説明

固体撮像装置

【課題】TDI動作によって撮像を行う際に、撮像に要する時間を短くすることができる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】固体撮像装置1Aは、M×N個(M,Nは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成る撮像面12、撮像面12に対して列方向の一端側に各列毎に配置されたN個の信号読出回路20、及び、撮像面に対して列方向の他端側に各列毎に配置されたN個の信号読出回路30を有するCCD型の固体撮像素子10と、信号読出回路20から各列毎に出力される電気信号をディジタル変換したのちシリアル信号として順次出力する半導体素子50と、信号読出回路30から各列毎に出力される電気信号をディジタル変換したのちシリアル信号として順次出力する半導体素子60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インターライン型のCCD構成部を備える固体撮像装置が開示されている。この固体撮像装置は、垂直転送用CCDから出力される電荷を電圧信号に変換する複数の電荷検出回路と、これらの電荷検出回路から出力される電圧信号を順次読み出すための水平走査回路とを備えている。水平走査回路は、高速での読み出し動作を行うためにCMOS回路によって構成されている。
【0003】
特許文献2には、インターライン型のCCD構成部を備える固体撮像装置が開示されている。この固体撮像装置は、複数の光電変換部が行及び列を構成するように配列された画素アレイ領域と、画素アレイ領域の各列毎に配置された垂直CCDと、画素アレイ領域の各行毎に配置された転送電極と、光電変換部の電荷が垂直CCDに転送された後に垂直CCDにおいて電荷が垂直転送されるように転送電極を駆動する垂直駆動回路とを備えている。そして、各垂直CCDの最も下流側(電荷が垂直転送される先)には、垂直CCDによって垂直転送されてきた信号電荷を電圧信号に変換する回路と、該電圧信号を増幅して保持する読出回路とが設けられている。読出回路は、CMOS回路によって構成され、画素アレイ領域の列数に相当する個数の増幅回路と、それらから出力される増幅信号を保持するラインメモリを有する。
【0004】
特許文献3には、画像の読み取りに用いられるイメージセンサヘッドが開示されている。このイメージセンサヘッドは、CCDセンサ及び制御回路を備えている。CCDセンサを有するCCDセンサチップと、制御回路を有するC−MOS制御用チップとは互いに独立的に分離されて基板上に実装されている。CCDセンサチップとC−MOS制御用チップとの間は、複数の制御信号線によって直接的に接続されている。なお、CCDセンサチップは複数個設けられ、C−MOS制御用チップはCCDセンサチップに対応して複数個設けられている。
【0005】
特許文献4には、CCDセンサチップを備えるイメージセンサヘッドが開示されている。CCDセンサチップは、入射光を電荷に変換することでその光の強度に応じた信号電荷を発生させる複数のフォトダイオードと、それらのフォトダイオードから発生した信号電荷を蓄積して記憶する複数のメモリと、これら複数のメモリの信号電荷を読み出して転送するレジスタとを備えている。フォトダイオードより発生した信号電荷は、メモリからそれに隣接するメモリに順次に蓄積しながら転送される。このイメージセンサヘッドは、CCDセンサチップとは別にC−MOS制御用チップを備えており、これらは互いに独立して基板上に実装されている。
【0006】
特許文献5には、裏面入射型のCCDを備える半導体エネルギー検出器が開示されている。CCDは、短波長光等のエネルギ線を検出する。
【0007】
特許文献6及び7には、裏面入射型のCCDを備える電子管が開示されている。CCDは、入射光を電子に変換する光電面より放出された電子を検出する。
【0008】
特許文献8には、撮像装置が開示されている。この撮像装置では、真空容器内に、入射光に応じて光入射面の反対面から光電子を放出する光電面と、光電面の光電子放出面に対向して配置され、光電子の空間分布を複数の画素により画像として検出する裏面入射型のCCDとが内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−135656号公報
【特許文献2】特開2007−19664号公報
【特許文献3】特開2003−152952号公報
【特許文献4】国際公開第2008/142968号パンフレット
【特許文献5】特開平6−196680号公報
【特許文献6】特許第3441101号公報
【特許文献7】特許第4098852号公報
【特許文献8】特許第4173575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
