説明

固体撮像素子用硬化性組成物及びそれを用いた固体撮像素子

【課題】塗布性、硬化性に優れ、屈折率が高く、光透過性に優れた硬化膜が得られる固体撮像素子用硬化性組成物、及びそれを用いた高屈折率の固体撮像素子用硬化膜を提供する。
【解決手段】(A)アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択される一以上の金属元素の酸化物かを主成分とし、下記成分(B)と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物によって表面処理された粒子、(B)式(b−1)又は(b−2)で示される構造を有する化合物、(C)加熱により酸を発生する化合物、(D)有機溶剤を含有する固体撮像素子用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子用硬化性組成物及びそれを用いた固体撮像素子用硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平坦化膜をマイクロレンズより大きな屈折率のポリイミド樹脂で形成することが記載されている。しかし、この固体撮像素子は、ポリイミド樹脂の屈折率が十分大きくないため、固体撮像素子の受光部への集光効率が十分でなく、また、硬化温度が高いため、工作精度の点で問題があった。
従って、マイクロレンズの下方にある層であって、より高い屈折率を備える層が求められていた。
【0003】
一方、金属酸化物粒子として、酸化ジルコニウムを用いて、1.7程度の屈折率を有し、保存安定性を改良した高屈折率材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記の高屈折率材料には、さらに屈折率を増大させるため、屈折率の高い金属酸化物粒子である酸化チタン粒子を用いることが示唆されている。
しかし、酸化チタン粒子は、一般に光触媒能を有するため、このような金属酸化物粒子を含有する膜は、その耐光性が低下するという欠点があった。本願出願人は、酸化チタン粒子を特定の金属元素の酸化物で被覆し、酸化チタンの光触媒活性を抑え、耐光性を向上させる技術を発明し、特許出願している(特許文献3)。
このように、反射防止性を有する高屈折率膜が知られているが、屈折率が十分に高くない、あるいは耐光性が十分でない等の問題を有していた。また、固体撮像素子において用いることができるより簡便な高屈折率膜用材料が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平5−134111号公報
【特許文献2】特開2000−186216号公報
【特許文献3】特開2005−228888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗布性、硬化性に優れ、屈折率が高く、光透過性に優れた硬化膜が得られる固体撮像素子用硬化性組成物、及びそれを用いた高屈折率の固体撮像素子用硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、メラミン化合物と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物によって表面処理された高屈折率の金属酸化物粒子、メラミン化合物、硬化触媒及び有機溶剤を含む硬化性組成物を、固体撮像素子用硬化性組成物として用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、下記の固体撮像素子用硬化性組成物、それからなる硬化膜、硬化膜の製造方法及び固体撮像素子が提供される。
1.下記成分(A)〜(D):
(A)アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択される一以上の金属元素の酸化物を主成分とし、下記成分(B)と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物によって表面処理された粒子
(B)下記一般式(b−1)又は(b−2)で示される構造を有する化合物
【化2】

(式(b−1)及び(b−2)中、R、R、Rは炭素数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基を示し、R、R、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
(C)加熱により酸を発生する化合物
(D)有機溶剤
を含有する固体撮像素子用硬化性組成物。
2.前記成分(B)と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物が、チオール基、水酸基、エポキシ基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される1以上の基を有するトリアルコキシシラン化合物である上記1に記載の固体撮像素子用硬化性組成物。
3.前記成分(B)がアルコキシメチル化メラミン化合物である上記1又は2に記載の固体撮像素子用硬化性組成物。
4.前記成分(C)が脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸塩、金属塩及びリン酸エステルからなる群から選択される一種以上の化合物である上記1〜3のいずれかに記載の固体撮像素子用硬化性組成物。
5.前記(D)有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びシクロヘキサノンからなる群から選択される一以上の溶剤を含むものである上記1〜4のいずれかに記載の固体撮像素子用硬化性組成物。
