説明

回転炉及び回転炉用流体供給装置

【課題】炉本体内の雰囲気改善を容易に図ることができる回転炉及び回転炉用流体供給装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係るロータリーキルン1によれば、キルン本体2の処理部2cへ導入される窒素ガスGがN入口部16から供給され、キルン本体2の外壁面2aに沿って敷設されたN溜め配管14に溜められる。このN溜め配管14は、キルン本体2と共に回転するため、キルン本体2は支障なく回転することができる。そして、N溜め配管14に溜められた窒素ガスGは、N出口部30を通じて処理部2cへ導入される。よって、キルン本体2内の任意の箇所に雰囲気改善のための窒素ガスGを供給することができ、キルン本体2内の雰囲気改善を図り易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転炉及び回転炉用流体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物等の被処理物を加熱処理するための回転炉として、特開2001−241850号公報に記載されたロータリーキルンが知られている。この種の回転炉は、回転する筒状の炉本体を備え、炉本体の回転によって廃棄物を攪拌・燃焼する。ところで、回転炉における効率的な燃焼のためには炉本体内の雰囲気の管理が重要となる。例えば、製鋼ダスト等の亜鉛含有ダストを燃焼処理するために廃プラスチック等を代替燃料兼還元剤として用いるにあたり、炉本体内の一酸化炭素(CO)濃度や酸素(O)濃度が所望の濃度となるよう管理することが求められる。また、炉本体内の温度や燃焼状態の管理も必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−241850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の回転炉では、廃棄物の移送及び攪拌のために炉本体が回転する構造であるため、この炉本体内に不活性ガス等の流体を供給して雰囲気改善を図ることは構造上、難しく、結果として炉本体内の雰囲気を改善することが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、炉本体内の雰囲気改善を容易に図ることができる回転炉及び回転炉用流体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、筒状の炉本体を備え、炉本体を回転軸回りに回転させながら炉本体の内部の被処理物を加熱反応させる回転炉であって、炉本体の外壁面に沿って敷設された管であり、炉本体の内部へ導入される流体が溜められる配管部と、配管部の内部に連通して設けられ、流体を配管部の内部に受け入れる流体入口部と、配管部の内部と炉本体の内部とに連通して設けられ、流体入口部から供給され、且つ配管部に溜められた流体を炉本体の内部へ導入する流体出口部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の回転炉によれば、炉本体の内部へ導入される流体が流体入口部から供給され、炉本体の外壁面に沿って敷設された配管部に溜められる。この配管部は、炉本体と共に回転するため、炉本体は支障なく回転することができる。そして、配管部に溜められた流体は、流体出口部を通じて炉本体の内部へ導入される。よって、炉本体内の任意の箇所に雰囲気改善のための流体を供給することができ、炉本体内の雰囲気改善を図り易くなる。
【0008】
さらに、炉本体内の雰囲気を検出するセンサを更に備え、流体は不活性ガスであり、流体出口部は、センサによる検出領域に流体を吐出する吐出部を有すると好適である。この構成によれば、不活性ガスからなる流体がセンサによる検出領域に吐出される。従って、炉本体内にダスト等の浮遊物質が浮遊している場合であっても流体の吐出によって浮遊物質のセンサへの寄り付きが防止される。また、流体は不活性ガスであるため、炉本体内の反応に影響を与えない。したがって、センサにおける測定精度の低下を防止でき、炉本体内の雰囲気を好適に管理できる。
【0009】
さらに、配管部は、炉本体の周方向に沿って環状に敷設された管からなると好適である。この構成によれば、配管部が炉本体の周方向に沿って敷設された管からなるので炉本体の回転に邪魔になり難く、さらに、その管は炉本体を取り囲むような環状であるために流体を溜めておく量を増加させ易い。さらに、流体入口部や流体出口部を炉本体の周方向の適当な位置に配置することができるため、流体の入口及び出口の位置を自由にレイアウトできる。
