説明

回転電機の冷却構造および電動過給機

【課題】ロータを効果的に冷却することが可能な回転電機の冷却構造および該構造を含む電動過給機を提供する。
【解決手段】回転電機の冷却構造は、内部空間317を有するロータ310を備える。また、内部空間317とロータ310の外部とを連通させる孔部315がロータ310に形成されている。ここで、ロータ310の回転数が相対的に高い状態では、孔部315から内部空間317内の空気がロータ310の外部に放出され、ロータ310の回転数が相対的に低い状態では、孔部315を介して内部空間317にロータ310の外部の空気が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の冷却構造および電動過給機に関し、特に、内部空間を有するロータを含む回転電機の冷却構造および該構造を含む電動過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機を有する電動過給機が従来から知られている。
たとえば、特表2001−527613号公報(特許文献1)においては、中空シャフト内に空気を供給する空気ポンプを含み、シャフトが回転していないときでも該シャフトに空気を供給して冷却を行なう構造が開示されている。
【0003】
特開平7−211961号公報(特許文献2)においては、シャフト内部に冷却用オイル通路が設けられ、該通路内を流れるオイルによってシャフトおよびロータを冷却するレーザ用ターボブロアが開示されている。
【0004】
特開2003−235210号公報(特許文献3)においては、回転軸に設けた内部空間に連通させて冷媒入口と冷媒出口とを互いに対向させて回転中心軸上に形成し、冷媒入口から冷媒を供給し、冷媒出口から冷媒を排出する回転体の冷却構造が開示されている。
【0005】
特開平5−256155号公報(特許文献4)においては、回転電機の電動駆動時にステータの温度上昇を検知し、所定温度を超過した場合は空気圧縮機によって圧縮した空気にオイルを混ぜ、ジェット孔からロータなどに吹き付けて温度上昇を防止するようにした回転電機の保護装置が開示されている。
【0006】
また、特開2003−117768号公報(特許文献5)においては、圧縮空気供給手段と、オイルミスト形成手段と、オイルミストを含んだ圧縮空気を所定の噴出位置まで導く配管手段と、配管手段の先端に設けられたノズル手段とを備えたオイルミスト供給装置が開示されている。
【特許文献1】特表2001−527613号公報
【特許文献2】特開平7−211961号公報
【特許文献3】特開2003−235210号公報
【特許文献4】特開平5−256155号公報
【特許文献5】特開2003−117768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回転電機の使用環境や運転条件により、回転電機のロータの温度が上昇する場合がある。回転電機のロータの温度が過度に上昇すると、たとえばロータ内に永久磁石が設けられている場合、磁石が減磁して電動過給機の性能が確保できなくなる場合がある。したがって、回転電機を効果的に冷却することは重要である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、流通する空気とシャフトとの間で熱交換が行なわれるだけであり、必ずしも十分な冷却を行なうことができない場合がある。同様に、特許文献2〜4に記載の構造によっても、必ずしも十分な冷却を行なうことができない場合がある。また、特許文献5に記載の構造は、回転電機の冷却を行なうためのものではない。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ロータを効果的に冷却することが可能な回転電機の冷却構造および該構造を含む電動過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る回転電機の冷却構造は、1つの局面では、内部空間を有するロータを備える。内部空間とロータの外部とを連通させる連通孔がロータに形成される。ロータの回転数が相対的に高い状態では、連通孔から内部空間内の空気がロータの外部に放出され、ロータの回転数が相対的に低い状態では、連通孔を介して内部空間にロータ外部の空気が供給される。
【0011】
上記構成によれば、ロータの回転数が上昇した場合に内部空間の空気が連通孔を介してロータ外部に放出される。この際、断熱膨張作用が働き、ロータの内部空間の温度が低下する。以上の結果として、ロータの効果的な冷却が行なわれる。
【0012】
なお、「ロータの回転数が相対的に低い状態」とは、ロータが回転していない状態を含む。
【0013】
上記回転電機の冷却構造において、好ましくは、連通孔はロータの外周面に設けられる。
【0014】
