説明

回路基板支持用スペーサおよびそれを用いた回路基板ユニット

【課題】任意枚数の回路基板を所定間隔だけ隔離させて容易に積層することができる回路基板支持用スペーサを提供する。
【解決手段】複数の回路基板30a〜30cに形成された貫通孔32a〜32cに挿通されて、前記回路基板30a〜30cを所定間隔だけ隔離させて積層するための回路基板支持用スペーサ10であって、前記回路基板30a〜30cを載置するための段部20a〜20cを先細階段状に複数連接してなり、かつ、前記貫通孔32a〜32cに挿入される軸部14と、前記各段部20a〜20cにおいて径外方向へ突設された弾性変形可能な係止爪16a〜16cと、を備え、前記係止爪16a〜16cが前記各段部20a〜20cにおける前記回路基板30a〜30cの厚さに対応した位置に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回路基板を積層するためのスペーサ及び複数の回路基板を積層させた回路基板ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器は、高性能化に伴い搭載される電気回路の規模が増大している一方、小型軽量化の要求が高く、回路基板のサイズを大きくすることができない。そこで、電気回路を複数の回路基板に分割して設け、1枚の回路基板に他の回路基板を上下に平行になるように重ねて配置し、これらを電気的に接続することがなされている。
【0003】
このような回路基板を積層する場合、回路基板に実装した電子部品と上側に積層した回路基板との接触による電子部品の損傷や電気回路の短絡などの電気的トラブルを回避するため、上下の回路基板の間に、ネジ止め式或いはスナップフィット式の支持部材(スペーサ)が配設されるとともに、各回路基板を電気的に接続するため、上下の回路基板の対応した位置にコネクタを設け電気的に接続するようになっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、ネジ止め式のスペーサでは、部品点数が増加することに加え、組み付け作業性が悪い問題があり、スナップフィット式のスペーサでは、3枚以上の回路基板を積層することができない問題がある。また、上下の回路基板を接続するために高価なコネクタ部材が必要となり、コスト高になる問題がある。
【0005】
一方、図5に示すように、回路基板100に設けた貫通孔102へピン型端子104を挿入し、貫通孔102とピン型端子104とを半田付けすることで、積層した回路基板100を電気的に接続するとともに、各回路基板100の間へピン型端子104に挿入されたスペーサ106を介在させることで、各回路基板100の間に所定間隔を設けた回路基板の積層構成が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
上記の積層構成では、貫通孔102とピン型端子104との極めて狭い間隙のみに半田を配することは困難であり、回路基板100表面に半田108が堆積することとなるため、各回路基板100間に介在するスペーサ106が、この堆積した半田108と接触することで、貫通孔102とピン型端子104との半田付けを破壊して断線するおそれがあり、接続の信頼性が低いという問題がある。
【特許文献1】特開2003−283072号公報
【特許文献2】特開2003−163431号公報
【特許文献3】特開2002−374049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、任意枚数の回路基板を容易に積層させることができる回路基板支持用スペーサ及びそれを用いた回路基板ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、複数の回路基板に形成された貫通孔に挿通されて、前記回路基板を所定間隔だけ隔離させて積層するための回路基板支持用スペーサであって、前記回路基板を載置するための段部を先細階段状に複数連接してなり、かつ、前記貫通孔に挿入される軸部と、前記各段部において径外方向へ突設された弾性変形可能な係止爪と、を備え、前記係止爪が前記各段部における前記回路基板の厚さに対応した位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、複数の回路基板に形成された貫通孔に挿通されて、前記回路基板を所定間隔だけ隔離させて積層するための回路基板支持用スペーサであって、前記回路基板を載置するための段部を先細階段状に複数連接してなり、かつ、前記貫通孔に挿入される軸部とを備え、少なくとも前記段部の表面に前記回路基板を電気的に接続するための金属メッキ処理が施されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、複数の回路基板を所定間隔だけ隔離して積層させた回路基板ユニットにおいて、前記回路基板を載置するための段部を先細階段状に複数連接してなる軸部と前記各段部に設けられた径外方向へ突設された弾性変形可能な係止爪とを備え、前記係止爪が前記各段部における前記回路基板の厚さに対応した位置に設けられている回路基板支持用スペーサを有し、前記回路基板には、前記積層した位置の段部の外径より大きく、かつ当該段部の下方の段部の外径よりも小さい寸法に形成され貫通孔が設けられ、
