説明

固体高分子型燃料電池用流体供給システム

【課題】部品点数を削減することで、実装スペースおよびコストの低減、組立性および信頼性が向上した固体高分子型燃料電池用流体供給システムを提供する。
【解決手段】固体高分子型燃料電池用流体供給システムは、MEA10の両面に燃料極と酸化剤極とを有する固体高分子型燃料電池用流体供給システムにおいて、燃料極を覆い燃料を保持する流路を構成する、変形可能な素材からなる燃料極バッグ30aと、燃料極バッグ30aの表面に形成されたコイル状導体パターン31aと、コイル状導体パターン31aに対向して配置されたマグネットと、電流制御装置と、燃料極バッグ30aに設けられた逆止弁付き貫通口20aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的な反応により発電する固体高分子型燃料電池に燃料を供給する固体高分子型燃料電池用流体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜を燃料極と酸化剤極とで挟持した構造の膜・電極接合体(Membrane and Electrode Assembly 以下、MEAという。)により構成され、燃料極に燃料として水素やアルコール等を供給し、酸化剤極に空気又は酸素を供給して電気化学反応を起こさせることにより電力を取り出す装置である。
【0003】
図13に従来の固体高分子燃料電池の一例の分解斜視図を示す。MEA110はカソード端子106cとアノード端子106aとに挟持されている。MEA110のアノード端子106a側と流路形成枠108、流路形成枠108と底板109とは、それぞれガスケット107を介して積層されており、ネジ113などにより密着固定されることで燃料流路が形成されている。また、燃料は発電とともに消費されて減少するため、燃料流路には燃料を補給するための貫通口が設けられており、外部タンクよりポンプ、チューブを使用して燃料が供給される。
【0004】
燃料流路には流入口と流出口の複数の貫通口が設けられ、燃料はMEA110の燃料極面全体の燃料濃度が設定された濃度範囲になるようにコントロールされながら循環している。
【0005】
ここで、従来の固体高分子燃料電池システムの一例の模式図を図14に示す。
【0006】
固体高分子燃料電池システムは、流入口301、流出口302を有する燃料電池セル170、電流制御装置400により運転制御されるポンプ300、燃料の濃度を調整する燃料調整システム320と、これらを接続する輸液チューブ310とを有する。
【0007】
ポンプ300が始動すると燃料調整システム320にて所定の濃度に調整された燃料が流入口301から燃料電池セル170の燃料極に供給される。空気中に露出している酸化剤極には空気(酸素)が供給される。
【0008】
MEA10では燃料極に水素やアルコールなどの燃料が送り込まれると、燃料は燃料極上に固定された触媒粒子の作用により分解されてプロトン(H+)と電子(eー)に分離し、プロトンは固体高分子電解質膜を通過して酸化剤極上で空気中の酸素と反応して、水が生成される。このとき、電子が外部負荷を通って燃料極から酸化剤極に移動することにより電力が取り出される。ポンプ300を停止させるか、酸化剤極の酸素の供給を絶てば発電システムが停止する。
【0009】
上述のように燃料電池の発電反応には燃料極にある規定範囲濃度の燃料をポンプなどで供給する必要がある。また、通常、燃料タンクの他に濃度調整用タンクなども備えていて濃度センサの情報を基にポンプを用いて濃度調整を行っている。
【0010】
これまでの燃料供給方式では濃度調整用ポンプ、燃料極への燃料供給用ポンプなど複数のポンプが必要で、ポンプ設置スペースや、ポンプの数だけコストが増加するという問題があった。
【0011】
このようなポンプによる実装スペースの増加、コスト増加に対し、特許文献1〜3に開示されているように圧力容器を使った加圧燃料タンクによる輸液やベローズとバネのような弾性エネルギを利用した燃料供給方式、さらには形状記憶素材を動力に用いた新しいポンプ機構が開示されている。
【特許文献1】特開2005−267885号公報
【特許文献2】特開2006−040593号公報
【特許文献3】特開2004−257310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
燃料の濃度調整や、燃料供給にポンプを用いる従来例ではポンプの個数分のコストがかかること、ポンプ設置スペースを確保するために装置サイズを小さくすることに限界があるという問題があった。
【0013】
また、特許文献1のように圧力を用いた燃料供給方式は、ポンプを用いなくて済むものの、圧力に耐えうる燃料タンクや、強度の高いタンクやタンクに燃料を補給する耐圧性燃料供給装置が必要であり、その結果コスト高となる問題がある。
