説明

固体撮像装置、撮像装置、及び分光素子

【課題】より多くの光を受光領域に取り込むことができる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】二次元配列された複数の受光領域11〜13を有し、受光領域11〜13への入射光を光電変換し、入射光の強度に応じた電気信号を出力する光電変換部10と、光電変換部10の上層に設けられる複数の集光レンズ21からなるレンズ部20であって、集光レンズ21の各々が、連続する第1(11)〜第3(13)の受光領域11〜13の各組に対応して設けられるレンズ部20と、光電変換部10とレンズ部20との間に設けられる分光素子30であって、分光素子30が、周期的に屈折率が変化する媒体よりなり、集光レンズ21を透過した第1の波長帯及び第3の波長帯の光を回折させて、第1の受光領域11及び第3の受光領域13に入射させ、集光レンズ21を透過した第2の波長帯の光を偏向せずに透過して、第2の受光領域12に入射させる分光素子とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を波長帯毎に分光する分光素子に関する。また、本発明は、それを用いた固体撮像装置及びデジタルカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラの普及に伴い、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子が広く利用されている。固体撮像素子は、受光面上に複数の受光領域を有し、各領域に入射した光をその入射光の強度に応じた電気信号に変換して出力することにより、画像情報を生成する。
【0003】
デジタルカメラ市場においては、機器の小型化あるいは撮影画像の高精細化が望まれている。撮像素子を小型にしたり、あるいは撮像素子の画素数を増やしたりするには、一つの画素あたりの受光領域の面積を小さくしなければならない。しかしながら、画素の面積が小さくなればなるほど、その領域に入射する光の量は相対的に減少するため、撮像素子の感度低下を招いてしまう。
【0004】
従来、固体撮像素子には、カラー画像を得るために、各画素の受光領域の前面(入射側)にカラーフィルタが設けてある。カラーフィルタによって所望の波長帯域以外の波長の光を吸収あるいは反射することにより、固体撮像素子の各画素には特定の波長域の光だけを集光している。具体的な固体撮像装置の構成を、図13を用いて説明する。
【0005】
図13は、従来の固体撮像装置の一部を示す概略構成図である。赤色、緑色、青色のカラーフィルタ210、220、230が、光電変換を行う受光領域300、400、500に対応するように設けられている。カラーフィルタ210、220、230の上方には、各々の受光領域に入射光が集光するようにマイクロレンズ100が設けられている。このようなマイクロレンズを用いた固体撮像装置を開示する先行技術文献として、例えば特開2008−71920号公報がある。
【0006】
国際公開第2005/069376号には、光学多層膜を用いて波長選択性のあるカラーフィルタを構成し、カラーフィルタの薄膜化によって、固体撮像装置を小型化する例が開示されている。特開2005−79674号公報には、フォトニック結晶を用いて入射光を分光し、分光した光を赤色、緑色、青色の3つの固体撮像素子に入射させる三板式固体撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−71920号公報
【特許文献2】国際公開第2005/069376号
【特許文献3】特開2005−79674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2008−71920号公報に記載の固体撮像装置には、カラーフィルタによる損失によって、入射光の光量が減少してしまうという課題がある。
【0009】
国際公開第2005/069376号に記載の固体撮像装置では、カラーフィルタの薄膜化により小型化が図れるものの、各画素に入る選択波長以外の光は反射されるため、受光効率の向上は望めない。
【0010】
特開2005−79674号公報に記載の固体撮像装置は、フォトニック結晶を用いて分光を行っているが、三板式固体撮像装置にしか適用できない。例えば、特開2005−79674号公報に記載の分光素子は、2つの波長帯の光または3つの波長帯域の光を同じ方向に曲げていることから、固体撮像素子の配置の自由度が比較的高い3板式固体撮像装置以外への適用は想定されていない。
【0011】
