説明

回転駆動装置、ロボットの関節構造及びロボットアーム

【課題】高い減速比が得られるとともに、装置の外形を省スペース化することができる回転駆動装置、この回転駆動装置を用いたロボットの関節構造及びこのロボットの関節構造を備えたロボットアームを提供する。
【解決手段】太陽歯車4と、太陽歯車4の軸O周りに公転する遊星歯車5と、駆動モータ2に配設され、太陽歯車4に連結されるとともに太陽歯車4を軸O周りに回転させるピニオン2aと、太陽歯車4の同軸上に固定配置されるとともに遊星歯車5に噛み合う固定内歯歯車6と、固定内歯歯車6とは異なる歯数に設定され、太陽歯車4の同軸上に回転可能に配置されるとともに遊星歯車5に噛み合う可動内歯歯車7と、を備え、太陽歯車4は、ピニオン2aに連結される第1歯車部41と、第1歯車部41とは異なる歯数に設定され、第1歯車部41の同軸上に配置されるとともに遊星歯車5に噛み合う第2歯車部42と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動装置、この回転駆動装置によって構成されるロボットの関節構造及びロボットアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転駆動装置としては、例えば特許文献1に開示されているように、所謂不思議遊星歯車を利用した減速機と太陽歯車を回転駆動させる駆動モータとを備えて構成されたものが知られている。
不思議遊星歯車は、太陽歯車と、この太陽歯車に噛み合うとともに太陽歯車の軸周りに公転する遊星歯車と、遊星歯車の外側に噛み合うとともに太陽歯車と同軸上に固定配置された固定内歯歯車と、この固定内歯歯車と歯数が異なり遊星歯車に噛み合うとともに太陽歯車と同軸上に回転可能に配置された可動内歯歯車とを有しており、この可動内歯歯車の同軸上に、出力軸が設けられている。
【0003】
太陽歯車が回転すると、遊星歯車は自転しつつこの太陽歯車の軸周りに公転する。ここで、遊星歯車に夫々噛み合う固定内歯歯車と可動内歯歯車とは、互いに歯数が異なる設定とされているので、遊星歯車の自転及び公転によって固定内歯歯車と可動内歯歯車との周方向(回転方向)の相対位置がずらされていき、可動内歯歯車が前記軸周りに回転するようになっている。そして、このように構成される不思議遊星歯車を用いた減速機を駆動モータで駆動させ、可動内歯歯車の出力軸若しくは該出力軸に連結される部材を回転駆動させるようにしている。
【0004】
このような不思議遊星歯車を用いた回転駆動装置においては、少ない段数で非常に高い減速比が得られるとともに大きなトルクが伝達できることから、例えば、比較的緩やかな動作を要するロボットの関節構造やロボットアームに用いられている。
【特許文献1】特開2000−274495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような回転駆動装置においては、種々の要望に対応して、より高い減速比を実現することが望まれている。またその一方で、回転駆動装置を配設するロボットの関節構造やロボットアームに対しては、さらなる省スペース化が望まれている。
しかしながら、より高い減速比を実現するためには、例えば、固定内歯歯車と可動内歯歯車との歯数差を最小に抑えるとともに、これらの固定内歯歯車の歯数及び可動内歯歯車の歯数を増大させることが考えられるが、このように固定内歯歯車の歯数及び可動内歯歯車の歯数を増大させると、これに伴って回転駆動装置の外形が大きくなってしまうことから、省スペース化が難しくなるという課題が生じる。
【0006】
本発明は、前述のような事情を鑑みてなされたもので、高い減速比が得られるとともに、装置の外形を省スペース化することができる回転駆動装置、この回転駆動装置を用いたロボットの関節構造及びこのロボットの関節構造を備えたロボットアームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明に係る回転駆動装置は、太陽歯車と、前記太陽歯車に噛み合うとともに前記太陽歯車の軸周りに公転する遊星歯車と、前記太陽歯車を駆動する駆動モータに配設され、前記太陽歯車に連結されるとともに前記太陽歯車を前記軸周りに回転させるピニオンと、前記太陽歯車の同軸上に固定配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車と、前記固定内歯歯車とは異なる歯数に設定され、前記太陽歯車の同軸上に回転可能に配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車と、を備え、前記太陽歯車は、前記ピニオンに連結される第1歯車部と、前記第1歯車部とは異なる歯数に設定され、前記第1歯車部の同軸上に配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う第2歯車部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る回転駆動装置によれば、太陽歯車が、ピニオンに連結される第1歯車部と、第1歯車部とは異なる歯数に設定され、第1歯車部の同軸上に配置されるとともに遊星歯車に噛み合う第2歯車部とを有するので、ピニオンと可動内歯歯車との間の減速比を大幅に高めることができる。