説明

品質劣化検知装置、有線無線判定装置

【課題】有線回線と無線回線が混在し、一時的な品質劣化が頻繁に生じる可能性のあるネットワークにおいて、その品質劣化を検知することのできる手段を得る。
【解決手段】ネットワークの品質劣化を検知する装置であって、ネットワークを流れるパケットを取得するパケット取得部110と、パケット取得部110が取得したパケットに基づきネットワークの品質指標を取得する品質取得部120と、品質指標に基づきネットワークの品質劣化を検知する品質劣化検知部140と、を備え、品質劣化検知部140は、パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットであれば、品質指標が低下した場合にネットワークの品質が劣化したものと判定し、パケットが無線回線を経由して取得されたパケットであれば、品質指標が非周期的に低下した場合にネットワークの品質が劣化したものと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークの品質劣化を検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、『ネットワークアプリケーションで障害が発生した場合に、品質障害の原因が、サーバなのかネットワークなのかを正確に切り分けること。』を目的とする技術として、『クライアント111〜113とアプリケーションサーバ101とでやり取りされるパケットデータをネットワークアプリケーション障害原因切り分け装置103で常時取得し、この取得したパケットデータの内容を事前に定義した情報に基づきネットワーク処理時間とサーバ処理時間とを判断し、切り分けを行った情報を蓄積しておき、一定間隔で監視センタ131へ送信するもの。』というものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、『ネットワーク資源を有効利用しながらネットワーク上で提供される通信サービスの品質の劣化を防止するサービス品質管理装置を提供する。』ことを目的とする技術として、『管理対象となるネットワーク内で提供されるサービス品質管理装置であって、通信サービスの各セッションに関する情報を含むサービス情報及び上記ネットワーク構成情報を取得する情報取得手段と、当該各セッションのトラフィック量をそれぞれ生成する情報生成手段と、上記各情報に基づいて当該各セッションのパケット経路をそれぞれ決定する経路決定手段と、当該各セッションのトラフィック量と当該各セッションのパケット経路とに基づいて、各リンクのトラフィック量及び負荷をそれぞれ算出する算出手段と、この算出された各リンクの負荷に基づいて各セッションで実現されるサービス品質をそれぞれ判定する品質判定手段とを備える。』というものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−65619号公報(要約)
【特許文献2】特開2007−266890号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有線回線と無線回線が混在したネットワークでは、無線回線の回線品質揺らぎに起因して、パケットロス、遅延などの品質劣化が頻繁に発生する可能性がある。これらの品質劣化は、必ずしもネットワーク障害であるわけではなく、いわば定常的に発生する周期的な現象であると考えることもできる。
上記のように、本来であれば障害であるとすべきでない現象を、誤ってネットワーク障害として誤検知してしまうことは、False Positiveと呼ばれている。
【0006】
この点に関し、上記特許文献1に記載の技術は、ネットワークアプリケーションの障害検知を目的としたものであり、正常時と障害時の中間的な状態である品質劣化状態を検知することは、想定されていない。
同技術を用いた場合、ネットワーク品質が劣化して所定閾値を下回ると、「障害が発生した」と誤検知されることになると考えられる。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の技術では、通信セッションのトラフィック量とパケット経路に基づいて、ネットワークサービスの品質を監視するものである。そのため、監視のリアルタイム性の観点で課題がある。
例えば、上記特許文献2に記載の技術では、一時的に生じたパケットロスの増加などの品質劣化をリアルタイムに検出することが難しい。そのため、ネットワークサービス品質をユーザーに対して保証するサービスには向いていない。
【0008】