6.上記1〜5のいずれかに記載の固体撮像素子用硬化性組成物を硬化させてなる屈折率が1.60以上の固体撮像素子用硬化膜。
7.上記1〜6のいずれかに記載の固体撮像素子用硬化性組成物をスピンコート法により塗布して該組成物の塗布膜を形成した後に、加熱又は放射線を照射して該塗布膜を硬化せしめる工程を有する上記6に記載の固体撮像素子用硬化膜の製造方法。
8.受光部、上記7に記載の硬化膜、マイクロレンズを、この順に含む固体撮像素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物によれば、塗布性及び硬化性に優れ、屈折率が高く、光透過性に優れた硬化膜が得られる。
本発明によれば、集光効率が高く、感度の高い固体撮像素子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の固体撮像素子用硬化性組成物(以下、本発明の硬化性組成物という)に関する実施の形態(第1の実施形態)及び固体撮像素子用硬化膜(以下、本発明の硬化膜という)に関する実施の形態(第2の実施形態)を具体的に説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
本発明の硬化性組成物は、(A)アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択される一以上の金属元素の酸化物を主成分とし、下記成分(B)と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物によって表面処理された粒子と、(B)前記一般式(b−1)又は(b−2)で示される構造を有する化合物(以下、成分(B)の化合物ということがある)と、(C)加熱により酸を発生する化合物と、(D)有機溶剤とを含有する。
【0012】
(A)アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択される一以上の金属元素の酸化物を主成分とし、成分(B)の化合物と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物によって表面処理された粒子(以下、反応性粒子(A)という)
本発明において用いられる反応性粒子(A)は、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜の屈折率を高める機能を有し、さらに成分(B)の化合物と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物によって表面処理されていることで他の成分との相溶性が改善され、高い屈折率を維持しつつ、塗布性、硬化性等を改善することができる。
【0013】
(1)アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択される一以上の金属元素の酸化物を主成分とする粒子(以下、金属酸化物粒子という)
反応性粒子(A)を構成する金属酸化物粒子は、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択される一以上の金属元素の酸化物からなる粒子である。
金属酸化物粒子の屈折率は、通常、2.7〜1.8の範囲であり、2.7〜1.9の範囲であることが好ましく、2.7〜2.0の範囲であることがより好ましい。高屈折率、安定性の観点から、金属酸化物粒子は、ジルコニウムの酸化物粒子であることが好ましい。
また、金属酸化物粒子が酸化チタンである場合には、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択される一以上の金属元素の酸化物で被覆された粒子を用いることもできる。
金属酸化物粒子の数平均粒子径(凝集している場合には、一次粒子径)は、0.1μm以下であることが好ましい。数平均粒子径が0.1μmを超えると、反応性粒子(A)を均一に分散させることが困難となる場合がある。また、反応性粒子(A)が沈降し易くなり、保存安定性に欠ける場合がある。さらには、得られる硬化膜の透明性が低下したり、濁度(Haze値)が上昇する場合がある。数平均粒子径は、0.005〜0.08μmがより好ましく、0.01〜0.05μmがさらに好ましい。
【0014】
(2)成分(B)の化合物と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物(以下、反応性シラン化合物という)
本発明で用いる反応性シラン化合物は、成分(B)の化合物と反応可能な基とアルコキシシリル基を有する化合物であり、アルコキシシリル基によって金属酸化物粒子と結合を形成し、反応可能な基によって、後述する成分(B)の組成物と結合することができる。
【0015】
(i)成分(B)の化合物と反応可能な基
成分(B)の化合物と反応可能な基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシル基、メルカプト基、エポキシ基が好ましい。成分(B)の化合物と反応可能な基の選択は、硬化性化合物である成分(B)の化合物との組み合わせで適宜選択することが好ましい。
【0016】
(ii)アルコキシシリル基
アルコキシシリル基としては、1〜3個の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられ、3個の炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。
【0017】
(iii)反応性シラン化合物の具体例
