説明

回路基板及び電子部品の実装方法

【課題】回路基板及び電子部品の実装方法において、実装時に回路基板が受けるダメージを低減すること。
【解決手段】回路基板1の電極パッド3の上に、上面が凸状の予備はんだ11を形成する工程と、予備はんだ11の上に、上面が平坦又は凹状の樹脂台座31aを形成する工程と、はんだバンプ22が形成された半導体素子20を樹脂台座31aの上にはんだバンプ22を下側にして載せる工程と、予備はんだ11、樹脂台座31a、及びはんだバンプ22をリフローすることにより、予備はんだ11とはんだバンプ22とを接合する工程とを有する電子装置の実装方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板及び電子部品の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品を回路基板に実装する方法としては様々な方法があるが、なかでもフリップチップ実装は、電子部品の多端子化が容易である点で他の実装方法よりも有利である。
【0003】
そのようなフリップチップ実装では、電子部品に形成されたはんだバンプをリフローすることにより、はんだバンプを介して回路基板と電子部品とが機械的かつ電気的に接続される。例えば、FC-BGA(flip Chip-Ball Grid Array)では、電子部品にマトリックス状に形成されたはんだバンプによって、電子部品が回路基板上に実装される。
【0004】
そのフリップチップ実装では、電子部品と回路基板とが電気的に確実に接続されることは勿論のこと、実装時に回路基板が受けるダメージをなるべく少なくして回路基板の信頼性を維持することが望ましい。
【特許文献1】特開2002−118209号公報
【特許文献2】特開2007−123354号公報
【特許文献3】特開平10−22335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路基板及び電子部品の実装方法において、回路基板の予備はんだ形成時に回路基板が受けるダメージを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の開示の一観点によれば、回路基板の電極パッドの上に、上面が凸状の予備はんだを形成する工程と、前記予備はんだの上に、上面が平坦又は凹状の樹脂台座を形成する工程と、はんだバンプが形成された電子部品を前記樹脂台座の上に前記はんだバンプを下側にして載せる工程と、前記予備はんだ、前記樹脂台座、及び前記はんだバンプをリフローすることにより、前記予備はんだと前記はんだバンプとを接合する工程とを有する電子部品の実装方法が提供される。
【0007】
また、その開示の別の観点によれば、基材と、前記基材の素子搭載領域に形成された複数の電極パッドと、前記複数の電極パッドのそれぞれに接合され、上面が凸状の複数の予備はんだと、少なくとも一つの前記予備はんだの上に形成され、上面が平坦又は凹状の樹脂台座とを有する回路基板が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以下の開示では、予備はんだの上に樹脂台座を形成し、その樹脂台座の平坦若しくは凹状の上面上に電子部品のはんだバンプを載せるので、はんだバンプが樹脂台座から滑り落ち難くなり、はんだバンプと予備はんだとの位置合わせが簡単になる。
【0009】
そのため、位置合わせの容易化のために予備はんだを加圧して平坦化する必要がなくなり、加圧が原因で回路基板にダメージが加わるのを防止でき、電子部品を実装した後でも回路基板の信頼性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)予備的事項
本実施形態について説明する前に、本実施形態の予備的事項について説明する。
【0011】
図1〜図3は、予備的事項に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図である。
【0012】
この実装方法は、電子部品の多端子化に有利なフリップチップ実装であって、図1(a)に示すような回路基板1を実装用の基板として利用する。
【0013】
その回路基板1は、例えばガラスエポキシ(FR-4タイプ)等よりなる樹脂基材2を有する。その樹脂基材2の一方の主面には半導体素子等の電子部品が搭載される素子搭載領域Aが確定されており、その素子搭載領域Aには銅膜をパターニングしてなる電極パッド3が形成される。
【0014】
なお、図示の例では樹脂基材2の主面上に電極パッド3が直接形成されているが、樹脂基材2の主面上に多層配線構造を形成し、その多層配線構造の最上層に電極パッド3を形成するようにしてもよい。
【0015】
また、電極パッド3の材料は銅に限定されず、銅膜の上にニッケル膜又は金膜を形成してなる金属積層膜をパターニングして電極パッド3としてもよい。このようにニッケル膜や金膜を形成することで、後の工程で電極パッド3上に形成される予備はんだが濡れ広がるのを抑制し易くなる。