すなわち、第1歯車部の歯数を第2歯車部の歯数に対し増大させて設定した場合に、ピニオン及び第1歯車部の間の減速比と、第1歯車部及び第2歯車部の間の減速比と、第2歯車部及び遊星歯車の間の減速比と、遊星歯車及び可動内歯歯車の間の減速比との積により装置の減速比が求められることから、従来のように、一つの歯車部のみからなる太陽歯車を用いた回転駆動装置の構成に対比して、減速比を大幅に高めて出力させることができ、よって種々様々な要望、用途に対応することが可能となる。
【0009】
また、太陽歯車において、第1歯車部を第2歯車部よりも大径に形成した場合には、第1歯車部の歯数を容易に増大させることができることから、ピニオン及び第1歯車部の間の減速比と、第1歯車部及び第2歯車部の間の減速比とをより簡便に高めることができる。また、第1歯車部に噛み合うピニオン及び該ピニオンを回転させる駆動モータを太陽歯車の軸中心から径方向外側により離間させて配設できることから、装置の前記軸中心近傍のスペースを有効に利用することができる。
【0010】
また、本発明に係る回転駆動装置において、前記第1歯車部の歯数が、前記第2歯車部の歯数よりも多く設定されていることとしてもよい。
【0011】
また、本発明に係る回転駆動装置において、前記太陽歯車は、その軸方向に沿って中空に形成されていることとしてもよい。
【0012】
本発明に係る回転駆動装置によれば、太陽歯車が中空に形成されていることから、太陽歯車の内部に電源ケーブルや信号ケーブル等の配線部材などを挿通させることができる。従って、太陽歯車や可動内歯歯車が回転しても前記配線部材が大きく移動させられることがなく、該配線部材の取り回しが容易であるとともに破損等が防止される。
【0013】
また、本発明に係る回転駆動装置において、前記ピニオンと前記第1歯車部との間には、中間歯車が配設されていることとしてもよい。
【0014】
本発明に係る回転駆動装置によれば、ピニオン及び中間歯車の間の減速比と、中間歯車及び第1歯車部の間の減速比とが夫々得られることから、減速比をさらに高めることが可能となる。また、ピニオンと第1歯車部との間の距離を比較的大きくとれることから、駆動モータを太陽歯車の軸中心から径方向外側により大きく離間させて配設でき、前記軸中心近傍のスペースがさらに有効に利用できる。
【0015】
また、本発明に係る回転駆動装置において、前記固定内歯歯車と前記可動内歯歯車とが、クロスローラベアリングで連結されていることとしてもよい。
【0016】
本発明に係る回転駆動装置によれば、固定内歯歯車と可動内歯歯車とが、クロスローラベアリングで連結されていることから、装置の外形をより省スペース化できるとともに剛性が確保される。
【0017】
また、本発明に係る回転駆動装置において、前記クロスローラベアリングは、前記固定内歯歯車の内周面と、前記可動内歯歯車の外周面とを連結していることとしてもよい。
【0018】
本発明に係る回転駆動装置によれば、固定内歯歯車の内周面と可動内歯歯車の外周面とが対向配置された状態でクロスローラベアリングにより連結されていることから、装置に注入された潤滑油等が、太陽歯車の径方向外側へ向けて飛散することが防止されている。また、クロスローラベアリングに連結された構成であることから、このように固定内歯歯車と可動内歯歯車とが径方向に対向して配置されていても、装置の軸方向及び径方向の剛性が充分に確保されている。
【0019】
また、本発明に係るロボットの関節構造は、前述の回転駆動装置を2つ備え、これら2つの回転駆動装置が、一の回転駆動装置の前記駆動モータと他の回転駆動装置の前記駆動モータとを互いに交差させるように、かつ、一の回転駆動装置の軸と他の回転駆動装置の軸とを互いに交差させるように配設され、2軸方向に回転可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るロボットの関節構造によれば、2つの回転駆動装置により2軸の関節構造が構成されていることから、複雑な動作を行わせることができる。また、2つの回転駆動装置の駆動モータを互いに交差させるように配設しているので、回転駆動装置同士をより近接させることができ、ロボットの関節構造の小型化を図ることができる。
【0021】
また、本発明に係るロボットアームは、前述のロボットの関節構造を備えることを特徴としている。
【0022】