固体撮像装置の用途によっては、或る一定の速度で移動する被写体を撮像する場合がある。例えば、半導体ウエハ上に作り込まれた半導体素子構造の検査を行う場合、12インチウエハ上の微小な領域(例えば一辺が数十μm)を拡大して撮像すると、撮像回数が極めて多くなり、検査に長時間を要してしまう。そこで、被写体に対して固体撮像装置を相対的に移動させ、且つCCDの電荷転送速度をその相対速度に一致させながら撮像を行う、いわゆるTDI(Time Delay Integration)動作が行われる。このTDI動作によれば、大面積の被写体を高い空間分解能で且つ短時間で撮像することが可能となる。
【0011】
しかしながら、従来の固体撮像装置では、CCDにおける電荷の転送の向きが固定されているため、TDI動作において被写体と固体撮像装置との相対移動の向きが一つに限られてしまう。したがって、TDI動作によって或る領域を一端から他端にわたって撮像したのち、隣接する領域を撮像するためには、その領域の一端まで固体撮像装置を移動する必要が生じる。この移動は、撮像に要する時間を長くしてしまう。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、TDI動作によって撮像を行う際に、撮像に要する時間を短くすることができる固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明による固体撮像装置は、M×N個(M,Nは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成る撮像面、撮像面に対して列方向の一端側に各列毎に配置されており各列から取り出される電荷の大きさに応じた電気信号をそれぞれ出力するN個の第1の信号読出回路、及び、撮像面に対して列方向の他端側に各列毎に配置されており各列から取り出される電荷の大きさに応じた電気信号をそれぞれ出力するN個の第2の信号読出回路を有するCCD型の固体撮像素子と、第1の信号読出回路から各列毎に出力される電気信号をディジタル信号に変換するとともに、各列のディジタル信号をシリアル信号として順次出力する第1の半導体素子と、第2の信号読出回路から各列毎に出力される電気信号をディジタル信号に変換するとともに、各列のディジタル信号をシリアル信号として順次出力する第2の半導体素子とを備えることを特徴とする。
【0014】
この固体撮像装置では、CCD型の固体撮像素子が、列方向の一端及び他端それぞれに配置された第1及び第2の信号読出回路を有しており、更に、これらの信号読出回路それぞれには、シリアル信号出力のための第1及び第2の半導体素子それぞれが接続されている。この固体撮像装置によれば、固体撮像素子の各列の出力ポート(終端画素)と第1及び第2の信号読出回路とを共通の基板上において互いに近接して配置することができ、且つ、信号読出回路の入力ポート(入力端)が各列毎に配置されるので、高速且つ低ノイズな読み出しを実現できる。また、他端側から一端側へ向かう方向にTDI動作を行う場合には、その方向に電荷を転送し、その電荷を第1の信号読出回路および第1の半導体素子によってシリアル信号出力に変換するとよい。また、一端側から他端側へ向かう方向にTDI動作を行う場合には、その方向に電荷を転送し、その電荷を第2の信号読出回路および第2の半導体素子によってシリアル信号出力に変換するとよい。このように、上記固体撮像装置によれば、CCDの電荷転送方向を反転させることができる。したがって、TDI動作によって撮像を行う際に、固体撮像装置の移動を少なくすることができるので、撮像に要する時間を短くすることができる。
【0015】
また、固体撮像装置は、撮像面における列方向の電荷の転送を制御する転送制御部を更に備え、転送制御部が、他端側から一端側へ向かう方向に電荷を転送する第1の動作モードと、一端側から他端側へ向かう方向に電荷を転送する第2の動作モードとを有することを特徴としてもよい。これにより、上述した固体撮像装置による効果を好適に得ることができる。なお、この場合、TDI動作を好適に行うために、転送制御部は、移動する被写体の移動速度及び移動方向に電荷の転送速度及び転送方向を一致させることが好ましい。
【0016】
また、固体撮像装置は、第1及び第2の半導体素子それぞれが、N個の第1及び第2の信号読出回路それぞれから各列毎に出力される電気信号のノイズを低減する相関二重サンプリング回路と、相関二重サンプリング回路から出力された信号を増幅するバッファと、バッファから出力された信号をディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換回路と、アナログ−ディジタル変換回路から出力された各列のディジタル信号をシリアル信号として順次出力するマルチプレクサとを有することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による固体撮像装置によれば、TDI動作によって撮像を行う際に、撮像に要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の構成を示す平面図である。(b)図1(a)の部分拡大図である。