そのため、有線回線と無線回線が混在し、一時的な品質劣化が頻繁に生じる可能性のあるネットワークにおいて、その品質劣化を検知することのできる手段が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る品質劣化検知装置は、ネットワークの品質劣化を検知する装置であって、前記ネットワークを流れるパケットを取得するパケット取得部と、前記パケット取得部が取得したパケットに基づき前記ネットワークの品質指標を取得する品質取得部と、前記品質指標に基づき前記ネットワークの品質劣化を検知する品質劣化検知部と、を備え、前記品質劣化検知部は、前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットであれば、前記品質指標が低下した場合に前記ネットワークの品質が劣化したものと判定し、前記パケットが無線回線を経由して取得されたパケットであれば、前記品質指標が非周期的に低下した場合に前記ネットワークの品質が劣化したものと判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る品質劣化検知装置は、パケットが有線回線のみを経由してきたのか、それとも無線回線を経由してきたのかによって、品質劣化の判定基準を変更する。
これにより、有線回線のみを経由してきたパケットについては確実に品質劣化を検知することができるとともに、無線回線を経由してきたパケットについては、誤検知の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係る品質劣化検知装置100の機能ブロック図である。
【図2】正常時のネットワーク品質指標の経時変化を示すグラフである。
【図3】パケットが経由してきたネットワークが有線回線のみで構成されている場合における、異常発生時のネットワーク品質指標の経時変化を示すグラフである。
【図4】パケットが無線回線を経由してきた場合における、異常発生時のネットワーク品質指標の経時変化を示すグラフである。
【図5】有線無線判定部130が行うスペクトル解析の結果を符号化する例を示す図である。
【図6】学習器131の構成例を示す図である。
【図7】学習器131の構成例を示す図である。
【図8】実施の形態4に係る有線無線判定装置200の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る品質劣化検知装置100の機能ブロック図である。品質劣化検知装置100は、ネットワークインタフェース部110、品質情報取得部120、有線無線判定部130、品質劣化検知部140を備える。また、有線無線判定部130は、学習器131を備える。
【0013】
ネットワークインタフェース部110は、ネットワークに接続され、当該ネットワークに流れているパケットを取得して、品質情報取得部120に出力する。必ずしもネットワークを流れる全てのパケットを取得する必要はなく、ネットワークの品質劣化を検知するために必要なだけのパケットのみ取得してもよい。
【0014】
品質情報取得部120は、ネットワークインタフェース部110から取得するパケットを、例えばセッション単位など適当な単位で管理し、そのパケットを介してネットワークの品質情報を取得して、有線無線判定部130と品質劣化検知部140に出力する。
【0015】
ネットワークの品質情報は、RTCP(RTP Control Protocol:RFC1889)や、RTCP−XR(RTP Control Protocol Extended Reports:RFC3611)などのプロトコルに準じて実装されたパケットを監視することにより得られる。その他の適当な手法を用いてもよい。
【0016】
上記の品質情報として、例えば以下のような品質指標を含む情報が考えられる。下記(1)〜(4)については、所定時間間隔またはセッション内の通算値を用いる。
【0017】
(1)パケットロス数
(2)パケットロス率
(3)パケット遅延
(4)ジッター
(5)MOS(Mean Opinion Score)のような品質推定値
(6)その他のQoS/QoE(Quality of Service/Quality of Experience)を計測するための指標値
【0018】
有線無線判定部130は、品質情報取得部120より取得した品質情報が表す当該ネットワークの品質指標の変動パターンなどを用いて、当該パケットが有線回線のみを経由して取得されたものであるのか、それとも無線回線を経由して取得されたものであるのかを判定する。判定手法は、後述の図2〜図4を用いて説明する。
有線無線判定部130は、上述の判定結果と、後述の図2〜図4で説明するスペクトル解析結果を、品質劣化検知部140と学習器131に出力する。
【0019】
学習器131は、後述の図2〜図4で説明する手法を用いて、ネットワークの品質指標の経時変化を学習する。
【0020】
品質劣化検知部140は、品質情報取得部120より取得した品質情報と、有線無線判定部130より取得した上述の判定結果およびスペクトル解析結果を用いて、当該ネットワークの品質劣化を検知する。検知手法は、後述の図2〜図4を用いて説明する。
【0021】
品質情報取得部120、有線無線判定部130、品質劣化検知部140、学習器131は、これらの機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成してもよいし、マイコンやCPU(Central Processor Unit)などの演算装置とその動作を規定するソフトウェアを用いて構成してもよい。また、メモリなどの必要な記憶装置を適宜用いて構成してもよい。
