説明

回転式電子部品

【課題】回転つまみの回転に適度な粘りのある抵抗が得られると共にその抵抗が温度による影響を受け難い回転式電子部品を提供する。
【解決手段】ケース120と、ケース120の収納部127内に回転自在に収納され且つケース120上面から突出する軸部材150を取り付けてなる回転体70と、回転体70の回転によって電気的出力を変化する摺動子80等と、軸部材150に取り付けられる回転つまみ200とを具備する。ケース120の上面に、上方に突出して軸部材150を軸支する軸受突部131と、軸受突部131の周囲を囲むように上方に突出する囲み突部133とを設けることでグリス充填部135を形成し、グリス充填部135に充填されたグリス220内に軸部材150に設けた抵抗付与部159を挿入する。一方収納部127内に回転体70に弾接して回転に抵抗を付与する弾接バネ110を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転つまみの回転に適度なねっとりとした粘りのある抵抗を生じさせることができる回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式電子部品の回転つまみを回転した際のその回転感覚として、適度にねっとりとした粘りのある抵抗を生じさせることが望まれる場合がある。そして従来この種のねっとりとした抵抗を得るためにグリスが用いられてきた。即ちグリスを回転つまみの回転軸とこの回転軸を軸支する固定側部材の軸受との間等に塗布し、このグリスの粘度によって回転つまみの回転時のねっとり感を出すのである(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、前記ねっとりとした抵抗として大きな抵抗が望まれる場合、前記グリスの粘度を高くする必要があるが、グリスの粘度を高くすると、この回転式電子部品を低温の雰囲気内に設置した場合、グリスが硬くなり過ぎ、必要以上の回転抵抗が生じてしまう。一方低温時を考慮してグリスの粘度を低くすると、常温又は高温の雰囲気内では逆に回転抵抗が小さくなり過ぎてしまう。
【特許文献1】特開2004−172007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回転つまみの回転時に適度なねっとりとした粘りのある抵抗が得られると共にその抵抗が温度による影響を受け難い回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の発明は、ケースと、ケースの収納部内に回転自在に収納されると共にケース上面から突出する軸部材を取り付けてなる回転体と、前記回転体の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部と、前記ケース上面から突出する軸部材に取り付けられる回転つまみ、とを具備し、前記回転つまみの回転によってこれと一体に軸部材及び回転体が回転して電気的機能部の電気的出力が変化する回転式電子部品において、前記ケースの上面に、上方に突出して前記軸部材を軸支する軸受突部と、前記軸受突部の周囲を囲むように上方に突出する囲み突部とを設けることで、軸受突部と囲み突部との間にグリス充填部を形成し、前記グリス充填部に充填されたグリス内にグリス充填部の開口部から前記軸部材又は回転つまみに設けた抵抗付与部を挿入するとともに、前記ケースの収納部内に前記回転体側の部材又はケース側の部材に弾接することで回転体の回転に抵抗を付与する弾接部材を設置したことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0006】
本願請求項2に記載の発明は、前記抵抗付与部は、同心円筒上に位置する複数の円弧状板部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品にある。
【0007】
本願請求項3に記載の発明は、前記ケースの回転つまみ側にグリス充填部を設置し、前記ケースの収納部内の回転体よりも回転つまみ側に前記弾接部材を設置すると共に回転体の反対面側に前記電気的機能部を設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式電子部品にある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、グリスによってねっとり感を出す抵抗(グリス抵抗)と、弾接部材によって回転体の回転に付与される抵抗(弾接抵抗)とを同時に負荷したので、温度によって変化しない弾接抵抗によって、温度によって変化するグリス抵抗の変化を相対的に小さくできる。
