説明

圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法

【課題】 圧電デバイスが十分に封止されているかを確認することが容易な圧電デバイスを提供する。
【解決手段】 圧電デバイス(100)は、電圧の印加により振動する圧電振動片(130)と、透明な板材からなり圧電振動片を収納する第1板(110)及び第2板(120)と、第1板と第2板との間に配置され第1板又は第2板の周囲に所定幅の枠形状に配置されて第1板と第2板とを接合する封止材(150a)とを備え、封止材の所定幅内(WX,WZ)に所定幅を貫通しない空隙(151b)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法に関する。特に封止材で十分に封止できているか否かがわかる圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電デバイスは小型化・薄型化した表面実装型が多く製造されている。表面実装型の圧電デバイスは電圧の印加により振動する圧電振動片を基台(ベース)に載置し、そのベースの上に蓋(リッド)を被せて気密に封止した表面実装型パッケージとして構成される。圧電デバイスはベースとリッドとを気密封止する際に接合材としてガラス材などが用いられている。特許文献1によれば、ガラス材などの封止材を用いてセラミックで形成されたベースとセラミックで形成されたリッドとを強固に気密封止する方法が開示されている。また、特許文献1で開示される圧電デバイスは1つ1つ製造され、圧電デバイスの接合状態は実際に破壊試験などを行って検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−104766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧電デバイスの接合状態が良好か否かの程度は容易に判断できる方が好ましい。また、圧電デバイスの量産性を高めるため、圧電デバイスは1つ1つの単位ではなくウエハ単位で一度に数百から数千の圧電デバイスが製造される方が好ましい。このような場合に、このようにウエハ単位で製造される場合でも全ての圧電デバイスの接合状態を確認することが好ましい。すなわち圧電デバイスの封止状態を容易に把握することが難しいといった課題がある。
【0005】
本発明は、1個単位で製造される圧電デバイス、又はウエハ単位で製造される圧電デバイスにおいて、封止材の溶融状態を把握することで、圧電デバイスが十分に封止されているかを確認することが容易な圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の圧電デバイスは、電圧の印加により振動する圧電振動片と、透明な板材からなり圧電振動片を収納する第1板及び第2板と、第1板と第2板との間に配置され第1板又は第2板の周囲に所定幅の枠形状に配置されて第1板と第2板とを接合する封止材とを備え、封止材の所定幅内に所定幅を貫通しない空隙を有する。
【0007】
第2観点の圧電デバイスは、電圧の印加により振動する圧電振動部と圧電振動部の周囲を囲む枠体とを有する圧電振動片と、透明な板材からなり圧電振動片の枠体の一方の主面に接合される第1板と、第1板と枠体との間に配置され圧電振動片の周囲に所定幅の枠形状に塗布されて、第1板と枠体とを接合する封止材と、を備え、第1板と枠体とを接合する封止材の所定幅内に所定幅を貫通しない空隙を有する。
【0008】
第3観点の圧電デバイスは、第2の観点に記載の圧電デバイスにおいて、透明な板材からなり圧電振動片の枠体の他方の主面に接合される第2板と、第2板と枠体との間に配置され圧電振動片の周囲に所定幅の枠形状に塗布されて、第2板と枠体とを接合する封止材と、を備え、第2板と枠体とを接合する封止材の所定幅内に所定幅を貫通しない空隙を有する。
【0009】
第4観点の圧電デバイスは、第1の観点から第3の観点のいずれか一項に記載の圧電デバイスにおいて、封止材が、350℃〜410℃で溶融する低融点ガラス又はポリイミド系の樹脂からなる。
【0010】
第5観点の圧電デバイスの製造方法は、電圧の印加により振動する圧電振動片を用意する工程と、透明な第1板と第2板とを用意する板用意工程と、第1板又は第2板の周囲に、所定幅の枠形状で且つ所定幅を貫通しない空隙を有する封止材を塗布する塗布工程と、塗布工程後、第1板と第2板とを封止材で接合する接合工程と、接合工程後に空隙の状態を第1板又は第2板を介して検査する検査工程と、を備える。
【0011】
第6観点の圧電デバイスの製造方法は、第5の観点に記載の圧電デバイスの製造方法において、板用意工程で、第1板を複数有する第1ウエハと第2板を複数有する第2ウエハとを用意し、接合工程で、第1ウエハと第2ウエハとを接合する。
【0012】
第7観点の圧電デバイスの製造方法は、電圧の印加により振動する圧電振動部と圧電振動部の周囲を囲む枠体とを有する圧電振動片を用意する工程と、透明な第1板を用意する板用意工程と、第1板の周囲又は枠体に、所定幅の枠形状で且つ所定幅を貫通しない空隙を有する封止材を塗布する塗布工程と、塗布工程後枠体の一方の主面と第1板とを封止材で接合する接合工程と、接合工程後に空隙の状態を第1板又は枠体を介して検査する検査工程と、を備える。
【0013】
第8観点の圧電デバイスの製造方法は、第7の観点に記載の圧電デバイスの製造方法において、圧電振動片を用意する工程で圧電振動片を複数有する圧電ウエハを用意し、板用意工程で第1板を複数有する第1ウエハを用意し、接合工程で圧電ウエハと第1ウエハとを接合する。
【0014】
第9観点の圧電デバイスの製造方法は、第5の観点から第8の観点のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法において、塗布工程で、大きさの異なる複数の空隙を有する封止材を塗布し、検査工程で、複数の空隙が接合工程によって押し潰された状態を検査する。
【0015】
第10観点の圧電デバイスの製造方法は、第5の観点から第8の観点のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法において、塗布工程で、大きさの同じ複数の空隙を有する封止材を塗布し、検査工程で、複数の空隙が接合工程によって押し潰された状態を検査する。
【0016】
第11観点の圧電デバイスの製造方法は、第5の観点から第8の観点のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法において、塗布工程で、圧電デバイスに対して少なくとも1つの空隙を有する封止材を塗布し、検査工程で、空隙が接合工程によって押し潰された状態を検査する。
【0017】
第12観点の圧電デバイスの製造方法は、第5の観点から第11の観点のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法において、検査工程で、複数の空隙が接合工程によって押し潰されて消失した状態と空隙が残っている状態とを画像処理によって検査する。
【0018】