本発明は、1つの画素あたりの受光領域を拡げることなく、より多くの光を受光領域に取り込むことができる固体撮像装置、及びそれを用いた撮像装置を提供することを目的とする。また、入射光を分光する分光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る固体撮像装置は、二次元配列された複数の受光領域を有し、受光領域への入射光を光電変換し、入射光の強度に応じた電気信号を出力する光電変換部と、光電変換部の上層に設けられる複数の集光レンズからなるレンズ部であって、集光レンズの各々が、連続する第1〜第3の受光領域の各組に対応して設けられるレンズ部と、光電変換部とレンズ部との間に設けられる分光素子であって、分光素子が、周期的に屈折率が変化する媒体よりなり、集光レンズを透過した第1の波長帯及び第3の波長帯の光を回折させて、第1の受光領域及び第3の受光領域に入射させ、集光レンズを透過した第2の波長帯の光を偏向せずに透過して、第2の受光領域に入射させる分光素子とを備える。
【0013】
本発明に係る撮像装置は、撮像光学系と、撮像光学系によって形成される光学像を電気信号に変換する上記の固体撮像装置と、固体撮像装置によって得られた電気信号に対して画像処理を行う賀状処理回路とを備える。
【0014】
本発明に係る分光素子は、入射面から入射した光の少なくとも一部を偏向して入射面と平行な出射面から出射する。当該分光素子は、第1の誘電率を有する第1の媒体と、第1の媒体中に互いに平行な複数の柱状体として配置され、第1の誘電率とは異なる第2の誘電率を有する第2の媒体とを備える。柱状体の各々は、分光素子の入射面と平行であり、柱状体の各々と直交する断面上において、平行四辺形(ただし、4つの角が等しい長方形を除く)の単位格子を有する格子の交点に位置する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の固体撮像装置によれば、入射した光束を波長帯域毎に分光しそれぞれの光をそれに対応した受光領域へと導いて光電変換するため従来のカラーフィルタによる方法に比べて光利用効率を向上させることが可能となる。また、この固体撮像装置を用いることによって、本発明に係る撮像装置は、低照度時においても安定して良好な画像を撮影することが出来る。
【0016】
また、本発明の分光素子は、入射光束を波長帯域毎に所定の場所に空間的に分離できる。そのため、液晶表示装置などに用いるとバックライトの光を効率的にそれぞれの表示画素に分離できるため、バックライト光の強度が低くても明るい表示画面を得ることが可能で、機器の省電力に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係る固体撮像装置の概略構成図
【図2】分光素子の構成と分光作用の様子を示す模式図
【図3】分光素子の一部を拡大した斜視図
【図4】分光素子の一部を模擬した構造体の概略断面図
【図5A】分光素子から出射される透過光、回折光を示す模式図
【図5B】透過光及び回折光のスペクトル分布を示す図
【図6】図1に示した固体撮像装置に入射した光の経路を示す模式図
【図7】実施の形態2に係る固体撮像装置の概略構成図
【図8】実施の形態3に係る固体撮像装置の構成図
【図9】実施の形態4に係る固体撮像装置の構成図
【図10】実施の形態5に係る固体撮像装置の構成図
【図11】実施の形態5に係る固体撮像装置の他の一例を示す構成図
【図12】実施の形態6に係るカメラ装置の概略構成図
【図13】従来の固体撮像装置の一部を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る固体撮像装置の概略構成図である。固体撮像装置1は主として、半導体基板上に形成される光電変換部10と、レンズ部20と、分光素子30とを備えている。
【0020】
光電変換部10は、図1のxy平面上に二次元に配列された複数の受光領域を有し、受光領域に入射する光を光電変換して、入射した光の強度に応じた電気信号を出力する。より詳細には、光電変換部10は、緑色光を検出する受光領域11と、赤色光を検出する受光領域12と、青色光を検出する受光領域13とを有している。本実施の形態では、図1に示すy軸方向において、受光領域11〜13がこの順で繰り返し配置されている。受光領域11〜13で光電変換によって生成される電気信号は、撮像画像を構成するカラー信号として出力される。
【0021】
レンズ部20は、複数の集光レンズ21からなり、受光部10の上層(受光面側)に設けられている。1つの集光レンズ21は、y軸方向に連続する3以上の受光領域の組に対応する。本実施形態においては、1つの集光レンズ21と一組の受光領域11〜13とが対応する。レンズ部20は、例えばガラスや透明樹脂で形成される。
【0022】
