説明

圧電デバイスの製造方法及び圧電デバイス

【課題】2段の底面及び貫通孔を有する圧電デバイスの簡略化された製造方法を提供する。
【解決手段】圧電デバイスの製造方法は、貫通孔(143)の下面に対応した第1貫通領域及び第1凹み部(123a)に対応した第1凹み領域を露光する第1露光工程と、第1貫通領域と第1凹み領域との第1耐蝕膜をエッチングする第1耐蝕膜エッチング工程と、第1距離だけウエットエッチングする第1ウエットエッチング工程と、第2耐蝕膜(152)及びフォトレジストを形成する第2耐蝕膜形成工程と、貫通孔の上面に対応した第2貫通領域及び第2凹み部の上面に対応した第2凹み領域を露光する第2露光工程と、第2貫通領域と第2凹み領域との第2耐蝕膜をエッチングする第2耐蝕膜エッチング工程と、第2距離だけウエットエッチングする第2ウエットエッチング工程(S209)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2段の底面及びキャスタレーションが形成されたベース板を用いた圧電デバイスの製造方法及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の振動数で振動する圧電振動片がベース板及びリッド板により囲まれたキャビティに載置される圧電デバイスが知られている。このような圧電デバイスは、複数のベース板及びリッド板がウエハ上に形成されることにより一度に複数の圧電デバイスを形成することができる。ウエハに形成される各ベース板には圧電デバイスのキャビティとなる凹み部がウエットエッチングされて形成される。この凹み部には、圧電振動片の振動する領域が凹み部の底面に接触しないように、2段の底面が形成される場合がある。1段目の底面には圧電振動片が載置される。また、2段目の底面は1段目の底面から深く形成され、2段目の底面の上方に圧電振動片の振動する領域が配置されることにより圧電振動片の振動する領域とベース板とが接触しなくなる。またこのような圧電デバイスには、圧電振動片に形成される励振電極と、圧電デバイスを実装するための外部電極とを電気的に接続するための電極が形成される貫通孔又はキャスタレーションが形成される。
【0003】
例えば特許文献1には、2段の底面及び貫通孔が形成された圧電デバイスの製造方法が開示されている。特許文献1に開示された圧電デバイスの製造方法では、1段目の底面、2段目の底面及び貫通孔を形成するためのエッチングがそれぞれ行われることによって圧電デバイスが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、圧電デバイスの製造工程は製品の価格低減のために更に簡略化されることが望まれている。例えば、特許文献1に記載の圧電デバイスは、1段目の底面、2段目の底面及び貫通孔を形成するためのエッチングがそれぞれ行われており、3回のウエットエッチングが行われている。しかし、圧電デバイスの製造工程を簡略化するためには更にウエットエッチングの回数が減らされることが望ましい。
【0006】
そこで本発明は、2段の底面及びキャスタレーションが形成された圧電デバイスの簡略化された製造方法及びこの製造方法により製造された圧電デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片を収納する第1凹み部と第1凹み部よりさらに凹んで形成された第2凹み部とを有するベース板とそのベース板の周囲に複数の貫通孔とが形成されたベースウエハを使って圧電デバイスを製造する製造方法であり、ベースウエハがガラス又は圧電材からなりベースウエハの下面とその下面の反対側の上面とに第1耐蝕膜を形成し第1耐蝕膜上にフォトレジストを形成する第1耐蝕膜形成工程と、第1耐蝕膜上のフォトレジストの貫通孔の下面に対応した第1貫通領域及び第1凹み部の上面に対応した第1凹み領域を露光する第1露光工程と、第1貫通領域と第1凹み領域との第1耐蝕膜をエッチングする第1耐蝕膜エッチング工程と、第1耐蝕膜エッチング工程後にガラス又は圧電材をエッチング液につけてベースウエハの下面と上面とから第1距離だけウエットエッチングする第1ウエットエッチング工程と、第1ウエットエッチング工程後に上面の第1耐蝕膜及びフォトレジストを除去し上面に第2耐蝕膜を形成し第2耐蝕膜上にフォトレジストを形成する第2耐蝕膜形成工程と、第2耐蝕膜上のフォトレジストの貫通孔の上面に対応した第2貫通領域及び第2凹み部の上面に対応した第2凹み領域を露光する第2露光工程と、第2貫通領域と第2凹み領域との第2耐蝕膜をエッチングする第2耐蝕膜エッチング工程と、第2耐蝕膜エッチング工程後にガラス又は圧電材をエッチング液につけてベースウエハを第2距離だけウエットエッチングする第2ウエットエッチング工程と、を備える。
【0008】
第2観点の圧電デバイスの製造方法は、第1観点において、第2耐蝕膜形成工程においてさらに下面の第1耐蝕膜及びフォトレジストが除去され、下面にも第2耐蝕膜及びフォトレジストが形成される。
【0009】
第3観点の圧電デバイスの製造方法は、第1観点及び第2観点において、第2ウエットエッチング工程後に、下面側から研磨材を吹き付けるサンドブラスト工程を備える。
【0010】
第4観点の圧電デバイスの製造方法は、第3観点において、サンドブラスト工程後に、下面に実装用の外部電極と貫通孔に側面電極とを形成する電極形成工程を備える。
【0011】
第5観点の圧電デバイスは、中央領域に形成された一対の励振電極と一対の励振電極から周辺領域に引き出された一対の引出電極とを有する圧電振動片と、矩形形状の平板からなるリッド板と、一対の外部電極が形成された下面とリッド板と接合する上面と上面から凹んで圧電振動片を収納する第1凹み部と第1凹み部からさらに凹んで形成された第2凹み部とを有する矩形形状のベース板と、を備え、ベース板が矩形形状の辺に形成され下面と上面とを結ぶ側面から内側にくぼんだ一対のキャスタレーションを有し、キャスタレーションが下面から上面に形成された第1面と上面から下面に形成された第2面と下面と上面との中間に形成され第1面及び第2面よりもベース板の外側に突き出た突起面とからなる。
【0012】
第6観点の圧電デバイスは、第5観点において、第1凹み部が第1距離の深さであり、第2凹み部が第2距離の深さであり、第1面が第1距離の深さであり、第2面が第2距離の深さである。
【0013】
第7観点の圧電デバイスは、第5観点において、第1凹み部が第1距離の深さであり、第2凹み部が第2距離の深さであり、第1面が第1距離と第2距離とを合わせた第3距離の深さであり、第2面が第2距離の深さである。
【0014】
第8観点の圧電デバイスは、第5観点から第7観点において、ベース板の前記第1凹み部が一対の引出電極と電気的に接続する一対の接続電極を含み、一対のキャスタレーションが一対の外部電極から一対の接続電極までを電気的に接続する一対の側面電極を含む。
【0015】
第9観点の圧電デバイスは、第8観点において、圧電振動片が矩形形状であり、一対の引出電極が中央領域から向かい合う二辺にそれぞれ引き出されており、一対の引出電極と一対の接続電極とが導電性接着剤を介して電気的に接続されている。
