説明

回転速度検出装置付従動輪用転がり軸受ユニット

【課題】センサ22aの検出部等の押し付けに基づいてカバー18aがエンコーダ21側に押し込まれる事を防止し、このバー18aの軸方向位置を精度良く規制する。且つ、このカバー18aの外輪4への支持固定に伴って、このカバー18aに上記センサ22aの検出精度の低下に結び付く様な変形が生じる事を防止する。
【解決手段】上記カバー18aを、底板部19aと円筒部20aとを備えた有底円筒状とし、その外周縁寄り部分に外向フランジ状の突き当て部25を設ける。そして、この突き当て部25の軸方向外側面を上記外輪4の軸方向内端面に突き当てた状態で、上記カバー18aをこの外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定する。又、上記底板部19aの中央部に、上記センサ22aの検出部が対向した平板部26よりも軸方向に膨出した膨出部27を設けておく。この様な構成により、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車輪(従動輪)を懸架装置に対し回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為の、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの改良に関する。具体的には、エンコーダを設置した内部空間の軸方向内端開口部を塞ぐカバーが、センサの検出部等の押し付けに基づいて上記エンコーダ側に押し込まれる事を防止して、上記カバーの軸方向位置を精度良く規制すると共に、このカバーの外輪への支持固定に伴って、このカバーにセンサの検出精度の低下に結び付く様な変形が生じる事を防止できる構造を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の懸架装置に車輪を回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットとして、従来から各種構造のものが知られている。何れの構造の場合も、車輪と共に回転するハブの一部に支持固定したエンコーダの被検出面に、回転しない部分に支持固定したセンサの検出部を対向させている。そして、上記エンコーダの回転に伴って変化する、このセンサの出力信号の周波数又は周期に基づいて、このエンコーダと共に回転する上記車輪の回転速度を求める様に構成している。
【0003】
この様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを構成するエンコーダが泥水や塵埃等の付着により損傷する事を防止する為、或いはこのエンコーダに磁性粉等の異物が付着して、このエンコーダを利用した回転速度検出の信頼性が損なわれる事を防止する為、非磁性板製のカバーによりこのエンコーダを外部から隔てる構造が、特許文献1、2に記載される等により、従来から知られている。図12は、このうちの特許文献1に記載された構造の1例を示している。
【0004】
この回転速度検出装置付転がり軸受ユニット1は、転がり軸受ユニット2と、回転速度検出装置3とを組み合わせて成る。このうちの転がり軸受ユニット2は、外輪4とハブ5と複数個の転動体6、6とを備える。このうちの外輪4は、内周面に複列の外輪軌道7、7を、外周面に静止側フランジ8を、それぞれ有する。そして、使用状態で上記外輪4は、懸架装置を構成するナックル9に支持されて回転しない。又、上記ハブ5は、ハブ本体10と内輪11とを、かしめ部12により結合固定して成るもので、外周面に複列の内輪軌道13、13を有し、上記外輪4の内径側にこの外輪4と同心に支持されている。又、上記ハブ本体10の軸方向外端部(軸方向に関して外とは、懸架装置に組み付けた状態で車体の幅方向外寄りとなる側を言う。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)で上記外輪4の軸方向外端開口部よりも軸方向外方に突出した部分に、車輪を支持する為の回転側フランジ14を設けている。又、上記各転動体6、6は、上記両外輪軌道7、7と上記両内輪軌道13、13との間に、両列毎に複数個ずつ、保持器15、15により保持された状態で、転動自在に設けられている。更に、上記各転動体6、6を設置した内部空間16の軸方向両端部は、シールリング17とカバー18とにより塞いでいる。
【0005】
このカバー18は、アルミニウム系合金板、オーステナイト系ステンレス鋼板の如き非磁性金属板等の非磁性板製としている。この様なカバー18は、底板部19と、この底板部19の外周縁から軸方向外方に直角に折れ曲がった円筒部20とを、それぞれ備える。図12の構造では、従動輪(FF車の後輪、FR車、MR車の前輪)用の転がり軸受ユニット2を対象としている為、上記底板部19を、上記外輪4の軸方向内端開口部全体(軸方向に関して内とは、懸架装置に組み付けた状態で、車体の幅方向中央寄りとなる側を言う。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)を塞ぐ円板状としている。これに対して、駆動輪(FF車の前輪、FR車、MR車の後輪、4WD車の全輪)用の転がり軸受ユニットの場合には、特許文献2に記載された構造の様に、カバーの内径側に駆動軸を挿通すべく、底板部を円輪状とする。
【0006】
一方、上記回転速度検出装置3は、エンコーダ21とセンサ22とを備える。このうちのエンコーダ21は、磁性金属板を断面L字形で全体を円環状とした支持環23と、ゴム磁石等の永久磁石製のエンコーダ本体24とから成る。このエンコーダ本体24は、軸方向に着磁すると共に、着磁方向を円周方向に関して交互に且つ等間隔で変化させる事により、被検出面である軸方向内側面にS極とN極とを、交互に且つ等間隔に配置している。この様なエンコーダ本体24の被検出面は、上記カバー18の軸方向外側面(内面)に、微小隙間を介して近接対向させている。言い換えれば、このカバー18を上記外輪4の軸方向内端部に、上記底板部19の軸方向外側面が上記エンコーダ本体24の被検出面に近接対向する状態にまで押し込む。
【0007】