【0010】
さらに、流体入口部の回転軌道上に配置されると共に、流体入口部が通過するときに流体入口部に流体を供給する流体供給部を更に備えると好適である。この構成によれば、流体供給部が配置された場所を流体入口部が通過するときに流体供給部から流体入口部に流体が供給される。その結果として、炉本体の回転に伴って流体を自動的に供給する構造を容易に実現できる。
【0011】
さらに、流体入口部は、流体を受け入れる導入管を有し、流体供給部は、導入管に着脱可能で、且つ導入管に流体を供給する供給管と、導入管の移動に連動して供給管を揺動自在に保持するリンク機構と、を有すると好適である。この構成によれば、導入管に接続した供給管は、導入管の移動に追従するように揺動し、その間、供給管から導入管に対して流体が供給される。その結果として、炉本体の回転に伴って流体を自動的に供給するための構造を簡素化する上で有利である。
【0012】
さらに、流体供給部は、供給管が導入管から離脱した際にリンク機構を初期状態に戻す弾性復元部を有すると好適である。この構成によれば、導入管が供給管の揺動範囲から外れて離脱すると、弾性復元部がリンク機構を初期状態に戻すため、供給管は、導入管に接続される前の状態まで自動的に戻るようになり、流体入口部が通過する毎に導入管に流体を供給できる。
【0013】
また、本発明は、回転可能な筒状の炉本体と、炉本体の外壁面に沿って敷設された管であり、炉本体の内部へ導入される流体が溜められる配管部と、配管部の内部に連通して設けられ、流体を配管部の内部に受け入れる流体入口部と、配管部の内部と炉本体の内部とに連通して設けられ、配管部に溜められた流体を炉本体の内部へ導入する流体出口部と、を備える回転炉の流体入口部に流体を供給する回転炉用流体供給装置において、流体入口部の回転軌道上に配置されると共に、流体入口部が通過するときに流体入口部に流体を供給する流体供給部を備え、流体供給部は、流体入口部における流体の導入管に着脱可能で、且つ導入管に流体を供給する供給管と、導入管の移動に連動して供給管を揺動自在に保持するリンク機構と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、流体供給部が配置された場所を流体入口部が通過するときに流体供給部から流体入口部に流体が供給される。その結果として、炉本体の回転に伴って流体を自動的に供給することができ、炉本体内の任意の箇所に雰囲気改善のための流体を供給して炉本体内の雰囲気改善を図り易くなる。さらに、導入管に接続した供給管は、導入管の移動に追従するように揺動し、その間、供給管から導入管に対して流体が供給される。その結果として、炉本体の回転に伴って流体を自動的に供給するための構造を簡素化する上で有利である。
【0015】
さらに、流体供給部は、供給管が導入管から離脱した際にリンク機構を初期状態に戻す弾性復元部を有すると好適である。この構成によれば、導入管が供給管の揺動範囲から外れて離脱すると、弾性復元部がリンク機構を初期状態に戻すため、供給管は、導入管に接続される前の状態まで自動的に戻るようになり、流体入口部が通過する毎に導入管に流体を供給できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回転炉及び回転炉用流体供給装置によれば、炉本体内の雰囲気改善を図り易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るロータリーキルンの正面断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】N入口部の正面図である。
【図5】N入口部の側面図である。
【図6】図1の回転炉に設けられるNチャージ装置の正面図である。
【図7】Nチャージ装置の側面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るロータリーキルンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態に係るロータリーキルン(回転炉)について詳細に説明する。図1〜図3に示されるように、ロータリーキルン1は、製鋼所にて発生する亜鉛含有ダストを被燃焼物(被処理物)Wとして、還元状態にて燃焼処理(加熱反応処理)するための還元炉である。ロータリーキルン1は、水平に設置された円筒形状のキルン本体(炉本体)2と、キルン本体2の入口部2bに設けられたフロントウォール3と、キルン本体2の下部に配置されてキルン本体2を回転可能に支持する回転支持部4と、キルン本体2を回転駆動させる駆動装置5と、キルン本体2の内部へ導入される流体である窒素ガス(以下、「N」ともいう)Gを供給するNチャージ装置(流体供給部)6とを備えている。