【0016】
電極パッド3の上には、後の工程で溶融したはんだによって電極パッド3同士が電気的にショートすることを防止するためのソルダレジスト層4が形成される。そのソルダレジスト層4は、各電極パッド3の上に複数の開口4aを備えており、この開口4aから電極パッド3が露出する。
【0017】
次いで、図1(b)に示すように、ソルダレジスト層4の上に複数の孔5aを備えたメタルマスク5を載置する。載置に際しては、開口4aの上に孔5aが位置するように、回路基板1とメタルマスク5とが位置合わせされる。
【0018】
そのメタルマスク5の材料は特に限定されないが、この例では厚さが約30〜50μmのSUS板をメタルマスク5として用いる。また、孔5aの直径は、例えば開口4aの直径が100μ程度の場合は、120〜140μm程度である。
【0019】
次に、図1(c)に示すように、メタルマスク5の上に、はんだ粉末とフラックスとを混練してなるはんだペースト8を供給する。はんだ粉末の材料は、環境に配慮して鉛フリーとするのが好ましく、本例ではSn-3Ag-0.5Cuを使用する。
【0020】
そして、メタルマスク5の表面に沿ってスキージ7を移動させることにより、孔5a内にはんだペースト8を供給する。
【0021】
その後に、図2(a)に示すように、回路基板1からメタルマスク5を外し、開口4a内とその周囲のソルダレジスト4上にのみはんだペースト8を残す。
【0022】
ここまでの工程により、メタルマスク5を用いた印刷法によって回路基板1上にはんだペースト8が印刷されたことになる。
【0023】
ところで、このはんだペースト8には、はんだ粉末の酸化膜を除去するためのフラックスが多量に添加されており、この状態では半導体素子を実装した後にフラックスを除去するのが困難となる。
【0024】
そこで、次の工程では、図2(b)に示すように、はんだペースト8をリフローして半球状の予備はんだ11にすると共に、はんだペースト8に添加されていたフラックスを予備はんだ11の外側表面にしみ出させる。
【0025】
そして、予備はんだ11が冷却して固化した後に、イソプロピルアルコール等の洗浄液中に回路基板1を浸し、上記のリフロー時に予備はんだ11の表面にしみ出したフラックスを洗浄して除去する。
【0026】
ここで、上記のようにリフローを行ったことにより、予備はんだ11の上面は溶融時の表面張力によって凸状となっている。
【0027】
しかしながら、この状態で回路基板1に半導体素子を実装しようとしても、半導体素子のはんだバンプが半球状の予備はんだ11から滑り落ちてしまい、半導体素子と回路基板1との間に位置ずれが発生してしまう。
【0028】
このような位置ずれを防止するために、次の工程では、図2(c)に示すように、予備はんだ8に押圧板12を押し当て、機械的圧力によって予備はんだ8の上面を平坦化する。
【0029】
その後に、図3(a)に示すように、回路基板1の上に半導体素子20を載せる。その半導体素子20には電極パッド21に接合されたはんだバンプ22が設けられており、このはんだバンプ22が予備はんだ11の上に載せられる。
【0030】
このとき、予備はんだ11の上面を予め平坦にしておいたので、はんだバンプ22が予備はんだ11から滑り落ちる危険性が低減され、半導体素子20と回路基板1との位置ずれを防止することが可能となる。
【0031】
そして、図3(b)に示すように、予備はんだ11とはんだバンプ22とをリフローしてそれらを接合することにより、回路基板1に半導体素子20を実装する。
【0032】
その後に、図3(c)に示すように、回路基板1と半導体素子20との間の熱膨張率差を緩和するためのアンダーフィル剤28をこれらの間に充填し、回路基板1と半導体素子20との接続信頼性を高めるようにする。
【0033】
ここで、図2(b)の工程において予備はんだ11に付着していたフラックスを予め洗浄しておいたので、フラックスが原因でアンダーフィル材28が未充填となる部分が発生するのを抑制できる。
【0034】
以上により、この実装方法の主要工程を終了する。
【0035】
このような実装方法によれば、図2(b)に示したように、電極パッド3の上に予備はんだ11を形成する。
【0036】
予備はんだ11を形成しないと、回路基板1に反りが生じている場合に、図3(a)の工程で電極パッド3に届かないはんだバンプ22が発生し、電極パッド3とはんだバンプ22との間に接続不良が発生することがある。これと同じことが製造誤差等によって各々のはんだバンプ22の高さにばらつきがある場合にも生じ得る。
【0037】
更に、本例のようにソルダレジスト4が形成される場合には、ソルダレジスト4の厚みによってはんだバンプ22が電極パッド3に届き難くなり、上記のような接続不良が助長されるおそれがある。
【0038】
