説明

回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置

【課題】温度変化があった場合でも、ギヤのバックラッシュの変化量を低減できる回転角度の検出精度のよい回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ケース8は、センサハウジング9との取付け部分、及び検出ギヤ4の回転を支持する部分に線膨張係数の小さい金属により形成されたインサート部材11がインサート成形されている。また、回転体10及びメインギヤ2内に装着されメインギヤ2を保持する保持リング3が同じく線膨張係数が小さい金属材料で形成されている。この保持リング3を介してメインギヤ2は回転体10に圧入され、回転体10にメインギヤ2がガタのない状態で組付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリングホイールの回転角度検出装置は、ステアリングのシャフトに係合されたメインギヤとメインギヤに噛合する検出装置のケースに取付けられた検出ギヤで構成される。運転時にステアリングホイールを操舵するとメインギヤが回転し、これに連動して検出ギヤが回転するため、検出ギヤに装着された磁石と対向する磁気式角度センサが磁界の向きを検知しステアリングホイールの回転角度を検出している。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−344103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような回転角度検出装置においては、メインギヤと検出ギヤ及びケースは線膨張係数がほぼ同一の樹脂材で形成されているのに対し、これらを保持するハウジングはアルミダイカスト材が使用され、また、メインギヤが係合されるステアリングの軸は鉄系金属材のため、線膨張係数が異なる材料で形成される。そして、温度変化があった場合、メインギヤと検出ギヤ間のバックラッシュが大きくなり、右切り左切りの操舵を繰り返した場合、ギヤのバックラッシュがあるため操舵方向が逆になったとき、一時その位置を保ち、それから逆方向に動き出すため、回転角度の検出誤差が大きくなり角度精度が悪化する。
このため、温度変化があってもギヤのバックラッシュの増加を抑制できる回転角度の検出精度のよい回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置を得ることが課題となっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、温度変化があった場合でも、ギヤのバックラッシュの変化量を低減できる回転角度の検出精度のよい回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転体に連動して回転するメインギヤと、前記メインギヤを保持するメインギヤ保持部と、前記メインギヤに連動して回転する検出ギヤと、前記検出ギヤの回転を検出する検出手段と、前記検出ギヤを回転可能に支持するとともに、前記検出手段を配置するケースと、前記ケースが取付けられるセンサハウジングとを有し、前記ケースの前記センサハウジングとの取付け面と前記検出ギヤの回転支持部に線膨張係数の小さい部材をインサート成形するとともに、前記回転体と前記メインギヤ保持部を線膨張係数の小さい部材により形成したことを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、線膨張係数が比較的大きい樹脂材料により形成されるメインギヤ及び検出ギヤに対し、これらの回転を支持するそれぞれのメインギヤを保持するシャフトとメインギヤ保持部及び検出ギヤを支持するケースの回転支持部を例えば線膨張係数の小さい金属材料を組み合わせて用いるようになっている。これによりメインギヤと検出ギヤとの噛合部分を構成する回転角度検出装置のメインギヤ側と検出ギヤ側の線膨張差を小さくすることができる。このため、温度変化があっても、メインギヤ及び検出ギヤの軸芯間の距離の変化に影響を及ぼすことが抑制され、ギヤのバックラッシュの温度に対する変化量を低減することができる。その結果、誤差がなく検出精度の高い回転角度を得ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、電動パワーステアリング装置において、請求項1に記載の回転角度検出装置を備えてなることをその要旨とする。
請求項1に記載の回転角度検出装置によれば、その検出回転角の精度向上が図られるので、車両の操舵フィーリングを向上した電動パワーステアリング装置にできる。
【発明の効果】
【0009】
温度変化があった場合でも、ギヤのバックラッシュの変化量を低減できる回転角度の検出精度のよい回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実態の形態に係る回転角度検出装置の平面図である。
【図2】本実施の形態に係る回転角度検出装置の構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を説明する平面図である。
図1を参照して、メインギヤ2は外周に平歯車が形成された回転体で、内周部には中央に挿通するシャフト10を係合する保持リング3が設けられている。そして、検出ギヤ4はステアリングホイールの回転角度を検出する検出体で、この外周に形成された平歯車がメインギヤ2の平歯車に噛合し回転するとともに、この中央には、磁石5がインサート成形等により装着されている。
【0012】
また、検出ギヤ4との対向面には、ホールIC(磁界検出素子)等の磁気式角度センサ6が図示しない回路基板に装着され、この対向した磁石5と磁気式角度センサ6によって回転角度検出部7が構成されている。
そして、これら磁石5と磁気式角度センサ6からなる回転角度検出部7及び検出ギヤ4は、ケース8に配置される。