第13観点の圧電デバイスの製造方法は、第5の観点から第12の観点のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法において、塗布工程で形成される所定幅の枠形状は四辺からなる枠形状であり、枠形状の一部に空隙が形成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法によれば、封止材に空隙を形成することにより、容易に圧電デバイスの接合状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、圧電デバイス100の分解斜視図である。 (b)は、(a)のA−A断面図である。
【図2】(a)は、不良な接合状態の圧電デバイス100が図示されている。 (b)は、適切な接合状態の圧電デバイス100が図示されている。 (c)は、過圧着な接合状態の圧電デバイス100が図示されている。
【図3】圧電デバイス100の製造方法が示されたフローチャートである。
【図4】第1ウエハW110の平面図である。
【図5】第2ウエハW120の平面図である。
【図6】第2ウエハW120に封止材150aがスクリーン印刷された平面図である。
【図7】第1ウエハW110と第2ウエハW120とが接合された接合ウエハW100の断面図である。
【図8】個片化された圧電デバイス100の側面図である。
【図9】判定部151が封止材150bの四辺に形成された図である。
【図10】封止材150bの平面図である。
【図11】封止材150cの平面図の拡大図である。
【図12】スクリーン印刷された封止材150dの平面図である。
【図13】圧電デバイス200の分解斜視図である。
【図14】圧電デバイス200の側面図である
【図15】圧電デバイス200の製造方法が示されたフローチャートである。
【図16】圧電ウエハW230の平面図である。
【図17】第2ウエハW220の平面図である。
【図18】第1ウエハW210の平面図である。
【図19】スクリーン印刷された封止材150eの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0022】
(第1実施形態)
<圧電デバイス100の構成>
図1(a)は、圧電デバイス100の分解斜視図である。圧電デバイス100は主に、圧電振動片130と、第1板(リッド)110と、第2板(ベース)120とにより構成されている。圧電デバイス100において、第1板110及び第2板120は透明な素材である水晶及びガラス等の絶縁材が用いられている。また、圧電振動片130には例えばATカットの水晶振動片が用いられている。ATカットの水晶振動片は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶振動片の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、圧電デバイス100において圧電デバイス100の長手方向をX軸方向、圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X軸方向及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0023】
圧電デバイス100は、第2板120の+Y’軸側の面上に圧電振動片130が載置される。さらに圧電振動片130を封止するように第1板110が第2板120の+Y’軸側に接合されて圧電デバイス100が形成されている。
【0024】
圧電振動片130は、+Y’軸側及び−Y’軸側の主面に励振電極131が形成されている。また、各励振電極131からは−X軸方向に引出電極132が引き出されて形成されている。−Y’軸側に形成されている励振電極131に接続されている引出電極132は、−Y’軸側の面の−X軸側及び−Z’軸側の端まで引き出されている。また、+Y’軸側に形成されている励振電極131に接続されている引出電極132は、−Y’軸側の面の−X軸側及び+Z’軸側の端まで引き出されている。圧電振動片130に形成される励振電極131及び引出電極132等の電極は、例えば圧電振動片130にクロム(Cr)層が形成され、クロム層の上に金(Au)層が形成されることにより形成されている。
【0025】
第1板110は、−Y’軸側の面に凹部111が形成されている。また、凹部111の周囲には枠形状の接合面112が形成されている。第1板110は、接合面112において第2板120と接合される。
【0026】
第2板120は、+Y’軸側の面に凹部121が形成されている。また、凹部121の周囲には枠形状の接合面122が形成されている。接合面122はX軸方向に幅WX、Z’軸方向に幅WZで形成されている(図2を参照)。凹部121には、圧電振動片130の引出電極132と電気的に接続される一対の接続電極125が形成されている。また、一対の実装端子124が第2板120の−Y’軸側の面に形成されている。一対の接続電極125と一対の実装端子124とは第2板120を貫通する貫通電極125a(図1(b)参照)を介して互いに電気的に接続されている。
【0027】
枠形状の接合面122には枠形状に封止材150aがスクリーン印刷法等によって所定の厚さ及び幅(幅WX,WZ)で塗布されている。封止材150aの外縁の一部には、封止材が形成されていない所定幅のスリットの判定部151が形成されている。第1実施形態の判定部151は、枠形状の封止材150aの四辺のうち一辺に形成される。判定部151は、3つの異なる幅のスリットが形成されている。判定部151の3つのスリットはY’軸方向に接合面122が現れるように貫通して形成され、X軸方向に幅がそれぞれ異なる。また、判定部151は封止材150aのZ’軸方向の幅WZ(図2を参照)より狭く形成される。封止材150aのZ’軸方向と同じ長さであると気密できないからである。なお、図1(a)に示される封止材150aは接合前の形状が図示されている。また、封止材150aは封止材150aの下側を透過させて図示されている。封止材150a及び判定部151の詳細は後述する。
【0028】
図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。第1板110の接合面112と第2板120の接合面122とが封止材150aを介して互いに接合されている。また、第1板110と第2板120とが接合されることにより圧電デバイス100の内部には気密されるキャビティ141が形成される。キャビティ141には圧電振動片130が載置される。圧電振動片130の引出電極132は導電性接着剤160を介して接続電極125と電気的に接続される。また、接続電極125は第2板120を貫通する貫通電極125aを通り、実装端子124と電気的に接続されている。つまり、圧電振動片130の励振電極131と実装端子124とは電気的に接続されており、2つの実装端子124の間に電圧が印加されることにより圧電振動片130が振動する。
【0029】
第1板110及び第2板120はガラス又は水晶材などの透明な材料で形成されている。圧電デバイス100は着色した封止材150aを塗布することにより接合された圧電デバイス100の判定部151の形状を外部から確認することができる。封止材150aの着色は透明な封止材150aを半透明又は不透明な状態に着色させることが可能であるが、本実施形態では半透明に着色した場合について説明する。