更に、上記センサ22は、前記ナックル9に支持固定した状態で、その検出部を上記底板部19の軸方向内側面(外面)に当接させている。この状態でこの検出部が、この底板部19を介して、上記エンコーダ本体24の被検出面に対向する。この状態でこのエンコーダ本体24が、上記ハブ5と共に回転すると、上記センサ22の検出部の近傍を、上記被検出面に存在するS極とN極とが交互に通過し、このセンサ22の出力が変化する。この変化の周波数は上記ハブ5の回転速度に比例し、変化の周期はこの回転速度に反比例するので、何れかに基づいて、上記ハブ5に固定した車輪の回転速度を求められる。
【0008】
上述の様な図12に示した従来構造の場合、永久磁石製のエンコーダ本体24と外部空間とを、非磁性板製のカバー18により隔てているので、このエンコーダ本体24の被検出面に、磁性粉等の異物が付着する事を防止できる。この為、この被検出面を清浄な状態に保って、上記エンコーダ本体24を利用した回転速度検出の信頼性確保を図れる。但し、この回転速度検出の信頼性をより一層向上させる面からは、次の様な点で改良の余地がある。
【0009】
第一に、上記従来構造の場合、上記カバー18の軸方向外側への変位を規制する手段が設けられていない為、このカバー18の軸方向位置を精度良く規制する事が難しくなる。例えば、このカバー18の軸方向位置を図12に示す位置に規制した後に、上記センサ22の検出部を上記底板部19の軸方向内側面(外面)に強く押し付ける等によって、上記カバー18を上記エンコーダ21側(軸方向外側)に押し込んでしまう可能性がある。そして、このカバー18の押し込み量が多くなると、上記底板部19の軸方向外側面(内面)が上記エンコーダ本体24の被検出面に衝突して、この被検出面を損傷したり、このエンコーダ本体24の被検出面と上記センサ22の検出部との検出隙間(エアギャップ)が不適正になって、センシングエラーを生じる可能性がある。更に、上記エンコーダ21を構成する支持環23の一部が、軸方向内側の列の転動体6の転動面や、これら各転動体6を保持する保持器15に接触して、転がり軸受ユニット2の軸受機能を損なう可能性もある。
【0010】
第二に、上記カバー18を上記外輪4に支持固定するのに伴って、このカバー18を構成する底板部19に、上記センサ22の検出精度の低下に結び付く様な変形が生じる可能性がある。即ち、上記カバー18を上記外輪4に支持固定すべく、前記円筒部20をこの外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定すると、この円筒部20の内径側に存在する上記底板部19に径方向内方に向いた力が加わる。そして、この力に基づいてこの底板部19が、湾曲する様に厚さ方向(軸方向内外方向)に歪み変形する可能性がある。この変形の方向及び変形の程度は予測できないので、上記底板部19のうちで、上記エンコーダ本体24の被検出面と上記センサ22の検出部との間に存在する部分の軸方向位置を精度良く規制できなくなる。例えば、このセンサ22の検出部を上記底板部19の軸方向内側面に突き当てる事でこのセンサ22の位置決めを図る場合、この底板部19が歪んでいると、この位置決めが不正確になる。この結果、上記エンコーダ本体24の被検出面から出て上記センサ22の検出部に達する磁束の密度がばらつき、回転速度検出の信頼性を確保する面から不利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4206550号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第19644744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、エンコーダを設置した内部空間の軸方向内端開口部を塞ぐカバーが、センサの検出部等の押し付けに基づいて上記エンコーダ側に押し込まれる事を防止して、上記カバーの軸方向位置を精度良く規制でき、しかも、このカバーの外輪への支持固定に伴って、このカバーに上記センサの検出精度の低下に結び付く様な変形が生じる事を防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、前述した従来から知られている回転速度検出装置付転がり軸受ユニットと同様に、外輪と、ハブと、複数個の転動体と、エンコーダと、カバーと、センサとを備える。
このうちの外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用状態で、ナックル等の懸架装置に支持されて回転しない。
又、上記ハブは、外周面に複列の内輪軌道を有し、上記外輪の内径側にこの外輪と同心に支持されたもので、外周面のうちでこの外輪の軸方向外端部よりも軸方向外方に突出した部分に、車輪(従動輪)を支持する為の回転側フランジを設けている。
又、上記各転動体は、上記両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ、転動自在に設けられている。
又、上記エンコーダは、軸方向内側面の磁気特性を円周方向に関して交互に変化させて成る円環状で、上記ハブの軸方向内端部にこのハブと同心に支持されている。
又、上記カバーは、非磁性板製で、上記外輪の軸方向内端部に支持固定されて、この外輪の軸方向内端開口部を塞いでいる。
更に、上記センサは、その検出部を上記カバーの軸方向内側面に当接若しくは近接対向させ、このカバーを介して、この検出部を上記エンコーダの軸方向内側面(被検出面)に対向させている。
【0014】
特に、本発明のうちの請求項1に記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いては、上記カバーを、円筒部と底板部とを備えた有底円筒状として、その外周縁寄り部分に設けた突き当て部の軸方向外側面を上記外輪の軸方向内端面に突き当てた状態で、上記円筒部をこの外輪の軸方向内端部に締り嵌めで嵌合固定している。
又、上記底板部の中央部で、径方向位置が上記センサの検出部が対向する部分から径方向内方に外れた部分に、このセンサの検出部が対向する部分よりも軸方向に膨出した膨出部を設けている。
【0015】
又、上述した様な請求項1に係る発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に係る発明の様に、上記センサをその一部に支持したセンサ保持板を、上記外輪の軸方向内端面との間で上記突き当て部を軸方向両側から挟持した状態で、この外輪の軸方向内端部に外嵌固定する。
