説明

圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法

【課題】 超小型化、超低背化に対応するとともに、気密封止性能が向上した圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 堤部を有するパッケージ1内部には段差部101が形成され、その上面に電極パッド12,13が形成されている。励振電極形成された水晶振動板2は前記電極パッド12,13上に導電接合材Sにより電気的機械的接合される。パッケージを気密封止するリッド3は平板状の金属板からなり、平面視形状はほぼパッケージの平面視形状と同等に構成されている。当該リッド3は母材として例えばコバールが用いられ、その表面には例えばニッケル層が形成されている。そして、パッケージの堤部との接合部分には金属微粒子ペースト接合材31が形成され、リッドとパッケージが接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器や移動体無線機器等に用いられる水晶振動子等の圧電振動デバイスに関し、特に超小型に対応した圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在汎用されている圧電振動子は圧電振動板の表裏面に励振電極が形成された構成であり、例えばATカット水晶振動板を用いた厚みすべり振動子がよく用いられている。このような水晶振動板は箱形のセラミックパッケージに格納され、パッケージと電気的機械的接合が行われるとともに、平板状のリッドにて前記セラミックパッケージの開口部分を閉蓋することにより水晶振動板が気密封止されていた。
【0003】
この気密封止方法についてはいろいろな構成が検討、採用されているが、例えば接合材としてガラス材を用いたガラス封止構成や、パッケージとリッド間に金属ろう材を介在させ、所定の温度雰囲気とすることにより前記金属ろう材により溶融接合したろう材封止構成、あるいはパッケージおよびリッドに形成された金属膜を抵抗溶接の一種であるシーム溶接により溶融接合したシーム封止構成等をあげることができる。
【0004】
しかしながら例えばガラス封止構成においては、封止温度が比較的高くパッケージ内部構成部材に悪影響を与えたり。また所定の封止強度を得る場合、ガラス材の厚さを必要とし低背化に対応できない問題等があった。またろう材封止構成においても同様に所定の厚さが必要であるため低背化に対応できない問題等があった。さらにはシーム封止構成においてはパッケージとリッドの局所のみが高温となるために、歪み応力の集中によりパッケージ等が破損し気密性を損なうことがあるという問題があった。
【0005】
なお、前述のガラス封止構成や金属ろう材の封止構成例として特開平11−307661号(特許文献1)、シーム封止構成例として特開2000−236035号(特許文献2)をあげることができる。
【0006】
ところで近年金属微粒子の低温焼結(融着)性および焼結後の緻密性(導電性)に着目して、当該金属微粒子を用いた導電性ペーストが開発されている。例えば特開2001−225180(特許文献3)には、金属の接合方法として表面に有機系の物質が被覆された金属微粒子を有機溶媒中に分散させたペーストを用いて導電接合する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−307661号
【特許文献2】特開2000−236035号
【特許文献3】特開2001−225180号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは超小型化、超低背化に対応するとともに、気密封止性能が向上した圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前述の金属微粒子を用いた導電性ペーストは接合時の厚さが小さくても実用的な接合強度が得られることを知見し、圧電振動デバイスの気密封止材として適用することを発意したものであり、次のような構成により実現できる。
【0009】
