説明

固定具

【課題】車体に穴をあける必要がなく、車体に固定した後で取り外しが可能で、被固定部材の固定に手間がかからない固定具を提供する。
【解決手段】クランプ16とホルダー18からなる。クランプ16は、ばね弾性を有する帯状金属板の一端側を車体の板状部材14を挟み付けるように略U字形に屈曲して挟持部20を形成すると共に、前記帯状金属板の他端側を略Π形に屈曲してアンカー装着台22を形成し、かつアンカー装着台22の天板部にアンカー挿入穴28を形成したものからなる。ホルダー18は、被固定部材12を保持するホルダー本体30、32にアンカー部34を一体に形成したプラスチック成型品からなる。ホルダー18のアンカー部34をクランプ16のアンカー挿入穴28に挿入して、クランプ16とホルダー18を結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の板状部材(フレーム等)にワイヤーハーネスやコネクタ等の被固定部材を固定するための固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤーハーネスやコネクタを車体の所定位置に固定する手段としては、次のようなものが公知である。
(A)ワイヤーハーネスに添わせる添え板部の中間にアンカー部を一体に形成した樹脂クリップを用い、添え板部の両端側をテープ巻きによりワイヤーハーネスに取り付け、アンカー部を車体に形成された穴に押し込んで固定する(特許文献1の図5)。
(B)コネクタとのスライド結合部にアンカー部を一体に形成した樹脂クリップを用い、スライド結合部にコネクタをスライド結合し、アンカー部を車体に形成された穴に押し込んで固定する(特許文献2)。
(C)金属製のクランプでワイヤーハーネスを把持し、そのクランプを車体に形成されたブラケットにネジ止めする(特許文献3の図6)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−166061号公報
【特許文献2】特開平8−195253号公報
【特許文献3】特開2004−222393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、(A)、(B)の固定手段は、車体に穴をあける必要があり、また一度車体に固定すると取り外しができないという難点がある。また(C)の固定手段は金属製のクランプを用いるため、ワイヤーハーネスを外装材で保護する必要があり、手間とコストがかかる。
【0005】
本発明の目的は、上記のような問題点に鑑み、車体に穴をあける必要がなく、車体に固定した後でも取り外しが可能で、被固定部材の固定に手間がかからない固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る固定具は、車体の板状部材に取り付けられるクランプと、ワイヤーハーネスやコネクタ等の被固定部材を保持するホルダーとからなり、
前記クランプは、ばね弾性を有する帯状金属板の一端側を、前記板状部材を板厚方向に挟み付けるように略U字形に屈曲して挟持部を形成すると共に、前記帯状金属板の他端側を、両脚部が前記板状部材の板面に当接するように略Π形に屈曲してアンカー装着台を形成し、かつ前記アンカー装着台の天板部にアンカー挿入穴を形成したものからなり、
前記ホルダーは、被固定部材を保持するホルダー本体にアンカー部を一体に形成したプラスチック成型品からなり、
前記ホルダーのアンカー部をクランプのアンカー挿入穴に挿入して、クランプとホルダーを結合したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の固定具において、被固定部材がワイヤーハーネスである場合は、ホルダーはワイヤーハーネスを保持するように形成されたワイヤーハーネスホルダーである。
【0008】
本発明の固定具において、被固定部材がコネクタである場合は、ホルダーはコネクタを保持するように形成されたコネクタホルダーである。
【0009】
本発明に係る固定具は、車体の板状部材に取り付けられるクランプと、被固定部材を保持するホルダーとからなり、
前記クランプは、ばね弾性を有する帯状金属板の一端側を、前記板状部材を板厚方向に挟み付けるように略U字形に屈曲して挟持部を形成すると共に、前記帯状金属板の他端側を、両脚部が前記板状部材の板面に当接するように略Π形に屈曲して被固定部材保持台を形成し、かつ前記被固定部材保持台の両脚部にバンド挿通孔を形成したものからなり、
前記ホルダーは、バンドの一端にバンドロック部を一体に形成したプラスチック成型品からなり、
