説明

回路基板の製造方法

【課題】 製造コストを低廉にすることができるとともに、製造効率を向上でき、抵抗を小さくすることができ、さらに導体材料と基板との密着性に優れた回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂材料11と溶剤とAgで形成された導電性材料12で構成される導電性インクでスクリーン印刷し、基板2の表面2aに印刷部10を形成し、印刷部10の表面を覆うメッキ部20を無電解メッキ法によって形成する。また、樹脂材料11と溶剤とカーボンブラックで形成された導電性材料12とPdで形成された触媒性材料を有する導電性インクでスクリーン印刷し、基板2の表面2aに印刷部10を形成し、印刷部10の表面を覆うメッキ部20を無電解メッキ法によって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板の製造方法に関し、特に製造コストを低廉なものとすることができるとともに、製造効率を向上でき、抵抗を小さくすることができ、さらに導体部と基板との密着性に優れた回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回路基板は、基板の表面に薄い導体材料層が析出形成されあるいは貼着された導体膜形成基板を用いて製造している。その工程は、導体材料層の上をレジスト層で覆い、露光現像工程でレジスト層をパターン化し、レジスト層に覆われていない部分の前記導体材料をエッチングして除去し、導体材料層で回路パターンを形成している。
【0003】
しかし、この製造方法では、基板表面に設けられている導体材料層の多くの部分がエッチング工程で除去されてしまうので、比較的高価な導体膜形成基板を使用しているにもかかわらず、導体材料の歩留まりが悪い。また、露光現像工程およびエッチング工程に高価な設備が必要となり、またエッチングで除去された導体材料を再処理するために設備も必要になる。
【0004】
また、他の導体回路の製造法として、基板の表面に、導電性のインク材料をインクジェット法でパターン化して塗布し、導体材料層を形成するものがある。しかし、インクジェット法は、ノズルからナノ単位の微細な導体粒子を噴射させることが必要であるため、導電性のインク材料そのものが高価である。また、回路基板の表面に噴き付けられたインク材料と回路基板との接合力が弱く、回路パターンが剥離しやすい課題を有している。
【0005】
以下に示す特許文献1には、導体性のインク材料を用い、スクリーン印刷工程で、基板の表面に触媒性皮膜を形成し、この触媒性皮膜を覆う無電解メッキ層を設けた回路パターンを形成している。特許文献1に記載の製造方法で使用されるインク材料は、バインダー樹脂に、触媒性コロイド金属粉、球状導電性顔料および導電性ウィスカーが含有されたものである。
【0006】
以下の特許文献2には、スクリーン印刷によって、金属粉析出インクを基板上に印刷して電気回路の配線パターンを形成し、この配線パターンの上に金属メッキ膜を形成した回路基板の製造方法が開示されている。
【0007】
この特許文献2に開示された回路基板の製造方法は、バインダー樹脂の中に、ゲル化剤および金属粉が含有された金属粉析出インクを用いている。
【特許文献1】特開平5−183261号公報
【特許文献2】特開平10−284814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記特許文献1に記載された発明は、前記バインダー樹脂の中に、触媒性金属と球状導電性顔料、および導電性ウィスカーの3種の導電性材料を混入するものであるため、製造コストが高くなるとともに、3種の導電性材料を混入する手間がかかるため、製造効率に劣る。
【0009】
前記特許文献2に記載された発明は、前記バインダーとして機能する樹脂材の中にゲル化剤が含まれているため、配線パターンの抵抗が大きくなり、回路基板としての特性を向上させることができない。また、ゲル化剤が含有されているため、配線パターンと基板との密着性を良好にすることができない。
【0010】
本発明は前記従来の課題を解決するものであり、製造コストを低廉にすることができるとともに、製造効率を向上でき、抵抗を小さくすることができ、さらに導体材料と基板との密着性に優れた回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の回路基板の製造方法は、
(a)樹脂材料と溶剤と導電性材料とで構成される導電性インクを用いて基板の表面に印刷部を形成する工程と、