本発明に係るロボットアームによれば、ロボットの関節構造が減速比の高い回転駆動装置を備えていることから、例えば、小型の駆動モータであっても比較的大きなトルクを出力することができ、小型で高トルクのロボットアームを提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る回転駆動装置によれば、高い減速比が得られるとともに、装置の外形を省スペース化することができる。
また、本発明に係るロボットの関節構造によれば、回転駆動装置同士をより近接させることができ、ロボットの関節構造の小型化を図ることができる。
また、本発明に係るロボットアームによれば、小型で高トルクのロボットアームを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る回転駆動装置の外観を示す概略斜視図、図2は本発明の一実施形態に係る回転駆動装置の概略構成を示す側断面図、図3は本発明の一実施形態に係る回転駆動装置の太陽歯車、遊星歯車及びピニオンを示す概略斜視図、図4は本発明の一実施形態に係る回転駆動装置の太陽歯車、遊星歯車及びピニオンを示す概略正面図、図5は本発明の一実施形態に係る回転駆動装置における太陽歯車の分解斜視図、図6は本発明の一実施形態に係る回転駆動装置におけるクロスローラベアリングのローラの配置を説明する図である。
【0025】
図1、図2に示すように、本実施形態の回転駆動装置10は、取付プレート1と、駆動モータ2と、所謂不思議遊星歯車機構からなる減速機3と、を備えている。取付プレート1は略正方形板状をなしており、その四隅のコーナー部にはボルト孔1aが形成され、中央部には配線挿通孔1bが形成されている。この回転駆動装置10は、取付プレート1の一方側(図1、図2における上側)の面に減速機3を配設し、他方側(図1、図2における下側)の面に駆動モータ2を配設している。
【0026】
また、駆動モータ2は、その軸Cが後述する略多段円筒状の太陽歯車4の中心軸(軸)Oから平行に離間して配設されている。また、駆動モータ2には、その軸C方向に沿う前記一方側の先端にピニオン2aが設けられており、ピニオン2aは、取付プレート1から前記一方側に向け突出している。
【0027】
また、減速機3は、太陽歯車4と、太陽歯車4に噛み合うとともに太陽歯車4の軸O周りに公転する複数の遊星歯車5と、太陽歯車4の同軸上に配置され、取付プレート1に固定されているとともに遊星歯車5に噛み合う固定内歯歯車6と、固定内歯歯車6とは異なる歯数に設定され、太陽歯車4の同軸上に回転可能に配置されるとともに遊星歯車5に噛み合う可動内歯歯車7と、を備えている。
【0028】
また、取付プレート1における前記一方側の面には、略円筒状の中空軸8が配設されている。中空軸8は、太陽歯車4の径方向内側に挿入されており、軸Oと同軸に配設されている。また、中空軸8の外周面と太陽歯車4の内周面との間には、周方向に沿ったリング状をなす軸受9が複数配設されており、これらの軸受9が軸O方向に互いに離間して配置されているとともに、中空軸8と太陽歯車4とを軸O周りに相対的に回転移動自在としている。詳しくは、本実施形態においては、軸受9は軸O方向に沿って前記一方側と前記他方側とに2つが配設されている。
【0029】
また、中空軸8は、その前記他方側の端部が取付プレート1に固定されている。また、中空軸8の内径と取付プレート1の配線挿通孔1bの内径とは同一に設定されており、中空軸8の内周面8aは、配線挿通孔1bの内周面に軸O方向に滑らかに連なっている。また、中空軸8の前記一方側の端部における外周面には、ネジ部8bが形成されている。
【0030】
また、図3乃至図5に示すように、太陽歯車4において、軸O方向の前記他方側(図3、図5における下側)の端部は大径に形成されており、この大径部分が第1歯車部41とされている。また、太陽歯車4における軸O方向の前記一方側(図3、図5における上側)の部分及び中央部分(すなわち前記大径部分以外の部分)は、小径に形成されており、この小径部分が第2歯車部42とされている。すなわち、太陽歯車4は、第1歯車部41と第2歯車部42とを後述するように一体に有しており、これらの第1歯車部41と第2歯車部42とは、軸O上に同軸に配置されている。また、第1歯車部41と第2歯車部42とは、互いに異なる歯数に設定されている。詳しくは、第1歯車部41の歯数が、第2歯車部42の歯数よりも多く設定されている。
【0031】
また、太陽歯車4において、第1歯車部41は、駆動モータ2のピニオン2aに噛み合わされている。また、第2歯車部42は、複数の遊星歯車5に噛み合わされている。本実施形態では、遊星歯車5が3つ配設されており、これらの遊星歯車5が軸Oを中心として周方向に等間隔に配置されている。
【0032】
