説明

圧電デバイス、電子機器、パッケージ、振動片搭載基板、及び圧電デバイスの製造方法

【課題】圧電デバイスの小型化に対応した振動片搭載基板を低コストで実現する。
【解決手段】基板40と、基板40の少なくとも一方の面に形成された低融点ガラスを含む突起部50と、突起部50の表面に形成された電極層54と、基板40に設けられ、突起部50を囲み低融点ガラスを含む環状の凸部45と、突起部50に電極が重なるように配置された圧電振動片15と、凸部45を介して基板40に接合される蓋体20と、を含むことを特徴とする圧電デバイス100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイス、電子機器、パッケージ、振動片搭載基板、及び圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスは、例えば携帯電話等の通信機器やコンピューター等の電子機器等に用いられる装置である。そして圧電デバイスは、振動片を搭載する基板(以下、「振動片搭載基板」と称する。)に圧電振動片を搭載し、蓋体を用いて気密封止して形成される。振動片搭載基板と蓋体の組み合せを、一般にパッケージと称している。そして圧電振動片は、パッケージ内おいて、振動片搭載基板が有する突起部上に、導電性接着剤を用いて片持ち式に支持されている。
【0003】
従来の振動片搭載基板及び圧電デバイスにおいて、上述の突起部は、例えば特許文献1に示すように、タングステン等の金属材料で形成されていた。具体的には、セラミック等からなる基板上にタングステンメタライズをスクリーン印刷法等で任意の領域に供給した後、焼成を行うことで形成されていた。スクリーン印刷法は、高い位置精度で材料を供給できる。したがって、かかる振動片搭載基板の製造方法によれば、圧電デバイスの小型化に対応した振動片搭載基板を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−042603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、タングステンメタライズ等の導電ペーストは、1回のスクリーン印刷で形成可能な膜厚が薄い。そのため、必要な高さを有する突起部を形成するためには、スクリーン印刷工程を略3乃至4回は繰り返す必要があった。したがって、上述の方法で形成された突起部を有する振動片搭載基板はコストが増大してしまう。そのため、従来の振動片搭載基板を用いた圧電デバイスは、コストが増大してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の圧電デバイスは、基板と、上記基板の少なくとも一方の面に形成された低融点ガラスを含む突起部と、上記突起部の表面に形成された電極層と、上記基板に設けられ、上記突起部を囲み、上記低融点ガラスを含む環状の凸部と、上記突起部に電極が重なるように配置された圧電振動片と、上記凸部を介して上記基板に接合される蓋体と、を含むことを特徴とする。
【0008】
低融点ガラスは、従来から突起部の形成材料として用いられているタングステンメタライズ等の導電ペーストに比べると、厚塗りが可能である。そのため、低融点ガラスを含む突起部は、従来の突起部に比べて少ない回数の成膜(印刷)工程で形成できる。また上述の凸部は、突起部と同時すなわち同一の工程で形成できる。したがってこのような構成であれば、圧電振動片を振動可能な状態で気密封止する圧電デバイスを、低コストで実現できる。
【0009】
[適用例2]上述の圧電デバイスを搭載したことを特徴とする電子機器。
【0010】
このような構成であれば、圧電振動片を含む圧電デバイスを必要とする電子機器を、低コストで実現できる。
【0011】
[適用例3]本適用例のパッケージは、基板と、上記基板の少なくとも一方の面に形成された低融点ガラスを含む突起部と、上記突起部の表面に形成された電極層と、上記基板に設けられ、上記突起部を囲み、上記低融点ガラスを有する環状の凸部と、該基板に上記凸部を介して接合される蓋体と、を含むことを特徴とする。
【0012】
低融点ガラスは、従来から突起部の形成材料として用いられているタングステンメタライズ等の導電ペーストに比べると、厚塗りが可能である。そのため、低融点ガラスを含む突起部は、従来の突起部に比べて少ない回数の成膜工程で形成できる。また上述の凸部は、突起部と同時すなわち同一の工程で形成できる。したがってこのような構成であれば、振動片を気密封止可能なパッケージを低コストで実現できる。
【0013】
[適用例4]本適用例の振動片搭載基板は、基板と、上記基板の少なくとも一方の面に形成された低融点ガラスを含む突起部と、上記突起部の表面に形成された電極層と、を有することを特徴とする。