(b)前記印刷部の表面を覆うメッキ部を無電解メッキ法によって形成する工程と、を有し、
前記(a)工程で、前記導電性材料をAg(銀)で形成することを特徴とするものである。
【0012】
この場合、前記(a)工程と(b)工程との間に、
(c)前記印刷部の表面を酸洗して、前記導電性材料の表面を活性化させる工程、を有するものとして構成することができる。
【0013】
また本発明の回路基板の製造方法は、
(d)樹脂材料と溶剤と導電性材料と触媒性材料とを有する導電性インクを用い基板の表面に印刷部を形成する工程と、
(e)前記印刷部の表面を覆うメッキ部を無電解メッキ法によって形成する工程と、を有し、
前記(d)工程で、前記導電性材料をカーボンブラックで形成し、前記触媒活性材料をPd(パラジウム)で形成することを特徴とするものである。
【0014】
この場合、前記(d)工程と前記(e)工程との間に、
(f)前記印刷部の表面を酸洗して、前記導電性材料の表面を活性化させる工程、を有するものとして構成することができる。
【0015】
また、前記(b)工程で、メッキ膜をCuで形成するものとして構成することや、前記(e)工程で、メッキ膜をCuで形成するものとして構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
導体材料をAgで形成する本発明の回路基板の製造方法では、溶剤で粘度調整された前記樹脂材料の中に導電性材料のみを分散し、他の構成要素を混入しないで製造を行なう。したがって、製造コストを低廉にすることができるとともに、多くの種類の導電性材料を混入する場合に比較して少ない工程で簡単に製造することができるため、製造効率を向上させることができる。
【0017】
また、前記バインダーとして機能する樹脂材料の中にゲル化剤などの添加剤を含まないで製造を行なうので、前記印刷部を小さな比抵抗にでき、回路基板としての特性を向上させることができる。また、前記印刷部と前記基板の表面との密着性が良好な回路基板を製造することができる。
【0018】
さらにAgを用いることで回路パターンの抵抗値を下げることができ、さらにAgがパターン表面に析出するマイグレーションも防止できるようになる。
【0019】
また導電性材料としてカーボンブラックを使用し、触媒活性材料としてPdを使用する本発明では、前記効果に加えて、印刷部に触媒活性材料が分散されているので、印刷部の表面が活性化され、前記メッキ部を形成する際、触媒化処理を行なう必要がない。したがって、製造工程を少なくすることができ、製造効率を向上させることができる。また、基板を浸漬して触媒化処理を行なう必要がないため、基板の表面にメッキ部が析出形成されることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の実施の形態の回路基板1を示す部分斜視図、図2は図1に示す回路基板を図1のII−II線で切断し、図1のY1方向から見た切断断面を模式的に示した断面図である。
【0021】
図1に示す実施の形態の回路基板1は、シート状の基板2の表面2aに、回路パターン3が形成されている。前記回路パターン3は、複数の導体部3aを有して構成されている。図1に示す実施形態では、前記導体部3aは長手方向(図示Y1−Y2方向)に向って線状に延びている。そして、2つの前記導体部3aは、幅方向(図示X1−X2方向)に所定間隔を空けて位置するように、前記基板2の前記表面2aに形成されている。
【0022】
ただし、本発明は長手方向に向って線状に延びる2つの前記導体部3aによって回路パターン3が構成されるものに限定されるものではなく、前記導体部3aの数や形状は、必要とする回路基板1の目的にしたがって任意に設定することができる。
【0023】
前記基板2は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミドなどの合成樹脂で形成されている。なお、前記基板2は可撓性を有しているものとして構成しても良く、あるいは可撓性を有するソリッド基板であってもよい。
【0024】
図2に示すように、前記回路パターン3を構成する前記導体部3aは、前記基板2の前記表面2a上に形成された印刷部10と、前記印刷部10aを覆うメッキ部20とを有して構成されている。
【0025】
前記印刷部10は、樹脂材料11と、この樹脂材料11中に分散された導電性材料12とを有して構成された導体材料で構成されている。
【0026】
