器官表面画像の表示装置及び方法
【課題】標準形状に正規化して行った解析結果を、正規化していない被験者の器官の形状の画像に重ねて表示させる。
【解決手段】健常者の標準脳データと、被験者の標準脳データとを対比してZ値を算出するZ値算出部53と、被験者の個人脳データを標準脳へ正規化するとともに、標準脳での解析結果を個人脳へ正規化の際に用いたパラメータを用いて逆正規化する正規化・逆正規化処理部55と、被験者の個人脳形状データ、及び逆正規化されたZ値データに基づいて、脳表に被験者の個人脳形状データの値を有する3D脳表データを生成する脳表データ生成部と、3D脳表データに基づいて、脳表のZ値分布を2次元表示した2D画像を生成する2D画像生成部とを備え、2D画像を表示する。
【解決手段】健常者の標準脳データと、被験者の標準脳データとを対比してZ値を算出するZ値算出部53と、被験者の個人脳データを標準脳へ正規化するとともに、標準脳での解析結果を個人脳へ正規化の際に用いたパラメータを用いて逆正規化する正規化・逆正規化処理部55と、被験者の個人脳形状データ、及び逆正規化されたZ値データに基づいて、脳表に被験者の個人脳形状データの値を有する3D脳表データを生成する脳表データ生成部と、3D脳表データに基づいて、脳表のZ値分布を2次元表示した2D画像を生成する2D画像生成部とを備え、2D画像を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器官の断層画像データから器官表面の画像を生成して表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳や心臓の表面の画像を2次元的に表示する技術がある。例えば、非特許文献1には、脳表の3次元データから2次元平面へ投影した脳表画像を表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】位置合わせされた複数医療用画像を臨床応用するための画像処理、外山比南子、小林昭央、上村幸司、MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.16、No3、May、1988、p196−200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記非特許文献1には、脳表の3次元データの生成方法は記載されていない。
【0005】
一般に、脳や心臓などの体内の器官は、CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonace Imaging)などの形態画像によりその形状に関するデータを得ることができる。そして、この器官について、被験者のデータを健常者などの比較対象者のデータと比較して解析するときは、標準形状に正規化して行うことが一般的である。
【0006】
対象の器官の画像に、この解析結果に応じた着色を行うなどの表示を行うことにより、医師は、被験者(患者)の状態を視覚的に理解することができる。このようなときに、被験者の器官の画像として、正規化された標準形状の器官の画像を用いた表示が良く行われるが、これとともに、正規化していない被験者個人の器官の形状の画像を用いて表示したいという、医師側のニーズもある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、比較対象者と比較した解析結果を、正規化されていない被験者の器官の形状の画像に重ねて表示させることである。
【0008】
さらに、本発明の別の目的は、比較対象者と比較した解析結果を、正規化されていない被験者の器官表面の形状の画像に重ねて表示させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの実施態様に従う器官表面画像の表示装置は、被験者の体内の器官を断層撮影して得られた、前記被験者個人の器官形状に従う被験者個人形状データを記憶する第1の記憶手段と、前記器官の形状が標準の器官形状になるように、前記被験者個人形状データを被験者標準形状データへ正規化する正規化手段と、比較対象者の前記器官の断層撮影データであって、標準の器官形状に従う比較対象者標準形状データと、前記被験者標準形状データとを対比して解析する解析手段と、前記解析手段による、前記標準形状に従う解析結果を示す標準形状解析結果データを記憶する第2の記憶手段と、前記標準形状解析結果データを、前記被験者個人の器官形状に従う個人形状解析結果データへ逆正規化する逆正規化手段と、前記被験者個人の器官形状に従う、3次元形状データを記憶する第3の記憶手段と、前記3次元形状データ及び前記個人形状解析結果データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に前記個人形状解析結果データの値を有する3次元器官表面データを生成する3次元器官表面データ生成手段と、前記3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の個人形状解析結果データを2次元表示した2次元器官画像を生成する2次元器官画像生成手段と、前記2次元器官画像生成手段により生成された2次元器官画像を表示装置へ表示させる表示制御手段と、を備える。
【0010】
好適な実施形態では、前記逆正規化手段は、前記器官を標準形状から前記被験者個人の器官形状へ変換したときに、前記被験者個人の器官が存在しない領域に変換後のデータが存在するときは、前記被験者個人の器官が存在しない領域の値をゼロとするようにしてもよい。
【0011】
好適な実施形態では、前記被験者の前記器官を断層撮影して得られた形態画像から、前記被験者個人の器官形状を抽出して、前記被験者個人の器官形状に従う3次元形状データを生成する手段をさらに備えてもよい。
【0012】
好適な実施形態では、前記比較対象者標準形状データを前記正規化手段が用いたパラメータを用いて逆正規化して、前記被験者個人の器官形状に従う3次元形状データを生成する手段をさらに備えてもよい。
【0013】
好適な実施形態では、前記3次元器官表面データ生成手段は、前記3次元形状データが示す前記器官の3次元形状の表面上の点を基点とし、前記3次元形状データに基づいて前記基点から前記器官の内部へ向かうベクトルを生成し、前記生成したベクトルの方向の前記被験者データの値に基づいて、前記基点に割り当てる値を定めて、前記器官の3次元形状の表面に被験者データの値を有する3次元器官表面データを生成するようにしてもよい。
【0014】
好適な実施形態では、前記器官は、脳または心臓であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る脳表表示装置1の構成図である。
【図2】被験者解析部50の構成を示す図である。
【図3】被験者データ120及び脳形状データ110のデータ構造を示す。
【図4】脳形状データの生成処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートに従って脳形状データを生成する過程を示す。
【図6】形状調整部57の処理の説明図である。
【図7】脳表処理部10の構成を示す図である。
【図8】基点Oにおけるベクトル生成の説明図である。
【図9】VOI脳表データ193生成時のVOI割り当て処理の説明図である。
【図10】脳表表示画像の一例を示す。
【図11】脳表表示画像の一例を示す。
【図12】脳表表示装置1の全体処理を示すフローチャートである。
【図13】ステップS11の被験者解析処理を示すフローチャートである。
【図14】ステップS13の3D脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図15】ステップS25の被験者脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図16】ステップS29のVOI脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図17】ステップS33のZ値脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態であって、本発明を脳表表示に適用した脳表表示装置について、図面を参照して説明する。以下の実施形態では、特に、正規化されていない個人脳の脳表表示について説明するが、本発明は、正規化されていない脳以外の器官の表面の表示を行う装置に対しても適用可能である。
【0017】
図1は、本実施形態に係る脳表表示装置1の構成図である。
【0018】
脳表表示装置1は、例えばプロセッサ及びメモリを備えた汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する脳表表示装置1内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0019】
脳表表示装置1は、脳表処理部10と、被験者(個人脳)データ記憶部11と、個人脳形状データ記憶部12と、標準脳形状(逆正規化)データ記憶部13と、Z値(逆正規化)データ記憶部14と、Z値(調整済)データ記憶部15と、VOI(逆正規化)データ記憶部16と、VOI(調整済)データ記憶部17と、被験者解析部50とを備える。脳表表示装置1は、脳表画像を表示するための表示装置3を有する。
【0020】
被験者解析部50は、被験者(個人脳)データ記憶部11に記憶されている被験者(個人脳)データの解析処理を行う。脳表処理部10は、被験者(個人脳)データ記憶部11〜VOI(調整済)データ記憶部17に記憶されているデータを用いて、個人脳の脳表表示を行う。
【0021】
各データ記憶部11〜17に記憶されているデータについては、以下で順次説明する。
【0022】
図2は、被験者解析部50の構成を示す図である。
【0023】
被験者解析部50は、脳形状データ生成部51と、Z値算出部53と、正規化・逆正規化処理部55と、形状調整部57とを有する。さらに、被験者解析部50は、被験者(標準脳)データ記憶部61と、健常者データ記憶部62と、標準脳形状データ記憶部63と、Z値(標準脳)データ記憶部64と、VOI(標準脳)データ記憶部65とを有する。
【0024】
脳形状データ生成部51は、被験者(個人脳)データ記憶部11に記憶されている被験者(個人脳)データ110に基づいて、脳の3D形状を示す脳形状データを生成し、個人脳形状データ記憶部12に格納する。複数の被験者の被験者(個人脳)データ110が被験者(個人脳)データ記憶部11に記憶されているときは、脳形状データ生成部51は、それぞれの被験者(個人脳)データ110について脳形状データを生成する。
【0025】
被験者(個人脳)データ記憶部11は、被験者の身体の一部、本実施形態では脳を断層撮影して得られた、正規化する前の被験者個人の脳の形状のままの被験者(個人脳)データ110を記憶する。被験者(個人脳)データ110は、例えば、MRI撮影装置で被験者の脳を断層撮影したMRIデータ、あるいは、CT撮影装置で被験者の脳を断層撮影したCTデータのなどの脳形状を示す画像データでよい。さらに、被験者データは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)撮影装置で撮影して得られたSPECTデータ、あるいはPET(Positron Computed Tomography)撮影装置で撮影して得られたPETデータでもよい。被験者(個人脳)データ記憶部11には、同じデータ構造を有する複数の被験者の被験者(個人脳)データ110を記憶していても良い。被験者(個人脳)データ110はボクセル形式のデータであって、データ構造の一例を図3Aに示す。
【0026】
同図に示すように、被験者(個人脳)データ110は、例えば、被験者の頭の左右方向をX軸、前後方向をY軸、上下方向をZ軸としたとき、Z軸方向にN枚のX−Y断面の画像データからなる。各画像データに含まれるボクセル値は、各画像の画素値と対応する。
【0027】
脳形状データ生成部51は、例えば、図4に示すフローチャートに従って脳形状データを生成する。図5は、図4のフローチャートに従って脳形状データを生成する過程を示す。
【0028】
まず、脳形状データ生成部51は、被験者(個人脳)データ110とは別に取得した、同じ被験者の個人脳の形態画像(例えば、CTまたはMRIによる画像)のデータを読み込み(S1)、被験者(個人脳)データ110の各ボクセル値(図5(a))に対して、所定の画像処理を施して灰白質領域を示すボクセル(図5(b))を抽出する(S2)。ここでは、たとえば、SPM(Statistical Parametric Mapping)で使用可能な“Gaussian mixture model”と“prior probability maps”を利用したsegmentation法を用いることができる。なお、ステップS2では、灰白質領域の他に、白質領域または脳脊髄液領域の少なくともいずれか一方の領域も合わせて抽出するようにしても良い。