【図2】図1に示された固体撮像装置のII−II線に沿った断面を示す図である。
【図3】転送制御部と固体撮像素子とを概略的に表すブロック図である。
【図4】固体撮像素子における撮像面の一端付近の構成を示す平面図である。
【図5】固体撮像素子における撮像面の他端付近の構成を示す平面図である。
【図6】半導体素子の構成を示す底面図である。
【図7】半導体素子の構成を示す底面図である。
【図8】固体撮像装置によって撮像される被写体を示す平面図である。
【図9】図8に示された動作を行う固体撮像装置を備える検査装置の構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明による固体撮像装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る固体撮像装置1Aの構成を示す平面図である。また、図1(b)は、図1(a)の部分拡大図である。図2は、図1に示された固体撮像装置1AのII−II線に沿った断面を示す図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態の固体撮像装置1Aは、固体撮像素子10と、二つの半導体素子50及び60とを備えている。
【0021】
固体撮像素子10は、いわゆるCCD(Charge Coupled Device)型の電荷結合素子を含むデバイスであって、主面10a及び裏面10bを有する基板状を呈している。固体撮像素子10は、撮像面12と、第1及び第2の信号読出回路とを主面10aに有する。撮像面12は、図1(b)に示されるようにM×N個(M,Nは2以上の整数)の画素13がM行N列に2次元配列されて成る。Mは例えば512であり、Nは例えば2048である。撮像面12には、固体撮像素子10の裏面10b側から検出対象(紫外線などの光、X線などの放射線、または電子線)が入射する。撮像面12は、これらの検出対象のうち何れかを撮像する。なお、主面10a側において撮像面12に検出対象が十分に入射するように、裏面10bは固体撮像素子10の縁部に対して薄化されて窪んでいる。各画素13では、撮像面12に入射したこれらの検出対象の強さに応じた電荷を発生するとともに、その電荷を蓄積する。各画素13上には、電荷を列方向に転送するためのM本の転送電極(不図示)が各行毎に配設されている。M本の転送電極には、撮像面12における列方向の電荷の転送を制御するための電圧信号(ドライブ電圧)が与えられる。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態の固体撮像装置1Aは、二つのドライブパッド用変換基板71,72を更に備えている。ドライブパッド用変換基板71,72は、行方向における撮像面12の両端縁に沿ってそれぞれ配設されており、固体撮像素子10の主面10aに固定されている。ドライブパッド用変換基板71(72)は、撮像面12の端縁に沿って配列された少なくとも3個のドライブ電圧用パッド71a(72a)を有しており、これらのドライブ電圧用パッド71a(72a)には、電荷の転送を制御するための電圧信号(ドライブ電圧)が提供される。後述するように、信号電荷は図3のA1方向及びA2方向(後述する第1及び第2の動作モード)のいずれかに転送されるため、固体撮像素子10のCCDは3相で構成され、これらのドライブ電圧用パッド71a(72a)に互いに異なる位相の電圧が加えられる。各相の電極は固体撮像素子10内で接続されているため、ドライブ電圧用パッド71a(72a)は3個あれば良い。ただし、高速で転送する場合には1つの相を複数(k個)のアンプ(ドライブ回路)で駆動する場合がある。その場合、ドライブ電圧用パッド71a(72a)の数は(3×k)個となる。
【0023】
固体撮像装置1Aは、電荷の転送を制御するための電圧信号を生成する転送制御部を更に備えてもよい。図3は、転送制御部40と固体撮像素子10とを概略的に表すブロック図である。転送制御部40は、列方向の電荷の転送を制御するための3個の電圧信号を生成し、これらの電圧信号を、ドライブパッド用変換基板71,72を介して転送電極に提供する。
【0024】
撮像面12は、列方向における一端12a及び他端12bを有している。転送制御部40は、列方向における撮像面12の他端12b側から一端12a側へ向かう方向(図中の矢印A1)に電荷を転送する動作モード(第1の動作モード)と、一端12a側から他端12b側へ向かう方向(図中の矢印A2)に電荷を転送する動作モード(第2の動作モード)とを有する。また、固体撮像素子10は、撮像面12の一端12aに沿って配列されたN個の信号読出回路(第1の信号読出回路)と、撮像面12の他端12bに沿って配列されたN個の信号読出回路(第2の信号読出回路)とを有する。第1の動作モードでは、各列から取り出される電荷の大きさに応じた電気信号が第1の信号読出回路から出力され、第2の動作モードでは、各列から取り出される電荷の大きさに応じた電気信号が第2の信号読出回路から出力される。
