を、投与のために使用してもよい。経口または経鼻投与に適用出来る手段の例示には、点鼻薬、スプレー式点鼻薬、鼻洗浄液、即時溶解性錠剤、吸入用粉末、経口吸入用溶液または懸濁液、シロップ、機械的間欠的液体パルサー(例えばWater-Pik(登録商標))、吸入器、人工呼吸器、トランスピレーター、アトマイザー、噴霧器、エアーマスク、吸気器、直接的な物理的または機械的適用手段、例えば綿棒、などが挙げられるが、これらに制限するものではない。
【0032】
吸入は、鼻腔、気道および鼻道などを介する投与方法として通常使用される。気道内投与製剤、経気道吸収製剤または経鼻吸収製剤において、通常、霧状形態にある医薬溶液または微粉末(乾燥粉末)として作成されるのが好ましい。一般的に、形成した医薬溶液を、ネビュライザーにより吸入することができ、粉末に加工された医薬物質は、その中に充填された該医薬物質と共に用いて、ガス噴霧型、MDI(定量噴射式吸入器)また呼気吸入系、DPI(乾燥粉末吸入器)の手段により吸入され得る。
【0033】
粉末用吸入器について、現在、迅速と深部吸入のために使用される2つのタイプ、即ち「乾燥粉末吸入器(DPI)」および遅延性吸入型「定量噴射式吸入器(MDI)」がある。DPIは、さらに3つの分類に分けられる:多回用量容器(multi-dose reservoir)、例えばAstraZenecaから購入できる製品TURBUHALER(登録商標);複数の単回用量(multi-unit dose)、例えばGSKから購入できる製品ACCUHALER(商標)/FLOVENT DISKUS(商標);ならびに多くの製造元から購入できる単回用量(unit-dose)。
【0034】
吸入器とは、マウスピースおよびカートリッジ(チューブ)を含むキットを指し、通常該チューブの両端をアルミニウムホイルによる封止が用いられる。使用前に、該チューブをアルミニウムホイルを貫通させるようにマウスピースに取り付けて、内側の粉末化した医薬物質の吸入を可能とする。
【0035】
一方、医薬物質の溶液の吸収は、ネビュライザーまたは吸入器、人工的な吸入器の手段により達成され得る。ネビュライザーは、ゆっくりとした速度にて空気中に医薬物質エアロゾルを流して、こうして該医薬物質の吸収をより容易にする。
【0036】
どの程度の頻度で、またどの程度の時間、グリセロリン酸カルシウムを被験対象に投与するかは、処置または予防される呼吸器系の疾患、障害および/または症状、ならびに被験対象に関連のある要因、例えば年齢、体重、健康などに依拠する。グリセロリン酸カルシウムは、1日あたり複数回の投与計画で投与されてもよい。グリセロリン酸カルシウムを、一日の間、例えば、起床して、朝食後、昼食後、夕食後および就寝まで、の複数の間隔をおいて被験対象に投与することができる。グリセロリン酸カルシウムを、呼吸器系の疾患、障害および/または症状の出現または発作の間に投与して、例えば喘鳴、息切れ、呼吸困難、胸部圧迫、および咳嗽などの症状の緩和を提供できる。グリセロリン酸カルシウムはまた、症状の出現または発作、および症状の出現または発作と関連のある兆候を制御または予防するために、症状の出現または発作の前に被験対象に投与されてもよい。
【0037】
グリセロリン酸カルシウムの用量は、特定の値に限定されない。該用量は、標的疾患、症状(範囲)、年齢、%または合併症(複数を含む)の非存在などに依拠して好適に変える。例えば、該用量は、通常、成人あたり、投与あたり、約100μgから約1000mg、好ましくは約500μg〜約100mg、および最も好ましくは約1mg〜約40mgの無水CGPである。本明細書に使用したとおり、「無水CGP」は、残存湿気または獲得した湿気を含まない少なくとも約88% (w/w)のCGPを含有するCGP調製物を指す。本発明の実施形態において使用した無水CGPは、乾燥減量(LOD)が12%を超えないという食品用化学物質の規格(FCC)基準に適合している。本明細書に使用したとおり、「投与あたり」とは、吸入あたり、鼻孔あたり、スプレーあたり、錠剤あたり等であり得る。本発明の一実施態様において、該用量は、投与あたり約2重量%の乾燥CGPを含有する約400mg 溶液/懸濁液製剤である。本発明の別の実施形態において、該用量は、投与あたり約3.75重量%の乾燥CGPを含有する約400mg溶液/懸濁液製剤である。乾燥CGPは、水分と平衡している約95-98%の無水CGPを含有する。しかしながら、CGPの用量は、上記の範囲に制限されず、身体の生死に関わる危険をもたらさないあらゆる範囲内であり得る。
【0038】
理論に縛られないが、グリセロリン酸カルシウムを、CGPの抗炎症性の効果を理由として、少なくとも部分的に呼吸器系の疾患、障害および/または症状を、処置または予防するのに使用することができる。炎症を起こした気道上皮は、呼吸器系の疾患、障害および/または症状をもたらす。様々な所見から、グリセロリン酸塩は表皮細胞の再生を促進するように機能することが示唆される、例えばUS2004/0037766を参照されたい。表皮細胞の迅速な修復および置換は、とりわけセラミド合成の増強を提供するもので、このセラミド合成の増強は、皮膚表面の修復を加速させ、そして刺激物質質が脆弱な細胞壁間へ浸潤することを予防できる細胞間接着の強化を提供する。これは、カルシウムイオンが細胞膜自体の透過性を改変する潜在的機能、即ちカルシウムイオンが高濃度にて膜多孔性を低下させる能力とは区別されるべきである。呼吸器系の炎症に関する低下、阻止、抑制または予防は、兆候の緩和または予防を提供する。CGPの有益な効果はまた、少なくとも部分的には、上気道および下気道において酸による刺激および細胞毒性を予防または減少させるその能力、ならびに/またはその高い繊毛活性を促進する能力、例えば特定の繊毛タンパク質のリン酸化状態を調節することによる能力を理由とし得る。これは、本発明の実施形態の呼吸器系に対する新たに発見されたCGPの有益な効果が、カルシウムイオンおよびグリセロリン酸塩の間で相乗的に達成されると確信される。この相乗効果は、カルシウムイオンまたはグリセロリン酸塩単独の機能とは異なる。
