説明

圧力調整弁のエアー抜きシステムおよびこれを備えた液滴吐出装置

【課題】簡単な構成で圧力調整弁内のエアーを排出することができる圧力調整弁のエアー抜きシステム等を提供する。
【解決手段】バルブハウジング64内の1次室67と2次室68とを連通する連通流路に設けた弁体を、2次室68の1の面を構成するダイヤフラムにより大気圧基準で開閉し、機能液供給手段から1次室67に導入した機能液を、圧力調整して2次室68を介して機能液滴吐出ヘッド25に重力供給すると共に、2次室68のエアーを排出するエアー抜きポート83を有する圧力調整弁27と、エアー抜きポート83に連通し、2次室68のエアーを吸引により排出するエアー抜き手段と、機能液滴吐出ヘッド25に密接して機能液供給手段から機能液を吸引して、1次室67および2次室68に機能液を初期充填する吸引充填手段と、を備え、エアー抜き手段は、弾性変形可能な袋状部材93を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液滴吐出ヘッドに供給する機能液の圧力を大気圧基準で調整する圧力調整弁のエアー抜きシステムおよびこれを備えた液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴吐出装置において、機能液タンクに接続した1次室と機能液滴吐出ヘッドに接続した2次室とを連通する連通流路に設けた弁体を大気圧基準で開閉し、機能液滴吐出ヘッドに対して機能液を重力供給すると共に、1次室および2次室のエアーを排出する1次室エアー抜き口および2次室エアー抜き口を有する圧力調整弁と、流路切替バルブ、真空ポンプおよび回収タンクを有し、圧力調整弁の各エアー抜き口に接続されたエアー吸引手段と、機能液滴吐出ヘッドのノズル面に密着した吸引キャップを介して、機能液滴吐出ヘッドから機能液を吸引する吸引ユニットと、を備えた機能液供給機構(エアー抜きシステム)が知られている(特許文献1参照)。
この機能液供給機構を有する液滴吐出装置では、吸引ユニットを駆動して機能液吐出ヘッドに機能液を充填した後、ワークに対し機能液滴吐出ヘッドから機能液を吐出して所定の描画処理を行う。所定回数の吐出後、機能液の吐出休止を確認した上で、真空ポンプを駆動して1次室および2次室に溜まったエアーを排出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−082069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような機能液供給機構(エアー抜きシステム)では、排出すべきエアーが微量であるにもかかわらず、各圧力調整弁内のエアーを排気・回収する真空ポンプや回収タンク、これらを連通するための流路系等、複雑且つ大掛かりな機構が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、簡単な構成で圧力調整弁内のエアーを排出することができる圧力調整弁のエアー抜きシステムおよびこれを備えた液滴吐出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁のエアー抜きシステムは、バルブハウジング内の1次室と2次室とを連通する連通流路に設けた弁体を、2次室の1の面を構成するダイヤフラムにより大気圧基準で開閉し、機能液供給手段から1次室に導入した機能液を、圧力調整して2次室を介して機能液滴吐出ヘッドに重力供給すると共に、2次室のエアーを排出するエアー抜きポートを有する圧力調整弁と、エアー抜きポートに連通し、2次室のエアーを吸引により排出するエアー抜き手段と、機能液滴吐出ヘッドに密接し、機能液滴吐出ヘッドを介して機能液供給手段から機能液を吸引して、1次室および2次室に機能液を初期充填する吸引充填手段と、を備え、エアー抜き手段は、弾性変形可能な袋状部材を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、袋状部材は、初期充填を開始すると次第に萎んで行き、初期充填が終了すると、その弾性力で膨らみ元の形状に戻る。つまり、スポイトと同様の原理で、2次室内に貯留した少量のエアーを吸い上げることができる。これにより、エアーを吸引排気するための真空ポンプや流路系等の複雑且つ大掛かりな機構を設けることなく、エアー抜き手段を、単純且つ小型に構成することができる。
【0008】
この場合、エアー抜き手段は、エアー抜きポートと袋状部材との間に介設したエアー抜き弁を更に備えることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、2次室内に貯留した機能液と、袋状部材内に吸い上げたエアーとが接触することがない。これにより、機能液にエアーが溶け込むことがないため、機能液の品質、濃度等を均一に維持することができる。