【0019】
キルン本体2は、その上流端である入口部2bにおいてフロントウォール3により閉じられると共に、フロントウォール3に対して回転自在に設置されている。また、図示は省略するが、キルン本体2の下流端である出口部2dは後段の二次燃焼炉に挿入されており、キルン本体2は、二次燃焼炉に対しても回転自在に設置されている。キルン本体2には耐熱レンガ9が内張りされており、耐熱レンガ9の内側には被燃焼物Wを収容するための処理部(内部)2cが形成されている。なお、キルン本体2は、入口部2bから出口部2dに向かって下方に傾斜して設置される場合もある。
【0020】
フロントウォール3には、被燃焼物Wを処理部2cに導入するための被燃焼物導入管7と、被燃焼物Wを加熱するためのバーナ8とがフロントウォール3を貫通するように設けられている。ロータリーキルン1では、被燃焼物導入管7を通じて処理部2cに導入された被燃焼物Wがバーナ8により発せられる火炎Fによって加熱されることにより燃焼処理が行われる。フロントウォール3には、燃焼処理において必要とされる灯油等の燃料、廃プラスチック等の燃料兼還元剤、及び燃焼用空気を処理部2cに導入するための各導入口(図示せず)が設けられる。
【0021】
駆動装置5(図3参照)は、キルン本体2の側方においてベースB上に配置された駆動装置架台5aと、駆動装置架台5a上に設けられた駆動源(図示せず)と、駆動側スプロケット5bと駆動チェーン5cとを備えてなり、駆動チェーン5cを介して回転力をキルン本体2の外壁面2aに設けられたキルン側スプロケット19に伝達させることにより、回転軸Aを中心としてキルン本体2を回転方向Rに回転させる。ここで、キルン本体2の回転速度は約0.83rpmとされる。回転支持部4は、ベースB上に配置され、キルン本体2の幅方向に沿って設けられた回転支持架台4aと、回転支持架台4a上においてキルン本体2の幅方向に離間して設けられた1対のローラ軸4b,ローラ4cとを備えてなる。回転支持部4は、キルン本体2の長手方向に離間した2箇所に配置され(図1参照)、キルン本体2の外壁面2aに設けられたタイヤ10に4つのローラ4cが転動自在に周接することにより、キルン本体2を回転可能に支持する。
【0022】
キルン本体2の長手方向中央付近には、処理部2cにおける還元状態を監視制御するための一酸化炭素(CO)センサ11が設けられている。COセンサ11は、レーザ光を用いて処理部2cの検出領域DにおけるCO濃度(雰囲気)を検出するセンサであり、レーザ光を出射させる光源側部12と、光源側部12から出射したレーザ光を受光しCO濃度を検出する受光側部13とから構成されている。COセンサ11では、レーザ光源部12aにて発生したレーザ光は、キルン本体2及び耐熱レンガ9を貫通するレーザ出射管12bを通ってレーザ出射管端部12dから出射する。一方、レーザ出射管端部12dから出射して検出領域Dを通ったレーザ光は、レーザ受光管端部13dから入射してレーザ受光管13bを通り、レーザ受光部13aによって受光される。COセンサ11では、特定の波長におけるレーザ光の吸収率等に基づいて、検出領域DにおけるCO濃度が検出され、検出結果を示す信号は図示しない無線通信ユニットによって送信される。
【0023】
さらに、図1及び図3に示されるように、キルン本体2には、COセンサ11よりも上流側において、外壁面2aの周方向に沿って環状のN溜め配管(配管部)14が敷設されている。N溜め配管14は、キルン本体2の内部へ導入される不活性ガスとしての窒素ガスGが溜められる配管である。N溜め配管14は、外壁面2aに立設されたアングル材からなる複数のN溜め管サポート20に支持されることにより、外壁面2aから所定の距離だけ離間して設けられ、キルン本体2と共に回転可能とされている。また、N溜め配管14に対しては、その周方向の所定の位置において、窒素ガスGをNチャージ装置6から供給されてN溜め配管14の内部に受け入れるN入口部(流体入口部)16と、N溜め配管14に溜められた窒素ガスGを処理部2cに受け入れるN出口部(流体出口部)30とが設けられている。
