回転体の位置補正制御装置
【課題】 リラクタ間隔の精度ばらつきによるクランクパルサの検出ばらつきを改善する。
【解決手段】 ロータヨーク等、回転体8の周面にリラクタ10が配置され、センサ1はリラクタ10を検出してパルス信号を出力する。ステージ周期算出部66は、パルス信号PLSの周期を算出する。除算部67は、パルス信号の周期を校正値で校正する。校正された周期は回転体8の回転変動値を算出する際に使用される。校正値決定装置の算出部61は、予め選択されたリラクタ10に対応するパルス信号の間隔に基づいて、選択されたリラクタ10の間隔を示す実測値を出力する。基準値記憶部63は、回転体8の回転数に基づいてリラクタ10の配置間隔の基準値を出力する。除算部64は実測値と基準値との比の値を算出して除算部67で校正値を算出して出力する。
【解決手段】 ロータヨーク等、回転体8の周面にリラクタ10が配置され、センサ1はリラクタ10を検出してパルス信号を出力する。ステージ周期算出部66は、パルス信号PLSの周期を算出する。除算部67は、パルス信号の周期を校正値で校正する。校正された周期は回転体8の回転変動値を算出する際に使用される。校正値決定装置の算出部61は、予め選択されたリラクタ10に対応するパルス信号の間隔に基づいて、選択されたリラクタ10の間隔を示す実測値を出力する。基準値記憶部63は、回転体8の回転数に基づいてリラクタ10の配置間隔の基準値を出力する。除算部64は実測値と基準値との比の値を算出して除算部67で校正値を算出して出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の位置補正制御装置に関し、特に、回転体の回転変動を検出するセンサの出力を該センサの被検出体であるリラクタの配置精度のばらつきに影響されないように校正することができる回転体の位置補正制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、従来の燃料噴射制御装置の要部機能を示すブロック図である。同図において、エンジンの吸気管に設けられる吸気負圧センサ(以下、「PBセンサ」という)100は吸気負圧を示す検出信号を出力する。PB値変換部110は、PBセンサ100から入力される検出信号を吸気負圧PBに変換する。PBマップ120は、吸気負圧PBの関数として基本燃料噴射時間Tiを記憶しており、入力された吸気負圧PBに応じた基本燃料噴射時間Tiを出力する。
【0003】
PB補正部130は、PBセンサ100から入力される検出信号に基づいて、大気圧の予測値である代替大気圧PAを算出する。PA補正係数記憶部140は、代替大気圧PAの関数として大気圧補正係数paを出力する。乗算部150は、基本燃料噴射時間Tiに補正係数paを乗算して燃料噴射時間Toutを出力する。燃料噴射時間Toutは代替大気圧PAによる基本燃料噴射時間Tiの補正後の値である。
【0004】
さらに、PBセンサ100による検出信号は、行程判別部160に入力され、行程判別部160はPBセンサ100の検出信号に基づいて行程判別を行い、行程を確定する。確定された行程はステージ判別部170に入力され、ステージ判定部170は、現在の行程とクランクパルスとからステージ、つまり所定のクランク位置を基準としてクランクパルス間隔毎に割り当てられた位置情報を判定する。現在のステージが判定されれば、燃料噴射時期および点火時期が決定される。ステージの決定手法の一例は、本出願人の先願に係る特開2000−265894号公報に記載されている。
【0005】
従来の燃料噴射制御装置では、PBセンサおよびクランクパルサを備える必要があり、本出願人は、このうちPBセンサを削除できる手法を提案している(特開2004−108288号公報や特開2004−108289号公報)。この公報に記載のものでは、クランクの回転変化に基づいて圧縮行程のエネルギ損失から排気行程のエネルギ損失を差し引いた値が吸入空気量と相関を有するという観点から吸入空気量を推定し、これに基づいて燃料噴射量を決定している。
【特許文献1】特開2000−265894号公報
【特許文献2】特開2004−108288号公報
【特許文献3】特開2004−108289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クランクの回転変化に基づいて燃料噴射量を決定するよう構成された特許文献2,3の従来装置は、クランクパルス間隔の変動に基づいてクランクの回転変化を検出している。クランクパルス間隔は、クランク軸と一体に、またはクランク軸に連結された発電機のロータ等、回転体に配置されたリラクタの間隔の精度に直接影響される。その結果、リラクタ間隔の精度ばらつきによってクランク回転数が変動していると判断されるので、噴射制御にばらつきが生じることが考えられる。
【0007】
本発明の目的は、リラクタ間隔の精度ばらつきの影響を受けたクランクパルス間隔を補正して、ばらつきの少ない燃料噴射制御装置等に校正値を出力することができる回転体の位置補正制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、エンジンに連結されたフライホイール等の回転体の周面に所定間隔で配置された複数のリラクタと該リラクタを検出してパルス信号を出力するセンサとを有し、前記パルス信号の間隔に基づいて前記回転体の回転変動値を算出する回転体の位置補正制御装置において、前記パルス信号の間隔を校正する校正値を予め算出する校正値決定手段を具備し、前記校正値決定手段が、前記複数のリラクタのうち、予め選択されたリラクタに対応して発生されるパルス信号の間隔に基づいて、前記選択されたリラクタの間隔を示す実測値を出力する校正リラクタ間隔検出手段と、前記パルス信号に基づいて前記回転体の回転数を検出する回転数検出手段と、前記回転数に基づいて、前記選択されたリラクタの配置間隔の基準値を出力する基準値発生手段と、前記実測値と前記基準値との比の値を算出して校正値を出力する算出手段とを含み、該校正値決定手段による処理が、予定の校正値算出条件を満足した時に実行される点に特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記校正値算出条件が、前記回転体の減速時に満足され、さらに、この校正値算出条件には、前記回転体の回転数が予定範囲にあるときや、回転体の駆動源であるエンジンが暖機された状態にあるときなどの条件を加えることができる点に第2の特徴がある。
【0010】
さらに、本発明は、前記校正値決定手段で構成されたリラクタ間隔の実測値を使って前記回転体の駆動源であるエンジンの回転変動値を算出する手段を具備した点に第3の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
第1の特徴によれば、パルス信号により、該パルス信号を発生させているリラクタの間隔を実測し、その実測値と予め設定された基準値との比の値を求めて校正値としている。すなわち、理論的に計算されて予め設定された基準値をもとに、この基準値に対する実測値のずれの割合を実機が所定の校正値算出条件を満たしているときに検出することができる。
【0012】
第2の特徴では、減速時や回転数が予定範囲内であるときやエンジンが暖機運転中等、回転体の回転変動に、駆動源の駆動力やフリクションが影響しにくい条件下で校正値が決定されるので、精度の高い校正値が得られる。
【0013】
第3の特徴によれば、精度の高い校正値で実測値が構成されるので、リラクタの配置間隔の精度を従来通りにしたまま、つまり従来の製作精度のままで回転体の回転変動の検出精度を向上させることができる。
【0014】
