説明

回転検出装置

【課題】 検出精度を良好な状態に維持したまま、回転体に設けられる回転磁石を回転体の外周面または内周面に配置した回転軸貫通構造に適した回転検出装置を提供すること。
【解決手段】 回転軸11に取り付けた円形回転磁石12と、磁気センサ13A等で回転検出装置10を構成した。磁気センサ13A等を、バイアス磁石14と、バイアス磁石14の磁極面に配置される基板15と、基板15の中心点Oで直交して延びる2つの軸に沿い中心点Oからそれぞれ同一距離の位置に設定された4つの領域15a等に、中心点Oを中心として点対称に配置された磁気抵抗効果素子a等で構成した。そして、磁気センサ13A等の一方の軸が円形回転磁石12の外周面で形成される円の接線と平行し、他方の軸の傾斜角度が互いに同じになるようにして、磁気センサ13A等を円形回転磁石12の外周側で周方向に90度離れた位置に設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転方向、回転数および回転角を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンコーダやポテンショメータ等の回転検出装置に、回転する被検査物の回転角度を検出する磁気センサを用いることはよく知られている。そして、このような磁気センサに、磁気抵抗効果素子を使用することも知られている。磁気抵抗効果素子は外部磁界の変化により抵抗値が変化する特性を備えており、複数個の磁気抵抗効果素子でブリッジ回路を組むことにより抵抗値の変化を電圧変化として出力する。磁気抵抗効果素子を備えた回転検出装置は、このブリッジ回路から出力される電圧の変化によって、被検査物である回転体の回転方向、回転数および回転角を検出できるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この回転検出装置の磁気センサは、4つの磁気抵抗効果素子が配置された基板をバイアス磁石の磁極面に対向させて構成されている。各磁気抵抗効果素子は、基板の中心点で直交する二つの軸に沿った位置に中心点を挟んでそれぞれ2つの磁気抵抗効果素子が向かい合うようにして配置され、向かい合った各1組の磁気抵抗効果素子がハーフブリッジ回路を形成するように接続されている。また、基板は、基板の中心点がバイアス磁石の磁気的中心に重なるようにしてバイアス磁石に対向して配置されている。そして、被検査物である回転体の先端に2極の回転磁石が設けられ、この回転磁石に対向させて磁気センサを配置することにより回転検出装置が構成される。
【0004】
この回転検出装置によると、バイアス磁石を用いることにより、磁気センサの精度を高めることができると同時に、回転体に設置された回転磁石の磁界サイクルと同じ周期で互いに位相差を持つ正弦波信号および余弦波信号を磁気センサに出力させることができるため、回転体の回転方向、回転数および回転角を検出することができる。すなわち、一定方向の磁界をバイアス磁界として印加することで、バイアス磁界の方向が磁化軸となって安定して不安定な磁化軸が消える。そして、安定したバイアス磁界と、回転磁石による外部磁界との合成磁界による歪のない周期的な出力信号が得られる。また、バイアス磁界を磁気抵抗効果素子に印加することにより、2極の回転磁石からの外部磁界の磁界周期と同じ周期の出力信号を磁気センサに出力させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−208025号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、前述した回転検出装置においては、出力信号である同じ振幅の正弦波と余弦波とを正確に得るためには、磁気センサを回転磁石の磁極面に対向させて配置する必要があり、磁気センサを回転磁石の磁極面に対して傾斜した状態で配置すると、検出精度が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、その目的は、検出精度を良好な状態に維持したまま、回転体に設けられる回転磁石を回転体の外周面または内周面に配置した回転軸貫通構造に適した回転検出装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載において、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係る回転検出装置の構成上の特徴は、回転体(11,21,31,41)に取り付けられた2極の円形回転磁石(12,22,32,42,52,62,72,82)と、円形回転磁石の磁界の変化を検出する2個の磁気センサ(13A,13B,23A,23B,33A,33B,43A,43B,53,63)と、2個の磁気センサの検出結果から円形回転磁石の回転角を演算する演算処理回路(19,49)とを備えた回転検出装置(10,20,30)であって、磁気センサは、バイアス磁石(14)と、中心点をバイアス磁石の磁極面の磁気中心に合わせた状態で磁極面に対向させた基板(15,45,55,65)と、基板の中心点で直交し磁極面に平行に延びる2つの軸に沿い中心点からそれぞれ同一距離の位置に設定された4つの領域(15a〜15d,45a〜45d,65a〜65d)に、それぞれ同一形状に形成された磁気抵抗効果素子(a〜d,a1〜d1,a2〜d2,a3〜d3)とを備え、2つの軸の各軸に沿ってそれぞれ設けた2つの磁気抵抗効果素子を直列に接続して2つのブリッジ回路を構成し、2つのブリッジ回路の両端に電源電圧を印加して、2つの磁気抵抗効果素子の接続点からそれぞれ出力波形信号を取り出すようにし、演算処理回路は、出力波形信号を用いて円形回転磁石の回転角を演算するようにし、各磁気センサの2つの軸のうちの一方の軸が円形回転磁石の外周面で形成される円の接線と平行であり、かつ各磁気センサの2つの軸のうちの他方の軸の円形回転磁石の回転中心軸に対する傾斜角度が互いに同じになるようにして、2個の磁気センサを、円形回転磁石の外周面よりも外側で円形回転磁石の回転中心軸を中心とした周方向に互いに90度離れた位置に設置したことにある。
【0009】
本発明に係る回転検出装置では、2個の磁気センサを円形回転磁石の外周面よりも外側に配置させるため、円形回転磁石を回転体の端部でなく回転体の軸方向の中央側部分の外周面や内部に設けた回転軸貫通構造にしても、磁気センサの配置が容易になる。また、磁気センサを2個用いるとともに2個の磁気センサを周方向に互いに90度離れた位置に設置したため、演算処理回路の演算処理によって各磁気センサの出力波形信号を補償することができ、磁気センサを円形回転磁石の磁極面に対向させて配置しなくとも回転体の回転方向、回転数および回転方向の位置を精度よく検出することができる。
【0010】
さらに、各磁気抵抗効果素子を同一形状に形成したため、磁気抵抗効果素子の形状にむらが生じなくなりさらに磁気センサの検出精度がよくなる。なお、本発明においては、各磁気センサの2つの軸のうちのそれぞれの他方の軸の円形回転磁石の回転中心軸に対する傾斜角度を任意に設定することができるが、他方の軸は円形回転磁石の回転中心軸に平行させるか、または直交させることがより好ましい。他方の軸を円形回転磁石の回転中心軸に平行させた場合には、回転検出装置を円形回転磁石の回転方向の径方向に対して小型化できる。他方の軸を円形回転磁石の回転中心軸に直交させた場合には、回転検出装置を円形回転磁石の回転中心軸方向に対して小型化できる。
【0011】
また、円形回転磁石の2極は、円形回転磁石の表面における回転方向に沿った部分に1個のS極と1個のN極が配置されていることが好ましく、これに加えて、磁気センサにバイアス磁石が設けられていることにより、円形回転磁石が1回転したときに、磁気センサに1周期の波形で位相差をもつ正弦波信号と余弦波信号を出力させることができる。これによって、磁気センサの検出精度が高まる。さらに、基板は1つのもので構成することが好ましく、これによると磁気抵抗効果素子を正確に設定位置に配置できるためさらに磁気センサの検出精度がよくなる。なお、2個の磁気センサの配置である円形回転磁石の回転中心軸を中心として周方向に互いに90度離れた位置は、正確に90度である場合に限らず略90度であればよいことは言うまでもない。
【0012】
また、本発明に係る回転検出装置の他の構成上の特徴は、演算処理回路は、2つの軸の一方がX軸で他方がY軸であるとしたときに、一方の磁気センサ(13B,23B,33B,43B)のX軸に対応した出力波形信号と他方の磁気センサ(13A,23A,33A,43A)のY軸に対応した出力波形信号とを演算するとともに、他方の磁気センサのX軸に対応した出力波形信号と一方の磁気センサのY軸に対応した出力波形信号とを演算して、互いに同じ振幅を有する正弦波信号および余弦波信号をそれぞれ取り出し、取り出した正弦波信号および余弦波信号を用いて逆正接演算することにある。
【0013】
この場合、2個の磁気センサの他方の磁気センサの磁極面の位置を維持したまま、一方の磁気センサのX軸とY軸とを他方の磁気センサのX軸とY軸とに対して中心点を中心として90度回転した状態で、2個の磁気センサから演算処理回路に出力波形信号をそれぞれ出力することにより、同じ振幅を有する正弦波信号および余弦波信号を取り出すようにすることが好ましい。
【0014】
このような回転検出装置における2個の磁気センサから出力される波形信号の補償は、一方の磁気センサの2つのブリッジ回路の出力と、他方の磁気センサの2つのブリッジ回路の出力波形信号とを、例えば、差動増幅器を備えた演算処理回路に通すことでできる。2個の磁気センサから出力される波形信号を演算処理回路に通すことでsin信号(正弦波信号)とcos信号(余弦波信号)を得ることができる。そして、sin信号とcos信号を用いて逆正接演算(Arctan)を行うことにより円形回転磁石の回転角を得ることができる。
【0015】
例えば、2個の磁気センサのX軸とY軸とをそれぞれ同じ方向にして、他方の磁気センサにおける円形回転磁石の回転中心軸方向(Y方向)の磁界波形をαsinθとしたときに、円形回転磁石の外周円の接線に平行する方向(X方向)の磁界波形はβcosθとなり、一方の磁気センサにおける円形回転磁石の回転中心軸方向(Y方向)の磁界波形はαsin(θ+π/2)=αcosθとなり、円形回転磁石の接線に平行する方向(X方向)の磁界波形はβcos(θ+π/2)=−βsinθとなる。このとき、他方の磁気センサだけでもαsinθとβcosθまたはαcosθと−βsinθ、すなわちsin信号とcos信号を得ることができるため、逆正接演算を行うことにより円形回転磁石の回転角度を表す信号を得ることができる。しかしながら、この場合Arctan(αsinθ/βcosθ)となりα/βの補正が必要になる。
【0016】
また、仮に、磁気センサが配置される点が、円形回転磁石の回転中心軸方向で変わった場合、変更前と変更後との両位置での発生する磁界が変化する。この場合、前述した比α/βが異なってくるため、回転検出装置の作動時に、円形回転磁石が回転中心軸に沿ってずれて、円形回転磁石と磁気センサとの間隔が変化することは検出の精度上問題となる。しかしながら、前述した他方の磁気センサのαsinθと一方の磁気センサの−βsinθおよび他方の磁気センサのβcosθと一方の磁気センサのαcosθを演算処理回路に通すことで互いに補償し合い、比α/βが異なってくることを防止できる。この場合に、αsinθ−(−βsinθ)では、(α+β)sinθが得られるが、βcosθ−αcosθでは、(α+β)cosθが得られない。