【0016】
第10観点の圧電デバイスは、第8観点において、圧電振動片が矩形形状であり、一対の引出電極が中央領域から一辺にそれぞれ引き出されており、一対の引出電極と一対の接続電極とが導電性接着剤を介して電気的に接続されている。
【0017】
第11観点の圧電デバイスは、第5観点から第10観点において、リッド板がガラス、圧電材又はセラミックからなり、ベース板がガラス又は圧電材からなり、リッド板とベース板とがガラス接合材で接合される。
【0018】
第12観点の圧電デバイスは、第5観点から第11観点において、キャスタレーションの下面から上面方向への断面形状が、第1面及び第2面がベース板側に凹んだ曲面であり、突起面が直線である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2段の底面及び貫通孔を有するベース板を用い、圧電デバイスの簡略化された製造方法で製造することができる。またこの製造方法により製造された圧電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】圧電デバイス100の分解斜視図である。
【図2】(a)は、図1のA−A断面図である。 (b)は、圧電振動片130の+Y’軸側の平面図である。 (c)は、圧電振動片130の−Y’軸側の平面図である。
【図3】(a)は、ベース板120の+Y’軸側の電極が示された平面図である。 (b)は、ベース板120の−Y’軸側の電極が示された平面図である。 (c)は、図2(a)の点線102で囲まれた領域のベース板120の拡大断面図である。
【図4】圧電デバイス100の作製方法を示したフローチャートである。
【図5】ベースウエハW120の平面図である。
【図6】ベースウエハW120の作製方法を示したフローチャートである。
【図7】ベースウエハW120の作製方法を示したフローチャートである。
【図8】ベースウエハW120の作製方法を示したフローチャートである。
【図9】圧電デバイス200の分解斜視図である。
【図10】図9のC−C断面図である。
【図11】(a)は、ベース板220の+Y’軸側の電極が示された平面図である。 (b)は、ベース板220の−Y’軸側の電極が示された平面図である。 (c)は、図10の点線202で囲まれた領域のベース板220の拡大断面図である。
【図12】ベースウエハW220の平面図である。
【図13】ベースウエハW220の作製方法を示したフローチャートである
【図14】ベースウエハW220の作製方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0022】
(第1実施形態)
<圧電デバイス100の構成>
図1は、圧電デバイス100の分解斜視図である。圧電デバイス100は表面実装型の圧電デバイスであり、プリント基板等に実装されて使用される。圧電デバイス100は主に、リッド板110と、ベース板120と、圧電振動片130とにより構成されている。リッド板110は例えばセラミック、ガラス又は圧電材等により形成され、ベース板120はガラス等により形成される。また、圧電振動片130には例えばATカットの水晶材が用いられる。ATカットの水晶材は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶材の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、圧電デバイス100において圧電デバイス100の長辺方向をX軸方向、圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0023】
ベース板120はX軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されている。ベース板120の−Y’軸側の面である下面121には、プリント基板等にハンダを介して電気的に接続されるための電極である外部電極125、及び圧電デバイス100に帯電した静電気等を除去するためのアース端子126が形成されている。ベース板120の+Y’軸側の面である上面122には接合材140が形成され、リッド板110と接合される。また、ベース板120には上面122から−Y’軸方向に凹んで形成される凹み部123が形成されている。凹み部123には圧電振動片130を載置するための載置部124が形成されており、載置部124の+Y’軸側の面には接続電極128が形成されている。また、ベース板120の四隅の側面にはキャスタレーション127が形成されている。キャスタレーション127を構成する側面は、下面121から上面122の方向に向かって形成される第1面171と、上面122から下面121の方向に向かって形成される第2面172と、第1面171と第2面172との間に形成されベース板120の外側に突き出た突起面173と、により形成されている。また、各キャスタレーション127の側面である第1面171、第2面172及び突起面173には側面電極129が形成されている。
【0024】
リッド板110は、X軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されており、ベース板120の上面122に接合材140を介して接合される。また、リッド板110がベース板120に接合されることによりベース板120の凹み部123が密閉され、圧電デバイス100の内部にキャビティ101(図2(a)参照)が形成される。
【0025】
圧電振動片130は、X軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されている。圧電振動片130の+Y’軸側及び−Y’軸側の面の中央領域には、それぞれ励振電極131が形成されている。また、各励振電極131からは引出電極132が引き出されている。+Y’軸側の面に形成されている励振電極131から引き出されている引出電極132は圧電振動片130の+Y’軸側の−X軸側の辺沿いに形成され、さらに圧電振動片130の−X軸側の側面に形成される引出電極132aを介して−Y’軸側の面の−X軸側の辺沿いに形成されている。同様に、−Y’軸側の面に形成されている励振電極131から引き出されている引出電極132は圧電振動片130の−Y’軸側の+X軸側の辺沿いに形成され、さらに圧電振動片130の+X軸側の側面に形成される引出電極132aを介して+Y’軸側の面の+X軸側の辺沿いに形成されている。圧電振動片130は、ベース板120の接続電極128と引出電極132とが導電性接着剤141(図2参照)を介して接合されることにより、励振電極131と外部電極125とが電気的に接続される。
【0026】