また、図5に示すように、第1歯車部41は、略多段円筒状に形成されており、その大径部分の外周面には歯形が形成され、その小径部分の外周面には軸O方向に沿って延びるキー溝41aが形成されている。また、第2歯車部42の内周面において、前記他方側の端部には、軸O方向に沿って延びるキー溝(不図示)が形成されている。そして、第1歯車部41の小径部分における外周面と第2歯車部42における前記他方側の端部の内周面とが嵌め合わされるとともに、第1歯車部41のキー溝41a及び第2歯車部42のキー溝に角棒状のキー部材43が嵌合されることで、これらの第1、第2歯車部41,42は互いの軸O周りの相対的な回転移動が規制され一体に連結されている。
【0033】
また、図2に示すように、これらの遊星歯車5は、その前記一方側の端部をリング状のキャリア11に回転可能に軸支させている。キャリア11は、軸Oと同軸にされており、太陽歯車4の前記一方側に配設されている。また、キャリア11の内周面と中空軸8の外周面との間には、周方向に沿ったリング状の軸受12が配設されており、キャリア11と中空軸8とを軸O周りに相対的に回転移動自在としている。
【0034】
また、キャリア11の前記一方側には、リング状のスペーサ13を介してロックナット14が配設されている。ロックナット14は、中空軸8のネジ部8bに螺合されて、中空軸8に一体とされている。また、キャリア11の前記他方側を向く端面と、2つの軸受9のうち前記一方側に配置される軸受9における前記一方側を向く端面との間には、リング状のスペーサ15が配設されている。
【0035】
また、遊星歯車5の径方向外側には、該遊星歯車5の歯形に噛み合う歯形を内周面に夫々備えた固定内歯歯車6及び可動内歯歯車7が、軸Oと同軸に配設されている。詳しくは、固定内歯歯車6は、遊星歯車5における軸O方向の前記他方側の部分に噛み合わされており、可動内歯歯車7は、遊星歯車5における軸O方向の前記一方側の部分に噛み合わされている。また、固定内歯歯車6の歯数と可動内歯歯車7の歯数とは互いに異なるように設定されており、本実施形態ではその歯数差が3に設定されている。
【0036】
固定内歯歯車6は、略円筒状に形成されており、その内周面が多段状とされている。詳しくは、固定内歯歯車6の内周面において、軸O方向の前記他方側の部分が小径とされているとともに歯形が形成され、この小径部分が遊星歯車5に対向している。また、固定内歯歯車6の内周面において、軸O方向の前記一方側の部分は大径とされ、この大径部分が可動内歯歯車7の外周面との間に僅かに隙間を設けて前記外周面に対向配置されている。また、固定内歯歯車6の内周面における前記小径部分と前記大径部分との間には、前記一方側を向くリング状の面からなる段部6aが形成されている。
【0037】
また、固定内歯歯車6において、軸O方向の前記他方側の端部は、取付プレート1に固定されている。また、固定内歯歯車6の軸O方向の前記一方側の端部における内周面には、軸O方向の前記他方側から前記一方側に向かうに従い漸次径方向内側から径方向外側へ向けて傾斜する第1テーパ面6bが形成されている。
【0038】
また、可動内歯歯車7は、略円筒状に形成されており、その内周面が多段状とされている。詳しくは、可動内歯歯車7の内周面において、軸O方向の前記他方側の部分が小径とされているとともに歯形が形成され、この小径部分が遊星歯車5に対向している。また、可動内歯歯車7の内周面において、軸O方向の前記一方側の部分は大径とされ、この大径部分がキャリア11の外周面との間に若干の隙間を設けて前記外周面に対向配置されている。また、可動内歯歯車7における軸O方向の前記他方側を向く端面は、固定内歯歯車6の段部6aとの間に僅かに隙間を設けて該段部6aに対向配置されている。
【0039】
また、可動内歯歯車7における軸O方向の前記一方側を向く端面には、略リング状の出力プレート16が、軸Oと同軸に配設されている。出力プレート16は、可動内歯歯車7に螺合により固定されているとともに、該可動内歯歯車7に対する軸O周りの回転移動が規制されている。
【0040】
また、可動内歯歯車7の外周面において、軸O方向の前記一方側の端部には、第2テーパ面7a及び該第2テーパ面7aの前記一方側に連なる第3テーパ面7bが形成されている。詳しくは、第2テーパ面7aは、軸O方向の前記他方側から前記一方側に向かうに従い漸次径方向外側から径方向内側へ向けて傾斜して形成されているとともに、固定内歯歯車6における第1テーパ面6bの径方向内側に配置されている。また、第3テーパ面7bは、軸O方向の前記他方側から前記一方側に向かうに従い漸次径方向内側から径方向外側へ向けて傾斜して形成されているとともに、第1テーパ面6bに対向配置されている。
【0041】
また、固定内歯歯車6における軸O方向の前記一方側を向く端面には、略リング状の外輪17が、軸Oと同軸に配設されている。外輪17は、固定内歯歯車6に螺合により固定されているとともに、該固定内歯歯車6に対する軸O周りの回転移動が規制されている。
【0042】