【0030】
封止材150aには、例えば低融点ガラスを用いることができる。低融点ガラスは、例えば350℃〜410℃と通常のガラスよりも低い温度で溶融するガラスである。低融点ガラスは、着色することにより判定部151の形状を外部から簡易に認識することが可能となる。また、封止材150aは、低融点ガラスの代わりにポリイミド等の樹脂系接着剤に着色剤等を混入させて着色したもの又は不透明なものを用いても良い。なお、本実施形態では封止材150aが第2板120の接合面122に塗布されているが、第1板110の接合面112に塗布してもよい。また、低融点ガラス又は樹脂系接着剤は透明でもよいが、判定部151を目視又は撮像する際に、明瞭に良否を区別できない場合がある。
【0031】
図2は圧電デバイス100の接合状態を示した上面図である。なお、図2は接合された圧電デバイス100を第1板110側から見た上面図である。図2で示されるように、透明な第1板110及び第2板120で接合された圧電デバイス100は、封止材150a、判定部151、圧電振動片130、励振電極131及び引出電極132などの部材が第1板110側から確認することができる。また、半透明な封止材150aを介して実装端子124も第1板110側から観察可能である。判定部151はX軸方向にスリットの幅が異なる第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cで構成されている。第1判定部151aは所定の幅のスリットで形成され、第2判定部151bは第1判定部151aより幅の広いスリットで形成され、さらに第3判定部151cは第2判定部151bより幅の広いスリットで形成されている。これら第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cは、接合面122の幅WZ(接合材の幅WZ)よりも狭い。
【0032】
第1判定部151aは主に気密が十分であるかを判定するために用いられ、第2判定部151bは主に封止後のその幅を見ることで、気密性の確保についてどの程度の余裕があるかを判定するために用いられる。そして第3判定部151cは主に加熱が高すぎる又は加圧が強すぎるかを判定するために用いられる。第1判定部151aの所定幅は例えば20μmの幅であり、第2判定部151bの幅は例えば40μmの幅であり第3判定部151cの幅は例えば60μmの幅である。これらの幅は事前に実験などを繰り返し、第1判定部151aから第3判定部151cまでのそれぞれの適切な幅を予め求めておき、スクリーン印刷のスクリーン版に形成することが望ましい。
【0033】
第1板110と第2板120とが封止材150aで接合される際、封止材150aが350℃〜410℃に加熱され且つ第1板110と第2板120とが加圧された後、封止材150aが冷却され硬化することにより接合される。圧電デバイス100は接合工程において、熱むら、加圧むら及び加熱加圧処理の時間などの諸条件により接合不良が発生するおそれがある。
【0034】
図2(a)は、不良な接合状態の圧電デバイス100が図示されている。図2(a)に示された接合状態は、封止材150aの加熱が足りず十分に封止材150aが溶融しない状態で加圧された場合、もしくは封止材150aの加熱は良いが加圧が足りない場合である。このように第1板110と第2板120とが接合不良の場合には、第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cが外部から観察可能な状態となっている。つまり、第1判定部151aが外部から観察可能な圧電デバイス100は、第1板110と第2板120とが十分に封止されておらず、キャビティ141の気密性に問題がある可能性がある。このため、図2(a)に示された圧電デバイス100不良品として検出される。
【0035】
図2(b)は、適切な接合状態の圧電デバイス100が図示されている。適切な接合状態の圧電デバイス100は、封止材150aが適切な温度まで加熱されて溶融し、適切な圧力で第1板110と第2板120とが加圧されている。このため、溶けた封止材150aが第1判定部151aのスリットを埋め、第1判定部151aが押し潰されてなくなった状態となり、外部から第1判定部151aを識別できない状態になる。第2判定部151b及び第3判定部151cにも溶けた封止材150が流れ込むが、第2判定部151b及び第3判定部151cのX軸方向のスリットの幅が第1判定部151aのスリット幅よりも広いため、未だ外部から識別できる空隙、すなわち幅が狭くなったスリットが残った状態となっている。なお、溶けた封止材150が流れ込むため、第2判定部151b及び第3判定部151cのZ’軸方向の幅も狭くなる。
【0036】
図2(c)は、圧着が過剰な接合状態の圧電デバイス100が図示されている。図2(c)に示された接合状態は、封止材150aの加熱しすぎた状態で加圧された場合、もしくは封止材150aの加熱は良いが加圧が大き過ぎた場合である。圧着が過剰な接合状態の圧電デバイス100は、溶けた封止材150aが第1判定部151a及び第2判定部151bのスリットを埋め、外部から第1判定部151a及び第2判定部151bが識別できない状態になる。そして圧電デバイス100は、X軸方向に狭い幅となった第3判定部151cのみが外部から識別可能な状態となっている。図示しないが、溶けた封止材150aが第3判定部151cも埋めてしまいスリットが完全になくなる状態もある。第3判定部151cのみが観察可能な圧電デバイス100又は第3判定部151cも外部から観察不可能な状態の圧電デバイス100は、キャビティ141の内部まで封止材150aが流れ込んでいる可能性がある。このような圧電デバイスは不良品となる。
【0037】
<圧電デバイス100の製造方法>
図3から図8を参照して、第1板110と第2板120とが封止材150aを介して接合された圧電デバイス100の製造方法について説明する。1つ1つの圧電デバイスを製造することも可能であるが、量産性の観点から、圧電デバイス100は数百から数千個を単位としてウエハ単位で形成される。以下はウエハ単位で形成される複数の圧電デバイス100の製造方法について説明する。
【0038】
図3は、圧電デバイス100の製造方法が示されたフローチャートである。
まず、ステップS101では、複数の圧電振動片130が用意される。各圧電振動片130には、図1に示されるように励振電極131及び引出電極132が形成されている。複数の圧電振動片130はウエハ単位で製造し、1つ1つの圧電振動片130がウエハから切り取られる。
【0039】
ステップS102では、第1ウエハW110が用意される。第1ウエハW110には、複数の第1板110が形成されている。第1ウエハW110は、透明な材料、例えば水晶又はガラス等により形成される。図4を参照して第1ウエハW110について説明する。
【0040】