ロータの外周面上では、ロータ回転時の周方向速度が最も大きくなる。したがって、連通孔をロータの外周面に設けることで、連通孔外側の圧力の低下が顕著になる。この結果、連通孔を介した空気の流出による断熱膨張を促進することができるので、ロータの冷却を効果的に行なうことができる。
【0015】
上記回転電機の冷却構造において、好ましくは、連通孔は複数形成される。ここで、1つの局面では、複数の連通孔はロータの軸方向中心に関して対称な位置に形成され、他の局面では、複数の連通孔はロータの周方向に等間隔に並ぶように形成される。
【0016】
これにより、回転時のロータのバランスを十分に確保しながらロータの冷却を行なうことができる。
【0017】
本発明に係る回転電機の冷却構造は、他の局面では、内部空間を有するロータと、圧縮空気を噴出する圧縮空気供給部とを備え、内部空間とロータの外部とを連通させる第1と第2の連通孔がロータに形成され、第1の連通孔は第2の連通孔よりもロータの径方向外方に設けられ、圧縮空気供給部は第2の連通孔に向かって圧縮空気を噴出する。
【0018】
上記構成によれば、第2の連通孔からロータの内部空間に空気が供給され、内部空間の空気が第1の連通孔を介してロータ外部に放出される。この際、圧縮空気供給部での断熱膨張作用と、内部空間から空気が放出される部分での断熱膨張作用とにより、ロータの効果的な冷却が行なわれる。
【0019】
上記回転電機の冷却構造において、好ましくは、第2の連通孔はロータの軸方向端面に設けられ、第1の連通孔はロータの外周面に設けられる。
【0020】
ロータの外周面上では、ロータ回転時の周方向速度が最も大きくなる。したがって、内部空間の空気を放出する第1の連通孔をロータの外周面に設けることで、第1の連通孔外側の圧力の低下が顕著になる。この結果、第1の連通孔を介した空気の流出による断熱膨張を促進することができるので、ロータの冷却を効果的に行なうことができる。
【0021】
上記回転電機の冷却構造において、好ましくは、第1と第2の連通孔はそれぞれ複数形成される。1つの局面では、複数の第1と第2の連通孔は、それぞれロータの軸方向中心に関して対称な位置に形成され、他の局面では、複数の第1と第2の連通孔は、それぞれロータの周方向に等間隔に並ぶように形成される。
【0022】
これにより、回転時のロータのバランスを十分に確保しながらロータの冷却を行なうことができる。
【0023】
上記回転電機の冷却構造において、好ましくは、圧縮空気供給部はオイルと空気とを混合させるエジェクタを含み、オイルミストを含む圧縮空気が第2の連通孔に向けて噴出される。
【0024】
上記構成によれば、簡単な構成でオイルミストを含む空気を生成し、オイルミストにより冷却効果を高めることができる。
【0025】
上記回転電機の冷却構造は、好ましくは、コイルエンドを有するステータをさらに備え、コイルエンドに向けて第1の連通孔から空気が放出される。
【0026】
これにより、ステータのコイルエンドの冷却を行なうことができる。
本発明に係る電動過給機は、吸気側のホイールであるコンプレッサホイールと、排気側のホイールであるタービンホイールと、コンプレッサホイールおよびタービンホイールに接続された回転軸と、回転軸に固設されたロータを含む回転電機とを備え、上述した回転電機の冷却構造が上記回転電機に適用されている。
【0027】
上記構成によれば、回転電機が効率的に冷却された電動過給機が提供される。
上記電動過給機において、好ましくは、コンプレッサホイールにより圧縮された圧縮空気が第2の連通孔に向けて噴出される。
【0028】
これにより、圧縮空気を得るための装置を別途設けることなく、第2の連通孔に向けて圧縮空気が噴出される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、回転電機の効果的な冷却を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0031】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態1〜3に係る回転電機の冷却構造が適用される回転電機をターボチャージャ(電動過給機)付きエンジンに組付けたシステムの概略構成を示す図である。該システムは、図1に示すように、吸気管110および排気管120を含むエンジン100と、吸気管110内および排気管120内にホイールを含むターボチャージャ200と、ターボチャージャ200と同軸上に配置された磁石型電動機300と、インバータ400と、システム全体を制御するECU500とを含んで構成される。磁石型電動機300は、回転軸の外周部に磁石を配置したロータを有する電動機である。
【0033】
図1に示されるシステムでは、エンジン100から排出される排気エネルギーにより、排気管120側のホイールであるタービンホイール121を回転させ、この動力によって