分光素子30は、光電変換部10とレンズ部20との間に位置している。分光素子30は、入射面301から入射した光を波長に応じて分散させ、分散した光を出射面302より出射する。より詳細には、分光素子30は、集光レンズ21を透過した緑色波長帯(第1の波長帯)の光が当該集光レンズ21に対応する3つの受光領域の内、受光領域11(第1の受光領域)へ主として集光するように、緑色波長帯の光を偏向する。また、分光素子30は、集光レンズ21を透過した青色波長帯(第3の波長帯)の光が当該集光レンズ21に対応する3つの受光領域の内、主として受光領域13(第3の受光領域)へ集光するように、青色波長帯の光を偏向する。本実施の形態において、分光素子30は、集光レンズ21を透過した赤色波長帯(第2の波長帯)の光を偏向せずに透過する。分光素子30を透過した赤色波長帯の光は、主として当該集光レンズ21に対応する3つの受光領域の内、受光領域12(第2の受光領域)へ集光される。
【0023】
図2は、分光素子の構成と分光作用の様子を示す模式図であり、図3は、分光素子の一部を拡大した斜視図である。
【0024】
分光素子30は、緑色波長帯に対する体積型グレーティングと青色波長帯に対する体積型グレーティングとを重畳してなる構成である。より具体的には、分光素子30は、誘電体よりなる第1の媒体31の中に、図3に示すような、第2の媒体よりなる柱状体を周期的に配置したフォトニック結晶によって実現される。第2の媒体31は、第1の媒体とは異なる誘電率を有する誘電体または空気である。第2の媒体32よりなる柱状体の各々は、互いに平行で、かつ、図2及び3のyz平面に対して直交するように配置されている。更に、図2及び3のyz平面と平行な平面上において、第2の媒体32よりなる柱状体の各々は、平行四辺形(ただし、4つの角が等しい長方形を除く)を単位格子とする格子の略交点上に位置している。図2及び3においては、柱状体を交点とする格子を破線で示している。一例として、第1の媒体31は石英(誘電率:2.1025、屈折率:1.45)であり、第2の媒体32は酸化チタン(誘電率:6.35、屈折率:2.51992)である。この分光素子30は、例えば、微細スパッタ工法などの半導体プロセスを用いて製作することができる。
【0025】
第2の媒体32は、受光領域の全体に渡って同じ周期で配置されている。このように第2の媒質32を均一な周期で配置することによって、分光素子30の屈折率変化は、光電変換部10の受光領域全体で略均一となる。
【0026】
分光素子30の入射面301から入射した白色光40は、緑色波長帯の光41と、赤色波長帯の光42と、青色波長帯の光43とに分光され、分光されたそれぞれの光は入射面301と平行な出射面302から出射される。分光素子30から出射された緑色波長帯の光41が出射面302となす角の符号を正としたとき、分光素子30から出射された青色波長帯の光43が出射面302となす角の符号は負である。
【0027】
ここで、分光素子30による分光の原理を説明する。結晶構造のように周期的な構造を持つ物質に光が入射すると、特定の波長の光を特定の方向に回折する、いわゆるブラッグ反射という現象が起きる。すなわち、入射光のうちブラッグの回折条件を満足する光成分は互いに強め合い、その回折方向に強い反射(回折)出力が得られる。この原理を用いて、誘電体を多層構造とし、特定の波長に対する反射を強めた分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector(DBR))が知られている。ここで、ある1つの波長域に対応するDBR構造と、他の1つの波長域に対応するDBR構造とを重ね合わせることにより、波長域毎に異なった方向に光を偏向する分光素子を構成することができる。
【0028】
図4は、分光素子の一部を模擬した構造体の概略断面図である。この模擬条件を説明する。模擬構造体のサイズは、yz断面上において、幅20μm、厚さ30μmである。第2の媒体32よりなる複数の柱状体は、模擬構造体の中心部分の幅10μm、厚さ20μmの部分に配置されている。第1の媒体31の誘電率は、2.1025であり、第2の媒体の誘電率は、6.35である。第2の媒体32よりなる柱状体の直径は、約0.07μmである。上述したように、yz断面上において柱状体は平行四辺形を単位格子とする格子の交点上に配置されているが、単位格子の一組の対辺間隔(図3に示すL1)は、290nmであり、他の一組の対辺間隔(図3に示すL2)は、524nmである。
【0029】
格子間隔は、DBR層と入射面に対する垂線とのなす角が34度となり、DBRが緑色波長帯の光に対しては一次の回折作用を発揮し、青色波長帯の光に対しては二次の回折作用を発揮するように設定されている。ここで、青色波長帯の光に対して二次回折を利用しているのは、次の理由による。光と微小な反射物との相互作用は、光の波長が短いほど強いため、緑色波長帯の光と青色波長帯の光の両方に対して一次回折を利用すると、双方で反射率を等しくするのは困難である。そこで、より短波長の青色波長帯の光に対して二次回折を用いることで、光と相互作用する反射物の数を半減できるため、青色波長帯の光の反射率を緑色波長帯の光の反射率と同程度まで低くすることができる。すなわち、長波長帯(赤色波長帯)の光を透過させ、それよりも波長の短い中波長帯(緑色波長帯)の光を一次回折光とし、更に波長の短い短波長帯(青色波長帯)の光を二次回折光とすれば良好な分光作用を得る素子を設計できる。
