説明

回路接続用接着剤並びにそれを用いた回路接続方法及び回路接続構造体

【課題】 本発明は、接続温度の低温化、接続時間の短縮化を達成する回路接続用接着剤並びにそれを用いた回路接続方法及びそれを用いた回路接続構造体を提供する。
【解決手段】 本発明は、相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用接着剤であって、カルボキシル基含有化合物を含有する回路接続用接着剤、前記カルボキシル基含有化合物の酸当量が5〜500(KOH mg/g)である回路接続用接着剤、またラジカル重合性物質をさらに含む、導電性粒子をさらに含む回路接続用接着剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続用接着剤並びにそれを用いた回路接続方法及び回路接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイとTCP又はFPCとの接続、TCP又はFPCとプリント配線板との接続には接着剤中に導電性粒子を分散させた異方導電性接着剤が使用されている。また、最近では、半導体シリコンチップを基板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンドではなく、半導体シリコンチップをフェイスダウンで基板に直接実装するいわゆるフリップチップ実装が行われており、ここでも異方導電性接着剤の適用が開始されている(特開昭59−120436号、特開昭60−191228号、特開平1−251787号、特開平7−90237号公報)。
【0003】
しかしながら、従来の異方導電性接着剤は、各種基板に対する接着力が不十分であり、十分な接続信頼性が得られない。特に、接続時の基板へのダメージや位置ずれの低減化、及び生産効率を向上させるために、接続温度の低温化、接続時間の短縮化の要求に対しては十分な信頼性が得られていない。
【0004】
本発明は、接続温度の低温化、接続時間の短縮化を達成する回路接続用接着剤並びにそれを用いた回路接続方法及びそれを用いた回路接続構造体を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の態様の一つは、相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用接着剤であって、カルボキシル基含有化合物を含有する回路接続用接着剤である。
【0006】
本発明の態様の一つは、(1)相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用接着剤であって、前記接着剤には、酸当量5〜500(KOH mg/g)である化合物を含むことを特徴とする回路接続用接着剤である。
【0007】
(2)酸当量5〜500(KOH mg/g)である化合物が、少なくとも一つのカルボキシル基を含有する化合物である上記(1)に記載の回路接続用接着剤が提供される。
【0008】
(3)ラジカル重合性物質をさらに含む上記(1)または(2)に記載の回路接続用接着剤が提供される。
【0009】
(4)導電性粒子をさらに含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の回路接続用接着剤が提供される。
【0010】
(5)回路接続用接着剤を相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した接続構造体であって、前記回路接続用接着剤が上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の接着剤である回路接続構造体である。
【0011】
本発明の他の態様は、(6)相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用接着剤であって、前記接着剤は第1接着剤層と第2接着剤層を有し、第1接着剤層の加圧接続後のガラス転移温度(Tg)が第2接着剤層の加圧接続後のTgよりも高いことを特徴とする回路接続用接着剤である。
【0012】
(7)第1接着剤層の接続後のTgが50〜200℃、第2接着剤層の接続後のTgが40〜100℃であり、第1接着剤層のTgは第2接着剤層の接続後のTgより5℃以上高いことを特徴とする上記(6)に記載の回路接続用接着剤が提供される。
【0013】
(8)第1接着剤層及び第2接着剤層の少なくとも一方に導電性粒子を含む上記(6)または(7)に記載の回路接続用接着剤が提供される。
【0014】
(9)第1接着剤層、第2接着剤層の少なくとも一方がラジカル重合性物質を含む上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の回路接続用接着剤が提供される。
【0015】
(10)第1接着剤層と第2接着剤層の厚さの比が、第1接着剤層の厚さ/第2接着剤層の厚さ=0.3〜3.0である上記(6)ないし(9)のいずれかに記載の回路接続用接着剤が提供される。
【0016】
(11)第1接着剤層及び第2接着剤層の少なくとも一方に酸当量5〜500(KOH mg/g)である化合物を含む上記(6)ないし(10)に記載の回路接続用接着剤が提供される。
【0017】
(12)上記(6)ないし(11)のいずれかに記載の回路接続用接着剤を相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する方法であって、前記回路接続用接着剤は第1接着剤層と第2接着剤層を有し、第1接着剤層の加圧接続後のTgが第2接着剤層の加圧接続後のTgよりも高く、かつTgの高い第1接着剤層を相対向する回路電極を有する基板のうち弾性率の高い基板側に配置して接続する回路接続方法が提供される。
【0018】