更に、上述した様な請求項2に係る発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に係る発明の様に、上記センサ保持板の外周縁部に、上記外輪の軸方向内端部に外嵌固定する為の嵌合筒部を設けると共に、この嵌合筒部の軸方向外端部を径方向内方に塑性変形させてかしめ部を形成し、このかしめ部を、上記外輪の軸方向内端寄り部分の外周面に形成した凹溝に係合させる。
尚、上記請求項3に係る発明を実施する場合に好ましくは、上記かしめ部を弾性材製のシール材により覆う事で、このかしめ部と上記凹溝との間の隙間から雨水等の異物が侵入する事を防止する。
【0016】
一方、本発明のうちの請求項4に記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いては、上記カバーを、円形平板状(円板状)として、その外周縁寄り部分の軸方向外側面を上記外輪の軸方向内端面に突き当てる。そして、上記センサをその一部に支持したセンサ保持板を、上記外輪の軸方向内端面との間で上記カバーの外周縁寄り部分を軸方向両側から挟持した状態で、上記外輪の軸方向内端部に外嵌固定する。
【0017】
上述した様な請求項4に係る発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に係る発明の様に、上記カバーの外周縁部に弾性を有するシール材を、全周に亙って被覆する。そして、このカバーの外周縁部と上記センサ保持板の内周面との間で上記シール材を、全周に亙り、径方向に弾性的に圧縮した状態で挟持する。
或いは、請求項6に係る発明の様に、上記カバーの外周縁寄り部分の軸方向側面と、この軸方向側面に当接する相手面との当接部の内周縁部を、弾性を有するシール材により全周に亙り塞ぐ。
【発明の効果】
【0018】
上述の様な構成を有する本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットによれば、エンコーダを設置した内部空間の軸方向内端開口部を塞ぐカバーが、センサの検出部等の押し付けに基づいて上記エンコーダ側に押し込まれる事を防止でき、上記カバーの軸方向位置を精度良く規制できると共に、このカバーに上記センサの検出精度の低下に結び付く様な変形が生じる事を防止できる。
即ち、本発明のうち、請求項1に係る発明の場合には、カバーの外周縁寄り部分に設けた突き当て部の軸方向外側面を、請求項4に係る発明の場合には、円形平板状のカバーの外周縁寄り部分の軸方向外側面を、それぞれ外輪の軸方向内端面に突き当てた状態で、この外輪に対して支持固定する。この為、請求項1、4の何れの発明の場合にも、上記カバーが、上記センサの検出部等の押し付けに基づいて上記エンコーダ側に押し込まれる事を防止できて、上記カバーの軸方向位置を精度良く規制できる。従って、本発明の場合には、このカバーの軸方向外側面が上記エンコーダの被検出面に衝突する事を防止できて、この被検出面が損傷する事を防止できると共に、この被検出面と上記センサの検出部との間の検出隙間の値が不適正になる事も防止できる。更に、上記エンコーダの一部が転がり軸受ユニットを構成する転動体等に接触する事を防止できる為、この転がり軸受ユニットの軸受性能が低下する事も防止できる。
【0019】
更に、請求項1に係る発明の場合には、上記カバーを構成する底板部の中央部で、径方向位置が上記センサの検出部が対向する部分から径方向内方に外れた部分に膨出部を設けている。この為、上記カバーを上記外輪の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定した場合にも、上記底板部のうちの膨出部に変形を集中させて、上記センサの検出部が対向する部分には、軸方向の歪み変形が生じる事を防止できるか、その変形量を抑える事ができる。一方、請求項4に係る発明の場合には、カバーを円形平板状に構成する事により、このカバーを上記外輪の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定する事なく、この外輪に対して、センサ保持板を利用して(外輪とセンサ保持板とにより軸方向両側から挟持する事により)支持固定する。この為、上記カバーに軸方向の歪み変形が生じる事はない。従って、請求項1、4の何れの発明の場合にも、上記カバーに上記センサの検出精度の低下に結び付く様な変形が生じる事を有効に防止できる。この結果、本発明によれば、回転速度検出の為の信頼性の確保を図れる。
【0020】
又、請求項2に係る発明の場合には、上記センサを支持したセンサ保持板により、上記突き当て部を上記外輪の軸方向内端面に向けて押さえ付ける事ができる。この為、上記カバーが軸方向内側に変位する(軸方向内方に抜け出る)事を有効に防止できる。
更に、請求項3に係る発明の場合には、上記外輪に対する上記センサ保持板の軸方向内方への抜け止めを有効に図る事ができる。この為、上記カバーの軸方向内側への変位に関しても、上記請求項2に係る発明の場合に比べてより有効に図る事ができる。
【0021】
又、請求項5に係る発明の場合には、上記カバーの外周縁部と上記センサ保持板の内周面との間の水密性を保持する事ができる。
更に、請求項6に係る発明の場合には、上記カバーの外周縁寄り部分の軸方向側面と、この軸方向側面に当接する相手面との当接部を通じて、エンコーダを設置した内部空間或いはセンサを設置した空間に、雨水等の異物が侵入する事を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す部分断面図。
【図2】同第2例を示す、図1と同様の図。
【図3】同第3例を、センサとセンサ保持板とを省略して示す部分断面図。
【図4】同第4例を示す、図3と同様の図。
【図5】同第5例を示す、図3と同様の図。
【図6】同第6例を示す、図3と同様の図。
【図7】同第7例を示す、図2のA部に相当する拡大断面図。
【図8】同第8例を示す、図7と同様の図。
【図9】同第9例を示す、図1と同様の図。
【図10】同第10例を示す、図9のB部に相当する拡大断面図。
【図11】同第11例を示す、図10と同様の図。