【0039】
グリセロリン酸カルシウムは、非毒性であって、有害でなく、副作用は知られていない。それ故に、本発明の実施形態の方法は、小児患者、高齢患者、妊婦または呼吸器系の疾患、障害および/または症状に対する緩和医薬品および/または予防医薬品を頻繁に必要とする患者に、特に望まれ得るものである。本発明の組成物の経口または経鼻投与は、非侵襲性であり、反復して投与されることが出来る。
【0040】
特定の実施形態において、グリセロリン酸カルシウムを、呼吸器系の疾患、障害および/または症状のために1以上の他の緩和薬剤および/または予防薬剤と併用投与することができる。このように、本発明の実施形態は、呼吸器系の疾患、障害および/または症状のための、グリセロリン酸カルシウムおよび1以上の他の緩和薬剤および/または予防薬剤を含む組成物、ならびに該被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状処置または予防するための該組成物を用いる方法に関連がある。グリセロリン酸カルシウムおよびその他の薬剤を、同時に、または連続して、順に投与できる。他の薬剤を、かかる他の医薬物質について、通常使用される投与経路を介して被験対象に投与できる。しかし、本発明の実施形態の例示に関する実質的%にて、他の緩和薬剤および/または予防薬剤を投与することが必ずしも必要というわけではない。グリセロリン酸カルシウムは、単独で活性な医薬成分として、呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するために効果的である。
【0041】
かかる緩和薬剤および/または予防薬剤の例示には、β-2アゴニスト、αアゴニスト、気管支拡張剤、グルココルチコイド、ロイコトリエン修飾物質、マスト細胞安定剤、抗ムスカリン薬/抗コリン作動薬、メチルキサンチン、抗ヒスタミン、オマリツマブ、メトトキサレート、およびチアネピチン、アルブテロール、クロモリンなどが挙げられるが、これらに制限するものではない。
【0042】
本発明の他の実施形態は、グリセロリン酸カルシウムおよび1以上の鎮痛薬を含む組成物、ならびに被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置するかまたは予防するための組成物を用いる方法に関する。該組成物の例示には、次のものが挙げられるが、これに制限するものではない;鼻洗浄剤/充血除去剤(NasoCell(商標登録))としてCGPおよび一般的な店頭販売(OTC)の鎮痛剤、例えばイブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン、ナプロキセン、カプサイシン等を含む、風邪、花粉症、空中のまたは季節性アレルゲンまたは刺激物質等によりもたらされる呼吸疾患、障害および/または症状を処置するための医薬製品。該組成物中のCGPの量は、鼻洗浄剤および/または充血除去剤を提供するために、単回用量(これは2〜4回のNasoCellの噴霧であってもよい)で供給するのに好適であり得る。該組成物中の鎮痛剤の量は、風邪、花粉症と関連する一般的な頭痛、副鼻腔(sinus)の痛み、眼の痛み等を緩和するのに効果的であり得る。
【0043】
本発明の該組成物の経鼻投与は、風邪、花粉等と関連のある兆候のより迅速な緩和を提供できる。鼻の膜吸収による投与は、定量的により有効であり、その後の吸収のために、消化過程により起こり得る組成の損傷を伴って消化器系を通過しなければならない消化された同じ鎮痛剤よりも、経時的により迅速に血流へと到達することができる。さらに、NasoCellの低浸透圧性により、該組成物が該上皮鼻細胞に対してより容易に付着でき、細胞壁から血流中により容易に吸収される。
【0044】
本発明の組成物は、身体のある部位またはその他の各部位にて望ましくない一般的な抗コリン作用性の副作用がいずれもない、現在上市されている薬剤、例えばジフェンヒドラミン、エフェドリン、偽エフェドリン等と関連のある心因作用のいずれも含まない、有効な鼻洗浄、鼻清浄、抗炎症、抗膨張(腫れ)および鎮痛の独特な組合せを提供する。該組成物は、運転または機械操作する場合であっても大量に使用するのに安全である。
【0045】
別の一般的な局面において、本発明の実施形態は、被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するための組成物を提供する。該組成物は、有効量のグリセロリン酸カルシウムを含んでおり、ここで該組成物は、点鼻薬、スプレー式点鼻薬、鼻洗浄液、即時溶解性錠剤、吸入用粉末、経口吸入用溶液または懸濁液、吸入器、人工呼吸器、ネビュライザー、トランスピレーター、アトマイザー、噴霧器、エアーマスク、吸気器、直接的な物理的または機械的適用のための手段、例えば綿棒等により、被験対象の呼吸器系に経口または経鼻投与するために製剤される。
【0046】
本発明の実施形態の該組成物は、当業者には既知の方法と類似した方法、例えば従来の混合、分解、造粒に対するレンダリング、糖衣錠の調製、水簸、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥を用いて製造することができる。1以上の賦形剤を、該組成物に添加できる。使用し得る賦形剤は、グリセロリン酸カルシウムに対して不活性であり、該使用が医薬用添加物として認められている限り、かかる賦形剤についての制限は為されない。好適な賦形剤の例示には、次のものが挙げられるが、これらに制限するものではない;単糖、例えばガラクトース、マンノース、ソルボース;二糖、例えばラクトース、スクロースおよびトレハロース等;多糖、例えばスターチ、ラフィノース、デキストラン等;糖アルコール(例えば、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど);グリコール (例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど);セルロース様ポリマー(例えば、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース);不溶性添加剤(結晶性セルロース、キトサン、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンまたはシリカ(シリコンオキシド)、およびその混合物。