図2(a)は、図1のA−A断面図である。圧電デバイス100は、ベース板120の上面122とリッド板110とが接合材140を介して接合されることによりベース部120の凹み部123(図1参照)がリッド板110及び接合材140により封止されてキャビティ101が形成される。接合材140には、例えば融点が500度以下のガラス接合材である低融点ガラス及びポリイミド樹脂等の樹脂系接合材などが用いられる。またキャビティ101には、圧電振動片130が引出電極132と接続電極128とが導電性接着剤141を介して接合されて配置されている。キャビティ101を形成する凹み部123は、後述される第1ウエットエッチング工程(図7のステップS205参照)により形成される第1凹み部123aと、後述される第2ウエットエッチング工程(図8のステップS209参照)により形成される第2凹み部123bとにより構成されている。第1凹み部123aは凹み部123のベース板120の上面122から載置部124の+Y’軸側の面までの空間であり、第2凹み部123bは凹み部123のベース板120の載置部124の+Y’軸側の面より−Y’軸側の空間である。圧電振動片130は第2凹み部123bの+Y’軸方向に圧電振動片130の励振電極131がくるように、第1凹み部123aに配置されている。
【0027】
ベース板120は、−Y’軸側の面である下面121の表面及び外部電極125の表面が、例えば上面122等のベース板120の他の面よりも粗く形成されている。ベース板120のキャスタレーション127の第1面171及び第2面172はそれぞれY’軸方向の断面でベース板120側に凹んだ曲線を有する曲面であり、突起部173はY’軸方向の断面では直線状になるように形成されている。一方、キャスタレーション127の第1面171、第2面172及び突起面173は、X−Z’平面内では、曲線を有する面として形成されている(図1参照)。
【0028】
図2(b)は、圧電振動片130の+Y’軸側の面の平面図である。圧電振動片130は、X軸方向に長辺、Z’軸方向に短辺を有する矩形形状の平面を有している。圧電振動片130の+Y’軸側の面の中央領域には励振電極131が形成されており、さらに励振電極131からは−X軸側の辺に引出電極132が引き出されている。−X軸側の辺に引き出された引出電極132は圧電振動片130の−X軸側の辺に沿って形成されており、さらに圧電振動片130の−X軸側の側面に形成されている引出電極132aを介して圧電振動片130の−Y’軸側の面に引き出されている。また、圧電振動片130の+Y’軸側の面の+X軸側の辺には、−Y’軸側の励振電極131から引き出された引出電極132が+X軸側の辺に沿って形成されている。
【0029】
図2(c)は、圧電振動片130の−Y’軸側の面の平面図である。圧電振動片130の−Y’軸側の面の中央領域には励振電極131が形成されており、さらに励振電極131からは+X軸側の辺に引出電極132が引き出されている。+X軸側の辺に引き出された引出電極132は圧電振動片130の+X軸側の辺に沿って形成されており、さらに圧電振動片130の+X軸側の側面に形成されている引出電極132aを介して圧電振動片130の+Y’軸側の面に引き出されている。また、圧電振動片130の−Y’軸側の面の−X軸側の辺には、+Y’軸側の励振電極131から引き出された引出電極132が−X軸側の辺に沿って形成されている。
【0030】
図3(a)は、ベース板120の+Y’軸側の電極が示された平面図である。ベース板120の+Y’軸側の面には凹み部123が形成されており、凹み部123を囲むように上面122が形成されている。また、凹み部123の+X軸側の−Z’軸側、及び−X軸側の+Z’軸側には載置部124が形成されており、載置部124の+Y’軸側の面には接続電極128が形成されている。一方、ベース板120の四隅にはそれぞれキャスタレーション127が形成されている。各キャスタレーション127のX−Z’平面における形状はベース板120の四隅からX軸方向及びZ’軸方向に伸びたL字型に形成されており、キャスタレーション127には側面電極129が形成されている。凹み部123に形成されている各接続電極128は、側面電極129を介して−Y’軸側の面に形成されている外部電極125(図3(b)参照)に電気的に接続されている。
【0031】
図3(b)は、ベース板120の−Y’軸側の電極が示された平面図である。図3(b)では、ベース板120の−Y’軸側に形成された電極が、+Y’軸側から−Y’軸方向にベース板120を透過して見る形で示されている。ベース板120の−Y’軸側の面の+X軸側の−Z’軸側、及び−X軸側の+Z’軸側には外部電極125が形成されている。各外部電極125は、側面電極129を介して+Y’軸側の面に形成されている接続電極128に電気的に接続されている。また、−Y’軸側の面の+X軸側の+Z’軸側、及び−X軸側の−Z’軸側にはアース端子126が形成されている。
【0032】
図3(c)は、図2(a)の点線102で囲まれた領域のベース板120の拡大断面図である。図3(c)では、ベース板120とともにプリント基板145及びハンダ144が示されている。ベース板120に形成されるキャスタレーション127は、第1面171、第2面172及び突起面173により形成されている。またベース板120は、第1凹み部123aのY’軸方向の深さが第1距離HA、第2凹み部123bのY’軸方向の深さが第2距離HB、第2凹み部123bと下面121との間のベース板120の厚さが第5距離HEに形成されており、第1面171のY’軸方向の深さが第3距離HC、第2面172の深さが第2距離HB、突起面173の深さが第4距離HDに形成されている。ベース板120では、第3距離HCは第1距離HAと第2距離HBとの合計の距離であり、第5距離HEは第2距離HBと第4距離HDとの合計の距離である。これらの各距離は、例えば、第1距離HAが200μm、第2距離HBが50μm、第3距離HCが250μm、第4距離HDが100μm、第5距離HEが150μmとして形成される。また、第1面171のX軸方向の幅LCは、第2面172のX軸方向の幅LBよりも大きく形成されている。以下の説明に於いても、第1面、第2面、及び貫通孔のX−Z’平面の大きさを表すために、第1面、第2面、及び貫通孔の説明に関してX軸方向の幅を用いて説明する。
【0033】
圧電デバイス100では第1面171の幅LCが広く形成されているため、圧電デバイス100がハンダ144を介してプリント基板145に実装される場合に、ハンダ144がベース板120の上面122まで達し難くなっている。そのため、ハンダ144がベース板120の上面122に形成される接合材140に影響を及ぼすことが無く好ましい。また、第2面172の幅LBが小さく形成されることにより上面122の広さを広くとることができ、接合材140を形成する領域を広く取ることができるため好ましい。さらに、圧電デバイス100では、外部電極125の表面が粗く形成されていることにより外部電極125の表面積が広くなっている。すなわち、外部電極125とハンダ144とが接合される面積が広くなることによりハンダ144と外部電極125との接着強度が強くなり好ましい。
【0034】
<圧電デバイス100の作製方法>
図4は、圧電デバイス100の作製方法を示したフローチャートである。以下、図4を参照して圧電デバイス100の作製方法を説明する。