【0024】
溜め配管14は、N入口管29によってN入口部16に接続されており、N入口管29との接続部において逆止弁22及び安全弁23を備えている。その他にも、N溜め配管14は、N溜め配管14の内部の圧力を検出する圧力計24、N溜め配管14の内部の温度を検出する温度計26、及び、温度計26により検出された温度に応じて窒素ガスGを放出し、N溜め配管14の内部の温度を調節する温度調節弁27を周方向の各箇所に備えている。これらの計器類による検出結果や弁類の開閉状態を示す信号は、無線通信ユニットを介して送信される。
【0025】
出口部30は、N溜め配管14からの分岐配管に設けられたストレーナ28と、ストレーナ28の後段で二本に分岐され、窒素ガスGを各々吐出する吐出部としての光源側N供給管17と受光側N供給管18とを備えている。光源側N供給管17はCOセンサ11の光源側N供給部12cに接続され、受光側N供給管18はCOセンサ11の受光側N供給部13cに接続される(図1参照)。N出口部30は、N溜め配管14に溜められた窒素ガスGを、レーザ出射管12b及びレーザ受光管13bを通して検出領域Dに吐出する。なお、光源側N供給管17及び受光側N供給管18としては、耐熱チューブを用いることができる。
【0026】
図4及び図5に示されるように、N入口部16は、二本のN入口部サポート21に取り付けられたN入口部台座16aと、窒素ガスGを受け入れるためのN導入管16bと、キルン本体2の下方に位置したときにNチャージ装置6の一部と係合する受入側係合板16cとを備えている。なお、図4及び図5では、キルン本体2の上方に位置しているときのN入口部16を示している。
【0027】
導入管16b及び受入側係合板16cは、N入口部台座16aに取り付けられている。N導入管16bは、回転方向Rに対して垂直に設けられており、その先端がNチャージ装置6に着脱可能なプラグ構造とされ、基端側はN溜め配管14に接続されている。受入側係合板16cは、回転方向Rを基準としてN導入管16bの前方(図5では右側)に立設されており、且つN導入管16bよりも回転半径方向外側に突出している。N導入管16b及び受入側係合板16cは、キルン本体2の回転と共に所定の回転軌道を描いて移動する。
【0028】
チャージ装置6は、ベースB上であってN入口部16の回転軌道上に位置するように配置されている(図1参照)。また、図3に示されるように、Nチャージ装置6は、キルン本体2とは別の位置に配置されたNボンベ32と、Nチャージ装置6をNボンベ32に接続するためのN配管33と共に、Nチャージユニット(回転炉用流体供給装置)31を構成している。Nチャージユニット31では、Nボンベ32からNチャージ装置6へ、所定の圧力で窒素ガスGを供給可能な構成とされている。
【0029】
図6及び図7に示されるように、Nチャージ装置6は、N導入管16bに着脱可能で、且つN導入管16bに追随して移動(揺動)しつつ窒素ガスGを供給するN供給管36と、N供給管36の移動に連動してN供給管36を揺動自在に保持する平行クランク部(リンク機構)38と、N供給管36がN導入管16bから離脱した際に平行クランク部38を待機状態(初期状態)P1に戻す復元部(弾性復元部)39とを有している。
【0030】
平行クランク部38は、ベースB上に固定された固定台板部38aと、N供給管36を支持する可動支持部38cと、固定台板部38aと可動支持部38cとを連結する四本のリンク部38bとを備えている。四本のリンク部38bは、全て同一の長さであり、一端(下端)が固定台板部38aに回動自在に取り付けられ、他端(上端)が可動支持部38cに回動自在に取り付けられている。可動支持部38cは、固定台板部38aに対して常に平行であり、且つ、リンク部38bの傾動によって揺動する。可動支持部38cが揺動する方向は、キルン本体2の回転方向Rに沿った方向とされている。
【0031】
供給管36は、可動支持部38cに対して垂直に設けられ、その上端がN導入管16bに着脱可能なソケット構造とされている。また、N供給管36の上端付近にはバネを有する弁体(図示せず)が内蔵されている。この弁体は、N供給管36にN導入管16bが接続された状態ではN供給管36からN導入管16bへの窒素ガスGの流通を許容するが、N導入管16bが離脱した状態ではN供給管36からの窒素ガスGの流出を防止する。N供給管36は、N導入管16bの回転軌道に対応する位置に配置される。
【0032】