予備はんだ11は、このような不都合を解消するために形成されるものであり、リフロー時に溶融してはんだバンプ22と溶け合うことにより、はんだバンプ22を電極パッド3に確実に接合させ、実装構造の信頼性を向上させる役割を担う。
【0039】
その一方で、図2(c)を参照して説明したように、回路基板1と半導体素子20との位置ずれを防止するために、押圧板12によって予備はんだ8の上面を機械的圧力によって平坦化する必要がある。
【0040】
一つの回路基板1には数千個の予備はんだ11が形成される場合があり、その場合には予備はんだ11の各々に十分な広さの平坦面を形成するために、押圧板12に数百キログラムにも及ぶ荷重を与えなければならない。
【0041】
しかしながら、回路基板1にこのような高荷重を与えると、基板内の配線等が損傷し、回路基板1の信頼性を著しく低下させてしまうことになる。
【0042】
本願発明者は、このような知見に鑑み、以下に説明するような実施形態に想到した。
【0043】
(2)第1実施形態
図4〜図6は、本実施形態に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図である。なお、これらの図において予備的事項で説明したのと同じ要素には予備的事項におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0044】
この実装方法では、まず既述の図1(a)〜図2(b)と同じ工程を行う。これにより、図4(a)に示すように、各電極パッド3上に予備はんだ11が接合された回路基板1を作製する。
【0045】
なお、予備的事項で説明したように、樹脂基材2と電極パッドとの間に多層配線構造が形成された回路基板1を作製してもよい。そのような回路基板1は、ビルドアップ基板とも呼ばれる。
【0046】
次いで、図4(b)に示すように、複数の孔30aを備えたメタルマスク30をソルダレジスト層4の上に載置し、各孔30aから予備はんだ11を露出させる。
【0047】
そのメタルマスク30の材料は特に限定されない。本実施形態では厚さが約30〜50μmのSUS板をメタルマスク30として用いる。また、孔30aの直径は、例えば110〜140μm程度である。
【0048】
そして、図4(c)に示すように、メタルマスク30の上にフラックス31を供給し、メタルマスク30の表面に沿ってスキージ32を移動させることにより、印刷法により孔30a内の予備はんだ11上にフラックスを供給する。
【0049】
そのフラックス31の組成は特に限定されない。
【0050】
本実施形態では、樹脂酸(ロジン)と溶媒とを混練してなるペーストをフラックス31として用いる。このうち、樹脂酸としては、融点がなるべく高いものを使用するものが好ましく、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パルストリン酸、及びピマル酸のいずれか一つ、若しくはこれらの混合物を使用し得る。
【0051】
一方、溶媒は特に限定されないが、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テルピネオール、及びイソプロピルアルコールのいずれか又はこれらの混合物を使用し得る。
【0052】
フラックス31における溶媒の濃度は特に限定されず、例えば10〜99重量%の濃度とし得る。その溶媒濃度を高めることにより、フラックス31の粘度が低下して孔30a内にフラックス31が容易に供給され、フラックス31の印刷が簡単となる。
【0053】
更に、フラックス31の粘度を調節するために、ガムロジンやウッドロジン等の天然ロジン、若しくは水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、及び酸変成ロジン等のロジンエステル等をフラックス31に添加するようにしてもよい。
【0054】
また、印刷時のフラックス31のチキソ性を調節するために、フラックス31に増粘剤を添加してもよい。本実施形態で使用し得る増粘剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、硬化ひまし油、及び油脂系ワックス等があり、これらのいずれか一つ又は混合物を1〜20重量%の濃度でフラックス31に添加し得る。
【0055】
なお、フラックス31は、添加されている樹脂酸の作用によって、予備はんだ11の表面の自然酸化膜の除去や、予備はんだ11の酸化防止の機能も有しており、その機能を高めるための活性剤をフラックス31に添加してもよい。そのような活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、クエン酸等の有機酸や、トリエタノールアミン等の有機物があり、これらのいずれか一つ又は混合物をフラックス31に添加し得る。その活性剤の濃度も特に限定されないが、例えばフラックス31に1〜20重量%の濃度で添加される。