【0035】
ステップS101では、圧電振動片130が用意される。圧電振動片130は、図1などに示されるように平板の矩形形状に形成され、励振電極131及び引出電極132が形成されている。
【0036】
ステップS102では、ベースウエハW120が用意される。ベースウエハW120には複数のベース板120が形成されている。以下、図5を参照してベースウエハW120について説明し、図6から図8を用いてベースウエハW120の作製方法を説明する。
【0037】
図5は、ベースウエハW120の平面図である。ベースウエハW120には、複数のベース板120が形成されている。また、図5には、後述のステップS106においてウエハが切断される線であるスクライブライン142が二点鎖線で示されている。ベースウエハW120に形成される各ベース板120は、このスクライブライン142によって囲まれて示されている。また、X軸方向に伸びるスクライブライン142とZ’軸方向に伸びるスクライブライン142とが交差する位置には、ベースウエハW120を貫通する貫通孔143が形成されている。貫通孔143の平面形状は、角が丸く形成されX軸方向及びZ’軸方向に伸びた十字型に形成されている。また貫通孔143は、後述のステップS106でウエハが各ベース板120に切断された後に各ベース板120のキャスタレーション127となる。各ベース板120には凹み部123及び載置部124が形成されており、載置部124には接続電極128が形成されている。また、ベースウエハW120の−Y’軸側の面には外部電極125及びアース端子126(図3(b)参照)が形成され、外部電極125と接続電極128とは貫通孔143に形成される側面電極129等を介して電気的に接続されている。
【0038】
図6から図8は、ベースウエハW120の作製方法を示したフローチャートである。図6から図8に示された各ステップの右横には各ステップを説明するための図が示されている。図6から図8に示される各ステップを説明するための図は、図5に示されたベースウエハW120のB−B断面に相当する断面図である。以下に図6から図8を用いてベースウエハW120の作製方法を説明する。
【0039】
図6のステップS201では、ガラスにより形成されたウエハが用意される。図6(a)にはガラスにより形成されたベースウエハW120の断面図が示されている。ステップS201において用意されるウエハは、図6(a)に示されるように、+Y’軸側及び−Y’軸側の面が平面状に形成された平板である。
【0040】
ステップS202では、ベースウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の両面に第1耐蝕膜及びフォトレジストが形成される。ステップS202は第1耐蝕膜形成工程である。図6(b)には第1耐蝕膜150及びフォトレジスト151が形成されたベースウエハW120の断面図が示されている。図6(b)に示されるように、ベースウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の面に第1耐蝕膜150が形成され、第1耐蝕膜150の表面にフォトレジスト151が形成される。第1耐蝕膜150は、ベースウエハW120に金属膜をスパッタリングもしくは蒸着などの手法により形成されることにより形成される。第1耐蝕膜150は、例えばベースウエハW120に下地としてニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)又はニッケル・タングステン(NiW)等の膜を形成し、下地の上に金(Au)及び銀(Ag)等を成膜することにより形成される。フォトレジスト151は、第1耐蝕膜150の表面にスピンコートなどの手法で均一に塗布される。
【0041】
ステップS203では、フォトレジスト151が露光され現像される。ステップS203は、第1露光工程である。図6(c)には、フォトレジスト151が露光及び現像されたベースウエハW120の断面図が示されている。ステップS203でフォトレジスト151が露光され現像される箇所は、ベースウエハW120の+Y’軸側の面の第1凹み部123a(図2(a)参照)に対応した第1凹み領域160、及び−Y’軸側の面の貫通孔143に対応した第1貫通領域161である。ベースウエハW120の基材がガラスである場合は、ベースウエハW120のウエットエッチングによってエッチングされる領域が広がるため、第1凹み領域160及び第1貫通領域161は第1凹み部123a及び貫通孔143の広さよりも狭く形成される。また、第1貫通領域161のX軸方向の幅をWAとすると、幅WAは、貫通孔143の大きさが大きくなりすぎないように小さく形成されることが望ましい。
【0042】
ステップS204では、第1耐蝕膜150がエッチングされる。ステップS204は、第1耐蝕膜エッチング工程である。図6(d)には、第1耐蝕膜150がエッチングされたベースウエハW120の断面図が示されている。ステップS204では、ステップS203でフォトレジスト151が露光及び現像された第1凹み領域160及び第1貫通領域161の第1耐蝕膜150がエッチングにより取り除かれる。
【0043】
図7のステップS205では、ベースウエハW120がウエットエッチングされる。ステップS205は、第1ウエットエッチング工程である。図7(a)には、ガラスがエッチングされたベースウエハW120の断面図が示されている。ステップS205では、第1凹み領域160及び第1貫通領域161のガラスがエッチング液につけられることにより、第1凹み領域160及び第1貫通領域161の深さが第1距離HAとなるようにウエットエッチングされる。ガラスのウエットエッチングでは第1耐蝕膜150の下方もエッチングされるため、例えば、第1貫通領域161でエッチングされるガラスのX軸方向の幅WBは、第1貫通領域161のX軸方向の幅WAよりも広くなる。
【0044】
ステップS206では、ベースウエハW120の+Y’軸側の面の第1耐蝕膜150及びフォトレジスト151が除去された後に、再びベースウエハW120の+Y’軸側の面に第2耐蝕膜152が形成され、第2耐蝕膜152の表面にフォトレジスト151が形成される。ステップS206は、第2耐蝕膜形成工程である。図7(b)には、+Y’軸側の面に第2耐蝕膜152及びフォトレジスト151が形成されたベースウエハW120の断面図が示されている。第2耐蝕膜152及びフォトレジスト151は、ベースウエハW120の+Y’軸側の面の全面に形成される。
【0045】
ステップS207では、フォトレジスト151が露光され、現像される。ステップS207は、第2露光工程である。図7(c)には、+Y’軸側の面のフォトレジスト151が露光され現像されたベースウエハW120の断面図が示されている。ステップS207で露光され現像されるフォトレジスト151の箇所は、第2凹み部123b(図2(a)参照)に対応した第2凹み領域162、及び+Y’軸側の面の貫通孔143に対応した第2貫通領域163である。第1凹み領域160及び第1貫通領域161と同様に、ベースウエハW120はウエットエッチングによってエッチングされる領域が広がるため、第2凹み領域162及び第2貫通領域163は第2凹み部123b及び貫通孔143の広さよりも狭く形成される。また、第2貫通領域163のX軸方向の幅をWCとすると、幅WCは第1貫通領域162の幅WAに同程度に小さく形成される。
