説明

回路基板、及び電子機器

【課題】熱伝導性を向上させつつ温度変化に対する耐久性を向上させることができる回路基板、及びその回路基板を備えた電子機器を提供することにある。
【解決手段】六方晶窒化ホウ素の結晶23を含有する熱硬化性エポキシ樹脂24からなる絶縁層13を備えた回路基板12において、六方晶窒化ホウ素の結晶23は、そのa軸及びb軸方向が絶縁層13の面方向に沿うように配向されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、及び回路基板を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回路基板に各種の電子部品を実装した電子機器では、電子部品の駆動に伴って発生する熱を放熱することにより、各電子部品の動作を安定化させることが行われている。このような電子機器に用いられる回路基板として、例えば、絶縁性を有する基板上に六方晶窒化ホウ素の薄膜(hBN層)を形成した基板が提案されている(特許文献1)。特許文献1の回路基板では、電子部品の駆動に伴って発生した熱をhBN層によって基板の面方向に逃がすようになっており、電子部品の放熱性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−161168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回路基板では、絶縁性を有する基板とhBN層とでその熱膨張係数が異なることから、電子部品の駆動及び停止に伴う温度上昇及び温度下降が繰り返されることにより、hBN層が基板から剥離しやすくなる虞がある。このため、熱伝導性を向上させつつも、温度変化に対する耐久性を向上させることが期待されていた。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、熱伝導性を向上させつつ温度変化に対する耐久性を向上させることができる回路基板、及びその回路基板を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、六方晶窒化ホウ素の微粒子を含有する絶縁性樹脂からなる絶縁層を備えた回路基板において、前記六方晶窒化ホウ素の微粒子は、前記六方晶窒化ホウ素の六員環の面方向に対応するa軸及びb軸方向が前記絶縁層の面方向に沿うように配向されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、絶縁層には、六方晶窒化ホウ素が含有されていることから、絶縁層の表面に六方晶窒化ホウ素の薄膜を形成する従来の構成と比較して、六方晶窒化ホウ素が温度変化に起因して絶縁層から剥離してしまうことが抑制される。さらに、絶縁層に含有される六方晶窒化ホウ素は、六員環の面方向に対応するa軸及びb軸方向が絶縁層の面方向に沿うように配向されることから、絶縁層の面方向に対する熱伝導性を向上させることができる。したがって、請求項1に記載の発明によれば、熱伝導性を向上させつつ温度変化に対する耐久性を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回路基板において、前記絶縁層における前記六方晶窒化ホウ素の含有量は、50体積%以上80体積%以下であることを要旨とする。
【0009】
これによれば、六方晶窒化ホウ素の含有量が50体積%未満である場合と比較して熱伝導率を好適に向上できる一方で、80体積%を超える場合と比較して絶縁層の強度が不足することを抑制できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の回路基板において、前記六方晶窒化ホウ素の微粒子の前記a軸及びb軸方向の長さを前記六員環の積層方向に対応するc軸方向の長さで除した値であるアスペクト比は、2以上10以下であることを要旨とする。
【0011】
これによれば、六方晶窒化ホウ素のアスペクト比が2未満である場合と比較して絶縁層の面方向に対する熱伝導率を向上できる一方で、10を超える場合と比較して絶縁層の強度が低下することを抑制できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板と、前記回路基板に実装され、駆動により発熱する発熱部品と、熱交換媒体との間で熱交換するための熱交換部材と、を備えた電子機器において、前記発熱部品及び前記放熱部材は前記回路基板を介して熱的に接続されていることを要旨とする。