すなわち、請求項1に示すように、少なくとも一対の電極パッドが形成され、圧電振動素子を保持するパッケージと、表面に励振電極が形成され、前記電極パッドに保持される圧電振動素子と、前記パッケージと接合され、圧電振動素子をパッケージ内に気密封止するリッドとからなる圧電振動デバイスであって、前記パッケージとリッドとを平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により接合したことを特徴とする圧電振動デバイスである。
【0010】
圧電振動素子は平板構成あるいは中央部分が薄肉化された逆メサ構成であり、その表面あるいは表裏面には励振電極が形成されている。また金属微粒子ペースト接合材に含有される金属微粒子は例えば、金、銀、銅、ニッケル、チタン、錫、パラジウム等の金属材料を例示することができるが、その微細形状が球状やだ円形状または多角形状等の多面あるいは曲率面を有する構成であると好ましい。これは多面または曲率を持った表面であると原始的な拡散すなわち融着が各方向に均一に生じるためであり、接合時において好ましい融着状態を得ることができる。
【0011】
また、前記金属微粒子ペースト接合材は複数の金属微粒子が用いられている構成であってもよい。このような構成により融着時には複数の金属による合金層が効率よく形成され、気密封止強度を向上させたり、接合時の緩衝性能を向上させる等の利点を得ることができる。
【0012】
なお、当該金属微粒子の直径は小さいほうが融着が進みやすいが、金属微粒子表面への有機系被膜の形成作業を考慮すると必要以上に微粒子化する必要はなく、1〜100nmの直径を有するもので有ればよい。1nm以下であると金属微粒子間の融着が激しいため取り扱いが難しくなり、また100nm以上であると金属微粒子間の融着性が低下する。なお、金属および有機系被膜の種類にもよるが、平均粒径が2〜30nmの金属微粒子であると有機系被膜を形成した金属微粒子の取り扱いと加熱時の接合性のバランスがとれ好ましい。
【0013】
本発明に用いる金属微粒子ペースト接合材は、金属微粒子の表面に有機系被膜が形成され、当該有機系皮膜は金属微粒子の融着を抑制する分散剤としての役割を担っており、当該分散剤が金属微粒子を被覆している状態となっている。また当該有機系被膜は所定の温度環境下におくことで蒸散等により除去される構成であり、当該有機系被膜が除去されることにより、抑制されていた金属微粒子同士の融着が起こり、これが加速される。また金属微粒子の融着は前記圧電振動板の引出電極と前記接続電極との間でも起こり、最終的には両電極が融着し凝集した金属微粒子により金属間接合がなされる。
【0014】
また金属微粒子ペースト接合材に用いる金属微粒子を被覆する有機系被膜や有機溶媒は例えばドデカンチオール等のチオール系溶媒やアルコール系溶媒あるいはアミン系溶媒等の低温蒸散する材料を用いればよい。なお、有機系被膜と有機溶媒は同種材料を用いてもよい。
【0015】
当該金属微粒子ペースト接合材は、有機溶媒の粘度やチクソ性等を選択することによりペーストのぬれ性を調整することができる。これにより金属微粒子ペースト接合材を所望の形状にパターニングすることも容易になる。
【0016】
また前記有機系被膜は加熱による蒸散等により除去されるとともに、当該有機溶媒についても加熱により除去される材料を用いることにより良好な金属間接合状態を得ることができる。また後述するように、前記有機溶媒に代えてあるいは有機溶媒に加えてバインダ樹脂を添加することにより、硬化後該バインダ樹脂が接合材として残ることにより、樹脂が介在することによる緩衝性能を向上させる構成としてもよい。
【0017】
金属微粒子ペースト接合材は、融着した後は金属微粒子による金属間接合を得ることができるので、従来の導電フィラーを添加した樹脂接合材を用いた樹脂による機械的接合に比べて接合材の占める厚さを極めて薄くすることができ、またその厚さの制御も比較的容易である。従って上記構成によれば、金属微粒子ペースト接合材を用いることにより、パッケージとリッド間の気密接合にかかる厚さを小さくすることができ、圧電振動デバイスの低背化に寄与する。
【0018】
なお、金属微粒子ペースト接合材はパッケージ側に形成してもよいし、リッド側に形成してもよく、両者に形成してもよい。また、パッケージの内側に少しはみ出た状態に金属微粒子ペースト接合材を形成することにより、接合面積が拡大し、また接合材によるメニスカス(フィレット)が形成されるために、パッケージとリッドとの接合強度を向上させることができる。
【0019】
また請求項2に示すように、パッケージのリッドとの接合領域には金属膜が形成された構成としてもよい。