【0046】
ステップS208では、第2耐蝕膜152がエッチングされる。ステップS208は第2耐蝕膜エッチング工程である。図7(d)には、第2耐蝕膜152がエッチングされたベースウエハW120の断面図が示されている。ステップS208では、第2凹み領域162及び第2貫通領域163の第2耐蝕膜152がエッチングされて除去される。
【0047】
図8のステップS209では、ベースウエハW120がウエットエッチングされる。ステップS209は、第2ウエットエッチング工程である。図8(a)には、ガラスがウエットエッチングされたベースウエハW120の断面図が示されている。ステップS209では、第2凹み領域162、第1貫通領域161及び第2貫通領域163のガラスがエッチング液につけられることにより、第2凹み領域162及び第2貫通領域163の深さが第2距離HBとなるようにウエットエッチングされ、また、第1貫通領域161はさらに第2距離HBだけエッチングされて合計の深さが第3距離HCとなるようにウエットエッチングされる。ウエットエッチングの結果、第2凹み領域162におけるY’軸方向のベースウエハW120の厚さは第5距離HEに形成され、第2貫通領域163でエッチングされるガラスのX軸方向の幅はWDとなり、第1貫通領域161でエッチングされるガラスのX軸方向の幅はWEとなる。このとき、幅WEは幅WDよりも大きくなっている。
【0048】
ステップS210では、第1耐蝕膜150、第2耐蝕膜152及びフォトレジスト151が除去される。図8(b)には、第1耐蝕膜150、第2耐蝕膜152及びフォトレジスト151が除去されたベースウエハW120の断面図が示されている。図8(b)におけるベースウエハW120は、各ベース板120に第1凹み部123a及び第2凹み部123bが形成されている。また、貫通孔143が形成される位置のガラスの厚さは第4距離HDとなっている。
【0049】
ステップS211では、サンドブラストにより貫通孔143が形成される。ステップS211は、サンドブラスト工程である。図8(c)は、サンドブラストにより貫通孔143が形成されたベースウエハW120の断面図である。ステップS211では、ベースウエハW120の−Y’軸側の面の全面に研磨材を吹き付けるサンドブラストにより、貫通孔143を貫通させ、各ベース板120の下面121の粗面加工が行われる。
【0050】
ステップS212では、電極が形成される。ステップS212は、電極形成工程である。図8(d)は、電極が形成されたベースウエハW120の断面図である。電極は、各ベース板120の下面に外部電極125及びアース端子126が形成され、載置部124に接続電極128が形成され、貫通孔143に側面電極129が形成される。また、外部電極125と接続電極128とが電気的に接続されるように上面122の一部にも電極が形成される。これらの電極は、例えばガラスの表面にクロム(Cr)層が形成され、クロム層の表面に金(Au)層が蒸着されることにより形成される。また、各ベース板120の下面121は粗面状に形成されているため、外部電極125の表面も粗面状に形成される。
【0051】
図4に戻って、ステップS103では、リッドウエハが用意される。リッドウエハは、+Y’軸側及び−Y’軸側の面が平面状に形成されており、複数のリッド板110を含んでいる。リッドウエハには無加工のままのベアウエハを用いることができる。
【0052】
ステップS104では、ベースウエハW120に圧電振動片130が載置される。圧電振動片130は、ベースウエハW120に形成される各ベース板120の載置部124に、引出電極132と接続電極128とが導電性接着剤141を介して接合されることにより載置される。これにより、圧電振動片130の励振電極131とベース板120の外部電極125とが電気的に接続される。
【0053】
ステップS105では、接合材140によりベースウエハW120とリッドウエハとが接合される。リッド板110は平板であるため、ベース板120とリッド板110とのこまかい位置合わせを行う必要が無い、そのため、このステップS105ではウエハ同士のこまかいアライメント調整を行わなくても良い。
【0054】
ステップS106では、ウエハがダイシングにより切断される。ウエハの切断は、スクライブライン142(図5参照)に沿って行われ、ウエハに形成された各圧電デバイス100が個別に分断される。
【0055】
上記に示した圧電デバイス100の作製方法では、第1ウエットエッチング工程(図7のステップS205)及び第2ウエットエッチング工程(図8のステップS209)の2回のウエットエッチングにより、貫通孔143、第1凹み部123a及び第2凹み部123bが形成されている。そのため、従来の方法よりもウエットエッチングの回数を減らすことができており好ましい。また、リッドウエハに平板のベアウエハを用いることができるため、リッドウエハの加工工程が短縮され好ましい。また、リッドウエハが平板であることにより、リッドウエハとベースウエハW120との接合において細かいアライメント調整を行う必要が無く、工程が簡単になっている。
【0056】
(第2実施形態)
圧電デバイスに載置される圧電振動片は、中央領域から一辺に引出電極が引き出されていても良い。以下、一辺に引出電極が引き出された圧電振動片が用いられた圧電デバイス200について説明する。また、第1実施形態で説明された部分と同じ部分に関しては、図面に第1実施形態と同じ記号を付してその説明を省略する。
【0057】
<圧電デバイス200の構成>
図9は、圧電デバイス200の分解斜視図である。圧電デバイス200は、リッド板110と、ベース板220と、圧電振動片230とにより構成されている。圧電振動片230は例えばATカットの水晶材により形成され、ベース板220は例えばガラスにより形成される。
【0058】
圧電振動片230は矩形形状の平板として形成されており、圧電振動片230の中央領域の+Y’軸側及び−Y’軸側の面にはそれぞれ励振電極231が形成されている。また各励振電極231からは、−X軸側の辺までそれぞれ引出電極232が引き出されている。+Y’軸側の面に形成されている励振電極231から引き出されている引出電極232は、励振電極231の−X軸側の+Z’軸側から圧電振動片230の−X軸側の辺まで引き出され+Z’軸側の側面を介して−Y’軸側の面に引き出され、圧電振動片230の−Y’軸側の面の−X軸側の+Z’軸側の角及びその周辺まで形成されている。また、−Y’軸側の面に形成されている励振電極231から引き出されている引出電極232は、励振電極231の−X軸側の−Z’軸側の角から−X軸方向に引き出され、圧電振動片230の−Y’軸側の面の−X軸側の−Z’軸側の角まで形成されている。
【0059】