反応性シラン化合物の例としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Z6062、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(Z6911、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Z6040、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Z6041、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(Z6044、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(Z6042、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Z6043、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Z6011、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0018】
(3)金属酸化物粒子の反応性シラン化合物による表面処理
金属酸化物粒子表面を反応性シラン化合物で処理する方法としては特に制限はないが、反応性シラン化合物と粒子を混合し、加熱、攪拌処理することにより製造することが可能である。尚、反応性シラン化合物のアルコキシシリル基と粒子とを効率よく結合させるため、反応は水の存在下で行われるのが好ましい。
粒子に対する反応性シラン化合物の反応量は、粒子及び反応性シラン化合物の合計を100重量%として、好ましくは0.001重量%以上であり、さらに好ましくは0.01重量%以上である。0.001重量%未満であると。組成物中の粒子の分散性が十分でなく、得られる硬化物の塗布性、硬化性が十分でなくなる可能性がある。
【0019】
以下、反応性シラン化合物による金属酸化物粒子の表面処理方法をさらに詳細に説明する。
表面処理時においてアルコキシシリル基の加水分解で消費される水の量は、1分子中のケイ素上のアルコキシ基の少なくとも1個が加水分解される量であればよい。好ましくは加水分解の際に添加、又は存在する水の量は、ケイ素上の全アルコキシ基のモル数に対し3分の1以上であり、さらに好ましくは全アルコキシ基のモル数の2分の1以上3倍未満である。完全に水分の存在しない条件下で反応性シラン化合物と粒子とを混合して得られる生成物は、粒子表面に反応性シラン化合物が物理吸着した生成物である。
【0020】
表面処理時においては、反応性シラン化合物を別途加水分解操作に付した後、これと粉体粒子又は粒子の溶剤分散ゾルを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法;反応性シラン化合物の加水分解を粒子の存在下で行う方法;又は、他の成分、例えば、重合開始剤等の存在下、粒子の表面処理を行う方法等を選ぶことができる。この中では、反応性シラン化合物の加水分解を粒子の存在下で行う方法が好ましい。表面処理時、その温度は、好ましくは0℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上100℃以下である。また、処理時間は通常5分から24時間の範囲である。
【0021】
表面処理時において、粉体状の金属酸化物粒子を用いる場合、反応性シラン化合物との反応を円滑にかつ均一に行わせることを目的として、有機溶剤を添加してもよい。そのような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
これらの溶剤の添加量は反応を円滑、均一に行わせる目的に合う限り特に制限はない。
【0022】
粒子として溶剤分散ゾルを用いる場合、溶剤分散ゾルと、反応性シラン化合物とを少なくとも混合することにより製造することができる。ここで、反応初期の均一性を確保し、反応を円滑に進行させる目的で、水と均一に相溶する有機溶剤を添加してもよい。
【0023】
また、表面処理時において、反応を促進するため、触媒として酸、塩又は塩基を添加してもよい。
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;メタンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、フタル酸、マロン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸等の不飽和有機酸を、塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩酸塩、テトラブチルアンモニウム塩酸塩等のアンモニウム塩を、また、塩基としては、例えば、アンモニア水、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級、2級又は3級脂肪族アミン、ピリジン等の芳香族アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類等を挙げることができる。
これらの中で好ましい例は、酸としては、有機酸、不飽和有機酸、塩基としては3級アミン又は4級アンモニウムヒドロキシドである。これらの酸、塩又は塩基の添加量は、反応性シラン化合物100重量部に対して、好ましくは0.001重量部から1.0重量部、さらに好ましくは0.01重量部から0.1重量部である。
【0024】
また、反応を促進するため、脱水剤を添加することも好ましい。
脱水剤としては、ゼオライト、無水シリカ、無水アルミナ等の無機化合物や、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、テトラエトキシメタン、テトラブトキシメタン等の有機化合物を用いることができる。中でも、有機化合物が好ましく、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル等のオルトエステル類がさらに好ましい。