【0029】
脳形状データ生成部51は、ステップS2で抽出した灰白質領域のデータを平滑化する(図5(c))(S3)。
【0030】
脳形状データ生成部51は、ステップS3で平滑化されたボクセルデータを、所定の閾値(例えば最大値の20%)で白黒に2値化して、白領域と黒領域の2値化画像(図5(d))を生成する(S4)。
【0031】
脳形状データ生成部51は、この2値化画像の内部で、白領域に囲まれている黒領域を白領域に替えて、脳形状データ(図5(d))を生成する(S5)。
【0032】
そして、脳形状データ生成部51は、個人脳形状データ120を個人脳形状データ記憶部12に格納する(S6)。
【0033】
個人脳形状データ記憶部12は、脳の3D形状を示す個人脳形状データ120を記憶する。個人脳形状データ記憶部12は、例えば、上述のように脳形状データ生成部51が生成した個人脳形状データ120を記憶する。
【0034】
個人脳形状データ120は、被験者(個人脳)データ110の脳実質(白質及び灰白質部分)を示す脳形状を示すデータである。個人脳形状データ120は、被験者(個人脳)データ110と同じデータ構造を有している。個人脳形状データ120のデータ構造の一例を図3Bに示す。
【0035】
同図に示すように、個人脳形状データ記憶部120は、脳領域(脳実質に相当する領域)のボクセルに「1」、それ以外のボクセルには「0」がセットされている。ここで、「0」がセットされているボクセルと接している「1」がセットされているボクセルが、個人脳形状データ120における脳の表面を表す脳表ボクセルである。脳表ボクセルには、例えば「0」、「1」以外の値(例えば「2」)をセットしても良い。
【0036】
被験者(標準脳)データ記憶部61は、正規化・逆正規化処理部55で標準脳形状に正規化された、被験者(標準脳)データ610を記憶する。被験者(標準脳)データ610は、既に述べた被験者(個人脳)データ110と同様に、ボクセル形式のデータ構造を有する。
【0037】
健常者データ記憶部62には、あらかじめ収集しておいた健常者データ620が記憶されている。健常者データ記憶部62に記憶されている健常者データ620は、被験者(個人脳)データ110と同じ撮像方法(たとえば、MRI,CT,SPECTなど)によって予め収集しておいた、多数の健常者のボクセルデータを平均した平均ボクセルデータ620A(図3A参照)、及び平均ボクセルデータ620Aの標準偏差を示す標準偏差データ620B(図3B参照)が含まれる。平均ボクセルデータ620A及び標準偏差データ620Bは、いずれも標準脳に正規化された健常者のボクセルデータから算出されている。従って、平均ボクセルデータ620A及び標準偏差データ620Bも標準脳形式である。なお、ここでは健常者と被験者とを比較しているが、比較対象者は必ずしも健常者でなくても良い。
【0038】
Z値算出部53は、被験者(標準脳)データ記憶部61に記憶されている被験者(標準脳)データ610及び健常者データ記憶部62に記憶されている健常者データ620のそれぞれ対応するボクセル(同一画像の同一部位)を対比させてZ値を算出する。すなわち、Z値算出部53は、被験者(標準脳)データ610及び健常者データ620(平均ボクセルデータ620A及び標準偏差データ620B)を対比させて、各ボクセルについてZ値を算出する解析手段である。
【0039】
なお、本実施形態では、Z値を用いて被験者データの解析を行っているが、Z値以外の指標値、たとえばt値などを用いて解析しても良い。また、本実施形態では、被験者の個人脳を標準脳形状に正規化して健常者データと比較を行っているが、標準脳形状の健常者データを個人脳の形状に変換してから比較を行っても良い。例えば、このようにして、個人脳形状においてZ値を算出した場合、Z値(逆正規化)データ140に相当するZ値が直接算出されることになる。
【0040】
Z値(標準脳)データ記憶部64は、被験者(標準脳)データ610及び健常者データ620に基づいてZ値算出部53が算出した被験者の標準脳におけるZ値(標準脳)データ640を記憶する。Z値(標準脳)データ640は、被験者(標準脳)データ610などと同じデータ構造を有していて、各ボクセルにはそれぞれのZ値がセットされている。Z値(標準脳)データ640は、標準脳における被験者のZ値データである。
【0041】
標準脳形状データ記憶部63は、標準脳の3D形状を示す脳形状データを記憶する。標準脳形状データは、予め標準脳形状データ記憶部63に記憶されている。
【0042】
VOI(標準脳)データ記憶部65は、標準脳において設定された関心領域を示すVOIデータ660が記憶されている。VOIデータ660は、脳形状データ510などと同じデータ構造を有している。つまり、VOIデータ660のデータ構造は、図3Bの脳形状データ510と同様に、「0」と「1」のボクセル値を有する。すなわち、VOIデータ660は、VOI領域のボクセルには「1」、それ以外のボクセルには「0」がセットされている。互いに異なる複数のVOIが設定されているときは、VOI(標準脳)データ記憶部65に、VOI別に生成されたVOIデータ660を格納するようにしてもよい。あるいは、一つのVOIデータ660に、複数のVOIに関する情報を各VOIが識別可能に格納しても良い。たとえば、第1のVOIが設定されているボクセルには「1」、第2のVOIが設定されているボクセルには「2」、・・・というように設定しても良い。
【0043】
正規化・逆正規化処理部55は、被験者の個人脳(被験者(個人脳)データ110)を標準脳へ変換するための正規化処理を行う。さらに、正規化・逆正規化処理部55は、正規化処理の逆処理である、標準脳から個人脳へ戻すための逆正規化処理を行う。逆正規化処理では、例えば、正規化処理のときに使用したパラメータを用いて、正規化処理で行った変換の逆変換を行う。あるいは、正規化処理のときに使用したパラメータは用いずに、標準脳から個人脳へ変換しても良い。
【0044】
たとえば、正規化・逆正規化処理部55は、被験者(個人)データ110を正規化して、被験者(標準脳)データ610を生成し、被験者(標準脳)データ記憶部61へ格納する。また、正規化・逆正規化処理部55は、標準脳形状データ記憶部63に記憶されている標準脳形状データ記憶部630を逆正規化して標準脳形状(逆正規化)データ130を生成して、標準脳形状(逆正規化)データ記憶部13に格納する。同様に、正規化・逆正規化処理部55は、Z値(標準脳)データ記憶部64に記憶されているZ値(標準脳)データ640を逆正規化してZ値(逆正規化)データ140を生成し、Z値(逆正規化)データ記憶部14に格納する。さらに、正規化・逆正規化処理部55は、VOI(標準脳)データ記憶部65に記憶されているVOI(標準脳)データ650を逆正規化してVOI(逆正規化)データ160を生成し、VOI(逆正規化)データ記憶部16に格納する。
【0045】
標準脳形状(逆正規化)データ記憶部13は、上述したように、標準脳形状データ記憶部63に記憶されている標準脳形状データ630を、正規化・逆正規化処理部55で逆正規化して得られた標準脳形状(逆正規化)データ130を記憶する。
【0046】
Z値(逆正規化)データ記憶部14は、上述したように、Z値(標準脳)データ64に記憶されているZ値(標準脳)データ640を、正規化・逆正規化処理部55で逆正規化して得られたZ値(逆正規化)データ140を記憶する。つまり、Z値(逆正規化)データ140は、被験者のデータを標準脳において解析した解析結果を、個人脳形状へ変換したものである。
【0047】
VOI(逆正規化)データ記憶部16は、上述したように、VOI(標準脳)データ記憶部65に記憶されているVOI(標準脳)データ650を、正規化・逆正規化処理部55で逆正規化して得られたVOI(逆正規化)データ160を記憶する。つまり、VOI(標準脳)データ650は、各個人の脳の形状に応じたVOIを定める。
【0048】
形状調整部57は、Z値(逆正規化)データ140の調整を行って、Z値(調整済)データ150を生成する。上述の通り、Z値(逆正規化)データ140は標準脳での解析結果であるZ値(標準脳)データ640を、正規化・逆正規化処理部55で逆正規化処理を行って得たデータである。
【0049】
ここで、例えば、被験者の脳の一部に萎縮などによる欠損がある場合、標準脳に変換して健常者と比較をする解析を行うと、その欠損箇所にも解析結果の数値(ここではZ値)の値が存在する。つまり、欠損によって脳実質が存在しないはずの箇所にも、解析結果のZ値が存在する。このデータを正規化・逆正規化処理部55で個人脳形状へ逆正規化しても、依然として脳実質が存在しない箇所に解析結果の数値(ここではZ値)が存在することになる。
【0050】
そこで、形状調整部57は、個人脳形状データ記憶部12に記憶されている個人脳形状データ120に基づいて、Z値(逆正規化)データ140及びVOI(逆正規化)データ160を調整する。たとえば、形状調整部57は、Z値(逆正規化)データ140及びVOI(逆正規化)データ160に対して、個人脳形状データ120を当てはめて、個人脳形状データ120により定まる脳形状の領域あるいは脳実質の領域からはみ出している部分のZ値を0とし、VOIを消去する。
【0051】
例えば、図6(a)には、被験者の個人脳のあるスライスの形状を示す。同図に示すように、この被験者の脳は一部が萎縮している。同図(b)に示すように、同じ被験者のZ値(逆正規化)データ140に、個人脳形状データ120を重ねると、被験者の脳が存在しないこの萎縮部分にもZ値(逆正規化)データ140が存在する。そこで、形状調整部57はこの萎縮部分を除去する。これは、VOI(逆正規化)データ160に対しても同様である。
【0052】
Z値(調整済)データ記憶部15は、上述したように、Z値(逆正規化)データ記憶部14に記憶されているZ値(逆正規化)データを、形状調整部57が調整した結果得られたZ値(調整済)データ150を記憶する。
【0053】
VOI(調整済)データ記憶部17は、上述したように、VOI(逆正規化)データ記憶部16に記憶されているVOI(逆正規化)データを、形状調整部57が調整した結果得られたVOI(調整済)データ170を記憶する。
【0054】
図7は、脳表処理部10の構成を示す図である。
【0055】
脳表処理部10は、3D脳表データ記憶部19と、脳表データ生成部21と、2D(2次元)画像生成部23と、脳断面画像生成部25と、表示制御部27と、を有する。
【0056】
3D脳表データ記憶部19は、脳表データ生成部21が生成した、被験者(個人脳)データ110に基づく3D脳表データ(被験者脳表データ)191、VOI(調整済)データ170に基づくVOIの3D脳表データ(VOI脳表データ)193、及びZ値(調整済)データ150に基づくZ値の3D脳表データ(Z値脳表データ)195が格納される。
【0057】
脳表データ生成部21は、被験者(個人脳)データ110に基づいて、3Dの被験者脳表データ191を生成する。被験者脳表データ191は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和)のいずれかにより定まる3Dの脳表に、被験者(個人脳)データ110に基づく値を割り当てたものである。つまり、被験者脳表データ191は、脳の3次元的な形状の表面に、断層画像のボクセル値を割り当てたものである。
【0058】
また、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和)のいずれかが示す3D脳表に、VOI(調整済)データ170により定まる脳内のVOIを割り当てたVOI脳表データ193を生成する。
【0059】
さらに、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和)のいずれかが示す3D脳表に、Z値(調整済)データ150に基づいてZ値を割り当てた3DのZ値脳表データ195を生成する。
【0060】
脳表データ生成部21によって生成された被験者脳表データ191、VOI脳表データ193、及びZ値脳表データ195が3D脳表データ記憶部19に格納される。
【0061】
本実施形態では、脳表データ生成部21は、脳表の形状に応じたベクトルを生成するベクトル生成部211と、ベクトル生成部211で生成したベクトルを用いて脳表に値を割り当てる値決定部213とを有する。
【0062】