【0014】
同様に、特許文献2のような弾性エネルギを用いた方式でも弾性体を変形させるための何らかの手段が必要なこと、ベローズ構造などの付加構造が必要となることから実装体積的には不利という問題点もあった。
【0015】
さらに特許文献3のような新しい構造のポンプも提案されてはいるものの、ポンプ単体での使われ方では従来のポンプと変わりなく、ポンプの個数分のコストや、設置スペースの問題の解決にはならない。
【0016】
そこで、本発明は、部品点数を削減することで、実装スペースおよびコストの低減、組立性および信頼性が向上した固体高分子型燃料電池用流体供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の固体高分子型燃料電池用流体供給システムは、固体高分子電解質膜の両面に電極を有する固体高分子型燃料電池の電極部分に流体を供給する固体高分子型燃料電池用流体供給システムにおいて、電極を覆い流体を保持する流路を構成する、変形可能な容器と、容器を変形させるための電磁力を発生させる電磁力発生手段と、容器内への流体の流出入を規制する逆止弁と、を有することを特徴とする。
【0018】
上記の通り本発明は、流体の流路を変形可能な容器で構成し、これを電磁力発生手段で変形させ、逆止弁で一方向に流体が輸送されるようにしているため、流体輸送のためのポンプを別途設ける必要がない。
【0019】
また、電磁力発生手段は、容器の主面内に形成されたコイル状の導体パターンと、コイル状の導体パターンと対向する位置に配置された磁石と、コイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段と、を有するものであってもよい。あるいは、電磁力発生手段は、容器の主面内に配置された磁石と、磁石と対向する位置に配置されたコイル状の導体パターンと、コイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段と、を有するものであってもよい。コイル状の導体パターンとすることで、固体高分子型燃料電池の薄型化を図ることができる。また、容器の主面内にコイル状の導体パターンを形成する場合には、容器の成形時に導体パターンを形成することができ、製造コストを低減させることができる。
【0020】
また、電磁力発生手段は、容器の主面内に形成されたコイル状の導体パターンと、コイル状の導体パターンと対向する位置に配置された磁性体と、コイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段とを有するものであってもよい。あるいは、電磁力発生手段は、容器の主面内に配置された磁性体と、磁性体と対向する位置に形成されたコイル状の導体パターンと、コイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段とを有するものであってもよい。このような構成とすることで、磁石を用いることなく容器を変形させることが可能となる。
【0021】
また、電磁力発生手段は、容器の主面内に形成された第1のコイル状の導体パターンと、第1のコイル状の導体パターンと対向する位置に配置された第2のコイル状の導体パターンと、第1および第2のコイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段と、を有するものであってもよい。
【0022】
また、本発明の固体高分子型燃料電池用流体供給システムは、電磁力発生手段で発生させた電磁力により変形した容器の形状を電磁力が印加されていない状態の形状に戻すように付勢する付勢手段を有するものであってもよい。
【0023】
また、本発明の固体高分子型燃料電池用流体供給システムは、電極は燃料極と酸化剤極とを有し、容器は少なくとも燃料極および酸化剤極のいずれか一方の流路を形成するものであってもよい。容器を燃料極側だけでなく酸化剤極にも設けることで、固体高分子型燃料電池による発電の起動/停止をより確実に制御することが可能となる。
【0024】
容器は樹脂製であってもよい。コイル状の導体パターンはFPCにより構成され、バックの表面に取り付けられているものであってもよい。
【0025】