【0022】
本実施の形態1における「パケット取得部」は、ネットワークインタフェース部110が相当する。ネットワークを流れるパケットを即座に取得できるのであれば、ネットワークに直接接続する以外の手法を用いて、パケットを取得してもよい。
【0023】
また、「第1学習器」「第2学習器」は、学習器131が相当する。本実施の形態1では、回線種別と障害発生の有無を単一の学習器で併せて判定する例を説明するが、これらの判定は個別に行ってもよい。
【0024】
以上、品質劣化検知装置100の構成について説明した。
次に、品質劣化検知装置100の各部の動作について説明する。
【0025】
図2は、正常時のネットワーク品質指標の経時変化を示すグラフである。図2(a)上図は有線回線、図2(b)は無線回線についてそれぞれ図示している。
【0026】
パケットが経由してきたネットワークが有線回線のみで構成されている場合、ネットワークに障害が発生していない正常時の品質指標は、図2(a)上図に示すように、安定している。この波形を周波数スペクトル解析した例が、図2(a)下図である。ここでは、特定周波数のスペクトルのみが大きく現れる例を示した。
【0027】
パケットが経由してきたネットワークが無線回線のみで構成されている場合、または無線回線を少なくとも一部に含む場合、正常時の品質指標は、図2(b)上図に示すように、大きく変動する。この波形を周波数スペクトル解析した例が、図2(b)下図である。ここでは、複数の周波数のスペクトルが大きく現れる例を示した。
【0028】
有線無線判定部130は、ネットワークが正常動作しているときの品質指標の経時変化を品質情報取得部120より取得し、これを上述のように周波数スペクトル解析して、学習器131に学習させておく。必ずしも実パケットを用いる必要はなく、シミュレーションデータなどを用いて擬似的に学習させてもよい。
なお、パケットが経由してきたネットワークの少なくとも一部が無線回線により構成されている場合の学習手法については、以下のような例が考えられる。有線回線と無線回線の混在の程度についても同様の手法で学習することができる。
【0029】
(1)有線回線と無線回線が混在している場合の品質指標の経時変化波形そのものを、混在パターン毎に学習させる。
(2)有線回線のみで構成されている場合と、無線回線のみで構成されている場合とのそれぞれの経時変化波形を、適当な係数を乗じた上で足し合わせ、これにより有線回線と無線回線が混在している場合の経時変化波形を模擬する。
(3)有線回線のみで構成されている場合と、無線回線のみで構成されている場合とのそれぞれの学習結果を、適当な係数を乗じた上で足し合わせ、これにより有線回線と無線回線が混在している場合の学習結果を模擬する。
【0030】
以上、正常時の品質指標の経時変化を学習しておくことについて説明した。
次に、異常時についても同様に学習しておくことについて、異常時の波形やスペクトルを例示しながら説明する。
【0031】
図3は、パケットが経由してきたネットワークが有線回線のみで構成されている場合における、異常発生時のネットワーク品質指標の経時変化を示すグラフである。図3(a)は周期的な障害発生時、図3(b)は一時的な障害発生時のグラフを示す。
【0032】
図3(a)に示す周期的な障害発生時は、強い振幅を有するスペクトラムが、正常時とは異なる周波数帯に現れる。これをもって、周期的な障害が発生したことを検知することができる。
有線回線のみのネットワークは、図2(a)に示すようにそもそも品質指標が安定しているため、図3(a)のような周期的な品質劣化が発生した時は、例えば機器故障などの障害が生じている可能性がある。
【0033】
図3(b)に示す一時的な障害発生時も、強い振幅を有するスペクトラムが、正常時とは異なる周波数帯に現れる。これをもって、一時的な障害が発生したことを検知することができる。
図3(b)のような一時的な品質劣化が発生した時は、明らかに重大な品質劣化が発生していると言える。
【0034】
図4は、パケットが経由してきたネットワークが無線回線のみで構成されている場合、または無線回線が少なくとも一部に含まれる場合における、異常発生時のネットワーク品質指標の経時変化を示すグラフである。図4(a)は周期的な障害発生時、図4(b)は一時的な障害発生時のグラフを示す。
【0035】
図4(a)に示す周期的な障害発生時は、強い振幅を有するスペクトラムが、正常時とは異なる周波数帯に現れる。これをもって、周期的な障害が発生したことを検知することができる。
【0036】
無線回線が少なくとも一部に含まれるネットワークでは、無線回線の回線品質揺らぎに起因して、周期的な品質劣化が発生する場合がある。この原因として、無線回線の周辺環境からの周期的な電波干渉などが考えられる。