【0017】
このため、一方の磁気センサを磁極面の位置を維持した状態でそのX軸とY軸とを90度回転させることによって電位レベルを逆にできる。この結果、前述したαcosθが−αcosθとなって(α+β)cosθを得ることができ、回転角検出の計算式がArctan((α+β)sinθ/(α+β)cosθ)となって、比α/βの影響が生じなくなる。この結果、円形回転磁石に対する2個の磁気センサの位置を円形回転磁石の回転中心軸方向に変更しても検出値に影響が出なくなり、作動時に円形回転磁石が回転体の軸方向にずれても信号精度が低下することがなくなる。すなわち、電位レベルを反転させる操作を行うとともに、2個の磁気センサの出力波形信号を演算処理回路に通したのちに逆正接演算を行うことにより円形回転磁石に位置ずれが生じても円形回転磁石の正確な回転角を得ることができる。本発明は、一対のブリッジ回路に電源電圧を供給するための一対の電源端子が共通に設けられている場合に有効である。
【0018】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、2個の磁気センサの各一方のブリッジ回路の電源電圧の印加方向を一致させるとともに、2個の磁気センサの各他方のブリッジ回路の電源電圧の印加方向を異ならせた状態で、2個の磁気センサから演算処理回路に出力波形信号をそれぞれ出力することにより、同じ振幅を有する正弦波信号および余弦波信号を取り出すようにしたことにある。このように、一方の磁気センサの2つのブリッジ回路のうちの一方のブリッジ回路の電源電圧の印加方向を異ならせる、すなわち電源とグランドとの端子を入れ替えることによってもそのブリッジ回路の電位レベルを反転することができる。本発明は、ブリッジ回路に電源電圧を供給するための一対の電源端子が各ブリッジ回路に対してそれぞれ存在する場合に有効である。
【0019】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、一方の磁気センサの一方のブリッジ回路の電位レベルを演算処理回路により反転させることにより、同じ振幅を有する正弦波信号および余弦波信号を取り出すようにしたことにある。この場合、演算処理回路に、一方の磁気センサの一方のブリッジ回路からの出力信号、例えば、αcosθを、−αcosθに変換する変換回路を設ける。これによっても、回転検出の計算式Arctan((α+β)sinθ/(α+β)cosθ)を得ることができる。本発明によると、演算処理回路は複雑化するが、上述した一方の磁気センサを回転させる場合と同様、電源用端子数の少ない磁気センサを用いることができる。
【0020】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、正弦波信号は、互いに同相である一方の磁気センサのX軸に対応した出力波形信号と他方の磁気センサのY軸に対応した出力波形信号との和であり、かつ余弦波信号は、互いに同相である他方の磁気センサのX軸に対応した出力波形信号と一方の磁気センサのY軸に対応した出力波形信号との和であることにある。
【0021】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、ブリッジ回路は、磁気抵抗効果素子(a〜d,a3〜d3)を、中心点を中心として90度ずつ回転したときに互いの位置が重なるようにし4つの領域(15a〜15d,65a〜65d)に1個ずつ形成し、2つの軸のそれぞれの軸に位置する2つの磁気抵抗効果素子を接続して構成されるハーフブリッジ回路であることにある。これによると、入力抵抗値を上げることができ、かつ配線を簡略化できる。また、各磁気抵抗効果素子の配置を基板の中心点を中心として各磁気抵抗効果素子を90度ずつ回転したときに互いの位置が重なるようにしたため、磁気抵抗効果素子の配置によるむらが生じなくなりさらに磁気センサの検出精度がよくなる。
【0022】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、ブリッジ回路は、磁気抵抗効果素子(a1〜d1,a2〜d2)を、各軸に位置するものが中心点を中心として点対称になるようにするか、または各軸を挟んで配置されるものどうしが線対称になるようにして4つの領域(45a〜45d)に2個ずつ形成し、2つの軸のそれぞれの軸に位置する4つの磁気抵抗効果素子をそれぞれ接続して構成されるフルブリッジ回路であることにある。これによると、前述したハーフブリッジ回路を用いた場合と比較して中点電位の安定性の向上と信号出力が2倍になる効果が生じる。
【0023】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、磁気抵抗効果素子(a〜b,a1〜d1,a2〜d2)を2つの軸に対して45度傾斜させたことにある。これによると、各磁気抵抗効果素子に2つの軸の双方の方向に沿った磁界がかかるため、磁気抵抗効果素子としてAMR素子を用いた場合、より精度のよい検出が可能になる。
【0024】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、磁気抵抗効果素子が、AMR素子またはGMR素子であることにある。
【0025】
AMR素子(異方性磁気抵抗効果素子)の磁化の方向は、軟磁性体材料(例えば、Ni−Fe、Ni−Co、Ni−Fe−Co)の異方性と外部磁界とのバランスによって決定される。異方性は、磁気抵抗効果素子の形成後に誘起される結晶異方性と形状異方性とが結合したものである。外部磁界が印加されていないときには、磁化の方向はAMR素子の異方性によって定められる磁化容易軸にそった2つの方向のいずれか一方になる。そして、外部磁界が印加されると、磁化の方向は外部磁界に近づく。このため、AMR素子を用いた磁気センサの場合、回転磁界で飽和磁界以上の強度の外部磁界を印加したときに、磁化の方向は外部磁界の方向が支配的になり周期的な抵抗変化が得られるが、外部磁界が飽和磁界以下の強度の場合、磁化の方向は、不安定な異方性が影響し外部磁界の方向からずれて出力信号に歪が誘発される。
【0026】
本発明に係る回転検出装置では、バイアス磁石を用いて、磁化を揃える一定方向の磁界をバイアス磁界として印加することで、バイアス磁界の方向が磁化軸となって安定するようにしている。また、バイアス磁界を印加することにより外部磁界の磁界周期と同じ周期の出力信号を得ることができる。GMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)を用いる場合も、軟磁性体材料を用いた場合に前述した原理に基づいて、良好な検出が可能になる。
【0027】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、バイアス磁石を焼結磁石または樹脂磁石で構成したことにある。これによると、蒸着等の薄膜磁石を用いた磁気センサでは得られない磁界強度を得ることができ、外部磁界強度に対する耐性を発揮することができる。
【0028】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、円形回転磁石を、円形回転磁石の回転中心軸に平行に2分するように分極して径方向に2極着磁され、軸状の回転体の外周部に設けられるリング状の磁石で構成したことにある。これによると、円形回転磁石が、回転中心軸に平行に分極して径方向に2極着磁されているため、歪のない磁石磁界が生じるようになり回転検出装置の精度がさらに向上する。
【0029】
また、本発明に係る回転検出装置のさらに他の構成上の特徴は、円形回転磁石を、円形回転磁石の回転中心軸に平行に2分するように分極して径方向に2極着磁され、円筒軸状の回転体の内部に設けられる円板状または円柱状の磁石で構成したことにある。これによると、円形回転磁石が、回転中心軸に平行に分極して径方向に2極着磁されているため、歪のない磁石磁界が生じるようになり回転検出装置の精度がさらに向上する。また、円形回転磁石を、円筒軸状の回転体の内部に円形回転磁石を取り付けることができる。円筒軸状の回転体の内部に円形回転磁石を取り付ける場合には、磁気センサは、回転体の外部に設置する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回転検出装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示した回転検出装置の平面図である。
【図3】図1に示した回転検出装置の正面図である。
【図4】回転検出装置が備える磁気センサを示した斜視図である。
【図5】図4に示した磁気センサの外観斜視図である。
【図6】図5の6−6断面図である。
【図7】図4に示した磁気センサのハーフブリッジ回路である。
【図8】外部磁界と磁気センサの出力との関係を示したグラフである。
【図9】外部磁界が回転磁界のときの外部磁界と磁気センサの出力との関係を示したグラフである。
【図10】円形回転磁石の外周側に配置された磁気センサの位置と磁界の方向とを示した説明図である。
【図11】一方の磁気センサの位置での円形回転磁石の回転角度と一方の磁気センサが検知する磁界の大きさとの関係を示したグラフである。
【図12】他方の磁気センサの位置での円形回転磁石の回転角度と他方の磁気センサが検知する磁界の大きさとの関係を示したグラフである。
【図13】磁気センサの高さ位置を変えたときの回転軸方向の磁界と仮想同心円の接線方向の磁界との関係を示したグラフである。
【図14】2個の磁気センサからの出力を演算処理する演算回路を示しており、(a)は、説明の便宜上想定した図であり、(b)は実際の回路を示した図である。
【図15】磁気センサを回転させることにより電位レベルを反転する方法を示しており、(a)は回転前の磁気センサの説明図、(b)は回転後の磁気センサの説明図である。
【図16】(a)、(b)は、図14(b)の演算回路の変形例を示す回路図である。
【図17】実施例1に係る回転検出装置を示した斜視図である。
【図18】実施例1の回転検出装置における外部磁界と磁気センサの出力との関係を示したグラフである。
【図19】実施例1の回転検出装置において磁気センサの高さを円形回転磁石の上面と同じにしたときの特性を示しており、(a)は円形回転磁石の回転角度と2個の磁気センサの出力との関係を示し、(b)は円形回転磁石の回転角度と2個の磁気センサの差動後の出力との関係を示し、(c)は円形回転磁石の回転角度と角度誤差との関係を示している。
【図20】実施例1の回転検出装置において磁気センサの高さを円形回転磁石の上面から3mmの位置にしたときの特性を示しており、(a)は円形回転磁石の回転角度と2個の磁気センサの出力との関係を示し、(b)は円形回転磁石の回転角度と2個の磁気センサの差動後の出力との関係を示し、(c)は円形回転磁石の回転角度と角度誤差との関係を示している。