本発明の固体高分子型燃料電池用流体供給システムは、複数のコイル状の導体パターンを有するものであってもよい。特に、コイル状の各導体パターンの通電時の磁極性は、一方向に揃えられているものであってもよいし、あるいは、コイル状の各導体パターンは通電時の磁極性が一方向とならないように配置されているものであってもよい。このように複数のコイル状の導体パターンを設けることで容器の変形の自由度を高めることができる。これにより容器を流体の輸送用のポンプとして機能させるだけでなく、流体を攪拌させる攪拌器として機能させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、流体の流路を変形可能な容器で構成し、これを電磁力発生手段で変形させ、逆止弁で一方向に流体が輸送されるようにしているため、流体輸送のためのポンプを別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。これにより、流体供給システムの実装スペースおよびコストの低減、組立性および信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態の固体高分子型燃料電池の分解斜視図である。
図2は、本発明の固体高分子型燃料電池およびMEAの構造の詳細を説明するための断面図である。また、図3は、本発明の固体高分子型燃料電池システムの燃料供給部の斜視図および断面図である。
【0029】
本発明の燃料電池セル2は、MEA10と、表面にコイル状導体パターン31aが形成された燃料極バッグ30aとを有する。MEA10の周囲断面には熱溶着に使用される電極枠11が形成されており、この電極枠11の燃料極10a(アノード)側に燃料極バッグ30aが熱溶着により一体に形成されている。
【0030】
電極枠11は熱溶可塑性樹脂が使用でき、代表的な素材としてポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマーなどが用いられる。
【0031】
燃料極バッグ30aは、後述する燃料極10aの燃料流路4aとして機能するものであり、変形可能な弾性材料が用いられる。例えば、前述のポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマーに金属箔が積層されたラミネートフィルムや、前述の樹脂素材単体などが使用できる。なお、本発明においては、燃料極バッグおよび後述する酸化剤極バッグとして袋形状のものを例示するが本発明はこれに限定されるものではなく、内容積が可変なものであればどのようなものであってもよい。例えば、蛇腹構造を有する容器であってもよい。
【0032】
上述の熱溶着は電極枠11と燃料極バッグ30aを一体に形成する一例であり、一体化できる工法であれば接着でもその他の手法でも構わない。
【0033】
燃料極バッグ30aの表面にはコイル状導体パターン31aが形成されている。コイル状導体パターン31aは、燃料極バッグ30aの表面に形成する他、積層樹脂フィルム中間層として形成させることもでき、特にラミネートフィルムでは積層される金属箔と絶縁した中間層に形成する。また、燃料極バッグ30aへコイル状導体パターン31aを形成する別の方法としては、先にコイル状導体パターン31aと端子32aとをFPC(Flexible Printed Circuits)により形成しておき、そのFPCを燃料極バッグ30aへ接着や加熱溶着などにより固定してもよい。コイル状導体パターン31aの両端部には端子32aが接続され、外部の電流制御装置(図示せず)と電気的な接続を可能にする。
【0034】
さらに、燃料極バッグ30aには複数の逆止弁付き貫通口20aが配置されている。本実施形態では、逆止弁付き貫通口20aが2個配置されており、それぞれが流体の流入/流出口となる。逆止弁の方向は流入口側では燃料極バッグ30aの内部に流れる方向に、一方流出口側では外部に流れる方向に配置されている。本実施形態の逆止弁付き貫通口20aは熱溶着樹脂素材からなり、熱溶着工法により燃料極バッグ30aと一体に電極枠11に溶着された例を示している。
【0035】
MEA10は、公知の固体高分子型燃料電池と同様であり、燃料極10aと酸化剤極10cとで固体高分子電解質膜1を挟み込んだ構造となっている。燃料極10aは、固体高分子電解質膜1に隣接してアノード触媒層2aが形成され、このアノード触媒層2aに隣接してアノードガス拡散電極3aが形成された2層構造となっている。このアノードガス拡散電極3aには、多孔質膜5が積層されている。酸化剤極10cは、固体高分子電解質膜1に隣接してカソード触媒層2cが形成され、このカソード触媒層2cに隣接してカソードガス拡散電極3cが形成された2層構造となっている。燃料電池セル2は、燃料流路4aの燃料極10aには例えば、水素が燃料として供給され、一方、酸化剤極10cは空気中に露出しているため空気(本実施形態では酸素)が酸化剤極10cに供給されることで、化学反応により発電する。
【0036】