【0020】
上記構成によれば、金属微粒子ペースト接合材に含有される金属微粒子は加熱接合時に相互に融着するとともに、パッケージの接合面に形成された金属膜とも融着、接合が起こり各接合面は金属間接合により強固な接合を行うことができる。なお、リッドは金属板であることが好ましく、金属板でない場合はパッケージとの接合部分に金属膜を形成するとよい。またここで用いる金属膜は金属微粒子ペースト接合材に含有される金属微粒子と同種の材料から構成すると接合性能が向上する。
【0021】
請求項3にはパッケージのより具体的な構成について開示している。すなわち、周囲に堤部を有するとともに少なくとも一対の電極パッドが形成され、圧電振動素子を保持するパッケージと、表面に励振電極が形成され、当該励振電極から延出した引出電極形成部分で前記電極パッドに保持される圧電振動素子と、前記パッケージと接合材により接合され、圧電振動素子をパッケージ内に気密封止するリッドとからなる圧電振動デバイスであって、前記堤部には金属層が形成されるとともに、前記接合材は平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材からなり、当該接合材によりパッケージとリッドとを気密接合したことを特徴とする圧電振動デバイスである。
【0022】
前記金属微粒子ペースト接合材は、気密接合時に形成してもよいし、予めパッケージの堤部上面またはリッドのパッケージとの接合領域に形成していてもよく、また両者に形成してもよい。また、パッケージの内側に少しはみ出た状態に金属微粒子ペースト接合材を形成することにより、パッケージ内部において接合材によるメニスカス(フィレット)の形成が促進されパッケージとリッドとの接合強度を向上させることができる。
【0023】
また堤部の上面には金属層が形成されているので、金属微粒子ペースト接合材に含有される金属微粒子は加熱接合時に相互に融着するとともに、当該金属膜とも融着、接合が起こり各接合面は金属間接合により強固な接合を行うことができる。なお、リッドは金属板であることが好ましく、金属板でない場合はパッケージとの接合部分に金属膜を形成するとよい。またここで用いる金属膜は金属微粒子ペースト接合材に含有される金属微粒子と同種の材料から構成すると接合性能が向上する。
【0024】
さらに請求項4に示すように、前記接合材は多層構成であってもよいし、請求項5に示すように、当該多層構成の各層は単一または複数の金属微粒子が用いられ、少なくとも一部の層に異種の金属微粒子が用いられている構成であってもよい。
【0025】
多層構成は各層が同一の金属微粒子ペースト接合材であってもよいし、一部の層に異なった金属微粒子ペースト接合材を形成してもよい。一部に異なった金属微粒子ペースト接合材を用いた場合は、所定温度に加熱することにより金属微粒子同士の融着が進み、これにより異種金属微粒子間で結合が生じ、合金化が進む。これにより複数の金属による合金層が効率よく形成され、気密封止強度を向上させたり、接合時の緩衝性能を向上させる等の利点を得ることができる。
【0026】
また請求項6に示すように、金属微粒子ペーストによる接合を行う金属膜は、その平均表面粗さを1μm以下としてもよく、数100nm程度以下が好ましい。金属膜の表面粗さが1μm以下であると平均粒径が1〜100nmの金属微粒子ペースト接合材を用いた場合、パッケージとリッドの接合時において金属微粒子と金属層との融着接合が効率的に行われかつ接合強度のばらつきも抑制することができ、安定した気密特性の圧電振動デバイスを得ることができる。
【0027】
さらに請求項7に示すように、金属微粒子ペースト接合材の金属微粒子と接合面の金属膜とが同種金属である構成としてもよい。金属微粒子を接合面の金属膜材料と同種金属とすることにより、加熱接合時に両者の融着性を促進することができ、両者の接合性を向上させることができる。また、接合後も両者の熱膨張係数が等しいために、接合後の環境温度変動による接合領域の損傷事故をなくすることができる。
【0028】
また請求項8に示すように、金属微粒子ペースト接合材は複数種の金属微粒子を有し、当該金属微粒子の一部が銅からなる構成としてもよい。
【0029】