また、製作時の精度ばらつきの影響を小さくできるだけでなく、例えばエンジンの分解・組み立て時等に、リラクタとセンサとの間隙が変化していたり、部品交換によりリラクタ間隔が異なっていたりした場合でも、エンジンが前記校正値算出条件で運転されたときに構成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る内燃エンジン用燃料噴射制御装置のシステム構成を示すブロック図である。同図において、クランク回転センサつまりクランクパルサ1、スロットルセンサ2、および水温センサ3は、それぞれクランクパルスPLS、スロットル開度TH、およびエンジン温度を代表する冷却水温TWを検出する。マイコンおよびその周辺部品からなるECU4は、各センサ1,2,3の出力を取り込んで、予定のアルゴリズムで処理をし、その処理結果である指令をインジェクタ(燃料噴射弁)5、点火コイル6、および燃料ポンプ7等に対して出力する。
【0016】
クランクパルサ1は、図示しないエンジンの出力であるクランク軸に結合される回転体の周囲に所定の間隔で設けられる複数のリラクタに反応してクランクパルスPLSとしてのパルス信号を出力する。クランクパルスPLSの発生周期はリラクタの間隔に対応しており、このクランクパルスPLSに従って、クランク角を代表するステージ番号が決定される。
【0017】
図4は、リラクタの配置を示すロータの正面図である。回転体8は、エンジンで駆動される発電機のロータヨークやフライホイールであり、エンジンのクランク軸9に結合される。このロータヨーク8は、例えば、アルミニューム等の非磁性体で形成され、ロータヨーク8の外周には磁気誘導体であるリラクタ10が複数設けられる。ロータヨーク8の外周に対向して配置されるクランクパルサ1はこれらのリラクタ10に接近・離間する毎に誘導される電流の変化を検出してクランクパルスPLSを出力する。リラクタ10は、円周360度のうち240度の範囲内に30度間隔で9個設けられている。すなわち、リラクタ10はロータヨーク8の円周の一部領域に等間隔で複数配置されている。したがって、図示のように、連続して配置されている9個のリラクタ10のうち両端に位置するものの互いの間隔は120度である。
【0018】
ロータヨーク8は、ピストンのストロークと各リラクタ10とが所定の位置関係になるようにクランク軸9に取り付けられる。このロータヨーク8が図中時計回りで回転するものとすると、等間隔で配置されているリラクタ10のうち、回転方向先頭に位置しているリラクタ10の、例えば中央位置がエンジンのストロークの圧縮上死点に位置するように位置合わせされる。
【0019】
クランクパルスPLSを検出する毎にその直前のクランクパルスPLS検出時からの時間経過を計測するパルス周期検出手段を設け、このクランクパルスPLSの周期が長くなったときに、直前のクランクパルスPLSが、回転方向先頭のリラクタ10によるものであると判断できる。つまり二つの上死点(圧縮上死点、排気上死点)のいずれかに対応するリラクタ10を検出したことを認識することができる。
【0020】
検出された上死点が圧縮上死点C−TOPか排気上死点E−TOPかは、検出された上死点に対応するクランクパルスPLSとその直前のクランクパルスとの間隔つまりパルス周期の違いによって判別することができる。圧縮行程は排気行程よりフリクションが大きいので、クランクパルスPLSの周期が長くなると考えられるからである。
【0021】
続いて、ECU4による燃料噴射制御を説明する。図5は、4サイクルエンジンの1行程(2回転)における吸気負圧PBの変化を、エンジンの回転数変化、吸気・圧縮・燃焼・排気の各行程、ならびにクランクパルスPLSおよびステージとの関連で示した図である。同図において、クランク軸9の2回転つまりエンジンの1サイクルをクランクパルスPLS間隔に対応づけて18個のステージ(ステージ番号♯0〜♯17)として割り当てる。本実施形態では、この図5に示すエンジン回転数NEの変動と吸気負圧PBとの関連に着目して、クランクパルスPLSの時間間隔つまり各ステージの長さ(以下「ステージの周期TS0〜TS17」という)に基づいてエンジンの回転変動を算出し、この回転変動に基づいて吸気負圧PBを予測する。
【0022】
図6は、燃料噴射時間Toutの算出に使用されるPA予測値およびPB予測値の演算処理のフローチャートである。ステップS1では、クランクパルスPLSの周期を読み込む。クランクパルス周期はクランクパルスPLSをトリガとしてスタートする周期カウンタで計測される。周期が読み込まれると、周期カウンタは次の計測のためにリセットされる。ステップS2では、クランクパルスPLSの周期を使用してエンジンの回転変動を算出する基本演算を行う。
【0023】
図7は、基本演算の機能ブロック図である。図7において、加算部11は、排気行程に属するステージ#7の周期TS7とステージ#8の周期TS8とを加算する。加算部12は、排気行程に属するステージ#11の周期TS11と排気行程および吸気行程に跨るステージ#12の周期TS12とを加算する。また、加算部13は、吸気行程から圧縮行程に跨るステージ#15の周期TS15と圧縮行程に属するステージ#16の周期TS16とを加算する。加算部14は、圧縮行程に属するステージ#11の周期TS11と圧縮行程と燃焼行程とに跨るステージ#12の周期TS12とを加算する。
【0024】
減算部15は、周期(TS11+TS12)から周期(TS7+TS8)を減算する。つまり排気行程から吸気行程に跨る二つのステージの周期と排気行程の二つのステージの周期の差を回転変動として検出する。減算部16は、周期(TS15+TS16)から周期(TS11+TS12)を減算する。つまり吸気行程から圧縮行程に跨る二つのステージの周期と排気行程から吸気行程に跨る二つのステージの周期との差を回転変動として検出する。減算部17は周期(TS2+TS3)から周期(TS15+TS16)を減算する。つまり圧縮行程から燃焼行程に跨る二つのステージの周期と、吸気行程から圧縮行程に跨る二つのステージの周期との差を回転変動として検出する。
【0025】
加算部18は、加算部12の加算結果つまり周期(TS11+TS12)と、加算部13の加算結果つまり周期(TS15+TS16)とをさらに加算する。除算部19は加算部18の加算結果を定数で除算し、その結果を、予測演算用エンジン回転数NEYPBとして出力する。
【0026】
平滑化処理部20は減算部15の出力を平滑化処理して、その結果を回転変動値ΔTCとして出力する。平滑化処理部21は減算部16の出力を平滑化して、その結果を回転変動値ΔTAとして出力する。平滑化処理部22は減算部17の出力を平滑化して、その結果を回転変動値ΔTBとして出力する。
【0027】
減算部23は、回転変動値ΔTAから回転変動値ΔTCを減算して回転変動値(ΔTA−ΔTC)を出力する。加算部24は、回転変動値ΔTAと回転変動値ΔTBとを加算して回転変動値(ΔTA+ΔTB)を出力する。回転変動値ΔTA、ΔTB、ΔTCがゼロ以下の時は、平滑化処理部20、21、22にゼロを入力する。また、回転変動値(ΔTA−ΔTC)および回転変動値(ΔTA+ΔTB)は、それぞれの結果がゼロの時は、ゼロを出力する。
【0028】
図6に戻る。ステップS3では、スロットル開度THおよびエンジン温度TWを読み込む。ステップS4では、スロットル開度THの演算切り替え値THCALCを予測演算用エンジン回転数NEYPBに従ってテーブルから検索する。
【0029】
ステップS5では、高回転演算と低回転演算との切り替えのために、スロットル開度THが演算切り替え値THCALCより小さいか否かを判別する。
【0030】
スロットル開度THが演算切り替え値THCALCより小さいときはステップS6に進む。ステップS6では、予測演算用エンジン回転数NEYPBとエンジン温度TWとをそれぞれ使ってテーブルから低回転演算係数を検索する。予測演算用エンジン回転数NEYPBに対応して、定常状態および低回転時のPB算出用係数、並びに加速補正項kの算出用係数等が、低回転演算係数として検索される。また、エンジン温度TWに対応して回転変動の温度補正係数が検索される。