【図12】回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの従来構造の1例を示す半部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態の第1例]
図1は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例を含めて、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニット1aの特徴は、エンコーダ21を設置した内部空間16を塞ぐ為のカバー18aの構造にある。その他の部分の構造及び作用効果に就いては、前述の図12に示した構造を含めて、従来から広く知られている構造とほぼ同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略し、以下、本例の特徴部分、及び、先に説明しなかった部分を中心に説明する。
【0024】
本例の回転速度検出装置付転がり軸受ユニット1aを構成する上記カバー18aは、SUS304等、オーステナイト系であるSUS300系列のステンレス鋼板、アルミニウム系合金等の非磁性金属板製、或いは、合成樹脂板製等の非磁性板製である。又、上記カバー18aは、底板部19aと、この底板部19aの外周縁から軸方向内方に直角に折れ曲がった円筒部20aとを備えた有底円筒状である。特に本例の場合には、この円筒部20aの軸方向内端縁から径方向外方に直角に折れ曲がる状態で、外向フランジ状の突き当て部25を設けている。この突き当て部25の外径寸法は、転がり軸受ユニット2を構成する外輪4の軸方向内端面の外径寸法と同じか、これよりも僅かに小さい。
【0025】
上記底板部19aは、平板部26と膨出部27とを有し、このうちの平板部26は、この底板部19aの外周縁寄り部分に設けられており、上記カバー18aの中心軸に対し直角方向に存在する仮想平面上に位置する。又、本例の場合には、上記平板部26の軸方向内側面の円周方向の一部に、後述するセンサ22aの検出部(ホルダの先端部36)を突き当てる。一方、上記膨出部27は、上記底板部19aの中央部で、上記平板部26から径方向内方に外れた部分に設けられており、この平板部26よりも軸方向内方に向けて膨出している。又、本例の場合には、上記円筒部20aの軸方向内端部外周面に、ゴム、ビニルの如きエラストマー等の弾性を有するシール材38を、全周に亙って被覆している。尚、このシール材38としては、例えばゴム材を加硫する事により構成する事もできるし、Oリングを利用する事もできる。
【0026】
この様なカバー18aは、上記円筒部20aを上記外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定する事により、この外輪4に対し支持固定している。特に、本例の場合には、この状態で、上記突き当て部25の軸方向外側面を、上記外輪4の軸方向内端面に全周に亙り突き当てると共に、上記平板部26の軸方向外側面(内面)を、ハブ5の内端寄り部分に外嵌固定したエンコーダ21を構成するエンコーダ本体24の被検出面に、微小隙間を介して近接対向させている。又、上記シール材38を、上記円筒部20aの軸方向内端部外周面と上記外輪4の軸方向内端部内周面との間で、全周に亙り径方向に弾性的に圧縮した状態で挟持している。これにより、本例の場合には、上記突き当て部25の軸方向外側面と上記外輪4の軸方向内端面との当接部から侵入した雨水等の異物が、上記円筒部20aとこの外輪4との嵌合部を通じて、上記エンコーダ21を設置した内部空間16に侵入する事を防止している。
【0027】
又、本例の回転速度検出装置付転がり軸受ユニット1aの場合には、上記外輪4の軸方向内端部に、後述するセンサ22aを支持する為のセンサ保持板28を、締り嵌めにより外嵌固定している。このセンサ保持板28は、炭素鋼やステンレス鋼等の鉄系金属、アルミニウム系合金等の非鉄金属、或いは、合成樹脂製で、全体をシャーレ状に構成している。即ち、上記センサ保持板28は、円形平板状の底板部29と、この底板部29の外周縁から軸方向外方に直角に折れ曲がった嵌合筒部30とを備える。又、この底板部29の外径寄り部分に通孔31を、この通孔31よりも中心寄り部分に取付孔32を、それぞれ形成している。そして、上記底板部29の外面(軸方向内側面)の一部で、上記取付孔32を囲む部分に、ナット33を、溶接、接着、圧入、かしめ等により固定している。尚、上記センサ保持板28を、炭素鋼等の錆を生じ易い金属材料から造る場合には、その表面に防錆の為の表面処理を施しておく。この様な表面処理としては、上記外輪4の軸方向内端部との嵌合部に雨水等の水分が浸入する事を防止する面から、カチオン電着塗装を好ましく使用できる。
【0028】
この様なセンサ保持板28は、上記嵌合筒部30を、上記外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌する事により、この外輪4に対して支持固定している。特に、本例の場合には、この状態で、上記底板部29の外周縁寄り部分の軸方向外側面と上記外輪4の軸方向内端面との間で、上記カバー18aの突き当て部25を、軸方向両側から挟持している。これにより、このカバー18aが軸方向内側に変位(軸方向内方に抜け出る)事を防止している。又、本例の場合には、上記センサ保持板28を上記外輪4の軸方向内端部に外嵌固定した状態で、このセンサ保持板28により、空間34を介して、上記カバー18aを軸方向内方から覆っている。
【0029】
一方、前記回転速度検出装置3を構成するエンコーダ21は、上記外輪4の軸方向内端開口部を、上記カバー18a及び上記センサ保持板28により塞ぐのに先立って、転がり軸受ユニット2を構成するハブ5(内輪11)の軸方向内端部に、締り嵌めにより外嵌固定しておく。この際、上記エンコーダ21の被検出面である、エンコーダ本体24の軸方向内側面の軸方向位置は、上記外輪4の軸方向内端面を基準として規制する。
【0030】