【0010】
この場合、エアー抜き弁は、初期充填終了後に時間差を存して閉塞するように構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、吸引充填手段を停止しても、エアー抜き弁が、開弁した状態を維持するため、2次室内のエアーを袋状部材に確実に吸引させることができる。
【0012】
この場合、エアー抜きポートは、2次室の上端部に連通していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、通常、エアーは初期充填後に2次室の上側に貯留されるため、上端部に設けたエアー抜きポートから全てのエアーを円滑に排出することができる。
【0014】
また、この場合、ダイヤフラムに面する2次室の他方の面は、ダイヤフラムの変形形態に倣ってテーパー形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、連通流路から供給される機能液は、初期充填の際に2次室の壁面を伝わって流れるため、2次室内でのエアーと充填された機能液とが攪拌することがない。これにより、気泡の発生を抑制することができる。また、2次室の他方の面はダイヤフラムの変位形態と略同一形態に形成しているため、2次室を薄手に形成することができ、圧力調整弁をコンパクトに構成することができる。
【0016】
本発明の液滴吐出装置は、ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを移動させながら、機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、上記した圧力調整弁のエアー抜きシステムと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、2次室内のエアーを排除した状態で、機能液滴吐出ヘッドに気泡の生じていない機能液を供給することができるため、液滴吐出装置の吐出不良を適切に防止することができる。これにより、液滴吐出装置で製造する製品の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置に搭載されたキャリッジユニット(ヘッドユニット)の斜視図(a)および機能液滴吐出ヘッドを搭載したヘッドユニットを模式的に表した平面図(b)である。
【図3】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図4】機能液供給ユニットを模式的に示した系統図である。
【図5】キャップユニットの平面図(a)および吸引ユニットの側面図(b)である。
【図6】吸引ユニットの配管系統図である。
【図7】キャリッジユニットに搭載された圧力調整弁の外観側面図である。
【図8】圧力調整弁の流入口側の縦断面図(a)および流出口側の縦断面図(b)である。
【図9】エアー抜き機構によるエアー抜き動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る圧力調整弁のエアー抜きシステムを備えた液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、有機EL装置の各画素となる発光層やカラーフィルタのフィルタエレメント等を形成するものである。
【0020】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース12a上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークをX軸方向に移動させるX軸テーブル12と、複数本の支柱11を介してX軸テーブル12を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース13a上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル13と、Y軸テーブル13に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド25が搭載された13個のキャリッジユニット14と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を、温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバー15と、チャンバー15を貫通して機能液滴吐出ヘッド25に機能液を供給する機能液供給ユニット16(機能液供給手段)と、を備えており、チャンバー15の側壁の一部には、機能液供給ユニット16の主要部を為すメインタンク40等を収納するタンクキャビネット50が設けられている。この液滴吐出装置1は、制御装置17により装置全体が統括制御され、X軸テーブル12およびY軸テーブル13の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド25を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット16から供給された6色の機能液滴を吐出させ、ワークに所定の描画パターンが描画される。
