説明

固体撮像素子の検査方法

【課題】水平画素混合読み出しによる色変化の度合いを効率よく検査することができる固体撮像素子の検査方法を提供する。
【解決手段】CCDイメージセンサ2は、ラインメモリ12を備え、動画モード時に、水平方向に離れた同色の複数の画素信号を加算して読み出す、水平画素混合読み出しを行う。受光領域15および水平転送CCD13の一部を含むように部分的にスポット光を照射した状態で、動画モードを実行する。このスポット光は、光源から発せられた光を、部分的に開口が設けられた遮光板によって規制することにより生成し、水平転送CCD12の左端を含む領域30、水平転送CCD12の中央部を含む領域31、および水平転送CCD12の右端を含む領域32に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどの固体撮像素子の検査方法に関し、特に、動画モード時に水平画素混合読み出しを行う固体撮像素子の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、CCDイメージセンサを搭載したデジタルカメラは、撮像方式として、静止画モードと動画モード(ムービモード)とを備える。この内、動画モードでは、得られる画像を動画表示させるため、CCDイメージセンサに、所定の時間間隔で周期的に撮像動作を行わせる。
【0003】
デジタルカメラが備えるデジタル信号処理回路の動作速度には一定の限界があり、また消費電力の面からも、動画モードにおいては、CCDイメージセンサを静止画モードと同様の全画素読み出しで駆動することは難しい。このため、動画モード時には画素混合読み出し(例えば、2画素混合)を行い、得られる画像の画素数を減らして信号処理を行うのが一般的である。この画素混合読み出しとして、周知の垂直画素混合読み出し(フィールド読み出し)の他、水平画素混合読み出しという読み出し方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。この水平画素混合読み出しを行うには、垂直転送CCDから垂直転送される1水平ライン分の信号電荷(画素信号)を一時的に保持した後、特定の信号電荷を選択的に水平転送CCDに転送するラインメモリを設ける必要がある。
【特許文献1】特開2004−289566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水平画素混合読み出しは、ラインメモリと水平転送CCDとの動作により、水平方向に離れた同色の信号電荷を加算する方式であり、色ごとに信号電荷の転送の仕方が異なる。このため、水平転送CCDに存在するノイズ電荷が、特定の色の信号電荷に多く加算されることとなり、ノイズ電荷の量に応じて、画像に色変化(色回り)が生じる。この色変化は、ノイズ電荷の発生原因となる高輝度の光が入射したときに顕著となるものである。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、水平画素混合読み出しによる色変化の度合いを効率よく検査することができる固体撮像素子の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の固体撮像素子の検査方法は、垂直転送CCDと水平転送CCDとの間にラインメモリを備え、動画モード時に、水平方向に離れた同色の複数の画素信号を加算して読み出す、水平画素混合読み出しを行う固体撮像素子の検査方法において、受光領域および水平転送CCDの一部を含むように部分的にスポット光を照射した状態で、前記動画モードを実行することを特徴とする。
【0007】
なお、前記スポット光を、水平転送CCDの左端を含む領域、水平転送CCDの中央部を含む領域、および水平転送CCDの右端を含む領域に照射することが好ましい。
【0008】
また、光源から発せられた白色光を、部分的に開口が設けられた遮光板によって規制することにより、前記スポット光を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固体撮像素子の検査方法は、受光領域および水平転送CCDの一部を含むように部分的にスポット光を照射した状態で動画モードを実行するので、水平画素混合読み出しに起因する色変化を確実に発生させることができ、色変化の度合いを効率よく検査することができる。
【0010】
また、スポット光を、水平転送CCDの左端を含む領域、水平転送CCDの中央部を含む領域、および水平転送CCDの右端を含む領域に照射することにより、水平方向の照射位置に関する色変化の依存性を評価することができる。
【0011】