図4は、第1ウエハW110の平面図である。第1ウエハW110には複数の第1板110が形成されている。図4では、隣接する第1板110の境界線が二点鎖線で示されている。この二点鎖線は、後述される図3のステップS107でウエハが切断されるスクライブライン115である。各第1板110の−Y’軸側の面には凹部111が形成されており、凹部111の周囲には第2ウエハW120(図5参照)と接合される枠形状の接合面112が形成されている。
【0041】
ステップS103では、第2ウエハW120が用意される。第2ウエハW120には、複数の第2板120が形成されている。第2ウエハW120は、透明な材料、例えば水晶又はガラス等により形成される。図5を参照して第2ウエハW120について説明する。
【0042】
図5は、第2ウエハW120の平面図である。第2ウエハW120には複数の第2板120が形成されている。各第2板120の+Y’軸側の面には凹部121が形成されており、凹部121には接続電極125及び貫通電極125aが形成されている。凹部121の周囲には枠形状の接合面122が形成されている。また、第2ウエハW120の−Y’軸側の面には実装端子124(図1及び図2参照)が形成される。図5では、隣接する第2板120の境界線が二点鎖線で示されている。この二点鎖線は、後述される図3のステップS107でウエハが切断されるスクライブライン115である。
以上のステップS101からステップS103は、順番に関係なく行うことができる。
【0043】
ステップS104では、第1ウエハW110又は第2ウエハW120に封止材150aがスクリーン印刷される。図6では、第2ウエハW120に印刷する封止材150aについて説明する。
【0044】
図6は、第2ウエハW120にスクリーン印刷された封止材150aの平面図である。封止材150aは第2ウエハW120の接合面122に塗布される。封止材150aは各第2板120の四辺の内の一辺に、3つの異なる幅のスリットの判定部151が形成されている。図6では、印刷される封止材150aの形状の一例が示されている。封止材150aの判定部151は、隣り合う第2板120の判定部151と同時に形成することで第2板120の四辺の内の一辺に判定部151を形成している。スクリーン印刷された封止材150aが例えば低融点ガラスの場合、低融点ガラスはガラス成分、バインダー及び溶剤を含む。そして低融点ガラスはバインダー及び溶剤が蒸散する蒸散温度まで加熱され仮焼成される。
【0045】
また、図6では、隣接する封止材150aの境界線が二点鎖線で示されている。この二点鎖線は後述される図3のステップS107でウエハが切断されるスクライブライン115である。また、判定部151は後述される図3のステップS108において、判定部151の側面方向からの観察が可能となっている。
【0046】
ステップS105では、圧電振動片130は第2ウエハW120に形成される複数の凹部121にそれぞれ載置される。そして、第1ウエハW110と第2ウエハW120とが第1ウエハW110の接合面112と第2ウエハW120の接合面122とで互いに封止材150aを介して接合される。接合される際には封止材150aは例えば350℃〜410℃に加熱され所定の圧力で加圧され、その後冷却される。以下、第1ウエハW110と第2ウエハW120とが接合されたウエハを接合ウエハW100として説明する。
【0047】
ステップS106では、観察工程において接合ウエハW100の封止材150aの接合状態が検査される。封止材150aの接合状態は、図7を参照して説明する。
【0048】
図7は、接合工程を終えた接合ウエハW100の断面図である。図7は接合ウエハW100の図4、図5及び図6のスクライブライン115における断面図である。観察工程において封止材150aの接合状態は、接合ウエハW100の+Y’軸側から目視又は撮像装置170を用いて封止材150aを観察して検査される。検査は、+Y’軸側より照明を当てて行うことが望ましい。また、撮像装置170を用いて観察する場合は接合面に焦点を合わせることにより行われる。図7では、撮像装置170用いて封止材150aの第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cを観察される状態が示されている。
【0049】
目視又は撮像装置170で観察される判定部151は接合状態により、その形状が異なる。判定部151の形状は図2(a)に示されたように、不良な接合状態では第1判定部151aを観察することができる。図7の左側の圧電デバイス100ではスリットの幅L1で第1判定部151aが観察される。同様に、第2判定部151bはスリットの幅L2で第3判定部151cはスリットの幅L3で観察される。適切な接合状態の図7の右側の圧電デバイス100では、第1判定部151aが観察不可能であり、第2判定部151bのスリットの幅L4で第3判定部151cのスリットの幅L5が観察される。また、目視又は撮像装置170による接合ウエハW100の観察は、判定部151の形状だけでなく第1ウエハW110の接合面112と第2ウエハW120の接合面122とが良好に接合されているかを判定することができる。接合ウエハW100は、接合面112と接合面122との間に異物の混入又は接合不良があると傾いて接合され、図7に示されるように左側の圧電デバイス100では接合不良であるにもかかわらず右側の圧電デバイス100では接合が良好であることがある。
【0050】
図3に戻って、ステップS107では、接合ウエハW100がダイシングにより切断される。切断は、スクライブライン115に沿って行われる。接合ウエハW100が切断されることにより、個々に分割された圧電デバイス100が形成される。
【0051】
ステップS108では、個片化した圧電デバイス100の接合状態が検査される。接合状態の検査はステップS107のダイシングによる第1板110及び第2板120の欠け、又は歪みによる接合不良を検出する。圧電デバイス100は図7で説明した接合ウエハW100の観察のように、個片化した圧電デバイス100を+Y’軸側から目視又は撮像装置170を用いた観察、又はダイシングによる圧電デバイス100の断面(Z’軸側)の観察が行われる。なお、ダイシングなどで接合不良が生じる可能性がないならば、必ずしもステップS108の接合状態の検査を行わなくてもよい。またはステップS106の接合状態の検査を行わず、ステップS108の接合状態の検査を行ってもよい。
【0052】
圧電デバイス100は、封止材150aが着色されることにより、目視又は撮像装置170の観察で判定部151の形状だけでなく圧電デバイス100の接合面112と接合面122とが良好に接合されているかを観察しやすくなる。+Y’軸側から観察された圧電デバイス100は図2で示されているため、以下は圧電デバイス100の側面図(Z’軸方向)を用いて説明する。
【0053】
図8は個片化された1個の圧電デバイス100の側面図である。なお図8はスクライブライン115で個片化された圧電デバイス100の判定部151の側面図である。圧電デバイス100は+Y’軸側から目視又は撮像装置170を用いての観察、又は圧電デバイス100の側面方向(Z’軸方向)から目視又は撮像装置170(不図示)を用いて側面が観察される。なお、+Y’軸側からの観察は図2又は図7に示されているので、側面方向(Z’軸方向)からの観察について説明する。