【0014】
低融点ガラスは、1回の成膜工程で厚塗りが可能である。したがって、従来から用いられているタングステンメタライズ等の導電ペーストを用いる場合に比べ、厚い膜層を少ない回数の成膜工程によって形成できる。これにより、上述の突起部を低コストで形成でき、振動片搭載基板を低コストで実現できる。
【0015】
[適用例5]上述の振動片搭載基板であって、上記突起部を囲み、上記低融点ガラスを含む環状の凸部をさらに有することを特徴とする振動片搭載基板。
【0016】
上述の凸部は、突起部の形成時に同時に形成できる。そしてかかる低融点ガラスからなる凸部は、蓋体の接合に利用できる。したがってこのような構成であれば、振動片を気密封止可能な振動片搭載基板を、低コストで実現できる。
【0017】
[適用例6]本適用例の振動片搭載基板の製造方法は、基板の一方の面上の第1の領域に低融点ガラスを印刷法により供給して、該低融点ガラスからなる突起部を形成する低融点ガラス供給工程と、上記突起部の表面に導電材料からなる電極を形成する電極形成工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
印刷法によれば、低融点ガラスのような高粘度の液体材料を、高い位置精度で供給できる。そして低融点ガラスは、1回の印刷工程で、タングステンメタライズ等の導電ペーストを用いる場合に比べて厚い膜層を形成できる。したがって、このような製造方法であれば、表面に電極を有する突起部を低コストで形成でき、振動片搭載基板を低コストで製造できる。
【0019】
[適用例7]上述の振動片搭載基板の製造方法であって、上記低融点ガラス供給工程は、上記第1の領域及び上記電極を平面視で囲む環状の領域である第2の領域に低融点ガラスを供給して、上記第2の領域に凸部を形成することを特徴とする振動片搭載基板の製造方法。
【0020】
このような製造方法であれば、表面に電極を有する突起部と、該突起部を平面視で囲む環状の凸部と、を同一の工程で形成できる。そしてかかる凸部は、蓋体の接合に利用できる。したがってこのような製造方法であれば、振動片を気密封止可能な振動片搭載基板を低コストで製造できる。
【0021】
[適用例8]上述の振動片搭載基板の製造方法であって、上記電極形成工程は、上記第1の領域に導電材料を含有する液滴をインクジェット法により供給した後、該液滴を乾燥させて上記電極を形成することを特徴とする振動片搭載基板の製造方法。
【0022】
インクジェット法であれば、凹凸を有する面上の任意の領域に高い精度でインクを供給できる。したがってこのような製造方法であれば、突起部上の電極を高い精度で形成でき、高性能の振動片搭載基板を低コストで製造できる。
【0023】
[適用例9]上述の振動片搭載基板の製造方法であって、上記電極形成工程は、インクジェット法により上記第1の領域にメッキ触媒層を形成した後、該メッキ触媒層にメッキ処理を施して導電材料からなる上記電極を形成することを特徴とする振動片搭載基板の製造方法。
【0024】
インクジェット法であれば、凹凸を有する面上の任意の領域に高い精度でメッキ触媒層を形成できる。そして該メッキ触媒層にメッキ処理を施すことにより高い精度で電極を形成できる。したがってこのような製造方法であれば、突起部上の電極を高い精度で形成でき、高性能の振動片搭載基板を低コストで製造できる。
【0025】
[適用例10]上述の製造方法により製造された振動片搭載基板における上記電極上に圧電振動片を配置した後、上記凸部を介して蓋体を接合することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【0026】
このような製造方法であれば、圧電振動片が気密封止された圧電デバイスを低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態にかかる振動片搭載基板、パッケージ、及び圧電デバイスを模式的に示す図。
【図2】第2の実施形態としての、振動片搭載基板、及び圧電デバイスの製造方法を示す工程断面図。
【図3】第2の実施形態としての、振動片搭載基板、及び圧電デバイスの製造方法を示す工程断面図。
【図4】従来の圧電デバイスの一例を示す図。
【図5】第3の実施形態にかかる電子機器としての携帯電話機の外観を示す図。
【図6】第3の実施形態にかかる電子機器としての携帯電話機の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しつつ述べる。なお本発明の実施の形態は、以下の各図に示す構造、形状に限定されるものではない。また、以下の各図においては、各構成要素を図面で認識可能な程度の寸法とするため、該構成要素の縮尺を実際とは異ならせてある。