【0047】
本発明の実施形態の組成物を、pHが約4.5−10、例えば約4.5-6.0、約6.0-8.0、または約8.0-10.0を有するように製剤することができる。鼻のpHは、正常な鼻の細胞内で広く4.5-6.5に変化し、鼻炎においては8.3程度の高さであることに留意されたい。しかしながら、本発明の実施形態の組成物に関するpHは、約4.5-10の範囲または鼻のpHの範囲に制限されない。
【0048】
本発明の実施形態の組成物は、さらに保存剤を含有できる。好ましくは、保存剤は食品等級または医薬等級である。好適な保存剤の例示には、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸および水性の化粧品、例えばクリームおよびローションおよびある種入浴製品に通常使用される他の保存剤が挙げられるが、これらに制限するものではない。保存剤は、該組成物を、微生物、例えば細菌、真菌、または酵母の増殖を予防するのに十分な量で存在するのが好ましい。
【0049】
本発明の実施形態の組成物は、該組成物を気道組織に長時間付着させることができる、即ち気道へのCGPの徐放性をもたらす接着分子または物質も包含できる。付着因子は、多数の相互作用、物理的相互作用または化学的相互作用、例えば静電相互作用、水素結合または疎水性相互作用により達成される。好ましい実施形態において、接着分子または物質は、鼻腔内でCGPの接触時間を拡張する。当業者には既知の任意の好適な接着分子または物質は、本発明の実施形態に関する組成物中で使用され得る。一実施態様において、接着分子または物質は多糖である。好ましい実施形態において、接着分子は、キトサンであり、カチオン性の多糖は甲殻類の貝から得られる。キトサンを基にした汎用的経粘膜的送達系は、West Drug Delivery[Lionville、PA 19353 (US)]から購入でき、本発明において使用できる。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、粉末、ゲル、ミクロスフェア、または懸濁液、即ち液体中でCGPの溶解性を超える量でCGPを含む液体として製剤される。CGPは、水中の溶解度が制限されている、即ち約1重量%。粉末、ゲル、ミクロスフェア、または懸濁液製剤においてCGPを投与することにより、その溶解度を超えるCGPの局所量をもたらす、即ち呼吸器系の粘膜上に不溶性CGPが蓄積する。不溶性CGPが粘膜中にゆっくりと溶解するので、気道の内側の細胞へとCGPの徐放性は、いかなる追加の補助的付着物質をも必要とせずに達成される。所望により、粉末、ゲル、ミクロスフェア、または懸濁液の製剤は、接着分子、すなわち「スティッカー(sticker)」、または気道粘膜表面へのCGPの付着をさらに増強する物質を含んでもよい。
【0051】
CGPの徐放性を提供する製剤が、例えば呼吸器系内でCGPを持続的かつ定常レベルで提供することが望まれる場合、例えば製剤が予防のために使用される場合に望ましい。一実施態様において、本発明の実施形態の方法は、気道へのCGPの長時間の放出を提供する製剤を、被験対象の呼吸器系に投与することを含む。好ましい実施形態において、CGPは、3-8時間の間に気道に放出される。
【0052】
別の実施形態において、本発明の実施形態に関する組成物は、気道中で、例えば気道の粘膜を超えて、CGPの吸収を改善する吸収エンハンサーを含む。吸収エンハンサーが作用できる多くの方法がある。例えば、細胞間の密接な接合を開くことにより、粘液層の特性を変化させてもよく、または膜流動性を増加させるでもよい。当業者には既知のあらゆる好適な吸収エンハンサーを、本発明の実施態様に関する組成物に使用できる。CGPの改善された吸収を提供する製剤は、例えば即時性および高レベルのCGPを呼吸器系に提供することが望まれる場合に、例えば該製剤が症状の出現または発作中の処置に使用される場合に、好まれる。一実施態様において、本発明の実施形態の方法は、気道にCGPの改善された吸収を提供する製剤を被験対象の呼吸器系に投与することを含む。
【0053】
本発明の実施形態に関する組成物を、当業者の既知の技術により経口または経鼻投与に好適である多様な形態に製剤できる。例えば、乾燥粉末などの微粒子を含む、スプレーまたは呼気の適合形式に好適な形態を、気道内投与または経気道吸収に使用できる。乾燥粉末を、皿形粉砕機、ビーズ粉砕機、ジェット粉砕機、湿式衝突型粉砕器(ultimizer)、モーター、石臼、噴霧乾燥および超臨海液体からなる群から選択される手段により製造できる。乾燥粉末の空気力学的平均粒子サイズは、投与のために至適化されうる、例えば該粉末を空気流中で自由に浮遊して、暴露される粘膜の細胞膜に定着および付着できるようにする。気道投与のために、乾燥粉末の空気力学的平均粒子サイズは、通常約0.01〜約50μm、好ましくは約0.1〜約30μm、さらに好ましくは約0.1〜約10μmの直径であるのが望ましい。肺投与のために、肺胞中への送達を考慮して約3μmまたは3μm以下の空気力学的平均粒子サイズを有するそのような粒子を製造するのが好ましいが、本発明はこれに限定されない。該粉末を、吸入または吸気することが出来る。それらは、計量してない量または計量された量を分配する手段を含むあらゆる種類の「吐出(puff)」容器により分配され得る。