【0031】
ステップS7では、低回転側の精度向上に寄与し得る前処理演算を行う。前処理演算は、低回転PA演算値YPCALを算出するための予測PB演算値YPBAを算出する。
【0032】
図8は、前処理演算の機能ブロック図である。乗算部25は予測演算用エンジン回転数NEYPBに定常状態のPB算出用係数(勾配)aを乗算する。乗算部26は、乗算部25の出力に吸気行程前後の回転変動値(ΔTA−ΔTC)を乗算する。除算部27は、乗算部26の出力を油温補正係数gで除算する。
【0033】
乗算部28は、予測演算用エンジン回転数NEYPBに加速補正項算出用係数(勾配)mを乗算する。乗算部29は、乗算部28の出力に回転変動値ΔTBを乗算する。除算部30は、乗算部29の出力を油温補正係数hで除算する。加算部31は除算部30の出力に加速補正項算出用係数(切片)nを加算する。加算部31の出力は加速補正係数kである。
【0034】
加速判断部32は、エンジン回転数NEがしきい値(例えば2000rpm)以下で、かつ加速補正係数kがしきい値以上である場合に加速と判断し、予測演算値記憶部33に除算部27の出力を転送し、予測PB演算値YPBCALとして記憶する。加速判断部32は、加速と判断しなかった場合は、予測PB演算値YPBCALは前回値を保持する。
【0035】
乗算部34は、加速補正係数kを予測PB演算値YPBCALに乗算する。加算部35は、加速補正項で補正された予測演算値YPBCALに定常状態のPB算出係数(切片)を加算する。加算部35の出力は予測PB演算値YPBAである。
【0036】
図6に戻る。ステップS8では、予測PB演算値YPBAおよび予測演算用エンジン回転数NEYPB、並びに回転変動および低回転演算係数により低回転PA演算値YPACALを演算する。
【0037】
図9は、低回転PA予測演算の機能ブロック図である。図9において、乗算部36は、予測演算用エンジン回転数NEYPBに低回転PB算出用係数(勾配)pを乗算する。乗算部37は、乗算部36の出力に回転変動ΔTBを乗算する。除算部38は、乗算部37の出力を油温補正係数hで補正する。減算部39は、予測PB演算値YPBAから除算部38の出力を減算する。除算部40は、減算部39の出力を低回転PB算出用係数(切片)qで除算する。乗算部41は、除算部40の出力に定数を乗算して低回転PA演算値YPACALを出力する。
【0038】
図6に戻る。ステップS9では、PA予測値YPAを算出する。図10は、ステップS9の詳細を示すフローチャートである。図9において、ステップS90では、予測条件を判断する。エンジン回転数NEが予定の範囲にあってスロットル開度THが最大値でない場合にステップS90は肯定となり、ステップS91で減速中か否かが判断される。減速中でなければ、ステップS92に進んで始動後から予定サイクル(例えば20サイクル)以内かどうかが判断される。ステップS92が肯定ならば、ステップS93に進んで始動時演算を行う。例えば、予定回数分のPA演算値YPCALを移動平均する。ステップS92が否定つまり始動から時間が長く経過している場合はステップS94に進んで変化量を規制する。例えば、1サイクルあたりのPA演算値YPCALの変化量を予定幅に規制する。
【0039】
ステップS95では、PA演算値YPACALの平滑化処理を行う。例えば、前回のサイクルのPA演算値YPCALに係数を乗算した値に、今回のサイクルのPA演算値YPCALに(1−係数)を乗算した値を加算する。ステップS96では、平滑化処理の結果をPA予測値YPAとして出力する。予測条件に該当しない場合(ステップS90が否定)または減速中(ステップS91が肯定)の場合は、ステップS97で前回のPA予測値YPAを出力する。
【0040】
図6に戻る。ステップS10では、低回転時のPB予測値を演算する。図11は、低回転時のPB予測値YPBの演算機能のブロック図である。図11において、乗算部42は予測演算用エンジン回転数NEYPBに低回転PB算出用係数(勾配)pを乗算する。乗算部43は、乗算部42の出力に回転変動値ΔTBを乗算する。除算部44は、乗算部43の出力を油温補正係数hで除算する。乗算部45は、前回のPA予測値に低回転PB算出用係数(切片)qを乗算する。除算部46は、乗算部45の出力を定数で除算する。加算部47は、除算部44および除算部46の出力を加算して低回転PB予測値YPBを出力する。
【0041】
図6に戻る。ステップS5が否定のときはステップS11に進む。ステップS11では予測演算用エンジン回転数NEYPBとエンジン温度TWとスロットル開度THとをそれぞれ使ってテーブルから高回転演算係数を検索する。予測演算用エンジン回転数NEYPBに対応して、高回転時のPB算出用係数、温度補正係数の寄与率等が高回転演算係数として検索される。また、エンジン温度THに対応して回転変動の温度補正係数が検索される。さらにスロットル開度THと予測演算用エンジン回転数NEYPBに対応して高回転PA算出用基準値tが検索される。
【0042】
高回転用の処理では、前処理PB演算は行わないのでステップS12に進んで、高回転PA算出用基準値tと回転変動とによって高回転PA演算値YPACALを演算する。
【0043】
図12は、高回転PA予測演算の機能ブロック図である。図12において、除算部48は、回転変動値(ΔTA+ΔTB)を油温補正係数vで除算する。除算部49は、除算部48の出力を、スロットル開度THに関する高回転PA算出用基準値tで除算する。乗算部50は、除算部49の出力に定数を乗算して高回転PA演算値YPACALを出力する。
【0044】
図6に戻る。ステップS13では、高回転時のPA予測値を算出する。この処理は、低回転時のPA予測値YPAの算出処理と同様である。ステップS14では高回転時のPB予測値を演算する。
【0045】
図13は、高回転時のPB予測値YPBの演算機能のブロック図である。図13において、乗算部51は予測演算用エンジン回転数NEYPBに高回転PB算出用係数(勾配)rを乗算する。乗算部52は、乗算部51の出力に回転変動値(ΔTA+ΔTB)を乗算する。除算部53は、乗算部52の出力を油温補正係数vで除算する。乗算部54は、前回のPA予測値に高回転PB算出用係数(切片)sを乗算する。除算部55は、乗算部54の出力を定数で除算する。加算部56は、除算部53および除算部55の出力を加算して高回転PB予測値YPBを出力する。
【0046】
燃料噴射時間Toutは、こうして演算されたPA予測値とPB予測値とを使って算出される。
【0047】
なお、行程の判別は、次のようにして行うことができる。図14は、行程判別処理の機能ブロック図である。加算部57はステージ#14の周期TS14とステージ#15の周期TS15とを加算する。加算部57の出力は吸気行程から圧縮行程に跨る領域の時間である。加算部58はステージ#5の周期TS5とステージ#6の周期TS6とを加算する。加算部58の出力は燃焼行程から排気行程に跨る領域の時間である。減算部59は加算部57の出力から加算部58の出力を減算する。行程判断部60は減算部59の出力がプラス(正)か否かを判断する。通常は、吸気行程から圧縮行程に跨る領域の時間の方が、燃焼行程から排気行程に跨る領域の時間より長いので減算部59の出力が正ならば、ステージ番号と行程との対応が正しいと判断して行程を確定する。一方、減算部59の出力がマイナス(負)であれば、ステージ番号と行程とが正しく対応していないと判断して行程を入れ替える。つまり排気上死点E−TOPと圧縮上死点C−TOPとが入れ替わるようにステージ番号を変更する。こうして、演算の結果確定した行程に基づいてステージを判別し、燃料噴射時期および点火時期を決定する。
【0048】