【0054】
図8(a)は、不良な接合状態の圧電デバイス100の側面図である。第1板110と第2板120との接合不良の場合は、封止材150aの溶融が足りず第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cが圧電デバイス100の側面から観察される。つまり、第1判定部151aが側面から観察可能な圧電デバイス100は、キャビティ141の気密性に問題がある可能性があるため、不良品として検出できる。
【0055】
図8(b)は、適切な接合状態の圧電デバイス100の断面図である。適切な接合状態の圧電デバイス100は、封止材150aが溶融し第1判定部151aのスリットを埋め、その側面から第1判定部151aが観察不可能である。適切な接合状態の圧電デバイス100は空隙である第2判定部151b及び第3判定部151cが側面から観察可能な状態となっている。
【0056】
図8(c)は、過圧着な接合状態の圧電デバイス100が図示されている。過圧着な接合状態の圧電デバイス100は、封止材150aが溶融し第1判定部151a及び第2判定部151bのスリットを埋め、その側面から第1判定部151a及び第2判定部151bが観察不可能である。過圧着な接合状態の圧電デバイス100は、第3判定部151cのみが側面から観察可能な状態、又は第3判定部151cも側面から観察不可能な状態となっている。第3判定部151cのみが観察可能な圧電デバイス100、又は第3判定部151cも側面から観察不可能な状態の圧電デバイス100は、キャビティ141の内部まで封止材150aが流れ込んでいる可能性があるため、不良品として検出できる。なお、図8においては判定部151の形状について説明したが、圧電デバイス100の欠損、歪み又はその他の原因による接合不良についても観察可能である。
【0057】
以上に示された圧電デバイス100は異なる形状の封止材150を使用することが可能である。以下は異なる形状の封止材150を変形例として説明する。その他の構成は第1実施形態と同様であるため同じ符号を用い、説明を省く。
【0058】
<変形例1>
本変形例の封止材150bは判定部151が圧電デバイス100の四辺に形成されている。図9は判定部151が封止材150bの四辺に形成された図である。図示されるように封止材150bの外縁の四辺に判定部151が形成され、四か所の判定部151にはそれぞれ第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cが形成されている。X軸方向に並んで配置された判定部151のスリット長さは、封止材150bのZ’軸方向の幅WZよりも狭い。またZ’軸方向に並んで配置された判定部151のスリット長さは、封止材150bのX軸方向の幅WXよりも狭い。
【0059】
また、図10は第2ウエハW120にスクリーン印刷される封止材150bの形状が図示されている。封止材150bは第2ウエハW120の接合面122に塗布される。封止材150は各第2板120の四辺に3つの異なる幅のスリットからなる判定部151が形成されている。図10では、塗布する封止材150bの形状の一例が示されている。封止材150bの判定部151は、隣り合う第2板120の判定部151と同時に形成することで第2板120の四辺に判定部151を形成している。また、図10では、隣接する封止材150bの境界線が二点鎖線で示されている。この二点鎖線は前述されたスクライブライン115である。また、前述されたように判定部151は接合工程において判定部151の上面方向(第1ウエハW110側)からの観察、又はダイシング後において判定部151の側面方向からの観察が可能となっている。なお、封止材150bは第1ウエハW110の接合面112にスクリーン印刷してもよい。また、本変形例の判定部151は封止材150bの外縁の四辺に判定部151が形成されているが、必要に応じて第2板120の二辺又は三辺に形成されていてもよい。
【0060】
<変形例2>
変形例2の封止材150cは円形状の判定部152が形成されている場合について説明する。図11は第2ウエハW120の接合面122に塗布される封止材150cの拡大図である。図示されるように封止材150cの外縁の四辺に円形状の判定部152がそれぞれ形成されている。四か所の判定部152は直径の異なる円形状の第1判定部152a、第2判定部152b及び第3判定部152cが封止材150cを貫通するように形成されている。つまり判定部152は接合面122が直接現れるように形成されている。第1判定部152aは所定の直径で形成され、第2判定部152bは第1判定部152aより大きな直径で形成され、さらに第3判定部152cは第2判定部152bより大きな直径で形成されている。気密のため大きな第3判定部152cでも凹部121まで達することはない。すなわち判定部152の半径は封止材150cのX軸方向の幅WX又はZ’軸方向の幅WZよりも狭い。
【0061】
図11は、塗布する封止材150cの形状の一例であり、封止材150cの判定部152が隣り合う第2板120の判定部152と同時に形成することで第2板120の四辺に判定部152を形成している。また、図11では、隣接する封止材150cの境界線が二点鎖線で示されている。この二点鎖線は前述されたスクライブライン115である。また、前述したように判定部152は接合工程において判定部152の上面方向(第1ウエハW110側)からの観察、又はダイシング後において判定部152の側面方向からの観察が可能となっている。なお、封止材150cは第2ウエハW120の代わりに第1ウエハW110の接合面112に塗布してもよい。また、本変形例の判定部152は封止材150cの外縁の四辺に判定部152が形成されているが、第2板120の外縁の一辺、二辺又は三辺に形成されていてもよい。
【0062】
<変形例3>
変形例3の封止材150dは判定部151、152がウエハの主要な場所に形成される場合について説明する。図12は第2ウエハW120の接合面122にスクリーン印刷される封止材150dを示した図である。図12では代表して円形状の判定部152を図示しているがスリット状の判定部151であってもよい。図示されるように判定部152は第2ウエハW120の外縁の四か所に及び中心部の1か所に形成されている。外縁の四か所の判定部152は第2板120を形成する領域の外である。中心部の1か所の判定部152は前述されたスクライブライン115上に形成されている。封止材150dが印刷された場合、図3のステップS108で説明したようにダイシングした後に個々の圧電デバイス100の接合状態は確認することはできない。しかし、ステップS106で説明したように、判定部152を上面方向(第1ウエハW110側)から観察することにより、ウエハ単位で接合処理が適切に行われたかを判断できる。なお、変形例3の例では、少なくとも第2ウエハW120の中心部の1か所に判定部152が形成されていることが好ましい。
【0063】
以上に示された判定部152を形成する場所はこの限りでなく、スクライブライン115に重なる場所以外に形成してもよい。また第1実施形態及びその変形例では、スリット状の判定部151、円形状の判定部152を示したが、三角形等の多角形の判定部などであってもよい。