【図21】実施例2の回転検出装置において磁気センサの高さを円形回転磁石の上面から3mmの位置にしたときの特性を示しており、(a)は円形回転磁石の回転角度と2個の磁気センサの出力との関係を示し、(b)は円形回転磁石の回転角度と2個の磁気センサの差動後の出力との関係を示し、(c)は円形回転磁石の回転角度と角度誤差との関係を示している。
【図22】本発明の第2実施形態に係る回転検出装置を示した斜視図である。
【図23】図22に示した回転検出装置の平面図である。
【図24】図22に示した回転検出装置の正面図である。
【図25】第3実施形態に係る回転検出装置が備える磁気センサを示した斜視図である。
【図26】第3実施形態に係る回転検出装置が備える磁気センサのフルブリッジ回路を示した図である。
【図27】第3実施形態に係る回転検出装置が備える2個の磁気センサから出力される信号を演算するための演算回路を示した図である。
【図28】第3実施形態の変形例に係る回転検出装置が備える磁気センサを示した斜視図である。
【図29】第4実施形態に係る回転検出装置が備える磁気センサを示した斜視図である。
【図30】軟磁性体材料からなるGMR素子を用いた磁気センサのフルブリッジ回路を示した図である。
【図31】大きな挿通穴を備えたリング状の円形回転磁石を回転軸の外周に取り付けた状態を示した斜視図である。
【図32】径方向に2極着磁した円板状の円形回転磁石を示した斜視図である。
【図33】隣接する外周側と内周側とが異なる極になるようにして外周側と内周側とを径方向に2極着磁したリング状の円形回転磁石を示した斜視図である。
【図34】隣接する左右部分が異なる極になるようにして上部側と下部側とを面方向に2極着磁した円板状の円形回転磁石を示した斜視図である。
【図35】隣接する左右部分が異なる極になるようにして上部側と下部側とを面方向に2極着磁したリング状の円形回転磁石を示した斜視図である。
【図36】図32に示した円形回転磁石の特性を示しており、(a)は磁束線を表した図であり、(b)は円形回転磁石の回転角度と、円形回転磁石を備えた磁気センサが検知する磁界の大きさとの関係を示したグラフである。
【図37】図33に示した円形回転磁石の特性を示しており、(a)は磁束線を表した図であり、(b)は円形回転磁石の回転角度と、円形回転磁石を備えた磁気センサが検知する磁界の大きさとの関係を示したグラフである。
【図38】図34に示した円形回転磁石の特性を示しており、(a)は磁束線を表した図であり、(b)は円形回転磁石の回転角度と、円形回転磁石を備えた磁気センサが検知する磁界の大きさとの関係を示したグラフである。
【図39】図35に示した円形回転磁石の特性を示しており、(a)は磁束線を表した図であり、(b)は円形回転磁石の回転角度と、円形回転磁石を備えた磁気センサが検知する磁界の大きさとの関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。図1ないし図3は、同実施形態に係る回転検出装置10を示しており、この回転検出装置10は、本発明に係る回転体としての回転軸11の回転方向、回転数および回転角を検出するための装置である。回転検出装置10は、回転軸11の上下両端からともに所定距離を保って回転軸11の外周面に取り付けられた円形回転磁石12と、図示しない支持装置によって支持された円形回転磁石12の外周側に配置された2個の磁気センサ13A,13Bとを備えている。回転軸11は、例えば、モータの回転軸、自動車や船舶等のステアリング軸またはロボットアームの関節部等で構成される被検査物である。
【0032】
円形回転磁石12は、中心に小さな挿通穴12aが形成された略リング状に形成されており、挿通穴12aに回転軸11を挿通させて回転軸11の外周面に取り付けられている。この円形回転磁石12は、回転中心軸(この場合、回転軸11になる)を挟んで円形回転磁石12を2等分する面を境界として分極して径方向に2極着磁されており、一方がS極、他方がN極になっている。磁気センサ13A,13Bは、同じセンサからなっており、それぞれ、図4に示したように、バイアス磁石14と、基板15と、基板15に形成された4個の磁気抵抗効果素子a,b,c,dとで構成されている。
【0033】
バイアス磁石14は、焼結磁石または樹脂磁石で構成される円板状の磁石からなる。バイアス磁石14は、厚み方向を2等分する面を境界として分極されて面に対して垂直方向に2極着磁されており、一方がS極、他方がN極になっている。基板15は、シリコン、ガラス、セラミック等の絶縁体材料からなる薄板状の四角板で構成されている。磁気抵抗効果素子a,b,c,dは、Ni−Fe、Ni−CoまたはNi−Fe−CoからなるAMR素子(異方性磁気抵抗効果素子)で構成されており、フォトリソグラフ法で成膜されることにより、基板15の表面に形成されている。
【0034】
基板15には、説明の便宜上、X軸(図4において基板15を上下に2分する一点鎖線で示した水平軸)と、X軸に直交するY軸(図4において基板15を左右に2分する一点鎖線で示した垂直軸)とが定義されている。そして、X軸とY軸とが交差する中心点Oを中心としてX軸に沿った部分の両側に正方形の領域15a,15bが、Y軸に沿った部分の両側に正方形の領域15c,15dがそれぞれ中心点Oから同一距離になるようにして設けられている。
【0035】
磁気抵抗効果素子a,b,c,dは、それぞれ細長い四角形に形成されており、X軸およびY軸に対して45度傾斜してX軸とY軸とにおける同じ軸上に位置するもの同士が中心点Oを中心として互いに点対称になるようにして領域15a,15b,15c,15d内に1個ずつ配置されている。すなわち、各磁気抵抗効果素子a,b,c,dは、それぞれ基板15上で中心点Oを中心として90度ずつ回転して位置を変更すると、位置を変更する前の他の磁気抵抗効果素子a,b,c,dのいずれかが位置していた部分にそれぞれが位置するように配置されている。
【0036】
前記のような構成の磁気センサ13A,13Bは、実際には、図5の外観斜視図および図6の概略断面図に示すように、モールドパッケージ16a内にてリードフレーム16bの下面および上面にバイアス磁石14および基板15を接着させている。モールドパッケージ16aはエポキシ樹脂からなり、リードフレーム16bは導電体、例えば銅からなっている。モールドパッケージ16aの外部には、一対の電源用端子18a,18bおよび一対の信号出力端子18c,18dが設けられている。また、図7に示すように、磁気抵抗効果素子a,bおよび磁気抵抗効果素子c,dは、モールドパッケージ16a内にてそれぞれ直列に接続された一対のハーフブリッジ回路を構成している。
【0037】
磁気抵抗効果素子a,bの両端および磁気抵抗効果素子c,dの両端はそれぞれ共通に接続され、磁気抵抗効果素子a,cの接続点には電源用端子18aから電源電圧Vccが供給されるようになっている。また、磁気抵抗効果素子b,dの接続点は電源用端子18bを介して接地されるようになっている。磁気抵抗効果素子a,bの接続点は信号出力端子18cに接続され、信号出力端子18cから信号出力OutXが取り出されるようになっている。磁気抵抗効果素子c,dの接続点は信号出力端子18dに接続され、信号出力端子18dから信号出力OutYが取り出されるようになっている。この磁気抵抗効果素子a,b,c,dが形成された基板15は、中心点Oをバイアス磁石14の磁極面の磁気的中心に一致させてバイアス磁石14のN極側に対向している。この場合、バイアス磁石14のS極側を基板15に対向させてもよい。
【0038】
そして、磁気センサ13A,13Bは、図2および図3に示したように、円形回転磁石12と同軸で円形回転磁石12の直径よりもやや大きな直径の仮想同心円17の接線に沿うとともに、円形回転磁石12よりも上方の位置に、互いの間隔を仮想同心円17の周方向に90度の角度を保って配置されている。また、磁気センサ13Aは、X軸を仮想同心円17の接線に沿わせ、Y軸を回転軸11に平行に配置させている。磁気センサ13Bは、Y軸を仮想同心円17の接線に沿わせ、X軸を回転軸11に平行に配置させている。このように、磁気センサ13BのX軸とY軸との方向を磁気センサ13AのX軸とY軸との方向とは異なるようにする理由は後述する。なお、図3では、磁気センサ13Bを表すため、回転軸11を破線で示している。
【0039】
つぎに、このように構成された回転検出装置10における円形回転磁石12からの外部磁界と磁気センサ13Aの出力との関係を説明する。図8は、磁気センサ13AにX軸方向から円形回転磁石12による外部磁界Hを印加した場合における、外部磁界Hと、一対の出力信号のうちの出力値が変化する側の出力Vo(図7のOutY)との関係を示している。図示のように、出力カーブは、外部磁界Hがバイアス磁石14によるバイアス磁界強度−Hbからバイアス磁界強度Hbにほぼ相当する磁界強度の範囲にあるときは直線に近い線形を描き、外部磁界Hがバイアス磁界強度−Hb以下またはバイアス磁界強度Hb以上になるとなだらかなカーブを描くように変化する。
【0040】
また、磁気抵抗効果素子a,b,c,dがもつ飽和磁界より強いバイアス磁界を磁気抵抗効果素子a,b,c,dに印加した場合には磁気抵抗効果素子a,b,c,dの飽和磁界はバイアス磁界強度Hbと略同じになる。図9は、円形回転磁石12からの外部磁界Hが回転磁界の場合における、外部磁界Hと、前記場合と同じ側の出力Vo(図7のOutY)との関係を示している。この場合、外部磁界HがX軸方向からY軸方向に方向を変えていくと、それに伴って、出力カーブの傾き(振幅)が小さくなる。そして、外部磁界HがY軸と同方向(X軸に対して90度)になると、出力Voは「0」になる。
【0041】
外部磁界Hがバイアス磁界強度−Hb以上でバイアス磁界強度Hb以下である線形領域においては、外部磁界Hの方向がX軸から45度傾いた方向では、外部磁界HがX軸に平行であるときに比べて、出力Voの大きさが70.75%になり、外部磁界Hの方向がX軸から60度傾いた方向では、外部磁界HがX軸に平行であるときに比べて、出力Voの大きさが50%になる関係が認められた。この場合、外部磁界Hは同じ周期の出力信号になり、外部磁界Hの強弱は磁気センサ13Aの出力信号の強弱として現れる。本実施形態に係る磁気センサ13A,13Bは、この線形領域、すなわち円形回転磁石12による外部磁界Hがバイアス磁石14によるバイアス磁界強度Hbよりも小さな領域で作動させることにより安定性と精度の向上とを図るものである。
【0042】
つぎに、本実施形態に係る回転検出装置10において、磁気センサ13BのX軸とY軸との方向を磁気センサ13AのX軸とY軸との方向とは異なるようにした理由について説明する。図10は、円形回転磁石12の外周側で円形回転磁石12よりも上方に位置する仮想同心円17上に配置された磁気センサ13A,13Bの位置を点A,Bで示した説明図である。まず、磁気センサ13AのX軸とY軸との方向と磁気センサ13BのX軸とY軸との方向とはそれぞれ同じ(ともに、X軸は仮想同心円17の接線方向で、Y軸は円形回転磁石12の回転中心軸(回転軸11)と平行する方向)にした場合について想定する。
【0043】
