説明

回転機械翼

【課題】翼自体の強度を確保するとともに、軽量化することができる回転機械翼を提供する。
【解決手段】回転機械翼1は、ブレード状に延在する回転機械翼1であって、回転機械翼1の延在方向Pに延びるとともに板厚方向に貫通する複数の略円形の孔部111が形成された多孔鋼板からなる内部材11と、複合材からなるとともに、前記内部材11を内包して前記回転機械翼1の外面を形成する外部材21とを備え、前記孔部111は、前記内部材11の周縁部から内方に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械翼に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、蒸気タービンやインペラーに用いられる鋼製の回転機械翼の開発分野においては、エネルギー効率の向上等の観点から長翼化に重点がおかれている。ここで、長翼化にともない回転機械翼の重量が大となるため、回転機械翼を支持する円盤状のディスクにかかる負荷が大きくなってきている。
【0003】
そこで、ディスクにかかる負荷を低減するために、回転機械翼の重量を軽くするように、チタン材等の軽量鋼材から構成される回転機械翼が知られている。また、回転機械翼の厚みを薄肉とすることで、重量を軽量化した回転機械翼もある。
【0004】
さらに、軽量化の一法として、翼の両外面を形成するテーパスキンの内部に、凹凸形状が形成された板状のディンプルコアを配した中空ブレードも知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−248901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の軽量鋼材から構成される回転機械翼は、軽量鋼材自体のコストが高いため、製造した回転機械翼がコスト高となってしまうという問題点があった。
【0007】
また、薄肉の回転機械翼では、ディスクにかかる負荷は低減されるものの、翼自体の強度が不足するという問題点があった。
さらに、回転機械翼の形状が複雑なため、現場で図面通りに加工するのが非常に困難であった。
【0008】
また、上記特許文献1に記載された中空ブレードでは、ディンプルコアの両側は空洞となっているため、回転機械翼として十分な強度を得ることができないという問題点もあった。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、翼自体の強度を確保するとともに、軽量化することができる回転機械翼を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る回転機械翼は、ブレード状に延在する回転機械翼であって、
回転機械翼の延在方向に延びるとともに板厚方向に貫通する複数の孔部が形成された多孔鋼板からなる内部材と、複合材からなるとともに、前記内部材を内包して前記回転機械翼の外面を形成する外部材とを備えることを特徴とする。
【0011】
このような回転機械翼では、内部材に複数の孔部が設けられているため、鋼板と複合材との接合面積となる鋼板の表面積部分を広く確保できる。また、孔部を通して鋼板の両側の外部材が、内部材と連結し一体となって接合する、よって、内部材と外部材とが強固に接合するため、回転機械翼自体の強度を確保することができる。
一方、外部材を軽量材料とすれば、回転機械翼の軽量化をはかることができる。
【0012】
また、本発明に係る回転機械翼は、前記孔部は略円形であることを特徴とする。
【0013】
これによって、応力を一部に集中させることなく、分散して負担することができる。また、内部材と外部材との間に生じる摩擦による減衰効果を期待することができる。
【0014】
また、本発明に係る回転機械翼は、前記内部材の周縁部には、該周縁部を巡るように補強領域が形成され、該補強領域の内方に前記孔部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
このような回転機械翼では、周縁部を補強領域とすることで、周縁部の強度を確保することができ、内部材の剛性を強固にすることができる。
【0016】
また、本発明に係る回転機械翼は、前記内部材は、高張力鋼からなり、前記外部材は、ポリイミド樹脂と炭素繊維樹脂とを含む複合材であることを特徴とする。
【0017】
これによって、内部材で捩れに対する強度を確保するとともに、外部材で確実に軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る回転機械翼によれば、翼自体の強度を確保するとともに、軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転機械翼の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る回転機械翼の捩れを解いて示した模式縦断面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図2におけるB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の回転機械翼として、蒸気タービン(不図示。以下同じ。)のタービンブレードに適用した場合を例に挙げて説明する。
蒸気タービンのタービンブレード(回転機械翼)は、例えば、ロータ(不図示。以下同じ。)に固定された円盤状のディスク(不図示。以下同じ。)に、放射線状に複数配列され、作動流体である蒸気を受けてロータを回転駆動させるものである。
【0021】
図1乃至図3に示すように、タービンブレード(以下、ブレードと言う。)1は、基端となる翼根部E1と、該翼根部E1から延在方向Pに延びる翼部E2と、該翼部E2の先端に設けられたシュラウド部E3とを備える。そして、ブレード1は、翼根部E1側からシュラウド部E3側に向かうにしたがって幅が狭くなるように形成されるとともに、捩れた形状となるように形成されている。すなわち、図1に示すように、翼根部E1側からシュラウド部E3側に向かうにしたがって、反時計回りに捩れた形状となるように形成されている。
また、ブレード1は、図3に示すように、その断面輪郭形状が腹面部D1では凹面状に形成され、背面部D2では凸面状に形成されている。そして、翼入口部D3から該翼入口部D3と翼出口部D4との中間である中間部D5に向かうにしたがって板厚方向に厚くなるとともに、該中間部D5から翼出口部D4に向かうにしたがって板厚方向に薄くなるように所謂翼形状に形成されている。
また、このブレード1は、延在方向Pに延びて内側部分を構成する内部材11と、該内部材11を内包して外面を形成する外部材21とを備えた構成とされている。
【0022】
以下、ブレード1を構成する各部の詳細について詳細に説明する。
(内部材11)