、吸気管110側のホイールであるコンプレッサホイール111を回転させる。このようにすることで、エンジン100に圧縮空気を供給して、充填効率を高めることができる。上記システムでは、さらに、排気のエネルギーが十分でない場合等に、磁石型電動機300により、タービンホイール121とコンプレッサホイール111とを連結するタービンシャフトを強制的に回転させる。磁石型電動機300への電力は、インバータ400から供給される。ECU500は、インバータ400の動作を制御する。
【0034】
排気管120には、タービンホイール121を避けて迂回するバイパスが設けられている。バイパスの入口近傍には、ウエイストゲートバルブ130が配置されている。過給の必要がない場合等においては、ウエイストゲートバルブ130が開弁される。
【0035】
以上述べたように、実施の形態1〜3に係る電動過給機は、吸気側のホイールであるコンプレッサホイール111と、排気側のホイールであるタービンホイール121と、コンプレッサホイール111およびタービンホイール121に接続された「回転軸」としてのタービンシャフトと、タービンシャフトに固設されたロータを含む「回転電機」としての磁石型電動機300とを備える。
【0036】
(実施の形態1)
図2は、実施の形態1に係る回転電機の冷却構造が適用されるロータの断面図である。また、図3は、図2におけるIII−III断面図である。
【0037】
図2,図3を参照して、本実施の形態に係る冷却構造が適用されるロータ310は、磁石型電動機300(図1参照)に含まれるロータであって、管状部材311と、磁石312と、エンドプレート313と、スリーブ314と、孔部315と、内部空間317とを含んで構成される。
【0038】
ロータ310は、タービンシャフト210に固設される。管状部材311は、たとえばチタンなどの非磁性材料で構成される。磁石312は、管状部材311の内周側に設けられる。「嵌入部材」としてのエンドプレート313は、たとえばチタンなどの非磁性材料で構成され、磁石とともに管状部材311内に嵌入される。スリーブ314は、たとえばチタンなどの非磁性材料で構成され、管状部材311の軸方向の両側に設けられる。スリーブ314と管状部材311およびエンドプレート313との間には、内部空間317が形成される。また、スリーブ314と管状部材311との間には、孔部315が形成される。孔部315が形成されることにより、内部空間317とロータ310の外部とが連通する。なお、孔部315は、ロータ310の外周面に設けられている。
【0039】
上述した電動過給機の動作時に、ロータ310の温度は上昇する。ロータ310の温度上昇の要因としては、たとえば、高温下に曝されるタービンホイール121の熱がタービンシャフト210を介してロータ310に伝達することなどが挙げられる。ここで、ロータ310の温度がロータ310内に設けられた磁石312の熱減磁限界温度にまで上昇した場合には、磁石312が減磁し、電動過給機の性能が確保できなくなることが懸念される。また、ロータ310の温度が磁石312の減磁温度以下であっても、磁石312の磁力はその材料特有の温度係数で支配されているため、温度変化とともに磁力が変化し、回転電機の出力が低下することが懸念される。したがって、電動過給機の動作時にロータ310を効果的に冷却することは重要である。
【0040】
電動過給機の動作時において、ロータ310は、タービンシャフト210とともに高速回転(たとえば20万rpm程度)する。このように、ロータ310が高速回転することにより、孔部315の出口付近の流速が大きくなり、その部分の圧力が大幅に低下する(ベルヌーイの定理)。これにより、内部空間317に閉じ込められた空気に断熱膨張作用が働く。この結果、ロータ310の内部の温度が低下する。なお、ロータ310が停止している、または、低回転の時は、ロータ310の外部から孔部315を介して内部空間317に空気が流入する。このように、本実施の形態においては、連通孔315が設けられることにより、ロータ310の高速回転時に、断熱膨張作用を利用してロータ310の冷却を行なうことができる。なお、上述の断熱膨張作用をより効果的に生じさせるために、タービンシャフト210、エンドプレート313およびスリーブ314の嵌合は、空気の漏れが発生しないように行なわれる。
【0041】
ところで、ロータ310の外周面上では、ロータ回転時の周方向速度が最も大きくなる。したがって、孔部315をロータ310の外周面に設けることで、孔部315の外側の圧力の低下が顕著になる。この結果、孔部315を介した空気の流出による断熱膨張を促進することができるので、ロータ310の冷却を効果的に行なうことができる。
【0042】