またグリス抵抗は、グリス充填部に充填されたグリス内に抵抗付与部を挿入することによって付与されるので、単に回転つまみの回転軸とその軸受の間にグリスを塗布する場合に比べて、十分なグリスによってグリス抵抗を付与でき、従来に比べてさらに十分なねっとり感が得られるばかりか、大きな抵抗が得られる。
つまり本発明によれば、従来に比べてさらに十分なねっとり感が得られるので、例え弾接抵抗によってグリス抵抗が相対的に小さくなってもねっとり感としては十分なものが得られ、同時に温度によってねっとり感に変化は出るものの弾接抵抗によって回転抵抗が大きく変化することはなく、従って両抵抗のバランスを図ることで、回転つまみの回転時に適度なねっとりとした抵抗が得られると共にその抵抗が温度による影響を受け難い回転式電子部品が得られる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、抵抗付与部を構成する複数の円弧状板部材によってグリス充填部内に充填したグリスを攪拌するので、隣り合う円弧状板部材間の隙間に充填されているグリスが掻き回され、グリスの粘性を効率的に十分に回転つまみに伝達できる。この構成はねっとりとした強い抵抗を付与するのに好適である。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、グリス充填部から十分離れた位置に電気的機能部を設置したので、グリスが電気的機能部に達することを容易に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態にかかる押圧式電子部品付の回転式電子部品1を示す概略側断面図、図2は回転式電子部品1の上部の部品を上側から見た分解斜視図、図3は回転式電子部品1の下部の部品を上側から見た分解斜視図、図4は回転式電子部品1の上部の部品を下側から見た分解斜視図、図5は回転式電子部品1の下部の部品を下側から見た分解斜視図である。これらの図に示すように回転式電子部品1は、取付板10上に、回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)20と、支持台60と、摺動子80及び補強板100を取り付けた回転体70と、弾接部材(以下「弾接バネ」という)110を取り付けたケース120と、軸部材150と、押釦つまみ180と、回転つまみ200とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。なお以下の説明において、「上」とはケース120から見て回転つまみ200を設置する側を、「下」とはその反対側を言うものとする。
【0012】
取付板10は硬質板(この実施形態ではステンレス板であるが、他の金属板又は樹脂板等であっても良い)の所定位置に貫通する小孔からなる複数の取付部11を設けて構成されている。
【0013】
フレキシブル回路基板20は、可撓性を有する合成樹脂フイルム(この実施形態ではポリエチレンテレフタレートフイルム)の表面に所望の回路パターンを設けて構成されており、2枚の略同一形状(略円形)の第1,第2基板部21,23を重ね合せることで形成される押釦スイッチ部25と、押釦スイッチ部25の上部に設置される回転式電子部品部45とを具備している。第1,第2基板部21,23は連結部27で連結されていてこの連結部27の部分を折り曲げることで重ね合わされ、また第2基板部23と回転式電子部品部45とは連結部29で連結されていてこの連結部29の部分を折り曲げることで第2基板部23の上方に回転式電子部品部45が設置されている。第1基板部21からは帯状の引出部31が外方に向けて突出しており、図示しない他の電気回路に接続される。重ね合わせた第1,第2基板部21,23の中央には狭い間隔を介して一対の接点パターン33,35(図1参照)が対向することで、押圧スイッチ37が形成されている。一対の接点パターン33,35の周囲にはこれらを囲むようにスペーサ層39が形成されている。また押圧スイッチ37の上部(第2基板部23上)には弾性金属板をドーム状に形成した反転板41が設置されている。