(13)上記(6)ないし(11)のいずれかに記載の回路接続用接着剤を相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した接続構造体であって、前記接着剤は第1接着剤層と第2接着剤層を有し、第1接着剤層の加圧接続後のTgが第2接着剤層の加圧接続後のTgよりも高く、かつTgの高い第1の接着剤層を相対向する回路電極を有する基板のうち弾性率の高い基板側に配置して接続した接続構造体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の回路接続用接着剤並びにそれを用いた回路接続方法及び回路接続構造体においては、耐湿試験、冷熱サイクル試験等各種信頼性試験後も、基板からの浮き、剥離が発生しないため、接着力の低下や接続抵抗の上昇が起きず、優れた接続信頼性を示す。
【0020】
本発明の態様の一つでは、水酸化カリウムを用いた滴定法で測定した酸当量が5〜500(KOH mg/g)の範囲の化合物が使用でき、特にカルボキシル基含有化合物を使用することが好ましい。酸当量が5未満であると接着力の向上が見られず、500を超えて大きくなると接着剤の吸水率等が大きくるため耐湿信頼性が低下する。カルボキシル基含有化合物は、分子内にカルボキシル基を含んでいる化合物であれば特に制限はない。また重量平均分子量にも特に制限はないが、1,000,000より小さな化合物が好ましい。分子量が1,000,000より大きくなると接着剤の流動性が低下する。カルボキシル基含有化合物の具体例としては、蓚酸、マロン酸などのカルボン酸、ポリブタジエン、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)、(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの高分子中にカルボキシル基を導入した化合物が挙げられる。高分子中にカルボキシル基を導入する場合、カルボキシル基含有化合物を共重合成分として使用しても、高分子を合成した後にカルボキシル基を導入しても良い。本発明で用いる高分子中にカルボキシル基を導入した化合物の配合量として、1〜80重量%が好ましく、5〜70重量%が特に好ましい。1重量%未満では、接着性に乏しくなり、80重量%を超えると流動性が低下するようになる。
【0021】
本発明で使用するカルボキシル基含有化合物以外のものとしては、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、マレイミド樹脂、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が使用されるが、耐熱性や信頼性の点で熱硬化性樹脂を使用することが好ましく、特に(メタ)アクリル樹脂、マレイミド樹脂、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂を用いたラジカル重合系が低温硬化性の点で好ましい。
【0022】
本発明の他の態様における回路接続用接着剤は、第1接着剤層と第2接着剤層とから構成され、第1接着剤層の接続後のTgが第2接着剤層の接続後のTgより高いことが必要である。第1接着剤層のTgは、50〜200℃が好ましく、さらに好ましくは60〜150℃である。また、第2接着剤層のTgは40〜100℃であり、第1接着剤層のTgは第2接着剤層の接続後のTgより5℃以上高いことが好ましく、さらには10℃以上高いことが特に好ましい。
【0023】
また、第1接着剤層と第2接着剤層の厚さの比が、第1接着剤層の厚さ/第2接着剤層の厚さ=0.3〜3.0であり、0.8〜3.0である事が好ましい。この範囲以外の厚さでは、耐湿試験、冷熱サイクル試験等各種信頼性試験後も、基板からの浮き、剥離が発生し、優れた接続信頼性が得られない傾向にある。
【0024】
さらに本発明では、上記の2層構成の接着剤層を用いて、相対向する基板の回路電極を電気的に接続する場合、Tgの高い第1接着剤層を相対向する基板の弾性率の高い基板側に配置することが好ましい。
【0025】
本発明に使用される第1の接着剤層または第2の接着剤層としては、上記した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が使用され、耐熱性や信頼性の点で熱硬化性樹脂を使用することが好ましく、特に(メタ)アクリル樹脂、マレイミド樹脂、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂を用いたラジカル重合系が低温硬化性の点で好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートをラジカル重合させることで得られるもので、(メタ)アクリレートとしてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エテレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが有り、単独または2種類以上を混合して用いても良い。また、必要によっては、ヒドロキノン、メチルエーテルヒドロキノン等のラジカル重合禁止剤を硬化性が損なわれない範囲で使用しても良い。
【0027】
さらに、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を使用した場合、金属等無機物に対する接着力を向上することができる。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質の使用量は、接着剤組成物の総量に対し、0.1〜10重量部であり、好ましくは0.5〜5重量部である。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物として得られる。具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等が有り、単独でも混合して使用しても良い。