ベクトル生成部211は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130により定まる脳表上の点(ボクセル)を基点として、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130に基づいてその基点から脳模型の内部へ向かうベクトルを生成する。例えば、このベクトルは基点における法線を示すベクトルでも良いし、所定の基準点(たとえば、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130における脳の重心)へ向かうベクトルでも良い。ベクトルの基点となる脳表上の点は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130において「0」がセットされたボクセルと接する「1」がセットされたボクセルである。ベクトル生成部211は、このようにして定まるすべての基点に対して、図8を用いて以下に説明するような処理を行ってベクトルの方向を定めてもよい。
【0063】
図8は、ある脳表面近傍の個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130の分布を示す。同図において、ある脳表上の点を基点Oとして、その基点OにおけるベクトルVの算出の様子を示す図である。
【0064】
同図は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130におけるZ=N−1,N,N+1の3つのX−Y平面の一部を示す。3つのX−Y平面内の各ボクセル111(図中、符号は一カ所のみ示す)には、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130の値(「0」または「1」)がセットされている。ここでは、Z=NのX−Y平面上のある基点Oを中心とする相対座標で考える。
【0065】
まず、この基点Oを中心とした所定形状の領域の参照空間Rを定める。ここでは、参照空間Rは3×3×3の立方体形状とするが、これ以外の任意の形状でよい。ベクトル生成部211は、この参照空間R内の個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130が示す脳領域の形状に基づいてベクトルを決定する。たとえば、ベクトル生成部211は、参照空間R内の27ボクセルのうち、脳領域(つまり脳表面及び脳の内部)を構成する点(ボクセル)の分布に従ってベクトルの方向を定める。つまり、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130の値が「1」(脳領域)であるボクセルと、値が「0」(脳領域外)であるボクセルの分布によって、ベクトルの方向を定める。例えば、基点Oを中心の相対座標で考えると、値が「1」のボクセルの座標をそれぞれX,Y,Zで加算して、ベクトルの方向を定める。図8の例では、値が「1」のボクセルの相対座標は、Z=N−1の平面では(−1,−1,−1)、(−1,0,−1)、(−1,1,−1)の3点、Z=Nの平面では(−1,−1,0)、(−1,0,0)、(−1,1,0)、(0,−1,0)、(0,0,0)の5点、Z=N+1の平面では(−1,−1,1)、(−1,0,1)、(−1,1,1)、(0,−1,1)、(0,0,1)、(0,1,1)、(1,−1,1)、(1,0,1)、(1,1,1)の9点となる。その結果、これらの座標の合計により求まるベクトルは、V=(−6,−1,6)となる。このベクトルを単位ベクトル化しても良いし、所定の大きさに揃えても良い。
【0066】
値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルが通過する一以上のボクセル、換言すると、そのベクトルの方向に位置する一以上のボクセルの値に基づいて、基点に割り当てる値を決定する。
【0067】
例えば、値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルの方向へ、所定距離だけ離れた点のボクセルの値を基点に割り当ててもよい。つまり、値決定部213は、そのベクトルの長さを所定値に定めて、そのベクトルの終点から最も近いボクセルの値を、ベクトルの基点の値としても良い。このとき、ベクトルの長さは、脳の部位によって異なっても良い。たとえば、頭頂部、側頭部、前頭部、後頭部、基底部などで、それぞれ長さを変えても良い。
【0068】
また、値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルの長さを所定値に定めて、そのベクトルが通過するボクセル(あるいは、通過する領域の近傍のボクセル)の値の平均値、中央値、最大値、2番目に大きな値などを基点に割り当ててもよい。
【0069】
値決定部213は、被験者(個人脳)データ110、Z値(調整済)データ150あるいはVOI(調整済)データ170データのそれぞれに対して、上記のいずれかの割り当てる手法を用いて、被験者脳表データ191、VOI脳表データ193及びZ値脳表データ195を生成しても良い。例えば、被験者脳表データ191を生成する際は、基点から所定距離だけ離れた点の被験者(個人脳)データ110のボクセルの値を基点に割り当てるようにしてもよい。また、Z値脳表データ195を生成する際は、所定の長さに定めたベクトルが通過するボクセルのZ値(調整済)データ150の値の平均値あるいは中央値を基点に割り当ててもよい。VOI脳表データ193を生成する際は、VOI(調整済)データ170において、ベクトルの方向に存在するVOIのうち、基点から最も近いVOIを割り当てても良い。
【0070】
図9は、VOI脳表データ193生成時のVOI割り当て処理の説明図である。たとえば、同図に示すように、ベクトル生成部211が生成した基点O1から出るベクトルV1の方向にはVOI−AとVOI−Bとが存在するが、最も手前にあるVOI−Aが基点O1に割り当てられる。同様に、基点O2には、ベクトル生成部211が生成したベクトルV2の方向の最も手前にあるVOI−Bが割り当てられる。
【0071】
図7に戻ると、2D画像生成部23は、3D脳表データ記憶部19に格納されている3種類の3D脳表データ191,193,195に基づいて、それぞれの2次元の脳表画像を生成する。例えば、2D画像生成部23は、被験者脳表データ191を2次元平面へ投影した被験者画像を生成し、VOI脳表データ193に基づく脳表でのVOIの分布を2次元平面に示したVOI分布画像を生成し、Z値脳表データ195に基づく脳表でのZ値の分布を2次元平面に示したZ値分布画像を生成する。2D画像生成部23は、3種類の3D脳表データ191,193,195のそれぞれに対して、3D脳表の6面図(正面図、背面図、左右側面図、平面図、底面図)を生成する。
【0072】
脳断面画像生成部25は、被験者(個人脳)データ110,個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130、Z値(調整済)データ150及びVOI(調整済)データ170に基づいて、脳の断面の被験者画像、VOI分布画像及びZ値分布画像を生成する。例えば、脳断面画像生成部25は、以下のような手順で脳の断面を定め、その断面図に相当する画像を生成する。すなわち、脳断面画像生成部25は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130が示す脳形状を任意の面で切った断面を定める。そして、脳断面画像生成部25は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130でこの断面における脳領域を特定し、脳領域内のすべての点において、断面に対する法線ベクトルを定める。ここで、脳断面画像生成部25は、被験者(個人脳)データ110に対しては、基点からその法線ベクトルの方向へ所定距離の位置にあるボクセルの被験者(個人脳)データ110の値を、各基点に割り当てて、断面の被験者画像を生成する。また、脳断面画像生成部25は、VOI(調整済)データ170に対しては、法線ベクトルの方向に存在するVOIのうち、各基点から最も近いVOIをそれぞれの基点に割り当てる。さらに、脳断面画像生成部25は、Z値(調整済)データ150に対しては、法線ベクトルが通過するボクセルのZ値(調整済)データ150の値の平均値あるいは中央値を、各基点に割り当てる。
【0073】
本実施形態では、脳断面画像生成部25は、脳の中心を左右に分割した断面について、被験者画像、VOI分布画像及びZ値分布画像をそれぞれ生成する。
【0074】
表示制御部27は、2D画像生成部23及び脳断面画像生成部25が生成した2次元の画像を、表示装置3に表示させるための制御を行う。図10及び図11は、表示制御部27が表示装置3に表示させる画像の一例を示す。
【0075】
図10(a)に示すように、被験者画像は、脳表に割り当てられた被験者(個人脳)データ110の値に応じた白黒画像で表示される。
【0076】
図10(b)は、被験者画像にVOI画像を重ねて表示した表示例を示す。VOI画像でのVOIの表示は、VOIごとに異なる色を用いるなど、VOIが識別できるようにVOIごとに表示態様を替えても良い。また、VOI内を塗りつぶしても良いし、VOIの輪郭だけ表示しても良い。
【0077】
図11は、被験者画像に同一被験者のZ値画像を重ねて表示した表示例を示す。Z値画像は、同図に示すように、Z値の値に応じた表示態様(例えば、値に応じて色を替えるなど)で表示しても良い。
【0078】
さらに、図示することは省略するが、被験者画像にVOI画像及び同一被験者のZ値画像を重ねて表示することもできる。
【0079】
表示制御部27は、この他に、異なる被験者の被験者画像を重ねたり、異なる被験者のZ値画像を重ねたりして、被験者間で比較しても良い。あるいは、表示制御部27は、各脳表データ191、193,195に基づいて、3Dのままの脳表を表示しても良い(OPENGL、Direct3D)。
【0080】
次に、上記のような構成を備えた脳表表示装置1の処理手順について、図12〜図16を用いて説明する。
【0081】
まず、脳表表示装置1の全体処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0082】
被験者解析部50が、被験者データの解析を行う(S11)。
【0083】
次に、脳表データ生成部21は、3種類の3D脳表データ191,193,195を生成して、3D脳表データ記憶部19に格納する(S13)。
【0084】
2D画像生成部23は、3D脳表データ記憶部19に格納されている3D脳表データ191,193,195から、3D脳表を2次元に投影したそれぞれの2次元画像を生成する(S15)。
【0085】
脳断面画像生成部25は、被験者(個人脳)データ110、Z値(調整済)データ150及びVOI(調整済)データ170から、脳を中央で左右に分割したそれぞれの断面画像を生成する(S17)。
【0086】
そして、表示制御部27が、ステップS15及びS17で生成した断面画像を表示装置3に表示させる(S19)。
【0087】
なお、図12の例では、3D脳表データ及び2D画像を生成した後に脳断面画像を生成しているが、脳断面画像を先に生成しても良い。
【0088】
次に、ステップS11の被験者解析処理について、図13のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0089】
脳形状データ生成部51が被験者(個人脳)データ記憶部11の被験者(個人脳)データ110に基づいて、個人脳形状データ120を生成して、個人脳形状データ記憶部12に格納する(S101)。
【0090】
正規化・逆正規化処理部55が、各被験者の被験者(個人脳)データ110を標準脳の形状に正規化する(S103)。そして、生成された被験者(標準脳)データ610を被験者(標準脳)データ記憶部61に格納する。
【0091】
Z値算出部53は、各被験者の被験者(標準脳)データ610及び健常者データ620に基づいて、被験者ごとに、標準脳形状におけるZ値を算出する(S105)。ここで算出されたZ値(標準脳)データ640がZ値(標準脳)データ記憶部64に格納される。
【0092】
正規化・逆正規化処理部55は、標準脳形状データ記憶部63に記憶されている標準脳形状データ630,Z値(標準脳)データ記憶部64に記憶されているZ値(標準脳)データ640及びVOI(標準脳)データ記憶部65に記憶されているVOI(標準脳)データ650を、それぞれ逆正規化する(S107)。そして、ここで生成された標準脳形状(逆正規化)データ130,Z値(逆正規化)データ140及びVOI(逆正規化)データ160が、それぞれ標準脳形状(逆正規化)データ記憶部13,Z値(逆正規化)データ記憶部14及びVOI(逆正規化)データ記憶部16に格納される。
【0093】
脳形状データ生成部51は、個人脳形状データ120を用いて、Z値(逆正規化)データ140及びVOI(逆正規化)データ160の形状調整を行う(S109)。そして、形状調整後のZ値(調整済)データ150及びVOI(調整済)データ170をZ値(調整済)データ記憶部15及びVOI(調整済)データ記憶部17に格納する。
【0094】