【0025】
本実施形態の転送制御部40は、被写体の移動速度及び移動方向と電荷の転送速度及び転送方向とをそれぞれ一致させることにより、TDI動作を行うことができる。すなわち、撮像面12の列方向に移動する被写体に対し、その移動速度と同じ転送速度でもって電荷を転送し、且つ、矢印A1の方向に被写体が移動する場合には第1の動作モードで、矢印A2の方向に被写体が移動する場合には第2の動作モードで電荷を転送することによって、被写体の或る位置における検出対象(紫外線などの光、X線などの放射線、または電子線)の強度に応じた電荷を、転送動作と並行して蓄積し続けることができる。
【0026】
このようなTDI動作について、具体的に或る一つの画素列を例示して説明する。当該画素列に含まれる第m行目の画素に対し、被写体の或る部分から検出対象が入射し、電荷が生成される。この電荷は、次段の第(m+1)行目の画素に転送され、この第(m+1)行目の画素に蓄積される。これと同時に、被写体の当該部分が撮像面12に対して転送速度と同じ速度で相対的に移動する。したがって、第(m+1)行目の画素には、被写体の同じ部分からの検出対象が入射することとなるので、第(m+1)行目の画素において電荷が更に生成される。その後、第(m+1)行目の画素に蓄積された電荷は次段の第(m+2)行目の画素に転送される。以降、同様の動作が各行において繰り返され、被写体の当該部分に対応する検出対象の強度に応じた電荷が複数の行にわたって蓄積され続ける。これにより、移動する被写体の鮮明な画像を作成することができる。
【0027】
再び図1及び図2を参照する。半導体素子50は、本実施形態における第1の半導体素子である。半導体素子50は、撮像面12の一端12aに沿って、該一端12aを覆うように固体撮像素子10の主面10a上に実装されている。半導体素子50は、例えばC−MOS型の半導体チップを有しており、その半導体チップに作り込まれた回路によって、上述した第1の信号読出回路から各列毎に出力される電気信号をディジタル信号に変換し、各列のディジタル信号をシリアル信号として固体撮像装置1Aの外部へ順次出力する。
【0028】
半導体素子60は、本実施形態における第2の半導体素子である。半導体素子60は、撮像面12の他端12bに沿って、該他端12bを覆うように固体撮像素子10の主面10a上に実装されている。半導体素子60は、例えばC−MOS型の半導体チップを有しており、その半導体チップに作り込まれた回路によって、上述した第2の信号読出回路から各列毎に出力される電気信号をディジタル信号に変換し、各列のディジタル信号をシリアル信号として固体撮像装置1Aの外部へ順次出力する。
【0029】
一般的に、CCDとC−MOSとはプロセスが互いに異なるので、CCD型である固体撮像素子10上にC−MOS型のディジタル変換回路やシリアル変換回路を作製することはできない。また、これらの回路をディスクリートな回路素子及びIC群によって構成することは可能だが、列数Nが100を超えると実装面積が大きくなるため、固体撮像素子10とこれらの回路とを結ぶ配線が数10mmと長くなるので、ノイズの重畳が大きくなると共に読み出し速度(帯域)が制限される。
【0030】
図2に示されるように、半導体素子50及び60は、固体撮像素子10に対して導電性材料(例えばバンプ電極59及び69)を介して接合されている。バンプ電極59及び69それぞれの周囲には、アンダーフィル80が設けられており、これらのアンダーフィル80によって固体撮像素子10と半導体素子50及び60とがより強固に接合されている。
【0031】
図4は、固体撮像素子10における撮像面12の一端12a付近の構成を示す平面図である。前述したように、固体撮像素子10は、列方向の電荷の転送を制御するための電圧信号を転送制御部40から受けるドライブパッド用変換基板71,72を有する。各行毎に設けられた転送電極には、これらの電圧信号が印加される。なお、図中の矢印A1は、第1の動作モードにおける電荷転送方向を示している。
【0032】