【0028】
マレイミド樹脂としては、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているもので、例えば、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4'−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが有り、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0029】
シトラコンイミド樹脂としては、分子中にシトラコンイミド基を少なくとも1個有しているシトラコンイミド化合物を重合させたもので、シトラコンイミド化合物としては、例えば、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4'−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが有り、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0030】
ナジイミド樹脂としては、分子中にナジイミド基を少なくとも1個有しているナジイミド化合物を重合したもので、ナジイミド化合物としては、例えば、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4'−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが有り、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0031】
上記ラジカル重合性化合物を使用した場合には、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、熱または光によってラジカルを発生する化合物であれば特に制限はなく、過酸化物、アゾ化合物などがあり、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等を考慮し適宜選択されるが、高反応性と保存安定性の点から、半減期10時間の温度が、40℃以上かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が、50℃以上かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物が特に好ましい。接続時間を10秒とした場合、十分な反応率を得るための硬化剤の配合量は、接着剤組成物の総量に対し、1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%が特に好ましい。本発明で使用される有機過酸化物の具体的な化合物としては、ジアシルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、シリルペルオキシドなどから選定できるが、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、シリルペルオキシドは、開始剤中の塩素イオンや有機酸が5,000ppm以下であり、加熱分解後に発生する有機酸が少なく、回路部材の接続端子の腐食を抑えることができるため特に好ましい。
【0032】
ジアシルペルオキシド類としては、イソブチルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、スクシニックペルオキシド、ベンゾイルペルオキシトルエン、ベンゾイルペルオキシド等が挙げられる。
【0033】
ペルオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルペルオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルペルオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0034】
ペルオキシエステル類としては、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルペルオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート等を挙げることができる。
【0035】
ペルオキシケタール類では、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)デカン等が挙げられる。
【0036】
ジアルキルペルオキシド類では、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0037】
ヒドロペルオキシド類では、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0038】
シリルペルオキシド類としては、t−ブチルトリメチルシリルペルオキシド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルペルオキシド、t−ブチルトリビニルシリルペルオキシド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルペルオキシド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルペルオキシド、t−ブチルトリアリルシリルペルオキシド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルペルオキシド、トリス(t−ブチル)アリルシリルペルオキシド等が挙げられる。
【0039】