また重ね合わせた第1,第2基板部21,23の前記取付板10の各取付部11に対向する位置には、上下に貫通する小孔からなる挿通部43が設けられている。回転式電子部品部45は略円形であり、中央に下記する押釦つまみ180の軸部183を挿通する円形の挿通孔47を設け、挿通孔47の周囲上面(図3に点線で示す領域)に電気的機能部となる摺接パターン49を設け、またその外周の複数箇所(3ヶ所)から舌片状であって内部に略円形の貫通孔からなる挿通孔51を有する取付部53を設けて構成されている。なおこの実施形態の摺接パターン49はスイッチパターン(コードスイッチパターン)である。引出部31には摺接パターン49や前記一対の接点パターン33,35に接続された図示しない回路パターンが引き出されている。
【0014】
支持台60は合成樹脂(例えばABS樹脂)を略円板状に形成して構成されており、中央に下記する押釦つまみ180の軸部183を挿通する円形の挿通孔部61を設け、またその外周の複数箇所(3ヵ所)から舌片状であって内部に略円形の貫通孔からなる挿通孔部63を有する取付突部65を設けて構成されている。
【0015】
電気的機能部となる摺動子80は弾性金属板を略リング状に形成して構成されており、中央に円形の貫通孔からなる開口部81を設け、また略等間隔に設けた3つの基部83からそれぞれ円弧状に3組の摺動冊子85を突出して構成されている。各摺動冊子85の先端には弾接部87が設けられている。また基部83にはそれぞれ小孔からなる固定部89が設けられている。
【0016】
回転体70は合成樹脂(例えばPOM樹脂)を略円板状に成形して構成されており、その中央に上下に貫通する挿通部71を設け、また挿通部71の周囲の同一円弧上に3つの上下に貫通する取付穴73を設け、取付穴73の周囲の上面に円弧状であって上方向に突出する3つのガイド部75を設け、ガイド部75の周囲の上面に2つの小突起状の取付片77を設け、一方回転体70の下面の前記摺動子80の各固定部89に対向する位置にこれら固定部89に挿入される小突起状の摺動子取付部79を設けて構成されている。
【0017】
補強板100は硬質板(この回転式電子部品1ではステンレス板であるが、他の金属板又は樹脂板等であっても良い)を略リング状に形成して構成されており、中央に前記回転体70のガイド部75を挿入する開口101を設け、また前記回転体70の各取付片77に対向する位置に取付片77を挿入する小孔からなる取付固定部103を設けて構成されている。
【0018】
弾接バネ110は弾性金属板を略リング状に形成し、180°対向する位置に一対の取付用基部111を設けて各取付用基部111内に小孔からなる挿入固定部113を設け、基部111と基部111の間を結ぶ一対のアーム部115の中央をそれぞれ下方向(補強板100方向)に向けて突出するように屈曲させて弾接部117として構成されている。
【0019】
ケース120は合成樹脂(例えばABS樹脂)製であって下面が開放された略筒状に形成されている。即ち筒状の側壁部123の上面に上面部125を設けており、開放された下面側部分を収納部127としている。上面部125の中央には下記する軸部材150の軸部本体151を回動自在に挿通する軸受孔129が設けられている。軸受孔129の周囲には筒状の軸受突部131が突出しており、軸受突部131の外周を囲む位置にも筒状の囲み突部133が突出しており、軸受突部131と囲み突部133の間の凹部をグリス充填部135としている。つまりケース120の上面に上方に突出して軸部材150を軸支する軸受突部131と、軸受突部131の周囲を囲むように上方に突出する囲み突部133とを設けることで、軸受突部131と囲み突部133との間にグリス充填部135を形成している。一方側壁部123の下端辺の前記取付板10の各取付部11に対向する位置にはそれぞれ各取付部11に挿入される小突起状の固定部137が設けられ、また側壁部123の下端辺の各固定部137の間の位置には4つの凹部139が設けられてその内の3つの凹部139内に下方向に突出する小突起状の取付固定部141が設けられている。なお上面部125の下面の前記弾接バネ110に設けた一対の挿入固定部113にそれぞれ対向する位置には、図示はしないがこれら挿入固定部113に挿入される一対の小突起が設けられている。
【0020】