前記ホルダーのバンドをクランプのバンド挿通孔に挿通して、被固定部材保持台上の被固定部材をバンドで締め付け固定できるようにした構成とすることもできる。
【0010】
本発明の固定具は、クランプの略U字形の挟持部の解放端側を、内側に切り起こして弾性補助片を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る固定具は、プラスチック製のホルダーで被固定部材を保持し、クランプの挟持部で車体の板状部材を挟み付けるだけで、被固定部材を車体に固定することができる。このため、車体に穴をあける必要がなく、固定作業も簡単である。また、車体への仮固定もできるため、ワイヤーハーネスの配索作業性が向上する。また、金属帯板のばね弾性で車体側の板状部材を挟み付けて固定する方式であるから、車体に固定した後でも、取り外しが可能であり、車両の解体時等におけるリサイクル性に優れている。また、被固定部材を保持するホルダーはプラスチック製であるから被固定部材を損傷させるおそれはなく、外装材は不要である。さらに、金属製のクランプとプラスチック製のホルダーとの組合せであるため、クランプとホルダーの結合構造を共通にして、クランプは車体の板状部材に合うものだけを用意し、ホルダーは被固定部材に合うものだけを用意して、それらを適宜組み合わせて使用すればよいので、部品点数を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔実施形態1〕図1は本発明の一実施形態を示す。図において、10は固定具、12はワイヤーハーネス、14は車体側の板状部材(フレーム等)である。固定具10は、クランプ16とワイヤーハーネスホルダー18とから構成されている。
クランプ16は、図2に示すように、ばね弾性を有する帯状金属板を屈曲成形して、挟持部20とアンカー装着台22を形成したものである。挟持部20は、帯状金属板の一端側を、図1の板状部材14を板厚方向に挟み付けるように略U字形に屈曲することにより形成されている。アンカー装着台22は、帯状金属板の他端側を略Π字形に屈曲して、両脚部24が前記板状部材14の板面に当接するように形成されている。アンカー装着台22の天板部26にはアンカー挿入穴28が形成されている。このアンカー挿入穴28は四角形であるが、円形にすることもできる。
【0013】
一方、ワイヤーハーネスホルダー18は、図3に示すように、バンド30の一端にバンドロック部32を一体に形成し、バンドロック部32にアンカー部34を一体に形成したものである。この例では、バンド30とバンドロック部32がワイヤーハーネスを保持するホルダー本体を構成している。バンド30の外面(ワイヤーハーネスに巻き付けるとき外側になる面)には、細かいピッチで多数の横溝36が形成されている。バンドロック部32にはバンド30が挿通されるバンド挿通孔38が形成され、バンド挿通孔38内にはバンド30の前記横溝36に落ち込んでバンド30の引き抜けを防止する係止爪40が形成されている。アンカー部34は、バンドロック部32から立ち上がる支柱部42の両側に弾性係止片44を形成したものである。またバンドロック部32のアンカー部34側の面の両側縁には弾性押し付け片46が形成されている。
【0014】
以上のように構成されたワイヤーハーネスホルダー18のアンカー部34を、クランプ16のアンカー挿入穴28に挿入すれば、図1のように、弾性係止片44の解放端がアンカー挿入穴28の裏側の縁に引っ掛かり、かつ弾性押し付け片46がアンカー装着台22の天板部26に押し付けられるため、クランプ16とワイヤーハーネスホルダー18を結合することができる。この状態で、バンド30をワイヤーハーネス12に巻き付け、その先端部をバンドロック部32のバンド挿通孔38に挿通して締め付ければ、ホルダー18でワイヤーハーネス12を保持することができる。その後、クランプ16の挟持部20で板状部材14を挟み付ければ、ワイヤーハーネス12を車体の所定位置に簡単に固定することができる。
【0015】
なお、クランプ16とワイヤーハーネスホルダー18の結合は、ホルダー18をワイヤーハーネス12に取り付けた後に行ってもよい。
【0016】
ところで、この実施形態におけるワイヤーハーネスホルダー18は、図3に示すように、バンドロック部32のアンカー部34と反対側に、コネクタをスライド嵌合させるための嵌合溝48と、嵌合したコネクタの引き抜けを防止する係止爪50とが形成されている。このような構成にすると、バンドロック部32にコネクタを取り付けて、コネクタを車体に固定するための固定具としても使用可能である。この場合は、バンド30とバンドロック部32をコネクタの締め付け部材として使用すればよい。