前記樹脂材料11は、前記導電性材料12を分散させるためのバインダーとしての機能を有するとともに、前記印刷部10が前記基板2の前記表面2aに形成された際に、前記表面2aと前記印刷部10との密着性を確保するための機能を有するものである。この樹脂材料11は、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂材料で形成することができる。前記樹脂材料11には、必要に応じて可塑剤が添加されている。
【0027】
前記導電性材料12は前記樹脂材料11中に多数分散されており、導電性を発揮するものである。この導電性材料12は、例えばフレーク状、樹枝状、球状あるいは繊維状の形態である。図2に示す実施形態では、前記導電性材料12はAg(銀)で形成されている。
【0028】
図2では、図1に示すII−II線での切断断面を模式的に示しているため、多数の前記導電性材料12どうしが間隔を空けて前記樹脂材料11中に分散された状態で図示しているが、実際には多数の前記導電性材料12どうしがその表面において接触するように、前記樹脂材料11中に分散されている。このように、多数の前記導電性材料12どうしが表面において接触するように前記樹脂材料11中に分散されているため、前記印刷部10は全体として導電性を発揮するようになっている。
【0029】
図1および図2に示すように、前記メッキ部20は前記印刷部10の表面を覆うように形成されている。前記メッキ部20は、後記する無電解メッキ法によって形成されたものであり、金属材料によって形成されている。前記メッキ部20に使用される金属材料としては、Cu,Au,Ptなどを用いることができる。前記メッキ部20をCuで形成すると比抵抗を小さくすることができるとともに、製造コストを低廉にすることが可能となる。なお、前記メッキ部20を、例えばAuやPtなどの前記導電性材料12よりもイオン化傾向が小さい金属材料で形成すると、前記導電性材料12のイオンマイグレーションを適切に抑制することができる。
【0030】
図1および図2に示す前記回路基板1では、バインダーとして機能する前記樹脂材料11の中に、導電性材料12のみが分散されており、他の構成要素を有していない。したがって、製造コストを低廉にすることができるとともに、多くの種類の導電性材料を混入する場合に比較して少ない工程で簡単に製造することができるため、製造効率を向上させることができる。
【0031】
また、前記バインダーとして機能する樹脂材料11の中にゲル化剤などの添加剤が含まれていないので、前記印刷部10の比抵抗を小さくすることができるため、前記導体部3a全体の比抵抗を小さくすることが可能となり、回路基板1としての特性を向上させることができる。また、前記印刷部10と前記基板2の表面2aとの密着性を良好にすることができる。
【0032】
また、図1および図2に示す前記回路基板1では、前記印刷部10の表面を覆うように金属材料で形成された前記メッキ部20が形成されている。前記印刷部10は前記導電性材料12を含んで形成されているが、前記したように前記導電性材料12は前記樹脂材料11中に分散された状態である。ここで、前記樹脂材料11は熱硬化性樹脂材料で形成されており導電性を発揮しないため、前記印刷部10全体の比抵抗は、前記樹脂材料11の存在によって、前記導電性材料12単体での比抵抗に比較して大きい。
【0033】
しかし、図1および図2に示す前記回路基板1では、前記印刷部10の表面を覆うように金属材料からなる前記メッキ部20が形成されているため、前記印刷部10のみの比抵抗と比較すると、前記導体部3a全体での比抵抗を小さくすることが可能である。したがって、前記導体部3aの導電性を適切に確保することができる。
【0034】
図3は、本発明の回路基板100の模式断面図であり、図2に相当する図である。なお、図3に示す回路基板100の斜視図は図1と同様となるので図示を省略するが、以下には前記回路基板100を説明するために、図1を使用する場合もある。また、図3に示す前記回路基板100は、図1および図2に示す前記回路基板1と同じ構成要素を有して構成されている。したがって、図3に示す前記回路基板100のうち前記回路基板1と同じ構成要素には、図1および図2に示す前記回路基板1と同じ符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0035】
図3に示すように、前記回路基板100は、シート状の基板2の表面2aに、回路パターン3が形成されている。前記回路パターン3は、複数の導体部3aを有して構成されている。図3に示すように、前記回路パターン3を構成する前記導体部3aは、前記基板2の前記表面2a上に形成された印刷部110と、前記印刷部110aを覆うメッキ部20とを有して構成されている。