点Aにおいて、回転軸11に平行な方向(Y軸に沿った方向)をA1、仮想同心円17の接線に沿った方向(X軸に沿った方向)をA2、仮想同心円17の法線に沿った方向(磁気センサ13Aの中心点Oを貫通する方向)をA3として定義する。また、点Bにおいて、回転軸11に平行な方向(Y軸に沿った方向)をB1、仮想同心円17の接線に沿った方向(X軸に沿った方向)をB2、仮想同心円17の法線に沿った方向(磁気センサ13Bの中心点Oを貫通する方向)をB3として定義する。この場合、円形回転磁石12を回転軸11を中心として360度回転させて点A,Bのそれぞれの方向に印加される磁界を磁気シュミレーションソフトを用いて解析した。その結果を、図11ないし図13に示す。
【0044】
点AでのA1の磁界波形は、図11に黒色の四角がついた曲線で示したαsinθとなり、A2の磁界波形は、図11に黒色の三角がついた曲線で示したβcosθとなる。点BでのB1の磁界波形は、図12に白色の四角がついた曲線で示したαsin(θ+π/2)となり、B2の磁界波形は、図12に白色の三角がついた曲線で示したβcos(θ+π/2)となる。方向A2の磁界波形の位相は方向A1の磁界波形の位相よりも90度進んでいる。方向B2の磁界波形の位相は方向B1の磁界波形の位相よりも90度進んでいる。方向A1,B1の磁界波形の振幅αと、方向A2,B2の磁界波形の振幅βとはα≧βの関係にある。磁気センサ13A,13Bは、この磁界の変化を反映して出力するため、図11および図12に示した磁界波形は出力信号に置き換えることができる。
【0045】
この場合、点Aに配置した磁気センサ13Aだけで円形回転磁石12の回転検出を逆正接演算による計算式Arctanで計算した場合、Arctan(αsinθ/βcosθ)となりα/βの補正が必要になる。また、仮に、磁気センサ13Aが配置される点が、図10に示した点Aから点Aの上方の点A’に変わった場合、方向A1,A2の磁界波形が変化する。その違いをリーサジュグラフで図13に示した。図13は、回転軸方向の磁界と接線方向の磁界との関係を示しており、実線が点Aの磁界、破線が点A’の磁界を示している。
【0046】
この場合、点Aにおける振幅α、βに対応する点A’での振幅をα’、β’としたときに、点A’での比α’/β’は、点Aでの比α/βとは異なってくる。このため、回転検出装置10の作動時に、円形回転磁石12が回転軸11に沿ってずれて、円形回転磁石12と磁気センサ13A,13Bとの間隔が変化することは検出の精度上問題となる。しかしながら、磁気センサ13A,13Bからの各一対ずつの出力信号OutX,OutYを所定の演算処理を行うことで磁気センサ13A,13Bの出力信号を互いに補償し合い、点A’での比α’/β’と点Aでの比α/βとの違いから生じる問題を解決できる。なお、図10では、点Aのみ点A’に移行したことを説明したが、円形回転磁石12が回転軸11に沿ってずれるわけであるから、点Bも点Aと平行な方向に同量だけずれ、点Bに関しても比α/βは比α’/β’のように変化する。
【0047】
この演算処理について説明する前に、方向A1,A2に対応した磁気センサ13Aの出力端子18c,18dから出力される出力信号OutX,OutYと、方向B1,B2に対応した磁気センサ13Bの出力端子18c,18dから出力される出力信号OutX,OutYについて説明しておくと、これらの出力信号は下記式1〜式4で表される。
A1(13Aの18c,OutX):αsinθ+Vcc/2 …式1
A2(13Aの18d,OutY):βcosθ+Vcc/2 …式2
B1(13Bの18c,OutX):αsin(θ+π/2)+Vcc/2
=αcosθ+Vcc/2 …式3
B2(13Bの18d,OutY):βcos(θ+π/2)+Vcc/2
=−βsinθ+Vcc/2 …式4
【0048】
つぎに、前記演算処理について説明するが、説明の便宜上、図14(a)に仮想の演算回路19を示す。磁気センサ13A,13Bからの各出力信号OutX,OutYは、演算回路19にそれぞれ入力される。演算回路19は、差動増幅器19a,19b、アナログ・ディジタル変換器(A/D変換器)19c,19dおよび逆正接演算器19eからなる。差動増幅器19aは、磁気センサ13Aの出力端子18cからの出力信号OutX(式1のA1に対応)から磁気センサ13Bの出力端子18dからの出力信号OutY(式4のB2に対応)を減算してA/D変換器19cに出力する。差動増幅器19bは、磁気センサ13Aの出力端子18dからの出力信号OutY(式2のA2に対応)から磁気センサ13Bの出力端子18cからの出力信号OutX(式3のB1に対応)を減算してA/D変換器19dに出力する。
【0049】
A/D変換器19c,19dは、差動増幅器19a,19bからの電圧信号(出力信号)をそれぞれアナログ・ディジタル変換(A/D変換)して、逆正接演算器19eに出力する。逆正接演算器19eは、例えばマイクロコンピュータにより構成されており、A/D変換器19c,19dからの出力信号に対して、プログラム処理を用いた逆正接演算(Arctan)を施すことにより、角度θ、すなわち円形回転磁石12の回転角に対応した角度信号を0度から360度の範囲で得ることができる。
【0050】
この場合、差動増幅器19aによる式1−式4の演算により(α+β)sinθが得られるが、差動増幅器19bによる式2−式3の演算では(β−α)cosθとなり(α+β)cosθが得られない。このため、α、βの値から生じる影響を除去することができない。つぎに、この(β−α)cosθではなく、(β+α)cosθが得られる方法について説明する。いま、図15に示すように、磁気センサ13Bを図15(a)の状態から左に90度回転させて図15(b)の状態にすることでY軸上のハーフブリッジ回路の電位レベルを反転することができる。図15では、磁気センサ13BのVccレベルを「+」として示しており、図15(a)では、X軸に沿ったハーフブリッジ回路の「+」が左側に位置し、Y軸に沿ったハーフブリッジ回路の「+」が上側に位置している。この状態から、磁気センサ13Bを左に90度回転させて図15(b)の状態にすると、X軸に沿ったハーフブリッジ回路の「+」が左側に位置し、Y軸に沿ったハーフブリッジ回路の「+」が下側に位置する。
【0051】
このように、磁気センサ13Bを90度回転させた状態では、前記式1〜式4によって表される方向A1,A2,B1,B2に対応した磁気センサ13A,13Bの出力端子18c,18dから出力される出力信号は下記に式1’〜式4’のようになる。
A1(13Aの18c,OutX):αsinθ+Vcc/2 …式1’
A2(13Aの18d,OutY):βcosθ+Vcc/2 …式2’
B1(13Bの18c,OutY):−αsin(θ+π/2)+Vcc/2
=−αcosθ+Vcc/2 …式3’
B2(13Bの18d,OutX):βcos(θ+π/2)+Vcc/2
=−βsinθ+Vcc/2 …式4’
【0052】
これによれば、式1’−式4’の演算により(α+β)sinθが得られるとともに、式2’−式3’の演算により(α+β)cosθが得られる。しかし、この場合、B1方向の出力信号OutYは磁気センサ13Bの出力端子18cから出力されるとともに、B2方向の出力信号OutXは磁気センサ13Bの出力端子18dから出力される。したがって、実際には、図14(a)の仮想の演算回路19は、図14(b)のように変更される。すなわち、磁気センサ13Bの出力端子18cが差動増幅器19aの負側入力「−」に接続されるとともに、磁気センサ13Bの出力端子18dか差動増幅器19bの負側入力「−」に接続されるように変更される。
【0053】
このように、磁気センサ13Bを90度回転させることにより、X軸に沿ったハーフブリッジ回路の電位レベルを維持したまま、Y軸に沿ったハーフブリッジ回路の電位レベルだけを反転することができる。このため、90度回転させた磁気センサ13Bを図10の点Bに配置すればB1のαcosθは、−αcosθに変換でき、式2−式3は(α+β)cosθになる。この結果、回転検出の計算式Arctan((α+β)sinθ/(α+β)cosθ)を得ることができ、これによって比α’/β’や比α/βの影響が生じなくなる。なお、これは、磁気センサ13Bを回転させる前の状態にして、図14(a)に示した演算回路において、磁気センサ13Bの磁気抵抗効果素子a,bで構成されるハーフブリッジ回路のVccの端子とGndの端子とを入れ替えた場合と同じになる。
【0054】
この点は、本実施形態の変形例にも関係するので、さらに説明を加える。この変形例においては、磁気センサ13A,13Bは共に上記実施形態の位置に配置されている。そして、磁気センサ13Bを90度回転させることなく、磁気センサ13A,13BのX軸は共に仮想同心円17の接線方向に沿うとともに、磁気センサ13A,13BのY軸は共に回転軸11に平行になっている(図15(a)参照)。この変形例においても、磁気センサ13A,13Bは同一の構成であるが、図16(a)に示すように、磁気抵抗効果素子a,bからなるハーフブリッジ回路のための電源用端子18a1,18b1と、磁気抵抗効果素子c,dからなるハーフブリッジ回路のための電源用端子18a2,18b2とをそれぞれ独立に設けている。
【0055】
この場合、磁気センサ13Aにおいては、電源用端子18a1,18a2に電圧Vccが供給され、電源用端子18b1,18b2は接地される。磁気センサ13Bにおいては、電源用端子18b1,18a2に電圧Vccが供給され、電源用端子18a1,18b2は接地される。他の回路構成は、説明の便宜上想定した図14(a)の回路と同じである。これによれば、磁気センサ13Bにおける磁気抵抗効果素子a,bからなるハーフブリッジ回路に対する電圧の印加方向が上記図14(a)の場合とは逆になる。したがって、上記式1〜式4によって表された方向A1,A2,B1,B2の出力端子18c,18dから出力される出力信号は下記式1’’〜式4’’のようになる。
【0056】
A1(13Aの18c,OutX):αsinθ+Vcc/2 …式1’’
A2(13Aの18d,OutY):βcosθ+Vcc/2 …式2’’
B1(13Bの18c,−OutX):−αsin(θ+π/2)+Vcc/2
=−αcosθ+Vcc/2 …式3’’
B2(13Bの18d,OutY):βcos(θ+π/2)+Vcc/2
=−βsinθ+Vcc/2 …式4’’
【0057】
したがって、差動増幅器19aによる式1”−式4”の演算では、(α+β)sinθが得られる。また、差動増幅器19bによる式2”−式3”の演算では、(α+β)cosθが得られる。その結果、この変形例によっても、回転検出の計算式Arctan((α+β)sinθ/(α+β)cosθ)を得ることができ、これによって比α’/β’や比α/βの影響が生じなくなる。ただし、この変形例においては、磁気センサ13A、13Bとして同じものを利用可能であるが、電源用端子が上記実施形態よりも多い4つ必要となる。
【0058】
さらに、上記実施形態の磁気センサ13A,13Bを用いて、図16(b)に示すような演算回路19を用いることにより、式2−式3の演算による(β−α)cosθを(α+β)cosθに変更することも可能である。図16(b)の演算回路は、図14(a)の仮想の演算回路19において、出力端子18cと作動増幅器19bの負側入力(−)との間に変換回路19fを設ける。この変換回路19fは、複数の差動増幅器(アナログ演算回路)の組み合わせにより、磁気センサ13Bの出力端子18cから出力される出力信号αcosθ+Vcc/2(OutX)を、−αcosθ+Vcc/2に変換する。例えば、出力信号αcosθ+Vcc/2から電圧Vcc/2を減算した後、減算結果αcosθの正負を反転して、反転した信号−αcosθに電圧Vcc/2を加算する。