又、上述の様なエンコーダ21と共に上記回転速度検出装置3を構成するセンサ22aは、上記センサ保持板28に、ボルト35と前記ナット33とにより取付固定する。上記センサ22aは、ホール素子、磁気抵抗素子等の、磁束の方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子を、合成樹脂製のホルダの先端部36に包埋支持して成るもので、この磁気検出素子を包埋支持した先端部36を、軸方向外方に向け突出させている。又、上記ホルダの軸方向中間部に取付フランジ37を設けており、この取付フランジ37の先端部に、上記ボルト35の杆部を挿通する為の挿通孔を形成している。
【0031】
上記センサ22aを上記センサ保持板28に取付固定するには、上記ホルダの先端部36を、このセンサ保持板28に形成された前記通孔31を通じて上記空間34内に挿入し、前記底板部19aを構成する平板部26の軸方向内側面に突き当てると共に、上記取付フランジ37を上記ナット33の軸方向内側面に突き当てた状態で、この取付フランジ37に形成した挿通孔と、上記センサ保持板28に形成した取付孔32とを整合させる。そして、この挿通孔を軸方向内方から挿通した上記ボルト35を、上記ナット33に螺合し更に締め付ける。
【0032】
以上の様に構成する本例の回転速度検出装置付転がり軸受ユニット1aによれば、上記エンコーダ21を設置した内部空間16の軸方向内端開口部を塞ぐ前記カバー18aが、上記センサ22aの検出部(ホルダの先端部36)等の押し付けに基づいて、上記エンコーダ21側(軸方向外側)に押し込まれる事を防止できて、上記カバー18aの軸方向位置を精度良く規制できる。又、このカバー18aに上記センサ22aの検出精度の低下に結び付く様な変形が生じる事を防止できる。
【0033】
即ち、本例の場合には、上記カバー18aの外周縁寄り部分に設けた前記突き当て部25の軸方向外側面を、前記外輪4の軸方向内端面に突き当てた状態で、上記カバー18aをこの外輪4に対し内嵌固定している。この為、本例の様に、上記底板部19aの軸方向内側面に上記ホルダの先端部36等を押し付けた場合にも、このカバー18aが上記エンコーダ21側に押し込まれる事を防止できて、このカバー18aの軸方向位置を精度良く規制できる。従って、本例の場合には、このカバー18aの軸方向外側面が前記エンコーダ本体24の被検出面に衝突する事を防止できて、この被検出面が損傷する事を防止できると共に、この被検出面と上記センサ22aの検出部との検出隙間が不適正になる事も防止できる。更に、上記エンコーダ21を構成する支持環23が、軸方向内側の列の転動体6の転動面や、これら各転動体6を保持した保持器15に接触する事を防止できる為、前記転がり軸受ユニット2の軸受性能が損なわれる事もできる。
【0034】
更に、本例の場合には、上記カバー18aを上記外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定する構造を採用しているが、この場合にも、上記平板部26が軸方向に歪み変形する事を防止できるか、その変形量を抑える事ができる。即ち、上記カバー18aを構成する円筒部20aを上記外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定すると、上記底板部19aには径方向内方に向いた力が加わるが、本例の場合には、この力は前記膨出部27を変形させる事に消費される。具体的には、この膨出部27の基端寄り部分の直径を縮めつつ、この膨出部27全体を軸方向内方に更に膨出させる事で、上記力を消費する。この結果、上記平板部26の変形量を十分に抑える事ができて、この平板部26の軸方向位置を精度良く規制できる。又、この平板部26の直角度も良好にできる。従って、この平板部26の軸方向内側面にその先端部36を突き当てたホルダ内に包埋支持された、上記センサ22aの姿勢並びに検出部の軸方向位置を、設計値通りに精度良く規制できる。この様に本例の場合には、上記カバー18aに、上記センサ22aの検出精度の低下に結び付く様な変形が生じる事を防止できて、回転速度検出の為の信頼性を十分に確保できる。
【0035】
[実施の形態の第2例]
図2は、やはり請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、カバー18bを構成する底板部19bの外周縁を180度折り返す事で、当該部分に突き当て部25aを設けている。そして、この突き当て部25aの内周縁部から軸方向外方に直角に折れ曲がる状態で、円筒部20bを設けている。この様な本例の場合にも、上記底板部19bを、平板部26と膨出部27aとから構成しているが、本例の場合には、この膨出部27aを軸方向外方に向けて膨出させている。
【0036】
又、本例の場合には、センサ保持板28aを構成する底板部29と嵌合筒部30とを、段差部39を介して連続させており、この段差部39の軸方向外側面と上記外輪4の軸方向内端面との間で、上記突き当て部25aを軸方向両側から挟持している。更に、本例の場合には、上記底板部29の内面(軸方向外側面)側に、ナット33を固定している。
【0037】
この様な構成を有する本例の場合には、上述した実施の形態の第1例の場合に比べて、上記突き当て部25aの軸方向の曲げ剛性を高くできる。この為、上記カバー18bが軸方向外側に押し込まれる事をより有効に防止できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、上述した実施の形態の第1例の場合とほぼ同様である。
【0038】
[実施の形態の第3例]
図3は、やはり請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、カバー18cを構成する底板部19cの外周縁寄り部分で、この底板部19cを構成する平板部26よりも径方向外側部分に、テーパ部40を設けている。このテーパ部40は、部分円すい筒状で、径方向外方に向かう程軸方向外方に向かう方向に傾斜している。又、本例の場合には、外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定した円筒部20bの軸方向内端縁から径方向外方に直角に折れ曲がる状態で、突き当て部25bを設けている。そして、この突き当て部25bの外周縁と、上記テーパ部40bの外周縁とを滑らかに(断面凸円弧形の曲面で)連続させている。
【0039】