【0013】
これによれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板を介して、発熱部品と熱交換媒体との間で熱交換をすることができる。このため、発熱部品で発生した熱を熱交換媒体へ伝達するための専用部品を別に設ける構成と比較して、部品点数が増加することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱伝導性を向上させつつ温度変化に対する耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】DC/DCコンバータの模式斜視図。
【図2】図1に示すA−B−C−D模式断面図。
【図3】絶縁層の模式断面図。
【図4】六方晶窒化ホウ素の結晶の模式斜視図。
【図5】六方晶窒化ホウ素及びアルミナの含有量を変化させた場合における熱伝導率のシミュレーション結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図5にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態の電子機器としてのDC/DCコンバータ10は、有底の長方形箱状をなすハウジング11を備えるとともに、このハウジング11の内部に各種の電子部品を配設した回路基板12が収容された構成とされている。ハウジング11は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性の高い材料により形成されている。
【0017】
図2に示すように、回路基板12は、絶縁性を有する絶縁層13の両面に対し、厚みが0.1〜0.5mmの厚銅箔パターン14を接着した両面基板とされている。以下の説明では、図1に示す絶縁層13の面方向のうち矢印Yaに示す方向を前後方向とするとともに、矢印Ybに示す方向を左右方向とし、さらに矢印Ycに示す方向を上下方向とする。
【0018】
図2に示すように、絶縁層13は、上面及び下面が相互に平行をなすとともに、その全体として平板状(又は略平板状)に形成されている。また、絶縁層13には、ネジScを挿通する複数の挿通孔13aが形成されている。ハウジング11の底面には、ハウジング11の開口部に向かって突出するように複数の固定部11aが形成されているとともに、この固定部11aには、ネジ穴11bがそれぞれ設けられている。そして、回路基板12は、挿通孔13aに挿通した各ネジScを対応するネジ穴11bにそれぞれ螺入することにより、固定部11aに密着された状態でハウジング11に固定されている。回路基板12には、IGBTやMOSFETなどの複数のパワー半導体素子Sdが厚銅箔パターン14に半田付けされ、表面実装されている。
【0019】
また、回路基板12には、トランス15が配設されている。トランス15は、例えばフェライトなどの軟磁性材料からなるコア16を備えている。コア16は、側面視(断面視)で横倒し略E字状をなし回路基板12の上面側に配設される上側コア部材17と、全体が略樋状をなし回路基板12の下面側に配設される下側コア部材18とから構成されている。両コア部材17,18は、回路基板12の上下からこの回路基板12を挟持するように配設される。
【0020】
上側コア部材17は、略長方形平板状をなすベース部17aと、このベース部17aの中央部から絶縁層13側へ向かって突出する略円柱状の第1脚部17bと、ベース部17aの両端から絶縁層13側へ向かって突出する一対の第2脚部17cとから構成されている。また、下側コア部材18は、略長方形平板状をなすベース部18aと、ベース部18aの両端から絶縁層13側へ向かって突出する一対の壁部18bとから構成されている。
【0021】
上側コア部材17は、回路基板12の上面側に対し、絶縁層13に形成された平面視で円形の貫通孔13bに第1脚部17bを挿通させた状態で組み付けられている。この状態において、第1脚部17bの先端部に形成された平面は、下側コア部材18のベース部18aから僅かに離間した位置に配設される共に、第2脚部17cの先端部に形成された平面は、絶縁層13の上面に密着している。
【0022】