また、可動支持部38cには、N供給管36の近傍に供給側係合板40が取り付けられている。供給側係合板40は、回転方向Rを基準としてN供給管36の前方(図7では左側)に立設されており、且つN供給管36よりも上方に突出した突出部40aを有している。突出部40aは、受入側係合板16cの回転軌道に対応する位置に配置される。
【0033】
復元部39は、固定台板部38aと可動支持部38cに取り付けられたスプリング取付板39bとの間に掛け渡される二本のガススプリング39aを備えている。ガススプリング39aは、平行クランク部38の揺動面に平行な両面において、リンク部38bの外側に取り付けられる。各ガススプリング39aは、その下端が、回転方向Rを基準として前方(図7では左側)の下部取付部材38dに係止され、その上端はスプリング取付部39cに係止される。ガススプリング39aの上端が係止されるスプリング取付部39cの位置は、可動支持部38cの中央部よりも回転方向Rを基準として後方(図7では右側)寄りとされている。
【0034】
また、ベースBには、Nチャージ装置6の側方であって回転方向Rを基準として後方(図7では右側)に、待機位置停止板41が取り付けられている。待機位置停止板41は、受入側係合板16cと突出部40aとが僅かに係合する位置となるような位置にて可動支持部38cを制止する。固定台板部38aの下方には、N配管33に接続されるプラグ42が設けられており、プラグ42は、N配管接続部37に接続されている。これにより、図3に示されるNボンベ32からの窒素ガスGは、所定の圧力を持った状態でN供給管36内に供給される。
【0035】
このような構成を有するNチャージ装置6は、N入口部16のN導入管16bがN供給管36に接続されないときは、ガススプリング39aの伸張力により待機状態P1となる(図7参照)。そして、キルン本体2の回転によりN入口部16が到来すると、突出部40aに受入側係合板16cが係合され、N入口部16の移動と共に平行クランク部38及びN供給管36が移動し、N供給管36にN導入管16bが接続された接続状態P2となる。接続状態P2である間、N供給管36からN導入管16bへ窒素ガスGが供給される。さらにキルン本体2が回転し、N導入管16bがN供給管36の揺動範囲から外れて離脱し、突出部40aと受入側係合板16cとの係合状態が解かれて開放状態P3となると、N供給管36からの窒素ガスGの流出は停止され、ガススプリング39aの伸張力により再び待機状態P1に戻る。
【0036】
以上説明したロータリーキルン1では、亜鉛含有ダスト等の被燃焼物Wが廃プラスチック等の燃料兼還元剤と共に処理部2cで加熱され、還元状態にて燃焼処理される。そして、キルン本体2の回転に伴って被燃焼物Wは漸次下流側へ移動し、二次燃焼室へ導入される。この過程において、亜鉛含有ダストに含まれる亜鉛が還元され、揮発により分離される。一方で、N溜め配管14からは、レーザ出射管12b及びレーザ受光管13bを介して、検出領域Dに窒素ガスが常時吐出される。そのため、キルン本体2内のダスト分等がレーザ出射管12bやレーザ受光管13bに進入することが防止され、COセンサ11における測定精度が維持される。その結果、炉内の還元雰囲気を好適に監視・制御することが可能となる。また、キルン本体2が一回転する毎に、Nチャージ装置6によるN入口部16への窒素ガスの供給が行われるため、N溜め配管14内の窒素ガスは、一定以上の圧力が保たれる。
【0037】
本実施形態のロータリーキルン1によれば、キルン本体2の処理部2cへ導入される窒素ガスGがN入口部16から供給され、キルン本体2の外壁面2aに沿って敷設されたN溜め配管14に溜められる。このN溜め配管14は、キルン本体2と共に回転するため、キルン本体2は支障なく回転することができる。そして、N溜め配管14に溜められた窒素ガスGは、N出口部30を通じて処理部2cへ導入される。よって、キルン本体2内の任意の箇所に雰囲気改善のための窒素ガスGを供給することができ、キルン本体2内の雰囲気改善を図り易くなる。
【0038】
また、ロータリーキルン1によれば、不活性ガスである窒素ガスGがCOセンサ11による検出領域Dに吐出される。従って、キルン本体2内にダスト等の浮遊物質が浮遊している場合であっても窒素ガスGの吐出によって浮遊物質のCOセンサ11への寄り付きが防止される。また、窒素ガスGは不活性ガスであるため、キルン本体2内の反応に影響を与えない。したがって、COセンサ11における測定精度の低下を防止でき、キルン本体2内の雰囲気を好適に管理できる。