【0054】
本発明の実施形態に関する組成物は、エアゾール系、例えばエアゾールスプレーカンと関連させることができる。エアゾール系には、例えばその中に含まれたプロペラントを含む容器が含まれる。該プロペラントは、活性成分CGPおよび従来の添加剤、例えばラクトースを含む。プロペラントの処方は、エアゾール系の拍出(output)特性、例えば粒子分布、送達速度、粘度等を決定する。かかるエアゾール系は、本開示を参照して、当業者には既知の方法を用いて製造され得る。
【0055】
本発明の実施形態に関する組成物はまた、水溶液/懸濁液であってよく、これは鼻腔投与または吸入のために、例えば直接的な鼻洗浄、液体またはスプレーに適切である。該溶液は、サイズ範囲が1-10μmの非常に低分子粒子へと霧化される。霧化した溶液内で細かく分配されたエアゾールを吸入できる。エアゾール吸入剤に関する詳細な情報は、例えば薬局方、例えば日本薬局方、米国薬局方等から入手でき、これは出典明示により明細書の一部として組み入れる。該水溶液/懸濁液を、手動操作の元で、例えばスクイーズボトル (squeezable bottle)またはプランジャー等にて噴霧するか、または加圧容器内で存在し得る。
【0056】
本発明の実施形態に関する組成物は、さらに、鼻適用のためのゲルまたはクリームであってもよく、この場合、該成分は上記したものに加えて、所望のレベルに粘度を上げるように好適な安定化物質を有する。かかる安定化物質の例示には、カルボキシメチルセルロースナトリウムガム(CMCガム)、グアーガム、キサンタンガム等が挙げられるが、これに制限するものではない。本発明の実施形態に関する組成物は、植物起源または動物起源の脂肪酸、例えば酪酸をさらに含むことができる。
【0057】
本発明の特定の実施態様において、該組成物は、約1-5%(w/w)CGP;1以上の許容し得る湿潤剤、例えばグリセロール、ソルビトールおよび/または類似物;1以上の許容し得る静菌薬/制真菌剤、例えばメチルパラベン、グレープフルーツシード抽出物など;1以上の風味剤または芳香物質、例えばバニラ、ユーカリなど、および精製済の滅菌水を含む水溶液/懸濁液である。かかる組成物は、直接的な鼻洗浄液または経鼻または経口吸入により呼吸器系に用いられる。
【0058】
本発明の別の特定の実施形態において、該組成物は、約6-10% (w/w) CGP;1以上の許容し得る湿潤剤、例えばグリセロール、ソルビトールおよび/または類似物;1以上の許容し得る静菌薬/制真菌剤、例えばメチルパラベン、グレープフルーツシード抽出物など;1以上の風味剤または芳香物質、例えばバニラ、ユーカリなど;精製済の滅菌水;安定化剤または増粘剤;および接着分子を含む水溶液/懸濁液である。かかる組成物は点鼻液として鼻腔に適用される。
【0059】
別の態様において、本発明は、被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するための装置を提供する。該装置は、有効量のグリセロリン酸カルシウム、および有効量のグリセロリン酸カルシウムを被験対象の呼吸器系に投与するための手段を含む。かかる装置は、該装置が呼吸器系へのグリセロリン酸カルシウムの投与を促進するためのものである限り、いずれの形態であってもよいと理解される。呼吸器系に投与するための手段は、肺に投与するための手段、経気道投与のための手段、経気道吸収のための手段および経鼻吸収のための手段からなる群から選択される手段を含む。
【0060】
気道に投与するための手段の例示には、吸入器、人工呼吸器、トランスピレーター、アトマイザー(例えば、噴出液/ミストを、圧搾ビンまたは加圧容器などの容器から適用する手段)、噴霧器、エアーマスク、吸入器、および直接的な物理的または機械的適用のための手段が挙げられるが、これらに制限するものではない。特定の実施態様において、気道に投与するための手段は、定量噴射式吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、ネビュライザー、直接的に鼻を洗浄する手段、綿棒等である。
【0061】
肺に投与するための手段の例示には、吸入器および気管支鏡、オリンパス株式会社から購入できるそれらの気管支鏡系が挙げられるが、これらに制限するものではない。
【実施例1】
【0062】
実施例1
感作されたBrown-Norwayラットにおけるグリセロリン酸カルシウムの有効性
喘息の動物モデルを使用して、喘息に対するCGPの有効性を示すことができる。気道過敏反応性 (AHR)のBrown-Norway(BN)ラットモデルが、ヒトアレルギー性喘息と類似した特徴、例えばアレルゲン攻撃後の初期および後期の反応およびアレルギー感作に対するIgE応答の発生を有することが判った[Haczku et al.、Immunology. 85(4):598-603 (1995)]。かかるBN AHRラットを、上記したようなEur J. Pharmacol. 7; 293(4):401-12 (1995) または Haczku et al.(1995)に記載した方法と同様の方法に従って、感作およびオボアルブミン(OVA)への暴露により作出できた。CGPを、OVAにより刺激する前または後のBN AHR ラットに投与できる。気道反応性を、CGP投与前または後に測定できる。
【0063】