一方、下側コア部材18は、絶縁層13の下面側に対し、壁部18bの先端部に形成された平面が絶縁層13の下面に密着するように組み付けられている。上側コア部材17の第2脚部17c及び下側コア部材18の壁部18bは、それぞれ先端部に形成された平面同士が絶縁層13を介して上下に対向するように配置される。
【0023】
また、下側コア部材18の下面側には、この下側コア部材18とハウジング11とを熱的に接続するように熱伝導性シート20が配設されている。なお各コア部材17,18は、厚銅箔パターン14から離間させて配設されており、厚銅箔パターン14とは非接触状態とされている。
【0024】
絶縁層13の上面及び下面には、絶縁層13の貫通孔13bの周囲を囲うようにコイル21が形成(パターニング)されている。コイル21は、銅箔(銅板)を打ち抜き加工して形成されている。また、絶縁層13の上面に形成されたコイル21の巻回数(ターン数)は5回である一方で、絶縁層13の下面に形成されたコイル21の巻回数(ターン数)は1回とされており、その巻回数が異ならされている。各コイル21は、コア部材17,18の内側において、それぞれコア部材17,18から離間させて配設されており、コア部材17,18とは非接触状態とされている。
【0025】
次に絶縁層13について詳しく説明する。
図3に示すように、本実施形態の絶縁層13は、六方晶窒化ホウ素の微粒子としての結晶(以下単に「窒化ホウ素」と示す)23を含有する絶縁性樹脂としての熱硬化性エポキシ樹脂24から形成されている。即ち、窒化ホウ素23は、無機フィラー(充填剤)として熱硬化性エポキシ樹脂24に配合(添加)されている。
【0026】
また、図4に示すように、窒化ホウ素23は、矢印Caに示すa軸及び矢印Cbに示すb軸方向の長さが好ましくは1〜300μmであるのに対して矢印Ccに示すc軸方向の長さが好ましくは0.5〜150μmであり、そのアスペクト比が好ましくは2〜10とされている。ここでアスペクト比は、a軸及びb軸、またはその何れかの方向の長さをc軸方向の長さで除した値である。窒化ホウ素23のアスペクト比が2未満である場合には、絶縁層13の面方向に対する熱伝導率を向上し難くなる一方で、10を超える場合には絶縁層13の強度が低下し易くなる。また、窒化ホウ素23のa軸方向の長さ、又はb軸方向の長さは、絶縁層13の上下方向の長さ(厚さ)の好ましくは10%以上40%以下の長さとされている。このように、各窒化ホウ素23は、a軸及びb軸方向に延びる扁平な板状(うろこ状)をなしている。
【0027】
ここで、窒化ホウ素23は、窒素及びホウ素からなる化合物であり、窒素原子とホウ素原子とを交互に配置した六員環がa軸及びb軸方向に連なる網目構造を有し、さらにこの網目構造がc軸方向に積層された構造とされている。つまり、窒化ホウ素23の結晶構造六員環の面方向はa軸及びb軸方向に対応しているとともに、上記六員環の積層方向はc軸方向に対応している。このため、窒化ホウ素23では、a軸及びb軸方向の熱伝導率が20〜30W/mKとなり、例えばアルミナ(Al)やガラス繊維などといった他の無機フィラーの熱伝導率と比較して高い値を示す。なお、窒化ホウ素23において、c軸方向の熱伝導率は、a軸及びb軸方向の熱伝導率と比較して低い値となる。
【0028】
また、窒化ホウ素23の熱膨張係数は0.5〜0.7×10−6/℃であり、例えばアルミナ(熱膨張係数=5〜7×10−6/℃)などと比較して小さく、温度変化に伴う寸法変化が生じ難い。また、窒化ホウ素23の熱膨張係数は、熱硬化後における熱硬化性エポキシ樹脂24の熱膨張係数と略同一である。また、窒化ホウ素23の硬度はアルミナと比較して低い。
【0029】
そして図3に示すように、絶縁層13内において、窒化ホウ素23は何れもa軸及びb軸が絶縁層13の面方向(前後方向及び左右方向)に沿うように配向されている。換言すれば、「絶縁層13の面方向に沿う」とは、窒化ホウ素23のa軸及びb軸から規定されるab軸平面と、絶縁層13の表面(上面及び下面)とが完全に平行である状態のほか、ab軸平面が絶縁層13の表面(上面及び下面)とわずかな角度を持って交差している状態をも含むものとする。
【0030】
例えば、窒化ホウ素23aは、絶縁層13内においてa軸及びb軸が絶縁層13の面方向と平行となるように配置されている。一方、窒化ホウ素23bは、絶縁層13内においてa軸又はb軸が絶縁層13の面方向と交差するように配置されているものの、その傾きは僅かであり、絶縁層13の面方向に沿っているといえる。
【0031】