また、外輪17の内周面において、軸O方向の前記他方側の端部には、第4テーパ面17aが形成されている。詳しくは、第4テーパ面17aは、固定内歯歯車6における第1テーパ面6bの前記一方側に連なり、軸O方向の前記他方側から前記一方側に向かうに従い漸次径方向外側から径方向内側へ向けて傾斜して形成されている。また、第4テーパ面17aは、可動内歯歯車7における第3テーパ面7bの径方向外側に配置されているとともに、第2テーパ面7aに対向配置されている。また、外輪17の内周面において、軸O方向の前記一方側の端部は、可動内歯歯車7の外周面との間に僅かに隙間を設けて前記外周面に対向配置されている。
【0043】
また、固定内歯歯車6の第1テーパ面6bと可動内歯歯車7の第3テーパ面7bとの間には、円柱状をなし、これらの第1テーパ面6b及び第3テーパ面7bにその外周面を当接させるとともに中心軸が第1テーパ面6b及び第3テーパ面7bに平行な軸A1とされたローラ18が、複数配設されている。また、可動内歯歯車7の第2テーパ面7aと外輪17の第4テーパ面17aとの間には、円柱状をなし、これらの第2テーパ面7a及び第4テーパ面17aにその外周面を当接させるとともに中心軸が第2テーパ面7a及び第4テーパ面17aに平行な軸A2とされたローラ19が、複数配設されている。図6に示すように、これらのローラ18,19は、互いに同一形状とされているとともに、周方向に交互に配列されている。
【0044】
このように、第1、第2、第3及び第4テーパ面6b,7a,7b,17aと、ローラ18,19とを備えたクロスローラベアリング21が構成されているとともに、該クロスローラベアリング21により連結された固定内歯歯車6及び外輪17と可動内歯歯車7とが、周方向に沿って相対的に回転移動可能とされている。
【0045】
次に、この回転駆動装置10の動作について説明する。
まず、駆動モータ2がピニオン2aを軸C周りに回転させると、ピニオン2aが、太陽歯車4の第1歯車部41を軸O周りに回転させる。ここで、第1歯車部41の歯数は、ピニオン2aの歯数よりも多く設定されているため、ピニオン2aの回転が減速されて第1歯車部41に伝達される。
【0046】
第1歯車部41が軸O周りに回転されると、該第1歯車部41に一体とされた第2歯車部42が軸O周りに回転するとともに、遊星歯車5が自転する。ここで、第1歯車部41の歯数は第2歯車部42の歯数よりも多く設定されていることから、ピニオン2aの回転が、さらに減速されて遊星歯車5に伝達される。
【0047】
遊星歯車5が自転すると、該遊星歯車5に噛み合う固定内歯歯車6が取付プレート1に固定されていることから、遊星歯車5は、第2歯車部42の外周に沿って軸O周りに公転する。
【0048】
ここで、遊星歯車5に噛み合う固定内歯歯車6と可動内歯歯車7とは、夫々の内周面に形成される歯形の数が異なって設定されていることから、遊星歯車5が軸O周りに1周公転すると、可動内歯歯車7は固定内歯歯車6に対し互いの歯数差分だけ軸O周りに回転させられるようになっている。このように、可動内歯歯車7が軸O周りに回転すると、この可動内歯歯車7に一体とされた出力プレート16が回転する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る回転駆動装置10によれば、太陽歯車4が、ピニオン2aに噛合される第1歯車部41と、第1歯車部41よりも少ない歯数に設定され、遊星歯車5に噛み合う第2歯車部42とを一体に連結しているので、ピニオン2aと可動内歯歯車7との間の減速比を大幅に高めることができる。
【0050】
すなわち、ピニオン2a及び第1歯車部41の間の減速比と、第1歯車部41及び第2歯車部42の間の減速比と、第2歯車部42及び遊星歯車5の間の減速比と、遊星歯車5及び可動内歯歯車7の間の減速比との積により装置の減速比が求められることから、図9に示す従来の回転駆動装置100のように、一つの歯車部141のみからなる太陽歯車104を用いた構成に対比して、減速比を大幅に高めて出力させることができ、よって種々様々な要望、用途に対応することが可能となる。
詳しくは、従来の回転駆動装置100における減速比が200程度に設定されていたのに対比して、本実施形態の回転駆動装置10における減速比は、430程度に設定される。
【0051】
また、太陽歯車4において、第1歯車部41が第2歯車部42よりも大径に形成されているので、第1歯車部41の歯数を容易に増大させることができ、ピニオン2a及び第1歯車部41の間の減速比と、第1歯車部41及び第2歯車部42の間の減速比とをより簡便に高めることができる。また、第1歯車部41に噛み合うピニオン2a及び該ピニオン2aを回転させる駆動モータ2を太陽歯車4の軸Oから径方向外側により離間させて配設できることから、装置における軸O近傍のスペースを有効に利用することができる。
【0052】