上記基本演算において、クランクパルサ1によって検出されたステージ周期をリラクタ10のばらつきに応じて校正する手段を説明する。図1は、校正値算出装置の機能を示すブロック図である。クランクパルサ1によって検出されたクランクパルスPLSはステージ周期算出部61に入力される。ステージ周期算出部61は、クランクパルスPLSに基づいて、ステージ#7の周期TS7とステージ#8の周期TS8との加算値(TS7+TS8)、ステージ#11の周期TS11とステージ#12の周期TS12との加算値(TS11+TS12)、ステージ#15の周期TS15とステージ#16の周期TS16との加算値(TS15+TS16)、並びにステージ#2の周期TS2とステージ#3の周期TS3との加算値(TS2+TS3)を算出する。
【0049】
エンジン回転数算出部62は、クランクパルスPLSに基づいてエンジン回転数NEを算出し、ステージ周期基準値記憶部63に入力する。ステージ周期基準値記憶部63は、エンジン回転数NEに対応したステージ周期基準値TSBASEが格納されている。上記各ステージ#7,#8,#11,#12,#15,#16,#2,#3はクランク角30°に対応する。したがって、クランク角60°(2ステージ分のクランク角)に対応するステージ周期のステージ周期基準値TSBASEを予めエンジン回転数NE毎に計算して記憶しておく。除算部64は、ステージ周期算出部61から出力された2ステージ分の実機測定値をステージ周期基準値TSBASEで除算する。除算結果K0708、K1112、K1516、K0203は、校正値算出部65に入力される。校正値算出部65は、除算結果をn回(例えばn=20)取り込み、その移動平均値(K0708A、K1112A、K1516A、K0203A)を出力する。
【0050】
校正値算出のためのクランクパルスPLSは、校正値算出条件を満たした時に取り込む。校正値算出条件は、例えば、減速時であるときに満足される。減速時の回転変動は大気圧PAや吸気負圧PBによる影響を受けず、エンジン回転数に対してほぼ一定の値になる。そこで、エンジン回転数に対応するステージ周期基準値TSBASEを算出して記憶しておき、減速時にクランクパルスPLSを取り込んで、周期(TS7+TS8)、(TS11+TS12)、(TS15+TS16)、並びに(TS2+TS3)を測定し、その測定結果とステージ周期基準値TSBASEとの比の値を除算部64で求めて、校正値としている。
【0051】
また、校正値算出のためのクランクパルスPLSの取り込みは、予め定めたエンジン回転数NEの上下限の範囲(例えば4000rpm〜6000rpm)で行うのがよい。さらに、エンジンの油温が予定値(例えば、80°C)以上であるとき、つまり暖機後に行うのがよい。フリクションの影響を受けにくいからである。
【0052】
図2は、前記校正値を使ったステージ周期の校正機能を含む回転変動値算出装置のブロック図である。ステージ周期算出部66は、図7の加算部11,12,13,14に相当する。このステージ周期算出部66で算出された周期(TS7+TS8)、(TS11+TS12)、(TS15+TS16)、並びに(TS2+TS3)は、除算部67に入力され、前記校正値K0708A、K1112A、K1516A、K0203Aで、それぞれ除算される。除算部67の出力は校正値K0708A、K1112A、K1516A、K0203Aで校正されたステージ周期であり、この校正されたステージ周期の(TS7+TS8)、(TS11+TS12)、(TS15+TS16)、並びに(TS2+TS3)は、図7の減算部15,16,17以降の演算に使用されて、回転変動値ΔTA、ΔTB、およびΔTCが算出される。
【0053】
こうして、本実施形態では、ステージ周期の基準値に基づいて校正値を予め決定し、実測されたステージ周期つまりリラクタ10の間隔を校正している。したがって、校正されたステージ周期に基づく燃料噴射制御を、リラクタ10の間隔のばらつきの影響を受けにくいものとすることができる。
【0054】
前記校正値の算出はエンジンの運転条件を監視していて、校正値算出条件が満足されたときに実行するようにしてもよいし、校正値算出条件を満足するようにエンジンを試運転させて、この試運転中に校正値を算出して記憶させておき、この校正値を採用して実際のエンジン制御を行ってもよい。
【0055】
なお、本発明は、エンジンの吸気負圧PBを検出する手段として内燃エンジンの回転変動値を算出する装置に校正値算出手段を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されない。内燃エンジン以外の駆動源によって回転される回転体の回転変動値を算出して駆動源の各種制御を行うシステムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】校正値算出装置の機能を示すブロック図である。
【図2】校正機能を有する回転変動値算出装置のブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る内燃エンジン用燃料噴射制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図4】リラクタの配置を示すロータの正面図である。
【図5】4サイクルエンジンの吸気負圧PBの変化をエンジンの回転数変化、吸気・圧縮・燃焼・排気の各行程、ならびにクランクパルスおよびステージとの関連で示した図である。
【図6】燃料噴射時間Toutの算出に使用されるPA予測値およびPB予測値の演算処理のフローチャートである。
【図7】基本演算の機能ブロック図である。
【図8】前処理演算の機能ブロック図である。
【図9】低回転PA予測演算の機能ブロック図である。
【図10】図6のステップS9の詳細を示すフローチャートである。
【図11】低回転時のPB予測値YPBの演算機能のブロック図である。
【図12】高回転PA予測演算の機能ブロック図である。
【図13】高回転時のPB予測値YPBの演算機能のブロック図である。
【図14】行程判別処理の機能ブロック図である。
【図15】従来の燃料噴射制御装置の要部機能を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1…クランクパルサ(センサ)、 2…スロットルセンサ、 3…水温センサ、 4…ECU、 5…燃料噴射弁、 8…回転体、 9…クランク軸、 10…リラクタ、 61,66…ステージ周期算出部(校正リラクタ間隔検出手段)、 62…エンジン回転数算出部、 63…基準値記憶部(基準値発生手段)、 64,67…除算部、 65…校正値算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の位置補正制御装置に関し、特に、回転体の回転変動を検出するセンサの出力を該センサの被検出体であるリラクタの配置精度のばらつきに影響されないように校正することができる回転体の位置補正制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、従来の燃料噴射制御装置の要部機能を示すブロック図である。同図において、エンジンの吸気管に設けられる吸気負圧センサ(以下、「PBセンサ」という)100は吸気負圧を示す検出信号を出力する。PB値変換部110は、PBセンサ100から入力される検出信号を吸気負圧PBに変換する。PBマップ120は、吸気負圧PBの関数として基本燃料噴射時間Tiを記憶しており、入力された吸気負圧PBに応じた基本燃料噴射時間Tiを出力する。
【0003】
PB補正部130は、PBセンサ100から入力される検出信号に基づいて、大気圧の予測値である代替大気圧PAを算出する。PA補正係数記憶部140は、代替大気圧PAの関数として大気圧補正係数paを出力する。乗算部150は、基本燃料噴射時間Tiに補正係数paを乗算して燃料噴射時間Toutを出力する。燃料噴射時間Toutは代替大気圧PAによる基本燃料噴射時間Tiの補正後の値である。
【0004】