【0036】
前記印刷部110は、樹脂材料11と、この樹脂材料11に分散された導電性材料112および触媒活性材料130とを有して構成された導体材料で構成されている。なお、図3では、前記導電性材料112の方が、前記触媒活性材料130よりも直径が大きく示されているが、前記導電性材料112と前記触媒活性材料130の直径の大きさの関係はこれに限定されるものではなく、例えば前記触媒活性材料130の方が、前記導電性材料112よりも直径が大きく構成されていても良く、あるいは前記導電性材料112と前記触媒活性材料130の直径がともに同じものとして構成されていても良い。
【0037】
前記導電性材料112は前記樹脂材料11中に多数分散されており、導電性を発揮するものである。この導電性材料112は、例えばフレーク状、樹枝状、球状あるいは繊維状の形態である。図3に示す実施形態では、前記導電性材料12はカーボンブラックで形成されている。ただし、前記度導電性材料12をカーボンブラックに代えて、カーボングラファイト、カーボンファイバー、カーボンフィブリルで形成しても良い。
【0038】
前記触媒活性材料130も、前記樹脂材料11中に多数分散されており、後記する製造工程中においてメッキ部20を無電解メッキ法で形成する際に、触媒活性を向上させる機能を発揮するものである。前記触媒活性材料130は導電性材料であることが好ましい。前記触媒活性材料130を導電性材料で形成すると、前記印刷部110の比抵抗を下げることができる。前記触媒活性材料130は、例えばフレーク状、樹枝状、球状あるいは繊維状の形態である。図3に示す実施形態では、前記触媒活性材料130はPd(パラジウム)で形成されている。
【0039】
なお、図3は切断断面図として模式的に示したものであるため、多数の前記導電性材料112どうし、あるいは多数の前記触媒活性材料130どうし、さらには多数の前記導電性材料112と多数の前記触媒活性材料130とが、間隔を空けて前記樹脂材料11中に分散された状態で図示している。しかし実際には、多数の前記導電性材料112どうし、および多数の前記触媒活性材料130、さらには多数の前記導電性材料112と多数の前記触媒活性材料130とが、それらの表面において接触するように、前記樹脂材料11中に分散されている。したがって、前記印刷部110は全体として導電性を発揮するようになっている。
【0040】
図1および図3に示すように、前記メッキ部20は前記印刷部110の表面を覆うように形成されている。前記メッキ部20は、後記する無電解メッキ法によって形成されたものであり、金属材料によって形成されている。前記メッキ部20に使用される金属材料としては、Cu,Au,Ptなどを用いることができる。前記メッキ部20をCuで形成すると比抵抗を小さくすることができるとともに、製造コストを低廉にすることができる。なお、前記メッキ部20を、例えばAuやPtなどの前記導電性材料112や触媒活性材料130よりもイオン化傾向が小さい金属材料で形成すると、前記導電性材料112や前記触媒活性材料130のイオンマイグレーションを適切に抑制することができる。
【0041】
図3に示す前記回路基板100では、バインダーとして機能する前記樹脂材料11の中に、導電性材料112と前記触媒活性材料130の2つのみが分散されている。したがって、製造コストを低廉にすることができるとともに、例えば前記特許文献1に記載された回路基板の製造方法のように、多くの種類の導電性材料を混入する場合に比較して少ない工程で容易に製造することができるため、製造効率を向上させることができる。
【0042】
また、前記バインダーとして機能する樹脂材料11の中にゲル化剤などの添加剤が含まれていないため、前記印刷部110の比抵抗を小さくすることができるため、前記導体部3a全体の比抵抗を小さくすることが可能となり、回路基板100としての特性を向上させることができる。また、前記印刷部110と前記基板2の表面2aとの密着性を良好にすることができる。
【0043】
また、図1および図3に示す前記回路基板100では、前記印刷部110の表面を覆うように金属材料で形成された前記メッキ部20が形成されている。前記印刷部110は前記導電性材料112および触媒活性材料130を含んで形成されているが、前記したように前記導電性材料112および触媒活性材料130は前記樹脂材料11中に分散された状態である。ここで、前記樹脂材料11は熱硬化性樹脂材料で形成されており導電性を発揮しないため、前記印刷部110全体の比抵抗は、前記樹脂材料11の存在によって、前記導電性材料112や触媒活性材料130単体での比抵抗に比較して大きく、導電性に劣ることとなる。