前記回路基板が前記貫通孔の径よりも大きな寸法の前記段部の上端面と前記係止爪によって狭持されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、複数の回路基板を所定間隔だけ隔離して積層させた回路基板ユニットにおいて、前記回路基板を載置するための段部を先細階段状に複数連接してなる軸部と少なくとも前記段部の表面に前記回路基板を電気的に接続するための金属メッキ層を備えた回路基板支持用スペーサを有し、前記回路基板には、前記積層した位置の段部の外径より大きく、かつ当該段部の下方の段部の外径よりも小さい寸法に形成され貫通孔と前記貫通孔の周縁部にランド部が設けられ、前記回路基板が前記貫通孔の径よりも大きな寸法の前記段部の上端面に載置され、前記ランド部と前記金属メッキ層が半田付けされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、任意枚数の回路基板を容易に積層することができ、しかも、積層した回路基板間をコスト安価に電気的に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る回路基板支持用スペーサ10の斜視図、図2は第1の実施形態に係る回路基板ユニット1の断面図であって、回路基板支持用スペーサ10を用いて回路基板30a〜30cを支持させた状態を示す部分断面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の回路基板支持用スペーサ(以下、単にスペーサという)10は、3枚の回路基板30a〜30cを積層するためのスペーサ10であって、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂製の一体成形品であり、軸部14とその外周面から突設する係止爪16a〜16cとを有している。
【0016】
軸部14は、ベース部18とその上面にこれより小径であって上方に向かって順次小径するように先細階段状に連接してなる3段の段部20a〜20cからなる。すなわち、ベース部18、下段の段部(上段部)20a、中段の段部(中段部)20b、上段の段部(下段部)20cの外径寸法をそれぞれd、d、d、dとすると、d>d>d>dとなっている。各段部20a〜20cの外周面には、下方へ広がる断面テーパー形状に形成され弾性変形可能な係止爪16a〜16cが、ベース部18、下段部20aおよび中段部20bのそれぞれの上端面より回路基板30の厚さに対応した高さ位置に突設されている。なお、係止爪16a〜16cは、各段部20a〜20cの外周面全周にわたって設けてもよく、また、周方向に所定間隔毎に設けてもよい。
【0017】
積層する3枚の回路基板30a〜30cには、図2に示すように、それぞれ内径寸法の異なる貫通孔32a〜32cが穿設されている。詳細には、下段に支持される回路基板30aに設けられた貫通孔32aは、下段の外径寸法dより大きくかつベース部の外径寸法dより小さい内径寸法を有し、中段に支持される回路基板30bに設けられた貫通孔32bは、中段部20bの外径寸法dより大きくかつ下段部20aの外径寸法dより小さき内径寸法を有し、上段に支持される回路基板30cに設けられた貫通孔32cは、上段部20cの外径寸法dより大きくかつ中段部20bの外径寸法dより小さい内径寸法を有している。
【0018】
また、各段部20a〜20cに突設された係止爪16a〜16cの両端長さは、各貫通孔32a〜32cの内径寸法より若干大きく設けられており、各係止爪16a〜16cを弾性変形させつつ各貫通孔32a〜32cへ挿通可能としている。
【0019】
なお、図2では、各回路基板30a〜30cにつき1箇所の貫通孔32a〜32cのみを拡大して示しているが、各回路基板30a〜30cを安定して積層するため、複数箇所に貫通孔32a〜32cを設け、複数のスペーサ10によって支持することが好ましい。
【0020】
以上のように構成されるスペーサ10を用いて、各回路基板30a〜30cを所定間隔だけ隔離して積層させ、回路基板ユニットを得るためには、まず、下段に支持される回路基板30aに設けられた貫通孔32aにスペーサ10を圧入することで、下段部20aに設けられた係止爪16aが弾性変形しつつ挿通され、該係止爪16aとベース部18の上端面との間に回路基板30aを挟持することができる。
【0021】