軸部材150は合成樹脂(例えばABS樹脂)の成形品であって、略円筒状の軸部材本体151の上端に略円板状のつまみ固定部153を設けて構成されている。軸部材150の中央にはこれを上下に貫通して下記する押釦つまみ180の軸部183を上下動自在に挿入(貫通)ガイドする他部品収納部となる挿通部155が設けられている。軸部材本体151の下端辺からは3つの取付係合部157が突設されている。各取付係合部157はそれぞれ前記回転体70の取付穴73にぴったり挿入されてその先端が回転体70の下面から突出する形状に形成されている。つまみ固定部153の下面の前記軸部材本体151を囲む位置であって且つ前記ケース120のグリス充填部135に挿入される位置には、下方向に向かって突出する複数枚(この例では4枚)の抵抗付与部159が設けられている。各抵抗付与部159は同心円筒上に位置する複数の円弧状板部材であって軸部材本体151を囲むように真下(軸部材150の回転中心軸L方向)から見て円弧状に湾曲して形成されている。言い換えれば各抵抗付与部159は1つの円筒の面の一部同士によって形成されている。
【0021】
つまみ固定部153の外周には上方向(押釦つまみ180方向)に向かって突出する略円筒状の側壁部161が設けられており、その中央部分は円形凹状の他部品収納部となるつまみ部収納部167となっている。つまり前記挿通部155とつまみ部収納部167を合わせて他部品収納部を構成している。つまみ固定部153の外周の略等間隔の複数箇所(この例では4ヶ所)にはつまみ固定部153の外周面を略矩形状に切り欠いてなる被係合部163が設けられている。被係合部163は軸部材150の半径方向外方に向かって開放されている切り欠きとなっている。また軸部材150のつまみ固定部153の外周面の1ヶ所には、略矩形状に切り欠いてなる凹状の位置決め部165が設けられている。位置決め部165は軸部材150の回転中心軸L方向に平行な方向に向かって直線状に設けられている。さらに軸部材150のつまみ固定部153の側壁部161にはこれをその上端面から凹状に切り欠く1つのつまみ位置決め部169が設けられている。
【0022】
押釦つまみ180は合成樹脂(例えばABS樹脂)の成形品であって、略円板状のつまみ部181の下面中央から棒状の軸部183を突出して構成されている。軸部183の下部は前記押圧スイッチ37を押圧する押圧部185となっている。つまみ部181にはその外周からリング状のつば部187が突出しており、その一部からはさらに外方に突出する舌片状の位置決め部189が設けられている。位置決め部189は前記軸部材150のつまみ位置決め部169に上下動自在に係合される形状に形成されている。
【0023】
図6は回転つまみ200を拡大して下面側から見た斜視図である。同図及び図1,図2,図4に示すように、回転つまみ200は合成樹脂(例えばPC/ABS樹脂)の成形品であり、下面が開放された略円筒状に形成され、側壁部201と上面部203とを有し、上面部203中央に開口205を設け、これによって中央に上下に貫通する軸部材収納部207を有して構成されている。回転つまみ200の軸部材収納部207の内周面207aには、この内周面207aから突出する凸部からなる4つの係合部209が設けられている。各係合部209はこの例では同一の矩形状であり、内周面207aから直方体形状に突出している。これら各係合部209は前記軸部材150の各被係合部163に係合する位置に設けられ、それぞれ回転つまみ200の回転中心軸L方向にスライド可能に係合する形状に形成されている。また回転つまみ200の軸部材収納部207の内周面207aには、この内周面207aから突出する凸部からなる1つの位置決め部211が設けられている。位置決め部211は矩形状であり、内周面207aから直方体形状に突出している。この位置決め部211は前記軸部材150の位置決め部165に係合する位置に設けられ、回転つまみ200の回転中心軸L方向にスライド可能に係合する形状に形成されている。
【0024】
図2に示す220は所望の粘度を有するグリスであり、グリス220は以下で説明するように、ケース120のグリス充填部135に適量が充填される。
【0025】