さらに、PBセンサ100による検出信号は、行程判別部160に入力され、行程判別部160はPBセンサ100の検出信号に基づいて行程判別を行い、行程を確定する。確定された行程はステージ判別部170に入力され、ステージ判定部170は、現在の行程とクランクパルスとからステージ、つまり所定のクランク位置を基準としてクランクパルス間隔毎に割り当てられた位置情報を判定する。現在のステージが判定されれば、燃料噴射時期および点火時期が決定される。ステージの決定手法の一例は、本出願人の先願に係る特開2000−265894号公報に記載されている。
【0005】
従来の燃料噴射制御装置では、PBセンサおよびクランクパルサを備える必要があり、本出願人は、このうちPBセンサを削除できる手法を提案している(特開2004−108288号公報や特開2004−108289号公報)。この公報に記載のものでは、クランクの回転変化に基づいて圧縮行程のエネルギ損失から排気行程のエネルギ損失を差し引いた値が吸入空気量と相関を有するという観点から吸入空気量を推定し、これに基づいて燃料噴射量を決定している。
【特許文献1】特開2000−265894号公報
【特許文献2】特開2004−108288号公報
【特許文献3】特開2004−108289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クランクの回転変化に基づいて燃料噴射量を決定するよう構成された特許文献2,3の従来装置は、クランクパルス間隔の変動に基づいてクランクの回転変化を検出している。クランクパルス間隔は、クランク軸と一体に、またはクランク軸に連結された発電機のロータ等、回転体に配置されたリラクタの間隔の精度に直接影響される。その結果、リラクタ間隔の精度ばらつきによってクランク回転数が変動していると判断されるので、噴射制御にばらつきが生じることが考えられる。
【0007】
本発明の目的は、リラクタ間隔の精度ばらつきの影響を受けたクランクパルス間隔を補正して、ばらつきの少ない燃料噴射制御装置等に校正値を出力することができる回転体の位置補正制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、エンジンに連結されたフライホイール等の回転体の周面に所定間隔で配置された複数のリラクタと該リラクタを検出してパルス信号を出力するセンサとを有し、前記パルス信号の間隔に基づいて前記回転体の回転変動値を算出する回転体の位置補正制御装置において、前記パルス信号の間隔を校正する校正値を予め算出する校正値決定手段を具備し、前記校正値決定手段が、前記複数のリラクタのうち、予め選択されたリラクタに対応して発生されるパルス信号の間隔に基づいて、前記選択されたリラクタの間隔を示す実測値を出力する校正リラクタ間隔検出手段と、前記パルス信号に基づいて前記回転体の回転数を検出する回転数検出手段と、前記回転数に基づいて、前記選択されたリラクタの配置間隔の基準値を出力する基準値発生手段と、前記実測値と前記基準値との比の値を算出して校正値を出力する算出手段とを含み、該校正値決定手段による処理が、予定の校正値算出条件を満足した時に実行される点に特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記校正値算出条件が、前記回転体の減速時に満足され、さらに、この校正値算出条件には、前記回転体の回転数が予定範囲にあるときや、回転体の駆動源であるエンジンが暖機された状態にあるときなどの条件を加えることができる点に第2の特徴がある。
【0010】
さらに、本発明は、前記校正値決定手段で構成されたリラクタ間隔の実測値を使って前記回転体の駆動源であるエンジンの回転変動値を算出する手段を具備した点に第3の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
第1の特徴によれば、パルス信号により、該パルス信号を発生させているリラクタの間隔を実測し、その実測値と予め設定された基準値との比の値を求めて校正値としている。すなわち、理論的に計算されて予め設定された基準値をもとに、この基準値に対する実測値のずれの割合を実機が所定の校正値算出条件を満たしているときに検出することができる。
【0012】
第2の特徴では、減速時や回転数が予定範囲内であるときやエンジンが暖機運転中等、回転体の回転変動に、駆動源の駆動力やフリクションが影響しにくい条件下で校正値が決定されるので、精度の高い校正値が得られる。
【0013】
第3の特徴によれば、精度の高い校正値で実測値が構成されるので、リラクタの配置間隔の精度を従来通りにしたまま、つまり従来の製作精度のままで回転体の回転変動の検出精度を向上させることができる。
【0014】
また、製作時の精度ばらつきの影響を小さくできるだけでなく、例えばエンジンの分解・組み立て時等に、リラクタとセンサとの間隙が変化していたり、部品交換によりリラクタ間隔が異なっていたりした場合でも、エンジンが前記校正値算出条件で運転されたときに構成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る内燃エンジン用燃料噴射制御装置のシステム構成を示すブロック図である。同図において、クランク回転センサつまりクランクパルサ1、スロットルセンサ2、および水温センサ3は、それぞれクランクパルスPLS、スロットル開度TH、およびエンジン温度を代表する冷却水温TWを検出する。マイコンおよびその周辺部品からなるECU4は、各センサ1,2,3の出力を取り込んで、予定のアルゴリズムで処理をし、その処理結果である指令をインジェクタ(燃料噴射弁)5、点火コイル6、および燃料ポンプ7等に対して出力する。
【0016】
クランクパルサ1は、図示しないエンジンの出力であるクランク軸に結合される回転体の周囲に所定の間隔で設けられる複数のリラクタに反応してクランクパルスPLSとしてのパルス信号を出力する。クランクパルスPLSの発生周期はリラクタの間隔に対応しており、このクランクパルスPLSに従って、クランク角を代表するステージ番号が決定される。
【0017】
図4は、リラクタの配置を示すロータの正面図である。回転体8は、エンジンで駆動される発電機のロータヨークやフライホイールであり、エンジンのクランク軸9に結合される。このロータヨーク8は、例えば、アルミニューム等の非磁性体で形成され、ロータヨーク8の外周には磁気誘導体であるリラクタ10が複数設けられる。ロータヨーク8の外周に対向して配置されるクランクパルサ1はこれらのリラクタ10に接近・離間する毎に誘導される電流の変化を検出してクランクパルスPLSを出力する。リラクタ10は、円周360度のうち240度の範囲内に30度間隔で9個設けられている。すなわち、リラクタ10はロータヨーク8の円周の一部領域に等間隔で複数配置されている。したがって、図示のように、連続して配置されている9個のリラクタ10のうち両端に位置するものの互いの間隔は120度である。
【0018】
ロータヨーク8は、ピストンのストロークと各リラクタ10とが所定の位置関係になるようにクランク軸9に取り付けられる。このロータヨーク8が図中時計回りで回転するものとすると、等間隔で配置されているリラクタ10のうち、回転方向先頭に位置しているリラクタ10の、例えば中央位置がエンジンのストロークの圧縮上死点に位置するように位置合わせされる。
【0019】
クランクパルスPLSを検出する毎にその直前のクランクパルスPLS検出時からの時間経過を計測するパルス周期検出手段を設け、このクランクパルスPLSの周期が長くなったときに、直前のクランクパルスPLSが、回転方向先頭のリラクタ10によるものであると判断できる。つまり二つの上死点(圧縮上死点、排気上死点)のいずれかに対応するリラクタ10を検出したことを認識することができる。
【0020】