【0021】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット21、吸引ユニット22、ワイピングユニット23、吐出性能検査ユニット24から成るメンテナンス装置18を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド25の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド25の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル12とY軸テーブル13とが交わる部分にキャリッジユニット14を臨ませてワークの描画を行い、Y軸テーブル13とメンテナンス装置18(吸引ユニット22、ワイピングユニット23)が交わる部分にキャリッジユニット14を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド25の機能維持・機能回復を行う。
【0022】
図2に示すように、各キャリッジユニット14は、R・G・B・C・M・Yの6色、各2個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド25と、12個の機能液滴吐出ヘッド25を6個ずつ2群に分けて支持するヘッドプレート26と、機能液滴吐出ヘッド25に機能液を大気圧基準で供給する圧力調整弁27と、を有するヘッドユニット19を備えている。各キャリッジユニット14は、一対のY軸支持ベース13aに掛け渡されたブリッジプレート13bに吊設されている(図1参照)。各キャリッジユニット14は、ブリッジプレート13b上に配設されたサブタンク41から自然水頭を利用し、かつ圧力調整弁27を介して各機能液滴吐出ヘッド25に機能液が供給されるようになっている(図4参照)。なお、キャリッジユニット14の個数および各キャリッジユニット14に搭載される機能液滴吐出ヘッド25の個数は任意である。
【0023】
図3に示すように、機能液滴吐出ヘッド25は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針34を有する機能液導入部31と、機能液導入部31の側方に連なる2連のヘッド基板32と、ヘッド基板32の下方に連なる2連のポンプ部33と、ポンプ部33に連なるノズルプレート35と、を備えている。機能液導入部31には、後述する2本の2次側チューブ43bが接続され、ノズルプレート35のノズル面NFには、2列のノズル列NLが相互に平行に列設されており、各ノズル列NLは、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル36で構成されている。ヘッド基板32は、フレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介して上記の制御装置17が接続されており、制御装置17から出力された駆動波形が各ポンプ部33(の圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル36から機能液が吐出される。
【0024】
図1および図4に示すように、機能液供給ユニット16は、チャンバー15に併設のタンクキャビネット50に収容された6個(6色)のメインタンク40と、各ブリッジプレート13b上に配設された複数(13個)のサブタンク41と、メインタンク40と複数のサブタンク41とを接続するタンク側チューブ42と、各サブタンク41と各機能液滴吐出ヘッド25を接続する複数のヘッド側チューブ43と、を備えている。各ヘッド側チューブ43には、機能液滴吐出ヘッド25と共にキャリッジユニット14に搭載された圧力調整弁27が介設されており、ヘッド側チューブ43は、サブタンク41と圧力調整弁27とを接続する1次側チューブ43aと、圧力調整弁27と機能液滴吐出ヘッド25とを接続する2次側チューブ43bと、を有している。
【0025】