【0029】
(第1の実施形態)
第1の実施形態として、振動片搭載基板、パッケージ、及び圧電デバイスについて述べる。図1は、本実施形態にかかる振動片搭載基板10、パッケージ30、及び圧電デバイス100を模式的に示す図である。図1(a)は圧電デバイス100の平面図、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面を模式的に示す図、図1(c)は図1(a)のB−B’線における断面を模式的に示す図である。なお、図1(a)においては、蓋体20の図示を省略している。
【0030】
図1(a)〜図1(c)に示すように、本実施形態にかかる圧電デバイス100は、基板としての振動片搭載基板10と、振動片搭載基板10に搭載された振動片としての圧電振動片15と、該圧電振動片を覆う蓋体20と、を含んでいる。
ここで、各要素の定義について述べる。基板としてのセラミック基板40上に、後述する電極パッド60等を形成したものが、振動片搭載基板10である。振動片搭載基板10と蓋体20との組み合わせが、パッケージ30である。そしてパッケージ30内に圧電振動片15を固定したものが、圧電デバイス100である。後述するように、圧電デバイス100は、電子機器の構成要素等に用いられる。なお、基板の形成材料としてはセラミック以外に、ガラス、あるいは表面に絶縁層を形成した金属等を用いることができる。
【0031】
蓋体20は、セラミック、ガラスあるいはコバール等で形成されている。そして蓋体20は、振動片搭載基板10上に形成された、低融点ガラスからなる平面視で環状の凸部45により接合されている。なお、前述の低融点ガラスは、ガラス転移点温度が600℃以下のガラスを示し、例えばホウ珪酸鉛ガラスが知られているが、近年は酸化ビスマスなどを用いた鉛フリータイプが実用化されている。
ここで、凸部45が形成されている環状の領域が、第2の領域12である。なお、前述した凸部45を示す環状とは、平面視で後述の電極パッド60が形成されている領域が囲まれていればよい。本例では図示したようにセラミック基板40の外形に沿った略四角形の形状(四角環形状)をなしているが、これに限らず、例えば円形(円環形状)、四角形状以外の多角形状(多角環形状)であっても良い。
蓋体20は、図示するように外縁部の肉厚の部分と該外縁部で囲まれた肉薄の部分とを有しており、断面が凹状である。したがって、振動片搭載基板10と蓋体20とを組み合せてなるパッケージ30は、内部に収めた圧電振動片15が基板面に対して垂直方向あるいは水平方向に振動することを許容する空間を有している。そして上述したように、凸部45は環状に形成されているため、上記の空間は、内部に収めた圧電振動片15を気密封止できる。
【0032】
振動片搭載基板10上における、上記の環状の凸部45で囲まれた領域には、電極パッド60が形成されている。電極パッド60は、低融点ガラスからなる突起部50と、メッキ触媒層52を下地として該突起部を覆うように形成された導電性材料からなる電極層54と、で構成されている。ここで、突起部50が形成されている領域が、第1の領域11である。したがって第2の領域12は、第1の領域11を平面視で囲んでいる。なお後述するように、メッキ触媒層52を用いずに突起部50上に直接電極層54を形成した態様も可能である。したがって電極パッド60の構成要素は、低融点ガラスからなる突起部50と導電性材料からなる電極層54である。
【0033】
圧電振動片15は、電極パッド60上に、導電性接着剤としての銀ペースト65により接着されている。上述したように、振動片搭載基板10と蓋体20とを組み合せてなるパッケージ30内に圧電振動片15が固定されて、圧電デバイス100が構成される。
圧電振動片15には、図示しない引出電極が形成されている。圧電振動片15は、上述の引出電極が、電極層54と対向するように接着されている。したがって圧電デバイス100は、圧電振動片15の振動により得られる信号を、クロック信号として外部回路に出力できる。なお、圧電振動片15は、どのような振動形態を有する振動片であってもよい。
【0034】
本実施形態にかかる振動片搭載基板10、パッケージ30、及び圧電デバイス100の第1の特徴は、突起部50が低融点ガラスで形成されていることである。そして第2の特徴は、凸部45が、突起部50の形成材料と共通の材料で形成されていることである。かかる特徴の結果、以下に記載する効果を得ることができる。
【0035】