【0044】
しかし、図1および図3に示す前記回路基板100では、前記印刷部110の表面を覆うように金属材料からなる前記メッキ部20が形成されているため、前記印刷部110のみの比抵抗と比較すると、前記導体部3a全体での比抵抗を小さくすることが可能である。したがって、前記導体部3aの導電性を適切に確保することができる。
【0045】
以下に、図1および図2に示す前記回路基板1の製造方法を、図4ないし図6に基づいて説明する。なお、図4ないし図6は、図1に示すII−II線での切断断面図を示す図2と同じ方向から見た断面図である。
【0046】
まず図4に示すように、シート状の基板2を用意する。この基板2は、例えばポリエチレンテレフタレートやポリイミドなどの合成樹脂で形成されている。なお、前記基板2は可撓性のものであっても良く、あるいは可撓性ではないガラスエポキシなどのソリッド基板であってもよい。
【0047】
次に図5に示すように、前記基板2の表面2aに印刷部10を形成する。この印刷部10を形成するには、まず樹脂材料11の中に溶剤を混入した後、この樹脂材料11の中に導電性材料12を分散して、ペースト状の導電性インクを形成する。前記溶剤は前記導電性インクの粘度調整を行なうためのものであり、前記樹脂材料11中に混入する前記溶剤の量を調整することによって、前記導電性インクの粘度をスクリーン印刷に適した粘度に調整する。また、前記樹脂材料11には、必要に応じて可塑剤が混入されている。そして、粘度調整された前記導電性インクを用いてスクリーン印刷を行ない、前記基板2の前記表面2aに、前記導電性インクによって回路パターン形状の導電塗膜を形成する。
【0048】
そして、前記基板2の前記表面2aに形成された前記導電塗膜を焼成すると、前記樹脂材料11中に混入されていた前記溶剤が揮発し、さらに前記樹脂材料11は熱硬化性樹脂材料によって形成されているため前記導電塗膜が前記基板2の前記表面2aで硬化し、前記基板2の前記表面2aに印刷部10が密着した状態で形成される。前記焼成温度は、例えば120〜200℃である。
【0049】
次に、前記印刷部110の表面を酸洗し、前記導電性材料12の表面を活性化させる。この酸洗は塩酸や硫酸、あるいは重クロム酸など公知の材料を使用でき、また公知の方法によって行なうことができる。
【0050】
次に図6に示すように、前記印刷部10の表面を覆うようにメッキ部20を形成する。このメッキ部20は、無電解メッキ法によって形成されるものである。前記メッキ部20は、例えばCu,Au,Ptなどで形成できる。前記メッキ部20を例えばCuで形成する場合、メッキ浴として、例えばCuSO4・5H2Oを10g/リットル、NaOHを10g/リットル、錯化剤としてEDTA(Ethylenediamine・tetraacetic・acid)・2H2Oを30g/リットル、ホルムアルデヒド(CHO)を4g/リットルの組成のものを使用できる。また、このメッキ浴の温度を例えば35℃とし、前記印刷部10が形成された状態の前記基板2を例えば15分間浸漬する。このようにして無電解メッキ法によって前記メッキ部20を形成した状態を示したのが図6である。
【0051】
前記メッキ部20は無電解メッキ法によって形成されるが、このように前記メッキ部20を無電解メッキ法によって形成するのは、この無電解メッキ法は被メッキ部(印刷部10)が電気的に導通していなくてもメッキ形成できるため、例えば、前記回路パターン3を、複数の短い導体部3aどうしがそれぞれ間隔を空けて形成され、それらの導体部3aが互いに導通していない構造で形成する場合であっても、それら各導体部3aを構成する前記各印刷部10に対して、表面を覆うメッキ部20を形成することができるからである。
【0052】
前記印刷部10が形成された前記基板2を前記メッキ浴に浸漬する前に、例えば塩化スズ溶液に浸漬してSn2+を析出させる感応化工程と、塩化パラジウム溶液に浸漬してPdを析出させる活性化工程とで構成される触媒化処理を、前記印刷部10が形成された前記基板2に対して行なうと、前記印刷部10の表面以外の前記表面2aにも前記メッキ部20が析出形成されてしまうことが、後記する実験によって確認されている。したがって、前記メッキ浴への浸漬前に前記触媒化処理は行なわないことが好ましい。