このような無線回線の周期的な性能劣化は、通信が完全に途絶えてしまうわけではないため、ユーザーが気付きにくい傾向がある。また、無線回線ではこのような周期的な性能劣化は生じることが通常であるため、これが生じる度に障害発生であると判定してしまうと、いわゆる誤検知(False Positive)をしてしまうことになる。
【0037】
図4(b)に示す一時的な障害発生時も、強い振幅を有するスペクトラムが、正常時とは異なる周波数帯に現れる。これをもって、一時的な障害が発生したことを検知することができる。
【0038】
図4(b)のような障害が発生する原因として、例えば無線回線の周辺環境などからの長時間に及ぶ電波干渉などが考えられる。
図4(b)のような一時的な品質劣化が発生した時は、通信が途絶えてしまうため、周期的な障害発生時とは異なり、ユーザーは障害に気づき易い。また、この場合は障害発生であると判定してよいと言える。
【0039】
有線無線判定部130は、図3〜図4で説明したような異常時の品質指標の経時変化を品質情報取得部120より取得し、これを周波数スペクトル解析して、学習器131に学習させておく。正常時と同様に、必ずしも実パケットを用いる必要はなく、シミュレーションデータなどを用いて擬似的に学習させてもよい。
なお、パケットが経由してきたネットワークの少なくとも一部が無線回線により構成されている場合の学習手法、および有線回線と無線回線の混在の程度については、正常時と同様の手法を用いることができる。
【0040】
以上、有線回線と無線回線のそれぞれについて、正常時と異常時の品質指標の経時変化を学習器131にあらかじめ学習させておくことを説明した。
次に、品質劣化を検知するための動作について、以下のステップ(1)〜(8)で説明する。
【0041】
(1)学習器131は、上述のような学習をあらかじめ行っておく。
(2)ネットワークインタフェース部110は、接続しているネットワークからパケットを適当な単位で取得し、品質情報取得部120に出力する。
【0042】
(3)品質情報取得部120は、ネットワークインタフェース部110から取得したパケットの品質情報を取得し、有線無線判定部130、品質劣化検知部140に出力する。
【0043】
(4)有線無線判定部130は、品質情報取得部120から取得した品質情報をスペクトル解析し、その結果を学習器131に出力する。
【0044】
(5)学習器131は、有線無線判定部130から受け取ったスペクトル解析の結果を、上述のようなあらかじめ学習しておいた学習結果と比較する。
学習器131は、その比較結果に基づき、当該パケットが有線回線のみを経由して取得されたものであるのか、それとも無線回線を経由して取得されたものであるのかを判定し、有線無線判定部130に戻す。また、ネットワークに障害が発生しているか否かを併せて判定し、品質劣化検知部140に判定結果を出力する。
【0045】
(6)有線無線判定部130は、パケットが有線回線のみを経由して取得されたものであるのか、それとも無線回線を経由して取得されたものであるのかの判定結果を、品質劣化検知部140に出力する。
【0046】
(7)品質劣化検知部140は、ネットワークに障害が発生している旨の判定結果を学習器131から受け取った場合、以下の手順にしたがって、ネットワークの品質劣化を検知する。障害が発生していない旨の判定結果を学習器131から受け取った場合は、本ステップは省略する。
【0047】
(7.1)パケットが有線回線のみを経由して取得された場合
品質劣化検知部140は、ネットワークに障害が発生し品質が劣化しているものと判定する。また、必要に応じてその旨を品質劣化検知装置100の外部に出力する。さらには、必要に応じて、品質情報取得部120から品質情報の現在値を取得し、品質指標が実際に低下していることを確認した上で、異常判定を行ってもよい。
【0048】
(7.2)パケットが少なくとも部分的に無線回線を経由して取得された場合
品質劣化検知部140は、図4(a)で説明したような周期的な障害が発生している旨の判定結果を学習器131から受け取った場合は、ネットワーク障害に起因する品質劣化は生じていないと判定する。
また、図4(b)で説明したような一時的な障害が発生している旨の判定結果を学習器131から受け取った場合は、ネットワーク障害に起因する品質劣化が発生しているものと判定する。
また、必要に応じてこれらの判定結果を品質劣化検知装置100の外部に出力する。さらには、必要に応じて、品質情報取得部120から品質情報の現在値を取得し、品質指標が実際に低下していることを確認した上で、異常判定を行ってもよい。
【0049】
(8)品質劣化検知装置100の各部は、以上のステップ(1)〜(7)の動作を、繰り返し実行する。
【0050】
以上、品質劣化検知装置100の動作を説明した。
なお、上記の説明では、学習器131は障害が周期的なものであるか否かを判定することを説明したが、学習器131は障害発生の有無のみを判定するようにしてもよい。この場合、障害が周期的なものであるか否かは、品質劣化検知部140が判定する。
具体的には、以下のようにすることが考えられる。