図2に示すように、内部材11は、周縁部を巡るように補強領域Fが形成され、該補強領域Fの内方に板厚方向に貫通する複数の孔部111が形成された多孔鋼板である。また、翼根部E1側からシュラウド部E3側に向かうにしたがって幅が狭くなるように形成されている。また、内部材11は、本実施形態では、一例として薄板高張力鋼で成形されている。
【0023】
孔部111は、略円形状であり、補強領域Fの内方に、内部材11の翼根部E1からシュラウド部E3まで、図1における上下方向、左右方向に等間隔に形成されている。
ここで、孔部111の直径は、内部材11と外部材21の結合を強化するために、例えば10mm〜15mmが適している。内部材11に孔部111が形成されていない補強領域Fとして端部から25mm確保し、孔部111の隣接間隔が25mm以内であるのが適している。
【0024】
(外部材21)
図3に示すように、外部材21は、2以上の材料からなる複合材で、翼入口部D3から中間部D5に向かうにしたがって板厚方向に厚くなるとともに、該中間部D5から翼出口部D4に向かうにしたがって板厚方向に薄くなるように形成されている。また、外部材21は、本実施形態では、一例としてポリイミド樹脂と炭素繊維樹脂を組み合わせた複合材で成形されている。
【0025】
ここで、内部材11と外部材21とは、例えばレジントランスファー成型法により成形されるものであって、金型内の所定の位置に内部材11を配置し、外部材21を金型内に内部材11を内包するようにして充填固化させる。このような方法により、内部材11に形成された孔部111の内部に外部材21の複合材が充填されて、内部材11と外部材21とは一体化される。
【0026】
また、図4に示すように、外部材21は、翼根部E1では、凸形状と凹形状とが連続して形成さている。すなわち、外部材21は、図4における下方に設けられた板厚方向に凸形状の第一凸部31と、該第一凸部31に連続して設けられた板厚方向に凹形状の凹部32と、該凹部32に連続して設けられた板厚方向に凸形状の第二凸部33とを備える。
第一凸部31、凹部32及び第二凸部33は、ディスクに形成された凸形状及び凹形状に対応した形状であり、対応する凸形状と凹形状とが嵌合することにより、ディスクに固定されている。
【0027】
また、図1に示すように、外部材21のシュラウド部E3は、その両端部が接合部41,42とされ、これら接合部41,42が隣接するブレード1と接合されている。
【0028】
このように構成されたブレード1では、内部材11には孔部111が複数形成されているため外部材21との接合面積を大きく確保でき、さらに孔部111を通して腹面部D1側の外部材21と背面部D2側の外部材21とが内部材11と連結し一体となる。さらに、内部材11の孔部111の内部には外部材21を構成する複合材が充填固化されるため、内部材11と外部材21とは一体化される。よって、内部材11が高張力鋼により形成されていること及びこの内部材11と外部材21とが強固に接合するため、ブレード1の強度を確保することができる。また、内部材11が高張力鋼で形成されるため捩れに対する強度も確保することができる。
また、内部材11の補強領域Fには孔部111が形成されていないため、補強領域Fである周縁部の強度を確保することができ、内部材11の剛性を強固にすることが可能となる。
【0029】
また、外部材21は、ポリイミド樹脂と炭素繊維樹脂を組み合わせた複合材であるため、ブレード1を軽量化することができる。
【0030】
具体的には、ブレード1全体と鋼製とした場合と比較すると、例えば本実施形態のように複合材としてポリイミド樹脂と炭素繊維樹脂とを選択すると、重量を4分の1と顕著に軽量化することができる。よって、ディスクに対する遠心荷重を低減できるため、過度に薄肉化する必要がなくなる。したがって、製作加工が容易となり製作誤差が減るとともに、製作コストを削減することができる。
さらには、現状のディスクで本実施形態のブレード1を支持することができることにより、高強度のディスクの開発が急務でないため、計画的に該開発を進めることができる。
【0031】
また、ブレード1の厚みを厚くすることにより、共振を抑えるためのチューニング代を多く確保することができる。
【0032】
また、孔部111は略円形状であるため、応力を一部に集中させることなく分散して負担することができる。よって、内部材11と外部材21との間に生じる摩擦による減衰効果を期待することができる。
【0033】
また、内部に繊維類が設けられた型に樹脂液を注入し、繊維類を含浸し硬化させるレジントランスファー成型法によれば、短期間で製造することが可能となる。
【0034】
なお、本発明は、蒸気タービンのみに適用され得るものではなく、インペラー等同様な構成を有する流体回転機械にも適用され得るものである。
【0035】
また、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0036】
例えば、孔部111の構成として、円形に限られず矩形又は矩形の端部に丸みをもたせた形状でもよく、孔部111の配列を密になるような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…回転機械翼(タービンブレード)
11…内部材
21…外部材
111…孔部
F…補強領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード状に延在する回転機械翼であって、
回転機械翼の延在方向に延びるとともに板厚方向に貫通する複数の孔部が形成された多孔鋼板からなる内部材と、
複合材からなるとともに、前記内部材を内包して前記回転機械翼の外面を形成する外部材とを備えることを特徴とする回転機械翼。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機械翼において、
前記孔部は略円形であることを特徴とする回転機械翼。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転機械翼において、
前記内部材の周縁部には、該周縁部を巡るように補強領域が形成され、
該補強領域の内方に前記孔部が形成されていることを特徴とする回転機械翼。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の回転機械翼において、
前記内部材は、高張力鋼からなり、
前記外部材は、ポリイミド樹脂と炭素繊維樹脂とを含む複合材であることを特徴とする回転機械翼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52624(P2013−52624A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193239(P2011−193239)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】