これにより、以後の処理で使用する個人脳形状データ120,標準脳形状(逆正規化)データ130,Z値(調整済)データ150及びVOI(調整済)データ170が生成された。
【0095】
次に、ステップS13の3D脳表データ生成処理について、図14のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0096】
脳表データ生成部21が、個人脳形状データ記憶部12から個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130を読み込む(S21)。さらに、脳表データ生成部21は、被験者(個人脳)データ記憶部11から被験者(個人脳)データ110を読み込む(S23)。そして、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120(または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和))及び被験者(個人脳)データ110から、被験者脳表データ191を生成する(S25)。
【0097】
次に、脳表データ生成部21は、VOI(調整済)データ記憶部17からVOI(調整済)データ170を読み込む(S27)。そして、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120(または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和))及びVOI(調整済)データ170から、VOI脳表データ193を生成する(S29)。なお、ここでは、VOI(調整済)データ170の代わりにVOI(逆正規化)データ160を用いても良い。
【0098】
さらに、脳表データ生成部21は、Z値(調整済)データ記憶部15からZ値(調整済)データ150を読み込む(S31)。そして、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120(または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和))及びZ値(調整済)データ150から、Z値脳表データ195を生成する(S33)。なお、ここでは、Z値(調整済)データ150の代わりにZ値(逆正規化)データ140を用いても良い。
【0099】
なお、図14の例では、被験者脳表データ、VOI脳表データ、Z値脳表データの順に生成しているが、この順序は自由に入れ替え可能である。
【0100】
ここで、ステップS25,S29及びS33についてさらに詳細に説明する。
【0101】
図15は、ステップS25の被験者脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0102】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S41、S43)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0103】
そして、値決定部213が、基点からステップS43で求めたベクトルの方向へ所定距離のボクセルの被験者(個人脳)データ110の値を、その基点に割り当てる(S45)。
【0104】
ステップS41〜S45までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S47)、被験者脳表データ191を生成する。生成された被験者脳表データ191は、脳表データ記憶部19に格納される(S49)。
【0105】
次に、図16は、ステップS29のVOI脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0106】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S51、S53)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0107】
そして、値決定部213が、VOI(調整済)データ170において、基点からステップS53で求めたベクトルの方向に存在するVOIのうち、最も基点に近いVOIを選択して、その基点は、脳表における選択されたVOIの領域とする(S55)。ここで、上記ベクトルの方向にVOIが存在しないときは、基点に何れのVOIを割り当てない。
【0108】
ステップS51〜S55までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S57)、VOI脳表データ193を生成する。生成されたVOI脳表データ193は、脳表データ記憶部19に格納される(S59)。
【0109】
図17は、ステップS33のZ値脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0110】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S61、S63)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0111】
そして、値決定部213が、ステップS63で求めたベクトルのベクトル長を所定長さに定め、基点からそのベクトル終点までにベクトルが通過したボクセルのZ値(調整済)データ150の値を、その起点に割り当てる(S65)。
【0112】
ステップS61〜S65までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S57)、Z値脳表データ195を生成する。生成されたZ値脳表データ195は、脳表データ記憶部19に格納される(S69)。
【0113】
上記のような処理により、脳表表示を行うことができる。なお、上記の実施形態では、脳表表示装置1は、被験者脳表データ、VOI脳表データ及びZ値脳表データを生成しているが、いずれか一つ以上を選択的に生成しても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、脳表(脳の表面)表示について説明したが、本発明を脳以外の人体の一部、例えば特定の器官に対して適用し、その器官の表面を表示させることもできる。例えば、脳の代わりに心臓に対しても適用可能である。
【0115】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 脳表表示装置
10 脳表処理部
11 被験者(個人脳)データ記憶部
12 個人脳形状データ記憶部
13 標準脳形状(逆正規化)データ記憶部
14 Z値(逆正規化)データ記憶部
15 Z値(調整済)データ記憶部
16 VOI(逆正規化)データ記憶部
17 VOI(調整済)データ記憶部
50 被験者解析部
【技術分野】
【0001】
本発明は、器官の断層画像データから器官表面の画像を生成して表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳や心臓の表面の画像を2次元的に表示する技術がある。例えば、非特許文献1には、脳表の3次元データから2次元平面へ投影した脳表画像を表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】位置合わせされた複数医療用画像を臨床応用するための画像処理、外山比南子、小林昭央、上村幸司、MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.16、No3、May、1988、p196−200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記非特許文献1には、脳表の3次元データの生成方法は記載されていない。
【0005】
一般に、脳や心臓などの体内の器官は、CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonace Imaging)などの形態画像によりその形状に関するデータを得ることができる。そして、この器官について、被験者のデータを健常者などの比較対象者のデータと比較して解析するときは、標準形状に正規化して行うことが一般的である。
【0006】
対象の器官の画像に、この解析結果に応じた着色を行うなどの表示を行うことにより、医師は、被験者(患者)の状態を視覚的に理解することができる。このようなときに、被験者の器官の画像として、正規化された標準形状の器官の画像を用いた表示が良く行われるが、これとともに、正規化していない被験者個人の器官の形状の画像を用いて表示したいという、医師側のニーズもある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、比較対象者と比較した解析結果を、正規化されていない被験者の器官の形状の画像に重ねて表示させることである。
【0008】
さらに、本発明の別の目的は、比較対象者と比較した解析結果を、正規化されていない被験者の器官表面の形状の画像に重ねて表示させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの実施態様に従う器官表面画像の表示装置は、被験者の体内の器官を断層撮影して得られた、前記被験者個人の器官形状に従う被験者個人形状データを記憶する第1の記憶手段と、前記器官の形状が標準の器官形状になるように、前記被験者個人形状データを被験者標準形状データへ正規化する正規化手段と、比較対象者の前記器官の断層撮影データであって、標準の器官形状に従う比較対象者標準形状データと、前記被験者標準形状データとを対比して解析する解析手段と、前記解析手段による、前記標準形状に従う解析結果を示す標準形状解析結果データを記憶する第2の記憶手段と、前記標準形状解析結果データを、前記被験者個人の器官形状に従う個人形状解析結果データへ逆正規化する逆正規化手段と、前記被験者個人の器官形状に従う、3次元形状データを記憶する第3の記憶手段と、前記3次元形状データ及び前記個人形状解析結果データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に前記個人形状解析結果データの値を有する3次元器官表面データを生成する3次元器官表面データ生成手段と、前記3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の個人形状解析結果データを2次元表示した2次元器官画像を生成する2次元器官画像生成手段と、前記2次元器官画像生成手段により生成された2次元器官画像を表示装置へ表示させる表示制御手段と、を備える。
【0010】
好適な実施形態では、前記逆正規化手段は、前記器官を標準形状から前記被験者個人の器官形状へ変換したときに、前記被験者個人の器官が存在しない領域に変換後のデータが存在するときは、前記被験者個人の器官が存在しない領域の値をゼロとするようにしてもよい。
【0011】
好適な実施形態では、前記被験者の前記器官を断層撮影して得られた形態画像から、前記被験者個人の器官形状を抽出して、前記被験者個人の器官形状に従う3次元形状データを生成する手段をさらに備えてもよい。
【0012】
好適な実施形態では、前記比較対象者標準形状データを前記正規化手段が用いたパラメータを用いて逆正規化して、前記被験者個人の器官形状に従う3次元形状データを生成する手段をさらに備えてもよい。
【0013】
好適な実施形態では、前記3次元器官表面データ生成手段は、前記3次元形状データが示す前記器官の3次元形状の表面上の点を基点とし、前記3次元形状データに基づいて前記基点から前記器官の内部へ向かうベクトルを生成し、前記生成したベクトルの方向の前記被験者データの値に基づいて、前記基点に割り当てる値を定めて、前記器官の3次元形状の表面に被験者データの値を有する3次元器官表面データを生成するようにしてもよい。
【0014】
好適な実施形態では、前記器官は、脳または心臓であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る脳表表示装置1の構成図である。
【図2】被験者解析部50の構成を示す図である。
【図3】被験者データ120及び脳形状データ110のデータ構造を示す。
【図4】脳形状データの生成処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートに従って脳形状データを生成する過程を示す。
【図6】形状調整部57の処理の説明図である。
【図7】脳表処理部10の構成を示す図である。
【図8】基点Oにおけるベクトル生成の説明図である。
【図9】VOI脳表データ193生成時のVOI割り当て処理の説明図である。
【図10】脳表表示画像の一例を示す。
【図11】脳表表示画像の一例を示す。
【図12】脳表表示装置1の全体処理を示すフローチャートである。
【図13】ステップS11の被験者解析処理を示すフローチャートである。