まず、突起部50が低融点ガラスで形成されていることは、コスト面で利点がある。後述するように、突起部50は、一般的にスクリーン印刷法等の印刷工程を複数回繰り返して形成される。ここで、低融点ガラスは粘性が高いため、タングステン等の金属ペーストに比べて厚塗りが可能である。したがって、突起部50を低融点ガラスで形成することにより印刷回数を低減でき、振動片搭載基板10、パッケージ30、及び圧電デバイス100の製造コストを低減できる。
【0036】
また、低融点ガラスは、熱膨張係数がセラミック基板の熱膨張係数に近いという利点がある。低融点ガラスの熱膨張係数は略7.5×10-6/Kであり、この数値は、セラミック基板40の熱膨張係数に近い。したがって、本実施形態にかかる振動片搭載基板10は、使用環境における温度が変化した場合における、突起部50に生じるストレスが低減されている。そのため、本実施形態にかかる振動片搭載基板10あるいはパッケージ30に圧電振動片15を加えて構成された圧電デバイス100は、温度変化が大きな環境においても、安定的に使用可能である。
【0037】
また、本実施形態にかかる振動片搭載基板10、パッケージ30、及び圧電デバイス100は、凸部45と突起部50の双方が低融点ガラスで形成されているため、凸部45と突起部50とを同一工程で形成できるという利点がある。したがってかかる観点においても低コスト化が可能である。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、振動片搭載基板10、及び圧電デバイス100の製造方法について述べる。図2及び図3は、本実施形態にかかる振動片搭載基板10、及び圧電デバイス100の製造方法を、図1(a)のB−B’線における断面を用いて示す工程断面図である。以下、工程順に述べる。
【0039】
まず、図2(a)に示すように、セラミック基板40上に、スクリーン版42を対向配置する。スクリーン版42は、セラミック基板40の一方の面上の任意の領域に低融点ガラスを配置するために用いる板状部材である。本実施形態において用いられるスクリーン版42は、将来的に突起部50が形成される第1の領域11と将来的に凸部45が形成される第2の領域12とに対応する領域に、孔が形成されている。そして、スクリーン版42を介して低融点ガラスを供給することにより、図2(b)に示すようにセラミック基板40の一方の面上に低融点ガラスを配置して、第1の領域11に突起部50を形成し、第2の領域12に凸部45を形成する。かかる、スクリーン印刷法により突起部50と凸部45とを同時に形成する工程が、低融点ガラス供給工程である。
【0040】
次に、突起部50を覆うようにメッキ触媒層52を形成する。メッキ触媒層52は、インクジェット法により形成する。すなわち、図2(c)に示すように、インクジェットヘッド70からメッキ触媒材料を含む液状体を吐出後に乾燥させて、メッキ触媒層52を形成する。メッキ触媒材料を含む液状体としては、Pd、Ni、Ag、Au、Cu、Fe、Co等の触媒作用を有する金属を含有する有機溶媒を用いることができる。
【0041】
次に、図2(d)に示すように、セラミック基板40の上記一方の面にメッキ処理を施して、メッキ触媒層52上にメッキ層を析出させて、電極層54を形成する。かかる電極層54を形成する工程が、電極形成工程である。電極層54と突起部50とにより、電極パッド60が構成される。なお、電極層54の形成材料としては、例えばAg、Ni、Au、Cu等を用いることができる。また複数(種類)の材料を積層して電極層54とすることができる。
以上の工程で、振動片搭載基板10が形成される。以下、振動片搭載基板10に圧電振動片15(図1参照)を配置して、圧電デバイス100(図1参照)を製造する。
【0042】
まず、図3(e)に示すように、電極層54上にディスペンサー71を用いて、導電性接着剤としての銀ペースト65を供給する。銀ペースト65は、銀の粉末をシリコーン樹脂などの合成樹脂中に分散させたものである。銀ペースト65は一般的にはゲル状であり、例えば略190℃で60分以上の加熱処理を施すことにより硬化させられる。
【0043】
次に、図3(f)に示すように、銀ペースト65が供給された電極層54上に圧電振動片15を、引出電極(不図示)が銀ペースト65と重なるように配置する。そして、加熱処理を施すことにより銀ペースト65を硬化させる。かかる工程により、圧電振動片15が電極パッド60上に片持ち式に、すなわち振動可能に支持される。
【0044】