Brown Norwayラット(8-10 週齢;体重:150-300 g)を生育し、実験動物管理公認協会(「AAALAC」)により確立された基準/ガイドラインに沿って維持した。これらのラットを、感作のために頚部皮下注射により、発熱物質を含まない生理食塩水(1ml)中水酸化アルミニウム(4 mg)およびオボアルブミン(OVA; Sigma、grade V) (1 mg)を投与して感作した。加熱により不活性化した3 x 109の細菌を含有するBordetella pertussis ワクチンを、アジュバントとして腹腔内注射に使用した。コントロールとして、オボアルブミンを含まない上記した同じ溶液を腹腔内注射し、こうしてネガティブコントトロールを提供した。感作の約10-15日後に、気道刺激を、ネビュライザーを用いてエアゾール化した5-10%のOVAを用いて5-10分間、該ラットを免疫攻撃することにより誘導した。エアゾール暴露は、10 mlのポンプ用量で60ストローク/分にて設定した小動物用人工呼吸器により供給された空気流により暴露チャンバー中へとポンプ圧送されるエアゾールミストを発生させるネビュライザーと連結させたプレキシガラスチャンバー内に該ラットを置くことにより達成され得る。
【0064】
気道刺激が誘導される前または後のいずれかで、CGPを、経鼻吸入(エアゾールまたは粉末を用いて)によるか、または挿管(液体、エアゾール、吸入器)により該ラットに投与できる。
【0065】
該ラットの気道反応性を測定できる。麻酔した、気管切開した、人工呼吸器を付けたラットを、その空気流、経肺動脈圧および血圧について追跡した。肺耐性は、既知の方法、例えばソフトウェアプログラム(LabView、National Instruments、Austin、TX)を用いて同時に計算される。気管支肺胞洗浄 (BAL)の液体を回収した。BALを、リン酸塩緩衝生理食塩水(5 ml) (PBS; 137 mM NaCl、10 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)、2.7 mM KCl)を用いて4回行った。BAL液体中の細胞全数は、赤血球計を用いて決定でき、BAL液体中の好酸球%は示差細胞計測により決定できる。
【0066】
OVA接種により、気道内で主に好酸球からなる炎症細胞の浸潤において統計的に有意な増加が誘起される。OVA接種への応答においてBAL液体中の好酸球の増加を抑制するCGPの能力を測定する。CGPの有効性を、好適なコントロール製剤を用いて、様々な用量、様々な製剤、様々なpH等にて検討することができる。
【実施例2】
【0067】
実施例2
アレルギー性鼻炎動物モデルにおけるグリセロリン酸カルシウムの有効性
鼻炎動物モデルを用いて、鼻炎に対するCGPの有効性を立証することができる。方法は、鼻炎の動物モデルを作成するために知られている。例えば、アレルギー性鼻炎のマウスモデルを、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)(Kim et al.、Otolaryngol Head Neck Surg. 2007 May;136(5):720-5)を用いるマウスの局所感作により作成できる;および鼻炎モルモットモデルを、マツ花粉抽出物の点滴注入により両鼻腔内の感作により作成できる(Mizutani et al.、Jpn J Pharmacol. 2001 Jun;86(2):170-82)。
【0068】
CGPを、所望の手段、例えば吸入またはスプレーを介して鼻炎の動物モデルに投与できる。CGPの有効性を評価するために、動物モデルのBAL液体における、鼻炎の兆候、鼻粘膜好酸球増多、血清全IgE、サイトカイン、および好酸球増多を、CGP投与の前または後に測定した。
【実施例3】
【0069】
実施例3
呼吸器系の症状を有するヒト被験対象へのグリセロリン酸カルシウムの適用
呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するためのグリセロリン酸カルシウムの有効性に関する調査を、ヒトの身体へとさらに広げた。
【0070】
CGPを、数回繰り返して、レベル(0.5重量%〜7.5重量%)を変えた甘味/湿潤化成分(ソルビトール、グリセリン)、好適な食品/薬品等級の静真菌剤および静真菌剤(メチルパラベンおよび塩化ベンザルコニウム)、ならびにある種の若干の風味剤(ペパーミント、スペアミントおよびオレンジ)と共に、濃度を変えた洗浄液またはスプレー製品のサンプル中に導入した。
【0071】
研究室/自宅試験のための第一のヒト被験対象は、一般的な健康状態が良好な77齢の老人であった。該被験対象は、幼児喘息の病歴を持っており、まれに中年期に発作を起こすことを除いて現在は症状として表れておらず、片方の鼻孔を〜60%遮断する鼻中隔彎曲を数年前に起こしたことが全てである。該被験対象は、現在は症状として表れていないがブタクサ、ハウスダスト、ウマの毛等に対してアレルギーの小児病歴を持つ。該被験対象は、成人時に数十年間、鼻漏(PND)、鼻詰まり(粘液、鼻中隔)を経験していた。該被験対象は、季節性インフルエンザまたは風邪の後に数週間に及ぶ咳、また時には数ヶ月継続する咳を経験していた。該被験対象は、対象が気管支炎に属する呼吸器系の病気後でない場合であっても、PNDに由来する慢性の咳払いおよび慢性の咳を経験していた。この事は、時には、被験対象が、声枯れを起こす粘液の吐き出しや反射的な嚥下等、どこかで咽喉を洗浄するために、グループから抜けなければならないという不都合を生じる。該被験対象は、鼻閉塞のために幼児期はほぼ例外なく口呼吸を行っていた。該被験対象は、肺活量等の点で「息切れ」は起こさないが、能動的な意識的関与を必要とする時折若干問題のある鼻からの呼吸のために、成人時には鼻と口の双方から呼吸を行った。
【0072】
強制的鼻洗浄実験
被験対象は、約2週間、1日に1回強制的に鼻洗浄を行った。この強制的鼻洗浄を、皮膚上でかつ通常シャワーにて鼻腔内で行った。様々な濃度、例えば約7.5%、3.75%、2.5%、2%、1.5重量%の乾燥CGPにてCGPの水溶液または懸濁液を、内部ステムフィードを有する密閉型プラスチックビンを用いて、片方の鼻に流し込み、そしてもう一方の鼻から排出させた。この方法を各鼻孔側面について繰り返した。いくつかの製品は経鼻的に嚥下され、また鼻孔あたりおよそ2オンスの液体であった。
