説明

回転角度検出装置

【課題】自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関し、部品点数が少なく安価なものを提供することを目的とする。
【解決手段】カバー20に外方開口の略箱状で、側壁部20Bに端子21が内外方に貫通したコネクタ部20Aを一体に形成すると共に、内方の端子21の接続部21Aに配線基板17を接続することによって、カバー20にコネクタ部20Aが一体に形成されているため、部品点数が少なく安価な回転角度検出装置にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングの回転角度を検出し、この回転角度を用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような従来の回転角度検出装置について、図3及び図4を用いて説明する。
【0004】
図3は従来の回転角度検出装置の断面図、図4は同分解斜視図であり、同図において、1は側面外周に平歯車部1Aが形成された合成樹脂製の回転体で、中央筒部内周には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する一対の係合部1Bが形成されている。
【0005】
そして、2は側面外周に平歯車部2Aが形成された合成樹脂製の第一の検出体、3は側面外周に平歯車部2Aとは歯数の異なる平歯車部3Aが形成された合成樹脂製の第二の検出体で、第一の検出体2の平歯車部2Aが回転体1の平歯車部1Aに噛合すると共に、第二の検出体3の平歯車部3Aが第一の検出体2の平歯車部2Aに噛合している。
【0006】
また、4は右方に略円形の開口部が形成されたケースで、裏面の略筒状の支持部4Aに回転体1が、軸部4Bに第一の検出体2や第二の検出体3が各々回転可能に支持されて、第一の検出体2の中央下面には磁石5が、第二の検出体3の中央下面には磁石6がインサート成形等により固定されている。
【0007】
さらに、7は第一及び第二の検出体2、3の下方にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成され、第一の検出体2の磁石5と、第二の検出体3の磁石6との対向面には、磁気検出素子8と9が各々装着される共に、マイコン等の電子部品によって、磁気検出素子8や9に接続された制御手段10が形成されている。
【0008】
そして、11は合成樹脂製の保持部11Aに略L字状の複数の端子11Cがインサート成形された接続体で、上面の保持突起11Bが配線基板7の保持孔7Aに嵌合すると共に、端子11C右側の一端が配線基板7の接続孔7Bに挿通してはんだ付け等により実装され、接続体11が配線基板7上に装着されている。
【0009】
また、12は右側に略円形の開口部が設けられたカバーで、ケース4裏面のボス4Cが配線基板7の位置決め孔7Cに挿通して、配線基板7がケース4に対し位置決めされると共に、回転体1や第一及び第二の検出体2、3等が収納されたケース4の下方をカバー12が覆って回転角度検出装置が構成されている。
【0010】
なお、このような回転角度検出装置は、接続体11の端子11C左側の他端に、自動車本体から配線されたリード線の雄コネクタ(図示せず)が接続されると共に、回転体1の係合部1Bにステアリング軸が挿通して自動車に装着される。
【0011】
以上の構成において、ステアリングホイールを回転すると、ステアリング軸に係止された回転体1が回転し、これに連動して第一の検出体2が、第一の検出体2に連動して第二の検出体3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5、6も回転する。
【0012】
そして、回転に伴って方向が変化する磁石5、6の磁力を磁気検出素子8、9が、正弦波や余弦波の電圧波形からなる検出信号として各々検出するが、第一の検出体2と第二の検出体3は歯数が異なり回転速度も異なる為、磁気検出素子8と9のデ−タ波形は、周期が異なり位相のずれた検出信号となる。
【0013】
また、この第一の検出体2と第二の検出体3からの二つの異なる検出信号と各々の歯数から、制御手段10が所定の演算を行って、回転体1即ち、ステアリングホイールの回転角度を検出すると共に、この角度が自動車の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0014】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−214763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の回転角度検出装置においては、端子11Cを保持部11Aにインサート成形して接続体11を製作し、この接続体11を配線基板7上に実装して装着しているため、部品点数が多く、高価なものになり易いという課題があった。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、部品点数が少なく安価な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0019】