尚、粒子に結合した反応性シラン化合物の量は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の重量減少%の恒量値として、空気中で110℃から800℃までの熱重量分析により求めることができる。
【0025】
本発明の硬化性組成物中における成分(A)の配合量は、有機溶剤(D)を除く固形分全量を100重量%としたときに、通常、60〜95重量%、好ましくは65〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%である。成分(A)の配合量が60重量%未満であると、屈折率が1.6未満となるおそれがあり、95重量%を超えると、塗布性、透明性、硬化性が低下するおそれがある。
尚、成分(A)の配合量は、固形分を意味し、成分(A)が分散液の形態で用いられるときは、その配合量には分散媒の量を含まない。
【0026】
(B)式(b−1)又は(b−2)で示される構造を有する化合物
本発明の組成物においては、硬化性化合物として、下記式(b−1)又は(b−2)で示される構造を有する化合物を用いる。
【化3】

【0027】
式(b−1)及び(b−2)中、R、R、Rは炭素数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基を示し、好ましくはメチレン基である。R、R、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、好ましくはメチル基である。
【0028】
上記式(b−1)又は(b−2)で示される構造を有する化合物としては、メラミン化合物、尿素化合物、ベンゾグアナミン化合物、グリコールウリル化合物等が挙げられ、メラミン化合物が好ましい。硬化性化合物として、メラミン化合物を用いることにより、硬化性組成物の保存安定性を向上させることができる。また、比較的低温、例えば、200℃以下での短時間硬化が可能となる。
メラミン化合物は、一般にトリアジン環に窒素原子が結合した骨格を有する化合物として知られているものであり、具体的には、メラミン、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、アルコキシ化メチルメラミン等を挙げることができるが、1分子中にメチロール基及びアルコキシ化メチル基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上有するものが好ましい。具体的には、メラミンとホルムアルデヒドとを塩基性条件下で反応させて得られるメチロール化メラミン、アルコキシ化メチルメラミン、又はそれらの誘導体が好ましく、特に本発明の組成物に良好な保存安定性が得られる点、及び良好な反応性が得られる点で、アルコキシ化メチルメラミンが好ましい。架橋性化合物として用いられるメチロール化メラミン及びアルコシ化メチルメラミンには特に制約はなく、例えば、文献「プラスチック材料講座[8]ユリア・メラミン樹脂」(日刊工業新聞社)に記載されている方法で得られる各種の樹脂状物の使用も可能である。
【0029】
メラミン化合物としては、分子内にメチロール基及びアルコキシ化メチル基又はいずれか一方を2個以上有するメラミン化合物が最も好ましい。また、これらのメラミン化合物のうちでも、ヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン化合物、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン化合物、メチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ブチルエーテル化メチロールメラミン化合物等のメチル化メラミン化合物がより好ましい。
【0030】
上記一般式(b−1)又は(b−2)で示される構造を有する化合物の例としては、サイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712、272、202、207、212、253、254、506、508、1123、1123−10、1128、1170、1172、1141、1125−80、マイコート102、105、106、130(いずれも三井サイテック製)等が挙げられる。
【0031】
本発明の硬化性組成物中における成分(B)の配合量は、有機溶剤(D)を除く固形分全量を100重量%としたときに、通常、1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%である。成分(B)の配合量が1重量%未満であると、硬化性が著しく低下する。40重量%を超えると、屈折率が1.60未満となるおそれがある。
【0032】
(C)加熱により酸を発生する化合物
成分(C)の加熱により酸を発生する化合物は、硬化触媒であり、成分成分(B)の化合物の反応を促進するものであれば、好適に使用することができる。より具体的には、脂肪族スルホン酸、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸塩、金属塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸塩、金属塩、リン酸エステル等が好ましい。これらの化合物は一種単独又は二種以上の組み合わせで使用することができる。
これらのうち、メチル化メラミン化合物等の硬化性化合物の硬化速度をより向上させることができる点から、芳香族スルホン酸塩が最も好ましい。
【0033】