【0064】
また、第1実施形態及びその変形例では接合状態を判断するために第1判定部152a、第2判定部152b及び第3判定部152cの3つの判定部152が形成された。しかし、第1判定部152a及び第3判定部152cの2つの判定部152を形成してもよい。つまり、第1判定部152aがなくなり第3判定部152cが残っていれば接合処理が適切であると判定することができ、また判定箇所が減り判定部152の検査が簡略化される。さらに、第2判定部152b及び第3判定部152cがなく1つの第1判定部151aを封止材150に形成することで、接合不良の圧電デバイス100を選別することもできる。つまり第1判定部152aが埋まって観察できなくなることで接合処理が適切と判断してもよい。さらには、また、大きさの異なる4つ以上の判定部を形成することも可能である。より細かな接合ウエハW100の接合状態を観察することが可能となる。
【0065】
以上に示された判定部151、152は接合処理中にも観察可能であるため、接合結果を示すだけでなく、接合処理におけるセンサーの役目も果たすことが可能である。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態の圧電デバイスは、圧電振動片が圧電振動部と枠体とを有し、第1板及び第2板がそれぞれ枠体を挟んで重ね合わされることにより形成される3枚重ねの圧電デバイスである。以下に3枚重ねの圧電デバイスである圧電デバイス200について説明する。
【0067】
<圧電デバイス200の構成>
図13は、圧電デバイス200の分解斜視図である。圧電デバイス200は主に、圧電振動片230と、第1板(リッド)210と、第2板(ベース)220とにより構成されており、圧電振動片230が第1板210と第2板220とに挟まれて形成されている。第1板210及び第2板220には第1実施形態と同様に水晶及びガラス等の電気を通さない絶縁材が用いられている。また、圧電振動片230には例えばATカットの水晶振動片が用いられる。なお、第1実施形態と同様な構成については同じ符号を用いて説明を省く。
【0068】
圧電振動片230は、電圧の印加により振動する圧電振動部233と、圧電振動部233を囲むように形成される枠部234と、圧電振動部233及び枠部234を連結する連結部236とにより形成されている。また、圧電振動部233と枠部234との間には圧電振動片230をY’軸方向に貫通する貫通孔237が形成されている。圧電振動部233の+Y’軸側の面と−Y’軸側の面とには一対の励振電極231が形成されている。また、−Y’軸側の励振電極231に接続され連結部236を通り枠部234の+Z’軸側の+X軸側の角まで、及び+Y’軸側の励振電極231に接続され連結部236を通り枠部234の−Z’軸側の−X軸側の角までには引出電極232が形成されている。枠部234の+Y’軸側の面には封止材150aが塗布されている。封止材150aは所定の厚さで形成され、封止材150aの外縁の一部に判定部151が形成されている。なお、図13に示される封止材150aは接合前の形状が図示されている。また、封止材150aは封止材150aの下部を透過させて図示されている。
【0069】
第1板210は、−Y’軸側の面に凹部211が形成されている。また、凹部211の周囲には接合面212が形成されている。第1板210は、接合面212において圧電振動片230の枠部234の+Y’軸側の面に塗布された封止材150aを介して接合される。
【0070】
第2板220は、+Y’軸側の面に凹部221が形成されている。また、凹部221の周囲には接合面222が形成されている。第2板220の−Y’軸側の面には一対の実装端子224が形成されており、+Y’軸側の面の四隅には電極パッド225が形成されている。また、第2板220の側面の四隅にはキャスタレーション226が形成されており、各キャスタレーション226には側面電極223が形成されている。実装端子224と電極パッド225とはキャスタレーション226に形成されている側面電極223を介して互いに電気的に接続されている。接合面222の+Y’軸側の面には封止材150eがスクリーン印刷されている。封止材150eは所定の厚さで形成され、封止材150eの外縁の一部に判定部151が形成され、電極パッド225及びキャスタレーション226の場所には封止材150eが形成されていない。また封止材150eは接合前の形状であり、封止材150eの下部を透過させて図示されている。第2板220は、接合面222に塗布された封止材150eを介して圧電振動片230の枠部234の−Y’軸側の面と接合される。なお、本実施形態の封止材150eの判定部151は封止材150aと同様にスリットの異なる第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cが形成されている。
【0071】
図14は圧電デバイス200を+Z’から見た側面図である。圧電デバイス200は、第1板210と圧電振動片230とが封止材150aを介して接合され、第2板220と圧電振動片230とが封止材150eを介して接合されている。なお、図14は説明し易いように溶融していない判定部151を図示しているため、それぞれの第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cが図示されている。なお、封止材150aの判定部151と封止材150eの判定部151とは、図示されるように互いに重ならない位置に形成するのが望ましい。また、本実施形態では封止材150aの判定部151と封止材150eの判定部151が同じ辺に形成されているが、異なる辺に形成してもよい。
【0072】
上述した枠部234に塗布された封止材150aと接合面222に塗布された封止材150eは、四辺の内の一辺に判定部151が形成され、判定部151はX軸方向でスリットの異なる第1判定部151a、第2判定部151b及び第3判定部151cが形成されている。判定部151は第1実施形態で示されたように接合状態を示している。判定部151の接合状態は第1板210と圧電振動片230とを接合する際、及び第2板220と圧電振動片230とを接合する際に観察される。判定部151の形状は第1実施形態の変形例で示された場合と同様に様々な形状をとることができ、円形状の判定部152でもよい。
【0073】
<圧電デバイス200製造方法>
圧電デバイス200に関しても圧電デバイス100と同様に圧電デバイス200の製造過程の途中で封止材150aの接合状態が検査されながら製造されることが望ましい。以下、図15から図19を参照して圧電デバイス200の製造方法について説明する。
【0074】
図15は、圧電デバイス200の製造方法が示されたフローチャートである。
【0075】
ステップS201では、圧電ウエハW230が用意される。圧電ウエハW230には、複数の圧電振動片230が形成されており、圧電ウエハW230は例えば水晶等の圧電材料を基材として形成されている。図16を用いて圧電ウエハW230について説明する。
【0076】