本発明の請求項1に記載の発明は、カバーに外方開口の略箱状で、側壁部に端子が内外方に貫通したコネクタ部を一体に形成すると共に、内方の端子の接続部に配線基板を接続したものであり、カバーにコネクタ部が一体に形成されているため、接続体のような別部品が不要となり、部品点数が少なく安価なものを得ることができるという作用を有する。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、端子の外方他端を配線基板に対し略平行に配置すると共に、端子の接続部を略U字状に折曲形成したものであり、例えば端子の上方向に向いた略U字状の接続部に、配線基板を上から載置して端子の接続部を配線基板の接続孔に容易に挿通させることができると共に、コネクタ部と配線基板が上下方向に重ならず、隣合って配置できるため、組立てが容易で薄型のものにできるという作用を有する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、部品点数が少なく安価な回転角度検出装置を実現できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の要部断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】従来の回転角度検出装置の要部断面図
【図4】同分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0024】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0025】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の要部断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1は側面外周に平歯車部1Aが形成された合成樹脂製の回転体で、中央筒部内周には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する一対の係合部1Bが形成されている。
【0026】
そして、2は側面外周に平歯車部2Aが形成されたポリオキシメチレン等の合成樹脂製の第一の検出体、3は側面外周に平歯車部2Aとは歯数の異なる平歯車部3Aが形成されたポリオキシメチレン等の合成樹脂製の第二の検出体で、第一の検出体2の平歯車部2Aが回転体1の平歯車部1Aに噛合すると共に、第二の検出体3の平歯車部3Aが第一の検出体2の平歯車部2Aに噛合している。
【0027】
また、14は右側に略円形の開口部が形成されたポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂製のケースで、裏面の略筒状の支持部14Aに回転体1が、複数の軸部14Bに第一の検出体2や第二の検出体3が各々回転可能に支持されている。
【0028】
さらに、第一の検出体2の中央下面には磁石5が、第二の検出体3の中央下面には磁石6がインサート成形等により各々固定されている。
【0029】
そして、17は第一及び第二の検出体2、3の下方にほぼ平行に配置された紙フェノールやガラス入りエポキシ等の配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体2中央に装着された磁石5と、第二の検出体3中央に装着された磁石6との対向面には、AMR(異方性磁気抵抗)素子等の磁気検出素子8と9が各々装着されている。
【0030】
また、このように対向した磁石5と磁気検出素子8によって第一の検出手段が、同じく磁石6と磁気検出素子9によって第二の検出手段が各々形成されると共に、配線基板17にはマイコン等の電子部品によって、磁気検出素子8や9に接続された制御手段10が形成されている。
【0031】
さらに、20は右側に略円形に開口部が設けられたポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂製のカバーで、左側には外方に開口の略箱状で、複数の端子21がインサート成形等により内方から外方に側壁部20Bを貫通して固定されたコネクタ部20Aが一体に形成されている。
【0032】
そして、端子21は内方の一端が略U字状に形成され先端が上方向に延出した接続部21Aと、外方の他端がカバー20底面に略平行に配列された外端子部21Bからなり、接続部21Aが配線基板17の後端に配設された複数の接続孔17Aに挿通してはんだ付け等により固定されている。
【0033】
なお、配線基板17は外端子部21Bと略平行で、コネクタ部20A右側の近傍に隣合わせて配置されている。
【0034】
また、配線基板17の複数の位置決め孔17Bに、カバー20の略円柱状の位置決めボス20Cが挿通して、配線基板17がカバー20に位置決めされると共に、外端子部21Bの延出線上よりやや下方位置に保持されてカバー20に装着されている。
【0035】
このように、配線基板17を外端子部21Bに対し略平行に配置すると共に、コネクタ部20A右側の側壁部20B近傍に配線基板17を隣合せて配置し、略U字状の接続部21Aの先端を上方向に向けることによって、接続部21Aを配線基板17の接続孔17Aに挿通させる際に、配線基板17を上方から容易に嵌めることが可能で、組立てが容易となると共に、配線基板17とコネクタ部20Aを左右方向に隣合わせて配置できるため、背景技術のように接続体を配線基板上に装着する場合に比べ、上下方向の高さが低くなり、より薄型のものにすることができる。
【0036】
そして、ケース14裏面の位置決め凹部14Cにカバー20の位置決めボス20Cが嵌合して、カバー20に対し配線基板17やケース14が所定位置に位置決めされると共に、カバー20の上方をケース14が覆って回転角度検出装置が構成されている。
【0037】