検出された上死点が圧縮上死点C−TOPか排気上死点E−TOPかは、検出された上死点に対応するクランクパルスPLSとその直前のクランクパルスとの間隔つまりパルス周期の違いによって判別することができる。圧縮行程は排気行程よりフリクションが大きいので、クランクパルスPLSの周期が長くなると考えられるからである。
【0021】
続いて、ECU4による燃料噴射制御を説明する。図5は、4サイクルエンジンの1行程(2回転)における吸気負圧PBの変化を、エンジンの回転数変化、吸気・圧縮・燃焼・排気の各行程、ならびにクランクパルスPLSおよびステージとの関連で示した図である。同図において、クランク軸9の2回転つまりエンジンの1サイクルをクランクパルスPLS間隔に対応づけて18個のステージ(ステージ番号♯0〜♯17)として割り当てる。本実施形態では、この図5に示すエンジン回転数NEの変動と吸気負圧PBとの関連に着目して、クランクパルスPLSの時間間隔つまり各ステージの長さ(以下「ステージの周期TS0〜TS17」という)に基づいてエンジンの回転変動を算出し、この回転変動に基づいて吸気負圧PBを予測する。
【0022】
図6は、燃料噴射時間Toutの算出に使用されるPA予測値およびPB予測値の演算処理のフローチャートである。ステップS1では、クランクパルスPLSの周期を読み込む。クランクパルス周期はクランクパルスPLSをトリガとしてスタートする周期カウンタで計測される。周期が読み込まれると、周期カウンタは次の計測のためにリセットされる。ステップS2では、クランクパルスPLSの周期を使用してエンジンの回転変動を算出する基本演算を行う。
【0023】
図7は、基本演算の機能ブロック図である。図7において、加算部11は、排気行程に属するステージ#7の周期TS7とステージ#8の周期TS8とを加算する。加算部12は、排気行程に属するステージ#11の周期TS11と排気行程および吸気行程に跨るステージ#12の周期TS12とを加算する。また、加算部13は、吸気行程から圧縮行程に跨るステージ#15の周期TS15と圧縮行程に属するステージ#16の周期TS16とを加算する。加算部14は、圧縮行程に属するステージ#11の周期TS11と圧縮行程と燃焼行程とに跨るステージ#12の周期TS12とを加算する。
【0024】
減算部15は、周期(TS11+TS12)から周期(TS7+TS8)を減算する。つまり排気行程から吸気行程に跨る二つのステージの周期と排気行程の二つのステージの周期の差を回転変動として検出する。減算部16は、周期(TS15+TS16)から周期(TS11+TS12)を減算する。つまり吸気行程から圧縮行程に跨る二つのステージの周期と排気行程から吸気行程に跨る二つのステージの周期との差を回転変動として検出する。減算部17は周期(TS2+TS3)から周期(TS15+TS16)を減算する。つまり圧縮行程から燃焼行程に跨る二つのステージの周期と、吸気行程から圧縮行程に跨る二つのステージの周期との差を回転変動として検出する。
【0025】
加算部18は、加算部12の加算結果つまり周期(TS11+TS12)と、加算部13の加算結果つまり周期(TS15+TS16)とをさらに加算する。除算部19は加算部18の加算結果を定数で除算し、その結果を、予測演算用エンジン回転数NEYPBとして出力する。
【0026】
平滑化処理部20は減算部15の出力を平滑化処理して、その結果を回転変動値ΔTCとして出力する。平滑化処理部21は減算部16の出力を平滑化して、その結果を回転変動値ΔTAとして出力する。平滑化処理部22は減算部17の出力を平滑化して、その結果を回転変動値ΔTBとして出力する。
【0027】
減算部23は、回転変動値ΔTAから回転変動値ΔTCを減算して回転変動値(ΔTA−ΔTC)を出力する。加算部24は、回転変動値ΔTAと回転変動値ΔTBとを加算して回転変動値(ΔTA+ΔTB)を出力する。回転変動値ΔTA、ΔTB、ΔTCがゼロ以下の時は、平滑化処理部20、21、22にゼロを入力する。また、回転変動値(ΔTA−ΔTC)および回転変動値(ΔTA+ΔTB)は、それぞれの結果がゼロの時は、ゼロを出力する。
【0028】
図6に戻る。ステップS3では、スロットル開度THおよびエンジン温度TWを読み込む。ステップS4では、スロットル開度THの演算切り替え値THCALCを予測演算用エンジン回転数NEYPBに従ってテーブルから検索する。
【0029】
ステップS5では、高回転演算と低回転演算との切り替えのために、スロットル開度THが演算切り替え値THCALCより小さいか否かを判別する。
【0030】
スロットル開度THが演算切り替え値THCALCより小さいときはステップS6に進む。ステップS6では、予測演算用エンジン回転数NEYPBとエンジン温度TWとをそれぞれ使ってテーブルから低回転演算係数を検索する。予測演算用エンジン回転数NEYPBに対応して、定常状態および低回転時のPB算出用係数、並びに加速補正項kの算出用係数等が、低回転演算係数として検索される。また、エンジン温度TWに対応して回転変動の温度補正係数が検索される。
【0031】
ステップS7では、低回転側の精度向上に寄与し得る前処理演算を行う。前処理演算は、低回転PA演算値YPCALを算出するための予測PB演算値YPBAを算出する。
【0032】
図8は、前処理演算の機能ブロック図である。乗算部25は予測演算用エンジン回転数NEYPBに定常状態のPB算出用係数(勾配)aを乗算する。乗算部26は、乗算部25の出力に吸気行程前後の回転変動値(ΔTA−ΔTC)を乗算する。除算部27は、乗算部26の出力を油温補正係数gで除算する。
【0033】
乗算部28は、予測演算用エンジン回転数NEYPBに加速補正項算出用係数(勾配)mを乗算する。乗算部29は、乗算部28の出力に回転変動値ΔTBを乗算する。除算部30は、乗算部29の出力を油温補正係数hで除算する。加算部31は除算部30の出力に加速補正項算出用係数(切片)nを加算する。加算部31の出力は加速補正係数kである。
【0034】
加速判断部32は、エンジン回転数NEがしきい値(例えば2000rpm)以下で、かつ加速補正係数kがしきい値以上である場合に加速と判断し、予測演算値記憶部33に除算部27の出力を転送し、予測PB演算値YPBCALとして記憶する。加速判断部32は、加速と判断しなかった場合は、予測PB演算値YPBCALは前回値を保持する。
【0035】
乗算部34は、加速補正係数kを予測PB演算値YPBCALに乗算する。加算部35は、加速補正項で補正された予測演算値YPBCALに定常状態のPB算出係数(切片)を加算する。加算部35の出力は予測PB演算値YPBAである。
【0036】
図6に戻る。ステップS8では、予測PB演算値YPBAおよび予測演算用エンジン回転数NEYPB、並びに回転変動および低回転演算係数により低回転PA演算値YPACALを演算する。
【0037】
図9は、低回転PA予測演算の機能ブロック図である。図9において、乗算部36は、予測演算用エンジン回転数NEYPBに低回転PB算出用係数(勾配)pを乗算する。乗算部37は、乗算部36の出力に回転変動ΔTBを乗算する。除算部38は、乗算部37の出力を油温補正係数hで補正する。減算部39は、予測PB演算値YPBAから除算部38の出力を減算する。除算部40は、減算部39の出力を低回転PB算出用係数(切片)qで除算する。乗算部41は、除算部40の出力に定数を乗算して低回転PA演算値YPACALを出力する。
【0038】
図6に戻る。ステップS9では、PA予測値YPAを算出する。図10は、ステップS9の詳細を示すフローチャートである。図9において、ステップS90では、予測条件を判断する。エンジン回転数NEが予定の範囲にあってスロットル開度THが最大値でない場合にステップS90は肯定となり、ステップS91で減速中か否かが判断される。減速中でなければ、ステップS92に進んで始動後から予定サイクル(例えば20サイクル)以内かどうかが判断される。ステップS92が肯定ならば、ステップS93に進んで始動時演算を行う。例えば、予定回数分のPA演算値YPCALを移動平均する。ステップS92が否定つまり始動から時間が長く経過している場合はステップS94に進んで変化量を規制する。例えば、1サイクルあたりのPA演算値YPCALの変化量を予定幅に規制する。