図2,図3の例では、孔部315は複数形成されている。図2に示すように、複数の孔部315は、ロータ310の軸方向中心に関して対称な位置に形成されている。また、図3に示すように、複数の孔部315は、ロータ310の周方向に等間隔に並ぶように形成されている。このようにすることで、回転時のロータ310のバランスを十分に確保しながらロータ310の冷却を行なうことができる。
【0043】
本実施の形態に係る回転電機の冷却構造によれば、ロータ310の回転数が上昇した場合に内部空間317の空気が孔部315を介してロータ310の外部に放出される。内部空間317内の空気がロータ310の外部に放出される際、断熱膨張が生じる。これにより、内部空間317の温度が低下する。以上の結果として、ロータ310の効果的な冷却が行なわれる。
【0044】
また、本実施の形態に係る回転電機の冷却構造においては、ロータ回転時の周方向速度が最も大きくなるロータ310の外周面に孔部315を設けることで、孔部315の外側の圧力の低下が顕著になる。この結果、孔部315を介した空気の流出による断熱膨張を促進することができる。
【0045】
本実施の形態に係る回転電機の冷却構造において、複数の孔部315をロータ310の軸方向中心に関して対称な位置に形成するとともに、複数の孔部315をロータ310の周方向に等間隔に並ぶように形成することで、回転時のロータ310のバランスを十分に確保しながらロータ310の冷却を行なうことができる。
【0046】
上述した構成について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る回転電機の冷却構造は、内部空間317を有するロータ310を備える。また、内部空間317とロータ310の外部とを連通させる「連通孔」としての孔部315がロータ310に形成されている。ここで、ロータ310の回転数が相対的に高い状態では、孔部315から内部空間317内の空気がロータ310の外部に放出され、ロータ310の回転数が相対的に低い状態では、孔部315を介して内部空間317にロータ310の外部の空気が供給される。
【0047】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る回転電機の冷却構造を示す図である。
【0048】
図4を参照して、本実施の形態に係る回転電機の冷却構造は、実施の形態1に係る回転電機の冷却構造の変形例であって、ロータ310の軸方向端面上に孔部316が設けられることを1つの特徴とする。なお、孔部316に対向する位置には噴射ノズル115が設けられており、噴射ノズル115から孔部316に向かって圧縮空気が噴出される。
【0049】
図4に示すように、コンプレッサホイール111を収納するコンプレッサハウジング112内で圧縮された圧縮空気は、インタークーラ113で冷却され、吸気管110を介してエンジン100に供給される。ここで、吸気管110に噴射ノズル115に達する分岐管が設けられる。分岐管には、噴射ノズル115へ向かう圧縮空気の流れを許容/遮断する切替バルブ114が設置されている。
【0050】
噴射ノズル115から噴射された空気は、孔部316を介して内部空間317に供給される。内部空間317内の空気は、孔部315を介してロータ310の外部に放出される。このように、本実施の形態においては、ロータ310の内部空間317に空気の流通経路が構成されている。
【0051】
噴射ノズル115から圧縮空気が噴射される際、該空気は断熱膨張するため、その温度は低下する。この冷却された空気がロータ310の内部空間317に供給されることで、ロータ310が冷却される。内部空間317を通過した空気の温度は、ロータ310の熱により若干上昇するが、該空気が孔部315を介してロータ310の外部に放出される際に、孔部315で絞られた流路が一気に開放されるため、該空気は再び断熱膨張する。この結果、ロータ310の冷却がさらに促進されるとともに、冷却された空気がロータ310の外部に放出される。ここで、孔部315の出口をステータコア321およびステータコイル322を含むステータ320(特にステータコイル322のコイルエンド)に向けることで、ステータ320(ステータコイル322)の冷却を促進することができる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、図4に示すように、孔部316はロータ310の軸方向端面に設けられ、孔部315はロータ310の外周面に設けられている。
【0053】
ロータ310の外周面上では、ロータ310の回転時の周方向速度が最も大きくなる。したがって、内部空間317の空気を放出する孔部315をロータ310の外周面に設けることで、孔部315の外側の圧力の低下が顕著になる。この結果、孔部315を介した空気の流出による断熱膨張を促進することができるので、ロータ310の冷却を効果的に行なうことができる。