【0053】
本発明の回路基板1の製造方法では、溶剤で粘度調整された前記樹脂材料11の中に導電性材料12のみを分散し、他の構成要素を混入しないで製造を行なう。したがって、製造コストを低廉にすることができるとともに、多くの種類の導電性材料を混入する場合に比較して少ない工程で簡単に製造することができるため、製造効率を向上させることができる。
【0054】
また、前記バインダーとして機能する樹脂材料11の中にゲル化剤などの添加剤を含まないで製造を行なうので、前記印刷部10を小さな比抵抗のものとして製造することができるため、前記導体部3a全体を小さな比抵抗のものとして製造することが可能となり、回路基板1としての特性を向上させることができる。また、前記印刷部10と前記基板2の表面2aとの密着性が良好な回路基板1を製造することができる。
【0055】
また、前記印刷部10は前記導電性材料12が含まれるように形成する。しかし、前記したように前記導電性材料12は前記樹脂材料11中に分散された状態で形成する。ここで、前記樹脂材料11は熱硬化性樹脂材料で形成するが、この樹脂材料11は導電性を発揮しないため、前記印刷部10全体の比抵抗は、前記樹脂材料11の存在によって、前記導電性材料12単体での比抵抗に比較して大きく、導電性に劣ることとなる。
【0056】
しかし、図4ないし図6に示す前記回路基板1の製造方法では、図6に示す工程で、前記印刷部10の表面を覆うように前記メッキ部20を金属材料で形成するため、前記印刷部10のみの比抵抗と比較すると、前記導体部3a全体での比抵抗を小さくすることが可能である。したがって、前記導体部3aの導電性が適切に確保された回路基板1を製造することができる。
【0057】
以上、図1および図2に示す回路基板1の製造方法を説明したが、図3に示す回路基板100を製造するには、図5に示す工程に代えて図7に示すように、前記樹脂材料11の中に溶剤を混入した後、この樹脂材料11の中に導電性材料112と触媒活性材料130を分散して、ペースト状の導電性インクを形成し、この導電性インクを用いてスクリーン印刷を行ない、前記基板2の前記表面2aに、前記導電性インクによって回路パターン形状の導電塗膜を形成する。
【0058】
そして、前記基板2の前記表面2aに形成された前記導電塗膜を焼成して前記樹脂材料11中に混入されていた前記溶剤を揮発させるとともに、前記基板2の前記表面2aで硬化させて、前記基板2の前記表面2aに密着するように前記印刷部110を形成すれば良い。なお、前記焼成温度は、例えば120〜200℃である。そして、前記印刷部110を形成した後は、図1および図2に示す前記回路基板1の製造工程と同様に、前記印刷部110の表面を酸洗して前記導電性材料112および前記触媒活性材料130の表面を活性化した後、図6に示す工程と同様に、前記印刷部10の表面を覆うように、無電解メッキ法によってメッキ部20を形成すれば良い。
【0059】
前記回路基板100の製造方法では、前記印刷部110に触媒活性材料130が分散されているので、前記印刷部110の表面が活性化されているため、図7に示す工程で前記メッキ部20を形成する際、前記触媒化処理を行なう必要がない。したがって、製造工程を少なくすることができ、製造効率を向上させることができる。また、基板2を前記塩化スズ溶液および塩化パラジウム溶液などの溶液に浸漬して触媒化処理を行なう必要がないため、基板2の表面2aにメッキ部20が析出形成されることを防止できる。
【0060】
本発明の回路基板100の製造方法でも、溶剤で粘度調整された前記樹脂材料11の中に導電性材料12と触媒活性材料130のみを分散し、他の構成要素を混入しないで製造を行なうため、製造コストを低廉にすることができるとともに、多くの種類の導電性材料を混入する場合に比較して少ない工程で簡単に製造することができるため、製造効率を向上させることができる。
【0061】
また、前記バインダーとして機能する樹脂材料11の中にゲル化剤などの添加剤を含まないで製造を行なうので、前記印刷部110を小さな比抵抗のものとして製造することができる。したがって、前記導体部3a全体を小さな比抵抗のものとして製造することが可能となり、回路基板100としての特性を向上させることができる。また、前記印刷部110と前記基板2の表面2aとの密着性が良好な回路基板1を製造することができる。
【0062】