また、光源から発せられた白色光を、部分的に開口が設けられた遮光板によって規制することにより、スポット光を生成するので、スポット光を所望の領域に確実に入射させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において、検査対象のCCDイメージセンサ2は、入射光をその光量に応じた信号電荷に変換して蓄積する複数のフォトダイオード(PD)10と、PD10の垂直列毎に設けられ、各PD10からの信号電荷を垂直転送する複数本の垂直転送CCD(VCCD)11と、VCCD11から転送される1水平ライン分の信号電荷を一時的に保持した後、出力(転送)を行うラインメモリ(LM)12と、LM12から出力される信号電荷を水平転送する水平転送CCD(HCCD)13と、HCCD13によって転送された信号電荷を信号電圧(撮像信号)に変換して出力する出力部14とから構成されている。
【0013】
PD10は、受光部の平面形状がほぼ正八角形であり、所定のピッチでハニカム状に2次元配列されている。PD10上には、図示せぬ色フィルタやマイクロレンズが積層されている。この色フィルタは、R、G、Bのセグメントがベイヤー配列された原色フィルタであり、各PD10は、R、G、Bのいずれかの光を受光する。なお、各PD10に付したR,G,Bの標記は、各PD10が受光する光の色を示している。
【0014】
VCCD11は、外部から供給される垂直転送パルスによって4相駆動により信号電荷を転送(全画素読み出し)する。図中の点線矢印で示すように、VCCD11は、図示せぬトランスファーゲートを介して、各PD10から信号電荷を受け取り、図中上方から下方に向けて信号電荷を順次転送していく。RおよびBの信号電荷と、Gの信号電荷とは異なるVCCD11で垂直転送される。
【0015】
LM12は、各VCCD11の最終段に接続されており、各VCCD11からパラレルに転送される1ライン分の信号電荷を保持する。また、LM12は、外部から供給されるラインメモリパルスにより、保持された1ライン分の信号電荷から、特定の信号電荷を選択的にHCCD13に出力することができる。
【0016】
HCCD13は、LM12に並列に接続されている。HCCD13は、外部から供給される水平転送パルスに基づいて、LM12から受け取った信号電荷を、図中右方から左方に向けて出力部14へシリアルに水平転送する。
【0017】
このCCDイメージセンサ2は、静止画モード時には、全画素(全PD10)について個別に読み出しを行う「全画素読み出し」で駆動され、動画モード時には、水平方向に画素混合(信号電荷の加算)を行って読み出す「水平画素混合読み出し」で駆動される。
【0018】
全画素読み出しでは、LM12は、保持した1水平ライン分の信号電荷を、“G”と“R,B”との2回に分けて転送し、HCCD13は、Gの信号電荷を個別に水平転送した後、R,Bの信号電荷を水平転送する。したがって、出力部14からの出力される撮像信号の色の順序は、GGG・・・,RBRB・・・,GGG・・・,BRBR・・・となる。
【0019】
一方、水平画素混合読み出しでは、1水平ライン分の信号電荷を、同色のものについて2つずつ加算を行うことにより、水平方向の信号数を半分にする。具体的には、まず、各VCCD11から垂直転送により、1水平ライン分の信号電荷をLM12に保持させた後、図2(A)に示すように、“BGRG”の4つの信号電荷ごとに半数をHCCD13に転送する。次いで、図2(B)〜図4(B)に示すように、HCCD13に転送された信号電荷を、LM12中に残る信号電荷と同じ色同士重なる位置まで順に水平転送させる。そして、この状態で、LM12中に残る信号電荷をHCCD13へ転送させ、図4(C)に示すように、水平方向に4画素離れていた信号電荷同士を混合させる。この後、HCCD13は、画素混合された信号電荷を水平転送する。出力部14からの出力される撮像信号の色の順序は、BGRG・・・,RGBG・・・となる。
【0020】
この水平画素混合読み出しでは、図2(B)〜図4(B)のように、HCCD13において、Bの信号電荷が他のRおよびGの信号電荷に先んじて水平転送されるため、図2(A)の状態において、HCCD13中の信号電荷が存在しない箇所に存在するノイズ電荷は、すべてBの信号電荷に加算される。このため、撮像信号から得られる画像は、青色側へ色変化(色回り)することとなる。この色変化の程度は、水平転送時にHCCD13中に存在するノイズ電荷の量に依存する。このノイズ電荷は、CCDイメージセンサ2への高輝度入射時に発生し易く、PD10を含む受光領域15(図6参照)からHCCD13へのブルーミングによる電荷の流入や、受光領域15からHCCD13へ光が漏れ込むことによるHCCD13内での電荷の発生に起因するものである。なお、ブルーミングとは、PD10の信号電荷の蓄積量が飽和値に達し、信号電荷が周囲へ溢れ出すことを意味する。
【0021】
次に、CCDイメージセンサ2の色変化の検査方法を説明する。図5に示すように、CCDイメージセンサ2をパッケージ化した状態で検査を行う。CCDイメージセンサ2の受光面2aに対向するように、開口3aが設けられた遮光板3を配置し、また、開口3aを通して受光面2aの一部にスポット光が入射されるようにスポット光源4を配置する。なお、遮光板3は、図6に示す領域30,31,32のいずれかに開口3aが対応するように配置し、HCCD13および受光領域15を部分的に露呈させる。この露呈部分には、開口3aで規制されたスポット光が入射される。また、スポット光源4の光は、白色光とし、輝度は、受光領域15でブルーミングが生じる程度とする。