本発明の固体高分子型燃料電池システムは、燃料電池セル2の燃料極バッグ30aのコイル状導体パターン31aに対向するようにしてマグネット40aが配置されている。マグネット40aは、コイル状導体パターン31aに、後述する電流制御装置400から電流を印加した際に電磁力を発生させるよう配置され、図3(a)ではマグネット40aのS極がコイル状導体パターン31aと対向する方向に配置されている。コイル状導体パターン31aとマグネット40aとは電磁力を発生させる手段であり、配置については逆にすることも可能である。ただしその場合にはマグネット40aやコイル状導体パターン31aの形状を薄くするなどの工夫が必要である。
【0037】
上記マグネット40aの配置は図3(b)のような構成により実現するものであってもよい。ベース筐体51に燃料電池セル2を配置し、上からカバー筐体50で覆う。このときカバー筐体50はネジなどによりベース筐体51に固定する。カバー筐体50に設けられた凹部にマグネット40aが挿入固定されている。固定は接着でもはめ込みでも方法は問わない。
【0038】
また、図4に示すようにコイル状導体パターン31aから伸びる端子32aには外部の電流制御装置400が電気的に接続されており、コイル状導体パターン31aに任意の電力を供給する。
【0039】
逆止弁付き貫通口20aには輸液チューブ310を介して燃料調整システム320が接続されている。燃料調整システム320は燃料を規定の濃度に調整する。
【0040】
次に、コイル状導体パターン31aが形成された燃料極バッグ30aとマグネット40aとを有する上記構成がポンプとして機能する、その動作原理について、図4ないし図6を用いて説明する。図4ないし図6は固体高分子型燃料電池システムにおける燃料電池セル2およびマグネット40a部分の側断面図である。図5および図6についてはマグネット40aは図示していない。
【0041】
燃料電池セル2のコイル状導体パターン31aに電流制御装置400から交流電流を印加するとコイル状導体パターンに磁界が発生する。発生した磁界とマグネット40aとの磁界の作用により燃料極バッグ30aの表面は図4に示すように吸引、反発を繰り返す。
【0042】
この力により弾性材料からなる燃料極バッグ30aは変形し、バッグの内容積が変化する。図5に示すように燃料極バッグ30aの容積膨張時には燃料極バッグ30a内部に燃料は吸引され、反対に図6の燃料極バッグ30aの容積収縮時には燃料極バッグ30a外部に燃料は排出される。
【0043】
次に図7を用いて固体高分子型燃料電池システムの動作を示す。
【0044】
図7において、燃料極バッグ30aに配置されたコイル状導体パターン31aに電流制御装置400から交流電流が印加されると燃料極バッグ30aは膨張収縮する。この膨張収縮により、燃料調整システム320にて規定の濃度に調整された燃料が図2(b)に示す燃料極10aの燃料流路4aに供給される。また酸化剤極10cは空気中に露出しているため空気(本実施形態の場合は酸素)が酸化剤極10cに供給され、化学反応により発電する。電流制御装置400から電流を停止させるか、酸化剤極10cの空気を遮断すれば発電システムが停止する。
【0045】
このように本実施形態の固体高分子型燃料電池システムは、燃料流路4aであるコイル状導体パターン31aを有する燃料極バッグ30aと、マグネット40aと、逆止弁付き貫通口20aとによってポンプを構成し、これを電流制御装置400で駆動制御している。つまり、燃料流路をポンプとして機能させることで別途ポンプを設ける必要がなく、よって、部品点数を少なく、コンパクトな燃料電池システムが実現できる。また、本実施形態の固体高分子型燃料電池システムは、部品点数を少なくしたことで、作業工数が削減でき、組み立て性が良く、ローコストで信頼性が高い燃料電池システムが実現できる。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0047】
本発明の他の実施形態として、その基本的構成はこれまで述べた通りであるが、図8に示すように、燃料極バッグ30aにコイル状導体パターン31aが複数個形成されている構成としてもよい。また、これら複数個のコイル状導体パターン31aは、その巻き方向、巻き回数、接続極性などを揃える/揃えない、電流制御を共通化する/しない、コイル毎に独立した電流制御回路を有するものであってもよい。このような構成とすることで、燃料極バッグ30aの変形の自由度を高めることができ、単なる流体ポンプとしての機能にとどまらずバッグ内での混合、攪拌といった機能や、バッグ内で流体を任意に移動させるという機能を実現することもできる。
【0048】