また、前記印刷部110は前記導電性材料112および触媒活性材料130が含まれるように形成するが、前記したように前記導電性材料112および前記触媒活性材料130は前記樹脂材料11中に分散された状態で形成する。ここで、前記樹脂材料11は熱硬化性樹脂材料で形成するが、この樹脂材料11は導電性を発揮しないため、前記印刷部110全体の比抵抗は、前記樹脂材料11の存在によって、前記導電性材料112や前記触媒活性材料130単体での比抵抗に比較して大きく、導電性に劣ることとなる。
【0063】
しかし、前記回路基板100の製造方法では、図7に示す工程で、前記印刷部110の表面を覆うように前記メッキ部20を金属材料で形成するため、前記印刷部110のみの比抵抗と比較すると、前記導体部3a全体での比抵抗を小さくすることが可能である。したがって、前記導体部3aの導電性が適切に確保された回路基板100を製造することができる。
【実施例】
【0064】
以下に示す表1は、図1および図3に示す回路基板1、100の実施例と、比較例の導体部3aの面積抵抗、耐マイグレーション、およびメッキ状態を示すものである。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1ないし3は、導電性材料12をAgとして印刷部10を形成し、この印刷部10の表面を覆うようにメッキ部20を形成して導体部3aを形成した構造である。
【0067】
実施例4は、導電性材料12をカーボンブラックとし、触媒活性材料130をパラジウムとして印刷部110を形成し、この印刷部110の表面を覆うようにメッキ部20を形成して導体部3aを形成した構造である。
【0068】
実施例1ないし4では、メッキ部20を形成する前に、前記印刷部10が形成された基板2を塩化第1スズ溶液と塩化パラジウム溶液とに浸漬して行なう触媒化処理は行なっていない。
【0069】
また、表1に示すように、実施例1では希塩酸によって印刷部10の表面を酸洗し、実施例2および3では希硫酸によって印刷部10の表面を酸洗した。
【0070】
比較例1は導電性材料12をAgとして印刷部10を構成し、この印刷部10の表面にはメッキ部20が形成されていない構造である。
【0071】
比較例2は導電性材料12をカーボンブラックとし、触媒活性材料130をパラジウムとして印刷部10を構成し、この印刷部10の表面にはメッキ部20が形成されていない構造である。
【0072】
比較例3は導電性材料12をAgとして印刷部10を形成し、この印刷部10の表面を覆うようにメッキ部20を形成して導体部3aを形成した構造である点では実施例1ないし3と同様であるが、この比較例3では、メッキ部20を形成する前に、前記印刷部10が形成された基板2を塩化第1スズ溶液と塩化パラジウム溶液とに浸漬して触媒化処理を行なったものである。
【0073】
また、表1に示すように、比較例1および2では印刷部10の表面を酸洗せず、比較例3では希硫酸によって印刷部10の表面を酸洗した。
【0074】
これら各実施例および各比較例のそれぞれについて、表に示すように酸洗、塩化パラジウム溶液による触媒化処理、メッキ処理条件を設定して、面積抵抗と耐マイグレーション、およびメッキ状態を測定した。
【0075】
前記各実施例および各比較例では、基板2としてPETを使用した。
前記各実施例および前記各比較例では、導電性材料12として使用されるAgとして、平均長さ寸法5μmフレーク状Agと平均長さ寸法1〜2μmの樹枝状Agを使用した。また、導電性材料112として使用されるカーボンブラックとして、平均長さ寸法0.1から5μmの中空シェル状カーボンブラック(ケッチェンブラック(R))を用いた。
【0076】
また、樹脂材料11としては、ポリエステルとポリウレタンとを使用した。また樹脂材料11の粘度調整のために混入される溶剤として、カルビトールアセテートを使用した。
【0077】
導電性材料12と樹脂材料11との混合比率は、導電性材料12を40vol/%、樹脂材料11を60vol/%とし、合わせて100vol/%となるようにした。なお、この導電性材料12と樹脂材料11とを合わせたものを100vol/%としたときに、30vol/%の溶剤を樹脂材料11に混入して導電性インクを形成し、この導電性インクを用いて印刷部10、110を形成した。
【0078】
前記表1の面積抵抗とは、単位面積当りの抵抗値を意味し、表1では1cm当りの抵抗値を意味している。
【0079】
また前記表1に示す耐マイグレーションは、基板2の表面2aに0.5mmピッチ(導体部3aの幅寸法が0.25mm、隣接する導体部3a間の幅寸法が0.25mm)の導体部3aを形成して、この導体部3aを電極とし、電極間に+/−5Vの電圧を印加し、温度60℃、湿度92RH%の条件下で500時間放置して、マイグレーションの有無を調べた。表1では、マイグレーションが認められた場合を○印で示し、マイグレーションが認められなかった場合を×印で示している。