図16は、圧電ウエハW230の平面図である。圧電ウエハW230には複数の圧電振動片230が形成されている。図16では、後述される図15のステップS210でウエハが切断されるスクライブライン115が二点鎖線で示されており、スクライブライン115で囲まれた領域には1つの圧電振動片230が形成される。圧電ウエハW230の各圧電振動片230には貫通孔237が形成されることにより圧電振動部233、枠部234及び連結部236が形成される。また、圧電振動部233に励振電極231が形成されており、枠部234には励振電極231から連結部236を通って引き出されている引出電極232が形成されている。
【0077】
ステップS202では、第2ウエハW220が用意される。第2ウエハW220には複数の第2板220が形成されている。第2ウエハW220は、例えば水晶又はガラス等により形成される。図17を参照して第2ウエハW220について説明する。
【0078】
図17は、第2ウエハW220の平面図である。第2ウエハW220には複数の第2板220が形成されている。図17では、スクライブライン115が二点鎖線で示されており、スクライブライン115で囲まれた領域には1つの第2板220が形成されている。各第2板220の+Y’軸側の面には凹部221が形成されており、凹部221の周りには接合面222が形成されている。またZ’軸方向のスクライブライン115とX軸方向のスクライブライン115との交点には、第2板220においてキャスタレーション226となる貫通孔226aが形成されており、キャスタレーション226には側面電極223(図13及び図14参照)が形成されている。また、貫通孔226aの周囲には電極パッド225が形成されており、第2ウエハW220の−Y’軸側の面には実装端子224(図13及び図14参照)が形成されている。
【0079】
ステップS203では、第1ウエハW210が用意される。第1ウエハW210には、複数の第1板210が形成されている。第1ウエハW210は、例えば水晶又はガラス等により形成される。図18を参照して第1ウエハW210について説明する。
【0080】
図18は、第1ウエハW210の平面図である。第1ウエハW210には複数の第1板210が形成されている。図18では、スクライブライン115が二点鎖線で示されており、スクライブライン115で囲まれた領域には1つの第1板210が形成されている。各第1板210の−Y’軸側の面には凹部211が形成されており、凹部211の周りには接合面212が形成されている。
以上のステップS201からステップS203は、順番に関係なく行うことができる。
【0081】
ステップS204では、第2ウエハW220に封止材150eがスクリーン印刷される。図19はスクリーン印刷された封止材150eの平面図である。封止材150eは第2ウエハW220の接合面222に塗布される。封止材150eは各第2板220の四辺の内の一辺に、3つの異なる幅のスリットの判定部151が形成されている。また、封止材150eは第2ウエハW220に形成されたキャスタレーション226となる貫通孔226a及びその周囲の電極パッド225の一部に封止材150eが形成されない非塗布領域153が形成されている。なお、封止材150eは圧電振動片230の−Y’軸側の枠部234に塗布してもよい。また圧電振動片230に封止材150aがスクリーン印刷される。封止材150aは例えば図6に示された形状で印刷される。封止材150aは圧電振動片230の+Y’軸側の枠部234に塗布される。封止材150aは枠部234の四辺の内の一辺に、3つの異なる幅のスリットの判定部151が形成されている。なお、封止材150aは第1ウエハW210の−Y’軸側の接合面212に塗布してもよい。また、判定部151を形成する位置はステップS204で形成された位置と異なる位置に配置するのが望ましい。スクリーン印刷された封止材150eが例えば低融点ガラスの場合、低融点ガラスはガラス成分、バインダー及び溶剤を含む。そして低融点ガラスはバインダー及び溶剤が蒸散する蒸散温度まで加熱され仮焼成される。
【0082】
ステップS205では、圧電ウエハW230と第2ウエハW220とが封止材150eを介して互いに接合される。圧電ウエハW230と第2ウエハW220とは接合面222に形成した封止材150eを介して加圧及び加熱処理により接合される。
【0083】
ステップS206では、観察工程において封止材150eの判定部151の形状が検査される。圧電ウエハW230及び第2ウエハW220は水晶等の透明な材料を基材としているため、圧電ウエハW230及び第2ウエハW220が接合されたウエハを+Y’軸側から見たとき、封止材150eの接合状態を観察することができる。接合状態の観察は、目視又は撮像装置170により行うことができる。特に撮像装置170による観察は焦点をステップS204で形成した判定部151の位置に合致させることで接合状態を観察することができる。また、目視又は撮像装置170による観察は、判定部151の形状だけでなく圧電ウエハW230の枠部234と第2ウエハW220の接合面222との間に異物の混入又は接合不良なども観察される。
【0084】
ステップS207では、圧電ウエハW230及び第1ウエハW210が封止材150aを介して互いに接合される。ステップS207で塗布された圧電振動片230の枠部234に第1ウエハW210を載置して加圧加熱処理により接合される。第1ウエハW210、第2ウエハW220及び圧電ウエハW230の3枚のウエハが重ね合わされて接合ウエハが形成される。
【0085】
ステップS208では、観察工程において封止材150aの判定部151の形状が検査される。第1ウエハW210、第2ウエハW220及び圧電ウエハW230は水晶等の透明な材料を基材としているため接合ウエハを+Y’軸側から見たとき、封止材150aの判定部151の接合状態を観察することができる。接合状態の観察は、目視又は撮像装置170により行うことができる。特に撮像装置170による観察は焦点をステップS208で形成した封止材150aの判定部151の位置に合致させることで接合状態を観察することができる。
【0086】
ステップS209では、第1ウエハW210、第2ウエハW220及び圧電ウエハW230が接合された接合ウエハが切断される。切断はスクライブライン115に沿ってダイシングすることにより行われ、個々の圧電デバイス200が形成される。
【0087】
ステップS210では、必要に応じて、観察工程において個片化された圧電デバイス200の接合状態が検査される。接合状態の検査はステップS210のダイシングによる圧電デバイス200の接合面の欠け、又は歪みによる接合不良を検出する。なお、封止材150aは半透明で形成されているため、+Y’軸側から撮像装置170を用いた観察でおいては焦点を1段目の封止材150a又は2段目の封止材150eに合わせることで、それぞれ観察が可能となる。
【0088】
上記フローチャートでは、ステップS205で圧電ウエハW230と第2ウエハW220とが接合され、ステップS207で圧電ウエハW230及び第1ウエハW210が接合された。しかし、先に圧電ウエハW230と第1ウエハW210とが接合されるようにしてもよいし、第1ウエハW210、圧電ウエハW230及び第2ウエハW220が一度に接合されてもよい。
