回路基板がインサートされた成形品の製造方法
【課題】線幅の狭い回路がインサートされた成型品を高い生産効率で生産する。
【解決手段】ロール版に導電性ペーストを塗布して印刷用パターンを形成し、ロール版に形成された印刷用パターンをフィルム3に転写して回路パターン4を形成する第1工程と、相対的に接近離間する一対の成形型14a,14bの内部に、回路パターン4が可動型14bの成形面に対面するように、回路パターン4が形成されたフィルム3をセットする第2工程と、成形型14a,14bによって形成されるキャビティC内部に溶融樹脂を射出する第3工程と、を有する製造方法。
【解決手段】ロール版に導電性ペーストを塗布して印刷用パターンを形成し、ロール版に形成された印刷用パターンをフィルム3に転写して回路パターン4を形成する第1工程と、相対的に接近離間する一対の成形型14a,14bの内部に、回路パターン4が可動型14bの成形面に対面するように、回路パターン4が形成されたフィルム3をセットする第2工程と、成形型14a,14bによって形成されるキャビティC内部に溶融樹脂を射出する第3工程と、を有する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板がインサートされた成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷によって文字、記号、図形が印刷されたシートを用いてインサート成形する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−220623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デジタルカメラ等の電子機器の筺体内部にはプリント回路基板が配設されているが、電子機器の小型化・高機能化の進行に伴い、プリント回路基板には更なる高密度化が望まれており、この要請に対応できる回路インサート成形品を効率良く生産するための新たな手法が希求されている。
しかしながら、孔版をこすって印刷を行うスクリーン印刷は、印刷速度が遅く、精度が低いため、線幅の狭い回路パターンを高い生産効率で印刷することができないという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、線幅の狭い回路基板がインサートされた成形品を高い生産効率で回路基板を生産することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回路基板がインサートされた成形品の製造方法であって、ロール版に導電性ペーストを塗布して印刷用パターンを形成し、前記ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写して回路パターンを形成する第1工程と、相対的に接近離間する一対の成形型の内部に、前記回路パターンが前記成形型の一方の型の成形面に対面するように、前記フィルムをセットする第2工程と、前記成形型によって形成されるキャビティ内部に溶融樹脂を射出する第3工程とを有することにより、上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記第2工程は、前記回路パターンが形成されたフィルムに当該回路パターンを覆うように保護シートを積層し、前記保護シートの主面が前記一方の型の成形面に接するように、前記保護シートが積層されたフィルムを前記一方の型の成形面にセットする工程であり、さらに、前記第3工程により得られた成形品から前記保護シートを除去する第4工程を備えることができる。
【0008】
上記発明において、前記第3工程と第4工程との間に、前記一方の型の成形面から出没するノックアウトピンにより前記保護シートを押して成形品を離型させる工程をさらに備えることができる。
【0009】
上記発明において、前記第1工程は、さらに、前記フィルムに形成された回路パターンの上にカーボン層を形成し、前記回路パターンが形成されていないフィルムの上に絶縁層を形成する工程を含むようにすることができる。
【0010】
上記発明において、前記第3工程において、前記フィルム及び回路パターンは、前記溶融樹脂の射出により前記一方の型の成形面に応じた形状に成形品が成形されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成形品の製造方法によれば、ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写することにより回路パターンを形成し、このフィルムをインサートして成形品を製造するので、回路の線幅を狭くすることができるとともに、生産時間を短縮することができる。その結果、線幅の狭い回路がインサートされた成形品を高い生産効率で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の製造方法により得た成形品の斜視図である。
【図1B】図1Aに示す成形品のIB-IB断面図である。
【図2A】本発明における回路基板の平面図である。
【図2B】図2Aに示す回路基板のIIB-IIB断面図である。
【図3】回路パターンの印刷方式(その1)の概要図である。
【図4】回路パターンの印刷方式(その2)の概要図である。
【図5】回路パターンの印刷方式(その3)の概要図である。
【図6】回路パターンの印刷方式(その4)の概要図である。
【図7】回路基板にカーボン層、絶縁層を形成し、さらに保護シートを積層したシートの断面図である。
【図8】回路基板が成形型にセットされた状態を示す図である。
【図9】型締め後、溶融樹脂が射出された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、例えば、その表面にデジタルカメラのスイッチ類の接点部として機能する回路基板が形成され、デジタルカメラの筺体の一部又は別部品として用いられる部材を成形品とした実施形態を説明する。