次に、図3(g)に示すように、振動片搭載基板10に、凸部45を介して蓋体20を接合する。具体的には、振動片搭載基板10上に蓋体20を、該蓋体の肉厚部が凸部45と重なるように配置する。そして、押し圧を加えつつ加熱処理を施して低融点ガラスを溶融させることで、蓋体20を、凸部45を介して振動片搭載基板10に接合させる。以上の工程で、圧電デバイス100が形成される。
【0045】
本実施形態の振動片搭載基板10、及び圧電デバイス100の製造方法は、圧電振動片15を片持ち式に支持する突起部50を低融点ガラスで形成するため、以下に記載する効果を実現できる。
【0046】
まず、突起部50の形成に要する印刷の回数を低減できる。図4は、比較例として、突起部50がタングステンメタライズで形成された従来の圧電デバイスの一例を示す図である。図4(a)は圧電デバイスが完成した状態を示す図であり、図4(b)は突起部50を形成する工程を示す図である。
なお、図4においては、上記の図1〜図3に示す要素と共通する要素には同一の符号を付与している。そして、説明の記載は一部省略する。
【0047】
ここで、突起部50の高さは、少なくとも略50μm以上必要である。かかる高さ(厚さ)のパターンを、タングステンメタライズを用いたスクリーン印刷法で形成する場合、略3乃至4回の印刷工程が必要である。したがって、図4(a)に示すように、突起部50が第1の突起部50aと第2の突起部50bと第3の突起部50cとの積層構造となり、製造コストが上昇する。一方、低融点ガラスであれば、上記の高さのパターンを、1乃至2回の印刷工程で形成できる。したがって、本実施形態の振動片搭載基板10、及び圧電デバイス100の製造方法であれば、突起部50の形成工程を簡略化でき、製造コストを低減できる。
【0048】
また、本実施形態の振動片搭載基板10、及び圧電デバイス100の製造方法は、突起部50と凸部45を同時にすなわち単一の工程で形成できるという効果を有している。本実施形態の製造方法であれば、図2(a)に示すように、凸部45及び突起部50の双方に対応する孔が形成されたスクリーン版42を用いて、低融点ガラスをセラミック基板上に配置することで、突起部50と凸部45を同時に形成できる。
【0049】
一方、従来の圧電デバイスの場合、図4(b)に示すように、タングステンメタライズを用いて突起部50を形成した後、別工程として凸部45を形成する必要がある。そして、突起部50が形成されたセラミック基板40上にはスクリーン印刷工程を実施できないため、低融点ガラスの供給はディスペンサー71等を用いて行う必要がある。
本実施形態の振動片搭載基板10、及び圧電デバイス100の製造方法であれば、広い面積に一括してパターンを形成できるスクリーン印刷法により、突起部50と凸部45を同時に形成できるため、製造コストを低減できる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、上記の第1の実施形態にかかる圧電デバイス100を搭載した、電子機器としての携帯電話機200について述べる。図5は、本実施形態にかかる携帯電話機200の外観を示す図である。そして図6は、本実施形態にかかる携帯電話機200の概略構成図である。
【0051】
携帯電話機200において、送信者からの音声信号はマイクロフォン202によって電気信号に変換され、デモジュレーター・コーデック等を備える信号切替部206で変調等され、送信部208にて周波数変換等され、アンテナ212を介して基地局(不図示)に送信される。そして、基地局から送信された信号は、アンテナ212を介して受信され、受信部214にて周波数変換され、信号切替部206にて音声信号に変換されて、スピーカー204から出力される。
【0052】
このような信号制御が成される携帯電話機200の動作は、CPU(Central Processing Unit)216によって全体が制御されている。CPU216は、液晶画面やキーボード等の入出力部218や、制御プログラムや電話帳等を記憶するメモリー220をはじめ、信号の送受信を制御する切替スイッチ210の動作も制御している。そしてCPU216には、クロック信号の発信に用いるデバイスとして、第1の実施形態にかかる圧電デバイス100が接続されている。
【0053】
ここで、携帯電話機200は、近年普及に伴い低コスト化が求められている。上述したように、圧電デバイス100は、圧電振動片15の引出電極と重ねられる突起部50が低融点ガラスで形成されているため、低コスト化が図られている。したがって、かかる圧電デバイス100を搭載した携帯電話機200も、性能を低下させることなく低コスト化が達成されている。
【0054】
本発明の実施の形態は、上述の各実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0055】
(変形例1)