【0039】
さらに、ロータリーキルン1によれば、N溜め配管14がキルン本体2の周方向に沿って敷設された管からなるのでキルン本体2の回転に邪魔になり難く、さらに、N溜め配管14はキルン本体2を取り囲むような環状であるために窒素ガスGを溜めておく量を増加させ易い。さらに、N入口部16やN出口部30をキルン本体2の周方向の適当な位置に配置することができるため、窒素ガスGの入口及び出口の位置を自由にレイアウトできる。
【0040】
さらに、ロータリーキルン1によれば、Nチャージ装置6が配置された場所をN入口部16が通過するときにNチャージ装置6からN入口部16に窒素ガスGが供給される。その結果として、キルン本体2の回転に伴って窒素ガスGを自動的に供給する構造を容易に実現できる。
【0041】
さらに、ロータリーキルン1によれば、N導入管16bに接続したN供給管36は、N導入管16bの移動に追従するように揺動し、その間、N供給管36からN導入管16bに対して窒素ガスGが供給される。その結果として、キルン本体2の回転に伴って窒素ガスGを自動的に供給するための構造を簡素化する上で有利となる。
【0042】
さらに、ロータリーキルン1によれば、N導入管16bがN供給管36の揺動範囲から外れて離脱すると、復元部39のガススプリング39aが平行クランク部38を待機状態P1に戻すため、N供給管36は、N導入管16bに接続される前の状態まで自動的に戻るようになり、N入口部16が通過する毎にN導入管16bに流体を供給できる。
【0043】
また、Nチャージユニット31によれば、Nチャージ装置6が配置された場所をN入口部16が通過するときにNチャージ装置6からN入口部16に窒素ガスGが供給される。その結果として、キルン本体2の回転に伴って窒素ガスGを自動的に供給することができ、キルン本体2内の任意の箇所に雰囲気改善のための窒素ガスGを供給してキルン本体2内の雰囲気改善を図り易くなる。さらに、N導入管16bに接続したN供給管36は、N導入管16bの移動に追従するように揺動し、その間、N供給管36からN導入管16bに対して窒素ガスGが供給される。その結果として、キルン本体2の回転に伴って窒素ガスGを自動的に供給するための構造を簡素化する上で有利となる。
【0044】
さらに、N導入管16bがN供給管36の揺動範囲から外れて離脱すると、復元部39のガススプリング39aが平行クランク部38を待機状態P1に戻すため、N供給管36は、N導入管16bに接続される前の状態まで自動的に戻るようになり、N入口部16が通過する毎にN導入管16bに流体を供給できる。
【0045】
従来のロータリーキルンでは、キルン本体内に浮遊するダストがガス分析用ノズルに付着し、ガス分析計によるガス濃度の検出が困難であった。また、ダストの付着を防止するためにガス分析用ノズルに対して不活性ガスをパージするには、高圧の充填容器であるガスボンベを回転するキルン本体2に設置することが必要となるが、安全上あるいは法規制上、キルン本体2へのガスボンベの設置は困難であった。ロータリーキルン1及びNチャージユニット31によれば、窒素ガスGをN溜め配管14に断続的に溜め、ノズルパージ用の窒素ガスGを連続的に供給することが可能となり、キルン本体2内のCO濃度を精度良く検出することができる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では単一のN溜め配管14が敷設される場合について説明したが、キルン本体2の長手方向に複数のN溜め配管14A,14B,14Cを配置してもよい(図8参照)。このようにすれば、キルン本体2の長手方向の任意の箇所においてキルン本体2内の雰囲気改善を図ることができる。また、N入口部はN溜め配管14の一箇所にのみ設けられる場合に限られず、N溜め配管14の周方向において複数設けられてもよい。このようにすれば、窒素ガスを供給し得る頻度が増加するため、キルン本体2内への供給量や吐出圧力を増大させることができる。
【0047】