【0014】
図1A及び図1Bに本実施形態に係る成形品1の一例を示す。図1Aに示すように、本実施形態の成形品1は、適宜の形に形成された樹脂基材6の表面に回路基板2が埋没されている。この回路基板2は、図1Bに示すように、フィルム3の主面に回路パターン4が形成されたものであり、樹脂基材6と一体に成形されている。樹脂基材6がデジタルカメラの筺体に相当し、回路基板2が図示しないスイッチ類の接点部に相当する。
【0015】
以下、図面に基づいて、回路基板2がインサートされた成形品の製造方法を説明する。
【0016】
まず、第1の工程として、図2A及び図2Bに示す回路基板2を作製する。同図に示す回路基板2は、50μm〜150μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネートなどの樹脂製のフィルム3の主面に、銀、銅、カーボンなどの導電材を含む導電性ペーストを用いて所望の形状の回路パターン4を印刷する。
【0017】
本実施形態では、ロール版に導電性ペーストを塗布して印刷用パターンを形成し、ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写する印刷方式により回路パターンを形成して回路基板2を作製する。
【0018】
具体的に、本実施形態では、オフセット印刷(平版印刷)、グラビア印刷(凹版印刷)、活版印刷(凸版印刷)などのロール版を用いた転写印刷方式により回路パターン4をフィルム3に印刷し、回路基板2を作製する。
【0019】
ここで、各印刷手法を説明する。
【0020】
図3は、オフセット印刷(平版印刷)方式の概要図である。
オフセット印刷(平版印刷)方式では、まず、導電性ペースト(インキ)が載る親油性の部分と親水性の部分を版胴A1の外周に形成された版A2に形成する。この版A2に水ローラA4から水を供給すると、線画部は水をはじき非線画部には水が付着する。また、インキローラA3から導電性ペーストKを供給すると、親油性の線画部に導電性ペーストが載る。これを樹脂製のブランケット胴A5に転写すると、導電性ペーストが塗布された印刷用パターンがブランケット胴A5に形成される。そして、圧胴A6で押さえて印圧を与えつつ、ブランケット胴A5に形成された印刷用パターンを、フィルム3に転写して、回路パターンを形成する。
【0021】
図4は、活版印刷(凸版印刷)方式に属するフレキソ印刷方式の概要図である。
フレキソ印刷(凸版印刷)方式では、版胴B1の外周に形成された凸版B2に、アニックスロールB3を介して導電性ペーストKを供給し、圧胴B4で押さえて印圧を与えつつ、版B2の凸により形成された印刷用パターンを、フィルム3に転写して、回路パターンを形成する。このフレキソ印刷方式では版B2が柔軟(フレキシブル)な樹脂やゴムで形成されている。
【0022】
図5は、グラビア印刷(凹版印刷)方式の概要図である。
グラビア印刷(凹版印刷)方式では、凹版C2を有する版胴C1を、導電性ペースト槽C3に浸漬し、ドクターブレードC4で余分な導電性ペーストを掻きとって凹部にのみ導電性ペーストを残す。そして、圧胴C5で押さえて印圧を与えつつ、版C2の凹により形成された印刷用パターンを、フィルム3に転写して、回路パターンを形成する。
【0023】
図6は、グラビア印刷方式の特徴とオフセット印刷方式の特徴を併せ持つ、オフセットグラビア印刷方式の概要図である。
オフセットグラビア方式では、凹版D2を有する版胴D1を、導電性ペースト槽D3に浸漬し、ドクターブレードD4で余分な導電性ペーストを掻きとって凹部にのみ導電性ペーストを残す。この版C2の凹により形成された印刷用パターンを、ブランケットロールD5に転写する。ブランケットロールD5に形成された印刷用パターンを、所定の印圧を与えつつフィルム3に転写して、回路パターンを形成する。
【0024】
以上に例示した、ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写する印刷方式によれば、線幅が狭い、輪郭がシャープな線図を印刷することができる。また、転写方式であるので、短いタクトタイムで回路基板2を作製することができる。ちなみに、グラビア印刷の通常印刷速度は数十m/min〜100m/min程度であり、最高では1000m/min程度まで可能である。
【0025】
特に、グラビア印刷(凹版印刷)、オフセットグラビア印刷方式、活版印刷(凸版印刷)方式では、凸版又は凹版により印刷用パターンを形成するため、凸版又は凹版の加工精度に応じた高い印刷精度を実現することができる。このため、これらの印刷方式によれば、線幅が5μm〜80μm程度のピッチの回路パターンを高い生産効率で形成することができる。
【0026】
ところで、本実施形態の印刷方式とは異なり、スクリーン印刷方式は、版が平で、版に形成された孔を通過させたインクをフィルムに印刷する方式である。
【0027】
具体的に、スクリーン印刷方式では、スクリーン版内にインク(導電性ペースト)を入れて、スキージと称するヘラを所定のスキージ角度でスクリーン版に当接させ、スキージ角度を維持しつつスキージを移動させる。このスキージの移動に伴いスクリーン版の上でインクが移動する。このとき、スクリーン版に形成された孔をインクが通過し、通過したインクがスクリーン版の下にあるフィルムに転写される。一回の印刷が終わったら、次のフィルムを印刷するため、印刷済のフィルムを取り除き、新たなフィルムをスクリーン版の下にセットし、同じようにスキージを移動させて印刷を行う。
【0028】
このように、スクリーン印刷方式は、一回の印刷が終了するたびに印刷済のフィルムを取り除き、新たなフィルムをセットする必要があるので、転写印刷方式よりも印刷速度が大幅に遅い。また、スクリーン印刷方式は、版をスキージでこするというものであるが、スキージの移動速度の高速化には限界があり、必然的に1回の印刷時間がスキージの移動時間以上になるので、印刷速度の高速化が困難である。