また、太陽歯車4が中空に形成されていることから、太陽歯車4の径方向内側に配設された中空軸8の内部に電源ケーブルや信号ケーブル等の配線部材などを挿通させることができる。従って、太陽歯車4や可動内歯歯車7が回転しても前記配線部材が大きく移動させられることがなく、該配線部材の取り回しが容易であるとともに破損等が防止される。
【0053】
また、固定内歯歯車6と可動内歯歯車7とが、クロスローラベアリング21で連結されていることから、装置の外形をより省スペース化できるとともに剛性が充分に確保されている。さらに、固定内歯歯車6の内周面と可動内歯歯車7の外周面とが対向配置された状態でクロスローラベアリング21により連結されていることから、装置に注入された潤滑油等が、太陽歯車4の径方向外側へ向けて、装置の外部へ飛散することが確実に防止されている。また、クロスローラベアリング21に連結された構成であることから、このように固定内歯歯車6と可動内歯歯車7とが径方向に対向して配置されていても、装置の軸O方向及び径方向の剛性が充分に確保されている。
【0054】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、駆動モータ2のピニオン2aと太陽歯車4の第1歯車部41とが噛合していることとして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ピニオン2aと第1歯車部41とを離間して配置するとともに、これらの間に、ピニオン2aと第1歯車部41とに噛合する中間歯車を配設することとしても構わない。
【0055】
このような構成によれば、ピニオン2a及び中間歯車の間の減速比と、中間歯車及び第1歯車部41の間の減速比とが夫々得られることから、減速比をさらに高めることが可能となる。また、ピニオン2aと第1歯車部41との間の距離を比較的大きくとれることから、駆動モータ2を太陽歯車4の軸Oから径方向外側により大きく離間させて配設でき、軸O近傍のスペースがさらに有効に利用できる。
また、中間歯車は、複数配設されていても構わない。
【0056】
また、本実施形態では、太陽歯車4において、第1歯車部41が第2歯車部42よりも大径に形成されていることとして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、第1歯車部41と第2歯車部42とが略同一の外径に形成されているとともに、第1歯車部41の歯数が、第2歯車部42の歯数よりも多く設定されていることとしてもよい。さらに、第1歯車部41が、第2歯車部42よりも小径に形成されていても構わない。
【0057】
また、太陽歯車4において、第1歯車部41の歯数が第2歯車部42の歯数よりも多く設定されていることとしたが、第1歯車部41の歯数と第2歯車部42の歯数とは、互いに異なる歯数に設定されていればよく、第1歯車部41の歯数が第2歯車部の歯数よりも少なく設定されていても構わない。
【0058】
また、太陽歯車4において、第1歯車部41と第2歯車部42との周方向の相対的な回転移動が、第1歯車部41のキー溝41a、第2歯車部42のキー溝及びキー部材43の嵌合によって規制されていることとして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、第1歯車部41と第2歯車部42とが、ネジ等の螺合や接着によって固定されているとともに、周方向の相対的な回転移動が規制されていることとしても構わない。
【0059】
また、太陽歯車4において、第1歯車部41と第2歯車部42とが別体に形成されており、これらの第1、第2歯車部41,42を一体に連結することとして説明したが、これに限定されるものではなく、第1、第2歯車部41,42が元より一体に形成されていても構わない。
【0060】
また、本実施形態では、固定内歯歯車6と可動内歯歯車7とが、クロスローラベアリング21で連結されていることとしたが、これに限定されるものではなく、それ以外の玉軸受、コロ軸受又はドライベアリング等で連結されていても構わない。
【0061】
また、クロスローラベアリング21が、固定内歯歯車6の内周面と可動内歯歯車7の外周面とを連結していることとして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、固定内歯歯車6において軸O方向の前記一方側を向く端面と、可動内歯歯車7において軸O方向の前記他方側を向く端面との間にクロスローラベアリング21を配設しても構わない。
【0062】
また、本実施形態では、遊星歯車5を第2歯車部42の外周に沿って周方向等間隔に3つ備えることとして説明したが、遊星歯車5の数や配置はこれに限定されるものではなく、遊星歯車5は1つだけ配設されていても構わない。ただし、遊星歯車5を前述のように周方向等間隔に3つ以上配設することにより、該遊星歯車5に噛み合う太陽歯車4や可動内歯歯車7の回転をより安定させることができるので好ましい。