【0030】
この構造体に対して図面上方から白色光を垂直方向(入射角0度)に入射させたときに得られる結果を、図5A及び5Bを用いて説明する。
【0031】
図5Aは、分光素子から出射される透過光、回折光を示す模式図であり、図5Bは、透過光及び回折光のスペクトル分布を示す図である。図5Aに示されるように、赤色波長帯の光は主として分光素子を透過し、緑色波長帯の光は主として図5の左側へ回折され、青色波長帯の光は主として右側へ回折される。透過光が赤色波長帯(600〜700nm)の光を多く含み、左側への回折光は緑色波長帯(500〜550nm)の光を多く含み、右側への回折光は青色波長帯(430〜480nm)の光を多く含んでいることが、図5Bのスペクトル分布によって裏付けられる。したがって、分光素子30の構造によって、白色光を波長帯毎の光に分光できることが分かる。尚、2つの回折角の符号が逆となっているので、それぞれの波長帯域の光の受光素子を好適に配置できるという利点がある。
【0032】
図6は、図1に示した固体撮像装置に入射した光の経路を示す模式図である。入射光である白色光40は、集光レンズ21によって集光され、分光素子30へと導かれる。分光素子30では、入射した白色光40が3つの波長帯の光に分光される。白色光40に含まれる赤色波長帯の光42は、そのまま分光素子30を透過して赤色用の受光領域12に集光する。白色光40に含まれる緑色用の波長帯の光41は、分光素子30によって偏向されて、緑色用の受光領域11に集光する。白色光40に含まれる青色波長帯の光43は、分光素子30によって偏向されて、青色用の受光領域13に集光する。
【0033】
このように、本実施の形態に係る固体撮像装置1によれば、分光素子30によって白色光を分光して各色用の受光領域に導くため、カラーフィルタを用いる場合と比べて光量の損失を大幅に低減することができる。また、一つの画素あたりの受光領域を拡げることなく、より多くの光を受光領域に取り込むことができる。
【0034】
また、本実施の形態に係る固体撮像装置によれば、複数の集光レンズ21と分光素子30を用いることで、集光レンズ21単位で分光作用を得ることができる。
【0035】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る固体撮像装置の概略構成図である。以下、本実施の形態と実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0036】
上記の実施の形態1では、赤色用の受光領域12と、緑色用の受光領域11と、青色用の受光領域13とは、ほぼ同じ面積を有している。この場合、一般的な原色ベイヤ配列のカラーフィルタを備える固体撮像装置と比べて、緑色光の受光面積が少なくなる。
【0037】
そこで、本実施の形態では、受光領域12及び13に対して、受光領域11を大きくすることによって、緑色光の受光面積比率を向上させている。このように、受光領域の受光面積を色毎に変えることによって、各色の受光光量のバランスを適切に設定することができる。
【0038】
尚、本実施形態では、特定の波長帯の光を受光する受光領域(例えば、緑色光用の受光領域11)の受光面積を大きくするために、一部の受光領域の面積を大きくしている。この手法に代えて、1つの集光レンズ21に4以上の受光領域を対応させて、1つ1つの受光領域の面積は一定にしたまま、隣接する複数個の受光領域の組で特定の波長帯の光を受光するように構成しても良い。
【0039】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3に係る固体撮像装置の概略構成図である。以下、本実施の形態と実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0040】
本実施の形態においては、緑色用の受光領域11及び青色用の受光領域13の受光面が、分光素子30の入射面に対して傾斜している。具体的には、受光領域13の受光面の法線に対して、分光素子30を透過した光がなす角度θ1が、受光面を傾けない場合の角度θ1’と比べて小さくなるように、受光面が傾斜している。同様に、受光領域11の受光面の法線に対して、分光素子30を透過した光がなす角度θ2が、受光面を傾けない場合の角度θ2’と比べて小さくなるように、受光面が傾斜している。このように、回折光を受光する受光面を入射面301に対して傾斜させて、入射方向を受光面の法線に近づけることによって、入射面での反射に起因する光量損失を低減できる。したがって、回折光の入射方向を入射面の法線方向とできるだけ近づけることが好ましく、回折光の入射方向を法線方向と平行にすること(受光面に対する回折光の入射角度を0度にすること)が最も好ましい。
【0041】