ベース板220は、X軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されている。ベース板220の−Y’軸側の面である下面221には、外部電極225及びアース端子226が形成されている。ベース板220の+Y’軸側の面である上面222には接合材140が形成され、リッド板110と接合される。また、ベース板220には上面222から−Y’軸方向に凹んで形成される凹み部223が形成されている。凹み部223の−X軸側の+Z’軸側及び−Z’軸側には圧電振動片230を載置するための載置部224が形成されており、載置部224の+Y’軸側の面には接続電極228が形成されている。また、ベース板220の四隅にはキャスタレーション227が形成されている。キャスタレーション227を構成する側面は、下面221から上面222の方向に向かって形成される第1面271と、上面222から下面221の方向に向かって形成される第2面272と、第1面271と第2面272との間に形成されベース板220の外側に突き出た突起面273と、により形成されている。ベース板220のキャスタレーション227の第1面271及び第2面272は、それぞれY’軸方向の断面でベース板220側に凹んだ曲線を有する曲面であり、突起部273はY’軸方向の断面で直線状になるように形成されている。一方、キャスタレーション227の第1面271、第2面272及び突起面273は、X−Z’平面内では、曲線を有する面として形成されている。また、キャスタレーション227の側面である第1面271、第2面272及び突起面273には側面電極229が形成され、接続電極228と外部電極225とを電気的に接続している。
【0060】
図10は、図9のC−C断面図である。圧電デバイス200は、ベース板220の上面222とリッド板110とが接合材140を介して接合されることにより、キャビティ201が形成される。キャビティ201は、ベース部220の凹み部223(図9参照)がリッド板110及び接合材140により封止されることにより形成される。キャビティ201を形成する凹み部223は、第1凹み部223aと第2凹み部223bとにより構成されている。第1凹み部223aは凹み部223のベース板220の上面222から載置部224の+Y’軸側の面までの空間であり、第2凹み部223bは凹み部223のベース板220の載置部224の+Y’軸側の面から−Y’軸側の空間である。圧電振動片230は、第2凹み部223bの+Y’軸方向に圧電振動片230の励振電極231が配置されるように、キャビティ201の第1凹み部223aに相当する空間に配置される。
【0061】
図11(a)は、ベース板220の+Y’軸側の電極が示された平面図である。ベース板220の+Y’軸側の面には凹み部223が形成されており、凹み部223を囲むように上面222が形成されている。また、凹み部223の−X軸側の−Z’軸側、及び−X軸側の+Z’軸側には載置部224が形成されており、載置部224の+Y’軸側の面には接続電極228が形成されている。一方、ベース板220の四隅にはキャスタレーション227が形成されており、キャスタレーション227には側面電極229が形成されている。ベース板220に形成されている各接続電極228は、上面222に形成される電極及び側面電極229を介して−Y’軸側の面に形成されている外部電極225に電気的に接続されている。
【0062】
図11(b)は、ベース板220の−Y’軸側の電極が示された平面図である。図11(b)では、−Y’軸側に形成された電極が、+Y’軸側から−Y’軸方向にベース板220を透過して見る形で示されている。ベース板220の−Y’軸側の面の+X軸側の−Z’軸側、及び−X軸側の+Z’軸側には外部電極225が形成されている。各外部電極225は、キャスタレーション227に形成されている側面電極229を介して+Y’軸側の面に形成されている接続電極228に電気的に接続されている。また、−Y’軸側の面の+X軸側の+Z’軸側、及び−X軸側の−Z’軸側にはアース端子226が形成されている。
【0063】
図11(c)は、図10の点線202で囲まれた領域のベース板220の拡大断面図である。ベース板220に形成されるキャスタレーション227は、第1面271、第2面272及び突起面273により形成されている。またベース板220は、第1凹み部223aのY’軸方向の深さが第1距離HA2、第2凹み部223bのY’軸方向の深さが第2距離HB2、第2凹み部223bと下面221との間のベース板220の幅が第4距離HD2に形成されており、第1面271のY’軸方向の深さが第1距離HA2、第2面272の深さが第2距離HB2、突起面273の深さが第4距離HD2に形成されている。また、第1面271のX軸方向の幅LC2は、第2面272のX軸方向の幅LB2よりも大きく形成されている。
【0064】
<圧電デバイス200の作製方法>
圧電デバイス200は、第1実施形態で示された圧電デバイス100と同様に図4に示されたフローチャートに沿って作製される。一方、圧電デバイス200のベース板220は圧電デバイス100のベース板120とは異なる形状を有しているため、図4のステップS102のベースウエハが用意される工程は第1実施形態で示した工程とは多少異なる。以下、ベースウエハが用意される工程について図12から図14を参照して説明する。
【0065】
図12は、ベースウエハW220の平面図である。ベースウエハW220には、複数のベース板220が形成されている。図12のベースウエハW220に示されている各ベース板220は、二点鎖線で示されたスクライブライン142に囲まれて示されている。各ベース板220には凹み部223が形成されており、凹み部223には載置部224及び接続電極228が形成されている。ベースウエハW220には、Z’軸方向に平行なスクライブライン142の上にZ’軸方向に伸びた貫通孔243が形成されており、貫通孔243には側面電極229が形成される。貫通孔243は、スクライブライン142でウエハが切断されることにより圧電デバイス200のキャスタレーション227となる。
【0066】
図13及び図14は、ベースウエハW220の作製方法を示したフローチャートである。ベースウエハW220の作製方法では、ベースウエハW120の作製方法の図6のステップS201からステップS204と同様のステップを有しているためその説明を省略し、図13では、図6のステップS204の後のステップから説明される。また図6は、ベースウエハW120をベースウエハW220、第1凹み領域160を第1凹み領域260、第1貫通領域161を第1貫通領域261と読み替えて参照されるものとする。図13及び図14に示された各ステップの右横には各ステップを説明するための図が示されている。図13及び図14に示される各ステップを説明するための図は、図12に示されたベースウエハW220のD−D断面に相当する断面図である。以下に図13及び図14を用いてベースウエハW220の作製方法を説明する。
【0067】