これらの有機過酸化物は、回路部材の接続端子の腐食または回路電極の腐食を抑えるために、硬化剤中または有機過酸化物中に含有される塩素イオンや有機酸の量は5,000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。また、作製した回路接続材料の安定性が向上することから室温(25℃)、常圧下で24時間の開放放置後に20重量%以上の重量保持率を有することが好ましい。これらは適宜混合して用いることができる。
【0040】
これらの遊離ラジカル発生剤は単独または混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いても良い。
【0041】
また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0042】
ラジカル重合系以外の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂があり、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等があり、これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、アミン類、フェノール類、酸無水物類、イミダゾール類、ジシアンジアミド等通常のエポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものがある。さらには、硬化促進剤として通常使用されている3級アミン類、有機リン系化合物を適宜使用しても良い。
【0044】
また、エポキシ樹脂を反応させる方法として、前記硬化剤を使用する以外に、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等使用して、カチオン重合させても良い。
【0045】
本発明の回路接続用接着剤には、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和性を付与するため、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等高分子成分が使用される。これら高分子成分は、重量平均分子量が10,000〜10,000,000のものが好ましい。また、これら樹脂は、ラジカル重合性の官能基で変成されていても良く、この場合耐熱性が向上する。さらに、これら樹脂がカルボキシル基を含む場合には、本発明のカルボキシル基含有化合物として使用することができる。高分子成分の配合量は、接着剤組成物の総量に対し、2〜80重量%であり、5〜70重量%が好ましく、10〜60重量%が特に好ましい。2重量%未満では、応力緩和や接着力が十分でなく、80重量%を超えると流動性が低下する。
【0046】
本発明の回路接続用接着剤には、適宜充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤を添加しても良い。
【0047】
本発明で用いる回路接続用接着剤には、導電性粒子がなくても、接続時に相対向する電極が直接接触することにより接続が得られるが、導電粒性子を含んだ場合、より安定に接続が得られる。導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン、またはガラス、セラミック、プラスチックの非導電性粒子にAu、Ag、白金等の貴金属類を被覆した粒子が使用される。金属粒子の場合には表面の酸化を抑えるため、貴金属類で被覆したものが好ましい。上記導電性粒子のなかで、プラスチックを核体としてAu、Ag等で被覆した粒子や熱溶融金属粒子は、接続時の加熱加圧によって変形し、接触面積が増加し信頼性が向上する。貴金属類の被覆層の厚さは、100Å以上、好ましくは300Å以上であれば、良好な接続が得られる。また、更には上記導電性粒子を、絶縁性樹脂で被覆したものも使用できる。導電性粒子は、接着剤成分100体積%に体して、0.1〜30体積%、より好ましくは0.1〜10体積%の範囲で用途により適宜配合される。
【0048】
また、第1の態様において、本発明の回路接続用接着剤を硬化物としたときのTg(ガラス転移温度)が5℃以上異なる2種類以上の層からなる多層構成としても良い。
【0049】
更に、他の態様において、第1接着剤層及び第2接着剤層の少なくとも一方に酸当量5〜500(KOH mg/g)である化合物を含むことが好ましい。
【0050】
本発明の回路接続用接着剤を使用して接着する基板としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はないが、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラスまたはプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップなどが有り、必要に応じて組み合わせて使用される。
【0051】
上記基板を用いて接続する場合、本発明の他の態様における回路接続用接着剤としては、Tgの高い第1接着剤層を弾性率の高い基板側に配置することが好ましい。これにより、浮きの発生をより少なくすることができる。
【0052】
接続する場合の条件としては特に制限はないが、接続温度90〜250℃、接続時間1秒〜10分であり、使用する用途、接着剤、基板によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行っても良い。また、接続時は加熱加圧により行われるが、必要に応じて熱以外のエネルギーたとえば光、超音波、電磁波等を使用しても良い。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこの実施例に限定されるものではない。
【0054】
以下に示す配合でそれぞれ配合し、簡易塗工機(テスター産業製)を用いて、厚み50μmの片面を表面処理したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃、5分の熱風乾燥によりフィルムを作製した。