【0059】
これによっても、上記図16(a)の変形例の場合と同様に、差動増幅器19aによる演算では、(α+β)sinθが得られる。また、差動増幅器19bによる演算では、(α+β)cosθが得られる。その結果、この変形例によっても、回転検出の計算式Arctan((α+β)sinθ/(α+β)cosθ)を得ることができ、これによって比α’/β’や比α/βの影響が生じなくなる。ただし、この変形例においては、磁気センサ13A、13Bとして上記実施形態と同じ電源用端子数の少ない磁気センサ13を用いることができるが、演算回路19が複雑化する。
【0060】
さらに、前記図14(b)の実施形態および図16(a),図16(b)の変形例では、演算回路19のうち逆正接演算器19eのみマイクロコンピュータからなるディジタル回路で構成し、残りの回路をアナログ回路で構成した。しかし、これらに代え、磁気センサ13A,13Bの各出力端子18c,18dからのアナログ信号をA/D変換器でディジタル信号に変換し、上記実施形態および変形例の差動増幅器19a,19bおよび変換回路19fによるアナログ演算を、逆正接演算器19eと同様に、マイクロコンピュータのプログラム処理によるディジタル演算で実現するようにしてもよい。
【0061】
また、この場合、磁気センサ13A,13Bの各出力端子18c,18dからのアナログ信号をA/D変換器を用いて時分割でディジタル信号に変換して、マイクロコンピュータに時分割で供給するようにしてもよい。また、上記実施形態および変形例においても、A/D変換器19c,19dを一つだけ設けて、差動増幅器19a、19bからの出力信号を時分割でA/D変換して逆正接演算器19e(マイクロコンピュータ)に供給するようにしてもよい。
【0062】
また、磁気センサ13A,13BにはそれぞれN極側を回転軸11側に向けたバイアス磁石14が備わっており、円形回転磁石12は回転方向にN極とS極とがそれぞれ一つずつ着磁されている。このため、本実施形態に係る回転検出装置10では、回転検出装置10の作動中に回転軸11が回転すると、磁気センサ13A,13Bの出力信号がそれぞれ円形回転磁石12の1回転で1周期となり、かつ互いに1/4周期ずれた正弦波と余弦波の波形をえることができる。この2つの波形を用いることにより、回転軸11の回転方向、回転数および回転角の検出ができる。また、2個の磁気センサ13A,13Bを用いたため、磁気センサ13A,13Bを円形回転磁石12の外周側に設置しても磁界の良好な検出ができる。
【0063】
(実施例1)
つぎに、実施例品として、図17に示した回転検出装置20を作製しその特性の確認を行った。この回転検出装置20では、円板状の円形回転磁石22を回転軸21の上端部に取り付け、円形回転磁石22の外周側のやや上方に2個の磁気センサ23A,23Bを前述した磁気センサ13A,13Bと同様の配置で設置した。各磁気センサ23A,23Bの磁気抵抗効果素子としては、抵抗変化率が3%〜5%と低いが材料自体の単純性と製作工程の容易性を考慮してAMR素子(Ni、Fe、Co)を用いた。そして、磁気センサ13A,13Bと同様の形態で、縦横の長さがそれぞれ1.8mmで厚みが0.1mmの基板に、AMR素子からなる磁気抵抗効果素子で二つのハーフブリッジ回路を構成する配線に加え、これらのハーフブリッジ回路と電源用端子(Vcc、Gnd)および出力端子との配線をフォトリソグラフ工程で成膜した。
【0064】
バイアス磁石としては、保持力が約7kエルステッドの希土類(SmFeN)を40kエルステッドで着磁した直径が1.5mmで厚みが0.25mmの樹脂磁石を使用した。そして、基板とバイアス磁石を、ダイボンディング、ワイヤーボンディングおよびトランスファーモールド等の一般的な半導体の製造工程を経て、エポキシ封止して、縦が2.5mm、横が2.8mm、厚みが0.8mmに設定された磁気センサ23A,23Bを製作した。また、円形回転磁石22としては、直径が9mmで厚みが3mmの径方向に2極着磁したフェライト焼結の円板状の磁石を用いた。この磁気センサ23A,23Bの実測による外部磁界と出力との関係を図18に示した。図18は、磁気センサ23AにX軸方向に外部磁界を印加したときのY軸方向のハーフブリッジ回路の出力を示している。
【0065】
また、磁気センサ23AにY軸方向に外部磁界を印加したときのX軸方向のハーフブリッジ回路の出力も同様の結果であった。図18に示した曲線より磁気センサ23A,23Bが備えるバイアス磁石の磁界強度が約25kA/mであることが分かる。また、円形回転磁石22の外周面から図17に示したギャップrが1.5mmで、円形回転磁石22の上面からの高さhが0mmまたは3mmになる位置での仮想同心円27上または仮想同心円27a上でそれぞれ周方向に90度離れた位置に磁気センサ23A,23Bを配置した。ギャップrが1.5mmで、高さhが0mmの位置での磁気センサ23A,23Bの特性を図19に示し、ギャップrが1.5mmで、高さhが3mmの位置での磁気センサ23A,23Bの特性を図20に示した。
【0066】
図19(a)は、高さhが0mmのときの円形回転磁石22の回転角度と磁気センサ23A,23Bの出力との関係を示しており、曲線C1が磁気センサ23Aにおける回転軸21方向のハーフブリッジ回路の出力、曲線C2が磁気センサ23Aにおける仮想同心円27の接線方向のハーフブリッジ回路の出力、曲線D1が磁気センサ23Bにおける回転軸21方向のハーフブリッジ回路の出力、曲線D2が磁気センサ23Bにおける仮想同心円27の接線方向のハーフブリッジ回路の出力をそれぞれ表している。
【0067】
図20(a)は、高さhが3mmのときの円形回転磁石22の回転角度と磁気センサ23A,23Bの出力との関係を示しており、曲線C1’が磁気センサ23Aにおける回転軸21方向のハーフブリッジ回路の出力、曲線C2’が磁気センサ23Aにおける仮想同心円27aの接線方向のハーフブリッジ回路の出力、曲線D1’が磁気センサ23Bにおける回転軸21方向のハーフブリッジ回路の出力、曲線D2’が磁気センサ23Bにおける仮想同心円27aの接線方向のハーフブリッジ回路の出力をそれぞれ表している。
【0068】
また、図19(b)は、高さhが0mmのときの磁気センサ23Aにおける回転軸21方向のハーフブリッジ回路の出力と磁気センサ23Bにおける仮想同心円27の接線方向のハーフブリッジの等価回路の出力を差動増幅器に通した差動後の出力と、高さhが0mmのときの磁気センサ23Bにおける回転軸21方向のハーフブリッジ回路の出力と磁気センサ23Aにおける仮想同心円27の接線方向のハーフブリッジ回路の出力を差動増幅器に通した差動後の出力とを示している。
【0069】
図20(b)は、高さhが3mmのときの磁気センサ23Aにおける回転軸21方向のハーフブリッジ回路の出力と磁気センサ23Bにおける仮想同心円27aの接線方向のハーフブリッジ回路の出力を差動増幅器に通した差動後の出力と、高さhが3mmのときの磁気センサ23Bにおける回転軸21方向のハーフブリッジ回路の出力と磁気センサ23Aにおける仮想同心円27aの接線方向のハーフブリッジ回路の出力を差動増幅器に通した差動後の出力とを示している。
【0070】
また、図19(c)は、図19(a)に示した各出力を逆正接演算により電気角として求め、その電気角と実際の円形回転磁石22の回転角度である機械角との差をとったときの角度誤差を示しており、図20(c)は、図20(a)に示した各出力を逆正接演算により電気角として求め、その電気角と実際の円形回転磁石22の回転角度である機械角との差をとった角度誤差を示している。これらの特性を下記表1に示す。
【0071】
【表1】

表1より、回転検出装置20では、磁気センサ23A,23Bの円形回転磁石22の上面からの高さを変更しても、すなわち円形回転磁石22に対する磁気センサ23A,23Bの設置範囲を広くしても磁界の精度の高い検出が可能であることが分かる。
【0072】
(実施例2)
つぎに、円形回転磁石として、外径が15mm、内径が8mm、厚みが3mmで径方向に2極着磁したネオジ焼結リング形状の磁石と、直径が25mm、厚みが3mmで径方向に2極着磁したネオジ焼結の円板状の磁石とを用いた回転検出装置でそれぞれ特性の確認を行った。その結果、リング形状の磁石を用いた回転検出装置では、ギャップrが6mmで、高さhが0mmの位置のときに、円柱状の磁石を用いた回転検出装置では、ギャップrが8mmで、高さhが0mmの位置のときに、それぞれ図19に示した特性と同様の特性を得ることができた。
【0073】
さらに、円形回転磁石として、直径が9mm、厚みが3mmで面方向(厚み方向)に2極着磁したフェライト焼結の円柱状の磁石を用いた回転検出装置で特性の確認を行った。その結果、ギャップrが1.5mmで、高さhが3mmの位置のとき、図21に示した特性を得ることができた。図21に示したように、面方向に着磁された円形回転磁石を用いた場合には、両磁気センサの個別の出力波形は歪を含んだ波形になった。
【0074】
この場合、一方の磁気センサの波形歪は、基本波に奇数の高調波成分がプラスされ、他方の磁気センサの波形歪は基本波に奇数の高調波成分がマイナスされている。したがって、一方の磁気センサの回転軸方向のハーフブリッジ回路の出力C3と他方の磁気センサの接線方向のハーフブリッジ回路の出力D4を減算回路に通した後の出力および一方の磁気センサの接線方向のハーフブリッジ回路の出力C4と他方の磁気センサの回転軸方向のハーフブリッジ回路の出力D3を減算回路に通した後の出力は、互いの歪を相殺しその歪は減少する。図21(c)に示したように、減算回路を通過した後の波形に基づく角度誤差は±2度以下になり、大幅な精度低下は生じなかった。
【0075】
このように、本実施形態に係る回転検出装置10では、磁気センサ13A,13Bを円形回転磁石12の外周面よりも外側に配置させるため、円形回転磁石12を回転軸11の端部でなく回転軸11の軸方向の中央側部分の外周面に設けた回転軸貫通構造にしても磁気センサ13A,13Bの設置が容易にできる。また、2個の磁気センサ13A,13Bを用いるとともに2個の磁気センサ13A,13Bを周方向に互いに90度離れた位置に設置したため、各磁気センサ13A,13Bの出力信号を互いに補償し合うことができ、回転軸11の回転方向、回転数および回転方向の位置を精度よく検出することができる。
【0076】
また、磁気センサ13AのY軸および磁気センサ13BのX軸を円形回転磁石12の回転軸11に平行させているため、回転検出装置10を円形回転磁石12の径方向に対して小型化できる。さらに、円形回転磁石12が、回転軸11を挟んで円形回転磁石12を2等分する面を境界として分極して2極着磁されて一方がS極、他方がN極になっているため、円形回転磁石12が1回転したときに、磁気センサ13A,13Bが1周期の波形で位相差をもつ正弦波と余弦波を出力することができる。また、磁気センサ13A,13Bにそれぞれバイアス磁石14が備わっているため、バイアス磁石14による外部磁界の磁界周期と同じ周期の出力信号を得ることができる。