次に回転式電子部品1の組立方法を説明する。まず予め回転体70の上面に補強板100を載置し、その際回転体70の各取付片77を補強板100の各取付固定部103に挿入して各取付片77の先端を熱かしめして取り付ける。一方回転体70の下面に摺動子80を設置し、その際回転体70の各摺動子取付部79を摺動子80の各固定部89に挿入して各摺動子取付部79の先端を熱かしめして取り付ける。またケース120の上面部125の裏面に弾接バネ110を設置し、その際上面部125の裏面に設けた図示しない一対の小突起を弾接バネ110に設けた一対の挿入固定部113にそれぞれ挿入して前記小突起の先端を熱かしめして取り付ける。またケース120のグリス充填部135にその開口部135aから予め所定量のグリス220を充填する。また弾接バネ110にもグリスを塗布しておく。
【0026】
そして軸部材150の上に押釦つまみ180を設置し、その際押釦つまみ180の軸部183を軸部材150の挿通部155に上下動自在に挿入し、押釦つまみ180のつまみ部181を軸部材150のつまみ部収納部167内に収納し、同時に押釦つまみ180の位置決め部189を軸部材150のつまみ位置決め部169に係合して軸部材150に対して押釦つまみ180が回転しないようにする。
【0027】
次に押釦つまみ180を装着した軸部材150の上に回転つまみ200を被せ、軸部材150の上部を回転つまみ200の軸部材収納部207内に収納する。その際回転つまみ200の各係合部209を軸部材150の各被係合部163に、回転つまみ200の回転中心軸L方向にスライドして係合させる。同時に回転つまみ200の位置決め部211を軸部材150の位置決め部165に、回転つまみ200の回転中心軸L方向にスライドして係合させる。なおこのとき軸部材150の上端面は回転つまみ200の上面部203の裏面に当接し、この当接した位置(スライド方向の位置)に位置決めされる。またこのとき各係合部209の下端209aは、被係合部163の下端(つまみ固定部153の下面)から少し突出(露出)する。そして突出(露出)した各係合部209の下端209aを図1に示すように熱かしめして潰し、これによって係合部209と被係合部163とを固定し、回転つまみ200と軸部材150とを一体化する。
【0028】
次に押釦つまみ180及び回転つまみ200を一体化した軸部材150の軸部本体151の外表面、又はケース120の軸受孔129の内表面にグリスを塗布した上で、前記軸部材150をケース120上に配置し、軸部材150の軸部本体151をケース120の軸受孔129に回動自在に挿入する。このとき同時にグリス充填部135に充填されているグリス220内にグリス充填部135の開口部135aから軸部材150に設けた抵抗付与部159が挿入される。
【0029】
次にケース120の下面側からその収納部127内に、補強板100と摺動子80とを取り付けた回転体70を収納し、軸部材150下端の各取付係合部157を回転体70の各取付穴73に挿入し、回転体70の下面から突出する各取付係合部157を熱かしめして軸部材150と回転体70とを一体化する。
【0030】
次にケース120の下面にフレキシブル回路基板20の回転式電子部品部45を配置し、その下側に支持台60を設置し、その際ケース120の各取付固定部141を回転式電子部品部45の各挿通孔51と支持台60の各挿通孔部63に挿入し、支持台60の下面側に露出する各取付固定部141の先端を熱かしめして取り付ける。
【0031】
そして第1,第2基板部21,23を重ね合せた押釦スイッチ部25を、支持台60の下面側に配置し、その下側に取付板10を配置し、その際ケース120の各固定部137を押釦スイッチ部25の各挿通部43と取付板10の各取付部11とに挿入し、取付板10の下面から露出する各固定部137の先端を熱かしめして取り付ける。これによって回転式電子部品1の組立が完了する。なお上記組立手順は一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0032】