さらに図9に、燃料極バッグ30aだけでなく酸化剤極バッグ30cを設けた他の実施形態を示す。前述の固体高分子型燃料電池システムは、酸化剤極10cを空気中に露出させ空気中の酸素を使って発電反応を進めている。これに対して図9に示す構成は、燃料極10aと同様に酸化剤極10c側にも逆止弁付き貫通口20a、コイル状導体パターン31aを備えた酸化剤極バッグ30c、マグネット40aが設けられているため、燃料極10aと同様に空気(酸素)の供給を制御することが可能となる。これにより発電の起動/停止を燃料供給をのみを絶つ場合に比較し、より確実に制御することが可能となる。また、酸化剤極10cへの酸素を遮断する機能は、燃料が希薄になった場合にカソードガス拡散電極3cに腐食が発生するという不具合を低減(または回避)できるという効果もある。
【0049】
次に、図10に、燃料極バッグ30aの表面に磁性体50aを配置し、その対向位置にコイル状導体パターン31aを配置し、さらに磁性体50aとコイル状導体パターン31aとの間に、弾性体60a(図では圧縮型スプリング)を配置した他の実施形態の分解斜視図を示す。
【0050】
図11に示すようにコイル状導体パターンに電流が印加されると磁界が発生し、燃料極バッグ30aに配置された磁性体50aが吸引される。これにより、燃料極バッグ30aは膨張し、燃料極バッグ30a内に燃料が供給される。この際、弾性体60aは圧縮される。この状態でコイル状導体パターン31aへの電流が遮断されると、弾性体60aを圧縮しつつ磁性体50aを吸引していた磁界は消滅するので図12に示すように弾性体60aは解放されて燃料極バッグ30aを吸引前の状態に押し戻す。これにより、燃料極バッグ30a内の燃料は排出される。図11に示す構成の場合、マグネット40aを磁性体50aに置き換えることができ、ローコスト化が実現できる。また、図11では弾性体60aの例をスプリングとしたが、燃料極バッグ30aの形状を通電前の状態に復元する方向に作用するものであればスプリングに限定されるものではなく、例えば、ゴム等であってもよい。また、弾性を有する素材を燃料極バッグ30aに適用することで燃料極バッグ30a自体を弾性体60aとしてもよい。この場合、部品点数を少なくすることができる。
【0051】
上述した各例は、いずれもコイル状導体パターンを1つのみ有する構成例を示した。本発明はこれに限定されるものではなく、燃料極バッグ30aに第1のコイル状導体パターンが形成され、これに対向する位置に第2のコイル状導体パターンを配置する構成とすることも可能である。この場合、第1および第2のコイル状導体パターンのそれぞれを独立して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明における固体高分子燃料電池の一実施形態の分解斜視図である。
【図2】本発明における固体高分子型燃料電池およびMEAの構造の詳細を説明するための断面図である。
【図3】本発明における固体高分子型燃料電池システムの斜視図および断面図である。
【図4】本発明における固体高分子型燃料電池システムの断面図である。
【図5】燃料極バッグが膨張し、燃料がバッグ内に吸引されている状態を示す図である。
【図6】燃料極バッグが収縮し、燃料がバッグ外へと排出されている状態を示す図である。
【図7】本発明における燃料調整システムを備えた固体高分子型燃料電池システムの模式図である。
【図8】本発明における固体高分子燃料電池システムの他の実施形態の斜視図である。
【図9】本発明における固体高分子燃料電池システムのさらに他の実施形態の分解斜視図である。
【図10】本発明における固体高分子燃料電池システムのまたさらに他の実施形態の分解斜視図である。
【図11】図10に示す固体高分子燃料電池システムにおける、燃料極バッグの燃料吸引動作を示す図である。
【図12】図10に示す固体高分子燃料電池システムにおける、燃料極バッグの燃料排出動作を示す図である。
【図13】従来の固体高分子燃料電池の一例の分解斜視図である。
【図14】従来の固体高分子燃料電池システムの一例の模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1 固体高分子電解質膜
2 燃料電池セル
2a アノード触媒層
2c カソード触媒層
3a アノードガス拡散電極
3c カソードガス拡散電極
4a 燃料流路
5 多孔質膜
10a 燃料極
10c 酸化剤極
11 電極枠
20a 逆止弁付き貫通口
30a 燃料極バッグ
30c 酸化剤極バッグ
31a コイル状導体パターン
32a 端子
40a マグネット
50 カバー筐体
50a 磁性体
51 ベース筐体
60a 弾性体
106a アノード端子
106c カソード端子
107 ガスケット
108 流路形成枠
109 底板
113 ネジ
170 燃料電池セル
300 ポンプ
301 流入口
302 流出口
310 輸液チューブ