なお、このような回転角度検出装置は、コネクタ部20Aの端子21の外端子部21Bに、自動車本体から配線されたリード線の雄コネクタ(図示せず)が接続されると共に、回転体1の係合部1Bにステアリング軸が挿通して自動車に装着される。
【0038】
以上の構成において、ステアリングホイールを回転すると、ステアリング軸に係止された回転体1が回転し、これに連動して第一の検出体2が、第一の検出体2に連動して第二の検出体3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5、6も回転する。
【0039】
そして、回転に伴って方向が変化する磁石5、6の磁力を磁気検出素子8、9が、正弦波や余弦波の電圧波形からなる検出信号として各々検出するが、第一の検出体2と第二の検出体3は歯数が異なり回転速度も異なる為、磁気検出素子8と9のデ−タ波形は、周期が異なり位相のずれた検出信号となる。
【0040】
なお、この時、磁気検出素子8、9が実装された配線基板17は位置決め孔17Bとカバー20の位置決めボス20Cによって、カバー20と位置決めされると共に、第一及び第二の検出体2、3が回転支持されるケース14も位置決め凹部14Cが位置決めボス20Cに嵌合して、カバー20と配線基板17及びケース14が互いに位置決めされていることにより、これらの組み合わせ等による、磁石5、6と対向する磁気検出素子8、9との中心ズレは小さく、各検出信号の誤差は少ないものとなっている。
【0041】
また、この第一の検出体2と第二の検出体3からの二つの異なる検出信号と各々の歯数から、制御手段10が所定の演算を行って、回転体1即ち、ステアリングホイールの回転角度を検出すると共に、この角度が自動車の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0042】
このように本実施の形態によれば、カバー20に外方開口の略箱状で、側壁部20Bに端子21が内外方に貫通したコネクタ部20Aを一体に形成すると共に、内方の端子21の接続部21Aに配線基板17を接続することによって、カバー20にコネクタ部20Aが一体に形成されているため、背景技術で述べたように接続体のような別部品が不要となり、部品点数が少なく安価なものを実現することができる。
【0043】
また、端子21の外端子部21Bを配線基板17に対し略平行に配置すると共に、端子21の接続部21Aを略U字状に折曲形成し、上方向に向けた略U字状の接続部21Aに、配線基板17を上から載置して接続部21Aを配線基板17の接続孔17Aに容易に挿通させることができると共に、コネクタ部20Aと配線基板17が上下方向に重ならず隣合って配置できるため、組立てが容易で薄型のものにすることができる。
【0044】
なお、以上の説明では、回転角度検出装置内にステアリングの軸と係合して連動する回転体1を設けると共に、これに連動する第一及び第二の検出体2、3を設けたものとして説明したが、ステアリングの軸に回転体が固定され、回転角度検出装置には第一及び第二の検出体や第一及び第二の検出手段及び制御手段等を設けて、ステアリング軸に固定された回転体に第一の検出体を噛合させ、第一及び第二の検出体が連動するようにして、回転体の回転角度を検出するようにしたものでも、本発明の実施は可能である。
【0045】
さらに、以上の説明では、第一及び第二の検出体2、3と第一及び第二の検出手段によって、回転体1の回転角度を検出するものとして説明したが、制御手段に記憶部を設けて、回転体に第一の検出体が連動し、第一の検出手段のみからの検出信号により回転角度を検出するものとしても、本発明の適用は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明による回転角度検出装置は、部品点数が少なく安価な回転角度検出装置を提供することができ、自動車のステアリングの回転角度検出等に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 回転体
1A、2A、3A 平歯車部
1B 係合部
2 第一の検出体
3 第二の検出体
5、6 磁石
8、9 磁気検出素子
10 制御手段
14 ケース
14A 支持部
14B 軸部
14C 位置決め凹部
17 配線基板
17A 接続孔
17B 位置決め孔
20 カバー
20A コネクタ部
20B 側壁部
20C 位置決めボス
21 端子
21A 接続部
21B 外端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングの回転操作に伴い回転する回転体に連動して回転する検出体と、前記検出体に固定された磁石と、前記検出体に対向して配置された磁気検出素子と、この磁気検出素子の検出信号から前記回転体の回転角度を検出する制御手段と、前記磁気検出素子と前記制御手段が装着された配線基板と、この配線基板が収納されたカバーからなり、前記カバーに外方開口の略箱状で、側壁部に端子が内外方に貫通したコネクタ部を設けると共に、内方の前記端子の接続部に前記配線基板を接続した回転角度検出装置。
【請求項2】
端子の外方他端を配線基板に対し略平行に配置すると共に、前記端子の接続部を略U字状に折曲形成した請求項1記載の回転角度検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−189530(P2012−189530A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55123(P2011−55123)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】