まず、有線無線判定部130の過去のスペクトル解析結果を適当な記憶装置に蓄積しておく。品質劣化検知部140は、この過去のスペクトル解析結果を照会して、現時点のスペクトルが、障害発生時の周期的なスペクトルと一致するか否かを判定する。
【0051】
以上のように、本実施の形態1に係る品質劣化検知装置100は、取得したパケットが有線回線のみを経由してきたのか、それとも少なくとも部分的に無線回線を経由してきたのかを判定した上で、当該ネットワークの品質劣化を検知する。
そのため、有線回線については確実に品質劣化を検知することができる。また、少なくとも部分的に無線回線を有するネットワークについては、無線回線の品質揺らぎに起因する周期的な品質指標の低下などのようなあらかじめ想定される品質劣化を、ネットワーク障害であると誤認識してしまう(False Positive)可能性を低減することができる。
【0052】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2では、ニューロコンピュータの構成を用いて学習器131を構成した例を説明する。品質劣化検知装置100の構成は、実施の形態1と同様である。
【0053】
図5は、有線無線判定部130が行うスペクトル解析の結果を符号化する例を示す図である。本実施の形態2において、有線無線判定部130は、品質情報取得部120から取得した品質情報をスペクトル解析し、その結果を「0」または「1」のビット値に符号化する。
【0054】
具体的には、スペクトルの振幅について所定の閾値をあらかじめ定めておき、振幅がこの閾値を超えた周波数帯域には値「1」を、閾値を超えていない周波数帯域には値「0」を割り当てる。
これにより、有線無線判定部130は、品質情報のスペクトル解析結果をビット列に符号化する。学習器131は、符号化して得られたビット列を、有線無線判定部130より受け取る。
【0055】
図6は、学習器131の構成例を示す図である。本実施の形態2において、学習器131は、ニューロコンピュータの構成を用いて構成されている。
学習器131は、有線回線/無線回線それぞれについて、正常時および障害発生時のスペクトル解析結果を図5で説明したような「0」または「1」のビット値に符号化したものを、学習データとして受け取る。学習器131は、これを用いて、有線回線/無線回線それぞれについて、正常時および障害発生時のスペクトル解析結果を学習する。
このとき、単に障害が発生しているか否かのみならず、その障害が周期的な障害であるのか、それとも一時的な障害であるのかを区別して、個別に学習器131に学習させておいてもよい。
【0056】
学習器131の学習結果は、各ニューロンの重み係数などの形態で、学習器131内部に蓄積される。
【0057】
学習器131は、判定結果をビット列などの適当な形式で表して出力するように構成しておく。例えば、有線/無線の回線種別を表す1ビットと、正常/異常を表す1ビットとの、合計2ビットを出力する。さらに、異常が周期的なものであるか否かを表す1ビットを加え、合計3ビットを出力するようにしてもよい。その他の適当な出力形式を用いてもよい。
【0058】
以上、学習器131の構成例について説明した。
次に、本実施の形態2における品質劣化検知装置100の動作を説明する。
【0059】
(1)〜(3)
ステップ(1)〜(3)については、実施の形態1で説明した動作と同様である。
【0060】
(4)有線無線判定部130は、品質情報取得部120から取得した品質情報をスペクトル解析し、その結果を図5で説明したようなビット列に符号化して、学習器131に出力する。
【0061】
(5)学習器131は、有線無線判定部130から受け取ったビット列を、上述のようなあらかじめ学習しておいた学習結果と比較する。
学習器131は、その比較結果に基づき、当該パケットが有線回線のみを経由して取得されたものであるのか、それとも無線回線を経由して取得されたものであるのかを判定し、有線無線判定部130に戻す。また、併せてネットワークに障害が発生しているか否かを判定し、品質劣化検知部140に判定結果を出力する。
【0062】
(6)〜(8)
ステップ(6)〜(8)については、実施の形態1で説明した動作と同様である。
【0063】
以上、本実施の形態2では、ニューロコンピュータの構成を用いて、学習器131を構成した例を説明した。
【0064】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3では、サポートベクターマシンの構成を用いて学習器131を構成した例を説明する。品質劣化検知装置100の構成は、実施の形態1と同様である。また、品質劣化検知装置100の動作は、学習器131の構成に係る部分を除いて実施の形態2と同様である。
【0065】
図7は、学習器131の構成例を示す図である。本実施の形態3において、学習器131は、サポートベクターマシンの構成を用いて構成されている。