【図14】ステップS13の3D脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図15】ステップS25の被験者脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図16】ステップS29のVOI脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【図17】ステップS33のZ値脳表データ生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態であって、本発明を脳表表示に適用した脳表表示装置について、図面を参照して説明する。以下の実施形態では、特に、正規化されていない個人脳の脳表表示について説明するが、本発明は、正規化されていない脳以外の器官の表面の表示を行う装置に対しても適用可能である。
【0017】
図1は、本実施形態に係る脳表表示装置1の構成図である。
【0018】
脳表表示装置1は、例えばプロセッサ及びメモリを備えた汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する脳表表示装置1内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0019】
脳表表示装置1は、脳表処理部10と、被験者(個人脳)データ記憶部11と、個人脳形状データ記憶部12と、標準脳形状(逆正規化)データ記憶部13と、Z値(逆正規化)データ記憶部14と、Z値(調整済)データ記憶部15と、VOI(逆正規化)データ記憶部16と、VOI(調整済)データ記憶部17と、被験者解析部50とを備える。脳表表示装置1は、脳表画像を表示するための表示装置3を有する。
【0020】
被験者解析部50は、被験者(個人脳)データ記憶部11に記憶されている被験者(個人脳)データの解析処理を行う。脳表処理部10は、被験者(個人脳)データ記憶部11〜VOI(調整済)データ記憶部17に記憶されているデータを用いて、個人脳の脳表表示を行う。
【0021】
各データ記憶部11〜17に記憶されているデータについては、以下で順次説明する。
【0022】
図2は、被験者解析部50の構成を示す図である。
【0023】
被験者解析部50は、脳形状データ生成部51と、Z値算出部53と、正規化・逆正規化処理部55と、形状調整部57とを有する。さらに、被験者解析部50は、被験者(標準脳)データ記憶部61と、健常者データ記憶部62と、標準脳形状データ記憶部63と、Z値(標準脳)データ記憶部64と、VOI(標準脳)データ記憶部65とを有する。
【0024】
脳形状データ生成部51は、被験者(個人脳)データ記憶部11に記憶されている被験者(個人脳)データ110に基づいて、脳の3D形状を示す脳形状データを生成し、個人脳形状データ記憶部12に格納する。複数の被験者の被験者(個人脳)データ110が被験者(個人脳)データ記憶部11に記憶されているときは、脳形状データ生成部51は、それぞれの被験者(個人脳)データ110について脳形状データを生成する。
【0025】
被験者(個人脳)データ記憶部11は、被験者の身体の一部、本実施形態では脳を断層撮影して得られた、正規化する前の被験者個人の脳の形状のままの被験者(個人脳)データ110を記憶する。被験者(個人脳)データ110は、例えば、MRI撮影装置で被験者の脳を断層撮影したMRIデータ、あるいは、CT撮影装置で被験者の脳を断層撮影したCTデータのなどの脳形状を示す画像データでよい。さらに、被験者データは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)撮影装置で撮影して得られたSPECTデータ、あるいはPET(Positron Computed Tomography)撮影装置で撮影して得られたPETデータでもよい。被験者(個人脳)データ記憶部11には、同じデータ構造を有する複数の被験者の被験者(個人脳)データ110を記憶していても良い。被験者(個人脳)データ110はボクセル形式のデータであって、データ構造の一例を図3Aに示す。
【0026】
同図に示すように、被験者(個人脳)データ110は、例えば、被験者の頭の左右方向をX軸、前後方向をY軸、上下方向をZ軸としたとき、Z軸方向にN枚のX−Y断面の画像データからなる。各画像データに含まれるボクセル値は、各画像の画素値と対応する。
【0027】
脳形状データ生成部51は、例えば、図4に示すフローチャートに従って脳形状データを生成する。図5は、図4のフローチャートに従って脳形状データを生成する過程を示す。
【0028】
まず、脳形状データ生成部51は、被験者(個人脳)データ110とは別に取得した、同じ被験者の個人脳の形態画像(例えば、CTまたはMRIによる画像)のデータを読み込み(S1)、被験者(個人脳)データ110の各ボクセル値(図5(a))に対して、所定の画像処理を施して灰白質領域を示すボクセル(図5(b))を抽出する(S2)。ここでは、たとえば、SPM(Statistical Parametric Mapping)で使用可能な“Gaussian mixture model”と“prior probability maps”を利用したsegmentation法を用いることができる。なお、ステップS2では、灰白質領域の他に、白質領域または脳脊髄液領域の少なくともいずれか一方の領域も合わせて抽出するようにしても良い。
【0029】
脳形状データ生成部51は、ステップS2で抽出した灰白質領域のデータを平滑化する(図5(c))(S3)。
【0030】
脳形状データ生成部51は、ステップS3で平滑化されたボクセルデータを、所定の閾値(例えば最大値の20%)で白黒に2値化して、白領域と黒領域の2値化画像(図5(d))を生成する(S4)。
【0031】
脳形状データ生成部51は、この2値化画像の内部で、白領域に囲まれている黒領域を白領域に替えて、脳形状データ(図5(d))を生成する(S5)。
【0032】
そして、脳形状データ生成部51は、個人脳形状データ120を個人脳形状データ記憶部12に格納する(S6)。
【0033】
個人脳形状データ記憶部12は、脳の3D形状を示す個人脳形状データ120を記憶する。個人脳形状データ記憶部12は、例えば、上述のように脳形状データ生成部51が生成した個人脳形状データ120を記憶する。
【0034】
個人脳形状データ120は、被験者(個人脳)データ110の脳実質(白質及び灰白質部分)を示す脳形状を示すデータである。個人脳形状データ120は、被験者(個人脳)データ110と同じデータ構造を有している。個人脳形状データ120のデータ構造の一例を図3Bに示す。
【0035】
同図に示すように、個人脳形状データ記憶部120は、脳領域(脳実質に相当する領域)のボクセルに「1」、それ以外のボクセルには「0」がセットされている。ここで、「0」がセットされているボクセルと接している「1」がセットされているボクセルが、個人脳形状データ120における脳の表面を表す脳表ボクセルである。脳表ボクセルには、例えば「0」、「1」以外の値(例えば「2」)をセットしても良い。
【0036】
被験者(標準脳)データ記憶部61は、正規化・逆正規化処理部55で標準脳形状に正規化された、被験者(標準脳)データ610を記憶する。被験者(標準脳)データ610は、既に述べた被験者(個人脳)データ110と同様に、ボクセル形式のデータ構造を有する。
【0037】
健常者データ記憶部62には、あらかじめ収集しておいた健常者データ620が記憶されている。健常者データ記憶部62に記憶されている健常者データ620は、被験者(個人脳)データ110と同じ撮像方法(たとえば、MRI,CT,SPECTなど)によって予め収集しておいた、多数の健常者のボクセルデータを平均した平均ボクセルデータ620A(図3A参照)、及び平均ボクセルデータ620Aの標準偏差を示す標準偏差データ620B(図3B参照)が含まれる。平均ボクセルデータ620A及び標準偏差データ620Bは、いずれも標準脳に正規化された健常者のボクセルデータから算出されている。従って、平均ボクセルデータ620A及び標準偏差データ620Bも標準脳形式である。なお、ここでは健常者と被験者とを比較しているが、比較対象者は必ずしも健常者でなくても良い。
【0038】
Z値算出部53は、被験者(標準脳)データ記憶部61に記憶されている被験者(標準脳)データ610及び健常者データ記憶部62に記憶されている健常者データ620のそれぞれ対応するボクセル(同一画像の同一部位)を対比させてZ値を算出する。すなわち、Z値算出部53は、被験者(標準脳)データ610及び健常者データ620(平均ボクセルデータ620A及び標準偏差データ620B)を対比させて、各ボクセルについてZ値を算出する解析手段である。
【0039】
なお、本実施形態では、Z値を用いて被験者データの解析を行っているが、Z値以外の指標値、たとえばt値などを用いて解析しても良い。また、本実施形態では、被験者の個人脳を標準脳形状に正規化して健常者データと比較を行っているが、標準脳形状の健常者データを個人脳の形状に変換してから比較を行っても良い。例えば、このようにして、個人脳形状においてZ値を算出した場合、Z値(逆正規化)データ140に相当するZ値が直接算出されることになる。
【0040】
Z値(標準脳)データ記憶部64は、被験者(標準脳)データ610及び健常者データ620に基づいてZ値算出部53が算出した被験者の標準脳におけるZ値(標準脳)データ640を記憶する。Z値(標準脳)データ640は、被験者(標準脳)データ610などと同じデータ構造を有していて、各ボクセルにはそれぞれのZ値がセットされている。Z値(標準脳)データ640は、標準脳における被験者のZ値データである。
【0041】
標準脳形状データ記憶部63は、標準脳の3D形状を示す脳形状データを記憶する。標準脳形状データは、予め標準脳形状データ記憶部63に記憶されている。
【0042】
VOI(標準脳)データ記憶部65は、標準脳において設定された関心領域を示すVOIデータ660が記憶されている。VOIデータ660は、脳形状データ510などと同じデータ構造を有している。つまり、VOIデータ660のデータ構造は、図3Bの脳形状データ510と同様に、「0」と「1」のボクセル値を有する。すなわち、VOIデータ660は、VOI領域のボクセルには「1」、それ以外のボクセルには「0」がセットされている。互いに異なる複数のVOIが設定されているときは、VOI(標準脳)データ記憶部65に、VOI別に生成されたVOIデータ660を格納するようにしてもよい。あるいは、一つのVOIデータ660に、複数のVOIに関する情報を各VOIが識別可能に格納しても良い。たとえば、第1のVOIが設定されているボクセルには「1」、第2のVOIが設定されているボクセルには「2」、・・・というように設定しても良い。
【0043】
正規化・逆正規化処理部55は、被験者の個人脳(被験者(個人脳)データ110)を標準脳へ変換するための正規化処理を行う。さらに、正規化・逆正規化処理部55は、正規化処理の逆処理である、標準脳から個人脳へ戻すための逆正規化処理を行う。逆正規化処理では、例えば、正規化処理のときに使用したパラメータを用いて、正規化処理で行った変換の逆変換を行う。あるいは、正規化処理のときに使用したパラメータは用いずに、標準脳から個人脳へ変換しても良い。
【0044】
たとえば、正規化・逆正規化処理部55は、被験者(個人)データ110を正規化して、被験者(標準脳)データ610を生成し、被験者(標準脳)データ記憶部61へ格納する。また、正規化・逆正規化処理部55は、標準脳形状データ記憶部63に記憶されている標準脳形状データ記憶部630を逆正規化して標準脳形状(逆正規化)データ130を生成して、標準脳形状(逆正規化)データ記憶部13に格納する。同様に、正規化・逆正規化処理部55は、Z値(標準脳)データ記憶部64に記憶されているZ値(標準脳)データ640を逆正規化してZ値(逆正規化)データ140を生成し、Z値(逆正規化)データ記憶部14に格納する。さらに、正規化・逆正規化処理部55は、VOI(標準脳)データ記憶部65に記憶されているVOI(標準脳)データ650を逆正規化してVOI(逆正規化)データ160を生成し、VOI(逆正規化)データ記憶部16に格納する。
【0045】
標準脳形状(逆正規化)データ記憶部13は、上述したように、標準脳形状データ記憶部63に記憶されている標準脳形状データ630を、正規化・逆正規化処理部55で逆正規化して得られた標準脳形状(逆正規化)データ130を記憶する。
【0046】
Z値(逆正規化)データ記憶部14は、上述したように、Z値(標準脳)データ64に記憶されているZ値(標準脳)データ640を、正規化・逆正規化処理部55で逆正規化して得られたZ値(逆正規化)データ140を記憶する。つまり、Z値(逆正規化)データ140は、被験者のデータを標準脳において解析した解析結果を、個人脳形状へ変換したものである。
【0047】