【0029】
さらに、スクリーン印刷方式は、版をスキージでこすることから、スクリーンの伸縮により再現性や精密度が低くなる。さらに孔版を形成するレジストの劣化も起こるため、孔版の耐久性にも限界がある。また、スクリーン印刷方式による回路パターンの微細化には、スキージのアタック角度(スキージの取り付け角)、スキージ角度(スキージの当接角、取り付け角)、スキージ速度(スキージの移動速度,いわゆる印刷速度)、コート速度(スキージが前進した後、ドクターブレードがインクを後方から塗り広げる時の速度)、ドクター角度(ドクターブレードの当接角度)、版離れ量(スキージにてインクを転写した直後、版がフィルムから離れる量)、版のクリアランス条件(スクリーン版の下面とフィルムとの間隙)の設定、印圧(スキージにかける圧力)などの要因をコントロールする必要がある。
【0030】
これに対し、本実施形態のロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写する印刷方式は、ロール版がフィルム3に接触することで回路パターン4が形成されるので、連続的な高速印刷が可能である。また、凹凸加工精度に応じた高い精度で形成された版により形成された回路パターン4を、直接フィルムに転写することができるので、回路パターンの微細化及び細線化が可能である。
【0031】
次の工程では、必要に応じて、回路基板2に保護加工を行う。図7は、保護加工がされた回路基板2の断面図である。断面視の方向は、図2Aに示すIIB−IIB方向と共通の方向である。
【0032】
まず、フィルム3に回路パターン4を印刷した後、回路パターン4を保護するためのカーボン層7を形成する。具体的には、回路パターン4の上にカーボンペーストを重ねて印刷する。カーボン層7は導電性を備えるので、回路パターン4の機能を保ちつつ、回路パターン4を外部の衝撃から保護する。
【0033】
また、回路パターン4が形成されていないフィルム3の上には、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂をベースにした液状のカバーコートインクを用いて、同じく印刷により絶縁層8を形成する。これにより、回路パターン4間にマイグレーションなどによる短絡が起こることを防止する。
【0034】
さらに、成形工程を経る回路基板2を保護するため、成形型に対面する面に保護シート5を積層する。図7に示すように、保護シート5は、回路パターン4又は回路パターン4の上に形成されたカーボン層7を覆うように積層されている。保護シート5の材質は特に限定されないが、成形型14b(図8)に対する離型容易性の観点からシリコン系樹脂を用いることが好ましい。
また、この保護シート7は成形後に取り除かれるため、保護シート7と回路パターン4との間及び/又は保護シート7と成形面との間には、微粘着性を備える剥離剤又は剥離シートを介在させることが好ましい。なお、この保護シート5を積層する工程は設けなくてもよいし、保護シート5の積層に代えて、他の保護手法を用いることも可能である。
【0035】
次の工程では、作製した回路基板2をインサート成形する。インサート成形の工程を図8及び図9に基づいて説明する。図8は、回路基板が成形型にセットされた状態を示す図であり、図9は型締め後、溶融樹脂が射出された状態を示す図である。
【0036】
図8及び図9に示す射出成型装置10は、樹脂を可塑化、軽量及び射出させるホッパ11と、図外の射出シリンダ及びブランジャと、ゲートノズル13と、ゲートノズル13が嵌め込まれた固定型14a(成形型の他方の型)と、この固定型14aと一対となってキャビティCを形成し、相対的に接近離間する可動型14b(成形型の一方の型)とを有する。この一対の可動型14b及び固定型14aを型締めすることによって、その間には密閉可能なキャビティCが形成される。また、ノックアウトピン12は、型の開閉方向(図中矢印y)に沿って往復運動が可能であり、型締め時には、キャビティCから後退する方向に移動し、射出成型時にはキャビティCの成形面と同一面を形成し、射出成形後、型開きをする際には、キャビティCに向かって前進する方向に移動する。
【0037】
図8及び図9に示す射出成型装置10では、ゲートノズル13が嵌め込まれた固定型14aを固定としたので、図外の型締め装置により可動型14bが固定型14aに対して上下に移動させられる。もちろん、成形型14a,14bは、横型であっても良いし、成形型14bを固定型としてもよい。なお、同図では、説明の簡素化のためにキャビティCを単純な形状としたが、実際は、成形品1が組み込まれるデジタルカメラなどの電子機器の筺体の構造に応じた形状となる。
【0038】
図8に示すように、可動型14bを固定型14aから離間させ、キャビティCが開放された状態で、先に作製した回路基板2をキャビティC内にセットする。このとき、フィルム3に形成された回路パターン4が可動型14bの成形面に対面するようにセットする。このとき、回路基板2にカーボン層7が形成されている場合は、カーボン層7も可動型14bの成形面に対面している。
【0039】
また、回路パターン4が保護シート5に覆われている場合は、図8に示すように、保護シート5の主面が可動型14bの成形面に接するように、保護シート5が積層されたフィルム3を可動型14bの成形面にセットする。これにより、回路パターン4が可動型14bに直接接触しないようにすることができ、回路パターン4にかかる負荷を軽減することができる。
【0040】
回路基板2をキャビティCにセットしたら、インサート射出成形工程に移る。射出される樹脂は、特に限定されないが、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリカーボネート(PC)、PC/ABSポリマーアロイ樹脂、又はエラストマーを用いることができる。