次いで、中段に支持される回路基板30bに設けられた貫通孔32bにスペーサ10を圧入することで、回路基板30aの場合と同様に、係止爪16bと下段部20aの上端面との間に回路基板30bを挟持することができる。
【0022】
最後に、上段に支持される回路基板30cに設けられた貫通孔32cにスペーサ10を圧入し、回路基板30a、30bの場合と同様に、係止爪16cと中段部20bの上端面との間に回路基板30aを挟持することができる。
【0023】
このようにして、下段と中段に支持された回路基板30a、30bを下段部20aの高さに対応した間隔だけ隔離して積層させ、中段と上段に支持された回路基板30b、30cを中段部20bの高さに対応した間隔だけ隔離して積層させた回路基板ユニット1を得ることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、スペーサが3段の段部20a〜20cを連接してなる軸部14を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、任意の数(2、4、5…n)の段部を先細階段状に連接してもよく、これにより、設けた段数に等しい枚数の回路基板を所定間隔だけ隔離して支持することができる。
【0025】
本実施形態のスペーサ10であると、3枚以上の回路基板を積層させる場合であっても、スペーサを圧入することで回路基板30を所定間隔だけ隔離させて支持することができるため、組み付け作業性に優れている。
【0026】
(第2の実施形態)
図3は第2の実施形態に係る回路基板ユニット2の断面図であって、スペーサ50を用いて回路基板30a〜30cを支持させた状態を示す部分断面図である。図2に示したものと同一の構成部分には同一符号を付して、その重複する説明は省略する。
【0027】
図3に示すように、スペーサ50のうち少なくとも各段部20a〜20c表面には、金属メッキ処理が施され金属メッキ層52が形成されており、各回路基板30a〜30cに設けられた各貫通孔32a〜32cの周縁部には、回路基板30a〜30cに形成された電気回路と電気的に接続するランド部34a、34b、34cがそれぞれ形成されている。
【0028】
このような構成のスペーサ50を用いて、各回路基板30a〜30cを所定間隔だけ隔離して積層させるためには、まず、下段に支持される回路基板30aに設けられた貫通孔32aにスペーサ50を挿通し、ランド部34aと金属メッキ層52とを半田付け60aをする。次いで、中段に支持される回路基板30bに設けられた貫通孔32bにスペーサ50を挿通し、ランド部34bと金属メッキ層52とを半田付け60bをする。最後に、上段に支持される回路基板30cに設けられた貫通孔32cにスペーサ50を挿通し、ランド部34cと金属メッキ層52とを半田付け60cをする。
【0029】
このようにして、各回路基板30a〜30cが、ベース部18、下段部20a、中段部20bの上端面にそれぞれ載置されることで所定間隔だけ隔離して支持されるとともに、ランド部34a〜34cと金属メッキ層52との半田付け60a〜60cによって電気的に接続されている回路基板ユニット2を得ることができる。
【0030】
本実施形態のスペーサ50によれば、各回路基板30a〜30cを所定間隔だけ隔離させて支持できることに加え、高価なコネクター部材を用いることなく積層した回路基板30a〜30cを電気的に接続することができ、しかも、スペーサ50と回路基板30a〜30cとが半田付けにより固定されているため、従来のように、スペーサが半田付けを破壊して断線するおそれがなく、接続の信頼性が高い。
【0031】
なお、本実施形態では、スペーサが3段の段部を連接してなる軸部14を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、任意の数(2、4、5…n)の段部を先細階段状に連接してもよく、これにより、設けた段数に等しい枚数の回路基板を所定間隔だけ隔離して支持するとともに、各回路基板を電気的に接続することができる。
【0032】
(変更例)
本発明は、上記各実施形態に限らず、その趣旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0033】
図4は、変更例に係る回路基板ユニット3の断面図であって、スペーサ70を用いて回路基板30a〜30cを支持させた状態を示す部分断面図である。図2及び図3に示したものと同一の構成部分には同一符号を付して、その重複する説明は省略する。
【0034】
本変更例は、上記の第1及び第2の実施形態の特徴を兼ね備えたものである。すなわち、本変更例のスペーサ70は、先細階段状に連接してなる3段の段部20a〜20cの外周面から径外方向へ突設する係止爪16a〜16cとを有する上記第1の実施形態に係るスペーサ10の表面、詳細には、少なくとも各段部20a〜20c及び係止爪16a〜16c表面に、金属メッキ処理が施され金属メッキ層72が形成されている。