VOI(逆正規化)データ記憶部16は、上述したように、VOI(標準脳)データ記憶部65に記憶されているVOI(標準脳)データ650を、正規化・逆正規化処理部55で逆正規化して得られたVOI(逆正規化)データ160を記憶する。つまり、VOI(標準脳)データ650は、各個人の脳の形状に応じたVOIを定める。
【0048】
形状調整部57は、Z値(逆正規化)データ140の調整を行って、Z値(調整済)データ150を生成する。上述の通り、Z値(逆正規化)データ140は標準脳での解析結果であるZ値(標準脳)データ640を、正規化・逆正規化処理部55で逆正規化処理を行って得たデータである。
【0049】
ここで、例えば、被験者の脳の一部に萎縮などによる欠損がある場合、標準脳に変換して健常者と比較をする解析を行うと、その欠損箇所にも解析結果の数値(ここではZ値)の値が存在する。つまり、欠損によって脳実質が存在しないはずの箇所にも、解析結果のZ値が存在する。このデータを正規化・逆正規化処理部55で個人脳形状へ逆正規化しても、依然として脳実質が存在しない箇所に解析結果の数値(ここではZ値)が存在することになる。
【0050】
そこで、形状調整部57は、個人脳形状データ記憶部12に記憶されている個人脳形状データ120に基づいて、Z値(逆正規化)データ140及びVOI(逆正規化)データ160を調整する。たとえば、形状調整部57は、Z値(逆正規化)データ140及びVOI(逆正規化)データ160に対して、個人脳形状データ120を当てはめて、個人脳形状データ120により定まる脳形状の領域あるいは脳実質の領域からはみ出している部分のZ値を0とし、VOIを消去する。
【0051】
例えば、図6(a)には、被験者の個人脳のあるスライスの形状を示す。同図に示すように、この被験者の脳は一部が萎縮している。同図(b)に示すように、同じ被験者のZ値(逆正規化)データ140に、個人脳形状データ120を重ねると、被験者の脳が存在しないこの萎縮部分にもZ値(逆正規化)データ140が存在する。そこで、形状調整部57はこの萎縮部分を除去する。これは、VOI(逆正規化)データ160に対しても同様である。
【0052】
Z値(調整済)データ記憶部15は、上述したように、Z値(逆正規化)データ記憶部14に記憶されているZ値(逆正規化)データを、形状調整部57が調整した結果得られたZ値(調整済)データ150を記憶する。
【0053】
VOI(調整済)データ記憶部17は、上述したように、VOI(逆正規化)データ記憶部16に記憶されているVOI(逆正規化)データを、形状調整部57が調整した結果得られたVOI(調整済)データ170を記憶する。
【0054】
図7は、脳表処理部10の構成を示す図である。
【0055】
脳表処理部10は、3D脳表データ記憶部19と、脳表データ生成部21と、2D(2次元)画像生成部23と、脳断面画像生成部25と、表示制御部27と、を有する。
【0056】
3D脳表データ記憶部19は、脳表データ生成部21が生成した、被験者(個人脳)データ110に基づく3D脳表データ(被験者脳表データ)191、VOI(調整済)データ170に基づくVOIの3D脳表データ(VOI脳表データ)193、及びZ値(調整済)データ150に基づくZ値の3D脳表データ(Z値脳表データ)195が格納される。
【0057】
脳表データ生成部21は、被験者(個人脳)データ110に基づいて、3Dの被験者脳表データ191を生成する。被験者脳表データ191は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和)のいずれかにより定まる3Dの脳表に、被験者(個人脳)データ110に基づく値を割り当てたものである。つまり、被験者脳表データ191は、脳の3次元的な形状の表面に、断層画像のボクセル値を割り当てたものである。
【0058】
また、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和)のいずれかが示す3D脳表に、VOI(調整済)データ170により定まる脳内のVOIを割り当てたVOI脳表データ193を生成する。
【0059】
さらに、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和)のいずれかが示す3D脳表に、Z値(調整済)データ150に基づいてZ値を割り当てた3DのZ値脳表データ195を生成する。
【0060】
脳表データ生成部21によって生成された被験者脳表データ191、VOI脳表データ193、及びZ値脳表データ195が3D脳表データ記憶部19に格納される。
【0061】
本実施形態では、脳表データ生成部21は、脳表の形状に応じたベクトルを生成するベクトル生成部211と、ベクトル生成部211で生成したベクトルを用いて脳表に値を割り当てる値決定部213とを有する。
【0062】
ベクトル生成部211は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130により定まる脳表上の点(ボクセル)を基点として、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130に基づいてその基点から脳模型の内部へ向かうベクトルを生成する。例えば、このベクトルは基点における法線を示すベクトルでも良いし、所定の基準点(たとえば、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130における脳の重心)へ向かうベクトルでも良い。ベクトルの基点となる脳表上の点は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130において「0」がセットされたボクセルと接する「1」がセットされたボクセルである。ベクトル生成部211は、このようにして定まるすべての基点に対して、図8を用いて以下に説明するような処理を行ってベクトルの方向を定めてもよい。
【0063】
図8は、ある脳表面近傍の個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130の分布を示す。同図において、ある脳表上の点を基点Oとして、その基点OにおけるベクトルVの算出の様子を示す図である。
【0064】
同図は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130におけるZ=N−1,N,N+1の3つのX−Y平面の一部を示す。3つのX−Y平面内の各ボクセル111(図中、符号は一カ所のみ示す)には、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130の値(「0」または「1」)がセットされている。ここでは、Z=NのX−Y平面上のある基点Oを中心とする相対座標で考える。
【0065】
まず、この基点Oを中心とした所定形状の領域の参照空間Rを定める。ここでは、参照空間Rは3×3×3の立方体形状とするが、これ以外の任意の形状でよい。ベクトル生成部211は、この参照空間R内の個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130が示す脳領域の形状に基づいてベクトルを決定する。たとえば、ベクトル生成部211は、参照空間R内の27ボクセルのうち、脳領域(つまり脳表面及び脳の内部)を構成する点(ボクセル)の分布に従ってベクトルの方向を定める。つまり、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130の値が「1」(脳領域)であるボクセルと、値が「0」(脳領域外)であるボクセルの分布によって、ベクトルの方向を定める。例えば、基点Oを中心の相対座標で考えると、値が「1」のボクセルの座標をそれぞれX,Y,Zで加算して、ベクトルの方向を定める。図8の例では、値が「1」のボクセルの相対座標は、Z=N−1の平面では(−1,−1,−1)、(−1,0,−1)、(−1,1,−1)の3点、Z=Nの平面では(−1,−1,0)、(−1,0,0)、(−1,1,0)、(0,−1,0)、(0,0,0)の5点、Z=N+1の平面では(−1,−1,1)、(−1,0,1)、(−1,1,1)、(0,−1,1)、(0,0,1)、(0,1,1)、(1,−1,1)、(1,0,1)、(1,1,1)の9点となる。その結果、これらの座標の合計により求まるベクトルは、V=(−6,−1,6)となる。このベクトルを単位ベクトル化しても良いし、所定の大きさに揃えても良い。
【0066】
値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルが通過する一以上のボクセル、換言すると、そのベクトルの方向に位置する一以上のボクセルの値に基づいて、基点に割り当てる値を決定する。
【0067】
例えば、値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルの方向へ、所定距離だけ離れた点のボクセルの値を基点に割り当ててもよい。つまり、値決定部213は、そのベクトルの長さを所定値に定めて、そのベクトルの終点から最も近いボクセルの値を、ベクトルの基点の値としても良い。このとき、ベクトルの長さは、脳の部位によって異なっても良い。たとえば、頭頂部、側頭部、前頭部、後頭部、基底部などで、それぞれ長さを変えても良い。
【0068】
また、値決定部213は、ベクトル生成部211が生成したベクトルの長さを所定値に定めて、そのベクトルが通過するボクセル(あるいは、通過する領域の近傍のボクセル)の値の平均値、中央値、最大値、2番目に大きな値などを基点に割り当ててもよい。
【0069】
値決定部213は、被験者(個人脳)データ110、Z値(調整済)データ150あるいはVOI(調整済)データ170データのそれぞれに対して、上記のいずれかの割り当てる手法を用いて、被験者脳表データ191、VOI脳表データ193及びZ値脳表データ195を生成しても良い。例えば、被験者脳表データ191を生成する際は、基点から所定距離だけ離れた点の被験者(個人脳)データ110のボクセルの値を基点に割り当てるようにしてもよい。また、Z値脳表データ195を生成する際は、所定の長さに定めたベクトルが通過するボクセルのZ値(調整済)データ150の値の平均値あるいは中央値を基点に割り当ててもよい。VOI脳表データ193を生成する際は、VOI(調整済)データ170において、ベクトルの方向に存在するVOIのうち、基点から最も近いVOIを割り当てても良い。
【0070】
図9は、VOI脳表データ193生成時のVOI割り当て処理の説明図である。たとえば、同図に示すように、ベクトル生成部211が生成した基点O1から出るベクトルV1の方向にはVOI−AとVOI−Bとが存在するが、最も手前にあるVOI−Aが基点O1に割り当てられる。同様に、基点O2には、ベクトル生成部211が生成したベクトルV2の方向の最も手前にあるVOI−Bが割り当てられる。
【0071】
図7に戻ると、2D画像生成部23は、3D脳表データ記憶部19に格納されている3種類の3D脳表データ191,193,195に基づいて、それぞれの2次元の脳表画像を生成する。例えば、2D画像生成部23は、被験者脳表データ191を2次元平面へ投影した被験者画像を生成し、VOI脳表データ193に基づく脳表でのVOIの分布を2次元平面に示したVOI分布画像を生成し、Z値脳表データ195に基づく脳表でのZ値の分布を2次元平面に示したZ値分布画像を生成する。2D画像生成部23は、3種類の3D脳表データ191,193,195のそれぞれに対して、3D脳表の6面図(正面図、背面図、左右側面図、平面図、底面図)を生成する。
【0072】
脳断面画像生成部25は、被験者(個人脳)データ110,個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130、Z値(調整済)データ150及びVOI(調整済)データ170に基づいて、脳の断面の被験者画像、VOI分布画像及びZ値分布画像を生成する。例えば、脳断面画像生成部25は、以下のような手順で脳の断面を定め、その断面図に相当する画像を生成する。すなわち、脳断面画像生成部25は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130が示す脳形状を任意の面で切った断面を定める。そして、脳断面画像生成部25は、個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130でこの断面における脳領域を特定し、脳領域内のすべての点において、断面に対する法線ベクトルを定める。ここで、脳断面画像生成部25は、被験者(個人脳)データ110に対しては、基点からその法線ベクトルの方向へ所定距離の位置にあるボクセルの被験者(個人脳)データ110の値を、各基点に割り当てて、断面の被験者画像を生成する。また、脳断面画像生成部25は、VOI(調整済)データ170に対しては、法線ベクトルの方向に存在するVOIのうち、各基点から最も近いVOIをそれぞれの基点に割り当てる。さらに、脳断面画像生成部25は、Z値(調整済)データ150に対しては、法線ベクトルが通過するボクセルのZ値(調整済)データ150の値の平均値あるいは中央値を、各基点に割り当てる。