【0089】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0090】
例えば、圧電振動片はATカットの水晶振動片である場合を示したが、同じように厚みすべりモードで振動するBTカットなどであっても同様に適用できる。また、音叉型水晶振動片についても適用できる。さらに圧電振動片は水晶材料のみならず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムあるいは圧電セラミックを含む圧電材料に基本的に適用できる。
【符号の説明】
【0091】
100 … 圧電デバイス
110 … 第1板
111、121 … 凹部
112、122 … 接合面
115 … スクライブライン
120 … 第2板
124 … 実装端子
125 … 接続電極
125a … 貫通電極
130 … 圧電振動片
131 … 励振電極
132 … 引出電極
141 … キャビティ
150 … 封止材
151、152 … 判定部
153 … 非塗布領域
160 … 導電性接着剤
170 … 撮像装置
200 … 圧電デバイス
210 … 第1板
211、221 … 凹部
212、222 … 接合面
220 … 第2板
223 … 側面電極
224 … 実装端子
225 … 電極パッド
226 … キャスタレーション
226a … 貫通孔
230 … 圧電振動片
231 … 励振電極
232 … 引出電極
233 … 圧電振動部
234 … 枠部
236 … 連結部
237 … 貫通孔
W100 … 接合ウエハ
W110、W210 … 第1ウエハ
W120、W220 … 第2ウエハ
W230 … 圧電ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により振動する圧電振動片と、
透明な板材からなり前記圧電振動片を収納する第1板及び第2板と、
前記第1板と前記第2板との間に配置され前記第1板又は前記第2板の周囲に所定幅の枠形状に配置されて前記第1板と前記第2板とを接合する封止材と、を備え、
前記封止材の前記所定幅内に前記所定幅を貫通しない空隙を有する圧電デバイス。
【請求項2】
電圧の印加により振動する圧電振動部と前記圧電振動部の周囲を囲む枠体とを有する圧電振動片と、
透明な板材からなり前記圧電振動片の前記枠体の一方の主面に接合される第1板と、
前記第1板と前記枠体との間に配置され前記圧電振動片の周囲に所定幅の枠形状に塗布されて、前記第1板と前記枠体とを接合する封止材と、を備え、
前記第1板と前記枠体とを接合する封止材の前記所定幅内に前記所定幅を貫通しない空隙を有する圧電デバイス。
【請求項3】
透明な板材からなり前記圧電振動片の前記枠体の他方の主面に接合される第2板と、
前記第2板と前記枠体との間に配置され前記圧電振動片の周囲に所定幅の枠形状に塗布されて、前記第2板と前記枠体とを接合する封止材と、を備え、
前記第2板と前記枠体とを接合する封止材の前記所定幅内に前記所定幅を貫通しない空隙を有する請求項2に記載の圧電デバイス、
【請求項4】
前記封止材は、350℃〜410℃で溶融する低融点ガラス又はポリイミド系の樹脂からなる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
電圧の印加により振動する圧電振動片を用意する工程と、
透明な第1板と第2板とを用意する板用意工程と、
前記第1板又は前記第2板の周囲に、所定幅の枠形状で且つ前記所定幅を貫通しない空隙を有する封止材を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後、前記第1板と前記第2板とを前記封止材で接合する接合工程と、
前記接合工程後に前記空隙の状態を前記第1板又は前記第2板を介して検査する検査工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記板用意工程は、前記第1板を複数有する第1ウエハと前記第2板を複数有する第2ウエハとを用意し、
前記接合工程は、前記第1ウエハと前記第2ウエハとを接合する請求項5に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
電圧の印加により振動する圧電振動部と前記圧電振動部の周囲を囲む枠体とを有する圧電振動片を用意する工程と、
透明な第1板を用意する板用意工程と、
前記第1板の周囲又は前記枠体に、所定幅の枠形状で且つ前記所定幅を貫通しない空隙を有する封止材を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後、前記枠体の一方の主面と前記第1板とを前記封止材で接合する接合工程と、
前記接合工程後に前記空隙の状態を前記第1板又は前記枠体を介して検査する検査工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記圧電振動片を用意する工程は、前記圧電振動片を複数有する圧電ウエハを用意し、
前記板用意工程は、前記第1板を複数有する第1ウエハを用意し、
前記接合工程は、前記圧電ウエハと前記第1ウエハとを接合する請求項7に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記塗布工程は、大きさの異なる複数の前記空隙を有する封止材を塗布し、
前記検査工程は、前記複数の空隙が前記接合工程によって押し潰された状態を検査する請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記塗布工程は、大きさの同じ複数の前記空隙を有する封止材を塗布し、
前記検査工程は、前記複数の空隙が前記接合工程によって押し潰された状態を検査する請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記塗布工程は、前記圧電デバイスに対して少なくとも1つの前記空隙を有する封止材を塗布し、
前記検査工程は、前記空隙が前記接合工程によって押し潰された状態を検査する請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記検査工程は、前記複数の空隙が前記接合工程によって押し潰されて消失した状態と前記空隙が残っている状態とを画像処理によって検査する請求項5から請求項11のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記塗布工程で形成される所定幅の枠形状は四辺からなる枠形状であり、前記枠形状の一部に前記空隙が形成される請求項5から請求項12のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−253587(P2012−253587A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124837(P2011−124837)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】