本発明の硬化性組成物中における成分(C)の配合量は、有機溶剤(D)を除く固形分全量を100重量%としたときに、通常、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。成分(C)の配合量が0.01重量%未満であると、硬化触媒の添加効果が発現しない。10重量%を超えると、硬化性組成物の保存安定性が低下する。
【0034】
(D)有機溶剤
有機溶剤は、薄膜の硬化膜を均一に形成するために配合する。有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、t−ブタノール、イソプロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。好適な溶剤は、硬化性組成物の塗布方法に応じて異なるがスピンコート法を用いる場合には、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルが、良好な塗布性を与えるため好ましい。尚、有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
有機溶剤(D)の配合量は特に制限されないが、固形分の総量100重量部に対し、合計で、130〜10,000重量部とするのが好ましい。添加量が100重量部未満となると、硬化性組成物の粘度調整が困難となる場合がある。一方、添加量が10,000重量部を超えると、硬化性組成物の保存安定性が低下したり、また、粘度が低下し過ぎて、取り扱いが困難となる場合がある。
有機溶剤の添加量は、200〜5,000重量部がより好ましく、300〜1,000重量部がさらに好ましい。
【0036】
(E)添加剤
本発明の硬化性組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、ラジカル性光重合開始剤、ラジカル重合性単量体、光増感剤、光酸発生剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、無機充填剤、顔料、染料等の添加剤をさらに含有させることができる。レベリング剤としては、硬化性組成物の塗布性を向上させるフッ素系のものが好ましい。
【0037】
本発明の硬化性組成物は、固体撮像素子の高屈折率層を形成する材料として特に有用であるが、層内レンズ用材料としても用いることができる。
【0038】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、本発明の硬化性組成物を硬化させてなる屈折率が1.60以上の固体撮像素子用硬化膜(以下、高屈折率膜という。)である。高屈折率膜は、固体撮像素子の構成中、基材層とマイクロレンズの中間に設置される。基材層とマイクロレンズの中間には、高屈折率膜に加えて、例えば、集光効率向上層や平坦化膜等他の層が設置されるのが通常である。
本発明の硬化膜を有する固体撮像素子の一形態を示す模式図を図1に示す。固体撮像素子1は、基板10、受光部12、高屈折率層14、平坦化層16及びマイクロレンズ(表面レンズ)18を有する。
また、図2は、本発明の硬化性組成物からなる層内レンズを有する固体撮像素子の一形態を示す模式図である。固体撮像素子1は、基板10、受光部12、低屈折率層13、層内レンズ15、平坦化層16及びマイクロレンズ(表面レンズ)18を有する。
マイクロレンズ(表面レンズ)18に入射した光を、高屈折率層14又は層内レンズ15によりさらに強く屈折させるため、集光効率を高めることが可能になる。
尚、本発明の固体撮像素子は、図1及び図2に限定されるものではない。
【0039】
以下、第2の実施形態について具体的に説明する。
(1)高屈折率材料
第2の実施形態に使用する硬化性組成物は、第1の実施形態の内容と同様であるため、ここでの具体的な説明は省略する。
【0040】
(2)硬化膜の屈折率
本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜(高屈折率膜)の屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)は、1.60以上である。屈折率が1.60未満となると、固体撮像素子受光部への集光効率が低下する。屈折率は、より好ましくは1.60〜2.20であり、さらに好ましくは1.65〜2.20である。尚、屈折率が2.20を超えると、使用可能な材料の種類が過度に制限される場合がある。
また、高屈折率膜を複数層設ける場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率を有していればよい。従って、その他の高屈折率膜は1.60未満の屈折率を有していてもよい。
【0041】
(3)硬化膜の膜厚
次に、高屈折率膜の厚さについて説明する。高屈折率膜の厚さは特に制限されないが、例えば、50〜30,000nmが好ましい。高屈折率膜の厚さが50nm未満となると、固体撮像素子受光部への集光効率が十分向上しない場合がある。一方、厚さが30,000nmを超えると、高屈折率膜を透過する光量が減少し、かえって固体撮像素子の感度が低下する場合がある。高屈折率膜の厚さは、100〜10,000nmがより好ましく、500〜5、000nmがさらに好ましい。
【0042】
(4)硬化膜の製造方法
本発明の硬化膜は、上記本発明の硬化性組成物をコーティングすることによって形成される。このようなコーティング方法としては、ディッピング法、スプレー法、ダイコート法、スリットコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、又はインクジェット法等の方法を用いることができるが、スピンコート法が均一な硬化膜が得られ易い点で優れている。
【0043】