【0017】
〔実施形態2〕図4は本発明の他の実施形態を示す。この固定具10は、コネクタ52を車体の板状部材14に固定するもので、クランプ16とコネクタホルダー54とから構成されている。クランプ16の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
コネクタホルダー54は、図5に示すように、ホルダー本体56にアンカー部34を一体に形成したものである。ホルダー本体56には、アンカー部34と反対側に、コネクタ52をスライド嵌合させるための嵌合溝48と、嵌合したコネクタの引き抜けを防止する係止爪50とが形成されている。アンカー部34の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
上記のように構成されたコネクタホルダー54のアンカー部34を、クランプ16のアンカー挿入穴28に挿入すれば、図4のように、弾性係止片44の解放端がアンカー挿入穴28の裏側の縁に引っ掛かり、かつ弾性押し付け片46がアンカー装着台22の天板部26に押し付けられて、クランプ16とコネクタホルダー54を結合することができる。この状態で、ホルダー本体56の嵌合溝48に、コネクタ52側の嵌合突縁58をスライド嵌合させ、係止爪50をコネクタ52の嵌合突縁58の間に形成された係止突起(図示せず)に係合させれば、コネクタホルダー54でコネクタ52を保持することができる。その後、クランプ16の挟持部20で板状部材14を挟み付ければ、コネクタ52を車体の所定位置に固定することができる。
【0020】
なお、クランプ16とコネクタホルダー54の結合は、コネクタホルダー54をコネクタ52に取り付けた後に行ってもよい。
【0021】
ところで、この実施形態におけるコネクタホルダー54は、図5に示すように、ホルダー本体56内に、バンド挿通孔38と、バンド引き抜け防止用の係止爪40とが形成されているが、このバンド挿通孔38と係止爪40は省略してもよい。
【0022】
〔実施形態3〕図6は本発明のさらに他の実施形態を示す。図6はクランプ16のみを示すが、ワイヤーハーネスやコネクタ等の被固定部材を保持するホルダーの構成は実施形態1、2と同様である。このクランプ16は、略U字形の挟持部20の解放端側を内側に切り起こして弾性補助片60を形成したものである。このような弾性補助片60を形成すると、板状部材を挟持しやすくなると共に、板状部材の板厚の変化に広範囲に対応することができる。上記以外の構成は図2に示したクランプ16と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
〔実施形態4〕図7は本発明のさらに他の実施形態を示す。図において、10は固定具、12はワイヤーハーネス、14は車体側の板状部材(フレーム等)である。固定具10は、クランプ16とワイヤーハーネスホルダー18とから構成されている。
クランプ16は、図8に示すように、ばね弾性を有する帯状金属板を屈曲成形して、挟持部20とワイヤーハーネス保持台62を一体に形成したものである。挟持部20は、帯状金属板の一端側を、図7の板状部材14を板厚方向に挟み付けるように略U字形に屈曲することにより形成されている。ワイヤーハーネス保持台62は、帯状金属板の他端側を略Π字形に屈曲して、両脚部24が前記板状部材14の板面に当接するように形成されている。ワイヤーハーネス保持台62の両脚部24には、バンド挿通孔64が形成されている。なお、挟持部20の解放端側には、図6に示すように弾性補助片60を形成してもよい。
【0024】
一方、ワイヤーハーネスホルダー18は、バンド30の一端にバンドロック部32を一体に形成したものである。バンド30とバンドロック部32の構成は、図3に示したバンド30とバンドロック部32の構成と同様である(アンカー部34は設けられていない)。
【0025】
以上のように構成されたワイヤーハーネスホルダー18のバンド30を、クランプ16のバンド挿通孔64に挿通して、クランプ16とワイヤーハーネスホルダー18を組み合わせる。この状態で、図7のように、ワイヤーハーネス保持台62の天板部26をワイヤーハーネス12の所定位置に当接させ、バンド30をワイヤーハーネス12に巻き付け、その先端部をバンドロック部32のバンド挿通孔に挿通して締め付ければ、ホルダー18でワイヤーハーネス12を保持することができる。その後、クランプ16の挟持部20で板状部材14を挟み付ければ、ワイヤーハーネス12を車体の所定位置に簡単に固定することができる。
【0026】