【0073】
本実施形態では、脳断面画像生成部25は、脳の中心を左右に分割した断面について、被験者画像、VOI分布画像及びZ値分布画像をそれぞれ生成する。
【0074】
表示制御部27は、2D画像生成部23及び脳断面画像生成部25が生成した2次元の画像を、表示装置3に表示させるための制御を行う。図10及び図11は、表示制御部27が表示装置3に表示させる画像の一例を示す。
【0075】
図10(a)に示すように、被験者画像は、脳表に割り当てられた被験者(個人脳)データ110の値に応じた白黒画像で表示される。
【0076】
図10(b)は、被験者画像にVOI画像を重ねて表示した表示例を示す。VOI画像でのVOIの表示は、VOIごとに異なる色を用いるなど、VOIが識別できるようにVOIごとに表示態様を替えても良い。また、VOI内を塗りつぶしても良いし、VOIの輪郭だけ表示しても良い。
【0077】
図11は、被験者画像に同一被験者のZ値画像を重ねて表示した表示例を示す。Z値画像は、同図に示すように、Z値の値に応じた表示態様(例えば、値に応じて色を替えるなど)で表示しても良い。
【0078】
さらに、図示することは省略するが、被験者画像にVOI画像及び同一被験者のZ値画像を重ねて表示することもできる。
【0079】
表示制御部27は、この他に、異なる被験者の被験者画像を重ねたり、異なる被験者のZ値画像を重ねたりして、被験者間で比較しても良い。あるいは、表示制御部27は、各脳表データ191、193,195に基づいて、3Dのままの脳表を表示しても良い(OPENGL、Direct3D)。
【0080】
次に、上記のような構成を備えた脳表表示装置1の処理手順について、図12〜図16を用いて説明する。
【0081】
まず、脳表表示装置1の全体処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0082】
被験者解析部50が、被験者データの解析を行う(S11)。
【0083】
次に、脳表データ生成部21は、3種類の3D脳表データ191,193,195を生成して、3D脳表データ記憶部19に格納する(S13)。
【0084】
2D画像生成部23は、3D脳表データ記憶部19に格納されている3D脳表データ191,193,195から、3D脳表を2次元に投影したそれぞれの2次元画像を生成する(S15)。
【0085】
脳断面画像生成部25は、被験者(個人脳)データ110、Z値(調整済)データ150及びVOI(調整済)データ170から、脳を中央で左右に分割したそれぞれの断面画像を生成する(S17)。
【0086】
そして、表示制御部27が、ステップS15及びS17で生成した断面画像を表示装置3に表示させる(S19)。
【0087】
なお、図12の例では、3D脳表データ及び2D画像を生成した後に脳断面画像を生成しているが、脳断面画像を先に生成しても良い。
【0088】
次に、ステップS11の被験者解析処理について、図13のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0089】
脳形状データ生成部51が被験者(個人脳)データ記憶部11の被験者(個人脳)データ110に基づいて、個人脳形状データ120を生成して、個人脳形状データ記憶部12に格納する(S101)。
【0090】
正規化・逆正規化処理部55が、各被験者の被験者(個人脳)データ110を標準脳の形状に正規化する(S103)。そして、生成された被験者(標準脳)データ610を被験者(標準脳)データ記憶部61に格納する。
【0091】
Z値算出部53は、各被験者の被験者(標準脳)データ610及び健常者データ620に基づいて、被験者ごとに、標準脳形状におけるZ値を算出する(S105)。ここで算出されたZ値(標準脳)データ640がZ値(標準脳)データ記憶部64に格納される。
【0092】
正規化・逆正規化処理部55は、標準脳形状データ記憶部63に記憶されている標準脳形状データ630,Z値(標準脳)データ記憶部64に記憶されているZ値(標準脳)データ640及びVOI(標準脳)データ記憶部65に記憶されているVOI(標準脳)データ650を、それぞれ逆正規化する(S107)。そして、ここで生成された標準脳形状(逆正規化)データ130,Z値(逆正規化)データ140及びVOI(逆正規化)データ160が、それぞれ標準脳形状(逆正規化)データ記憶部13,Z値(逆正規化)データ記憶部14及びVOI(逆正規化)データ記憶部16に格納される。
【0093】
脳形状データ生成部51は、個人脳形状データ120を用いて、Z値(逆正規化)データ140及びVOI(逆正規化)データ160の形状調整を行う(S109)。そして、形状調整後のZ値(調整済)データ150及びVOI(調整済)データ170をZ値(調整済)データ記憶部15及びVOI(調整済)データ記憶部17に格納する。
【0094】
これにより、以後の処理で使用する個人脳形状データ120,標準脳形状(逆正規化)データ130,Z値(調整済)データ150及びVOI(調整済)データ170が生成された。
【0095】
次に、ステップS13の3D脳表データ生成処理について、図14のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0096】
脳表データ生成部21が、個人脳形状データ記憶部12から個人脳形状データ120または標準脳形状(逆正規化)データ130を読み込む(S21)。さらに、脳表データ生成部21は、被験者(個人脳)データ記憶部11から被験者(個人脳)データ110を読み込む(S23)。そして、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120(または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和))及び被験者(個人脳)データ110から、被験者脳表データ191を生成する(S25)。
【0097】
次に、脳表データ生成部21は、VOI(調整済)データ記憶部17からVOI(調整済)データ170を読み込む(S27)。そして、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120(または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和))及びVOI(調整済)データ170から、VOI脳表データ193を生成する(S29)。なお、ここでは、VOI(調整済)データ170の代わりにVOI(逆正規化)データ160を用いても良い。
【0098】
さらに、脳表データ生成部21は、Z値(調整済)データ記憶部15からZ値(調整済)データ150を読み込む(S31)。そして、脳表データ生成部21は、個人脳形状データ120(または標準脳形状(逆正規化)データ130、あるいは、個人脳形状データ120と標準脳形状(逆正規化)データ130のAND(論理和))及びZ値(調整済)データ150から、Z値脳表データ195を生成する(S33)。なお、ここでは、Z値(調整済)データ150の代わりにZ値(逆正規化)データ140を用いても良い。
【0099】
なお、図14の例では、被験者脳表データ、VOI脳表データ、Z値脳表データの順に生成しているが、この順序は自由に入れ替え可能である。
【0100】
ここで、ステップS25,S29及びS33についてさらに詳細に説明する。
【0101】
図15は、ステップS25の被験者脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0102】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S41、S43)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0103】
そして、値決定部213が、基点からステップS43で求めたベクトルの方向へ所定距離のボクセルの被験者(個人脳)データ110の値を、その基点に割り当てる(S45)。
【0104】
ステップS41〜S45までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S47)、被験者脳表データ191を生成する。生成された被験者脳表データ191は、脳表データ記憶部19に格納される(S49)。
【0105】
次に、図16は、ステップS29のVOI脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0106】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S51、S53)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0107】
そして、値決定部213が、VOI(調整済)データ170において、基点からステップS53で求めたベクトルの方向に存在するVOIのうち、最も基点に近いVOIを選択して、その基点は、脳表における選択されたVOIの領域とする(S55)。ここで、上記ベクトルの方向にVOIが存在しないときは、基点に何れのVOIを割り当てない。
【0108】
ステップS51〜S55までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S57)、VOI脳表データ193を生成する。生成されたVOI脳表データ193は、脳表データ記憶部19に格納される(S59)。
【0109】
図17は、ステップS33のZ値脳表データ生成処理の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0110】
まず、ベクトル生成部211が脳表上のボクセルを基点として選択し、その基点からのベクトルを算出する(S61、S63)。この詳細な処理は上述の通りである。
【0111】
そして、値決定部213が、ステップS63で求めたベクトルのベクトル長を所定長さに定め、基点からそのベクトル終点までにベクトルが通過したボクセルのZ値(調整済)データ150の値を、その起点に割り当てる(S65)。
【0112】
ステップS61〜S65までの処理を、脳表上のすべてのボクセルに対して行って(S57)、Z値脳表データ195を生成する。生成されたZ値脳表データ195は、脳表データ記憶部19に格納される(S69)。
【0113】
上記のような処理により、脳表表示を行うことができる。なお、上記の実施形態では、脳表表示装置1は、被験者脳表データ、VOI脳表データ及びZ値脳表データを生成しているが、いずれか一つ以上を選択的に生成しても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、脳表(脳の表面)表示について説明したが、本発明を脳以外の人体の一部、例えば特定の器官に対して適用し、その器官の表面を表示させることもできる。例えば、脳の代わりに心臓に対しても適用可能である。
【0115】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 脳表表示装置
10 脳表処理部
11 被験者(個人脳)データ記憶部
12 個人脳形状データ記憶部
13 標準脳形状(逆正規化)データ記憶部
14 Z値(逆正規化)データ記憶部
15 Z値(調整済)データ記憶部
16 VOI(逆正規化)データ記憶部
17 VOI(調整済)データ記憶部
50 被験者解析部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた、前記被験者個人の器官形状に従う被験者個人形状データを記憶する第1の記憶手段と、
前記器官の形状が標準の器官形状になるように、前記被験者個人形状データを被験者標準形状データへ正規化する正規化手段と、
比較対象者の前記器官の断層撮影データであって、標準の器官形状に従う比較対象者標準形状データと、前記被験者標準形状データとを対比して解析する解析手段と、
前記解析手段による、前記標準形状に従う解析結果を示す標準形状解析結果データを記憶する第2の記憶手段と、
前記標準形状解析結果データを、前記被験者個人の器官形状に従う個人形状解析結果データへ逆正規化する逆正規化手段と、
前記被験者個人の器官形状に従う、3次元形状データを記憶する第3の記憶手段と、
前記3次元形状データ及び前記個人形状解析結果データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に前記個人形状解析結果データの値を有する3次元器官表面データを生成する3次元器官表面データ生成手段と、
