説明

回転電機

【課題】冷却風量の無駄なマージンを必要とせずに、固定子コイルエンドの冷却を強化した回転電機を提供する。
【解決手段】固定子コイルエンド8の軸方向内側から外側へと、冷却器10からの冷却風を導く手段を有することにより、冷却器10を通過する全風量によって固定子コイルエンド8を冷却するので、固定子コイルエンド8全体の冷却を強化できる。また固定子コイルエンド8へ分流する冷却風の風量配分を調整する必要がないため、通風構造の設計が簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機の通風構造に係り、特に、回転子の回転軸両端の軸流ファンにより冷却風を駆動する通風方式に好適な回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電機などの回転電機では、回転子と固定子それぞれのコイルや鉄芯を冷却する必要があり、そのための冷却構造が設けられている。こうした回転電機における冷却構造の代表的な1つとして、回転子のシャフトに軸流ファンを取り付け、冷却風を駆動する方式がある。
【0003】
一例として、図5にタービン発電機の構成の概略を示す。図5の回転電機1は、回転子2と固定子3を備えている。回転子2のシャフト4両端には軸流ファン5が設けられている。軸流ファン5からの冷却風は、回転子2の内部へ向かう流れ6a、エアギャップ7へ向かう流れ6b、固定子コイルエンド8へ向かう流れ6cに分流する。回転子2の内部へ向かう流れ6aは回転子を冷却後、エアギャップ7へ向かう流れ6bと合流して固定子を冷却し、固定子フレーム9内に流入する。固定子コイルエンド8へ向かう流れ6cは固定子コイルエンド8を冷却後、固定子フレーム9内に流入して他の冷却風と合流する。固定子フレーム9外周から流出した冷却風は冷却器10により除熱され、ケーシング11と案内板12とで形成される通風路13を通り、軸流ファン5へと戻る。
【0004】
一般に、軸流ファンを出た流れ6a、6bと6cとの風量配分は、固定子コイルエンド8の発熱量から必要となる冷却風量が確保できるよう、流れ6cの通風路の通風抵抗を設計している。しかし固定子コイルエンド8は複雑な形状をしており、均一に冷却することが困難なため、局所的にコイル温度が高くなる可能性があった。これを防ぐためには流れ6cの通風量を大きくしてマージンをとる必要があった。
【0005】
必要以上に流れ6cの通風量を増加させることなく、固定子コイルエンドの冷却を強化する方法としては、例えば特許文献1や特許文献2の実施例に記載のように、案内板12を通常より軸方向内側に設置し、固定子コイルエンドの外端部が通風路へ一部突出させる方法が開示されている。この方法によれば、固定子コイルエンドの外端部が冷却器から出た低温の冷却風の全風量で冷却されるため、固定子コイルエンドの温度を下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭51−137501号公報
【特許文献2】特開昭58−89046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術では、固定子コイルエンドの一部を冷却器からの冷却風で直接冷却させることにより、コイルエンドの冷却を強化している。しかし、固定子コイルエンドの残りの部分は、依然として軸流ファンを出た冷却風を分流させた流れ6cで冷却しているため、均一に冷却することができず、局部的にコイル温度が高くなるという問題があった。
【0008】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、冷却風量の無駄なマージンを必要とせずに、固定子コイルエンドの冷却を強化した回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回転電機は、上記目的を達成するために、固定子コイルエンドの軸方向内側から外側へと、冷却器からの冷却風を導く手段を設けた。
【0010】
即ち、固定子と、前記固定子の内側にエアギャップを介して配置される回転子とを備え、前記固定子の内周側には、その周方向に所定の間隔を置いて複数配設されたコイルスロットと、前記コイルスロットの中に設けられる固定子コイルを有し、前記固定子コイルは、前記回転子の回転軸方向に概略沿って突出したエンド部を形成し、前記回転子のシャフト両端に軸流ファンが設置されている回転電機において、固定子コイルエンド部の軸方向内側から外側へと、エアクーラからの冷却風を導く手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却器を通過する全風量によって固定子コイルエンドを冷却するので、固定子コイルエンド全体の冷却を強化できる。また固定子コイルエンドへ分流する冷却風の風量配分を調整する必要がないため、通風構造の設計が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の回転電機の第1の実施例の説明図である。
【図2】本発明の回転電機の第1の実施例の変形例の説明図である。
【図3】本発明の回転電機の第2の実施例の説明図である。
【図4】本発明の回転電機の第1の実施例と第2の実施例の組み合わせ例の説明図である。
【図5】従来の回転電機を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明による回転電機の第1の実施例を、図1に基づいて説明する。第1の実施例の概略構成は、固定子コイルエンドの通風構造以外は上述した従来例と略同じであり、ここでの説明は省略する。
【0015】
本実施例では、固定子コイルエンドの軸方向内側から外側へと、冷却器からの冷却風を導く手段は、二種類の案内板により構成されている。まず、第1の案内板14は、冷却器10からケーシング11上部に流出した冷却風を、固定子コイルエンドの軸方向内側へと導く。次に固定子コイルエンド8の内径側に近接して設置した第2の案内板15に導かれ、冷却風は固定子コイルエンドに沿って軸方向外側へと流れる。このとき、固定子コイルエンドは冷却器を通過した全風量により冷却される。固定子コイルエンド8を通過した冷却風は、ケーシング11に沿って内径側に向きを変え、軸流ファン5の入口へと向かう。実施例では、ファン入口へ向かう冷却風が滑らかに向きを変えるよう、第2の案内板15の軸方向外側端部をベルマウス形状としている。これにより、通風損失を小さく抑えることができる。第2の案内板15は、固定子コイルエンドを冷却した流れを軸流ファン5の入口へと導く役割も果たしている。第2の案内板15が無いと、固定子コイルエンドを冷却した冷却風は軸流ファンの出口側へと向かうので、通風構造が成立しない。