金属微粒子ペースト接合材に複数種の金属微粒子を有する構成とするには、金属微粒子を最初から混在させてもよいし、金属微粒子ペースト接合材を多層構成としてもよい。この中で一部の金属微粒子に銅を用いることにより緩衝性を向上させることができる。すなわち銅は延性に優れ熱緩衝性能が高い。従って金属微粒子の一部に熱緩衝性が高い銅を用いることにより、接合後の雰囲気温度が変動しても、銅による緩衝性能により接合領域の損傷事故をなくすることができる。
【0030】
また請求項9に示すように、前記金属微粒子ペースト接合材の有機溶媒には、加熱接合後にパッケージとリッドの接合部分に介在するバインダ樹脂を含む構成としてもよい。これは前記有機溶媒に代えて、あるいは有機溶媒に加えてバインダ樹脂を添加する場合も含んでおり、このような構成により硬化後該バインダ樹脂が接合材として残ることになり、樹脂が介在することによる緩衝性能を向上させることができる。
【0031】
当該バインダ樹脂はパッケージとリッドとの機械的接合を行うものであり、当該バインダ樹脂の中に前述の金属微粒子の結合体が存在することにより、パッケージとリッドの電気的機械的接合を行うことができる。また当該バインダ樹脂は硬化後柔軟性を有する材料を選択することにより接合時の応力を緩衝することもできる。
【0032】
なお、バインダ樹脂は例えばエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられ、パッケージとリッドとを直接接合することができるので、接合面に金属膜の形成されていない構成であっても接合することができる。また金属膜の形成されている接合面においては金属微粒子による電気的機械的接合を行うことができるので、様々な電極構成、金属膜構成の接合に適用することができる。
【0033】
本発明は金属微粒子ペースト接合材の形成等にかかる製造方法についても提案している。すなわち請求項10に示すように、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の圧電振動デバイスを製造するにあたり、前記金属微粒子ペースト接合材の形成の形成をインクジェット印刷法で行ったことを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法である。
【0034】
インクジェット印刷法はプリンタ等で汎用されているが、例えば圧電素子による機械的な振動によりノズル内のインクを微少吐出させ、所定のパターンを描画する印刷方法である。このような手法はインクに含まれる粒子サイズを小さくすることが必要であるが、本発明による金属微粒子ペースト接合材は粒子サイズが小さいため、当該印刷法の適用が比較的容易である。請求項11によれば、微少領域に微細なパターンで接合材を形成できるので、パッケージが超小型化した場合でも接合材のパターン形成ができ圧電振動デバイスの小型化に寄与することができる。
【0035】
また請求項11に示すように、パッケージとリッドとを金属微粒子ペースト接合材により接合するにあたり、加熱により前記金属微粒子表面の有機系被膜と有機溶媒とを除去してもよい。
【0036】
本製造方法によれば、加熱することにより有機系被膜や有機溶媒を蒸散等により除去するものであり、パッケージとリッドとの接合を金属微粒子の融着による金属間接合部分のみにすることができるので、経時的な有機溶媒等からのガスの発生をなくすることができ良好な特性の圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、超小型化、超低背化に対応するとともに、気密封止性能が向上した圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり図1乃至図3とともに説明する。図1は本実施の形態を示す気密封止前の長手方向の断面図、図2は気密封止前のパッケージの平面図、図3はリッドに形成された接合材構成を示す拡大図である。表面実装型水晶振動子は、パッケージ1と、パッケージ内に搭載される水晶振動板(圧電振動板)2と、パッケージを気密封止するリッド3と、からなる。
【0039】
水晶振動板2は平板で矩形状のATカット水晶振動板である。当該水晶振動板2は大きな水晶ウェハから切断、研磨による機械加工やあるいはフォトリソグラフィ技術を用いて所定の小さな外形サイズに加工されている。なお、要求仕様により水晶振動板の主面に対しベベル加工、コンベックス加工等の面取り加工を行う。
【0040】