また、受光領域11及び13の受光面を傾斜させることによって、入射面の面積を広くできるという利点もある。すなわち、一つの集光レンズ21の射影内に3つの受光領域を設ける場合、全ての受光領域と分光素子30の入射面とを平行にすると、受光面積は自ずと限られてしまうが、受光領域の受光面を分光素子30の入射面に対して傾ければ、実質的な受光面積を大きくできる。この結果、更に入射光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0042】
なお、本実施の形態では、受光領域11及び13の双方を傾斜させているが、いずれか一方だけを傾斜させても良い。この場合、傾斜させて配置した受光領域への入射効率を向上させることが可能である。
【0043】
(実施の形態4)
図9は、実施の形態4に係る固体撮像装置の概略構成図である。以下、本実施の形態と実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0044】
上記の実施の形態1では、受光領域の受光面は平面であったが、受光領域11〜13の全部または一部の受光面を曲面としても構わない。図9に示す例では、緑色光用の受光領域11の受光面のうち、集光レンズ21の外周側に対応する部分が曲面である。このように受光領域の受光面を曲面とすることによっても、受光面積を広くすることができる。
【0045】
更に、受光面の周辺部分の少なくとも一部を曲面とし、受光面の中心部を略平面とする場合、受光面の中心部を上記の実施の形態4で説明したように、受光面の中心部を集光レンズ21の光軸に対して傾斜させても良い。
【0046】
(実施の形態5)
図10は、実施の形態5に係る固体撮像装置の概略構成図である。以下、本実施の形態と実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0047】
本実施の形態に係る固体撮像装置3は、分光素子30と光電変換部10との間に、分光素子30からの光を各受光領域に導く3つの導光部材51〜53を更に備える。導光部材51は、分光素子30によって回折された緑色波長帯の光41を受光し、受光した光を緑色光用の受光領域11へ導く。導光部材52は、分光素子30を透過した赤色波長帯の光42を受光し、受光した光を赤色光用の受光領域12へ導く。導光部材53は、分光素子30によって回折された青色波長帯の光43を受光し、受光した光を青色光用の受光領域13へ導く。
【0048】
導光部材51〜53は、周囲の媒体よりも屈折率が高い誘電体媒体によって形成されている。例えば、導光部材51〜53は、酸化チタン(TiO2)よりなる。また、導光部材51〜53は、入射側の端面が受光領域側の端面よりも大きくなるように形成されている。このように導光部材51〜53の入射側端面を出射側端面より大きくすることによって、分光素子30から出射された光をより効率的に受光領域へと導くことができる。また、導光部材51〜53のうち、回折光を導光する導光部材51及び53は、透過光を導光する導光部材52よりも全長が長く、かつ、入射側端面が光の回折角に応じて傾斜するように形成されていえる。この結果、回折光をより一層効率的に集光できる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、導光部材51〜53の入射側端面は、凸の曲面であるが、平面または凹面であっても良い。更に、導光部材51〜53は、徐々に屈折率が高くなるような屈折率勾配を有していても良い。
【0050】
また、本実施の形態において、導光部材51〜53は、周囲の媒体よりも屈折率が高い誘電体媒体によって形成した例を説明したが、これに限られない。例えば、誘電体媒体あるいは空隙の微細な周期構造の乱れを利用して光を導光する、いわゆるフォトニック導波路を導光部材51〜53として用いても良い。
【0051】
更に、本実施の形態においては、受光領域11〜13に対して、導光部材51〜53をそれぞれ設けているが、図11に示すように、いずれかの受光領域に対してのみ導光部材を設けても良い。図11の例では、緑色光用の受光領域11に対して導光部材51を設けることによって、緑色光の受光効率を高めている。
【0052】
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態に係る固体撮像装置を説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施の形態においては、1つの集光レンズに対して3つの受光領域を配置する場合を例示したが、1つの集光レンズに対して4つあるいは2つの受光領域を配置してもよい。この場合、受光領域の数に応じて帯域毎の回折及び透過の設計を変えることで対応できる。また、上述の実施の形態においては、分光素子は、赤色波長帯の光を透過させ、緑色及び青色波長帯の光を回折しているが、これに限定されない。例えば、緑色波長帯の光を透過させ、青色及び赤色帯の光を回折させる分光素子や、青色帯の光を透過させ、緑色と赤色帯の光を回折させる分光素子を構成してもよい。さらには、入射光を可視光域と赤外域とに分光する分光素子を構成して、この分光素子を赤外画像撮影用の固体撮像装置に適用することも可能である。