この様な構成を有する本例の場合、上述した実施の形態の第2例の構造の場合の様に、ステンレス鋼板等の非磁性板を180度折り返す事により突き当て部25a(図2参照)を形成する場合に比べ、上記カバー18cの加工に要する力(プレス力)を小さく抑える事ができて、このカバー18cの加工コストを抑える事ができる。尚、本例を実施する場合に、上記テーパ部40の代わりに、曲率半径の大きな凸円弧状の円弧状筒部を設ける事もできる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例の場合及び上述した実施の形態の第2例の場合とほぼ同様である。
【0040】
[実施の形態の第4例]
図4は、やはり請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、カバー18dを構成する底板部19dの外径寄り部分を、突き当て部25cとして機能させている。又、この底板部19d(突き当て部25c)の外周縁から軸方向外方に直角に折れ曲がる状態で円筒部20cを設けており、この円筒部20cを、外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌固定している。
【0041】
この様な構成を有する本例の場合、上記カバー18dの形状を簡素化して、このカバー18dの加工コストを抑える事ができる。又、このカバー18dを上記外輪4の軸方向内端部に外嵌固定している為、このカバー18dをこの外輪4に支持固定する事に伴って、このカバー18dを構成する底板部19dに径方向内方に向いた力が作用する事もない。この為、本例の場合には、この底板部19dに設けられた膨出部27aを省略する事もできる。但し、この膨出部27aを設ける事によって、センサ22a(図1、2参照)を取付固定する為に用いるナット33(図1、2参照)を、センサ保持板28(図1参照)の内面(軸方向外側面)に固定し易くなり、回転速度検出装置付転がり軸受ユニット1aの軸方向寸法の短縮化を図り易くなる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例及び第2例の場合と同様である。
【0042】
[実施の形態の第5例]
図5は、やはり請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合には、カバー18eを構成する底板部19eの外周縁寄り部分に、テーパ部40aを設けている。このテーパ部40aは、部分円すい筒状で、径方向外方に向かう程軸方向外方に向かう方向に傾斜している。又、上記テーパ部40aは、その内周縁を上記底板部19eを構成する平板部26の外周縁に連続させると共に、その外周縁を、外輪4の軸方向内端部に内嵌固定された円筒部20aの軸方向外端縁に連続させている。
【0043】
この様な構成を有する本例の場合にも、上記カバー18eを、上記外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定する事により、上記底板部19eに径方向内方に向いた力が作用するが、本例の場合には、この力を、膨出部27aと共に上記テーパ部40aを変形させる事により消費できる。この為、上記平板部26には軸方向の歪み変形は生じないか、その変形量を十分に抑える事ができる。従って、本例の場合には、センサ22a(図1、2参照)の検出精度を確保する上でより有利になる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0044】
[実施の形態の第6例]
図6は、やはり請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合には、カバー18fを構成する底板部19(平板部26)の外周縁を、軸方向外方に直角に折り曲げた後、180度折り返す事により、円筒部20dを形成している。
この様な構成を有する本例の場合、この円筒部20dの径方向の曲げ剛性を高める事ができる。この為、上記外輪4に対する上記カバー18fの嵌合強度の向上を図れる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0045】
[実施の形態の第7例]
図7は、請求項1〜3に対応する、本発明の実施の形態の第7例を示している。本例の特徴は、前述した実施の形態の第2例の構造に関して、センサ保持板28aの取付構造を工夫した点にある。即ち、本例の場合には、このセンサ保持板28aの嵌合筒部30aの軸方向外端部(先端部)を径方向内方に塑性変形させて、かしめ部41を形成している。又、外輪4の軸方向内端寄り部分の外周面に、全周に亙り凹溝42を形成している。そして、この凹溝42に上記かしめ部41を係合させている。又、本例の場合には、このかしめ部41を、シール材38aで全周に亙り覆っている。
【0046】
この様な構成を有する本例の場合には、上記外輪4に対する上記センサ保持板28aの軸方向内方への抜け止めを有効に図る事ができる。この為、カバー18bの軸方向内側への変位を、上記第2例の構造に比べて、より有効に図る事ができる。更に、本例の場合には、上記かしめ部41を上記シール材38aで覆っている為、上記嵌合筒部30aと上記外輪4との嵌合部に、雨水等の異物が侵入する事を有効に防止できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例及び第2例の場合とほぼ同様である。
【0047】
[実施の形態の第8例]
図8は、やはり請求項1〜3に対応する、本発明の実施の形態の第8例を示している。本例の場合には、上述した実施の形態の第7例に示したセンサ保持板28aに関する構成に一部変更を加えて、前述した実施の形態の第4例の構造に適用している。即ち、本例の場合には、かしめ部41を覆うシール材38a(図7参照)を省略する代りに、カバー18dを構成する円筒部20cの軸方向内端部内周面に、ゴム、ビニルの如きエラストマー等の弾性を有するシール材38bを全周に亙り被覆している。そして、このシール材38bを、上記円筒部20cの軸方向内端部内周面と外輪4の軸方向内端部外周面との間で、全周に亙り径方向に弾性的に圧縮した状態で挟持している。
この様な構成を有する本例の場合には、上記シール材38bが直接外部に曝らされない為、このシール材38bの耐久性を確保する事ができる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例、第4例、及び、第7例の場合とほぼ同様である。