さらに、ケース8はアルミダイカスト材からなるセンサハウジング9に当接して取付けられる。
【0013】
以上の構成において、ステアリングホイールを操舵すると、これに伴ってメインギヤ2が回転し、この外周の平歯車で噛合した検出ギヤ4も回転する。
そして、検出ギヤ4の回転に伴ってこの中央に装着された回転角度検出部7の磁石5の磁気方向が変化し、この変化する磁気方向を磁気式角度センサ6が検出する。磁気式角度センサ6は、図示しない周波の幅が増加減少する所定のPWM波形が連続する信号として、外部の制御手段(図示せず)へ出力し、この検出信号は回転角度信号に変換される。
【0014】
次に、図2は、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置1における取付け部の構造を説明する断面図である。
【0015】
図2に示すように、ケース8は、センサハウジング9との取付け部分、及び検出ギヤ4の回転を支持する部分に線膨張係数の小さい金属、例えばアンバー材などにより形成されたインサート部材11がインサート成形されている。また、シャフト10及びメインギヤ2内に装着されメインギヤ2を保持する保持リング3が同じく線膨張係数が小さい金属材料で形成されている。この保持リング3を介してメインギヤ2はシャフト10に圧入され、シャフト10にメインギヤ2がガタのない状態で組付けられる。
【0016】
上記のような回転角度検出装置1は、保持リング3がメインギヤ2に装着されメインギヤ2がシャフト10に圧入されることにより、メインギヤ2が検出対象物であるステアリングホイールの回転に対し連動して回転可能となる。
【0017】
また、ケース8がインサート部材11を介してセンサハウジング9に取付けられ、検出ギヤ4はケース8内のインサート部材11により回転可能に支持されている。そして、ステアリングホイールの操舵に応じて、メインギヤ2が回転すると、メインギヤ2に噛合する検出ギヤ4が連動して回転する。
【0018】
上記構成によれば、ケース8において検出ギヤ4の回転を支持する軸芯部分及びアルミダイカスト材などで形成されるセンサハウジング9に当接するケース8の取付け部分にインサート成形するインサート部材11を線膨張係数が小さい金属材料を組み合わせて用いる構成になっている。また、メインギヤ2を保持する保持リング3及びシャフト10にも線膨張係数の小さい材料を用いている。即ち、シャフト10、保持リング3、及びケース8のセンサハウジング9との取付け面と検出ギヤ4の支持部を形成するインサート部材11は、線膨張係数がほぼ同一でかつ小さい金属材料(例えばアンバー材)で形成されている。
【0019】
このため、高温時、低温時など温度変化があっても、それぞれ鉄系金属であるシャフト10を軸芯とするメインギヤ2とケース8のインサート部材11を軸芯とする検出ギヤ4が噛合する部分の線膨張差を小さくすることができ、メインギヤ2と検出ギヤ4との軸芯間の距離の変化を抑えることができる。その結果、常温時と同等のギヤのバックラッシュを確保することができる。
本実施形態のように、特に車両のステアリングホイールにより操舵方向を繰り返し切り替えるような操舵をする場合、ステアリングホイールの高精度な回転角度検出が可能となる。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、温度変化があった場合でも、ギヤのバックラッシュの変化量を低減できるため、ヒシテリシスの増加を抑制し、誤差がなく回転角度を正確に検出できる。
【0021】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、1つのメインギヤに対し1つの検出ギヤで構成したが、メインギヤに噛合する2つ以上の検出ギヤで構成されてもよい。
・更に、メインギヤに第一の検出ギヤを噛合させるとともに、この第一の検出ギヤに第二の検出ギヤを噛合させる構成としても本発明の実施は可能である。
・また、本実施形態では、線膨張係数の小さい金属材料、例えばアンバー材などを使用し、鉄系金属からの置換え、及びインサート成形するとしたが、それ以外の線膨張係数の小さい他の金属材料または樹脂成形品を使用してもよい。
・本実施形態では、車両のステアリングホイールに適用した例を示したが、工作機械等に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1:回転角度検出装置、2:メインギヤ、3:保持リング、4:検出ギヤ、5:磁石、
6:磁気式角度センサ、7:回転角度検出部、8:ケース、9:センサハウジング、
10:シャフト、11:インサート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に連動して回転するメインギヤと、
前記メインギヤを保持するメインギヤ保持部と、
前記メインギヤに連動して回転する検出ギヤと、
前記検出ギヤの回転を検出する検出手段と、
前記検出ギヤを回転可能に支持するとともに、前記検出手段を配置するケースと、
前記ケースが取付けられるセンサハウジングと、を有し、
前記ケースの前記センサハウジングとの取付け面と前記検出ギヤの回転支持部に線膨張係数の小さい部材をインサート成形するとともに、前記回転体と前記メインギヤ保持部を線膨張係数の小さい部材により形成したことを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角度検出装置を備えてなる電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−112926(P2012−112926A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67596(P2011−67596)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】