【0055】
(ウレタンアクリレートの合成)
重量平均分子量800のポリカプロラクトンジオール400重量部と、2−ヒドロキシプロピルアクリレート131重量部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.5重量部、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル1.0重量部を攪拌しながら50℃に加熱して混合した。次いでイソホロンジイソシアネート222重量部を滴下し更に攪拌しながら80℃に昇温してウレタン化反応を行った。NCOの反応率が99%以上になったことを確認後、反応温度を下げてウレタンアクリレートを得た。
【0056】
ラジカル重合性物質として、前記のウレタンアクリレートを用いた。また、フィルム形成材としてカルボン酸変成ブチラール樹脂(6000EP;電気化学工業株式会社製商品名、酸当量250(KOHmg/g))及びフェノキシ樹脂(PKHC;ユニオンカーバイド社製商品名、重量平均分子量45,000)を用いた。
【0057】
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤としてt−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネートの50重量%DOP(ジオクチルフタレート)溶液を用いた。
導電性粒子として、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設けた平均粒径4μmの導電性粒子を作製して使用した。
【0058】
(実施例1)
固形重量比でカルボン酸変成ブチラール樹脂(固形分として)20g、フェノキシ樹脂(固形分として)30g、ウレタンアクリレート49g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製、商品名P2M)1g、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート5g(DOP溶液として10g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、塗布、乾燥し、接着剤層の厚みが8μmの回路接続材料を得た。
【0059】
(回路接続構造体の作製)
上記回路接続材料を、1.5mm幅にスリットし、電極としてITOが形成されたガラス基板上に、80℃、5秒、1MPaの条件で仮接続した。PET基材を剥離し、これにTCPの電極を位置合わせして置き、150℃、20秒、4MPaで本接続した。
【0060】
(実施例2)
固形重量比でカルボン酸変成ブチラール樹脂(固形分として)30g、フェノキシ樹脂(固形分として)30g、ウレタンアクリレート39g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製、商品名P2M)1g、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート5g(DOP溶液として10g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、塗布、乾燥し、接着剤層の厚みが8μmの回路接続材料を得た。
【0061】
(回路接続構造体の作製)
上記回路接続材料を、1.5mm幅にスリットし、電極としてITOが形成されたガラス基板上に、80℃、5秒、1MPaの条件で、仮接続した。PET基材を剥離し、これにTCPの電極を位置合わせして置き150℃、20秒、4MPaで本接続した。
【0062】
(実施例3)
固形重量比でカルボン酸変成ブチラール樹脂(固形分として)10g、フェノキシ樹脂(固形分として)35g、ウレタンアクリレート54g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製、商品名P2M)1g、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート5g(DOP溶液として10g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、塗布、乾燥し、接着剤層の厚みが8μmの回路接続材料を得た。
【0063】
(回路接続構造体の作製)
上記回路接続材料を、1.5mm幅にスリットし、電極としてITOが形成されたガラス基板上に、80℃、5秒、1MPaの条件で、仮接続した。PET基材を剥離し、これにTCPの電極を位置合わせして置き150℃、20秒、4MPaで本接続した。
【0064】
(比較例1)
固形重量比でフェノキシ樹脂(固形分として)45g、ウレタンアクリレート54g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製、商品名P2M)1g、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート5g(DOP溶液として10g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、接着剤層の厚みが8μmの回路接続材料を得た。
【0065】
(回路接続構造体の作製)
上記回路接続材料を、1.5mm幅にスリットし、電極としてITOが形成されたガラス基板上に、80℃、5秒、1MPaの条件で、仮接続した。PET基材を剥離し、これにTCPの電極を位置合わせして置き150℃、20秒、4MPaで本接続した。
【0066】
(特性評価方法)
(1)接続抵抗:(株)アドバンテスト製マルチメータTR6848を用いて、隣接回路間の抵抗を1mAの定電流で測定した。
(2)接着強度:JIS Z−0237に準拠して行い、(株)東洋精機製作所製ストログラフE−S型を用いて90度ピールで測定した。