【0056】
その後に、図5(a)に示すように、回路基板1からメタルマスク30を外すことにより、各予備はんだ11の上に樹脂台座31aを形成する。その樹脂台座31aは、平坦な上面31bを有しており、複数の予備はんだ11のそれぞれの上に互いに間隔をおいて複数形成される。
【0057】
ここで、樹脂台座31aの粘度が低すぎると、メタルマスク30を除去した後に樹脂台座31aが型崩れするおそれがあるので、型崩れをしない程度にフラックス31中の溶媒濃度を低めるのが好ましい。
【0058】
このように、フラックス31の粘度はその溶媒濃度によって調節し得るものであり、樹脂台座31aの型崩れの防止とフラックス31の印刷のし易さとを両立できるような溶媒濃度にするのが好ましい。
【0059】
また、フラックス31に添加する溶媒に低沸点の溶媒成分を添加することによって、印刷後、50℃〜100℃程度の加熱ベーキングによって溶媒成分を揮発させて、フラックス31の形状を維持することも可能である。
【0060】
図7は、この工程を終了した後の回路基板1の平面図である。
【0061】
これに示されるように、樹脂台座31aは、回路基板1の矩形状の素子搭載領域Aにマトリックス状に互いに間隔をおいて形成される。
【0062】
次に、図5(b)に示すように、はんだバンプ22が形成された半導体素子20をチップマウンタで把持し、回路基板1の素子搭載領域A(図7参照)にその半導体素子20を搭載する。
【0063】
搭載に際しては、半導体素子20は、はんだバンプ22を下側にして樹脂台座31aの上に載せられる。このとき、上記のように樹脂台座31aの上面31bを平坦に形成したため、半球状のはんだバンプ22が樹脂台座31aから滑るのを防止でき、予備はんだ11とはんだバンプ22との位置合わせが容易となる。
【0064】
そのため、本実施形態では、図2(c)で説明したような平坦化のための加圧を予備はんだ11に対して行う必要がなく、加圧時の圧力によって回路基板1内の配線等にダメージが入るのを防止できる。
【0065】
なお、はんだバンプ22の材料は特に限定されない。本実施形態では、鉛フリーはんだであるSn-3Ag-0.5Cuをはんだバンプ22の材料として使用する。
【0066】
次いで、図5(c)に示すように、窒素雰囲気中において予備はんだ11、樹脂台座31a、及びはんだバンプ22をリフローし、予備はんだ11とはんだバンプ22とを接合する。
【0067】
このとき、樹脂台座31aの融点がはんだバンプ22の融点よりも高いと、樹脂台座31aよりも先にはんだバンプ22が溶け出し、隣接するはんだバンプ22同士が繋がってしまうおそれがある。そのため、樹脂台座31aの融点は、はんだバンプ22の融点よりも低いのが好ましい。
【0068】
但し、樹脂台座31aの融点がはんだバンプ22の融点よりも低すぎると、はんだバンプ22が溶けるはるか以前に樹脂台座31aが溶け出してその形状が崩れてしまい、はんだバンプ22と予備はんだ11とが位置ずれするおそれがある。
【0069】
そのような位置ずれを防止するには、樹脂台座31aが溶融してから約10秒以内にはんだバンプ22が溶融するのが好ましい。約10秒の時間差を確保するための樹脂台座31aとはんだバンプ22との融点の差は、リフロー雰囲気の温度プロファイルやはんだバンプ22の融点に依存する。
【0070】
例えば、本実施形態のようにはんだバンプ22の材料がSn-3Ag-0.5Cuである場合、はんだバンプ22の融点は217℃である。このとき、リフロー雰囲気の温度プロファイルが150℃〜160℃の温度から一分程度で240℃の最高温度に達する場合、樹脂台座31aとはんだバンプ22との融点の差を20℃以内とすることで、上記した時間差を確保できると推測される。
【0071】
フラックス31の融点は、その中に含まれる樹脂酸の融点によって実質的に決定される。本実施形態で使用し得る樹脂酸の融点は次の表1の通りである。
【0072】
【表1】

これらの中からはんだバンプ22の融点との差が20℃以内になるような樹脂酸を選択することにより、リフロー時に樹脂台座31aが顕著に型崩れするのを防止することが可能となる。
【0073】
典型的なはんだバンプ22の融点はSn-Pb系はんだの183℃〜Sn-Ag系はんだの221℃であるから、20℃以内の融点の差を確保するためには、表1に列挙されるような160℃以上の融点の樹脂酸を使用するのが好ましい。
【0074】
そして、はんだバンプ22が自然冷却した後に、図6(a)に示すように樹脂台座31aを洗浄して除去する。その洗浄に使用される洗浄液は、樹脂台座31aの組成によって選択され、例えばイソプロピルアルコール、キシレン、及びグリコール系の洗浄液等を使用し得る。
【0075】
本実施形態では、各樹脂台座31aを間隔をおいて形成したので、間隔をおかずに各樹脂台座31aを一体的に形成する場合と比較して樹脂台座31aの総量が少なくなり、本工程において樹脂台座31aを洗浄し易くすることができる。