また、前述したように、撮像面12の一端12aには、N個の第1の信号読出回路20が各列毎に配置されている。これらの第1の信号読出回路20は、トランジスタ(本実施形態ではFET)21と、信号出力用ボンディングパッド22とを有する。トランジスタ21の制御端子(ゲート)は、撮像面12における対応する画素列の一端12a側の終端と電気的に接続されている。この制御端子の電位は、当該画素列から取り出される電荷の量が多くなるほど大きくなる。トランジスタ21の一方の電流端子(ドレイン)は、N列にわたって共通に設けられた配線23を介してボンディングパッド24に電気的に接続されている。このボンディングパッド24には、所定の大きさの電圧が常に印加される。トランジスタ21の他方の電流端子(ソース)は、信号出力用ボンディングパッド22に電気的に接続されている。第1の動作モードの際に、或る画素列において電荷が一端12aまで転送されると、その電荷の量に応じた電圧が当該列のトランジスタ21の制御端子に印加される。これにより、該電荷の量に応じた大きさの電流が、当該トランジスタ21の他方の電流端子から出力されて信号出力用ボンディングパッド22を介して取り出される。
【0033】
また、固体撮像素子10は、トランジスタ(本実施形態ではFET)25を更に有する。N個のトランジスタ21の制御端子は、N列にわたって共通に設けられた配線26を介して、トランジスタ25の一方の電流端子(ドレイン)に電気的に接続されている。また、トランジスタ25の制御端子(ゲート)及び他方の電流端子(ソース)は、ボンディングパッド27及び28にそれぞれ電気的に接続されている。転送された電荷の量に応じた電流を各トランジスタ21が出力し終わると、トランジスタ25の制御端子には、ボンディングパッド27を介してリセット電圧が印加される。これにより、各列に蓄積した電荷がトランジスタ25の他方の電流端子からボンディングパッド28を介して放出され、各トランジスタ21の制御端子電圧がリセットされる。
【0034】
図5は、固体撮像素子10における撮像面12の他端12b付近の構成を示す平面図である。図中の矢印A2は、第2の動作モードにおける電荷転送方向を示している。前述したように、撮像面12の他端12bには、N個の第2の信号読出回路30が配置されている。第2の信号読出回路30の回路構成は、以下に述べるように、前述した第1の信号読出回路20の構成と同様である。
【0035】
N個の第2の信号読出回路30それぞれは、トランジスタ(本実施形態ではFET)31と、信号出力用ボンディングパッド32とを有する。トランジスタ31の制御端子(ゲート)は、撮像面12における対応する画素列の他端12b側の終端と電気的に接続されている。この制御端子の電位は、当該画素列から取り出される電荷の量が多くなるほど大きくなる。トランジスタ31の一方の電流端子(ドレイン)は、N列にわたって共通に設けられた配線33を介してボンディングパッド34に電気的に接続されている。このボンディングパッド34には、所定の大きさの電圧が常に印加される。トランジスタ31の他方の電流端子(ソース)は、信号出力用ボンディングパッド32に電気的に接続されている。第2の動作モードの際に、或る画素列において電荷が一端12aまで転送されると、その電荷の量に応じた電圧が当該列のトランジスタ31の制御端子に印加される。これにより、該電荷の量に応じた大きさの電流が、当該トランジスタ31の他方の電流端子から出力されて信号出力用ボンディングパッド32を介して取り出される。
【0036】
また、第2の信号読出回路30は、トランジスタ(本実施形態ではFET)35を更に有する。N個のトランジスタ31の制御端子は、N列にわたって共通に設けられた配線36を介して、トランジスタ35の一方の電流端子(ドレイン)に電気的に接続されている。また、トランジスタ35の制御端子(ゲート)及び他方の電流端子(ソース)は、ボンディングパッド37及び38にそれぞれ電気的に接続されている。転送された電荷の量に応じた電流を各トランジスタ31が出力し終わると、トランジスタ35の制御端子には、ボンディングパッド37を介してリセット電圧が印加される。これにより、各列に蓄積した電荷がトランジスタ35の他方の電流端子からボンディングパッド38を介して放出され、各トランジスタ31の制御端子電圧がリセットされる。
【0037】
図6は、半導体素子50の構成を示す底面図である。半導体素子50は、N列それぞれに設けられた第1の信号読出回路20から出力される電気信号をディジタル信号に変換し、各列のディジタル信号をシリアル信号として固体撮像装置1Aの外部へ順次出力する。本実施形態の半導体素子50は、各列に対応して設けられたN個のボンディングパッド51と、N個の相関二重サンプリング(CDS;Correlated Double Sampling)回路52と、N個のバッファ53と、N個のアナログ−ディジタル変換回路54と、マルチプレクサ55とを有する。
【0038】