【0041】
まず、可動型14bを固定型14aに接近させ、密閉されたキャビティCを形成する。射出に備え、樹脂を射出温度に加熱し、成形型14a,14bを所定温度に昇温させる。ABS樹脂を用いる場合は、ABS樹脂を射出温度である220〜260℃に加温し、成形型14a,14bを70〜80℃に昇温させる。
【0042】
そして、ゲートノズル13はホッパ11から供給された所定量の溶融樹脂をキャビティC内に射出する。
この溶融樹脂の射出により、回路パターン4が形成されたフィルム3は、溶融樹脂の射出により可動型14bの成形面に応じた形状に成形される。つまり、回路パターン4及びフィルム3は、樹脂基材6の形状に沿った形状となり、樹脂基材6と一体として成形品1を構成する。
【0043】
所定時間の放熱工程を経て、型開きを行う。可動型14bを固定型14aから離間させるように移動させる。成形品1は凹凸形状が付された可動型14bとともに固定型14aから離れる。可動型14bに設けられたノックアウトピン12を、キャビティC側に押し出す。これにより、ノックアウトピン12が可動型14bの成形面から突き出て、成形品1に当接し、成形品1はノックアウトピン12に押し出され、離型する。
【0044】
このとき、回路基板2に保護シート5が積層されていれば、ノックアウトピン12は保護シート5に接し、直接、回路パターン4に接しない。このため、回路パターン4に負荷をかけることなく、容易に離型を行うことができる。
【0045】
最後に、離型後、成形品1から保護シート5を除去して、使用可能な状態の成形品1を得る。
【0046】
以下、本実施形態の回路基板2に係る実施例を説明する。
実施例1は、図6で示すグラビアオフセット印刷方式により、Agペースト(藤倉化成株式会社製 FA333)を用いて、厚さ100μmのPETフィルムに、下掲の表1のとおりの印刷条件で回路パターンの印刷を行った。
【0047】
他方、比較例1は、スクリーン印刷方式により、実施例と同じAgペースト(藤倉化成株式会社製 FA333)を用いて、厚さ100μmのPETフィルムに、下掲の表1のとおりの印刷条件で回路パターンの印刷を行った。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、グラビアオフセット印刷方式による実施例1の生産速度は10sec/sheetであり、スクリーン印刷方式による比較例1の生産速度15sec/sheetよりも生産時間を短縮することができた。
【0050】
また、表1に示すように、グラビアオフセット印刷方式による実施例1の回路線幅は50μmであり、スクリーン印刷方式による比較例1の回路線幅100μmよりも細線化させることができた。
【0051】
このように、本実施形態の製造方法によれば、線幅の狭い回路がインサートされた成型品を高い効率で生産することができる。また、線幅を狭くすることが可能であるため、回路パターンを高密度にすることができる。その結果、回路基板がインサートされる成形品を小型にすることができる。さらに、小型化によって、生産コストを低減させることができる。
【0052】
本実施形態の成形品1は、デジタルカメラなどの電子機器の筺体として用いられる。本実施形態の製造方法によれば電子機器の筺体の内側表面に回路パターン4を形成することができる。このような筺体を用いることができれば、電子機器の内部にフレキシブル基板を実装する作業が不要となり、フレキシブル基板のハンドリングによる損傷などを防止することができる。
【0053】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0054】
1…成形品(電子機器の筺体など)
2…回路基板
3…フィルム
4…回路パターン
5…保護シート
6…樹脂基材
7…カーボン層
8…絶縁層
10…射出成形装置
13…ゲートノズル
14a…固定型(他方の型)
14b…可動型(一方の型)
C…キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板がインサートされた成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷によって文字、記号、図形が印刷されたシートを用いてインサート成形する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−220623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デジタルカメラ等の電子機器の筺体内部にはプリント回路基板が配設されているが、電子機器の小型化・高機能化の進行に伴い、プリント回路基板には更なる高密度化が望まれており、この要請に対応できる回路インサート成形品を効率良く生産するための新たな手法が希求されている。
しかしながら、孔版をこすって印刷を行うスクリーン印刷は、印刷速度が遅く、精度が低いため、線幅の狭い回路パターンを高い生産効率で印刷することができないという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、線幅の狭い回路基板がインサートされた成形品を高い生産効率で回路基板を生産することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回路基板がインサートされた成形品の製造方法であって、ロール版に導電性ペーストを塗布して印刷用パターンを形成し、前記ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写して回路パターンを形成する第1工程と、相対的に接近離間する一対の成形型の内部に、前記回路パターンが前記成形型の一方の型の成形面に対面するように、前記フィルムをセットする第2工程と、前記成形型によって形成されるキャビティ内部に溶融樹脂を射出する第3工程とを有することにより、上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記第2工程は、前記回路パターンが形成されたフィルムに当該回路パターンを覆うように保護シートを積層し、前記保護シートの主面が前記一方の型の成形面に接するように、前記保護シートが積層されたフィルムを前記一方の型の成形面にセットする工程であり、さらに、前記第3工程により得られた成形品から前記保護シートを除去する第4工程を備えることができる。