メインタンク40から送液された機能液は、タンク側チューブ42を通って各サブタンク41に貯留される。各サブタンク41の機能液は、各機能液滴吐出ヘッド25の駆動に応じ、ヘッド側チューブ43および圧力調整弁27を介して、機能液滴吐出ヘッド25に自然水頭で供給される。一方、キャリッジユニット14(ヘッドユニット19)を交換する場合には、1次側チューブ43aに介設された開閉バルブ43cを閉弁した後、1次側チューブ43aを圧力調整弁27から接続を解除(離脱)し、この状態で交換が行われる。
【0026】
図1に示すように、フラッシングユニット21は、一対の描画前フラッシングユニット21aと、定期フラッシングユニット21bと、を有し、描画処理直前や、ワークの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド25の捨て吐出を受ける。吸引ユニット22は、13台のキャップユニット44を有し、各機能液滴吐出ヘッド25の吐出ノズル36から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。ワイピングユニット23は、吸引後の機能液滴吐出ヘッド25のノズル面NFを拭取る。吐出性能検査ユニット24は、機能液滴吐出ヘッド25の吐出の有無および飛行曲りを検査する。
【0027】
次に、図5および図6を参照して、吸引ユニット22について説明する。吸引ユニット22は、12個の機能液滴吐出ヘッド25に対応する12個のヘッドキャップ44aをキャッププレート44bに配置した13台のキャップユニット44と、支持部材45aを介して各キャップユニット44を昇降させる13台の昇降機構45と、各キャップユニット44に連なると共に機能液の流路を有する13個の吸引流路系46と、各吸引流路系46に連なると共に2つの圧力水準の異なる(高圧・低圧)2つのエジェクター58に対応した2つの廃液タンク55を有する吸引機構47と、を備えている。また、吸引ユニット22は、吸引機構47等に制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備48と、各部から排気を行うための排気設備49と、を備えている。
【0028】
各キャップユニット44は、各色2個、計12個の機能液滴吐出ヘッド25に対応したヘッドキャップ44aと、これらを一括して搭載したキャッププレート44bと、から成り、12個のヘッドキャップ44aは、12個の機能液滴吐出ヘッド25と同じ並びで且つ同じ傾き姿勢で、キャッププレート44bに搭載されている(図5(a)参照)。各昇降機構45は、支持部材45aを介してヘッドキャップ44aを直接昇降させる昇降シリンダ45bと、昇降シリンダ45bによる昇降をガイドする一対のリニアガイド45cと、これらを支持するベース部45dと、を有している(図5(b)参照)。昇降機構45は、吸引用の密接位置と、フラッシング用の離間位置と、ヘッドユニット19の交換やキャップユニット44の消耗品交換(メンテナンス)用の交換位置との間でキャップユニット44を3段階に昇降させる。
【0029】
図6に示すように、各吸引流路系46は、各キャップユニット44に連なるキャップ側流路51と、キャップ側流路51に連なるタンク側流路53と、から構成されている。キャップ側流路51は、12個のヘッドキャップ44aに接続され、機能液の色別に合流して計6本になり、その各下流端で一次マニホールド52に接続されている。タンク側流路53は、上流端を一次マニホールド52に接続し、2つの圧力水準に対応した各二次マニホールド54を介して、各廃液タンク55に接続されている。
【0030】
吸引機構47の廃液タンク55は、高圧(第1水準)で使用する第1廃液タンク55aと、低圧(第2水準)で使用する第2廃液タンク55bとで構成されている。さらに、第2廃液タンク55bには、上記したフラッシングユニット21が、フラッシング流路56を介して接続されている。また、エジェクター58は、圧縮エアー供給設備48から一次側に圧縮エアーを導入すると共に、二次側に連通流路57を介して接続した廃液タンク55から、排気設備49にエアーを排気することで連通流路57内を減圧する。
【0031】
本実施形態における液滴吐出装置1の稼動停止時には、Y軸テーブル13により13個のキャリッジユニット14が13台の吸引ユニット22の位置まで移動し、キャップユニット44を密接位置に上昇させ、全機能液滴吐出ヘッド25に対し、いわゆるキャッピングが行われる。一方、稼動開始時には、全機能液滴吐出ヘッド25に対し、キャッピングされた状態でエジェクター58を駆動して吸引処理が行なわれ(初期充填)、続いてキャリッジユニット14単位でワイピング処理が行なわれる。そして、13台のキャリッジユニット14は順次、X軸テーブル12にセットされたワーク上に移動する。