このように、本実施形態では、絶縁層13の面方向と平行な窒化ホウ素23、及び交差する窒化ホウ素23が混在した状態となっている。このため、絶縁層13内においては、窒化ホウ素23同士が熱硬化性エポキシ樹脂24によって完全に隔てられている場合のほか、窒化ホウ素23同士が接触している場合もある。
【0032】
また、絶縁層13(熱硬化性エポキシ樹脂24)における窒化ホウ素23の含有量は、好ましくは50体積%以上80体積%以下とされており、より好ましくは60体積%以上70体積%以下である。
【0033】
絶縁層13にアルミナを含有させた場合には、図5のシミュレーション結果において一点鎖線で示すように、その含有量を増加させた場合であっても、熱伝導率が緩やかにしか増加しない。一方、絶縁層13に窒化ホウ素23を含有させた場合には、図5において実線で示すように、その含有量が50体積%以上である場合に同量のアルミナを配合した場合と比較して熱伝導率が有意に向上される。その差は、絶縁層13における窒化ホウ素23の含有量が60体積%以上である場合により顕著となる。
【0034】
また、絶縁層13における窒化ホウ素23の含有量が80体積%を超える場合には、熱硬化性エポキシ樹脂24が不足することに伴って絶縁層13の強度が低下する一方で、その含有量が好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である場合には、絶縁層13の強度を十分に維持することができる。
【0035】
次に、回路基板12、及びDC/DCコンバータ10の製造方法について説明する。
最初に、熱硬化前のエポキシ樹脂に対して50体積%以上80体積%以下の窒化ホウ素23を添加するとともに、この窒化ホウ素23が均一に分散されるように練り合わせ、熱硬化性エポキシ樹脂24と窒化ホウ素23の混合体を得る。この状態において、窒化ホウ素23は熱硬化性エポキシ樹脂24内においてランダムに分散しており、特定方向に配向されていない。
【0036】
次に、金属トレー(印刷台)上にマスクスクリーンを載置するとともに、このマスクスクリーンごしにスクレーパ(スキージ)を用いて上述した混合体を伸ばしつつ均一に塗布する(塗布工程)。このように、塗布工程においてスクレーパを用いて混合体を伸ばすことにより、図3に示すように、窒化ホウ素23は、金属トレー上に形成された絶縁層13内において、そのa軸及びb軸が絶縁層13の面方向に沿うように配向される。
【0037】
なお、スクリーンマスクは、混合体を透過しないスクリーンに対し、絶縁層13と同一形状となるように混合体を透過する透過部を設けた構成とされている。また、スクリーンマスクの厚さは、絶縁層13の厚さに一致されており、絶縁層13の形成に必要な厚さで混合体を塗布できる。
【0038】
次に、絶縁層13が形成された金属トレーごと80℃で10分間、大気雰囲気下で加熱して仮焼成する(第1焼成工程)。次に、仮焼成した絶縁層13の両面に対して、熱硬化性エポキシ樹脂からなる接着シートを介して厚銅箔パターン14を張り合わせた後、200℃で10分間、大気雰囲気下で加熱して厚銅箔パターン14を絶縁層13に接着しつつ完全に熱硬化させ、回路基板12が完成される(第2焼成工程)。
【0039】
続けて、旋盤などを用いて絶縁層13(回路基板12)に挿通孔13aを形成する。また、コア16及びコイル21を組み付けることにより、トランス15を回路基板12上に形成するとともに、半田などを用いてパワー半導体素子Sdを回路基板12に表面実装する。そして、ハウジング11の底面において下側コア部材18に対応する部分に熱伝導性シート20を配置するとともに、ネジScにより回路基板12をハウジング11に固定し、DC/DCコンバータ10が完成される。
【0040】
次に、回路基板12及びDC/DCコンバータ10の作用について説明する。
図2に示すように、パワー半導体素子Sdの駆動に伴って発生した熱は、矢印Yxに示すように、主に熱伝導率の高い厚銅箔パターン14を介して回路基板12の面方向に伝達されるとともに、ネジScによる固定部分の近傍から絶縁層13を介してハウジング11に伝達される。
【0041】
また、コイル21への通電に伴って各コア部材17,18においても熱が発生する。しかしながら、上述したように各コア部材17,18は、厚銅箔パターン14及びコイル21から離間するように配設されているため、発生した熱が厚銅箔パターン14に伝達され難くなっている。このため、下側コア部材18にて発生した熱は、矢印Yyに示すように、主に熱伝導性シート20を介してハウジング11に伝達される。