学習器131は、有線回線/無線回線それぞれについて、正常時および障害発生時のスペクトル解析結果を図5で説明したような「0」または「1」のビット値に符号化したものを、学習データとして受け取る。学習器131は、これを用いて、有線回線/無線回線それぞれについて、正常時および障害発生時のスペクトル解析結果を学習する。
【0066】
学習器131の学習結果は、有線/無線の回線種別、および正常/異常の区別を表す境界線や境界平面などの形態で、学習器131内部に蓄積される。
例えば、学習器131は、学習の進行に伴って、スペクトル解析結果の符号化後のビット列で表される空間を、(1)有線/正常、(2)有線/異常、(3)無線/正常、(4)無線/異常、の4つの領域に分割しておく。
【0067】
学習器131は、有線無線判定部130よりスペクトル解析結果の符号化後データを受け取ると、その符号化後データが、上述の境界線や境界平面で区切られた4つの領域のいずれに属するかを判定する。
これにより、学習器131は、有線/無線の回線種別と、正常/異常の区別とを判定することができる。
【0068】
なお、学習器131にスペクトル解析結果の符号化後ビット列を学習させる際に、単に障害が発生しているか否かのみならず、その障害が周期的な障害であるのか、それとも一時的な障害であるのかを区別して、個別に学習器131に学習させておいてもよい。
【0069】
学習器131は、判定結果をビット列などの適当な形式で表して出力するように構成しておく。例えば、有線/無線の回線種別を表す1ビットと、正常/異常を表す1ビットとの、合計2ビットを出力する。さらに、異常が周期的なものであるか否かを表す1ビットを加え、合計3ビットを出力するようにしてもよい。
【0070】
以上、本実施の形態3では、サポートベクターマシンの構成を用いて、学習器131を構成した例を説明した。
【0071】
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、ネットワークの品質劣化を検知する手法について説明した。また、その中で、パケットが有線回線のみを経由して取得されたものであるのか、それとも無線回線を経由して取得されたものであるのかを判定することを説明した。
本発明の実施の形態4では、有線/無線の回線種別を判定する部分のみを、単独の装置として構成した例を説明する。
【0072】
図8は、本実施の形態4に係る有線無線判定装置200の機能ブロック図である。
有線無線判定装置200は、ネットワークインタフェース部210、品質情報取得部220、有線無線判定部230を備える。また、有線無線判定部230は、学習器231を備える。
【0073】
各部の機能は、実施の形態1〜3で説明した同名の各部の機能と同様である。
ただし、学習器231は、有線/無線の回線種別のみを判定すればよく、ネットワークに障害が発生しているか否かについては判定する必要はない。そのため、学習器231の内部的な構成や出力は、実施の形態1〜3よりも簡易化することができる。例えば、出力ビット数を1ビットのみとしてもよい。
【0074】
以上のように、本実施の形態4に係る有線無線判定装置200は、実施の形態1〜3で説明した手法により、パケットが有線回線のみを経由して取得されたものであるのか、それとも無線回線を経由して取得されたものであるのかを判定することができる。
【符号の説明】
【0075】
100 品質劣化検知装置、110 ネットワークインタフェース部、120 品質情報取得部、130 有線無線判定部、131 学習器、140 品質劣化検知部、200 有線無線判定装置、210 ネットワークインタフェース部、220 品質情報取得部、230 有線無線判定部、231 学習器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークの品質劣化を検知する装置であって、
前記ネットワークを流れるパケットを取得するパケット取得部と、
前記パケット取得部が取得したパケットに基づき前記ネットワークの品質指標を取得する品質取得部と、
前記品質指標に基づき前記ネットワークの品質劣化を検知する品質劣化検知部と、
を備え、
前記品質劣化検知部は、
前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットであれば、
前記品質指標が低下した場合に前記ネットワークの品質が劣化したものと判定し、
前記パケットが無線回線を経由して取得されたパケットであれば、
前記品質指標が非周期的に低下した場合に前記ネットワークの品質が劣化したものと判定する
ことを特徴とする品質劣化検知装置。
【請求項2】
前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果に基づき、前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットであるか、または無線回線を経由して取得されたパケットであるかを判定する有線無線判定部を備え、
前記品質劣化検知部は、
前記有線無線判定部の判定結果を用いて前記ネットワークの品質劣化を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の品質劣化検知装置。