【0008】
上記発明において、前記第3工程と第4工程との間に、前記一方の型の成形面から出没するノックアウトピンにより前記保護シートを押して成形品を離型させる工程をさらに備えることができる。
【0009】
上記発明において、前記第1工程は、さらに、前記フィルムに形成された回路パターンの上にカーボン層を形成し、前記回路パターンが形成されていないフィルムの上に絶縁層を形成する工程を含むようにすることができる。
【0010】
上記発明において、前記第3工程において、前記フィルム及び回路パターンは、前記溶融樹脂の射出により前記一方の型の成形面に応じた形状に成形品が成形されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成形品の製造方法によれば、ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写することにより回路パターンを形成し、このフィルムをインサートして成形品を製造するので、回路の線幅を狭くすることができるとともに、生産時間を短縮することができる。その結果、線幅の狭い回路がインサートされた成形品を高い生産効率で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の製造方法により得た成形品の斜視図である。
【図1B】図1Aに示す成形品のIB-IB断面図である。
【図2A】本発明における回路基板の平面図である。
【図2B】図2Aに示す回路基板のIIB-IIB断面図である。
【図3】回路パターンの印刷方式(その1)の概要図である。
【図4】回路パターンの印刷方式(その2)の概要図である。
【図5】回路パターンの印刷方式(その3)の概要図である。
【図6】回路パターンの印刷方式(その4)の概要図である。
【図7】回路基板にカーボン層、絶縁層を形成し、さらに保護シートを積層したシートの断面図である。
【図8】回路基板が成形型にセットされた状態を示す図である。
【図9】型締め後、溶融樹脂が射出された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、例えば、その表面にデジタルカメラのスイッチ類の接点部として機能する回路基板が形成され、デジタルカメラの筺体の一部又は別部品として用いられる部材を成形品とした実施形態を説明する。
【0014】
図1A及び図1Bに本実施形態に係る成形品1の一例を示す。図1Aに示すように、本実施形態の成形品1は、適宜の形に形成された樹脂基材6の表面に回路基板2が埋没されている。この回路基板2は、図1Bに示すように、フィルム3の主面に回路パターン4が形成されたものであり、樹脂基材6と一体に成形されている。樹脂基材6がデジタルカメラの筺体に相当し、回路基板2が図示しないスイッチ類の接点部に相当する。
【0015】
以下、図面に基づいて、回路基板2がインサートされた成形品の製造方法を説明する。
【0016】
まず、第1の工程として、図2A及び図2Bに示す回路基板2を作製する。同図に示す回路基板2は、50μm〜150μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネートなどの樹脂製のフィルム3の主面に、銀、銅、カーボンなどの導電材を含む導電性ペーストを用いて所望の形状の回路パターン4を印刷する。
【0017】
本実施形態では、ロール版に導電性ペーストを塗布して印刷用パターンを形成し、ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写する印刷方式により回路パターンを形成して回路基板2を作製する。
【0018】
具体的に、本実施形態では、オフセット印刷(平版印刷)、グラビア印刷(凹版印刷)、活版印刷(凸版印刷)などのロール版を用いた転写印刷方式により回路パターン4をフィルム3に印刷し、回路基板2を作製する。
【0019】
ここで、各印刷手法を説明する。
【0020】
図3は、オフセット印刷(平版印刷)方式の概要図である。
オフセット印刷(平版印刷)方式では、まず、導電性ペースト(インキ)が載る親油性の部分と親水性の部分を版胴A1の外周に形成された版A2に形成する。この版A2に水ローラA4から水を供給すると、線画部は水をはじき非線画部には水が付着する。また、インキローラA3から導電性ペーストKを供給すると、親油性の線画部に導電性ペーストが載る。これを樹脂製のブランケット胴A5に転写すると、導電性ペーストが塗布された印刷用パターンがブランケット胴A5に形成される。そして、圧胴A6で押さえて印圧を与えつつ、ブランケット胴A5に形成された印刷用パターンを、フィルム3に転写して、回路パターンを形成する。
【0021】
図4は、活版印刷(凸版印刷)方式に属するフレキソ印刷方式の概要図である。
フレキソ印刷(凸版印刷)方式では、版胴B1の外周に形成された凸版B2に、アニックスロールB3を介して導電性ペーストKを供給し、圧胴B4で押さえて印圧を与えつつ、版B2の凸により形成された印刷用パターンを、フィルム3に転写して、回路パターンを形成する。このフレキソ印刷方式では版B2が柔軟(フレキシブル)な樹脂やゴムで形成されている。