【0063】
次に、前述の回転駆動装置10を用いたロボットの関節構造30と、これを備えたロボットアーム50とについて説明する。
図7は本発明の一実施形態に係る回転駆動装置を用いたロボットの関節構造を示す概略斜視図、図8は図7のロボットの関節構造を用いたロボットアームを示す概略斜視図である。
尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
図7に示すように、ロボットの関節構造30は、前述の回転駆動装置10を2つ用いて構成されている。ロボットの関節構造30は、2つの回転駆動装置10のうち、一の回転駆動装置10a(図7における左側)の駆動モータ2と、他の回転駆動装置10b(図7における右側)の駆動モータ2とを互いに交差させるように、かつ、一の回転駆動装置10aの軸Oと他の回転駆動装置10bの軸Oとを互いに交差させるように配設されており、夫々の出力プレート16を2軸方向に回転可能に構成されている。詳しくは、これらの回転駆動装置10a,10bは、軸O同士を互いに直交させており、夫々の取付プレート1の外周面において互いに対向する辺部同士を当接させている。
【0065】
このように構成されたロボットの関節構造30によれば、2つの回転駆動装置10a,10bにより2軸の関節構造が構成されていることから、複雑な動作を行わせることができる。また、2つの回転駆動装置10a,10bの駆動モータ2を互いに交差させるように配設しているので、回転駆動装置10a,10b同士をより近接させることができ、ロボットの関節構造30の小型化を図ることができる。
【0066】
また、図8に示すように、ロボットアーム50は、第1構成部材51と第2構成部材52とを接続する第1関節部30aと、第2構成部材52と第3構成部材53とを接続する第2関節部30bと、第3構成部材53の先端に配設された第3関節部30cと、を有している。またこのロボットアーム50は、第1関節部30aが肩関節、第2関節部30bが肘関節、第3関節部30cが手首関節に相当するものとされており、これらの第1、第2及び第3関節部30a,30b,30cが前述のロボットの関節構造30によって夫々形成されている。
【0067】
第1関節部30aにおいては、第1構成部材51の端部から上方に向け突出する取付軸51aが、一の回転駆動装置10aの出力プレート16に連結されている。また、第2構成部材52の基端から第1構成部材51側へ向け突出する取付軸52aが、他の回転駆動装置10bの出力プレート16に連結されている。
【0068】
第2関節部30bにおいては、一の回転駆動装置10aの出力プレート16の径方向内側にヒンジ軸54が挿通されて、該出力プレート16に連結されている。また第2構成部材52の先端には断面略コ字状又は断面略C字状をなす接続部材55が設けられており、この接続部材55によりヒンジ軸54の両端部分が軸支されている。また、他の回転駆動装置10bの出力プレート16には、第3構成部材53の基端部分が接続されている。
【0069】
第3関節部30cにおいては、一の回転駆動装置10aの出力プレート16の径方向内側にヒンジ軸56が挿通されて、該出力プレート16に連結されている。また第3構成部材53の先端には断面略コ字状又は断面略C字状をなす接続部材57が設けられており、この接続部材57によりヒンジ軸56の両端部分が軸支されている。
【0070】
このように構成されたロボットアーム50は、第1、第2及び第3関節部30a,30b,30cにおいて、2つの回転駆動装置10a,10bが互いの軸O同士を直交させるように夫々配設されているので、直交2軸の関節構造が構成され、複雑な動作を行わせることができる。
【0071】
また、これらの回転駆動装置10a,10bが減速比の大きな不思議遊星歯車機構からなる構成とされているので、小型の駆動モータ2を用いても比較的大きなトルクを出力することができ、従って、小型かつ高トルクのロボットアーム50を構成することができる。
【0072】
さらに、2つの回転駆動装置10a,10bの駆動モータ2同士が互いに交差するように配置されているので、この関節構造のさらなる小型化を図ることができる。