以上のように構成された回転式電子部品1において、回転つまみ200を回転すると、これと一体に軸部材150、回転体70、摺動子80、補強板100が回転し、摺動子80の各弾接部87が回転式電子部品部45の摺接パターン49上を摺動し、その電気的出力が変化する。そして回転つまみ200を回転した際、グリス充填部135に充填されたグリス220内を軸部材150の抵抗付与部159が移動することでグリス220によるねっとり感のある回転抵抗(グリス抵抗)が生じる。即ちグリス抵抗はグリス充填部135に充填されたグリス220内にグリス充填部135の上方から抵抗付与部159を挿入することによって付与されるので、単に回転つまみ200の回転軸とその軸受の間にグリスを塗布する場合に比べて、十分なグリス220によってグリス抵抗を付与でき、従来に比べてさらに十分なねっとり感が得られるばかりか、大きな抵抗が得られる。同時に補強板100上をグリスを塗布した弾接バネ110の弾接部117が弾接して移動することで弾接バネ110による回転抵抗(弾接抵抗)が生じる。この回転式電子部品1においては、グリス抵抗の強さと弾接抵抗の強さとを略50%ずつとしている。
【0033】
つまりグリス抵抗と弾接抵抗の両者によって回転つまみ200の回転に粘り(ねっとり感)があり且つ強い抵抗を付与できるが、その際、温度によって変化しない弾接抵抗によって、温度によって変化するグリス抵抗の変化を相対的に小さくすることができる。そして本回転式電子部品1によれば、上述のように従来に比べて十分なねっとり感が得られるので、例え弾接抵抗によってグリス抵抗が相対的に小さくなってもねっとり感としては十分なものが得られ、同時に温度によってねっとり感に変化は出るものの弾接抵抗があるので回転抵抗全体としては大きく変化することがなく、従って両回転抵抗(グリス抵抗と弾接抵抗)のバランスを図ることで、回転つまみ200の回転時に適度な強さのねっとりとした粘りのある抵抗が得られると共にその抵抗が温度による影響を受け難い回転式電子部品1が得られる。
【0034】
特にこの回転式電子部品1においては、抵抗付与部159を構成する複数の円弧状板部材によってグリス充填部135内に充填したグリス220が攪拌されるので、隣り合う円弧状板部材間の隙間に充填されているグリス220が掻き回され、グリス220の粘性を効率的に十分に回転つまみ200に伝達でき、ねっとりとした強い抵抗を付与できる。
【0035】
またこの回転式電子部品1においては、グリスを軸部材150(その軸部材本体151の外周面)とケース120の軸受突部131(軸受孔129の内周面)の間にも塗布しているので、さらにグリスによるねっとりとした強い抵抗を得ることができる。
【0036】
またこの回転式電子部品1においては、ケース120の回転つまみ200側にグリス充填部135を設置し、ケース120の収納部127内の回転体70よりも回転つまみ200側に弾接バネ110を設置すると共に回転体70の反対面側に電気的機能部である摺動子80等を設置したので、グリス充填部135から十分離れた位置に電気的機能部を設置でき、グリス220が電気的機能部に達することを容易に防止できる。
【0037】
一方押釦つまみ180のつまみ部181を押圧してこれを下降すれば、その押圧部185が押圧スイッチ37上に設置した反転板41を押圧してこれを反転し、押圧スイッチ37がオンする。前記押圧を解除すれば反転板41の弾性復帰力によって押釦つまみ180は元の位置に押し上げられ、押圧スイッチ37はオフする。
【0038】
なおこの回転式電子部品1においては、他部品収納部となる挿通部155及びつまみ部収納部167に、押釦つまみ180を回転つまみ200の回転中心軸L方向に向かって移動可能に収納すると共に、押釦つまみ180の他部品収納部から露出する押圧部185によって押圧される位置に押圧スイッチ37を配置したので押圧式電子部品付の回転式電子部品1を容易に構成できる。
【0039】
またこの回転式電子部品1においては、回転つまみ200の軸部材収納部207内に囲み突部133まで含めて収納するので、グリス抵抗付与のための機構によって回転式電子部品1が大型化することもない。言い換えれば回転つまみ200内の空きスペースを用いてグリス抵抗付与機構を設置している。
【0040】
なお上記回転式電子部品1においては、ケース120(又はケース120に取り付けられるケース120側の他の部材でもよい)に弾接バネ110を取り付けることで、弾接バネ110を回転体70(又は回転体70と一体に回転する回転体70側の他の部材、例えば補強板100)に弾接させる構造としたが、その代りに弾接バネ110を回転体70(又は回転体70と一体に回転する回転体70側の他の部材)に取り付けることで、弾接バネ110をケース120(又はケース120に取り付けられるケース120側の他の部材でもよい)に弾接させる構造としても良い。