【0032】
次に、図7および図8を参照して、圧力調整弁27について説明する。圧力調整弁27は、主要部を成す調整弁本体60と、調整弁本体60の流入側に差込み接合した流入コネクター61と、調整弁本体60の流出側に差込み接合した流出コネクター62と、調整弁本体60内の気泡(エアー)を排気するためのエアー抜き機構63(エアー抜き手段)と、を備えている。そして、流入コネクター61には、サブタンク41に連なる1次側チューブ43aが接続され、他方、流出コネクター62には、機能液滴吐出ヘッド25に連なる2次側チューブ43bが接続されている。
【0033】
調整弁本体60は、略円板状で、かつ前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブハウジング64と、バルブハウジング64と共に1次室67を画成する蓋体65と、バルブハウジング64に受圧膜体84(ダイヤフラム)を固定することでバルブハウジング64と共に2次室68を画成するドーナツ状の膜体押え部材66と、で構成されており、バルブハウジング64の中心部には、1次室67および2次室68を連通する調整弁連通流路69が形成されている。なお、バルブハウジング64、蓋体65および膜体押え部材66は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。
【0034】
蓋体65および膜体押え部材66は、円形の受圧膜体84の中心を通る軸線と同心円となる外形を有しており、バルブハウジング64を前後方向から挟み込むようにネジ止めされている(図示省略)。また、蓋体65および膜体押え部材66は、バルブハウジング64に対し、各々シールリングSを挟込み込んで相互に固定され、1次室67および2次室68を液密に構成している。
【0035】
1次室67は、受圧膜体84と同心となる略円柱形状に形成され、1次室67の上部には、1次室67から径方向斜めに延びる流入ポート71が形成されている。また、1次室67の中心部には、調整弁連通流路69が開口している。そして、調整弁連通流路69の1次室67側には、調整弁連通流路69の開口周縁部を弁座として、調整弁連通流路69を開閉する弁体70が臨んでいる。また、弁体70は、これと蓋体65との間に介設した弁体付勢ばね72によって、閉弁方向(2次室68側)に弱い力で付勢されている。
【0036】
図8(a)に示すように、流入ポート71は、流入コネクター61が差込み接合される流入接合受け部73と、流入接合受け部73に連なるフィルター75を収容するフィルター収容部74と、フィルター収容部74と1次室67とを連通する流入流路部76と、から構成されている。流入接合受け部73には、流入コネクター61の流入接続口部61aが差し込み接合される。フィルター収容部74には、フィルター75が、流入コネクター61との間に介設した押えばね77に付勢された状態で収容されている。
【0037】
2次室68は、受圧膜体84が膜体押え部材66によりバルブハウジング64に取り付けられ、バルブハウジング64に凹型形成した内面壁68aと受圧膜体84とによって、全体として受圧膜体84を底面とする円錐台形状に形成されている。すなわち、内面壁68aは、テーパー部位68bを有する有底すり鉢状に形成されている。
【0038】
2次室68の下部には、2次室68から真下に延びる流出ポート81(の流出流路部86)が、テーパー部位68bに開口しており、他方、2次室68の上部には、2次室68から真上に延びるエアー抜きポート83(のエアー抜き流路部88)が、テーパー部位68bに開口している(いずれも図8(b)参照)。また、2次室68の中心部には、上記した調整弁連通流路69が開口しており、調整弁連通流路69の2次室68側の周縁部と受圧膜体84との間には、受圧膜体84を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね82が介設されている。
【0039】
受圧膜体84(ダイヤフラム)は、樹脂フィルムで構成した膜体本体84aと、膜体本体84aの中央部に接着した樹脂製の受圧板84bとで構成されている。受圧板84bは、膜体本体84aと同心の円板状に、且つ膜体本体84aに対し十分に小さい径に形成されており、その中央に上記の弁体70が離接するようになっている。
【0040】
図8(b)に示すように、流出ポート81は、流入ポート71と同様の形態を有しており、流出コネクター62が差込み接合される流出接合受け部85と、流出接合受け部85と2次室68とを連通する流出流路部86と、から構成されている。流出接合受け部85には、流出コネクター62の流出接続口部62aが差し込み接合される。なお、流入ポート71および流出ポート81は、機能液の流れ方向とフィルター75の有無とにおいて異なるが、接合部分の基本形態は同一である。