【0016】
軸流ファン5を出た冷却風は、回転子内部へ向かう流れ6aと、エアギャップ7へ流入する流れ6bの二つに分流する。従来は固定子コイルエンドへの流れを含め三つに分流するのに対し二つに減っており、分流の風量配分を決める通風構造の設計が単純となる。
【実施例2】
【0017】
本発明による回転電機の第2の実施の形態を図2に示す。本実施例では、第2の案内板15の形状を固定子コイルエンドの上コイル8a内径側に沿わせ、軸方向外側の方が拡大する概略円錐台形状としている。このような構成とすれば、軸流ファンの外径を大きくすることができ、より大きな風量が必要な場合に適用できる。
【0018】
以上の本実施例によれば、固定子コイルエンドが冷却器を通過する全風量で冷却されるため、固定子コイルエンドの冷却を強化できる。また、固定子コイルエンドを通過した冷却風は、その下流で回転子と固定子を冷却するので、固定子コイルエンドを冷却する風量が大きくても無駄なマージンとはならない。
【実施例3】
【0019】
本発明による回転電機の第3の実施の形態を図3に基づいて説明する。
本実施例では、第2の案内板15は、固定子コイルエンドの上コイル8aと底コイル8bとの間に設置している。このような構成によれば、第2の案内板15が固定子コイルエンド8の内部の領域に限定されるので、冷却風の通風領域を占有することがなく、通風路を広く確保することができる。また、固定子コイルエンド8と第2の案内板15を一体構造とすることで、強度を向上することができる。
【0020】
本実施例の場合には、固定子コイルエンドの底コイル8bは軸方向外向きの冷却風により冷却されるが、上コイル8aは、軸流ファン5を出た後の軸方向内向きの流れにより冷却される。しかし、従来例で必要となる固定子コイルエンドを冷却するための冷却風の分流(図5の6c)が必要ないという特徴は、実施例1と同じである。
【0021】
さらに本実施例では、固定子コイルエンドの軸方向外側端部に取り付けた絶縁キャップ16の形状を、軸流ファン5の外径位置と所定の間隔で近接するよう、内径側に延長している。また、絶縁キャップ16の軸方向外側から内径側へかけての形状をベルマウス形状とすることにより、軸流ファン5へ流入する冷却風の乱れを少なくして、通風損失を低減することができる。
【実施例4】
【0022】
本発明による回転電機の第4の実施の形態を図4に基づいて説明する。
本実施例では、軸流ファン入口側のベルマウスと兼用した絶縁キャップ16は、固定子コイルエンドの上コイル8aと底コイル8bとの間に設置した第2の案内板15と組み合わせて用いているが、実施例1で説明したような固定子コイルエンド内径側に設置する第2の案内板と組み合わせることも当然可能であり、本実施例は組み合わせを限定するものではない。また後者の組み合わせでは、固定子コイルエンドに絶縁キャップを有する回転電機において、絶縁キャップを軸流ファン入口側のベルマウスと兼用することで、第2の案内板の形状を簡素化することもできる。
【0023】
このような組み合わせの例を図4に示す。本実施例では、絶縁キャップ16に軸流ファン入口のベルマウスを兼用させることにより、第2の案内板15の形状をフランジ付きの単純円筒形状に簡略化したものである。
【符号の説明】
【0024】
1 回転電機
2 回転子
3 固定子
4 シャフト
5 軸流ファン
6 軸流ファンからの冷却風の流れを示す矢印
7 エアギャップ
8 固定子コイルエンド
9 固定子フレーム
10 冷却器
11 ケーシング
12 案内板
13 ケーシング11と案内板12で形成される通風路
14 第1の案内板
15 第2の案内板
16 絶縁キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、前記固定子の内側にエアギャップを介して配置される回転子とを備え、前記固定子の内周側には、その周方向に所定の間隔を置いて複数配設されたコイルスロットと、前記コイルスロットの中に設けられる固定子コイルを有し、前記固定子コイルは、前記回転子の回転軸方向に沿って突出した固定子コイルエンドを形成し、前記回転子のシャフト両端に軸流ファンが設置されており、内部を循環する冷却風を除熱する冷却機を備えた回転電機において、
前記固定子コイルエンドの軸方向内側から外側へと、前記冷却機からの冷却風を導く手段を有することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記冷却機からの冷却風を導く手段は、冷却風を前記固定子コイルエンドの軸方向内側へ導く第1の案内板と、前記固定子コイルエンドの軸方向内側へ導かれた冷却風を、前記固定子コイルエンドの軸方向外側へと導く第2の案内板とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第2の案内板は、前記固定子コイルエンドの内周側に近接して円筒状に設置することを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記固定子コイルエンドの内周側に近接して円筒状に設置した第2の案内板は、前記軸流ファン入口へ向かって冷却風の流れを滑らかに転向させるため、軸方向外側端部がベルマウス形状であることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第2の案内板は、前記固定子コイルエンドの内径側を構成する上コイルと外径側を構成する底コイルとの間に設置することを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項6】
前記固定子コイルエンドの、軸方向外側端部に設置する絶縁キャップは、軸流ファン外径位置に所定の間隙を持って近接するよう内径側に延長され、前記軸流ファン入口へ向かって冷却風の流れを滑らかに転向させるため、該絶縁キャップの軸方向外側から内径側へかけてベルマウス形状であることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−34332(P2013−34332A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169734(P2011−169734)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】