【0042】
その一方で、上側コア部材17は、その第1脚部17bの先端部が下側コア部材18から離間しているため、発生した熱が下側コア部材18へも伝達され難くなっている。これに対して、本実施形態の絶縁層13では、絶縁層13における面方向の熱伝導率が高められている。このため、上側コア部材17で発生した熱は、矢印Yzに示すように、第2脚部17cから絶縁層13に伝達されるとともに絶縁層13の面方向に伝達され、最終的にネジScによる固定部分を介してハウジング11に伝達される。同様に、下側コア部材18にて発生した熱についても、その一部は絶縁層13を介してハウジング11に伝達される。
【0043】
そして、ハウジング11に伝達された熱は、ハウジング11の外側を流れる空気や水などの熱交換媒体との間における熱交換によって放熱される。このように、本実施形態では、トランス15(コア16及びコイル21)、及びパワー半導体素子Sdが駆動により発熱する発熱部品となり、ハウジング11が熱交換媒体との間で熱交換するための熱交換部材となる。そして、パワー半導体素子Sdやトランス15(コア16及びコイル21)は、回路基板12(絶縁層13)を介してハウジング11と熱的に接続されている。
【0044】
また、回路基板12の絶縁層13は、熱硬化性エポキシ樹脂24に窒化ホウ素23を含有させた構成とされている。このため、本実施形態の回路基板12(絶縁層13)では、例えばパワー半導体素子Sdなどの駆動に伴う温度上昇、及び停止に伴う温度下降が繰り返されたとしても、このような温度変化に起因して窒化ホウ素23が熱硬化性エポキシ樹脂24から剥離することがなく、温度変化に対する耐久性が向上される。
【0045】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)絶縁層13には窒化ホウ素23が含有されていることから、絶縁層13の表面に窒化ホウ素層を形成する従来の構成と比較して、窒化ホウ素23が温度変化に起因して絶縁層13から剥離することが抑制される。さらに、絶縁層13に含有される窒化ホウ素23は、六員環の面方向に対応するa軸及びb軸方向が絶縁層13の面方向に沿うように配向されていることから、絶縁層13の面方向に対する熱伝導率を向上させることができる。したがって、熱伝導性を向上させつつ温度変化に対する耐久性を向上させることができる。
【0046】
(2)絶縁層13(熱硬化性エポキシ樹脂24)における窒化ホウ素23の含有量を50体積%以上80体積%以下に設定した。このため、窒化ホウ素23の含有量が50体積%未満である場合と比較して熱伝導率を好適に向上できる一方で、80体積%を超える場合と比較して絶縁層13(回路基板12)の強度が不足することを抑制できる。
【0047】
(3)絶縁層13に含有させる窒化ホウ素23のアスペクト比は、2以上10以下とした。このため、窒化ホウ素23のアスペクト比が2未満である場合と比較して絶縁層13の面方向に対する熱伝導率を向上できる一方で、10を超える場合と比較して絶縁層13の強度が低下することを抑制できる。
【0048】
(4)トランス15(コア16及びコイル21)やパワー半導体素子Sdとハウジング11とを回路基板12(絶縁層13)により熱的に接続し、回路基板12を介して、トランス15やパワー半導体素子Sdとハウジング11の外部にある熱交換媒体との間で熱交換(放熱)をするようにした。このため、トランス15やパワー半導体素子Sdで発生した熱をハウジング11へ伝達するための専用部品を別に設ける構成と比較して、DC/DCコンバータ10を構成する部品点数が増加することを抑制できる。
【0049】
(5)特に、厚銅箔パターン14、下側コア部材18、及びコイル21と非接触状態とされた上側コア部材17に発生した熱を、回路基板12(絶縁層13)を介してハウジング11に伝達し、放熱することができる。
【0050】
(6)塗布工程において、スクレーパで混合体を伸ばすことにより、窒化ホウ素23を絶縁層13内においてa軸及びb軸が面方向に沿うように配向させている。したがって、絶縁層13(回路基板12)を簡便に製造することができる。
【0051】