【0076】
続いて、図6(b)に示すように、回路基板1と半導体素子22との間にアンダーフィル材28を充填し、回路基板1と半導体素子22との接続信頼性を高める。
【0077】
以上により、本実施形態に係る実装方法の主要工程が終了した。
【0078】
上記した本実施形態によれば、図5(b)を参照して説明したように、予備はんだ11の上に樹脂台座31aを形成し、その上に半導体素子20のはんだバンプ22を載せるようにした。樹脂台座31aの上面は平坦であるため、半導体素子20の自重によって球状のはんだバンプ22が樹脂台座31aから滑落し難くなり、リフロー時の予備はんだ11とはんだバンプ22との位置合わせが容易となる。
【0079】
従って、位置合わせの容易化を目的とした予備はんだ11の平坦化が不要となり、図2(c)で説明したような加圧を予備はんだ11に対して行う必要がなくなる。これにより、加圧時の圧力によって回路基板1内の配線等にダメージが入るのを防止でき、半導体素子20を実装した後でも回路基板1の信頼性を維持することが可能となる。
【0080】
更に、樹脂台座31aの材料としてフラックスを用いることにより、樹脂台座31aを予備はんだ11に対する酸化防止材としても機能させることができるようになる。そのため、半導体素子20を実装する前に回路基板1を大気中に長時間放置しておいても、予備はんだ11の表面に酸化皮膜が形成され難くなり、予備はんだ11とはんだバンプ22とをリフローするときにはんだの濡れ性が良好となる。
【0081】
次に、本実施形態の効果について確かめるために行われた調査結果について説明する。
【0082】
この調査では、一辺の長さが45mmの正方形の回路基板1の上に、直径が100μmの予備はんだ11を250μmのピッチで40個×40個のマトリックス状に配置した。
【0083】
また、フラックス31としては、以下の材料を混練したものを用いた。
【0084】
・樹脂酸(アビエチン酸、ビマル酸、重合ロジン)・・・65重量%
・溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル、テルピネオール)・・・20重量%
・活性剤(無水コハク酸、n−ブチルアミン)・・・10重量%
・増粘剤(ステアリン酸アミド)・・・5重量%
そして、メタルマスク30としては、厚さが50μmで孔30aの直径が140μmのものを用いた。
【0085】
更に、はんだバンプ22の材料として、鉛フリーはんだであるSn-3Ag-0.5Cuはんだを用いた。
【0086】
図5(c)のリフローに際しては、雰囲気の最高温度が245℃となるように、窒素雰囲気中ではんだバンプ22を加熱した。
【0087】
そして、はんだバンプ22が自然冷却した後、回路基板1の導通測定が行われた。その導通測定では、回路基板1内の回路がショートしていないかどうかや、回路が電気的にオープンになっていないかどうかが測定された。
【0088】
そのような測定を10個のサンプルに対して行ったところ、本実施形態では導通不良となるものがなかった。
【0089】
一方、予備的事項の図1(a)〜図6(b)に従って作製したサンプルに対してこれと同じ測定を行ったところ、10個のサンプルのうち2個の導通不良が発生した。その導通不良は、加圧によって予備はんだ11を平坦化する際(図2(c))に加わった力が原因で発生したと推測される。
【0090】
このことから、本実施形態によれば、実装時に回路基板1が受けるダメージを低減でき、回路基板1の信頼性を維持できることが確認できた。
【0091】
(3)第2実施形態
図8及び図9は、本実施形態に係る電子部品の実装方法について示す拡大断面図である。なお、これらの図において第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0092】
本実施形態では、図8に示すように、各樹脂台座31aを形成後にその上面31bに凸状の治具40を押し当て、上面31bを凹状にする。樹脂台座31aは柔らかなフラックスよりなるため、図2(c)のように加圧によって予備はんだ11を平坦にする場合よりも治具40に加える力が少なくて済み、回路基板1中の配線等に加わるダメージは少ない。
【0093】
このようにすると、図9に示されるように、はんだバンプ22が凹状の上面31bの最深部に自動的にガイドされ、はんだバンプ22と予備はんだ11との位置合わせが簡単になる。
【0094】
(4)第3実施形態
第1実施形態では、図5(a)に示したように、複数の樹脂台座31aを間隔をおいて形成した。樹脂台座31aの配置はこれに限定されず、以下のように樹脂台座31aを形成してもよい。
【0095】