【0073】
洗浄後の約0-10分の間に、被験対象は、鼻道の開始部分から終結部分までの相当な排膿(drainage)、相当な咳払いおよび相当な鼻道内の湿りを経験した。被験対象は、いくらかの嚥下物をはき出した。洗浄後の約10-20分の間に、被験対象は、90%低下された排膿、鼻道の開放および乾燥ならびに楽な呼吸を経験した。洗浄後の約20-60分以内に、被験対象は、鼻道が開らいており、乾燥しており、声がよりはっきりとし、また咳払いは前の状態と比較して約90%低下したと感じた。洗浄後の約1時間から12/24時間までの間に、被験対象は、鼻水および咳がなく、気道が開いた楽な呼吸を経験した。該対象は、能動的な意識的関与を必要とせずに自然に口と鼻から呼吸できた。該対象の下気道経路は完全に開いていた。
【0074】
スプレー/ミスト実験
被験対象は、スプレーまたはミストにて対象の鼻孔中にCGPを適用した。液体成分をミストとして送達するために構成された内部のステムフィードを有する密閉型の小さなプラスチックビンを使用した。通常、一回の適用を朝に行った。各適用は、該生成物を鼻から気道へと吸引するように完全に同時に深呼吸の吸入または吸気と共に、左右を変えて鼻孔あたり2回のスプレーにより行う。また、該スプレーは、時には1または2回のスプレー/適用にて、口を通って咽喉まで直接的に用いられる。平均的なスプレー送達は、スクイーズあたり約200 mgのCGP製剤を含んだ。該製剤は、乾燥CGPの約2%〜約3.75重量%を含有した。
【0075】
該被験対象は、予備的な水圧およびそれからの回復は全くないが、洗浄液の効果と主に同じ効果をスプレー式点鼻薬により経験した。CGPは、適用してほぼ即時的にその緩和効果を発揮し、その効果は適用後約4-8時間継続した。スプレー/ミストの適用を、時には午後、または必要に応じて反復した。睡眠時の鼻孔あたりに1回スプレーすることにより、より良好な夜間の呼吸をもたらすことが認められた。スプレー/ミストの適用は、より良好であって、操作が容易であり、持ち運び易く、また日常の使用により好適である。
【0076】
強制的な鼻洗浄液またはスプレー/ミストいずれかを介する呼吸器系へのCGPの投与後に、被験対象は、後鼻漏の約95-98%の低下、立位(upright)および活動時、または臥位の被験対象にとっての日々の不快感、咳の完全な停止、拘束がないか、または最悪でも最小の拘束状態にて対象の鼻からの呼吸拡張を経験した。
【0077】
呼吸器系と関連のある兆候を予防または制御するためのCGPの通常の適用の他に、被験対象は、気道/上気道管の症状の出現中に兆候を緩和するためにCGPを使用した。初期の製品治験中のある朝に、被験対象が約24時間CGPの使用を中断した後、被験対象は、気道/上気道と関連のする次の兆候を示すことが明らかとなった:鼻の閉塞、後鼻漏による咽喉刺激、嗄声および咳払い、かすかな呼吸音、ならびにわずかな息切れ。該兆候は喘息発作の状態には達しなかったが、被験対象は有意な不快症状を経験した。およそ10:45A.M.に、被験対象は、各鼻孔において鼻の吸入により二倍用量のNasoCell(1.75重量% CGP)を適用した。およそ11:30AMにて、被験対象の兆候がより改善された。次いで、被験対象は、各鼻孔において別の一用量のNasoCellを自己投与した。およそ12:50P.M.に、被験対象の兆候がほぼ完全に消滅したことが判った。被験対象は、昼食中に食事をとったが、呼吸困難を示さなかった。およそ2:30P.M.に、被験対象の兆候は完全に解消された。被験対象の咽喉は、あらゆる閉塞および呼吸音が消失し、気道がひろがった。被験対象の鼻道は再び広がり、声は後鼻漏症状の特徴的な早朝の嗄声がなくなった。この被験対象は、数週間の使用後に、さらに低下された使用量が「維持する」ために必要であること、そしてこれには使用量の全て、数日を省くことをふくむことに注目すべきである。
【実施例4】
【0078】
実施例4
喘息を有するヒト被験対象に対してグリセロリン酸カルシウムの適用
この実施例は、ヒト被験対象において喘息を処置または予防するためにグリセロリン酸カルシウムの有効性に関する試験を記述するものである。約2%(w/w)のCGPを含有する実施例3に記載したものと類似したCGP組成物を、この試験に使用した。喘息の病歴を有する44齢の男性である第二のヒト被験対象がこの試験に参加した。
【0079】
被験対象は、約2週間、Advair Diskus (ステロイド)の使用を意図的に停止した。数日間の雨や湿度の高い日により生じる室内環境の「カビ臭さ」により、対象のカビに対するアレルギーは引き起こされた。次に、アレルギーは対象の喘息を引き起こした。被験対象は、数日間わずかな空気流量の低下を感じていたが、日中はアルブテロール吸入器(喘息の救急薬)の使用を控え、夜中のひどい覚醒時にのみ使用した。被験対象は、下記に説明した夜の前に三連夜アルブテロール吸入器を使用しなければならなかった。
【0080】