N個のボンディングパッド51それぞれは、固体撮像素子10のN個の信号出力用ボンディングパッド22それぞれと、バンプ電極59(図2を参照)を介して電気的に接続される。また、N個のCDS回路52それぞれは、N個の第1の信号読出回路20それぞれから出力される電気信号をボンディングパッド51を介して入力し、その電気信号のノイズを低減する。CDS回路52によって取り除かれるノイズは、例えば各列に配置されるFDA(Floating Diffusion Amplifier)のリセットノイズや、ダーク時のオフセットFPN(Fixed Pattern Noise)である。N個のバッファ53それぞれは、N個のCDS回路52それぞれから出力される電気信号を入力し、その電気信号を増幅する。N個のアナログ−ディジタル変換回路54それぞれは、N個のバッファ53それぞれから出力される電気信号を入力し、その電気信号をディジタル信号に変換する。マルチプレクサ55は、アナログ−ディジタル変換回路54から出力された各列のディジタル信号を、シリアル信号として固体撮像装置1Aの外部へ順次出力する。なお、FDAのゲインのばらつきはCDS回路52によって取り除くことができないので、ディジタル信号の段階でシェーディング補正を行う回路が更に付加されてもよい。
【0039】
図7は、半導体素子60の構成を示す底面図である。半導体素子60は、N列それぞれに設けられた第2の信号読出回路30から出力される電気信号をディジタル信号に変換し、各列のディジタル信号をシリアル信号として固体撮像装置1Aの外部へ順次出力する。本実施形態の半導体素子60は、前述した半導体素子50と同様の構成を有する。すなわち、半導体素子60は、各列に対応して設けられたN個のボンディングパッド61と、N個のCDS回路62と、N個のバッファ63と、N個のアナログ−ディジタル変換回路64と、マルチプレクサ65とを有する。
【0040】
N個のボンディングパッド61それぞれは、固体撮像素子10のN個の信号出力用ボンディングパッド32それぞれと、バンプ電極69(図2を参照)を介して電気的に接続される。また、N個のCDS回路62それぞれは、N個の第2の信号読出回路30それぞれから出力される電気信号をボンディングパッド61を介して入力し、その電気信号のノイズを低減する。N個のバッファ63それぞれは、N個のCDS回路62それぞれから出力される電気信号を入力し、その電気信号を増幅する。N個のアナログ−ディジタル変換回路64それぞれは、N個のバッファ63それぞれから出力される電気信号を入力し、その電気信号をディジタル信号に変換する。マルチプレクサ65は、アナログ−ディジタル変換回路64から出力された各列のディジタル信号を、シリアル信号として固体撮像装置1Aの外部へ順次出力する。
【0041】
ここで、図6及び図7には、固体撮像素子10の端縁10c及び10dがそれぞれ示されている。図6に示される端縁10cは、撮像面12の一端12a側の固体撮像素子10の端縁であり、図7に示される端縁10dは、撮像面12の他端12b側の固体撮像素子10の端縁である。これらの図に示されるように、撮像面12の法線方向から見て、端縁10cは半導体素子50のバッファ53とアナログ−ディジタル変換回路54との間に位置しており、端縁10dは半導体素子60のバッファ63とアナログ−ディジタル変換回路64との間に位置している。すなわち、本実施形態では、CDS回路52,62及びバッファ53,63が、撮像面12の法線方向から見て固体撮像素子10に覆われている。これにより、固体撮像素子10に入射する紫外線などの光、X線などの放射線、または電子線といった検出対象からCDS回路52,62及びバッファ53,63を好適に保護することができる。
【0042】
なお、固体撮像素子10に覆われる半導体素子50,60の回路要素は、必要に応じて変更されることができる。CDS回路52,62、バッファ53,63、アナログ−ディジタル変換回路54,64、及びマルチプレクサ55,65のうち少なくとも一つが固体撮像素子10に覆われていることによって、当該回路要素を検出対象から好適に保護することができる。
【0043】
以上の構成を備える固体撮像装置1Aの動作の一例について説明する。図8は、固体撮像装置1Aによって撮像される被写体100を示す平面図である。なお、図8には、説明の便宜のためXY直交座標系が併せて示されている。
【0044】
被写体100は、例えば複数の回路要素が形成された半導体ウエハである。前述したように、固体撮像装置1Aの転送制御部40は、列方向における撮像面12の他端12b側から一端12a側へ向かう方向(図3に示された矢印A1)に電荷を転送する動作モード(第1の動作モード)と、一端12a側から他端12b側へ向かう方向(図3に示された矢印A2)に電荷を転送する動作モード(第2の動作モード)とを有する。したがって、以下に示す動作が可能になる。
【0045】
(1)移動方向を反転しながら対象領域を撮り進む動作