【0048】
[実施の形態の第9例]
図9は、請求項4、5に対応する、本発明の実施の形態の第9例を示している。本例の場合には、カバー18gとして円形平板状のものを使用し、このカバー18gの外周縁寄り部分の軸方向外側面を、外輪4の軸方向内端面に突き当てている。言い換えれば、このカバー18gの外周縁寄り部分を突き当て部25dとして機能させている。又、本例の場合には、このカバー18gの外周縁部に、ゴム、ビニルの如きエラストマー等の弾性を有するシール材38cを、全周に亙り被覆している。
【0049】
又、本例の場合には、前述した実施の形態の第2例の場合とほぼ同様の構成を有するセンサ保持板28bを用いて、上記カバー18gを軸方向内方から覆っている。即ち、このセンサ保持板28bは、底板部29と嵌合筒部30と、これら底板部29と嵌合筒部30とを連続する段差部39aとを備える。この様なセンサ保持板28bは、この嵌合筒部30を上記外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌固定する事により、この外輪4に対して支持固定している。
【0050】
特に、本例の場合には、上述の様に上記センサ保持板28bを上記外輪4に外嵌固定した状態で、上記段差部39aの軸方向外側面とこの外輪4の軸方向内端面との間で、上記カバー18gの外周縁寄り部分を軸方向両側から挟持している。これにより、このカバー18gを、その外周縁寄り部分の軸方向外側面を上記外輪4の軸方向内端面に突き当てた状態で、この外輪4に対し支持固定している。又、この状態で、上記カバー18gの外周縁部と、上記嵌合筒部30の軸方向内端部内周面との間で、上記シール材38cを全周に亙り径方向に圧縮した状態で挟持している。
【0051】
この様な構成を有する本例の場合、上記カバー18gを上記外輪4に支持固定した状態で、このカバー18gの外周縁寄り部分(突き当て部25d)の軸方向外側面を、上記外輪4の軸方向内端面に突き当てている為、センサ22aを包埋保持したホルダの先端部36等の押し付けに基づいて、上記カバー18gがエンコーダ21側に押し込まれる事を防止できる。又、本例の場合には、このカバー18gを、上記外輪4の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定する事なく、上記センサ保持板28bを利用して、上記外輪4に支持固定している為、上記カバー18gに、前述した従来構造の場合の様な、軸方向の撓み変形が生じる事はない。従って、上記センサ22aの検出精度が、上記カバー18gの支持固定に伴う変形により低下する事はない。更に、本例の場合には、このカバー18gの外周縁部と上記嵌合筒部30の軸方向内端部内周面との間に、上記シール材38cを設けている為、上記外輪4と上記嵌合筒部30との嵌合部から侵入した雨水等の異物が、上記エンコーダ21を設置した内部空間16及び上記ホルダの先端部36が挿入された空間34内にまで侵入する事を防止できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例の場合とほぼ同様である。
【0052】
[実施の形態の第10例]
図10は、請求項4、6に対応する、本発明の実施の形態の第10例を示している。本例の場合には、上述した実施の形態の第9例の構造に関して、シール材38c(図9参照)を省略する代わりに、カバー18gの外周縁寄り部分の軸方向両側面と、外輪4の軸方向内端面及びセンサ保持板28bを構成する段差部39aの軸方向外側面との当接部の内周縁部をそれぞれ塞ぐ状態で、1対の環状シール部材43a、43bを設けている。これら両環状シール部材43a、43bは、ゴム、ビニルの如きエラストマー等の弾性材製で、全体を円環状に構成しており、上記カバー18gを上記外輪4に対して支持固定する以前に、このカバー18gの軸方向両側面の外径寄り部分に加硫接着等により結合しておく。
この様な構成を有する本例の場合にも、上記外輪4の軸方向内端部外周面と、上記嵌合筒部30の内周面との間の隙間から侵入した雨水等が、エンコーダ21を設置した内部空間16及びホルダの先端部36が挿入された空間34内にまで侵入する事を有効に防止できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、上記第9例の場合と同様である。
【0053】
[実施の形態の第11例]
図11は、請求項4〜6に対応する、本発明の実施の形態の第11例を示している。本例の場合には、カバー18gの外周縁寄り部分を覆う状態で、弾性材製のシール材38dを設けている。このシール材38dは、上記カバー18gの外周縁寄り部分の軸方向両側面と、外輪4の軸方向内端面及び段差部39aの軸方向外側面との間で、それぞれ軸方向に圧縮された状態で挟持されると共に、上記カバー18gの外周縁部と嵌合筒部30の内周面との間で、径方向に圧縮された状態で挟持される。又、本例の場合にも、上記カバー18gの外周縁寄り部分の軸方向両側面と、上記外輪4の軸方向内端面及び上記段差部39aの軸方向外側面との当接部の内周縁部をそれぞれ塞ぐ状態で、1対の環状シール部材43a、43bを設けている。尚、これら両環状シール部材43a、43bと上記シール材38dとは、一体としても良い。
この様な構成を有する本例の場合には、上記第9例及び第10例の場合に比べて、雨水等の異物が、エンコーダ21を設置した内部空間16及びホルダの先端部36が挿入された空間34内にまで侵入する事をより有効に防止できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、上記第9例及び第10例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の実施の形態の第1例及び第2例では、外輪の軸方向内端部に外嵌固定したセンサ保持板を用いて、センサを支持する構造を示したが、本発明はこの様な構造に限定されるものではない。即ち、センサ(センサホルダ)は、外輪に対して直接支持固定しても良いし、ナックル等の懸架装置に直接支持固定しても良い。尚、この様なセンサの取り付け構造は、上記第1例及び第2例の構造に限らず、本発明の実施の形態の第3例〜第8例の構造にも同様に採用できる。
【符号の説明】
【0055】