夜中に、およそ8:30P.M.に、被験対象は喘息発作の開始の前兆を示す呼吸困難および喘鳴を経験した。およそ8:35 P.M.に、被験対象は、CGP組成物のスプレーを各鼻孔に2回受容し、CGP組成物を吸入のために対象の口に1回スプレーした。平均的なスプレー送達は約200 mgの組成物を含有した。およそ8:40P.M.に、被験対象は1回の経口吸入を繰り返し、該被験対象は、アルブテロール吸入器を使用する緊急の必要性を感じない程度のおだやかな緩和を経験した。およそ8:52 PMには、該被験対象は、該組成物の2回の追加経口吸入を行った。およそ8:55 PMに、該被験対象は対象の喘鳴および胸苦しさが約80%またはそれ以上緩和されたことを認めた。すすっていた鼻液は全て戻った。およそ8:58PMに、被験対象は、徐々に改善したと感じ、呼吸時の苦労がないことを経験した。およそ9:05 PMに、被験対象は、気分は良かったが、完全な緩和を望み、また空気流量の増加を望んだ。被験対象は、各鼻孔中に1回該組成物を吸入した;完全な呼吸に至るまで一旦中断し、次いでおよそ9:07PMに該組成物の深い経口吸入を2回行った。およそ9:27P.M.に、被験対象は、爽快な気分であり、実質的に正常な状態に戻ったと感じた。およそ9:37P.M.に被験対象は好転したと感じた。およそ10:16 P.M.に、被験対象は完全に(100%)回復したと感じた。およそ11:00P.M.に、被験対象は、良好で不安を感じずに、就寝した。被験対象は、息切れによる覚醒を経験せず、夜中、吸入器を使用しなかった。およそ次の日の8:00AMに、被験対象は、若干の胸苦しさを訴えた。被験対象が通常行うような一日の開始にアルブテロールの2回の吐出(puff)を用いる代わりに、被験対象はCGP組成物を使用した。被験対象は、該組成物の2回のスプレーを各鼻孔内に適用し、吸入のために被験対象の口に該組成物の2回のスプレーを適用した。被験対象は症状の緩和を感じ、アルブテロール吸入器を使用する必要がないと感じた。
【0081】
当業者には理解されるであろうが、変更は、本願発明の広範な概念から逸脱せずに上記した実施形態に対して為され得る。従って、本発明は、特許請求の範囲に規定した本発明の精神および範囲内における修飾を包含することを意図しており、開示した特定の実施形態に限定されるものではないと理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のグリセロリン酸カルシウムを被験対象の呼吸器系に投与することを含む被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防する方法であって、ここで該グリセロリン酸カルシウムが、経口または経鼻投与のために製剤された組成物において被験対象の呼吸器系に投与される、方法。
【請求項2】
該呼吸器系の疾患、障害および/または症状は、呼吸気道の閉塞性または拘束性症状に関連がある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該呼吸器系の疾患、障害および/または症状が、呼吸気道炎症性疾患、呼吸気道狭窄または鼻腔炎症性疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
呼吸器系の疾患、障害および/または症状が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、反応性気道疾患(RADS)、鼻炎、気管支炎、細気管支炎、狭窄、副鼻腔炎、扁桃(腺)炎、または喉頭炎、後鼻漏(PND)およびその関連合併症、炎症性脱顆粒および非脱顆粒マスト細胞活性、杯細胞から粘液分泌がおこるあらゆる刺激、呼吸困難、拘束、閉塞;気道狭窄または封鎖、または通気道との粘液干渉;睡眠時無呼吸、いびき、空中または空中以外のアレルゲンまたは刺激物質に対する炎症性または非炎症性応答;身体のあらゆる領域における問題により生じる鼻または鼻以外の気道炎症または刺激、呼吸器系に対する物理的損傷、空中のまたは季節性アレルゲンまたは刺激物質により生じる呼吸疾患、障害および/または症状、からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項5】
該喘息が、気管支喘息、幼児性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性喘息、ステロイド難治性喘息、非アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、アスピリン喘息、心臓喘息、運動誘発性喘息および感染性喘息からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
該鼻炎が、アレルギー性鼻炎、花粉症、急性鼻炎、慢性鼻炎、異常肥大性鼻炎、および鼻中隔湾曲症からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
該物理的損傷が、鼻血、外科的治療または外傷である、請求項4記載の方法。
【請求項8】
該グリセロリン酸カルシウムが、粉末、ゲル、ミクロスフェア、または懸濁液の製剤で投与され、また該製剤は、被験対象の気道へのグリセロリン酸カルシウムの徐放性を提供するもので、ここで該徐放性は、呼吸器系の局所環境におけるグリセロリン酸カルシウムの量が、溶解可能な量より高いことに起因する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該グリセロリン酸カルシウムが、被験対象の気道への改善されたグリセロリン酸カルシウムの吸収を提供する製剤で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該グリセロリン酸カルシウムが、点鼻薬、スプレー式点鼻薬、鼻洗浄液、即時溶解性(quick-dissolving)錠剤、吸入用粉末、経口吸入用溶液または懸濁液、シロップ、機械的間欠的液体 パルサー、吸入器、人工呼吸器、トランスピレーター、アトマイザー、噴霧器、エアーマスク、直接的な物理的または機械的適用のための手段、または吸入器により被験対象の呼吸器系に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
該グリセロリン酸カルシウムが、定量噴射式吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、ネビュライザー、または綿棒を用いて被験対象の呼吸器系に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
該呼吸器系の疾患、障害および/または症状のために1以上の医薬品を、被験対象の呼吸器系に投与することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