水晶振動板2の表裏主面には一対の矩形状の励振電極21,22(22は図示せず)が形成され、それぞれの励振電極21,22から長辺方向の一端に引出電極21a,22a(22aは図示せず)が形成され、水晶振動板2の外周部分に電極が引き出されている。なお、励振電極21,22は例えば水晶振動板に接してクロム層が形成され、その上面に銀あるいは金が形成された構成である。
【0041】
電極形成された水晶振動板2を搭載するパッケージ1は、全体として上方に開口した箱形で、セラミックを主体とし内外面に導電路等の電極が形成されたセラミックパッケージからなる。パッケージ1は底板部10とその周囲に堤部11が形成された断面略凹形形状であり、堤部11の上面には金属層部11aが形成されている。当該金属層部11aはセラミックと同時に焼成成形されたタングステン等からなるメタライズ部とその上面にメッキ形成されたニッケル層、金層からなる。パッケージ内部には段差部101が形成され、その上面に電極パッド12,13が形成されている。当該電極パッドもセラミックと同時に焼成成形されたタングステン等からなるメタライズ部とその上面にメッキ形成されたニッケル層、金層からなる。当該電極パッド12,13はセラミック内部の導電路(図示せず)を介してそれぞれ外部接続電極14,15に接続されている。
【0042】
前記水晶振動板2は前記電極パッド12,13上に導電接合材Sにより電気的機械的接合される。ここで用いる導電接合材Sは例えばシリコーン樹脂を母材として、これに導電フィラー等を添加した導電性樹脂接合材である。なお、ここで用いる導電接合材はシリコーン系樹脂以外にエポキシ系樹脂やウレタン系樹脂を用いてもよいし、金属微粒子ペースト接合材を用いてもよい。金属微粒子ペースト接合材は、例えば金属微粒子として平均粒径が約20μmの銀の金属微粒子を用いており、当該銀の金属微粒子の表面には例えば約200℃で蒸散し除去される有機系被膜(分散剤)が形成されている。当該金属微粒子ペースト接合材はこれら有機系被膜を有する金属微粒子が有機溶媒中に分散された構成である。当該有機溶媒は例えばエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂を含んでいる。
【0043】
パッケージを気密封止するリッド3は平板状の金属板からなり、平面視形状はほぼパッケージの平面視形状と同等に構成されている。当該リッド3は母材として例えばコバールが用いられ、その表面には例えばニッケル層が形成されている。そして、パッケージの堤部との接合部分には金属微粒子ペースト接合材31が形成されている。当該金属微粒子ペースト接合材31は、接合材形成時は多層構造に形成している。
【0044】
本実施の形態においては、なお、本実施の形態においては当該金属微粒子ペースト接合材Sに、ハリマ化成社製ナノペースト(商品名)を用いている。具体的には、金の金属微粒子を用いた金属微粒子ペースト接合材31aと、錫の金属微粒子を用いた金属微粒子ペースト接合材31bとを交互に計4層形成した構成を採用している。いずれの金属微粒子もその粒径分布は概ね3〜7nm、平均粒径5nmのものを用いている。これら各金属微粒子ペースト接合材は、それぞれ金属微粒子の表面には例えば約200℃で蒸散し除去される有機系被膜(分散剤)が形成されている。当該金属微粒子ペースト接合材はこれら有機系被膜を有する金属微粒子が有機溶媒中に分散された構成である。よって、有機溶媒は加熱により蒸散する材料を用いているため、基本的には有機系被膜および有機溶媒は加熱融着後これらが残ることはなく、金属微粒子間および金属微粒子と金属膜間の金属間接合が行われる。
【0045】
このような構成のリッドによりパッケージの開口部を覆い、例えば大気中あるいは真空雰囲気中あるいは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で約200℃に加熱する。これにより前述の金属微粒子表面に形成された有機系被膜は溶融し、隣接する金属微粒子との相互融着(焼結)が起こり、これが加速することにより、金属微粒子間および励振電極に用いられる金属膜間で金属間結合が行われる。上記金属微粒子ペースト接合材においては、金の金属微粒子と錫の金属微粒子とが相互に焼結し、当該接合材部分は金と錫の合金状態となりパッケージの金属層部とリッドとを接合する。なお、合金化を進めるため加熱時間を長くとってもよい。また蒸散する温度も200℃に限定されるものではなく、有機系被膜を変更してより低温あるいはより高温で蒸散するよう調整してもよい。