【0039】
ステップS95では、PA演算値YPACALの平滑化処理を行う。例えば、前回のサイクルのPA演算値YPCALに係数を乗算した値に、今回のサイクルのPA演算値YPCALに(1−係数)を乗算した値を加算する。ステップS96では、平滑化処理の結果をPA予測値YPAとして出力する。予測条件に該当しない場合(ステップS90が否定)または減速中(ステップS91が肯定)の場合は、ステップS97で前回のPA予測値YPAを出力する。
【0040】
図6に戻る。ステップS10では、低回転時のPB予測値を演算する。図11は、低回転時のPB予測値YPBの演算機能のブロック図である。図11において、乗算部42は予測演算用エンジン回転数NEYPBに低回転PB算出用係数(勾配)pを乗算する。乗算部43は、乗算部42の出力に回転変動値ΔTBを乗算する。除算部44は、乗算部43の出力を油温補正係数hで除算する。乗算部45は、前回のPA予測値に低回転PB算出用係数(切片)qを乗算する。除算部46は、乗算部45の出力を定数で除算する。加算部47は、除算部44および除算部46の出力を加算して低回転PB予測値YPBを出力する。
【0041】
図6に戻る。ステップS5が否定のときはステップS11に進む。ステップS11では予測演算用エンジン回転数NEYPBとエンジン温度TWとスロットル開度THとをそれぞれ使ってテーブルから高回転演算係数を検索する。予測演算用エンジン回転数NEYPBに対応して、高回転時のPB算出用係数、温度補正係数の寄与率等が高回転演算係数として検索される。また、エンジン温度THに対応して回転変動の温度補正係数が検索される。さらにスロットル開度THと予測演算用エンジン回転数NEYPBに対応して高回転PA算出用基準値tが検索される。
【0042】
高回転用の処理では、前処理PB演算は行わないのでステップS12に進んで、高回転PA算出用基準値tと回転変動とによって高回転PA演算値YPACALを演算する。
【0043】
図12は、高回転PA予測演算の機能ブロック図である。図12において、除算部48は、回転変動値(ΔTA+ΔTB)を油温補正係数vで除算する。除算部49は、除算部48の出力を、スロットル開度THに関する高回転PA算出用基準値tで除算する。乗算部50は、除算部49の出力に定数を乗算して高回転PA演算値YPACALを出力する。
【0044】
図6に戻る。ステップS13では、高回転時のPA予測値を算出する。この処理は、低回転時のPA予測値YPAの算出処理と同様である。ステップS14では高回転時のPB予測値を演算する。
【0045】
図13は、高回転時のPB予測値YPBの演算機能のブロック図である。図13において、乗算部51は予測演算用エンジン回転数NEYPBに高回転PB算出用係数(勾配)rを乗算する。乗算部52は、乗算部51の出力に回転変動値(ΔTA+ΔTB)を乗算する。除算部53は、乗算部52の出力を油温補正係数vで除算する。乗算部54は、前回のPA予測値に高回転PB算出用係数(切片)sを乗算する。除算部55は、乗算部54の出力を定数で除算する。加算部56は、除算部53および除算部55の出力を加算して高回転PB予測値YPBを出力する。
【0046】
燃料噴射時間Toutは、こうして演算されたPA予測値とPB予測値とを使って算出される。
【0047】
なお、行程の判別は、次のようにして行うことができる。図14は、行程判別処理の機能ブロック図である。加算部57はステージ#14の周期TS14とステージ#15の周期TS15とを加算する。加算部57の出力は吸気行程から圧縮行程に跨る領域の時間である。加算部58はステージ#5の周期TS5とステージ#6の周期TS6とを加算する。加算部58の出力は燃焼行程から排気行程に跨る領域の時間である。減算部59は加算部57の出力から加算部58の出力を減算する。行程判断部60は減算部59の出力がプラス(正)か否かを判断する。通常は、吸気行程から圧縮行程に跨る領域の時間の方が、燃焼行程から排気行程に跨る領域の時間より長いので減算部59の出力が正ならば、ステージ番号と行程との対応が正しいと判断して行程を確定する。一方、減算部59の出力がマイナス(負)であれば、ステージ番号と行程とが正しく対応していないと判断して行程を入れ替える。つまり排気上死点E−TOPと圧縮上死点C−TOPとが入れ替わるようにステージ番号を変更する。こうして、演算の結果確定した行程に基づいてステージを判別し、燃料噴射時期および点火時期を決定する。
【0048】
上記基本演算において、クランクパルサ1によって検出されたステージ周期をリラクタ10のばらつきに応じて校正する手段を説明する。図1は、校正値算出装置の機能を示すブロック図である。クランクパルサ1によって検出されたクランクパルスPLSはステージ周期算出部61に入力される。ステージ周期算出部61は、クランクパルスPLSに基づいて、ステージ#7の周期TS7とステージ#8の周期TS8との加算値(TS7+TS8)、ステージ#11の周期TS11とステージ#12の周期TS12との加算値(TS11+TS12)、ステージ#15の周期TS15とステージ#16の周期TS16との加算値(TS15+TS16)、並びにステージ#2の周期TS2とステージ#3の周期TS3との加算値(TS2+TS3)を算出する。
【0049】
エンジン回転数算出部62は、クランクパルスPLSに基づいてエンジン回転数NEを算出し、ステージ周期基準値記憶部63に入力する。ステージ周期基準値記憶部63は、エンジン回転数NEに対応したステージ周期基準値TSBASEが格納されている。上記各ステージ#7,#8,#11,#12,#15,#16,#2,#3はクランク角30°に対応する。したがって、クランク角60°(2ステージ分のクランク角)に対応するステージ周期のステージ周期基準値TSBASEを予めエンジン回転数NE毎に計算して記憶しておく。除算部64は、ステージ周期算出部61から出力された2ステージ分の実機測定値をステージ周期基準値TSBASEで除算する。除算結果K0708、K1112、K1516、K0203は、校正値算出部65に入力される。校正値算出部65は、除算結果をn回(例えばn=20)取り込み、その移動平均値(K0708A、K1112A、K1516A、K0203A)を出力する。
【0050】
校正値算出のためのクランクパルスPLSは、校正値算出条件を満たした時に取り込む。校正値算出条件は、例えば、減速時であるときに満足される。減速時の回転変動は大気圧PAや吸気負圧PBによる影響を受けず、エンジン回転数に対してほぼ一定の値になる。そこで、エンジン回転数に対応するステージ周期基準値TSBASEを算出して記憶しておき、減速時にクランクパルスPLSを取り込んで、周期(TS7+TS8)、(TS11+TS12)、(TS15+TS16)、並びに(TS2+TS3)を測定し、その測定結果とステージ周期基準値TSBASEとの比の値を除算部64で求めて、校正値としている。
【0051】
また、校正値算出のためのクランクパルスPLSの取り込みは、予め定めたエンジン回転数NEの上下限の範囲(例えば4000rpm〜6000rpm)で行うのがよい。さらに、エンジンの油温が予定値(例えば、80°C)以上であるとき、つまり暖機後に行うのがよい。フリクションの影響を受けにくいからである。
【0052】