また、上記実施形態では不活性ガスである窒素ガスGをキルン本体2内に供給する場合について説明したが、供給流体は窒素ガスに限られず、還元雰囲気を形成するための一酸化炭素(CO)ガスや、燃焼を促進する酸素(O)ガスや空気であってもよい。また、供給流体は気体に限られず、キルン本体2内の温度を調整するための水であってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では被燃焼物Wを燃焼処理するためのロータリーキルン1について説明したが、燃焼に限られず、例えば焙焼のための回転炉であってもよい。さらにまた、上記実施形態ではNチャージユニット31の平行クランク部38がガススプリング39aにより待機状態P1に戻る場合について説明したが、流体の供給量によっては手動で位置を戻すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…ロータリーキルン(回転炉)、2…キルン本体(炉本体)、2a…外壁面、6…Nチャージ装置(流体供給部)、11…COセンサ(センサ)、14…N2溜め配管(配管部)、16…N入口部(流体入口部)、16b…N導入管(導入管)、17…光源側N供給管(吐出部)、18…受光側N供給管(吐出部)、31…Nチャージユニット(回転炉用流体供給装置)、36…N供給管(供給管)、38…平行クランク部(リンク機構)、39…復元部(弾性復元部)、A…回転軸、D…検出領域、G…窒素ガス(流体)、P1…待機状態(初期状態)、W…被燃焼物(被処理物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の炉本体を備え、前記炉本体を回転軸回りに回転させながら前記炉本体の内部の被処理物を加熱反応させる回転炉であって、
前記炉本体の外壁面に沿って敷設された管であり、前記炉本体の内部へ導入される流体が溜められる配管部と、
前記配管部の内部に連通して設けられ、前記流体を前記配管部の内部に受け入れる流体入口部と、
前記配管部の内部と前記炉本体の内部とに連通して設けられ、前記流体入口部から供給され、且つ前記配管部に溜められた前記流体を前記炉本体の内部へ導入する流体出口部と、を備えることを特徴とする回転炉。
【請求項2】
前記炉本体内の雰囲気を検出するセンサを更に備え、
前記流体は不活性ガスであり、
前記流体出口部は、前記センサによる検出領域に前記流体を吐出する吐出部を有することを特徴とする請求項1に記載の回転炉。
【請求項3】
前記配管部は、前記炉本体の周方向に沿って環状に敷設された管からなることを特徴とする請求項1または2記載の回転炉。
【請求項4】
前記流体入口部の回転軌道上に配置されると共に、前記流体入口部が通過するときに前記流体入口部に前記流体を供給する流体供給部を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の回転炉。
【請求項5】
前記流体入口部は、前記流体を受け入れる導入管を有し、
前記流体供給部は、前記導入管に着脱可能で、且つ前記導入管に前記流体を供給する供給管と、前記導入管の移動に連動して前記供給管を揺動自在に保持するリンク機構と、を有することを特徴とする請求項4記載の回転炉。
【請求項6】
前記流体供給部は、前記供給管が前記導入管から離脱した際に前記リンク機構を初期状態に戻す弾性復元部を有することを特徴とする請求項5記載の回転炉。
【請求項7】
回転可能な筒状の炉本体と、前記炉本体の外壁面に沿って敷設された管であり、前記炉本体の内部へ導入される流体が溜められる配管部と、前記配管部の内部に連通して設けられ、前記流体を前記配管部の内部に受け入れる流体入口部と、前記配管部の内部と前記炉本体の内部とに連通して設けられ、前記配管部に溜められた前記流体を前記炉本体の内部へ導入する流体出口部と、を備える回転炉の前記流体入口部に前記流体を供給する回転炉用流体供給装置において、
前記流体入口部の回転軌道上に配置されると共に、前記流体入口部が通過するときに前記流体入口部に前記流体を供給する流体供給部を備え、
前記流体供給部は、前記流体入口部における前記流体の導入管に着脱可能で、且つ前記導入管に前記流体を供給する供給管と、前記導入管の移動に連動して前記供給管を揺動自在に保持するリンク機構と、を有することを特徴とする回転炉用流体供給装置。
【請求項8】
前記流体供給部は、前記供給管が前記導入管から離脱した際に前記リンク機構を初期状態に戻す弾性復元部を有することを特徴とする請求項7記載の回転炉用流体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−7444(P2011−7444A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152729(P2009−152729)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】