【0077】
また、磁気抵抗効果素子a,b,c,dを、4つの領域15a,15b,15c,15dに1個ずつ形成して、X軸(またはY軸)に位置する磁気抵抗効果素子a,bとY軸(またはX軸)に位置する磁気抵抗効果素子c,dとでそれぞれハーフブリッジの等価回路を構成している。そして、磁気センサ13A,13Bからそれぞれ出力される信号を補償し合うように減算する減算回路(演算回路)を設けたため、入力抵抗値を上げることができ、かつ配線を簡略化できるという効果が生じる。
【0078】
また、磁気センサ13Aは、Y軸を円形回転磁石12の回転軸11に平行にし、かつX軸を仮想同心円17の接線に沿わせて配置しているのに対し、磁気センサ13Bは、X軸を円形回転磁石12の回転軸11に平行にし、かつY軸を仮想同心円17の接線に沿わせて配置している。このように、磁気センサ13Bを磁気センサ13Aに対して90度回転することにより、磁気センサ13BのX軸に沿ったハーフブリッジ回路の電位レベルを維持したまま、Y軸に沿ったハーフブリッジ回路の電位レベルだけを反転することができる。これによって、前述したように円形回転磁石12に対する磁気センサ13A,13Bの位置を変更しても検出値に影響が出なくなる。
【0079】
また、磁気抵抗効果素子a,b,c,dをX軸およびY軸の双方に対して45度傾斜させたため、各磁気抵抗効果素子a,b,c,dに2つの軸の双方の方向に沿った磁界が印加されるためより精度のよい検出が可能になる。さらに、磁気抵抗効果素子a,b,c,dをAMR素子で構成したため良好な検出が可能になる。バイアス磁石14を焼結磁石または樹脂磁石で構成したため、磁気センサ13A,13Bが良好な磁界強度を得ることができ、外部磁界強度に対する耐性を発揮することができる。さらに、円形回転磁石12が、回転軸11に平行に分極して径方向に2極着磁されているため、歪のない磁石磁界が生じるようになり回転検出装置10の精度がさらに向上する。
【0080】
(第2実施形態)
図22ないし図24は、本発明の第2実施形態に係る回転検出装置30を示している。この回転検出装置30では、磁気センサ33A,33Bは、図23および図24に示したように、それぞれX軸およびY軸を水平方向に向けて各中心点Oを円形回転磁石32と同軸で円形回転磁石32の直径よりもやや大きな直径の仮想同心円37上に位置させるとともに、円形回転磁石32よりも上方の位置に、互いの間隔を仮想同心円37の周方向に90度の角度を保って配置されている。
【0081】
この場合、磁気センサ33Aは、X軸を仮想同心円37の接線に沿わせ、Y軸を仮想同心円37の法線に沿わせて配置され、磁気センサ33Bは、Y軸を仮想同心円37の接線に沿わせ、X軸を仮想同心円37の法線に沿わせて配置されている。なお、図24では、磁気センサ33Bを表すため、回転軸31を破線で示している。この回転検出装置30のそれ以外の部分の構成については、前述した回転検出装置10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0082】
つぎに、本実施形態に係る回転検出装置30において、上述した実施形態と同様、磁気センサ33BのX軸とY軸との方向を磁気センサ33AのX軸とY軸との方向と異なるようにした理由について図10を用いて説明する。この場合も、図10においては、次のことを想定する。磁気センサ33A,33Bの位置を点A,Bとする。そして、この磁気センサ33A,33BのX軸方向を共に仮想同心円17(図23では37であるがここでは図10の符号を用いて17とする)の接線方向とし、かつ磁気センサ33A,33BのY軸方向を共に仮想同心円17の法線方向とする。
【0083】
そして、点Aで仮想同心円17の接線に沿った方向をA2、仮想同心円17の法線に沿った方向をA3とし、点Bで仮想同心円17の接線に沿った方向をB2、仮想同心円17の法線に沿った方向をB3とした。このときに、円形回転磁石12を360度回転させてそれぞれの方向にかかる磁界を磁気シュミレーションソフトを用いて解析した。その結果は、磁気センサ33Aにおいては、方向A2に関して、図11に黒色の三角がついた曲線で示した磁界波形が現れ、方向A3に関して、黒色の菱形がついた曲線で示した磁界波形が現れた。また、磁気センサ33Bにおいては、方向B2に関して、図12に白色の三角がついた曲線で示した磁界波形が現れ、方向B3に関しては、白色の菱形がついた曲線で示した磁界波形が現れた。
【0084】
すなわち、上記実施形態の場合と同様に、点Aでの方向A2の磁界波形を、図11に黒色の三角がついた曲線で示したβcosθとし、点Aでの方向A3の磁界波形を、図11に黒色の菱形がついた曲線で示したγsinθとすると、点Bでの方向B2の磁界波形は、図12に白色の三角がついた曲線で示したβcos(θ+π/2)となり、点Bでの方向B3の磁界波形は、図12に菱形の四角がついた曲線で示したγsin(θ+π/2)となる。なお、βは方向A2,B2での磁界波形の振幅であり、かつγは方向A3,B3での磁界波形の振幅であり、これらのβ,γの関係はγ≧βとなる。すなわち、磁気センサ33A,33Bを水平方向に向けたときの点Aでの方向A3,A2および点Bでの方向B3,B2との関係は、上述した実施形態の磁気センサ13A,13Bを垂直方向に向けたときの点Aでの方向A1,A2および点Bでの方向B1,B2の関係と略同じになる。
【0085】
したがって、磁気センサ33A,33Bのように水平に配置した場合も、回転軸31に沿った方向の位置が変わると、方向A2,A3および方向B2,B3の磁界波形がそれぞれ変化する。このため、回転検出装置30の作動時に、円形回転磁石32が回転軸31に沿ってずれて、円形回転磁石32と磁気センサ33A,33Bとの間隔が変化することによる問題の発生を防止するためには、磁気センサ33A,33Bの方向A3,B2および方向A2,B3における磁界波形の出力信号に演算処理を施すことで補償し、比γ/βの影響を除去することが必要になる。
【0086】
この場合も、上記実施形態の図14(b)のように、磁気センサ33A,33Bを演算回路19に接続すればよい。ただし、この場合には、磁気センサ33Aにおける方向A3の磁界波形の出力信号γsinθ+Vcc/2を差動増幅器19aの正側入力「+」に供給するとともに、磁気センサ33Bにおける方向B2の磁界波形の出力信号βcos(θ+π/2)+Vcc/2を差動増幅器19aの負側入力「−」に供給するようにする。また、磁気センサ33Aにおける方向A2の磁界波形の出力信号βcos(θ+π/2)+Vcc/2を差動増幅器19bの正側入力「+」に供給するとともに、磁気センサ33Bにおける方向B3の磁界波形の出力信号−γsinθ+Vcc/2を差動増幅器19aの負側入力「−」に供給するようにする。
【0087】
この場合も、磁気センサ33Bを磁気センサ33Aに対して90度回転させて図22ないし図24の状態にすることにより、磁気センサ33BのX軸に沿ったハーフブリッジ回路の電位レベルを維持したまま、Y軸に沿ったハーフブリッジ回路の電位レベルだけを逆にすることができる。これによって、回転角検出の計算式Arctan(γsinθ/βcosθ)に比γ/βの影響が生じなくなる。また、回転検出装置30によると、磁気センサ33A,33Bを水平方向に配置するため、回転検出装置30を円形回転磁石32の回転軸方向に対して小型化できる。この回転検出装置30のそれ以外の作用効果については、前述した回転検出装置10と同様である。
【0088】
また、この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様な変形が可能である。すなわち、磁気センサ33Bを90度回転させることなく、磁気センサ33A,33BのX軸を仮想同心円37の接線方向に沿わせ、磁気センサ33A,33BのY軸を仮想同心円37の法線方向に沿わせるようにする。そして、磁気センサ33A,33Bを上記実施形態の変形例の場合と同様に、図16(a),(b)に示す演算回路19に接続すればよい。
【0089】
なお、回転検出装置10の垂直に配置された磁気センサ13A,13Bと回転検出装置30の水平に配置された磁気センサ33A,33Bとの間の所定の角度で一対の磁気センサを傾斜させた場合には、図11に示した方向A1または方向A3の磁界波形が方向A1の曲線と方向A3の曲線との間で変化し、図12に示した方向B1または方向B3の磁界波形が方向B1の曲線と方向B3の曲線との間で変化する。このため、一対の磁気センサを回転軸に対して傾斜させて配置する場合にも、一方の磁気センサを他方の磁気センサに対して90度回転させることにより、比α/β等の影響を無くすことができる。
【0090】
(第3実施形態)
図25は本発明の第3実施形態に係る回転検出装置が備える磁気センサ43の基板45上の感磁面を示している。この磁気センサ43は、バイアス磁石(図示せず)と、基板45と、基板45に形成された8個の磁気抵抗効果素子a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2とで構成されている。基板45には、便宜上、X軸とY軸とが交差する中心点Oを中心としてX軸に沿った部分の両側に領域45a,45bが設けられるとともに、Y軸に沿った部分の両側に領域45c,45dがそれぞれ設けられている。これらの領域45a,45b,45c,45dから中心点Oまでの距離はそれぞれ等しく設定されている。
【0091】
磁気抵抗効果素子a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2は、それぞれ細長い四角形に形成されており、磁気抵抗効果素子a1,a2が領域45aに形成され、磁気抵抗効果素子b1,b2が領域45bに形成され、磁気抵抗効果素子c1,c2が領域45cに形成され、磁気抵抗効果素子d1,d2が領域45dに形成されている。磁気抵抗効果素子a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2は、それぞれX軸およびY軸に対して45度傾斜して形成されており、磁気抵抗効果素子a1と磁気抵抗効果素子b1、磁気抵抗効果素子a2と磁気抵抗効果素子b2、磁気抵抗効果素子c1と磁気抵抗効果素子d1および磁気抵抗効果素子c2と磁気抵抗効果素子d2とが、互いに中心点Oを中心として点対称になるように配置されている。
【0092】
また、磁気抵抗効果素子a1,a2、磁気抵抗効果素子b1,b2、磁気抵抗効果素子c1,c2および磁気抵抗効果素子d1,d2の各一組が頂部を中心点O側に向けたV形を描くようにして配置されている。すなわち、磁気抵抗効果素子a1,d2,b1,c2は、それぞれ基板45上で中心点Oを中心として90度ずつ位置を変更すると、位置を変更する前の他の磁気抵抗効果素子a1,d2,b1,c2のいずれかが位置していた部分に位置するように配置されている。そして、磁気抵抗効果素子a2,d1,b2,c1は、それぞれ基板45上で中心点Oを中心として90度ずつ位置を変更すると、位置を変更する前の他の磁気抵抗効果素子a2,d1,b2,c1のいずれかが位置していた部分に位置するように配置されている。
【0093】