(3)接続部分の観察:金属顕微鏡で、接続部分の剥離、気泡の有無を観察した。
(4)信頼性評価:上記接続抵抗、接着力に関して、80℃、95%RHの条件で高温高湿試験を行い、240時間後取り出して(1)〜(3)の項目を試験した。
その測定結果を表1に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
本発明の実施例1〜3では、接続抵抗、接着力、接続部分の外観ともに良好な特性を示し、耐湿試験後においても良好な信頼性を示した。これに対し、酸当量5(KOH mg/g)未満である化合物を用いた比較例では接着力の初期値が低く、また、耐湿試験後の接続抵抗が高く、接着力も低くなり、浮きが発生し接続信頼性に劣る。
【0069】
(例4)
(第1接着剤層)
ラジカル重合性物質としてジメチロールトリシクロデカンジアクリレートと前記ウレタンアクリレートを用いた。
フィルム形成材としてフェノキシ樹脂(PKHC;ユニオンカーバイド社製商品名、重量平均分子量45,000)を用いた。
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤として、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネートの50重量%DOP(ジオクチルフタレート)溶液を用いた。
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設けた平均粒径4μmの導電性粒子を作製した。
固形重量比でフェノキシ樹脂(固形分として)50g、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート30g、ウレタンアクリレート19g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製商品名;P2M)1g、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート5g(DOP溶液として10g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、塗布、乾燥し、接着剤層の厚みが8μmの回路接続材料を得た(硬化物のTgは110℃)。
【0070】
(第2接着剤層)
ラジカル重合性物質としてウレタンアクリレートを用いた。
フィルム形成材としてフェノキシ樹脂(PKHC;ユニオンカーバイド社製商品名、重量平均分子量45,000)を用いた。
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤としてt−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネートの50重量%DOP(ジオクチルフタレート)溶液を用いた。
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設けた平均粒径4μmの導電性粒子を作製した。
固形重量比でフェノキシ樹脂(固形分として)50g、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート10g、前記で合成したウレタンアクリレート39g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製商品名;P2M)1g、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート5g(DOP溶液として10g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、塗布、乾燥し、接着剤層の厚みが18μmの回路接続材料を得た(硬化物のTgは60℃)。
第1接着剤層と第2接着剤層をロールラミネーターを用いて張り合わせ2層構成の回路接続用接着剤とした。
【0071】
(例5)
(第1接着剤層)
接着剤層の厚みを12μmとした以外は例4の第1接着剤層と同様にして回路接続材料得た(硬化物のTgは110℃)。
(第2接着剤層)
接着剤層の厚みが15μmとした以外は例4の第2接着剤層と同様にして回路接続材料を得た(硬化物のTgは60℃)。
第1接着剤層と第2接着剤層を、ロールラミネーターを用いて張り合わせ2層構成の回路接続用接着剤とした。
【0072】
(例6)
(第1接着剤層)
接着剤層の厚みを18μmとした以外は例4の第1接着剤層と同様にして回路接続材料得た(硬化物のTgは110℃)。
(第2接着剤層)
接着剤層の厚みが14μmとした以外は例4の第2接着剤層と同様にして回路接続材料を得た(硬化物のTgは60℃)。
第1接着剤層と第2接着剤層を、ロールラミネーターを用いて張り合わせ2層構成の回路接続用接着剤とした。
【0073】
(例7)
(第1接着剤層)
フィルム形成材としてフェノキシ樹脂(PKHC;ユニオンカーバイド社製商品名、重量平均分子量45,000)を用いた。
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤として、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネートの50重量%DOP(ジオクチルフタレート)溶液を用いた。
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設けた平均粒径4μmの導電性粒子を作製した。
固形重量比でフェノキシ樹脂(固形分として)40g、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート20g、ウレタンアクリレート39g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製商品名;P2M)1g、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート5g(DOP溶液として10g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、塗布、乾燥し、接着剤層の厚みが8μmの回路接続材料を得た(硬化物のTgは68℃)。