図13のステップS205’では、ベースウエハW220がウエットエッチングされる。ステップS205’は図6のステップS204の後のステップであり、第1ウエットエッチング工程である。図13(a)には、ガラスがエッチングされたベースウエハW220の断面図が示されている。ステップS205’では、ベースウエハW220の+Y’軸側の面の第1凹み部223a(図10参照)に対応した第1凹み領域260及び−Y’軸側の面の貫通孔243(図12参照)に対応した第1貫通領域261のガラスがエッチング液につけられることにより、第1凹み領域260及び第1貫通領域261の深さが第1距離HA2となるようにウエットエッチングされる。このとき第1貫通領域261でエッチングされるガラスのX軸方向の幅はWB2に形成される。
【0068】
ステップS206’では、ベースウエハW220の+Y’軸側及び−Y’軸側の面の第1耐蝕膜150及びフォトレジスト151が除去された後に、再びベースウエハW220の+Y’軸側及び−Y’軸側の面に第2耐蝕膜152が形成され、第2耐蝕膜152の表面にフォトレジスト151が形成される。ステップS206’は、第2耐蝕膜形成工程である。図13(b)には、+Y’軸側の面に第2耐蝕膜152及びフォトレジスト151が形成されたベースウエハW120の断面図が示されている。第2耐蝕膜152及びフォトレジスト151は、ベースウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の面の全面に形成される。
【0069】
ステップS207’では、フォトレジスト151が露光され、現像される。ステップS207’は、第2露光工程である。図13(c)には、+Y’軸側の面のフォトレジスト151が露光され現像されたベースウエハW220の断面図が示されている。ステップS207’で露光され現像されるフォトレジスト151の箇所は、第2凹み部223b(図10参照)に対応した第2凹み領域262、及び+Y’軸側の面の貫通孔243に対応した第2貫通領域263である。
【0070】
ステップS208’では、第2耐蝕膜152がエッチングされる。ステップS208’は第2耐蝕膜エッチング工程である。図13(d)には、第2耐蝕膜152がエッチングされたベースウエハW220の断面図が示されている。ステップS208’では、第2凹み領域262及び第2貫通領域263の第2耐蝕膜152がエッチングされて除去される。
【0071】
図14のステップS209’では、ベースウエハW220がウエットエッチングされる。ステップS209’は、第2ウエットエッチング工程である。図14(a)には、ガラスがウエットエッチングされたベースウエハW220の断面図が示されている。ステップS209’では、第2凹み領域262及び第2貫通領域263のガラスがエッチング液につけられることにより、第2凹み領域262及び第2貫通領域263の深さが第2距離HB2となるようにウエットエッチングされる。ウエットエッチングの結果、第2凹み領域262におけるY’軸方向のベースウエハW220の厚さは第4距離HD2に形成される。また、第2貫通領域263でエッチングされるガラスのX軸方向の幅はWD2となる。この幅WD2は第1貫通領域261でエッチングされたガラスのX軸方向の幅WB2よりも小さい。
【0072】
ステップS210’では、第2耐蝕膜152及びフォトレジスト151が除去される。図14(b)は、第2耐蝕膜152及びフォトレジスト151が除去されたベースウエハW220の断面図である。図14(b)におけるベースウエハW220は、各ベース板220に第1凹み部223a及び第2凹み部223bが形成されている。また、貫通孔243が形成される位置のガラスの厚さは第4距離HD2となっている。
【0073】
ステップS211’では、サンドブラストにより貫通孔243が形成される。ステップS211’は、サンドブラスト工程である。図14(c)は、サンドブラストにより貫通孔243が形成されたベースウエハW220の断面図である。ステップS211’では、ベースウエハW220の−Y’軸側にマスク146が配置され、マスク146の−Y’軸側から+Y’軸方向へ研磨材147が吹きつけられる。マスク146は各ベース板220の下面221を覆うように配置されており、研磨材147はベースウエハW220の貫通孔243のみに吹き付けられて、貫通孔243が貫通される。
【0074】
ステップS212’では、電極が形成される。ステップS221’は、電極形成工程である。図14(d)は、電極が形成されたベースウエハW220の断面図である。電極は、各ベース板220の下面221に外部電極225及びアース端子226が形成され、載置部224に接続電極228が形成され、貫通孔243に側面電極229が形成される。また、外部電極225と接続電極228とが電気的に接続されるように上面222の一部にも電極が形成される。これらの電極は、例えばガラスの表面にクロム(Cr)層が形成され、クロム層の表面に金(Au)層が蒸着されることにより形成される。
【0075】
圧電デバイス200では、引出電極が−X軸方向に引き出されている圧電振動片230が用いられた。このように一辺に引出電極が引き出されている圧電振動片は、引出電極が引き延ばされる方向と反対方向の部分が、振動などによりベース板に接触してしまう恐れが強い。圧電デバイス200では、第2凹み部223bが形成されていることにより圧電振動片230とベース板220との間に距離が大きく形成されるため、圧電振動片230とベース板220とが接触する可能性が低減させられており、衝撃等に強くなっている。
【0076】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0077】
例えば、上記の実施形態ではベース板にガラスが使用された場合について説明したが、ベース板には、水晶材等の圧電材が用いられても良い。この場合、第1ウエットエッチング工程(図7のステップS205参照)及び第2ウエットエッチング工程(図8のステップS209参照)で貫通孔がエッチングされるときに、貫通孔が曲面にエッチングされない場合がある。そのようなときは、第1貫通領域のX軸方向の幅WA(図6(c)参照)を第2貫通領域のX軸方向の幅WCよりも大きく形成することにより、第1面のX軸方向の幅を第2面のX軸方向の幅よりも大きく形成しても良い。
【0078】
また、上記の実施形態では圧電振動片にATカットの水晶振動片である場合を示したが、同じように厚みすべりモードで振動するBTカット、又は音叉型水晶振動片などであっても同様に適用できる。さらに圧電振動片は水晶材のみならず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムあるいは圧電セラミックを含む圧電材に基本的に適用できる。
【符号の説明】
【0079】
100、200 … 圧電デバイス
101、201 … キャビティ
110 … リッド板
120、220 … ベース板
121、221 … 下面
122、222 … 上面
123、223 … 凹み部
123a、223a … 第1凹み部
123b、223b … 第2凹み部
124、224 … 載置部
125、225 … 外部電極