また、図26に示したように、磁気抵抗効果素子a1,a2,b1,b2および磁気抵抗効果素子c1,c2,d1,d2は、それぞれフルブリッジ回路を構成するように接続されている。そして、一方のフルブリッジ回路では、磁気抵抗効果素子a1,a2の接続点からの信号出力を+OutXとして取り出し、磁気抵抗効果素子b1,b2の接続点からの信号出力を−OutXとして取り出す。他方のフルブリッジ回路では、磁気抵抗効果素子c1,c2の接続点からの信号出力を+OutYとして取り出し、磁気抵抗効果素子d1,d2の接続点からの信号出力を−OutYとして取り出す。このように構成された磁気センサ43は、図6に示したモールドパッケージ16aと同様のモールドパッケージ内に収容されており、この場合の磁気センサ43には、二対の電源用端子と二対の信号出力端子が設けられている。
【0094】
また、この回転検出装置には、本発明に係る演算処理回路として、図14(b)に示した演算回路に代えて、図27に示した演算回路が備わっている。本実施形態に係る回転検出装置のそれ以外の構成は、上述した回転検出装置10と同一である。すなわち、この回転検出装置においても、一対の磁気センサ43A,43Bが設けられ、所定の仮想同心円の接線に沿うとともに、円形回転磁石よりも上方の位置に、互いの間隔を周方向に90度の角度を保って配置されている。そして、第1実施形態の図1ないし図3のように、一方の磁気センサ43Aにおいては、X軸を仮想同心円の接線に沿わせ、Y軸を円形回転磁石の回転軸に平行にして配置されている。他方の磁気センサ43Bにおいては、Y軸を仮想同心円の接線に沿わせ、X軸を円形回転磁石の回転軸に平行させて配置されている。
【0095】
また、第3実施形態の図22ないし図24のように、一方の磁気センサ43Aにおいて、X軸を仮想同心円の接線に沿わせ、Y軸を仮想同心円の法線に沿わせ、他方の磁気センサ43Bにおいて、X軸を仮想同心円の法線に沿わせ、Y軸を仮想同心円の接線に沿わせてもよい。この場合、2個の磁気センサ43A,43Bから出力される信号を補償するためには、図27に示す演算回路49が用いられる。
【0096】
演算回路49は、4個の差動増幅器49a,49b,49c,49dを備えている。差動増幅器49aは、磁気センサ43Aの出力信号OutX(=αsinθ+Vcc/2)から磁気センサ43Aの出力信号−OutX(=−αsinθ+Vcc/2)を減算して出力する。この減算は、実質的には加算機能を果たすもので、差動増幅器49aからは波形信号2αsinθが出力される。差動増幅器49bも、同様に、磁気センサ43Bの出力信号OutY(=βcos(θ+π/2)+Vcc/2)から磁気センサ43Bの出力信号−OutY(=−βcos(θ+π/2)+Vcc/2)を減算して波形信号2βcos(θ+π/2)(=−2βsinθ)を出力する。
【0097】
差動増幅器49cも、同様に、磁気センサ43Aの出力信号OutY(=βcosθ+Vcc/2)から磁気センサ43Aの出力信号−OutY(=−βcosθ+Vcc/2)を減算して、波形信号2βcosθを出力する。差動増幅器49bも、同様に、磁気センサ43Bの出力信号OutX(=αsin(θ+π/2)+Vcc/2)から磁気センサ43Bの出力信号−OutX(=−αsin(θ+π/2)+Vcc/2)を減算して波形信号2αsin(θ+π/2)(=−2αcosθ)を出力する。
【0098】
差動増幅器49aの出力は差動増幅器49eの正側入力「+」に供給され、かつ差動増幅器49bの出力は差動増幅器49eの負側入力「−」に供給される。差動増幅器49cの出力は差動増幅器49fの正側入力「+」に供給され、かつ差動増幅器49dの出力は差動増幅器49fの負側入力「−」に供給される。これらの差動増幅器49e,49fは、上記第1実施形態の差動増幅器19a,19b(図14(b)参照)にそれぞれ対応する。そして、差動増幅器49eからは、波形信号2(α+β)sinθが出力される。差動増幅器49fからは、波形信号2(α+β)cosθが出力される。差動増幅器49e,49fの出力側には、上記第1実施形態のA/D変換器19c,19dおよび逆正接演算器19eと同様のA/D変換器49g,49hおよび逆正接演算器49iが接続されている。
【0099】
したがって、この第3実施形態によっても、最終的に角度信号が出力される。この第3実施形態に係る回転検出装置によると、上述したハーフブリッジ回路を備えた回転検出装置10と比較して、2倍の振幅を有する出力波形信号が得られ、中点電位の安定性の向上と出力が2倍になる効果が生じる。この回転検出装置のそれ以外の作用効果については、上述した回転検出装置10の作用効果と同様である。なお、この第3実施形態においても、磁気センサ43A,43Bのフルブリッジ回路毎に電源用端子を設けることにより、上記実施形態の変形例のように、磁気センサ43Bを90度回転させる必要がなくなる。上記実施例と同様に、上記図27に示した差動増幅器49a〜29fによるアナログ演算に代え逆正接演算器49iと同様なマイクロコンピュータを用いた演算処理を行ってもよい。
【0100】
(変形例)
図28は、第3実施形態の変形例に係る回転検出装置が備える磁気センサ53の基板55上の感磁面を示している。この磁気センサ53は、前述した磁気センサ43においてV形を描くようにして配置された各磁気抵抗効果素子a1,a2、磁気抵抗効果素子b1,b2、磁気抵抗効果素子c1,c2および磁気抵抗効果素子d1,d2をそれぞれ領域45a,45b,45c,45d内で各領域45a,45b,45c,45dの中心点を中心として反時計回り方向(図25,28の状態での反時計回り方向)に90度回転させた状態に形成されている。
【0101】
この磁気センサ53を備えた回転検出装置のそれ以外の部分の構成については、前述した第3実施形態に係る回転検出装置と同一である。この変形例に係る回転検出装置の作用効果についても前述した第3実施形態に係る回転検出装置の作用効果と同様である。なお、強磁性体材料を用いたGMR素子からなる磁気抵抗効果素子を用いて、図25および図28に示した回転検出装置を構成してもよく、これによっても、第3実施形態やその変形例に係る回転検出装置と同等の回転検出装置を得ることができる。
【0102】
(第4実施形態)
図29は、本発明の第4実施形態に係る回転検出装置が備える磁気センサ63の基板65上の感磁面を示している。この磁気センサ63は、バイアス磁石(図示せず)と、基板65と、基板65に形成された4個の磁気抵抗効果素子a3,b3,c3,d3とで構成されている。基板65には、便宜上、X軸とY軸とが交差する中心点Oを中心としてX軸に沿った部分の両側に領域65a,65bが、Y軸に沿った部分の両側に仮想領域65c,65dがそれぞれ中心点Oから同一距離になるようにして設定されている。
【0103】
磁気抵抗効果素子a3,b3,c3,d3は、軟磁性体材料を用いたGMR素子で構成されており、それぞれ細長い四角形に形成されている。そして、磁気抵抗効果素子a3,が領域65aに形成され、磁気抵抗効果素子b3が領域65bに形成され、磁気抵抗効果素子c3が領域65cに形成され、磁気抵抗効果素子d3が領域65dに形成されている。磁気抵抗効果素子a3,b3は長手方向をX軸に沿わせてX軸上に形成され、磁気抵抗効果素子c3,d3は長手方向をY軸に沿わせてY軸上に形成されており、各磁気抵抗効果素子a3,b3,c3,d3の中心点Oからの距離は同一に設定されている。また、各磁気抵抗効果素子a3,b3,c3,d3は、図5に示したように二つのハーフブリッジ回路を形成するように接続されている。この場合、それぞれ図5のaにa3、bにb3、cにc3、dにd3が対応する。
【0104】
図4に示した磁気センサ13A,13Bのように、AMR素子で構成される磁気抵抗効果素子a,b,c,dを用いた場合には、X軸方向とY軸方向との2方向のベクトルの磁界があるときに良好な検出ができるが、軟磁性体材料を用いたGMR素子で構成された磁気抵抗効果素子a3,b3,c3,d3を用いた磁気センサ63では、磁界の強弱だけで良好な検出が可能になるため、磁気抵抗効果素子a3,b3,c3,d3を長手方向をX軸およびY軸に沿って形成することができる。なお、磁気抵抗効果素子a3,b3,c3,d3を前述した磁気抵抗効果素子a,b,c,dのように、X軸およびY軸に対して45度傾斜させてもよい。本実施形態に係る回転検出装置のそれ以外の構成は、前述した回転検出装置10と同一である。また、本実施形態に係る回転検出装置の作用効果についても、前述した回転検出装置10の作用効果と同様である。
【0105】
また、軟磁性体材料を用いたGMR素子で構成された磁気抵抗効果素子a3,b3,c3,d3を、図25および図28の磁気抵抗効果素子a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2のように配置して磁気センサを構成してもよい。この場合、図30に示したように、磁気抵抗効果素子a1,b1,a2,b2および磁気抵抗効果素子c1,d1,c2,d2を、それぞれフルブリッジ回路を構成するように接続する。そして、一方のフルブリッジ回路では、磁気抵抗効果素子a1,b1の中点からの信号出力を+OutXとして取り出すとともに、磁気抵抗効果素子b2,a2の中点からの信号出力を−OutXとして取り出し、他方のフルブリッジ回路では、磁気抵抗効果素子c1,d1の中点からの信号出力を+OutYとして取り出し、磁気抵抗効果素子d2,c2の中点からの信号出力を−OutYとして取り出す。
【0106】
この回転検出装置のそれ以外の構成は、図25および図28に示した磁気センサ43,53を備えた回転検出装置と同一である。また、この回転検出装置の作用効果についても、図25および図28に示した磁気センサ43,53を備えた回転検出装置の作用効果と同様である。なお、軟磁性体材料を用いたGMR素子で構成された磁気抵抗効果素子を、図25や図28の磁気抵抗効果素子a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2のように配置して磁気センサを構成する際には、前述したように、図30に示したように各磁気抵抗効果素子a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2を接続することが好ましいが、図26のように接続することもできる。同様に、AMR素子で構成される磁気抵抗効果素子を図30のように接続することもできる。
【0107】
前述した各実施形態では、円形回転磁石12の中心に小さな挿通穴12aが形成され、この挿通穴12aに回転軸11を挿通させているが、これに代えて、図31に示したように、中心に大きな挿通穴42aが形成されたリング状の円形回転磁石42を用い、この円形回転磁石42の挿通穴42aに外径および内径の大きな円筒状の回転軸41を挿通させてもよい。これによると、回転軸41の内部に配線を通すことが可能になる。また、円形回転磁石としては、径方向で着磁したものや面方向で着磁したもの等種々のものを用いることができる。これらの中には、図32に示した径方向に着磁した円板状の円形回転磁石52、図33に示した径方向に着磁したリング状の円形回転磁石62、図34に示した面方向に着磁した円板状の円形回転磁石72および図35に示した面方向に着磁したリング状の円形回転磁石82等がある。
【0108】