(7)窒化ホウ素23の硬度はアルミナと比較して低く、絶縁層13に挿通孔13aを容易に形成できる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
【0052】
○ 窒化ホウ素23は、a軸方向、b軸方向、及びc軸方向の長さや、そのアスペクト比を適宜変更したものを用いてもよい。また、窒化ホウ素23は、絶縁層13における含有量を適宜変更してもよいが、熱伝導性や強度を確保する観点から実施形態のように構成することが好ましい。
【0053】
○ 絶縁層13は、その上面及び下面が平行でなくてもよい。この場合、窒化ホウ素23は、絶縁層13内において、そのa軸及びb軸が絶縁層13の上面及び下面の何れかに沿って延びるように配向されておればよい。
【0054】
○ 絶縁層13を形成する絶縁性樹脂として、フェノール樹脂やフッ素樹脂を用いてもよい。
○ ハウジング11には、熱交換媒体を流すための流路を設けてもよく、ハウジング11に加えて又は代えて冷却フィンを設けてもよい。この場合、冷却フィンに対して絶縁層13を固定して熱的に接続してもよい。
【0055】
○ 第1,第2焼成工程における加熱温度、加熱時間、及び加熱雰囲気は、熱硬化性エポキシ樹脂24が熱硬化する条件であれば適宜変更してもよい。
○ 熱伝導性シート20を省略してもよい。このように構成しても、下側コア部材18に発生した熱を絶縁層13によりハウジング11に伝達できる。
【0056】
○ 回路基板12はネジScを用いない接合方法を用いてハウジング11に固定し熱的に接続してもよい。例えば、リベットや嵌合などにより固定してもよい。
○ 絶縁層13(熱硬化性エポキシ樹脂24)には、さらにアルミナやガラス繊維など別の無機フィラーを含有させてもよい。
【0057】
○ 回路基板12には、トランス15やパワー半導体素子Sdに代えて又は加えてこれらとは異なる電子部品を配設(実装)してもよい。即ち、回路基板12(絶縁層13)は、インバータなどその他の電子機器に用いてもよい。
【0058】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記六方晶窒化ホウ素の微粒子における前記a軸方向の長さ、又は前記b軸方向の長さは、前記絶縁層の厚さの10%以上40%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板。
【符号の説明】
【0059】
10…DC/DCコンバータ(電子機器)、11…ハウジング(熱交換部材)、12…回路基板、13…絶縁層、15…トランス(発熱部品)、16…コア、17…上側コア部材、18…下側コア部材、21…コイル、23…六方晶窒化ホウ素の結晶(六方晶窒化ホウ素の微粒子)、24…熱硬化性エポキシ樹脂(絶縁性樹脂)、Sd…パワー半導体素子(発熱部品)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶窒化ホウ素の微粒子を含有する絶縁性樹脂からなる絶縁層を備えた回路基板において、
前記六方晶窒化ホウ素の微粒子は、前記六方晶窒化ホウ素の六員環の面方向に対応するa軸及びb軸方向が前記絶縁層の面方向に沿うように配向されていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記絶縁層における前記六方晶窒化ホウ素の含有量は、50体積%以上80体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記六方晶窒化ホウ素の微粒子の前記a軸及びb軸方向の長さを前記六員環の積層方向に対応するc軸方向の長さで除した値であるアスペクト比は、2以上10以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板と、
前記回路基板に実装され、駆動により発熱する発熱部品と、
熱交換媒体との間で熱交換するための熱交換部材と、を備えた電子機器において、
前記発熱部品及び前記熱交換部材は前記回路基板を介して熱的に接続されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−244006(P2012−244006A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113799(P2011−113799)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】