126、226 … アース端子
127、227 … キャスタレーション
128、228 … 接続電極
129、229 … 側面電極
130、230 … 圧電振動片
131、231 … 励振電極
132、132a、232 … 引出電極
140 … 接合材
141 … 導電性接着剤
142 … スクライブライン
143、243 … 貫通孔
144 … ハンダ
145 … プリント基板
146 … マスク
147 … 研磨材
150 … 第1耐蝕膜
151 … フォトレジスト
152 … 第2耐蝕膜
160、260 … 第1凹み領域
161、261 … 第1貫通領域
162、262 … 第2凹み領域
163、263 … 第2貫通領域
171、271 … 第1面
172、272 … 第2面
173、273 … 突起面
HA、HA2 … 第1距離
HB、HB2 … 第2距離
HC … 第3距離
HD、HD2 … 第4距離
HE … 第5距離



【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片を収納する第1凹み部と前記第1凹み部よりさらに凹んで形成された第2凹み部とを有するベース板とそのベース板の周囲に複数の貫通孔とが形成されたベースウエハを使って、圧電デバイスを製造する製造方法において、
前記ベースウエハはガラス又は圧電材からなり、前記ベースウエハの下面とその下面の反対側の上面とに第1耐蝕膜を形成し、前記第1耐蝕膜上にフォトレジストを形成する第1耐蝕膜形成工程と、
前記第1耐蝕膜上のフォトレジストの前記貫通孔の前記下面に対応した第1貫通領域、及び前記第1凹み部の前記上面に対応した第1凹み領域を露光する第1露光工程と、
前記第1貫通領域と前記第1凹み領域との前記第1耐蝕膜をエッチングする第1耐蝕膜エッチング工程と、
前記第1耐蝕膜エッチング工程後に、前記ガラス又は圧電材をエッチング液につけて前記ベースウエハの前記下面と前記上面とから第1距離だけウエットエッチングする第1ウエットエッチング工程と、
前記第1ウエットエッチング工程後に、前記上面の前記第1耐蝕膜及びフォトレジストを除去し、前記上面に第2耐蝕膜を形成し、前記第2耐蝕膜上にフォトレジストを形成する第2耐蝕膜形成工程と、
前記第2耐蝕膜上のフォトレジストの前記貫通孔の前記上面に対応した第2貫通領域、及び前記第2凹み部の前記上面に対応した第2凹み領域を露光する第2露光工程と、
前記第2貫通領域と前記第2凹み領域との前記第2耐蝕膜をエッチングする第2耐蝕膜エッチング工程と、
前記第2耐蝕膜エッチング工程後に、前記ガラス又は圧電材をエッチング液につけて前記ベースウエハを第2距離だけウエットエッチングする第2ウエットエッチング工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第2耐蝕膜形成工程では、さらに前記下面の前記第1耐蝕膜及びフォトレジストが除去され、前記下面にも前記第2耐蝕膜及びフォトレジストが形成される請求項1に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第2ウエットエッチング工程後に、前記下面側から研磨材を吹き付けるサンドブラスト工程を備える請求項1又は請求項2に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記サンドブラスト工程後に、前記下面に実装用の外部電極と前記貫通孔に側面電極とを形成する電極形成工程を備える請求項3に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項5】
中央領域に形成された一対の励振電極と前記一対の励振電極から周辺領域に引き出された一対の引出電極とを有する圧電振動片と、
矩形形状の平板からなるリッド板と、
一対の外部電極が形成された下面と前記リッド板と接合する上面と前記上面から凹んで前記圧電振動片を収納する第1凹み部と前記第1凹み部からさらに凹んで形成された第2凹み部とを有する矩形形状のベース板と、を備え、
前記ベース板は、前記矩形形状の辺に形成され前記下面と前記上面とを結ぶ側面から内側にくぼんだ一対のキャスタレーションを有し、
前記キャスタレーションは、前記下面から前記上面に形成された第1面と、前記上面から前記下面に形成された第2面と、前記下面と上面との中間に形成され前記第1面及び前記第2面よりも前記ベース板の外側に突き出た突起面とからなる圧電デバイス。
【請求項6】
前記第1凹み部は第1距離の深さであり、前記第2凹み部は第2距離の深さであり、
前記第1面は前記第1距離の深さであり、前記第2面は前記第2距離の深さである請求項5に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記第1凹み部は第1距離の深さであり、前記第2凹み部は第2距離の深さであり、
前記第1面は前記第1距離と前記第2距離とを合わせた第3距離の深さであり、前記第2面は前記第2距離の深さである請求項5に記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記ベース板の前記第1凹み部は、前記一対の引出電極と電気的に接続する一対の接続電極を含み、
前記一対のキャスタレーションは前記一対の外部電極から前記一対の接続電極までを電気的に接続する一対の側面電極を含む請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項9】
前記圧電振動片は矩形形状であり、前記一対の引出電極は前記中央領域から向かい合う二辺にそれぞれ引き出されており、
前記一対の引出電極と前記一対の接続電極とが導電性接着剤を介して電気的に接続されている請求項8に記載の圧電デバイス。
【請求項10】
前記圧電振動片は矩形形状であり、前記一対の引出電極は前記中央領域から一辺にそれぞれ引き出されており、
前記一対の引出電極と前記一対の接続電極とが導電性接着剤を介して電気的に接続されている請求項8に記載の圧電デバイス。
【請求項11】
前記リッド板は、ガラス、圧電材又はセラミックからなり、
前記ベース板は、ガラス又は圧電材からなり、
前記リッド板と前記ベース板とはガラス接合材で接合される請求項5から請求項10のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項12】
前記キャスタレーションの前記下面から前記上面方向への断面形状は、前記第1面及び前記第2面が前記ベース板側に凹んだ曲面であり、前記突起面が直線である請求項5から請求項11のいずれか一項に記載の圧電デバイス。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−5202(P2013−5202A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133920(P2011−133920)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】