【0074】
(第2接着剤層)
フィルム形成材としてフェノキシ樹脂(PKHC;ユニオンカーバイド社製商品名、重量平均分子量45,000)およびカルボン酸変性ブチラール樹脂(6000EP;電気化学工業株式会社製商品名、酸当量250(KOHmg/g))を用いた。
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤としてt−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネートの50重量%DOP(ジオクチルフタレート)溶液を用いた。
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設けた平均粒径4μmの導電性粒子を作製した。
固形重量比でフェノキシ樹脂(固形分として)30g、カルボン酸変性ブチラール樹脂(固形分として)20g、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート10g、前記で合成したウレタンアクリレート39g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製商品名;P2M)1g、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノネート5g(DOP溶液として10g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、塗布、乾燥し、接着剤層の厚みが18μmの回路接続材料を得た(硬化物のTgは52℃)。
第1接着剤層と第2接着剤層をロールラミネーターを用いて張り合わせ2層構成の回路接続用接着剤とした。
【0075】
(比較例2)
例4の第1接着剤層のみを用いて接着剤層の厚みを25μmとして回路接続材料を得た(硬化物のTgは110℃)。
【0076】
(比較例3)
例4の第2接着剤層のみを用いて接着剤層の厚みを25μmとして回路接続材料を得た(硬化物のTgは60℃)。
【0077】
(接続体の作製)
上記の2層構成の回路接続用接着剤を、1.5mm幅にスリットし、電極としてITOが形成されたガラス基板上(弾性率の高い基板側)に、Tgの高い第1接着剤層がガラス側にくるように配置し、80℃、5秒、1MPaの条件で、仮接続した。その後、PET基材を剥離し、ITOの電極とTCPの電極の位置合わせを行い、140℃、20秒、4MPaで本接続した。
また、本発明の参考例として、例4の2層構成接着剤をTgの低い第2接着剤層がガラス側に来るように配置し、同じ条件で接続した。また、比較例2及び3の回路接続用接着剤も上記と同様に行った。
【0078】
(特性評価方法)
実施例1〜3及び比較例1と同様にして行った。
特性を評価した結果を表2に示した。
【0079】
【表2】

【0080】
例4〜7は、いずれも接続抵抗、接着力、外観ともに良好な結果であり、良好な接続信頼性を示した。
【0081】
これに対して、単層構成の比較例2及び3において、Tgが110℃である比較例2は、耐湿試験後においても接続抵抗の変化はなく良好であるが接着力が若干低下し浮きが発生してしまった。また、Tgが60℃と低い比較例3では、耐湿試験240時間後に接続抵抗の上昇が見られ、接着力も低下した。また、接続部分に浮きが発生した。
【0082】
一方、Tgの低い第2接着剤層がガラス基板側に来るように配置すると、浮きが発生する場合があるので、本発明においては、Tgの高い第1接着剤層がガラス基板側に来るように配置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の態様の一つによれば、初期と耐湿試験後の接着力を高くすることができ、また、接続温度の低温化、接続時間の短縮化を達成する回路接続用接着剤及びそれを用いた回路接続構造体を提供することができる。
【0084】
また、本発明の他の態様における回路接続用接着剤及びそれを用いた回路接続方法、回路接続構造体では、接続温度の低温化や接続時間の短縮化に対応した140℃、20秒での接続が可能であり、接続後の耐湿試験においても剥離である浮きの発生が無く優れた接続信頼性を示す回路接続構造体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用接着剤であって、カルボキシル基含有化合物を含有する回路接続用接着剤。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有化合物の酸当量が5〜500(KOH mg/g)である請求項1に記載の回路接続用接着剤。
【請求項3】
ラジカル重合性物質をさらに含む請求項1または2に記載の回路接続用接着剤。
【請求項4】
導電性粒子をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の回路接続用接着剤。

【公開番号】特開2007−169632(P2007−169632A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335488(P2006−335488)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【分割の表示】特願2001−579354(P2001−579354)の分割
【原出願日】平成13年4月25日(2001.4.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】