また、本発明の硬化性組成物を硬化する手段も特に制限されないが、例えば、塗工後に加熱硬化することが好ましい。その場合、30〜200℃で、1〜180分間加熱するのが好ましい。この条件で加熱することにより、基材層や形成される硬化膜を損傷することなく、固体撮像素子用硬化膜を得ることができる。好ましくは、50〜200℃で、2〜120分間、より好ましくは、80〜200℃で、3〜60分間加熱する。
尚、本発明の硬化性組成物の硬化程度は、例えば、硬化性化合物(B)としてメラミン化合物を用いた場合は、メラミン化合物のメチロール基又はアルコキシ化メチル基の量を赤外分光分析したり、又は、ゲル化率を、ソックスレー抽出器を用いて測定することにより、定量的に確認することができる。
本発明の硬化性組成物は、放射線を照射して硬化させることもできるし、熱硬化と放射線硬化を組み合わせて硬化させることもできる。この場合、放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲は、これら実施例の記載に限定されるものではない。
【0045】
製造例1:ジルコニア粒子ゾル(Aa)の製造
球状ジルコニア微粉末(住友大阪セメント(株)社製、数平均一次粒子径0.01μm)300部をメチルエチルケトン(MEK)700部に添加し、ガラスビーズにて168時間分散を行い、カラスビーズを除去してメチルエチルケトンジルコニアゾル(Aa)950部を得た。分散ゾルをアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、30%であった。また、この固形物の電子顕微鏡観察の結果、短軸平均粒子径15nm、長軸平均粒子径20nm、アスペクト比1.3であった。
【0046】
製造例2:反応性ジルコニア粒子ゾル(A−1)の製造
メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)社製)1.0部、製造例1で調製したメチルエチルケトンジルコニアゾル(Aa)(ジルコニア濃度30%)309部、イオン交換水0.1部の混合液を60℃、4時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.0部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで反応性粒子(分散液(A−1))を得た。この分散液(A−1)をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、30%であった。
【0047】
製造例3:反応性ジルコニア粒子ゾル(A−2)の製造
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)社製)1.3部、製造例1で調製したメチルエチルケトンジルコニアゾル(Aa)(ジルコニア濃度30%)309部、イオン交換水0.1部の混合液を、60℃、4時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.0部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで反応性粒子(分散液(A−2))を得た。この分散液(A−2)をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、30%であった。
【0048】
実施例1
紫外線を遮蔽した容器中において、製造例2で調製した反応性ジルコニア粒子ゾル(A−1)300.0部(反応性ジルコニア粒子90.0部)、メトキシ化メチルメラミン(製品名サイメル300、日本サイテック(株)製)15.0部を加え、30℃で2時間撹拌することで均一な溶液を得た。この溶液を減圧濃縮し、155.9部の揮発分を留去した後、キャタリスト4050(芳香族スルホン酸アミン塩、日本サイテック(株)製)12.5部、メガファックF−445(大日本インキ化学工業(株)製)1部、メチルエチルケトン2.4部、シクロヘキサノン99.4部を加え、30℃で2時間攪拌し組成物を得た。この組成物の固形分含量を測定したところ、42%であった。
【0049】
実施例2〜7及び比較例1〜3
組成を表1のように変えた以外は実施例1と同様にして各組成物を得た。
【0050】
[硬化膜の評価]
(1)評価用硬化膜の調製
(1−1)塗布性、硬化性及び屈折率の評価用硬化膜
スピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布した。スピンコーターの回転条件は300rpmで5秒回転の後、2000回転で40秒させた。その後ホットプレートを用いて、200℃、10分の加熱を行い、硬化塗膜を得た。
【0051】
(1−2)光透過性の評価用硬化膜
スピンコーターを用いてガラスウェハー上に塗布した。スピンコーターの回転条件は300rpmで5秒回転の後、2000回転で40秒させた。その後ホットプレートを用いて、200℃、10分の加熱を行い、硬化塗膜を得た。
【0052】
(2)評価方法
(2−1)塗布性
シリコンウェハー上に塗布した塗膜の外観を目視で確認し、下記基準によって評価した。得られた結果を表1に示す。
○:塗膜が均一で色むらがない。
×:塗膜面内で色むらがある。
【0053】
(2−2)硬化性
シリコンウェハー上に塗布、硬化した塗膜をメチルエチルケトン(MEK)ラビングした後の外観を目視で確認し、下記基準によって評価した。得られた結果を表1に示す。
○:MEKラビング前後で変化が見られない
△:MEKラビング後に擦り傷が見られる
×:MEKラビング後に剥離が見られる
【0054】
(2−3)屈折率
シリコンウェハー上に形成した硬化膜を、分光反射率法により589nmの波長における屈折率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0055】