【0022】
図5は、グラビア印刷(凹版印刷)方式の概要図である。
グラビア印刷(凹版印刷)方式では、凹版C2を有する版胴C1を、導電性ペースト槽C3に浸漬し、ドクターブレードC4で余分な導電性ペーストを掻きとって凹部にのみ導電性ペーストを残す。そして、圧胴C5で押さえて印圧を与えつつ、版C2の凹により形成された印刷用パターンを、フィルム3に転写して、回路パターンを形成する。
【0023】
図6は、グラビア印刷方式の特徴とオフセット印刷方式の特徴を併せ持つ、オフセットグラビア印刷方式の概要図である。
オフセットグラビア方式では、凹版D2を有する版胴D1を、導電性ペースト槽D3に浸漬し、ドクターブレードD4で余分な導電性ペーストを掻きとって凹部にのみ導電性ペーストを残す。この版C2の凹により形成された印刷用パターンを、ブランケットロールD5に転写する。ブランケットロールD5に形成された印刷用パターンを、所定の印圧を与えつつフィルム3に転写して、回路パターンを形成する。
【0024】
以上に例示した、ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写する印刷方式によれば、線幅が狭い、輪郭がシャープな線図を印刷することができる。また、転写方式であるので、短いタクトタイムで回路基板2を作製することができる。ちなみに、グラビア印刷の通常印刷速度は数十m/min〜100m/min程度であり、最高では1000m/min程度まで可能である。
【0025】
特に、グラビア印刷(凹版印刷)、オフセットグラビア印刷方式、活版印刷(凸版印刷)方式では、凸版又は凹版により印刷用パターンを形成するため、凸版又は凹版の加工精度に応じた高い印刷精度を実現することができる。このため、これらの印刷方式によれば、線幅が5μm〜80μm程度のピッチの回路パターンを高い生産効率で形成することができる。
【0026】
ところで、本実施形態の印刷方式とは異なり、スクリーン印刷方式は、版が平で、版に形成された孔を通過させたインクをフィルムに印刷する方式である。
【0027】
具体的に、スクリーン印刷方式では、スクリーン版内にインク(導電性ペースト)を入れて、スキージと称するヘラを所定のスキージ角度でスクリーン版に当接させ、スキージ角度を維持しつつスキージを移動させる。このスキージの移動に伴いスクリーン版の上でインクが移動する。このとき、スクリーン版に形成された孔をインクが通過し、通過したインクがスクリーン版の下にあるフィルムに転写される。一回の印刷が終わったら、次のフィルムを印刷するため、印刷済のフィルムを取り除き、新たなフィルムをスクリーン版の下にセットし、同じようにスキージを移動させて印刷を行う。
【0028】
このように、スクリーン印刷方式は、一回の印刷が終了するたびに印刷済のフィルムを取り除き、新たなフィルムをセットする必要があるので、転写印刷方式よりも印刷速度が大幅に遅い。また、スクリーン印刷方式は、版をスキージでこするというものであるが、スキージの移動速度の高速化には限界があり、必然的に1回の印刷時間がスキージの移動時間以上になるので、印刷速度の高速化が困難である。
【0029】
さらに、スクリーン印刷方式は、版をスキージでこすることから、スクリーンの伸縮により再現性や精密度が低くなる。さらに孔版を形成するレジストの劣化も起こるため、孔版の耐久性にも限界がある。また、スクリーン印刷方式による回路パターンの微細化には、スキージのアタック角度(スキージの取り付け角)、スキージ角度(スキージの当接角、取り付け角)、スキージ速度(スキージの移動速度,いわゆる印刷速度)、コート速度(スキージが前進した後、ドクターブレードがインクを後方から塗り広げる時の速度)、ドクター角度(ドクターブレードの当接角度)、版離れ量(スキージにてインクを転写した直後、版がフィルムから離れる量)、版のクリアランス条件(スクリーン版の下面とフィルムとの間隙)の設定、印圧(スキージにかける圧力)などの要因をコントロールする必要がある。
【0030】
これに対し、本実施形態のロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写する印刷方式は、ロール版がフィルム3に接触することで回路パターン4が形成されるので、連続的な高速印刷が可能である。また、凹凸加工精度に応じた高い精度で形成された版により形成された回路パターン4を、直接フィルムに転写することができるので、回路パターンの微細化及び細線化が可能である。
【0031】
次の工程では、必要に応じて、回路基板2に保護加工を行う。図7は、保護加工がされた回路基板2の断面図である。断面視の方向は、図2Aに示すIIB−IIB方向と共通の方向である。
【0032】
まず、フィルム3に回路パターン4を印刷した後、回路パターン4を保護するためのカーボン層7を形成する。具体的には、回路パターン4の上にカーボンペーストを重ねて印刷する。カーボン層7は導電性を備えるので、回路パターン4の機能を保ちつつ、回路パターン4を外部の衝撃から保護する。
【0033】
また、回路パターン4が形成されていないフィルム3の上には、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂をベースにした液状のカバーコートインクを用いて、同じく印刷により絶縁層8を形成する。これにより、回路パターン4間にマイグレーションなどによる短絡が起こることを防止する。
【0034】
さらに、成形工程を経る回路基板2を保護するため、成形型に対面する面に保護シート5を積層する。図7に示すように、保護シート5は、回路パターン4又は回路パターン4の上に形成されたカーボン層7を覆うように積層されている。保護シート5の材質は特に限定されないが、成形型14b(図8)に対する離型容易性の観点からシリコン系樹脂を用いることが好ましい。