図8の対象領域C1に対し、矢印B11、B13及びB15に示されるように、撮像面12の被写体100に対する相対的な移動方向を反転させながら撮像を行う動作である。具体的には、まず一方向(Y軸負方向)に撮像面12を移動させながら、TDI動作によって領域C11を撮像する(矢印B11)。このとき、転送制御部40は、撮像面12の電荷転送方向を例えば第1のモードとする。撮像データは、半導体素子50から固体撮像装置1Aの外部へ出力される。次に、上記方向と直交する方向(X軸正方向)に固体撮像装置1Aを移動したのち(矢印B12)、上記方向とは逆の方向(Y軸正方向)に撮像面12を移動させながら、TDI動作によって領域C12を撮像する(矢印B13)。このとき、転送制御部40は、撮像面12の電荷転送方向を例えば第2のモードとする。撮像データは、半導体素子60から固体撮像装置1Aの外部へ出力される。その後、上記方向と直交する方向(X軸正方向)に固体撮像装置1Aを移動したのち(矢印B14)、上記一方向(Y軸負方向)に撮像面12を再び移動させながら、TDI動作によって領域C13を撮像する(矢印B15)。
【0046】
(2)移動方向を固定して対象領域を撮り進む動作
図8の対象領域C2のように、対象領域がX軸方向に長くY軸方向に短いような場合には、矢印B21、B23及びB25に示されるように、撮像面12の被写体100に対する相対的な移動方向を固定しながら撮像を行うことも考えられる。具体的には、まず所定方向(Y軸負方向)に撮像面12を移動させながら、TDI動作によって領域C21を撮像する(矢印B21)。このとき、転送制御部40は、撮像面12の電荷転送方向を例えば第1のモードとする。撮像データは、半導体素子50から固体撮像装置1Aの外部へ出力される。次に、隣接する領域C22の一端に固体撮像装置1Aを移動し(矢印B22)、上記所定方向(Y軸負方向)に撮像面12を再び移動させながら、TDI動作によって領域C22を撮像する(矢印B23)。その後、隣接する領域C23の一端に固体撮像装置1Aを移動し(矢印B24)、上記所定方向(Y軸負方向)に撮像面12を再び移動させながら、TDI動作によって領域C23を撮像する(矢印B25)。
【0047】
(3)離散した複数の対象領域を撮る動作
図8の対象領域C31〜C34のように、被写体100上の離散した複数の対象領域(例えば設計上クリティカルな領域)を撮像する場合には、矢印B31、B33、B35及びB37に示されるように、複数の対象領域C31〜C34に対し、個別に撮像を行ってもよい。具体的には、Y軸方向の任意の向き(例えばY軸負方向)に撮像面12を移動させながら、TDI動作によって領域C31を撮像する(矢印B31)。次に、別の対象領域C32の一端に固体撮像装置1Aを移動したのち(矢印B32)、Y軸方向の任意の向き(例えばY軸負方向)に撮像面12を移動させながら、TDI動作によって領域C32を撮像する(矢印B33)。以降、同様の動作を繰り返すことによって、他の領域C33及びC34を撮像する(矢印B34〜B37)。
【0048】
以上に説明した、本実施形態による固体撮像装置1Aによって得られる効果について説明する。本実施形態の固体撮像装置1Aによれば、固体撮像素子10の各列の出力ポート(終端画素)と信号読出回路20,30とを共通の基板上において互いに近接して配置し、且つ、信号読出回路20,30にN個の入力ポート(入力端)を設けることにより、高速且つ低ノイズな読み出しを実現できる。例えば、本実施形態では、各列毎に信号読出回路20,30が配置されている。これにより、全ての列から同時に信号を読み出すことができるので、例えば行クロック30MHzで2000列を読み出す場合、30MHz÷2000=15kHzで動作させることができる。したがって、ノイズを40分の1程度まで減少させることができる。或いは、ノイズを従来と同程度まで許容できる場合には、より高速な読み出しが可能となる。
【0049】
ここで、図9は、図8に示された動作を行う固体撮像装置1Aを備える検査装置200の構成例を概略的に示す図である。この検査装置200は、電子銃201と、E×Bフィルタ202と、固体撮像装置1Aとを備えている。電子銃201から放出された電子ビームEB1は、レンズ203a及び203bで縮小されたのち、E×Bフィルター202の偏向中心面に結像される。E×Bフィルター202で偏向された電子ビームEB1は、レンズ204a及び204bによって集束され、被写体100(半導体ウエハ)へ照射される。そして、被写体100のパターン画像情報を含む二次電子EB2が、被写体100から放出される。この二次電子EB2は、4段のレンズ204a,204b及び205a,205bによって拡大されたのち、固体撮像装置1Aの撮像面12に入射する。
【0050】
ここで、例えばレンズ204a,204b及び205a,205bの拡大率が500倍であり、撮像面12の列方向の幅が例えば12μmであり、行方向の幅が例えば12μmである場合、被写体100における24nm×24nmといった極めて小さな領域を高い空間分解能で撮像することが可能である。しかしながら、被写体100が例えば12インチウエハといった大きなものである場合、そのような小さな領域を撮像すると長時間を要してしまう。本実施形態の固体撮像装置1Aによれば、このような場合であっても、固体撮像素子10と信号読出回路20,30とを組み合わせることで高速・低ノイズの撮像が可能となり、TDI動作において高分解能かつ短時間での撮像が可能となる。