【0080】
表1に示すように、実施例1ないし4では、比較例1ないし3に比較して、面積抵抗を小さくすることができる。
【0081】
また、実施例1ないし4は、いずれも耐マイグレーションが良好であることが判る。特に実施例1ないし3は、マイグレーションが発生し易いAgを導電性材料12として使用しているにも拘らず、マイグレーションが認められなかった。
【0082】
また、印刷部10の酸洗を行なった各実施例は、酸洗を行なっていない比較例1および2と比較して、面積抵抗が小さいことが判る。
【0083】
また、実施例1ないし4は、いずれもメッキ状態が銅色を呈していることから、良好なメッキ状態であるといえる。
【0084】
一方、比較例1ないし3は、実施例1ないし4に比較して面積抵抗が大きい。
また、比較例1ではマイグレーションが発生し易いAgを導電性材料12として使用しているため、マイグレーションの発生が認められた。
【0085】
また、メッキ部20を形成する際に、印刷部10の表面を触媒化処理した比較例3では、基板2の表面2aにもCuが析出形成されているため好ましくない。
【0086】
以上のように、実施例1ないし4は比較例1ないし3と比較して良好なメッキ状態とすることができ、小さい面積抵抗、良好な耐マイグレーションを有していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の回路基板を示す部分斜視図、
【図2】図1に示す回路基板を図1のII−II線で切断した状態を模式的に示す断面図、
【図3】本発明の回路基板を示す断面図、
【図4】図1に示す回路基板の製造工程を示す一工程図、
【図5】図4に示す工程の次に行なわれる工程を示す一工程図、
【図6】図5に示す工程の次に行われる工程を示す一工程図、
【図7】図3に示す回路基板の製造工程を示す一工程図、
【符号の説明】
【0088】
1,100 回路基板
2 基板
2a 表面
3 回路パターン
3a 導体部
10 印刷部
11 樹脂材料
12 導電性材料
20 メッキ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)樹脂材料と溶剤と導電性材料とで構成される導電性インクを用いて基板の表面に印刷部を形成する工程と、
(b)前記印刷部の表面を覆うメッキ部を無電解メッキ法によって形成する工程と、を有し、
前記(a)工程で、前記導電性材料をAg(銀)で形成することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記(a)工程と(b)工程との間に、
(c)前記印刷部の表面を酸洗して、前記導電性材料の表面を活性化させる工程、を有する請求項1記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
(d)樹脂材料と溶剤と導電性材料と触媒性材料とを有する導電性インクを用い基板の表面に印刷部を形成する工程と、
(e)前記印刷部の表面を覆うメッキ部を無電解メッキ法によって形成する工程と、を有し、
前記(d)工程で、前記導電性材料をカーボンブラックで形成し、前記触媒活性材料をPd(パラジウム)で形成することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記(d)工程と前記(e)工程との間に、
(f)前記印刷部の表面を酸洗して、前記導電性材料の表面を活性化させる工程、を有する請求項3記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記(b)工程で、メッキ膜をCuで形成する請求項1または2記載の回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記(e)工程で、メッキ膜をCuで形成する請求項3または4記載の回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−303368(P2006−303368A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126342(P2005−126342)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】