また、この保護シート7は成形後に取り除かれるため、保護シート7と回路パターン4との間及び/又は保護シート7と成形面との間には、微粘着性を備える剥離剤又は剥離シートを介在させることが好ましい。なお、この保護シート5を積層する工程は設けなくてもよいし、保護シート5の積層に代えて、他の保護手法を用いることも可能である。
【0035】
次の工程では、作製した回路基板2をインサート成形する。インサート成形の工程を図8及び図9に基づいて説明する。図8は、回路基板が成形型にセットされた状態を示す図であり、図9は型締め後、溶融樹脂が射出された状態を示す図である。
【0036】
図8及び図9に示す射出成型装置10は、樹脂を可塑化、軽量及び射出させるホッパ11と、図外の射出シリンダ及びブランジャと、ゲートノズル13と、ゲートノズル13が嵌め込まれた固定型14a(成形型の他方の型)と、この固定型14aと一対となってキャビティCを形成し、相対的に接近離間する可動型14b(成形型の一方の型)とを有する。この一対の可動型14b及び固定型14aを型締めすることによって、その間には密閉可能なキャビティCが形成される。また、ノックアウトピン12は、型の開閉方向(図中矢印y)に沿って往復運動が可能であり、型締め時には、キャビティCから後退する方向に移動し、射出成型時にはキャビティCの成形面と同一面を形成し、射出成形後、型開きをする際には、キャビティCに向かって前進する方向に移動する。
【0037】
図8及び図9に示す射出成型装置10では、ゲートノズル13が嵌め込まれた固定型14aを固定としたので、図外の型締め装置により可動型14bが固定型14aに対して上下に移動させられる。もちろん、成形型14a,14bは、横型であっても良いし、成形型14bを固定型としてもよい。なお、同図では、説明の簡素化のためにキャビティCを単純な形状としたが、実際は、成形品1が組み込まれるデジタルカメラなどの電子機器の筺体の構造に応じた形状となる。
【0038】
図8に示すように、可動型14bを固定型14aから離間させ、キャビティCが開放された状態で、先に作製した回路基板2をキャビティC内にセットする。このとき、フィルム3に形成された回路パターン4が可動型14bの成形面に対面するようにセットする。このとき、回路基板2にカーボン層7が形成されている場合は、カーボン層7も可動型14bの成形面に対面している。
【0039】
また、回路パターン4が保護シート5に覆われている場合は、図8に示すように、保護シート5の主面が可動型14bの成形面に接するように、保護シート5が積層されたフィルム3を可動型14bの成形面にセットする。これにより、回路パターン4が可動型14bに直接接触しないようにすることができ、回路パターン4にかかる負荷を軽減することができる。
【0040】
回路基板2をキャビティCにセットしたら、インサート射出成形工程に移る。射出される樹脂は、特に限定されないが、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリカーボネート(PC)、PC/ABSポリマーアロイ樹脂、又はエラストマーを用いることができる。
【0041】
まず、可動型14bを固定型14aに接近させ、密閉されたキャビティCを形成する。射出に備え、樹脂を射出温度に加熱し、成形型14a,14bを所定温度に昇温させる。ABS樹脂を用いる場合は、ABS樹脂を射出温度である220〜260℃に加温し、成形型14a,14bを70〜80℃に昇温させる。
【0042】
そして、ゲートノズル13はホッパ11から供給された所定量の溶融樹脂をキャビティC内に射出する。
この溶融樹脂の射出により、回路パターン4が形成されたフィルム3は、溶融樹脂の射出により可動型14bの成形面に応じた形状に成形される。つまり、回路パターン4及びフィルム3は、樹脂基材6の形状に沿った形状となり、樹脂基材6と一体として成形品1を構成する。
【0043】
所定時間の放熱工程を経て、型開きを行う。可動型14bを固定型14aから離間させるように移動させる。成形品1は凹凸形状が付された可動型14bとともに固定型14aから離れる。可動型14bに設けられたノックアウトピン12を、キャビティC側に押し出す。これにより、ノックアウトピン12が可動型14bの成形面から突き出て、成形品1に当接し、成形品1はノックアウトピン12に押し出され、離型する。
【0044】
このとき、回路基板2に保護シート5が積層されていれば、ノックアウトピン12は保護シート5に接し、直接、回路パターン4に接しない。このため、回路パターン4に負荷をかけることなく、容易に離型を行うことができる。
【0045】
最後に、離型後、成形品1から保護シート5を除去して、使用可能な状態の成形品1を得る。
【0046】
以下、本実施形態の回路基板2に係る実施例を説明する。
実施例1は、図6で示すグラビアオフセット印刷方式により、Agペースト(藤倉化成株式会社製 FA333)を用いて、厚さ100μmのPETフィルムに、下掲の表1のとおりの印刷条件で回路パターンの印刷を行った。
【0047】
他方、比較例1は、スクリーン印刷方式により、実施例と同じAgペースト(藤倉化成株式会社製 FA333)を用いて、厚さ100μmのPETフィルムに、下掲の表1のとおりの印刷条件で回路パターンの印刷を行った。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、グラビアオフセット印刷方式による実施例1の生産速度は10sec/sheetであり、スクリーン印刷方式による比較例1の生産速度15sec/sheetよりも生産時間を短縮することができた。
【0050】
また、表1に示すように、グラビアオフセット印刷方式による実施例1の回路線幅は50μmであり、スクリーン印刷方式による比較例1の回路線幅100μmよりも細線化させることができた。
【0051】