【0022】
このようにして、まず、HCCD13の左端を含む領域30にスポット光を照射した状態において、図5に示す駆動装置5によってCCDイメージセンサ2を動画モードで駆動し、CCDイメージセンサ2から撮像信号を取得して画像データを生成する。駆動装置5は、パルス発生回路20、アナログ信号処理回路21、A/D変換器22、および画像メモリ23を含む。
【0023】
パルス発生回路20は、前述の垂直転送パルス、ラインメモリパルス、水平転送パルスなどの駆動パルスを発生し、これらをCCDイメージセンサ2に供給して、前述の水平画素混合読み出しを実行させる。CCDイメージセンサ2から出力された撮像信号は、アナログ信号処理回路21によって増幅や相関二重サンプリングなどのアナログ信号処理が施され、A/D変換器22によって所定ビットのデジタル信号に変換された後、画像メモリ23に、画像データとして順次に格納される。
【0024】
駆動装置5は、画像メモリ23に格納された画像データをパーソナルコンピュータ(PC)6に出力する。そして、PC6により、入力された画像データの色変化の度合いを定量的に評価する。この後、スポット光の照射領域を、HCCD13の中央部を含む領域31、HCCD13の右端を含む領域31と順に変更し、それぞれの場合について、同様に画像データの色変化の度合いを定量的に評価する。
【0025】
このように、本検査方法では、HCCD13および受光領域15の一部に部分的にスポット光を照射した状態で画像データの評価を行うので、前述の水平画素混合読み出しに起因する色変化を確実に発生させることができ、より安定した評価が可能となる。また、本検査方法では、HCCD13の左端、中央、右端の領域30〜32にスポット光を入射させるので、水平方向の照射位置に関する色変化の依存性を評価することができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、遮光板3の開口3aを、図6に示す領域30,31,32のいずれかに対応するように設定しているが、開口3aの設定位置は、HCCD13および受光領域15の一部を部分的に露呈させる領域であればよく、適宜変更してよい。また、開口3aの大きさも適宜変更してよい。
【0027】
また、上記実施形態では、動画モード時において、水平画素混合読み出しにより水平方向に2画素の信号電荷を混合しているが、この水平画素混合読み出しに加えて、さらに、垂直方向の画素混合読み出しや、垂直方向の画素間引き読み出しを行うことにより、得られる画像が垂直方向に間延びしないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】検査対象のCCDイメージセンサの構成を示す図である。
【図2】水平画素混合読み出しの動作を説明する図(その1)である。
【図3】水平画素混合読み出しの動作を説明する図(その2)である。
【図4】水平画素混合読み出しの動作を説明する図(その3)である。
【図5】CCDイメージセンサの検査装置の構成を示す図である。
【図6】遮光板の開口の設定領域を例示する図である。
【符号の説明】
【0029】
2 CCDイメージセンサ
2a 受光面
3 遮光板
3a 開口
4 スポット光源
5 駆動装置
6 パーソナルコンピュータ
10 フォトダイオード
11 垂直転送CCD
12 ラインメモリ
13 水平転送CCD
14 出力部
15 受光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直転送CCDと水平転送CCDとの間にラインメモリを備え、動画モード時に、水平方向に離れた同色の複数の画素信号を加算して読み出す、水平画素混合読み出しを行う固体撮像素子の検査方法において、
受光領域および水平転送CCDの一部を含むように部分的にスポット光を照射した状態で、前記動画モードを実行することを特徴とする固体撮像素子の検査方法。
【請求項2】
前記スポット光を、水平転送CCDの左端を含む領域、水平転送CCDの中央部を含む領域、および水平転送CCDの右端を含む領域に照射することを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子の検査方法。
【請求項3】
光源から発せられた白色光を、部分的に開口が設けられた遮光板によって規制することにより、前記スポット光を生成することを特徴とする請求項1または2記載の固体撮像素子の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−201528(P2007−201528A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13918(P2006−13918)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】