また、回転駆動装置10a,10bは、各出力プレート16における径方向内側の中空軸8の内部に電源ケーブルや信号ケーブル等の配線部材を挿通することができるので、装置が複雑な動作を行う場合でもこれらの配線部材が大きく移動することがなく、従って、該配線部材の取り回しが容易であるとともに破損等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転駆動装置の外観を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る回転駆動装置の概略構成を示す側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る回転駆動装置の太陽歯車、遊星歯車及びピニオンを示す概略斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る回転駆動装置の太陽歯車、遊星歯車及びピニオンを示す概略正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る回転駆動装置における太陽歯車の分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る回転駆動装置におけるクロスローラベアリングのローラの配置を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る回転駆動装置を用いたロボットの関節構造を示す概略斜視図である。
【図8】図7のロボットの関節構造を用いたロボットアームを示す概略斜視図である。
【図9】従来の回転駆動装置の太陽歯車、遊星歯車及びピニオンを示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
2…駆動モータ、 2a…ピニオン、 4…太陽歯車、 5…遊星歯車、 6…固定内歯歯車、 7…可動内歯歯車、 10,10a,10b…回転駆動装置、 21…クロスローラベアリング、 30…ロボットの関節構造、 30a…第1関節部(ロボットの関節構造)、 30b…第2関節部(ロボットの関節構造)、 30c…第3関節部(ロボットの関節構造)、 41…第1歯車部、 42…第2歯車部、 50…ロボットアーム、 O…太陽歯車の軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛み合うとともに前記太陽歯車の軸周りに公転する遊星歯車と、
前記太陽歯車を駆動する駆動モータに配設され、前記太陽歯車に連結されるとともに前記太陽歯車を前記軸周りに回転させるピニオンと、
前記太陽歯車の同軸上に固定配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車と、
前記固定内歯歯車とは異なる歯数に設定され、前記太陽歯車の同軸上に回転可能に配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車と、を備え、
前記太陽歯車は、前記ピニオンに連結される第1歯車部と、前記第1歯車部とは異なる歯数に設定され、前記第1歯車部の同軸上に配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う第2歯車部と、を有することを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転駆動装置であって、
前記第1歯車部の歯数が、前記第2歯車部の歯数よりも多く設定されていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転駆動装置であって、
前記太陽歯車は、その軸方向に沿って中空に形成されていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転駆動装置であって、
前記ピニオンと前記第1歯車部との間には、中間歯車が配設されていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転駆動装置であって、
前記固定内歯歯車と前記可動内歯歯車とが、クロスローラベアリングで連結されていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回転駆動装置であって、
前記クロスローラベアリングは、前記固定内歯歯車の内周面と、前記可動内歯歯車の外周面とを連結していることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転駆動装置を2つ備え、これら2つの回転駆動装置が、一の回転駆動装置の前記駆動モータと他の回転駆動装置の前記駆動モータとを互いに交差させるように、かつ、一の回転駆動装置の軸と他の回転駆動装置の軸とを互いに交差させるように配設され、2軸方向に回転可能に構成されていることを特徴とするロボットの関節構造。
【請求項8】
請求項7に記載のロボットの関節構造を備えることを特徴とするロボットアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−84842(P2010−84842A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254222(P2008−254222)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】