【0054】
噴射ノズル115からの圧縮空気の噴出は、切替バルブ114を開くことにより行なわれる。1つの制御方法として、電動過給機の動作時のロータ310の温度を監視し、ロータ温度が一定温度を超えると切替バルブ114を開いて圧縮空気を噴出することが考えられる。なお、ロータ310の温度は、誘起電圧から回転中のロータ310内の磁石312の温度を測定することにより検知される。また、他の制御方法として、ロータ310の回転数を監視し、ロータの回転数が一定値を超えると切替バルブ114を開いて圧縮空気を噴出することが考えられる。
【0055】
なお、図4では、ロータ310の両端部において、孔部315と孔部316とがそれぞれ1つずつ図示されているが、孔部315,316は、実際には、図5(図4におけるV−V断面図)に示すように配置されている。すなわち、ロータ310の両端部において、孔部315と孔部316とがそれぞれ複数(2つ)形成されている。
【0056】
図4に示すように、複数の孔部315,316は、それぞれロータ310の軸方向中心に関して対称な位置に形成される。また、図5に示すように、複数の孔部315,316は、ロータの周方向に等間隔に並ぶように形成される。このようにすることで、回転時のロータ310のバランスを十分に確保しながらロータ310の冷却を行なうことができる。
【0057】
図6は、図5におけるVI−VI断面図である。図6に示すように、孔部316は、噴射ノズル115からの空気の噴射により、ロータ310に一定の回転力(F)を与えることができるように、ロータ310の軸方向(矢印DR1方向)に対して一定の角度(θ)で交差するように形成されている。
【0058】
本実施の形態に係る回転電機の冷却構造によれば、噴射ノズル115から孔部316を介してロータ310の内部空間317に空気が供給され、内部空間の空気が孔部315を介してロータ310の外部に放出される。この際、噴射ノズル115での断熱膨張作用と、内部空間317から空気が放出される部分での断熱膨張作用とにより、ロータ310の効果的な冷却が行なわれる。
【0059】
また、コンプレッサホイール111により圧縮された圧縮空気を孔部316に向けて噴出することにより、圧縮空気を得るための装置を別途設けることなく、孔部316に向けて圧縮空気を噴出することができる。
【0060】
上述した構成について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る回転電機の冷却構造は、内部空間317を有するロータ310と、圧縮空気を噴出する「圧縮空気供給部」としての噴射ノズル115とを備える。また、内部空間317とロータ310の外部とを連通させる「第1と第2の連通孔」としての孔部315,316がロータに形成され、孔部315は孔部316よりもロータの径方向外方に設けられる。そして、噴射ノズル115は孔部316に向かって圧縮空気を噴出する。
【0061】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3に係る回転電機の冷却構造を示す図である。図7を参照して、本実施の形態に係る回転電機の冷却構造は、実施の形態2に係る回転電機の冷却構造の変形例であって、噴射ノズル115の上流側にエジェクタ115Aが設けられることを特徴とする。エジェクタ115Aは、過給機の内部に飛散するオイルやオイルミストを吸込み、コンプレッサハウジング112から供給された圧縮空気と混合させる。そして、オイルミストが混合された空気が噴射ノズル115から孔部116に向けて噴出される。すなわち、本実施の形態に係る冷却構造において、「圧縮空気供給部」は、オイルと空気とを混合させるエジェクタ115Aを含み、オイルミストを含む圧縮空気が孔部316に向けて噴出される。
【0062】
本実施の形態に係る回転電機の冷却構造によれば、簡単な構成でオイルミストを含む空気を孔部316に向けて噴出することができる。孔部316に向けて噴射される空気がオイルミストを含むことにより、ロータ310およびステータコイル322のコイルエンドの冷却効果を高めることができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1〜3に係る回転電機の冷却構造が適用される回転電機をターボチャージャ付きエンジンに組付けたシステムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る回転電機の冷却構造が適用されるロータの断面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る回転電機の冷却構造を示す図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である。