図2は、前記校正値を使ったステージ周期の校正機能を含む回転変動値算出装置のブロック図である。ステージ周期算出部66は、図7の加算部11,12,13,14に相当する。このステージ周期算出部66で算出された周期(TS7+TS8)、(TS11+TS12)、(TS15+TS16)、並びに(TS2+TS3)は、除算部67に入力され、前記校正値K0708A、K1112A、K1516A、K0203Aで、それぞれ除算される。除算部67の出力は校正値K0708A、K1112A、K1516A、K0203Aで校正されたステージ周期であり、この校正されたステージ周期の(TS7+TS8)、(TS11+TS12)、(TS15+TS16)、並びに(TS2+TS3)は、図7の減算部15,16,17以降の演算に使用されて、回転変動値ΔTA、ΔTB、およびΔTCが算出される。
【0053】
こうして、本実施形態では、ステージ周期の基準値に基づいて校正値を予め決定し、実測されたステージ周期つまりリラクタ10の間隔を校正している。したがって、校正されたステージ周期に基づく燃料噴射制御を、リラクタ10の間隔のばらつきの影響を受けにくいものとすることができる。
【0054】
前記校正値の算出はエンジンの運転条件を監視していて、校正値算出条件が満足されたときに実行するようにしてもよいし、校正値算出条件を満足するようにエンジンを試運転させて、この試運転中に校正値を算出して記憶させておき、この校正値を採用して実際のエンジン制御を行ってもよい。
【0055】
なお、本発明は、エンジンの吸気負圧PBを検出する手段として内燃エンジンの回転変動値を算出する装置に校正値算出手段を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されない。内燃エンジン以外の駆動源によって回転される回転体の回転変動値を算出して駆動源の各種制御を行うシステムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】校正値算出装置の機能を示すブロック図である。
【図2】校正機能を有する回転変動値算出装置のブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る内燃エンジン用燃料噴射制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図4】リラクタの配置を示すロータの正面図である。
【図5】4サイクルエンジンの吸気負圧PBの変化をエンジンの回転数変化、吸気・圧縮・燃焼・排気の各行程、ならびにクランクパルスおよびステージとの関連で示した図である。
【図6】燃料噴射時間Toutの算出に使用されるPA予測値およびPB予測値の演算処理のフローチャートである。
【図7】基本演算の機能ブロック図である。
【図8】前処理演算の機能ブロック図である。
【図9】低回転PA予測演算の機能ブロック図である。
【図10】図6のステップS9の詳細を示すフローチャートである。
【図11】低回転時のPB予測値YPBの演算機能のブロック図である。
【図12】高回転PA予測演算の機能ブロック図である。
【図13】高回転時のPB予測値YPBの演算機能のブロック図である。
【図14】行程判別処理の機能ブロック図である。
【図15】従来の燃料噴射制御装置の要部機能を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1…クランクパルサ(センサ)、 2…スロットルセンサ、 3…水温センサ、 4…ECU、 5…燃料噴射弁、 8…回転体、 9…クランク軸、 10…リラクタ、 61,66…ステージ周期算出部(校正リラクタ間隔検出手段)、 62…エンジン回転数算出部、 63…基準値記憶部(基準値発生手段)、 64,67…除算部、 65…校正値算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の周面に所定間隔で配置された複数のリラクタと該リラクタを検出してパルス信号を出力するセンサとを有し、前記パルス信号の間隔に基づいて前記回転体の回転変動値を算出する回転体の位置補正制御装置において、
前記パルス信号の間隔を校正する校正値を予め算出する校正値決定手段を具備し、
前記校正値決定手段が、
前記複数のリラクタのうち、予め選択されたリラクタに対応して発生されるパルス信号の間隔に基づいて、前記選択されたリラクタの間隔を示す実測値を出力する校正リラクタ間隔検出手段と、
前記パルス信号に基づいて前記回転体の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記回転数に基づいて、前記選択されたリラクタの配置間隔の基準値を出力する基準値発生手段と、
前記実測値と前記基準値との比の値を算出して校正値を出力する算出手段とを含み、
該校正値決定手段による処理が、予定の校正値算出条件を満足した時に実行されることを特徴とする回転体の位置補正制御装置。
【請求項2】
前記回転体がエンジンで駆動されており、
前記校正値算出条件が、
前記エンジンが減速中であって、前記エンジンの回転数が予定範囲にあり、かつ前記エンジンが暖機された状態にあるときに満足されることを特徴とする請求項1記載の回転体の位置補正制御装置。
【請求項3】
前記回転体がエンジンで駆動されており、
前記複数のリラクタのうち、予め選択されたリラクタに対応して発生されるパルス信号の間隔に基づいてリラクタの間隔を示す実測値を出力するリラクタ間隔検出手段と、
前記実測値を前記校正値で校正する校正手段とを具備し、
前記校正値で校正されたリラクタの間隔に基づいてエンジンの回転変動値を算出するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の回転体の位置補正制御装置。
【請求項1】
回転体の周面に所定間隔で配置された複数のリラクタと該リラクタを検出してパルス信号を出力するセンサとを有し、前記パルス信号の間隔に基づいて前記回転体の回転変動値を算出する回転体の位置補正制御装置において、
前記パルス信号の間隔を校正する校正値を予め算出する校正値決定手段を具備し、
前記校正値決定手段が、
前記複数のリラクタのうち、予め選択されたリラクタに対応して発生されるパルス信号の間隔に基づいて、前記選択されたリラクタの間隔を示す実測値を出力する校正リラクタ間隔検出手段と、
前記パルス信号に基づいて前記回転体の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記回転数に基づいて、前記選択されたリラクタの配置間隔の基準値を出力する基準値発生手段と、
前記実測値と前記基準値との比の値を算出して校正値を出力する算出手段とを含み、
該校正値決定手段による処理が、予定の校正値算出条件を満足した時に実行されることを特徴とする回転体の位置補正制御装置。
【請求項2】
前記回転体がエンジンで駆動されており、
前記校正値算出条件が、
前記エンジンが減速中であって、前記エンジンの回転数が予定範囲にあり、かつ前記エンジンが暖機された状態にあるときに満足されることを特徴とする請求項1記載の回転体の位置補正制御装置。
【請求項3】
前記回転体がエンジンで駆動されており、
前記複数のリラクタのうち、予め選択されたリラクタに対応して発生されるパルス信号の間隔に基づいてリラクタの間隔を示す実測値を出力するリラクタ間隔検出手段と、
前記実測値を前記校正値で校正する校正手段とを具備し、
前記校正値で校正されたリラクタの間隔に基づいてエンジンの回転変動値を算出するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の回転体の位置補正制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−152910(P2006−152910A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344251(P2004−344251)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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