上述の第2の実施形態では、電極層54を、メッキ触媒層52を下地としてメッキ処理することで形成していた。しかし、電極層54の形成方法は上述の方法に限定されるものではない。例えば、インクジェット法で直接的に電極層54を形成することもできる。具体的には、突起部50上に、導電性インクを滴下後、該導電性インクを乾燥させることで電極層54を形成できる。なお、導電性インクは、銀等の金属の微粒子を有機系溶媒等に分散させて得られる液体材料である。
【符号の説明】
【0056】
10…基板としての振動片搭載基板、11…第1の領域、12…第2の領域、15…振動片としての圧電振動片、20…蓋体、30…パッケージ、40…基板としてのセラミック基板、42…スクリーン版、45…凸部、50…突起部、50a…第1の突起部、50b…第2の突起部、50c…第3の突起部、52…メッキ触媒層、54…電極層、60…電極パッド、65…銀ペースト、70…インクジェットヘッド、71…ディスペンサー、100…圧電デバイス、200…電子機器としての携帯電話機、202…マイクロフォン、204…スピーカー、206…信号切替部、208…送信部、210…切替スイッチ、212…アンテナ、214…受信部、216…CPU、218…入出力部、220…メモリー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に形成された低融点ガラスを含む突起部と、
前記突起部の表面に形成された電極層と、
前記基板に設けられ、前記突起部を囲み、前記低融点ガラスを含む環状の凸部と、
前記突起部に電極が重なるように配置された圧電振動片と、
前記凸部を介して前記基板に接合される蓋体と、
を含むことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスを搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に形成された低融点ガラスを含む突起部と、
前記突起部の表面に形成された電極層と、
前記基板に設けられ、前記突起部を囲み、前記低融点ガラスを有する環状の凸部と、
該基板に前記凸部を介して接合される蓋体と、
を含むことを特徴とするパッケージ。
【請求項4】
基板と、前記基板の少なくとも一方の面に形成された低融点ガラスを含む突起部と、前記突起部の表面に形成された電極層と、を有することを特徴とする振動片搭載基板。
【請求項5】
請求項4に記載の振動片搭載基板であって、
前記突起部を囲み、前記低融点ガラスを含む環状の凸部をさらに有することを特徴とする振動片搭載基板。
【請求項6】
基板の一方の面上の第1の領域に低融点ガラスを印刷法により供給して、該低融点ガラスからなる突起部を形成する低融点ガラス供給工程と、
前記突起部の表面に導電材料からなる電極を形成する電極形成工程と、
を有することを特徴とする振動片搭載基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の振動片搭載基板の製造方法であって、
前記低融点ガラス供給工程は、前記第1の領域及び前記電極を平面視で囲む環状の領域である第2の領域に低融点ガラスを供給して、前記第2の領域に凸部を形成することを特徴とする振動片搭載基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の振動片搭載基板の製造方法であって、
前記電極形成工程は、前記第1の領域に導電材料を含有する液滴をインクジェット法により供給した後、該液滴を乾燥させて前記電極を形成することを特徴とする振動片搭載基板の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の振動片搭載基板の製造方法であって、
前記電極形成工程は、インクジェット法により前記第1の領域にメッキ触媒層を形成した後、該メッキ触媒層にメッキ処理を施して導電材料からなる前記電極を形成することを特徴とする振動片搭載基板の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造された振動片搭載基板における前記電極上に圧電振動片を配置した後、前記凸部を介して蓋体を接合することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−244564(P2012−244564A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115480(P2011−115480)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】