円形回転磁石52は、回転中心軸を通り円形回転磁石52を2等分する面を境界として分極して径方向に2極着磁されており、一方がS極、他方がN極になっている。円形回転磁石62は、円形回転磁石62を直径に沿うように軸方向に2等分する面を境界として分極するとともに外周側と内周側とが異なる極になるようにして分極して外周側と内周側とがそれぞれ径方向に2極着磁されており、外周側の一方がS極で他方がN極、内周側の一方がN極で他方がS極になっている。
【0109】
円形回転磁石72は、回転中心軸を通り円形回転磁石72を2等分する面を境界として分極するとともに回転軸に直交する面を境界として回転軸方向に2等分するように上部側と下部側とがそれぞれ分極されており、上部側の一方がS極で他方がN極、下部側の一方がN極で他方がS極になっている。円形回転磁石82は、円形回転磁石82を直径に沿うように軸方向に2等分する面を境界として分極するとともに上部側と下部側とが異なる極になるように分極されており、上部側の一方がS極で他方がN極、下部側の一方がN極で他方がS極になっている。
【0110】
円形回転磁石62,82は、前述した回転軸41等の外周面に取り付けられるが、円形回転磁石52,72は、円筒状の回転軸の内部に設置される。これらの円形回転磁石52,62,72,82に対しても前述した仮想同心円17と同様の仮想同心円を設定し、その仮想同心円上に所定の磁気センサが配置される。そのような状態にして、各円形回転磁石52,62,72,82を回転軸とともに、360度回転させたときに磁気センサが検出する磁界に注目し、磁気シミュレーションソフトで解析した。その結果を、図36ないし図39に示す。図36は円形回転磁石52の結果を示し、図37は円形回転磁石62の結果を示し、図38は円形回転磁石72の結果を示し、図39は円形回転磁石82の結果を示している。
【0111】
図36(a)、図37(a)、図38(a)、図39(a)におけるそれぞれの下端中央部分には円形回転磁石52,62,72,82の位置が示されており、各黒点は、磁気シミュレーションソフトで解析した位置を示している。また、図36(a)、図37(a)、図38(a)、図39(a)においてそれぞれ破線で示した四角の範囲は、磁気センサを設置する位置の範囲を示している。そして、図36(b)、図37(b)、図38(b)、図39(b)における黒色の四角が付いた曲線は仮想同心円の接線と平行方向の磁束線を示しており、黒色の三角が付いた曲線は仮想同心円の法線と平行方向の磁束線を示しており、黒色の菱形が付いた曲線は回転軸と平行方向の磁束線を示している。
【0112】
図36(b)および図37(b)から径方向に着磁した円形回転磁石52,62は正弦波の周期を持っていることが分かり、図38(b)および図39(b)から面方向に着磁した円形回転磁石72,82は歪を含む周期であることが分かる。したがって、円形回転磁石としては、回転中心軸に平行に分極して径方向に2極着磁された円板状もしくはリング状であることが検出精度の向上につながりより好ましい。また、図36(a)および図37(a)から径方向に着磁した円形回転磁石52,62では、その位置が回転軸に沿ってずれた場合でも、円形回転磁石32,42の外周側以外の位置であれば磁束線が大きく変わることがないこともわかる。
【0113】
本発明に係る回転検出装置は、前述した各実施形態に限定するものでなく、本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、上述した各実施形態では、磁気抵抗効果素子a〜d,a1〜d1,a2〜d2,a3〜d3のすべての配置を、中心点Oを中心として90度ずつ回転したときに互いの位置が重なるようにしているが、フルブリッジ回路を構成する磁気抵抗効果素子a1〜d1,a2〜d2の配置については,適宜変更することができる。すなわち、磁気抵抗効果素子a1〜d1,a2〜d2のうちの各軸に位置するものが中心点Oを中心として点対称になるようにするだけでなく、各軸を挟んで配置されるものどうしが線対称になるようにしてもよい。また、一方の軸に位置するものを中心点Oを中心として点対称にし、他方の軸に位置するものを一方の軸を挟んで線対称になるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0114】
10,20,30…回転検出装置、11,21,31,41…回転軸、12,22,32,42,52,62,72,82…円形回転磁石、13A,13B,23A,23B,33A,33B,43,43A,43B,53,63…磁気センサ、14…バイアス磁石、15,45,55,65…基板、15a,15b,15c,15d,45a,45b,45c,45d,65a,65b,65c,65d…領域、17,27,27a,37…仮想同心円、19,49…演算処理回路、a,b,c,d,a1,b1,c1,d1,a2,b2,c2,d2,a3,b3,c3,d3…磁気抵抗効果素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に取り付けられた2極の円形回転磁石と、前記円形回転磁石の磁界の変化を検出する2個の磁気センサと、前記2個の磁気センサの検出結果から前記円形回転磁石の回転角を演算する演算処理回路とを備えた回転検出装置であって、
前記磁気センサは、バイアス磁石と、中心点を前記バイアス磁石の磁極面の磁気中心に合わせた状態で前記磁極面に対向させた基板と、前記基板の中心点で直交し前記磁極面に平行に延びる2つの軸に沿い前記中心点からそれぞれ同一距離の位置に設定された4つの領域に、それぞれ同一形状に形成された磁気抵抗効果素子とを備え、
前記2つの軸の各軸に沿ってそれぞれ設けた2つの磁気抵抗効果素子を直列に接続して2つのブリッジ回路を構成し、前記2つのブリッジ回路の両端に電源電圧を印加して、前記2つの磁気抵抗効果素子の接続点からそれぞれ出力波形信号を取り出すようにし、
前記演算処理回路は、前記出力波形信号を用いて前記円形回転磁石の回転角を演算するようにし、
各磁気センサの前記2つの軸のうちの一方の軸が前記円形回転磁石の外周面で形成される円の接線と平行であり、かつ各磁気センサの前記2つの軸のうちの他方の軸の前記円形回転磁石の回転中心軸に対する傾斜角度が互いに同じになるようにして、前記2個の磁気センサを、前記円形回転磁石の外周面よりも外側で前記円形回転磁石の回転中心軸を中心とした周方向に互いに90度離れた位置に設置したことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記演算処理回路は、前記2つの軸の一方がX軸で他方がY軸であるとしたときに、前記一方の磁気センサのX軸に対応した出力波形信号と前記他方の磁気センサのY軸に対応した出力波形信号とを演算するとともに、前記他方の磁気センサのX軸に対応した出力波形信号と前記一方の磁気センサのY軸に対応した出力波形信号とを演算して、互いに同じ振幅を有する正弦波信号および余弦波信号をそれぞれ取り出し、前記取り出した正弦波信号および余弦波信号を用いて逆正接演算する請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記2個の磁気センサの一方の磁気センサの前記磁極面の位置を維持したまま、前記一方の磁気センサのX軸とY軸とを他方の磁気センサのX軸とY軸とに対して中心点を中心として90度回転した状態で、前記2個の磁気センサから前記演算処理回路に出力波形信号をそれぞれ出力することにより、前記同じ振幅を有する正弦波信号および余弦波信号を取り出すようにした請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記2個の磁気センサの各一方のブリッジ回路の電源電圧の印加方向を一致させるとともに、前記2個の磁気センサの各他方のブリッジ回路の電源電圧の印加方向を異ならせた状態で、前記2個の磁気センサから前記演算処理回路に出力波形信号をそれぞれ出力することにより、前記同じ振幅を有する正弦波信号および余弦波信号を取り出すようにした請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記一方の磁気センサの一方のブリッジ回路の電位レベルを前記演算処理回路により反転させることにより、前記同じ振幅を有する正弦波信号および余弦波信号を取り出すようにした請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項6】
前記正弦波信号は、互いに同相である前記一方の磁気センサのX軸に対応した出力波形信号と前記他方の磁気センサのY軸に対応した出力波形信号との和であり、かつ
前記余弦波信号は、互いに同相である前記他方の磁気センサのX軸に対応した出力波形信号と前記一方の磁気センサのY軸に対応した出力波形信号との和である請求項2ないし5のうちのいずれか一つに記載の回転検出装置。
【請求項7】
前記ブリッジ回路は、前記磁気抵抗効果素子を、前記中心点を中心として90度ずつ回転したときに互いの位置が重なるようにして前記4つの領域に1個ずつ形成し、2つの軸のそれぞれの軸に位置する2つの磁気抵抗効果素子を接続して構成されるハーフブリッジ回路である請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載の回転検出装置。
【請求項8】
前記ブリッジ回路は、前記磁気抵抗効果素子を、各軸に位置するものが前記中心点を中心として点対称になるようにするか、または各軸を挟んで配置されるものどうしが線対称になるようにして前記4つの領域に2個ずつ形成し、前記2つの軸のそれぞれの軸に位置する4つの磁気抵抗効果素子をそれぞれ接続して構成されるフルブリッジ回路である請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載の回転検出装置。
【請求項9】
前記磁気抵抗効果素子を前記2つの軸に対して45度傾斜させた請求項1ないし8のうちのいずれか一つに記載の回転検出装置。
【請求項10】
前記磁気抵抗効果素子は、AMR素子またはGMR素子である請求項1ないし9のうちのいずれか一つに記載の回転検出装置。
【請求項11】
前記バイアス磁石を焼結磁石または樹脂磁石で構成した請求項1ないし10のうちのいずれか一つに記載の回転検出装置。
【請求項12】
前記円形回転磁石を、前記円形回転磁石の回転中心軸に平行に2分するように分極して径方向に2極着磁され、軸状の回転体の外周部に設けられるリング状の磁石で構成した請求項1ないし11のうちのいずれか一つに記載の回転検出装置。
【請求項13】
前記円形回転磁石を、前記円形回転磁石の回転中心軸に平行に2分するように分極して径方向に2極着磁され、円筒軸状の回転体の内部に設けられる円板状または円柱状の磁石で構成した請求項1ないし11のうちのいずれか一つに記載の回転検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2011−145168(P2011−145168A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6212(P2010−6212)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000236447)浜松光電株式会社 (20)
【Fターム(参考)】