1、1a 回転速度検出装置付転がり軸受ユニット
2 転がり軸受ユニット
3 回転速度検出装置
4 外輪
5 ハブ
6 転動体
7 外輪軌道
8 静止側フランジ
9 ナックル
10 ハブ本体
11 内輪
12 かしめ部
13 内輪軌道
14 回転側フランジ
15 保持器
16 内部空間
17 シールリング
18、18a〜18g カバー
19、19a〜19e 底板部
20、20a〜20d 円筒部
21 エンコーダ
22、22a センサ
23 支持環
24 エンコーダ本体
25、25a〜25d 突き当て部
26 平板部
27、27a 膨出部
28、28a、28b センサ保持板
29 底板部
30、30a 嵌合筒部
31 通孔
32 取付孔
33 ナット
34 空間
35 ボルト
36 先端部
37 取付フランジ
38、38a〜38d シール材
39、39a 段差部
40、40a テーパ部
41 かしめ部
42 凹溝
43a、43b 環状シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を有し、使用状態で懸架装置に支持されて回転しない外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有し、この外輪の内径側にこの外輪と同心に支持され、外周面のうちでこの外輪の軸方向外端部よりも軸方向外方に突出した部分に車輪を支持する為の回転側フランジを設けたハブと、上記両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体と、軸方向内側面の磁気特性を円周方向に関して交互に変化させて成り、上記ハブの軸方向内端部にこのハブと同心に支持された、円環状のエンコーダと、上記外輪の軸方向内端部に支持固定されて、この外輪の軸方向内端開口部を塞いだ、非磁性板製のカバーと、その検出部をこのカバーの軸方向内側面に当接若しくは近接対向させて、このカバーを介して、この検出部を上記エンコーダの軸方向内側面に対向させたセンサとを備えた回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いて、
上記カバーは、円筒部と底板部とを備えた有底円筒状で、その外周縁寄り部分に設けられた突き当て部の軸方向外側面を上記外輪の軸方向内端面に突き当てた状態で、上記円筒部をこの外輪の軸方向内端部に締り嵌めで嵌合固定しており、上記底板部の中央部で、径方向位置が上記センサの検出部が対向する部分から径方向内方に外れた部分に、このセンサの検出部が対向する部分よりも軸方向に膨出した膨出部が設けられている事を特徴とする回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
【請求項2】
センサをその一部に支持したセンサ保持板が、外輪の軸方向内端面との間で突き当て部を軸方向両側から挟持した状態で、この外輪の軸方向内端部に外嵌固定されている、請求項1に記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
【請求項3】
センサ保持板の外周縁部に、外輪の軸方向内端部に外嵌固定する為の嵌合筒部が設けられており、この嵌合筒部の軸方向外端部を径方向内方に塑性変形させて成るかしめ部を、上記外輪の軸方向内端寄り部分の外周面に形成した凹溝に係合させている、請求項2に記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
【請求項4】
内周面に複列の外輪軌道を有し、使用状態で懸架装置に支持されて回転しない外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有し、この外輪の内径側にこの外輪と同心に支持され、外周面のうちでこの外輪の軸方向外端部よりも軸方向外方に突出した部分に車輪を支持する為の回転側フランジを設けたハブと、上記両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体と、軸方向内側面の磁気特性を円周方向に関して交互に変化させて成り、上記ハブの軸方向内端部にこのハブと同心に支持された、円環状のエンコーダと、上記外輪の軸方向内端部に支持固定されて、この外輪の軸方向内端開口部を塞いだ、非磁性板製のカバーと、その検出部をこのカバーの軸方向内側面に当接若しくは近接対向させて、このカバーを介して、この検出部を上記エンコーダの軸方向内側面に対向させたセンサとを備えた回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いて、
上記カバーは、円形平板状で、その外周縁寄り部分の軸方向外側面を上記外輪の軸方向内端面に突き当てており、上記センサをその一部に支持したセンサ保持板が、上記外輪の軸方向内端面との間で上記カバーの外周縁寄り部分を軸方向両側から挟持した状態で、上記外輪の軸方向内端部に外嵌固定されている事を特徴とする回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
【請求項5】
カバーの外周縁部に弾性を有するシール材を全周に亙って被覆し、このカバーの外周縁部とセンサ保持板の内周面との間でこのシール材を、全周に亙って径方向に弾性的に圧縮した状態で挟持している、請求項4に記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
【請求項6】
カバーの外周縁寄り部分の軸方向側面とこの軸方向側面に当接する相手面との当接部の内周縁部が、弾性を有するシール材により全周に亙り塞がれている、請求項4〜5のうちの何れか1項に記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−11354(P2013−11354A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176728(P2012−176728)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2009−22878(P2009−22878)の分割
【原出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】