図10〜図11は、本実施形態に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図である。なお、これらの図において第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0096】
また、本実施形態が第1実施形態と異なる点は、回路基板1にフラックス31を印刷する工程のみであるから、以下ではその工程についてのみ説明する。
【0097】
本実施形態では、図10(a)に示すようなメタルマスク30を用いる。そのメタルマスク30は、回路基板1の素子搭載領域Aにおける全ての予備はんだ11を含むような単一の孔30aを有する。そして、このメタルマスク30の表面に沿ってスキージ32を移動させることにより、孔30a内にフラックス31を充填する。
【0098】
そして、図10(b)に示すように、回路基板1からメタルマスク30を外すことにより、予備はんだ11の全てを共通に覆う樹脂台座31aを形成する。
【0099】
続いて、図11(a)に示すように、はんだバンプ22を下側にして半導体素子20を樹脂台座31aの上に載せる。
【0100】
この後は、既述の図5(c)〜図6(b)の工程を行うことにより、図11(b)に示すように回路基板1に半導体素子20を実装する。
【0101】
本実施形態では、図10(a)に示したように、メタルマスク30には単一の孔30aしか形成されていないので、複数の孔30aを形成する第1実施形態と比較してメタルマスク30の製造が簡略化される。
【0102】
次に、本実施形態の効果について確かめるために行われた調査結果について説明する。
【0103】
この調査では、一辺の長さが45mmの正方形の回路基板1の上に、直径が100μmの予備はんだ11を250μmのピッチで40個×40個のマトリックス状に配置した。
【0104】
また、フラックス31としては、以下の材料を混練したものを用いた。
【0105】
・樹脂酸(アビエチン酸、ビマル酸、重合ロジン)・・・65重量%
・溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル、テルピネオール)・・・20重量%
・活性剤(無水コハク酸、n−ブチルアミン)・・・10重量%
・増粘剤(ステアリン酸アミド)・・・5重量%
なお、回路基板1における素子搭載領域Aの大きさは、一辺が11mmの正方形である。メタルマスク30の厚さは50μmであり、その孔30aは上記の素子搭載領域Aと同じ大きさと形にした。
【0106】
更に、はんだバンプ22の材料としてSn-3Ag-0.5Cuはんだを用いた。
【0107】
図5(c)のリフローに際しては、雰囲気の最高温度が245℃となるように、窒素雰囲気中ではんだバンプ22を加熱した。
【0108】
そして、はんだバンプ22が自然冷却した後、第1実施形態と同様にして回路基板1の導通測定が行われた。
【0109】
そのような測定を10個のサンプルに対して行ったところ、本実施形態では導通不良となるものがなかった。
【0110】
一方、予備的事項の図1(a)〜図6(b)に従って作製したサンプルに対してこれと同じ測定を行ったところ、10個のサンプルのうち2個の導通不良が発生した。その導通不良は、加圧によって予備はんだ11を平坦化する際(図2(c))に加わった力が原因で発生したと推測される。
【0111】
このことから、本実施形態のように予備はんだ11の全てを覆うように樹脂台座31aを形成しても、第1実施形態と同様に実装時に回路基板1が受けるダメージを低減でき、回路基板1の信頼性を維持できることが確認できた。
【0112】
(5)第4実施形態
本実施形態では、樹脂台座31aの様々な平面レイアウトについて説明する。
【0113】
・第1例
図12は、本例に係る回路基板1の平面図である。
【0114】
本例では、素子搭載領域Aのコーナ部の予備はんだ11の上にのみ樹脂台座31aを形成する。
【0115】
コーナ部の樹脂台座31aは洗浄により除去し易いので、リフロー後に行われる樹脂台座31aの洗浄工程において樹脂台座31aの洗い残しが発生する危険性が低減される。したがって、樹脂台座31aの洗い残しが原因でアンダーフィル材28(図6(b)参照))が未充填となる部分が発生するのを抑制でき、半導体素子20と回路基板1との接合強度を維持することが可能となる。
【0116】
・第2例
図13は、本例に係る樹脂台座31aの平面図である。
【0117】
本例では、素子搭載領域Aの最外周における予備はんだ11の上にのみ、リング状に樹脂台座31aを形成する。
【0118】
最外周の樹脂台座31aは、素子搭載領域Aの中心近くの樹脂台座31aよりも洗浄が容易である。よって、本例でも、樹脂台座31aの洗い残しを抑制することができる。
【0119】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態は上記に限定されない。
【0120】