【0053】
また、入射光の利用効率を更に向上させるために、受光領域の受光面に反射防止構造体を設けても良い。より具体的には、反射防止構造体として、受光面に入射する最大強度の光の波長以下の周期を持つ微細な起伏構造を形成することができる。このような反射防止構造体を設けることによって、受光面での反射を大幅に低減することができる。
【0054】
(実施の形態6)
図12は、実施の形態6に係るカメラ装置の概略構成図である。カメラ装置4は、撮像光学系71、固体撮像装置72、画像処理回路73、情報記録媒体74、制御回路75を備えている。
【0055】
撮像光学系71は、被写体の光学像を固体撮像装置72上に結像する。撮像光学系71は、制御回路75による制御及び撮影者による手動操作の一方または両方によって制御され、ズーム比や焦点位置などが変更される。
【0056】
固体撮像装置72は、上記の各実施の形態で説明した構成を有している。固体撮像装置72は、受光領域で受光した光を光電変換して、受光した光の強度に応じた電気信号を生成し、制御回路75による制御にしたがって、生成した電気信号を画像処理回路73へと転送する。画像処理回路73は、得られた電気信号に各種の画像処理を施すことによって、静止画あるいは動画の画像データを生成し、生成した画像データを制御回路75からの指示に基づき情報記録媒体74へと記録する。
【0057】
本実施の形態に係るカメラ装置4は、本発明に係る固体撮像装置を用いているので、従来の吸収型カラーフィルタを用いた固体撮像装置を用いたものと比べて高い光利用効率を得ることができる。そのため、特に暗所での撮影においても十分な感度が得られる。つまり、暗所撮影時において一回の撮影に要する露光時間を短く制御しても出力画像を得ることが可能となり、手ぶれや被写体ぶれ等の画質悪化を招く要因を低減することができる。結果として、高画質な画像の撮影が可能となる。
【0058】
なお、情報記録媒体74は必ずしもカメラと一体である必要はなく、カメラ本体から無線あるいは有線の通信手段を用いて、カメラ本体から離れた箇所にある外部の記録媒体に得られた画像データを転送し、保存しても構わない。
【0059】
尚、上記の各実施の形態では、本発明に係る分光素子を固体撮像装置に適用した例を説明したが、本発明に係る分光素子は、固体撮像装置以外にも適用可能である。例えば、本発明に係る分光素子を液晶表示装置のカラーフィルタに適用してもよい。この場合、バックライトの光利用効率を高めた液晶表示装置を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、ディジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、監視用カメラ、携帯電話等の携帯機器に搭載する小型カメラ等の画像の撮影を目的とするカメラの他、ロボット用の情報入力装置など、画像データの取得を目的とする撮像装置にも適用できる。また、カラーフィルタを用いた表示装置にも好適である。
【符号の説明】
【0061】
1、2、3 固体撮像装置
4 撮像装置
10 光電変換部
11、12、13 受光領域
20 レンズ部
21 集光レンズ
30 分光素子
301 入射面
302 出射面
31 第1の媒体
32 第2の媒体
51、52、53 導光手段
71 撮像光学系
72 固体撮像装置
73 画像処理回路
74 情報記録媒体
75 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像装置であって、
二次元配列された複数の受光領域を有し、前記受光領域への入射光を光電変換し、入射光の強度に応じた電気信号を出力する光電変換部と、
前記光電変換部の上層に設けられる複数の集光レンズからなるレンズ部であって、前記集光レンズの各々が、連続する第1〜第3の受光領域の各組に対応して設けられるレンズ部と、
前記光電変換部と前記レンズ部との間に設けられる分光素子であって、前記分光素子が、周期的に屈折率が変化する媒体よりなり、前記集光レンズを透過した第1の波長帯及び第3の波長帯の光を回折させて、前記第1の受光領域及び前記第3の受光領域に入射させ、前記集光レンズを透過した第2の波長帯の光を偏向せずに透過して、前記第2の受光領域に入射させる分光素子とを備える、固体撮像装置。
【請求項2】