【図6】図5におけるVI−VI断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る回転電機の冷却構造を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
100 エンジン、110 吸気管、111 コンプレッサホイール、112 コンプレッサハウジング、113 インタークーラ、114 切替バルブ、115 噴射ノズル、115A エジェクタ、120 排気管、121 タービンホイール、130 ウエイストゲートバルブ、200 ターボチャージャ、210 タービンシャフト、300 磁石型電動機、310 ロータ、311 管状部材、312 磁石、313 エンドプレート、314 スリーブ、315,316 孔部、317 内部空間、320 ステータ、321 ステータコア、322 ステータコイル、400 インバータ、500 ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有するロータを備え、
前記内部空間と前記ロータの外部とを連通させる連通孔が前記ロータに形成され、
前記ロータの回転数が相対的に高い状態では、前記連通孔から前記内部空間内の空気が前記ロータの外部に放出され、前記ロータの回転数が相対的に低い状態では、前記連通孔を介して前記内部空間に前記ロータ外部の空気が供給される、回転電機の冷却構造。
【請求項2】
前記連通孔は前記ロータの外周面に設けられる、請求項1に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項3】
前記連通孔は複数形成され、
複数の前記連通孔は前記ロータの軸方向中心に関して対称な位置に形成される、請求項1または請求項2に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項4】
前記連通孔は複数形成され、
複数の前記連通孔は前記ロータの周方向に等間隔に並ぶように形成される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の回転電機の冷却構造。
【請求項5】
内部空間を有するロータと、
圧縮空気を噴出する圧縮空気供給部とを備え、
前記内部空間と前記ロータの外部とを連通させる第1と第2の連通孔が前記ロータに形成され、
前記第1の連通孔は前記第2の連通孔よりも前記ロータの径方向外方に設けられ、
前記圧縮空気供給部は前記第2の連通孔に向かって圧縮空気を噴出する、回転電機の冷却構造。
【請求項6】
前記第2の連通孔は前記ロータの軸方向端面に設けられ、前記第1の連通孔は前記ロータの外周面に設けられる、請求項5に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項7】
前記第1と第2の連通孔はそれぞれ複数形成され、
複数の前記第1と第2の連通孔は、それぞれ前記ロータの軸方向中心に関して対称な位置に形成される、請求項5または請求項6に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項8】
前記第1と第2の連通孔はそれぞれ複数形成され、
複数の前記第1と第2の連通孔は、それぞれ前記ロータの周方向に等間隔に並ぶように形成される、請求項5から請求項7のいずれかに記載の回転電機の冷却構造。
【請求項9】
前記圧縮空気供給部はオイルと空気とを混合させるエジェクタを含み、
オイルミストを含む圧縮空気が前記第2の連通孔に向けて噴出される、請求項5から請求項8のいずれかに記載の回転電機の冷却構造。
【請求項10】
コイルエンドを有するステータをさらに備え、
前記コイルエンドに向けて前記第1の連通孔から空気が放出される、請求項1から請求項9のいずれかに記載の回転電機の冷却構造。
【請求項11】
吸気側のホイールであるコンプレッサホイールと、
排気側のホイールであるタービンホイールと、
前記コンプレッサホイールおよび前記タービンホイールに接続された回転軸と、
前記回転軸に固設されたロータを含む回転電機とを備え、
請求項1から請求項10のいずれかに記載の回転電機の冷却構造が前記回転電機に適用された、電動過給機。
【請求項12】
前記コンプレッサホイールにより圧縮された圧縮空気が前記第2の連通孔に向けて噴出される、請求項11に記載の電動過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−29166(P2008−29166A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201837(P2006−201837)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】