例えば、上記では回路基板1に実装する電子部品として半導体素子20を例に挙げたが、半導体素子20に代えて抵抗素子やキャパシタ等の電子部品を実装するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1(a)〜(c)は、予備的事項に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図(その1)である。
【図2】図2(a)〜(c)は、予備的事項に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図(その2)である。
【図3】図3(a)〜(c)は、予備的事項に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図(その3)である。
【図4】図4(a)〜(c)は、第1実施形態に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図(その1)である。
【図5】図5(a)〜(c)は、第1実施形態に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図(その2)である。
【図6】図6(a)、(b)は、第1実施形態に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図(その3)である。
【図7】図7は、第1実施形態に係る回路基板の平面図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係る電子部品の実装方法について示す拡大断面図(その1)である。
【図9】図9は、第2実施形態に係る電子部品の実装方法について示す拡大断面図(その2)である。
【図10】図10(a)、(b)は、第3実施形態に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図(その1)である。
【図11】図11(a)、(b)は、第3実施形態に係る電子部品の実装方法を工程順に示す断面図(その2)である。
【図12】図12は、第4実施形態の第1例に係る回路基板の平面図である。
【図13】図13は、第4実施形態の第2例に係る回路基板の平面図である。
【符号の説明】
【0122】
1…回路基板、2…樹脂基材、3…電極パッド、4…ソルダレジスト層、4a…開口、5…メタルマスク、5a…孔、7…スキージ、8…はんだペースト、11…予備はんだ、12…押圧板、20…半導体素子、21…電極パッド、22…はんだバンプ、28…アンダーフィル剤、30…メタルマスク、30a…孔、31…フラックス、31a…樹脂台座、31b…上面、32…スキージ、40…治具、A…素子搭載領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の電極パッドの上に、上面が凸状の予備はんだを形成する工程と、
前記予備はんだの上に、上面が平坦又は凹状の樹脂台座を形成する工程と、
はんだバンプが形成された電子部品を前記樹脂台座の上に前記はんだバンプを下側にして載せる工程と、
前記予備はんだ、前記樹脂台座、及び前記はんだバンプをリフローすることにより、前記予備はんだと前記はんだバンプとを接合する工程と、
を有することを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項2】
前記樹脂台座の融点は、前記はんだバンプの融点よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の実装方法。
【請求項3】
前記樹脂台座はフラックスよりなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品の実装方法。
【請求項4】
前記フラックスは樹脂酸を含み、
前記はんだバンプの融点と前記樹脂酸の融点との差は20℃以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子部品の実装方法。
【請求項5】
基材と、
前記基材の素子搭載領域に形成された複数の電極パッドと、
前記複数の電極パッドのそれぞれに接合され、上面が凸状の複数の予備はんだと、
少なくとも一つの前記予備はんだの上に形成され、上面が平坦又は凹状の樹脂台座と、
を有することを特徴とする回路基板。
【請求項6】
前記樹脂台座は、前記複数の予備はんだのそれぞれの上に互いに間隔をおいて複数形成されることを特徴とする請求項5に記載の回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−118547(P2010−118547A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291296(P2008−291296)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】