前記分光素子の屈折率は、前記受光領域の全体に渡って同じ周期で変化する、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記分光素子から出射される第1の波長帯の光が前記分光素子の出射面となす角度の符号を正としたときに、前記分光素子から出射される第3の波長帯の光が前記分光素子の出射面となす角度の符号が負である、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記分光素子は、前記第1及び第3の波長帯の光の波長よりも短い周期で屈折率分布が変化するように構成される、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記分光素子は、第1の誘電率を有する第1の媒体中に、前記第1の誘電率とは異なる第2の誘電率を有する第2の媒体よりなる、複数の互いに平行な柱状体を周期的に配置したフォトニック結晶であり、
前記柱状体の各々は、前記分光素子の入射面と平行で、かつ、前記第1〜第3の受光領域が連続する方向と直交するように配置され、前記柱状体の各々と直交する断面上において、平行四辺形(ただし、4つの角が等しい長方形を除く)の単位格子を有する格子の交点に位置する、請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
1つの前記集光レンズに対応する前記受光領域の各々は、それぞれ異なる波長帯域の光を受光する、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第1の受光領域の受光面は、受光面の法線に対して前記分光素子を透過した光がなす角度が、受光面を傾斜させない場合と比べて小さくなるように、前記集光レンズの光軸に対して傾斜している、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記第1の受光領域の受光面に対して前記分光素子を透過した光がなす角度がほぼ0度である、請求項6に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
少なくとも一部の前記受光領域の受光面には、当該受光面に入射する最大強度の光の波長以下の周期を持つ微細な起伏構造が設けられる、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
少なくとも一部の前記受光領域の受光面が曲面である、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記第1の受光領域の受光面の中心部は、受光面の法線に対して前記分光素子を透過した光がなす角度が、受光面を傾斜させない場合と比べて小さくなるように、前記集光レンズの光軸に対して傾斜しており、
前記第1の受光領域の受光面の周辺部が曲面である、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記分光素子と前記光電変換部との間に設けられ、前記分光素子から出射された光を前記光電変換部に導く導光部材を更に備える、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記導光部材は、前記第1の受光領域に対応して設けられ、前記分光素子によって回折された前記第1の波長帯の光を前記第1の受光領域に導く、請求項12に記載の固体撮像装置。
【請求項14】
前記導光部材は、前記第1〜第3の受光領域の各々に対応して設けられ、前記分光素子によって回折された前記第1〜第3の波長帯の光をそれぞれ前記第1〜第3の受光領域に導く、請求項12に記載の固体撮像装置。
【請求項15】
前記導光部材は、周囲の媒体よりも屈折率が高い媒体よりなる、請求項12に記載の固体撮像装置。
【請求項16】
前記導光部材は、所定の誘電率を有する媒体中に前記所定の誘電率とは異なる誘電率の媒体を、入射する光の波長以下の周期で周期的に配置したフォトニック結晶である、請求項12に記載の固体撮像装置。
【請求項17】
撮像装置であって、
撮像光学系と、
前記撮像光学系によって形成される光学像を電気信号に変換する、請求項1に記載の固体撮像装置と、
前記固体撮像装置によって得られた電気信号に対して画像処理を行う画像処理回路とを備える、撮像装置。
【請求項18】
入射面から入射した光の少なくとも一部を偏向して前記入射面と平行な出射面から出射する分光素子であって、
第1の誘電率を有する第1の媒体と、
前記第1の媒体中に互いに平行な複数の柱状体として配置され、前記第1の誘電率とは異なる第2の誘電率を有する第2の媒体とを備え、
前記柱状体の各々は、前記分光素子の入射面と平行であり、前記柱状体の各々と直交する断面上において、平行四辺形(ただし、4つの角が等しい長方形を除く)の単位格子を有する格子の交点に位置する、分光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−159967(P2011−159967A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1490(P2011−1490)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】