前記3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の個人形状解析結果データを2次元表示した2次元器官画像を生成する2次元器官画像生成手段と、
前記2次元器官画像生成手段により生成された2次元器官画像を表示装置へ表示させる表示制御手段と、を備えた器官表面画像の表示装置。
【請求項2】
前記逆正規化手段は、前記器官を標準形状から前記被験者個人の器官形状へ変換したときに、前記被験者個人の器官が存在しない領域に変換後のデータが存在するときは、前記被験者個人の器官が存在しない領域の値をゼロとする、請求項1記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項3】
前記被験者の前記器官を断層撮影して得られた形態画像から、前記被験者個人の器官形状を抽出して、前記被験者個人の器官形状に従う3次元形状データを生成する手段をさらに備える、請求項1または2に記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項4】
前記比較対象者標準形状データを前記正規化手段が用いたパラメータを用いて逆正規化して、前記被験者個人の器官形状に従う3次元形状データを生成する手段をさらに備える、請求項1または2に記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項5】
前記3次元器官表面データ生成手段は、
前記3次元形状データが示す前記器官の3次元形状の表面上の点を基点とし、前記3次元形状データに基づいて前記基点から前記器官の内部へ向かうベクトルを生成し、前記生成したベクトルの方向の前記被験者データの値に基づいて、前記基点に割り当てる値を定めて、前記器官の3次元形状の表面に被験者データの値を有する3次元器官表面データを生成する、請求項1〜4のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項6】
前記器官は、脳または心臓であることを特徴とする請求項1〜5に記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項7】
前記被験者データは、MRI(Magnetic Resonace Imaging)データ、CT(Computed Tomography)データSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)データ、及びPET(Positron Computed Tomography)データのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項8】
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた、前記被験者個人の器官形状に従う被験者個人形状データを記憶手段に記憶するステップと、
前記器官の形状が標準の器官形状になるように、前記被験者個人形状データを被験者標準形状データへ正規化するステップと、
比較対象者の前記器官の断層撮影データであって、標準の器官形状に従う比較対象者標準形状データと、前記被験者標準形状データとを対比して解析するステップと、
前記解析による、前記標準形状に従う解析結果を示す標準形状解析結果データを、前記被験者個人の器官形状に従う個人形状解析結果データへ逆正規化するステップと、
前記被験者個人の器官形状に従う、3次元形状データ及び前記個人形状解析結果データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に前記個人形状解析結果データの値を有する3次元器官表面データを生成するステップと、
前記3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の個人形状解析結果データを2次元表示した2次元器官画像を生成するステップと、
前記生成された2次元器官画像を表示装置へ表示させるステップと、を備えた器官表面画像の表示方法。
【請求項9】
器官表面画像を表示するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた、前記被験者個人の器官形状に従う被験者個人形状データを記憶手段に記憶するステップと、
前記器官の形状が標準の器官形状になるように、前記被験者個人形状データを被験者標準形状データへ正規化するステップと、
比較対象者の前記器官の断層撮影データであって、標準の器官形状に従う比較対象者標準形状データと、前記被験者標準形状データとを対比して解析するステップと、
前記解析による、前記標準形状に従う解析結果を示す標準形状解析結果データを、前記被験者個人の器官形状に従う個人形状解析結果データへ逆正規化するステップと、
前記被験者個人の器官形状に従う、3次元形状データ及び前記個人形状解析結果データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に前記個人形状解析結果データの値を有する3次元器官表面データを生成するステップと、
前記3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の個人形状解析結果データを2次元表示した2次元器官画像を生成するステップと、
前記生成された2次元器官画像を表示装置へ表示させるステップと、を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項1】
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた、前記被験者個人の器官形状に従う被験者個人形状データを記憶する第1の記憶手段と、
前記器官の形状が標準の器官形状になるように、前記被験者個人形状データを被験者標準形状データへ正規化する正規化手段と、
比較対象者の前記器官の断層撮影データであって、標準の器官形状に従う比較対象者標準形状データと、前記被験者標準形状データとを対比して解析する解析手段と、
前記解析手段による、前記標準形状に従う解析結果を示す標準形状解析結果データを記憶する第2の記憶手段と、
前記標準形状解析結果データを、前記被験者個人の器官形状に従う個人形状解析結果データへ逆正規化する逆正規化手段と、
前記被験者個人の器官形状に従う、3次元形状データを記憶する第3の記憶手段と、
前記3次元形状データ及び前記個人形状解析結果データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に前記個人形状解析結果データの値を有する3次元器官表面データを生成する3次元器官表面データ生成手段と、
前記3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の個人形状解析結果データを2次元表示した2次元器官画像を生成する2次元器官画像生成手段と、
前記2次元器官画像生成手段により生成された2次元器官画像を表示装置へ表示させる表示制御手段と、を備えた器官表面画像の表示装置。
【請求項2】
前記逆正規化手段は、前記器官を標準形状から前記被験者個人の器官形状へ変換したときに、前記被験者個人の器官が存在しない領域に変換後のデータが存在するときは、前記被験者個人の器官が存在しない領域の値をゼロとする、請求項1記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項3】
前記被験者の前記器官を断層撮影して得られた形態画像から、前記被験者個人の器官形状を抽出して、前記被験者個人の器官形状に従う3次元形状データを生成する手段をさらに備える、請求項1または2に記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項4】
前記比較対象者標準形状データを前記正規化手段が用いたパラメータを用いて逆正規化して、前記被験者個人の器官形状に従う3次元形状データを生成する手段をさらに備える、請求項1または2に記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項5】
前記3次元器官表面データ生成手段は、
前記3次元形状データが示す前記器官の3次元形状の表面上の点を基点とし、前記3次元形状データに基づいて前記基点から前記器官の内部へ向かうベクトルを生成し、前記生成したベクトルの方向の前記被験者データの値に基づいて、前記基点に割り当てる値を定めて、前記器官の3次元形状の表面に被験者データの値を有する3次元器官表面データを生成する、請求項1〜4のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項6】
前記器官は、脳または心臓であることを特徴とする請求項1〜5に記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項7】
前記被験者データは、MRI(Magnetic Resonace Imaging)データ、CT(Computed Tomography)データSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)データ、及びPET(Positron Computed Tomography)データのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の器官表面画像の表示装置。
【請求項8】
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた、前記被験者個人の器官形状に従う被験者個人形状データを記憶手段に記憶するステップと、
前記器官の形状が標準の器官形状になるように、前記被験者個人形状データを被験者標準形状データへ正規化するステップと、
比較対象者の前記器官の断層撮影データであって、標準の器官形状に従う比較対象者標準形状データと、前記被験者標準形状データとを対比して解析するステップと、
前記解析による、前記標準形状に従う解析結果を示す標準形状解析結果データを、前記被験者個人の器官形状に従う個人形状解析結果データへ逆正規化するステップと、
前記被験者個人の器官形状に従う、3次元形状データ及び前記個人形状解析結果データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に前記個人形状解析結果データの値を有する3次元器官表面データを生成するステップと、
前記3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の個人形状解析結果データを2次元表示した2次元器官画像を生成するステップと、
前記生成された2次元器官画像を表示装置へ表示させるステップと、を備えた器官表面画像の表示方法。
【請求項9】
器官表面画像を表示するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
被験者の体内の器官を断層撮影して得られた、前記被験者個人の器官形状に従う被験者個人形状データを記憶手段に記憶するステップと、
前記器官の形状が標準の器官形状になるように、前記被験者個人形状データを被験者標準形状データへ正規化するステップと、
比較対象者の前記器官の断層撮影データであって、標準の器官形状に従う比較対象者標準形状データと、前記被験者標準形状データとを対比して解析するステップと、
前記解析による、前記標準形状に従う解析結果を示す標準形状解析結果データを、前記被験者個人の器官形状に従う個人形状解析結果データへ逆正規化するステップと、
前記被験者個人の器官形状に従う、3次元形状データ及び前記個人形状解析結果データに基づいて、前記器官の3次元形状の表面に前記個人形状解析結果データの値を有する3次元器官表面データを生成するステップと、
前記3次元器官表面データに基づいて、前記器官の表面の個人形状解析結果データを2次元表示した2次元器官画像を生成するステップと、
前記生成された2次元器官画像を表示装置へ表示させるステップと、を実行させるためのコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−172511(P2010−172511A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18807(P2009−18807)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000149837)富士フイルムRIファーマ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000149837)富士フイルムRIファーマ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
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