【0041】
エアー抜きポート83は、上記した流出ポート81とほぼ同様の形態を有しており、エアー抜き機構63が差込み接合されるエアー抜き接合受け部87と、エアー抜き接合受け部87と2次室68とを連通するエアー抜き流路部88と、から構成されている。エアー抜き接合受け部87には、エアー抜き機構63のエアー抜き接続口部92が差し込み接合される。エアー抜き流路部88は、2次室68内上部のテーパー部位68bに開口して、後方(1次室67)に向かって形成されており、前後方向、略中央でエアー抜き接合受け部87に連通している。
【0042】
この圧力調整弁27では、機能液の吐出等により2次室68の圧力が低くなると、受圧膜体84が後方(内側)に変形し、受圧板84bが弁体70を前方に押して開弁し、1次室67から2次室68に機能液が流入する。機能液の流入が進み2次室68の圧力が高まると、受圧膜体84が前方(外側)に変形し、弁体70が閉弁する。すなわち、圧力調整弁27は、大気圧と2次室68の内部圧力とのバランスにより受圧膜体84が変形することで調整弁連通流路69を開閉する。
【0043】
次に、図8および図9を参照して、エアー抜き機構63(エアー抜き手段)について詳細に説明する。エアー抜き機構63は、エアー抜きポート83に接続されるエアー抜き接続口部92を有するコネクター91と、コネクター91に連なり、2次室68内の気泡(エアー)を回収する袋状部材93と、から構成されている。
【0044】
コネクター91には、エアー抜きポート83と袋状部材93とを連通するエアー連通流路94が形成されており、エアー連通流路94には、エアー抜き弁95が介設されている。エアー連通流路94は、エアー抜き弁95の上側に接続され袋状部材93に連通する上側連通流路94aと、エアー抜き弁95の下側に接続されエアー抜きポート83に連通する下側連通流路94bと、から構成されている。
【0045】
エアー抜き弁95は、上側連通流路94aの開閉を行うエアー抜き弁体96と、エアー抜き弁体96を上方に付勢する開閉弁ばね97と、開閉弁ばね97およびエアー抜き弁体96を収容する弁室98と、から構成されている。
【0046】
エアー抜き弁体96は、耐食性に優れるステンレス製(SUS316等)で球形に形成されており、後述するテーパー状に形成された弁室98の天面に開口した上側連通流路94aの開口周縁部を弁座としてエアー抜き弁体96が離接することで上側連通流路94aが開閉される。
【0047】
弁室98は、エアー連通流路94より僅かに大径に形成されており、弁室98の底面および天面のそれぞれの中心部には、下側連通流路94bおよび上側連通流路94aが、それぞれ開口している。また、弁室98の上側は、上側連通流路94aの開口に向かってテーパー状に形成されたテーパー面99を有している。
【0048】
開閉弁ばね97は、弁室98の底面に開口した下側連通流路94bの開口周縁部を受けにして、エアー抜き弁体96を、弁座となるテーパー面99(上側連通流路94aの開口周縁部)に対して付勢している。このテーパー面99にエアー抜き弁体96が密着することでエアー連通流路94(上側連通流路94a)が封止(閉弁)される。
【0049】
袋状部材93は、ポリプロピレン等の伸縮可能な弾性部材であり、吸引ユニット22による吸引中には縮み、吸引を停止すると膨らみながら2次室68内に存するエアー(または機能液中の気泡)を回収する。また、袋状部材93は、エアー(気泡)を完全に収容するに十分な容量を持っている。なお、この吸引ユニット22による吸引は、描画前に機能液滴吐出ヘッド25に対して機能液を充填(初期充填)するときや、吐出性能検査ユニット24による検査で不良と判断されたときに行われるが、2次室68内のエアーは、初期充填のときに発生し易い。
【0050】
次に、図9を参照してエアー抜き機構63によるエアー吸引(エアー抜き)について説明する。先ず、昇降機構45を駆動して、キャップユニット44を吸引用の密接位置に上昇させ、各ヘッドキャップ44aを機能液滴吐出ヘッド25のノズル面NFに密着させる。そして、吸引機構47を駆動して、機能液供給ユニット16から圧力調整弁27を介して機能液滴吐出ヘッド25に供給された機能液を吐出ノズル36から強制的に吸引する。これにより、機能液滴吐出ヘッド25内に機能液が充填される(初期充填)。この初期充填では、同時に圧力調整弁27の2次室68内にも機能液を充填しているが、機能液の流速や流れ方の偏りに起因して、この部分にエアーが溜まる場合がある。
【0051】