320 燃料調整システム
400 電流制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜の両面に電極を有する固体高分子型燃料電池の電極部分に流体を供給する固体高分子型燃料電池用流体供給システムにおいて、
前記電極を覆い流体を保持する流路を構成する、変形可能な容器と、
前記容器を変形させるための電磁力を発生させる電磁力発生手段と、
前記容器内への流体の流出入を規制する逆止弁と、を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項2】
前記電磁力発生手段は、前記容器の主面内に形成されたコイル状の導体パターンと、前記コイル状の導体パターンと対向する位置に配置された磁石と、前記コイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段と、を有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項3】
前記電磁力発生手段は、前記容器の主面内に配置された磁石と、前記磁石と対向する位置に配置されたコイル状の導体パターンと、前記コイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段と、を有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項4】
前記電磁力発生手段は、前記容器の主面内に形成されたコイル状の導体パターンと、前記コイル状の導体パターンと対向する位置に配置された磁性体と、前記コイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段とを有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項5】
前記電磁力発生手段は、前記容器の主面内に配置された磁性体と、前記磁性体と対向する位置に形成されたコイル状の導体パターンと、前記コイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段とを有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項6】
前記電磁力発生手段は、前記容器の主面内に形成された第1のコイル状の導体パターンと、前記第1のコイル状の導体パターンと対向する位置に配置された第2のコイル状の導体パターンと、前記第1および第2のコイル状の導体パターンに電流を印加する電流制御手段と、を有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項7】
前記電磁力発生手段で発生させた電磁力により変形した前記容器の形状を前記電磁力が印加されていない状態の形状に戻すように付勢する付勢手段を有する請求項5または6に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項8】
前記電極は燃料極と酸化剤極とを有し、前記容器は少なくとも前記燃料極および前記酸化剤極のいずれか一方の前記流路を形成する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項9】
前記容器は樹脂製である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項10】
前記コイル状の導体パターンはFPCにより構成され、前記バックの表面に取り付けられている、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項11】
複数の前記コイル状の導体パターンを有する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項12】
前記コイル状の各導体パターンの通電時の磁極性が一方向に揃えられている、請求項11に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。
【請求項13】
前記コイル状の各導体パターンは通電時の磁極性が一方向とならないように配置されている、請求項11に記載の固体高分子型燃料電池用流体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−108465(P2008−108465A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287777(P2006−287777)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】