【0035】
このような構成のスペーサ70を用いて回路基板30a〜30cを積層するには、まず下段に支持される回路基板30aにスペーサ70を圧入した後、ランド部34aと金属メッキ層52とを半田付け62aをする。次いで、下段に支持される回路基板30aの場合と同様、中段に支持される回路基板30bにスペーサ70の圧入及び半田付け62bを行い、最後に、上段に支持される回路基板30cにスペーサ70の圧入及び半田付け62cを行うことで、回路基板ユニット3が得られる。
【0036】
得られた回路基板ユニット3では、回路基板30a〜30cが、係止爪16a〜16cとベース部18及び段部20a、20bの上端面との間に挟持されているため、上向きの外力を受けても半田付け62a〜62cを破壊して断線するおそれがなく、接続の信頼性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態に係る回路基板支持用スペーサの斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る回路基板支持用スペーサを用いて回路基板を支持させた状態を示す部分断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る回路基板支持用スペーサを用いて回路基板を支持させた状態を示す部分断面図である。
【図4】変更例に係る回路基板支持用スペーサを用いて回路基板を支持させた状態を示す部分断面図である。
【図5】従来の回路基板の積層構成を示した正面図である。
【符号の説明】
【0038】
1、2、3…回路電源ユニット
10、50、70…回路基板支持用スペーサ
14…軸部
16a、16b、16c…係止爪
18…ベース部
20a、20b、20c…段部
30a、30b、30c…回路基板
32a、32b、32c…貫通孔
34a、34b、34c…ランド部
52…金属メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路基板に形成された貫通孔に挿通されて、前記回路基板を所定間隔だけ隔離させて積層するための回路基板支持用スペーサであって、
前記回路基板を載置するための段部を先細階段状に複数連接してなり、かつ、前記貫通孔に挿入される軸部と、前記各段部において径外方向へ突設された弾性変形可能な係止爪と、を備え、前記係止爪が前記各段部における前記回路基板の厚さに対応した位置に設けられていることを特徴とする回路基板支持用スペーサ。
【請求項2】
複数の回路基板に形成された貫通孔に挿通されて、前記回路基板を所定間隔だけ隔離させて積層するための回路基板支持用スペーサであって、
前記回路基板を載置するための段部を先細階段状に複数連接してなり、かつ、前記貫通孔に挿入される軸部とを備え、少なくとも前記段部の表面に前記回路基板を電気的に接続するための金属メッキ処理が施されていることを特徴とする回路基板支持用スペーサ。
【請求項3】
複数の回路基板を所定間隔だけ隔離して積層させた回路基板ユニットにおいて、
前記回路基板を載置するための段部を先細階段状に複数連接してなる軸部と前記各段部に設けられた径外方向へ突設された弾性変形可能な係止爪とを備え、前記係止爪が前記各段部における前記回路基板の厚さに対応した位置に設けられている回路基板支持用スペーサを有し、
前記回路基板には、前記積層した位置の段部の外径より大きく、かつ当該段部の下方の段部の外径よりも小さい寸法に形成され貫通孔が設けられ、
前記回路基板が前記貫通孔の径よりも大きな寸法の前記段部の上端面と前記係止爪によって狭持されていることを特徴とする回路基板ユニット。
【請求項4】
複数の回路基板を所定間隔だけ隔離して積層させた回路基板ユニットにおいて、
前記回路基板を載置するための段部を先細階段状に複数連接してなる軸部と少なくとも前記段部の表面に前記回路基板を電気的に接続するための金属メッキ層を備えた回路基板支持用スペーサを有し、
前記回路基板には、前記積層した位置の段部の外径より大きく、かつ当該段部の下方の段部の外径よりも小さい寸法に形成され貫通孔と前記貫通孔の周縁部にランド部が設けられ、
前記回路基板が前記貫通孔の径よりも大きな寸法の前記段部の上端面に載置され、前記ランド部と前記金属メッキ層が半田付けされていることを特徴とする回路基板ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−115846(P2007−115846A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304956(P2005−304956)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(398061810)日本電産シバウラ株式会社 (197)
【Fターム(参考)】