【0051】
また、固体撮像装置1Aでは、CCD型の固体撮像素子10が、列方向の一端及び他端それぞれに配置された第1及び第2の信号読出回路20,30を有しており、更に、これらの信号読出回路20,30それぞれには、シリアル信号出力のための第1及び第2の半導体素子50,60それぞれが接続されている。このような構成によれば、他端側から一端側へ向かう方向にTDI動作を行う場合には、その方向に電荷を転送し、その電荷を第1の信号読出回路20および第1の半導体素子50によってシリアル信号出力に変換するとよい。また、一端側から他端側へ向かう方向にTDI動作を行う場合には、その方向に電荷を転送し、その電荷を第2の信号読出回路30および第2の半導体素子60によってシリアル信号出力に変換するとよい。このように、本実施形態の固体撮像装置1Aによれば、CCDの電荷転送方向を反転させることができる。したがって、TDI動作によって撮像を行う際に、固体撮像装置1Aの移動を少なくすることができるので、撮像に要する時間を短くすることができる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1A…固体撮像装置、10…固体撮像素子、12…撮像面、13…画素、20…第1の信号読出回路、21,25,31,35…トランジスタ、22…信号出力用ボンディングパッド、24,27,28…ボンディングパッド、30…第2の信号読出回路、32…信号出力用ボンディングパッド、34,37,38…ボンディングパッド、40…転送制御部、50…第1の半導体素子、51,61…ボンディングパッド、52,62…CDS回路、53,63…バッファ、54,64…アナログ−ディジタル変換回路、55,65…マルチプレクサ、59,69…バンプ電極、60…第2の半導体素子、71,72…ドライブパッド用変換基板、71a,72a…ドライブ電圧用パッド、80…アンダーフィル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
M×N個(M,Nは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成る撮像面、前記撮像面に対して列方向の一端側に各列毎に配置されており各列から取り出される電荷の大きさに応じた電気信号をそれぞれ出力するN個の第1の信号読出回路、及び、前記撮像面に対して列方向の他端側に各列毎に配置されており各列から取り出される電荷の大きさに応じた電気信号をそれぞれ出力するN個の第2の信号読出回路を有するCCD型の固体撮像素子と、
前記第1の信号読出回路から各列毎に出力される電気信号をディジタル信号に変換するとともに、各列の前記ディジタル信号をシリアル信号として順次出力する第1の半導体素子と、
前記第2の信号読出回路から各列毎に出力される電気信号をディジタル信号に変換するとともに、各列の前記ディジタル信号をシリアル信号として順次出力する第2の半導体素子と
を備えることを特徴とする、固体撮像装置。
【請求項2】
前記撮像面における列方向の電荷の転送を制御する転送制御部を更に備え、
前記転送制御部が、前記他端側から前記一端側へ向かう方向に電荷を転送する第1の動作モードと、前記一端側から前記他端側へ向かう方向に電荷を転送する第2の動作モードとを有することを特徴とする、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記転送制御部は、移動する被写体の移動速度及び移動方向に電荷の転送速度及び転送方向を一致させることを特徴とする、請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の半導体素子それぞれが、
前記N個の第1及び第2の信号読出回路それぞれから各列毎に出力される電気信号のノイズを低減する相関二重サンプリング回路と、
前記相関二重サンプリング回路から出力された信号を増幅するバッファと、
前記バッファから出力された信号をディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換回路と、
前記アナログ−ディジタル変換回路から出力された各列の前記ディジタル信号をシリアル信号として順次出力するマルチプレクサと
を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−98420(P2013−98420A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241343(P2011−241343)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】