該1以上の医薬品が、β-2アゴニスト、αアゴニスト、気管支拡張剤、グルココルチコイド、ロイコトリエン修飾物質、マスト細胞安定剤、抗ムスカリン薬/抗コリン作動薬、メチルキサンチン、抗ヒスタミン、オマリツマブ、メトトキサレート、チアネピチン、アルブテロール、およびクロモリンからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該鎮痛剤を、被験対象の呼吸器系に投与することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該呼吸器系の該疾患、障害および/または症状が、風邪、花粉、または空中のまたは季節性アレルゲンまたは刺激物質により生じる呼吸疾患、障害および/または症状である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
該医薬組成物が、経鼻投与用に製剤され、かつ経鼻的に被験対象に投与される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
該鎮痛剤が、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン、ナプロキセン、およびカプサイシンからなる群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
該被験対象が、小児患者、高齢患者、妊婦、および呼吸器系の疾患、障害および/または症状のために緩和薬剤および/または予防薬剤を頻繁に必要とする患者からなる群から選択されるヒト被験対象である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するために、有効量のグリセロリン酸カルシウムを含む組成物、ここで該組成物は、点鼻薬、スプレー式点鼻薬、鼻洗浄液、即時溶解性錠剤、吸入用粉末、経口吸入用溶液または懸濁液、シロップ、機械的間欠的液体パルサー、吸入器、人工呼吸器、トランスピレーター、アトマイザー、噴霧器、エアーマスク、吸入器、ネビュライザー、または直接的な物理的または機械的適用のための手段により、被験対象の呼吸器系に経口または経鼻投与するために製剤される。
【請求項20】
下記からなる群から選択される製剤を含む、請求項19記載の組成物:
(a) 粉末、ゲル、ミクロスフェア、または懸濁液の製剤;
(b) 該組成物を、長時間、気道組織に付着させることができる接着分子または物質を含む製剤;および
(c) 接着分子または物質を含む粉末、ゲル、ミクロスフェア、または懸濁液の製剤。
【請求項21】
該組成物が、気道組織へのグリセロリン酸カルシウムの吸収を改善する吸収エンハンサーを含む、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
該有効量のグリセロリン酸カルシウムが、該組成物中に約0.05%〜10%(w/w)である、請求項19記載の組成物。
【請求項23】
定量噴射式吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)または綿棒による投与のために製剤される、請求項19記載の組成物。
【請求項24】
pHが約4.5〜約10.0を有する、請求項19記載の組成物。
【請求項25】
pHが約4.5〜約6.0を有する、請求項19記載の組成物。
【請求項26】
β-2アゴニスト、αアゴニスト、気管支拡張剤、グルココルチコイド、ロイコトリエン修飾物質、マスト細胞安定剤、抗ムスカリン薬/抗コリン作動薬、メチルキサンチン、抗ヒスタミン、オマリツマブ、メトトキサレート、チアネピチン、アルブテロール、クロモリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリンおよびナプロキセンからなる群から選択される1以上の医薬品をさらに含む、請求項19記載の組成物。
【請求項27】
被験対象における呼吸器系の疾患、障害および/または症状を処置または予防するための装置、ここで該装置は、有効量のグリセロリン酸カルシウム、および該有効量のグリセロリン酸カルシウムを被験対象の呼吸器系に投与するための手段を含んでいる。
【請求項28】
該呼吸器系への投与手段が、肺への投与のための手段、経気道投与のための手段、経気道吸収のための手段および経鼻吸収のための手段からなる群から選択される手段を含む、請求項27記載の装置。
【請求項29】
該気道への投与のための手段が、吸入器、人工呼吸器、トランスピレーター、アトマイザー、噴霧器、エアーマスクおよび吸気器、ならびに直接的な物理的または機械的適用のための手段からなる群から選択される手段を含む、請求項27記載の装置。
【請求項30】
気道への投与のための手段が、定量噴射式吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、ネビュライザー、鼻洗液用途のための手段、および綿棒からなる群から選択される手段を含む、請求項27に記載の装置。

【公表番号】特表2010−538008(P2010−538008A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523128(P2010−523128)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/074589
【国際公開番号】WO2009/029705
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510056216)プレリーフ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】PRELIEF INC.
【Fターム(参考)】