【請求項3】
前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットである場合の前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果と、
前記パケットが無線回線を経由して取得されたパケットである場合の前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果と、
をあらかじめ学習した第1学習器を備え、
前記第1学習器は、
前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果を学習済みの結果と比較し、
前記有線無線判定部は、
その比較結果に基づき、
前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットであるか、または無線回線を経由して取得されたパケットであるかを判定する
ことを特徴とする請求項2記載の品質劣化検知装置。
【請求項4】
前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットである場合と、前記パケットが無線回線を経由して取得されたパケットである場合とのそれぞれについて、前記品質指標が低下した時の前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果をあらかじめ学習した第2学習器を備え、
前記第2学習器は、
前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果を学習済みの結果と比較し、
前記品質劣化検知部は、
その比較結果に基づき前記ネットワークの品質劣化を検知する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の品質劣化検知装置。
【請求項5】
前記第2学習器は、
前記パケットが無線回線を経由して取得されたパケットである場合について、
前記ネットワークの正常時における前記品質指標の周期的な経時変化をスペクトル解析した結果をあらかじめ学習しており、
前記第2学習器は、
前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果を学習済みの結果と比較し、
前記品質劣化検知部は、
その比較結果に基づき前記ネットワークの品質劣化を検知する
ことを特徴とする請求項4記載の品質劣化検知装置。
【請求項6】
前記品質劣化検知部は、
前記品質指標が低下した場合、前記比較結果に基づき、その低下が周期的なものであるのか非周期的なものであるのかを判定する
ことを特徴とする請求項5記載の品質劣化検知装置。
【請求項7】
ネットワークを流れるパケットが経由してきた回線種別を判定する装置であって、
前記ネットワークを流れるパケットを取得するパケット取得部と、
前記パケット取得部が取得したパケットに基づき前記ネットワークの品質指標を取得する品質取得部と、
前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果に基づき、前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットであるか、または無線回線を経由して取得されたパケットであるかを判定する有線無線判定部と、
を備えたことを特徴とする有線無線判定装置。
【請求項8】
前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットである場合の前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果と、
前記パケットが無線回線を経由して取得されたパケットである場合の前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果と、
をあらかじめ学習した第1学習器を備え、
前記第1学習器は、
前記品質指標の経時変化をスペクトル解析した結果を学習済みの結果と比較し、
前記有線無線判定部は、
その比較結果に基づき、
前記パケットが有線回線のみを経由して取得されたパケットであるか、または無線回線を経由して取得されたパケットであるかを判定する
ことを特徴とする請求項7記載の有線無線判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−183220(P2010−183220A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23351(P2009−23351)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/次世代ネットワーク(NGN)基盤技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】