【0041】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記回転式電子部品1では、押釦つまみ180や押圧スイッチ37等によって、回転式電子部品の中央に押圧式電子部品を設置したが、押圧式電子部品の設置はこれを省略しても良い。また上記回転式電子部品1においては、回転体70と回転つまみ200と軸部材150とをそれぞれ別部品で構成したが、軸部材150を回転体70又は回転つまみ200と一体成形によって設けても良い。要はケースの収納部内に回転体を回転自在に収納すると共に回転体に取り付けた軸部材をケース上面から突出する構成であれば良い。また上記回転式電子部品1においては、軸部材150に抵抗付与部159を設けたが、回転つまみ200に抵抗付与部を設けても良い。また回路基板はフレキシブル回路基板20に限定されず、硬質の回路基板であっても良い。また電気的機能部の構成も摺接パターン49と摺動子80の組み合わせの構造に限定されず、他の種々の構成であってもよく、要は回転体の回転によって電気的出力を変化する構成であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】回転式電子部品1の概略側断面図である。
【図2】回転式電子部品1の上部の部品を上側から見た分解斜視図である。
【図3】回転式電子部品1の下部の部品を上側から見た分解斜視図である。
【図4】回転式電子部品1の上部の部品を下側から見た分解斜視図である。
【図5】回転式電子部品1の下部の部品を下側から見た分解斜視図である。
【図6】回転つまみ200を拡大して下面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 回転式電子部品
10 取付板
20 フレキシブル回路基板(回路基板)
49 摺接パターン(電気的機能部)
60 支持台
70 回転体
80 摺動子(電気的機能部)
100 補強板
110 弾接バネ(弾接部材)
120 ケース
127 収納部
131 軸受突部
133 囲み突部
135 グリス充填部
135a 開口部
150 軸部材
159 抵抗付与部
180 押釦つまみ
200 回転つまみ
220 グリス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
ケースの収納部内に回転自在に収納されると共にケース上面から突出する軸部材を取り付けてなる回転体と、
前記回転体の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部と、
前記ケース上面から突出する軸部材に取り付けられる回転つまみ、とを具備し、
前記回転つまみの回転によってこれと一体に軸部材及び回転体が回転して電気的機能部の電気的出力が変化する回転式電子部品において、
前記ケースの上面に、上方に突出して前記軸部材を軸支する軸受突部と、前記軸受突部の周囲を囲むように上方に突出する囲み突部とを設けることで、軸受突部と囲み突部との間にグリス充填部を形成し、前記グリス充填部に充填されたグリス内にグリス充填部の開口部から前記軸部材又は回転つまみに設けた抵抗付与部を挿入するとともに、
前記ケースの収納部内に前記回転体側の部材又はケース側の部材に弾接することで回転体の回転に抵抗を付与する弾接部材を設置したことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項2】
前記抵抗付与部は、同心円筒上に位置する複数の円弧状板部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品。
【請求項3】
前記ケースの回転つまみ側にグリス充填部を設置し、前記ケースの収納部内の回転体よりも回転つまみ側に前記弾接部材を設置すると共に回転体の反対面側に前記電気的機能部を設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−152117(P2009−152117A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330292(P2007−330292)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】