(2−4)光透過性
ガラスウェハー上に形成した硬化膜の全光線透過率を、カラーヘーズメーターにて測定し、下記基準によって評価した。全光線透過率の測定はガラスウェハーを基準として測定した。
○:全光線透過率が95%以上
△:全光線透過率が90%以上で95%未満
×:全光線透過率が90%未満
【0056】
【表1】

【0057】
表1中に記載の商品名等は下記のものを意味する。
ジルコニア粒子(Aa):製造例1
反応性ジルコニア粒子(A−1):製造例2
反応性ジルコニア粒子(A−2):製造例3
サイメル300:メトキシ化メチルメラミン、日本サイテック(株)製
cat4050:芳香族スルホン酸アミン塩、日本サイテック(株)製
F445:フッ素系レベリング剤、メガファックF−445、大日本インキ化学工業(株)製
MEK:メチルエチルケトン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0058】
表1の結果から、メラミン化合物と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物によって表面処理されたジルコニア粒子を用いることにより、屈折率が1.74と高く、光透過性にも優れていると同時に、塗布性及び硬化性も良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の硬化性組成物は、固体撮像素子における高屈折率層形成用材料として有用である。
本発明の硬化性組成物を用いて得られる硬化膜を含む固体撮像素子は、各種マイクロレンズアレイを用いたカメラ等の光学系機構に、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の固体撮像素子の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の固体撮像素子の別の実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1 固体撮像素子
10 基板
12 受光部
13 低屈折率層
14 高屈折率層
15 層内レンズ
16 平坦化層
18 マイクロレンズ(表面レンズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D):
(A)アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アンチモン及び亜鉛からなる群から選択される一以上の金属元素の酸化物を主成分とし、下記成分(B)と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物によって表面処理された粒子
(B)下記一般式(b−1)又は(b−2)で示される構造を有する化合物
【化1】

(式(b−1)及び(b−2)中、R、R、Rは炭素数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基を示し、R、R、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
(C)加熱により酸を発生する化合物
(D)有機溶剤
を含有する固体撮像素子用硬化性組成物。
【請求項2】
前記成分(B)と反応可能な基を有するアルコキシシラン化合物が、チオール基、水酸基、エポキシ基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される1以上の基を有するトリアルコキシシラン化合物である請求項1に記載の固体撮像素子用硬化性組成物。
【請求項3】
前記成分(B)がアルコキシメチル化メラミン化合物である請求項1又は2に記載の固体撮像素子用硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(C)が脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸塩、金属塩及びリン酸エステルからなる群から選択される一種以上の化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体撮像素子用硬化性組成物。
【請求項5】
前記(D)有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びシクロヘキサノンからなる群から選択される一以上の溶剤を含むものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体撮像素子用硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体撮像素子用硬化性組成物を硬化させてなる屈折率が1.60以上の固体撮像素子用硬化膜。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の固体撮像素子用硬化性組成物をスピンコート法により塗布して該組成物の塗布膜を形成した後に、加熱又は放射線を照射して該塗布膜を硬化せしめる工程を有する請求項6に記載の固体撮像素子用硬化膜の製造方法。
【請求項8】
受光部、請求項7に記載の硬化膜、マイクロレンズを、この順に含む固体撮像素子。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−115219(P2008−115219A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297639(P2006−297639)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】