このように、本実施形態の製造方法によれば、線幅の狭い回路がインサートされた成型品を高い効率で生産することができる。また、線幅を狭くすることが可能であるため、回路パターンを高密度にすることができる。その結果、回路基板がインサートされる成形品を小型にすることができる。さらに、小型化によって、生産コストを低減させることができる。
【0052】
本実施形態の成形品1は、デジタルカメラなどの電子機器の筺体として用いられる。本実施形態の製造方法によれば電子機器の筺体の内側表面に回路パターン4を形成することができる。このような筺体を用いることができれば、電子機器の内部にフレキシブル基板を実装する作業が不要となり、フレキシブル基板のハンドリングによる損傷などを防止することができる。
【0053】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0054】
1…成形品(電子機器の筺体など)
2…回路基板
3…フィルム
4…回路パターン
5…保護シート
6…樹脂基材
7…カーボン層
8…絶縁層
10…射出成形装置
13…ゲートノズル
14a…固定型(他方の型)
14b…可動型(一方の型)
C…キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板がインサートされた成形品の製造方法であって、
ロール版に導電性ペーストを塗布して印刷用パターンを形成し、前記ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写して回路パターンを形成する第1工程と、
相対的に接近離間する一対の成形型の内部に、前記回路パターンが前記成形型の一方の型の成形面に対面するように、前記回路パターンが形成されたフィルムをセットする第2工程と、
前記成形型によって形成されるキャビティ内部に溶融樹脂を射出する第3工程と、を有する製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第2工程は、前記回路パターンが形成されたフィルムに当該回路パターンを覆うように保護シートを積層し、前記保護シートの主面が前記一方の型の成形面に接するように、前記保護シートが積層されたフィルムを前記一方の型の成形面にセットする工程であり、
さらに、前記第3工程により得られた成形品から前記保護シートを除去する第4工程を有する製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法において、
前記第3工程と第4工程との間に、前記一方の型の成形面から出没するノックアウトピンにより前記保護シートを押して成形品を離型させる工程をさらに有する製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の製造方法において、
前記第1工程は、さらに、前記フィルムに形成された回路パターンの上にカーボン層を形成し、前記回路パターンが形成されていないフィルムの上に絶縁層を形成する工程を含む製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の製造方法において、
前記第3工程において、前記フィルム及び回路パターンは、前記溶融樹脂の射出により前記一方の型の成形面に応じた形状に成形される成形品の製造方法。
【請求項1】
回路基板がインサートされた成形品の製造方法であって、
ロール版に導電性ペーストを塗布して印刷用パターンを形成し、前記ロール版に形成された印刷用パターンをフィルムに転写して回路パターンを形成する第1工程と、
相対的に接近離間する一対の成形型の内部に、前記回路パターンが前記成形型の一方の型の成形面に対面するように、前記回路パターンが形成されたフィルムをセットする第2工程と、
前記成形型によって形成されるキャビティ内部に溶融樹脂を射出する第3工程と、を有する製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第2工程は、前記回路パターンが形成されたフィルムに当該回路パターンを覆うように保護シートを積層し、前記保護シートの主面が前記一方の型の成形面に接するように、前記保護シートが積層されたフィルムを前記一方の型の成形面にセットする工程であり、
さらに、前記第3工程により得られた成形品から前記保護シートを除去する第4工程を有する製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法において、
前記第3工程と第4工程との間に、前記一方の型の成形面から出没するノックアウトピンにより前記保護シートを押して成形品を離型させる工程をさらに有する製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の製造方法において、
前記第1工程は、さらに、前記フィルムに形成された回路パターンの上にカーボン層を形成し、前記回路パターンが形成されていないフィルムの上に絶縁層を形成する工程を含む製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の製造方法において、
前記第3工程において、前記フィルム及び回路パターンは、前記溶融樹脂の射出により前記一方の型の成形面に応じた形状に成形される成形品の製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−42106(P2011−42106A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191837(P2009−191837)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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