〔参考実施形態〕図9はクランプ16のみでワイヤーハーネス12を板状部材14に固定する例を示す。このクランプ16は、帯状金属板の一端側を略U字形に屈曲して、板状部材14を挟み付ける挟持部20を形成し、他端側を略Π字形に屈曲して、ワイヤーハーネス12を板状部材14に押し付けるようにして抱持するワイヤーハーネス保持部66を形成したものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る固定具の一実施形態を示す一部切開側面図。
【図2】図1の固定具を構成するクランプの、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は底面図。
【図3】図1の固定具を構成するワイヤーハーネスホルダーの、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は平面図、(E)は(A)のE部の拡大図。
【図4】本発明に係る固定具の他の実施形態を示す一部切開側面図。
【図5】図4の固定具を構成するコネクタホルダーの、(A)は側面図、(B)は底面図、(C)は背面図。
【図6】本発明に係る固定具を構成するクランプの他の実施形態を示す側面図。
【図7】本発明に係る固定具のさらに他の実施形態を示す側面図。
【図8】図7の固定具を構成するクランプの、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は底面図。
【図9】ワイヤーハーネス固定用クランプの参考実施形態を示す側面図。
【符号の説明】
【0028】
10:固定具
12:ワイヤーハーネス
14:車体側の板状部材(フレーム等)
16:クランプ
18:ワイヤーハーネスホルダー
20:挟持部
22:アンカー装着台
24:脚部
26:天板部
28:アンカー挿入穴
30:バンド
32:バンドロック部
34:アンカー部
38:バンド挿通孔
40:係止爪
48:嵌合溝
52:コネクタ
54:コネクタホルダー
56:ホルダー本体
58:嵌合突縁
60:弾性補助片
62:ワイヤーハーネス保持台
64:バンド挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の板状部材に取り付けられるクランプと、被固定部材を保持するホルダーとからなり、
前記クランプは、ばね弾性を有する帯状金属板の一端側を、前記板状部材を板厚方向に挟み付けるように略U字形に屈曲して挟持部を形成すると共に、前記帯状金属板の他端側を、両脚部が前記板状部材の板面に当接するように略Π形に屈曲してアンカー装着台を形成し、かつ前記アンカー装着台の天板部にアンカー挿入穴を形成したものからなり、
前記ホルダーは、被固定部材を保持するホルダー本体にアンカー部を一体に形成したプラスチック成型品からなり、
前記ホルダーのアンカー部をクランプのアンカー挿入穴に挿入して、クランプとホルダーを結合したことを特徴とする固定具。
【請求項2】
被固定部材がワイヤーハーネスであり、ホルダーがワイヤーハーネスを保持するように形成されたワイヤーハーネスホルダーであることを特徴とする請求項1記載の固定具。
【請求項3】
被固定部材がコネクタであり、ホルダーがコネクタを保持するように形成されたコネクタホルダーであることを特徴とする請求項1記載の固定具。
【請求項4】
車体の板状部材に取り付けられるクランプと、被固定部材を保持するホルダーとからなり、
前記クランプは、ばね弾性を有する帯状金属板の一端側を、前記板状部材を板厚方向に挟み付けるように略U字形に屈曲して挟持部を形成すると共に、前記帯状金属板の他端側を、両脚部が前記板状部材の板面に当接するように略Π形に屈曲して被固定部材保持台を形成し、かつ前記被固定部材保持台の両脚部にバンド挿通孔を形成したものからなり、
前記ホルダーは、バンドの一端にバンドロック部を一体に形成したプラスチック成型品からなり、
前記ホルダーのバンドをクランプのバンド挿通孔に挿通して、被固定部材保持台上の被固定部材をバンドで締め付け固定できるようにしたことを特徴とする固定具。
【請求項5】
クランプの略U字形の挟持部の解放端側を、内側に切り起こして弾性補助片を形成したことを特徴とする請求項1又は4記載の固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−131816(P2008−131816A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316766(P2006−316766)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】