本実施形態のものでは、初期充填のための吸引を行っている間には、流入ポート71から流出ポート81へと機能液が流れ続けるため、2次室68内が負圧となる。これにより、エアー抜き弁体96は、開閉弁ばね97に抗して押し下げられ開弁(全開)し、袋状部材93内のエアーが機能液と共に吸引(排出)されて袋状部材93が萎む(図9(a)参照)。
【0052】
そして、初期充填が完了すると、袋状部材93は、その弾性力により膨らみ、袋状部材93内部が2次室68内に比して負圧となり(スポイトと同じ原理)、2次室68内に残ったエアーを吸い出して回収する(図9(b)参照)。このとき、調整弁本体60の弁体付勢ばね72および膜体付勢ばね82に力が分散して作用し、且つ弁体70の弾性力により、弁体70は極めてゆっくり開閉動作する。このため、溜まったエアーが袋状部材93に回収されると共に、回収されたエアーの分だけ機能液が2次室68に流入する。
【0053】
袋状部材93が膨らみ切るとエアー抜き弁体96が閉弁し、エアーの回収が終了する(図9(c)参照)。これにより、2次室68は、エアー溜まりを生じることなく機能液で満たされ、適正な自然水頭圧を維持することができるため、安定した液滴吐出を行うことができる。なお、請求項に言う「エアー抜きシステム」とは、圧力調整弁27(エアー抜き機構63)および吸引ユニット22を指す。
【0054】
以上の構成によれば、袋状部材93は、初期充填を開始すると次第に萎んで行き、初期充填が終了すると、その弾性力により、スポイトと同様の原理で膨らみ元の形状に戻る。この際、2次室68内に貯留した少量のエアーを吸い上げることができる。これにより、エアーを吸引排気するためのエアー抜き機構63を、単純且つ小型に構成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:液滴吐出装置、16:機能液供給ユニット、22:吸引ユニット、25:機能液滴吐出ヘッド、27:圧力調整弁、63:エアー抜き機構、64:バルブハウジング、67:1次室、68:2次室、83:エアー抜きポート、84:受圧膜体、93:袋状部材、95:エアー抜き弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブハウジング内の1次室と2次室とを連通する連通流路に設けた弁体を、前記2次室の1の面を構成するダイヤフラムにより大気圧基準で開閉し、機能液供給手段から前記1次室に導入した機能液を、圧力調整して前記2次室を介して機能液滴吐出ヘッドに重力供給すると共に、前記2次室のエアーを排出するエアー抜きポートを有する圧力調整弁と、
前記エアー抜きポートに連通し、前記2次室のエアーを吸引により排出するエアー抜き手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドに密接し、前記機能液滴吐出ヘッドを介して前記機能液供給手段から機能液を吸引して、前記1次室および前記2次室に機能液を初期充填する吸引充填手段と、を備え、
前記エアー抜き手段は、弾性変形可能な袋状部材を有していることを特徴とする圧力調整弁のエアー抜きシステム。
【請求項2】
前記エアー抜き手段は、前記エアー抜きポートと前記袋状部材との間に介設したエアー抜き弁を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁のエアー抜きシステム。
【請求項3】
前記エアー抜き弁は、前記初期充填終了後に時間差を存して閉塞するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧力調整弁のエアー抜きシステム。
【請求項4】
前記エアー抜きポートは、前記2次室の上端部に連通していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧力調整弁のエアー抜きシステム。
【請求項5】
前記ダイヤフラムに面する前記2次室の他方の面は、前記ダイヤフラムの変形形態に倣ってテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の圧力調整弁のエアー抜きシステム。
【請求項6】
ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、
請求項1ないし5のいずれかに記載の圧力調整弁のエアー抜きシステムと、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−162472(P2010−162472A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6292(P2009−6292)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】