【0046】
なお、このような金属微粒子ペースト接合材の構成は上記構成例に限定されるものではない。例えば銀の金属微粒子ペースト接合材1層による構成でもよい。この場合銀の金属微粒子の表面には例えば約200℃で蒸散し除去される有機系被膜(分散剤)が形成され、当該金属微粒子ペースト接合材はこれら有機系被膜を有する金属微粒子が有機溶媒中に分散された構成となる。
【0047】
また、前記微粒子のサイズや前記有機系被膜の蒸散する温度は、気密封止に用いる温度に応じて調整すればよい。例えば前述のとおり金属微粒子は微粒子化が進むとその焼結温度が低くなるが、このような場合、この早期焼結を抑制するために蒸散温度の高い有機系被膜あるいは被膜の膜厚を選択する必要がある。
【0048】
ところで金属微粒子サイズが小さなものである場合、非接合物の表面状態によっても接合強度が影響を受け、平滑な表面状態であるほうが接合性が向上する。本実施の形態においては、堤部上部の金属膜層の表面粗さを1μmにしている。このように平滑な表面状態とすることにより、加熱接合時の金属間接合がスムーズに行われる。よりスムーズな金属間接合を得るためには数100nm程度以下の表面粗さにすると好ましい。
【0049】
また、堤部上面の金属層の表面金属と接合材に用いる金属微粒子の材料に同種の金属を用いると好ましい。例えば上述の実施形態では金属微粒子に金と錫を用いており、金を含む構成としている。また金属層の表面金属には金層を用いているため。これにより加熱接合時に同種金属による融着効果が作用し、接合材に含まれる金の微粒子と金属層の金層の融着性を促進することができ、両者の接合性を向上させることができる。また、接合後も両者の熱膨張係数が等しいために、接合後の環境温度変動による接合領域の損傷事故をなくすることができるという、実用的な効果を得ることができる。
【0050】
さらに、上述のとおり当該金属微粒子ペースト接合材の塗布は多層構成にすることもできるが、多層構成内に緩衝層を構成してもよい。例えば金属微粒子ペースト接合材が複数層からなる場合、金属微粒子に銅を用いた金属微粒子ペースト接合材による層を挿入してもよい。銅は延性に優れ熱緩衝性能が高いので、接合後の雰囲気温度が変動しても、銅による緩衝性能により接合領域の損傷事故をなくすることができる。なお、銅の合金層を形成してもよい。例えば銅の金属微粒子ペースト接合材とニッケルの金属微粒子ペースト接合材を積層し、加熱により合金を形成するように形成してもよい。またニッケルに代えて銀等他の金属材料を用いてもよい。さらには複数の金属微粒子を含有するペースト接合材を用いてもよく、例えば銅とニッケルの金属微粒子を含有するペースト接合材を用いてもよい。
【0051】
また、金属微粒子ペースト接合材の有機溶媒には加熱接合後にパッケージとリッドとの接合部分に介在するバインダ樹脂を含む構成としてもよい。例えば上述の銀の金属微粒子ペースト接合材を用いた例においては、加熱により蒸散し除去される有機系被膜(分散剤)が形成され、当該金属微粒子ペースト接合材はこれら有機系被膜を有する金属微粒子が有機溶媒中に分散された構成となっているが、有機溶媒にバインダ樹脂を含む構成としてもよいし、前記有機溶媒に代えてバインダ樹脂を用いる構成としてもよい。バインダ樹脂としては例えばエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂をあげることができる。このような構成により硬化後該バインダ樹脂が接合材として残ることになり、樹脂が介在することによる緩衝性能を向上させることができる。
【0052】
当該バインダ樹脂はパッケージとリッドとの機械的接合を行うものであり、当該バインダ樹脂の中に前述の金属微粒子の結合体が存在することにより、パッケージとリッドの電気的機械的接合を行うことができる。また当該バインダ樹脂は硬化後柔軟性を有する材料を選択することにより接合時の応力を緩衝することもできる。
【0053】
なお、バインダ樹脂はパッケージとリッドとを直接接合することができるので、接合面に金属膜の形成されていない構成であっても接合することができる。また金属膜の形成されている接合面においては電気的機械的接合を行うことができるので、様々な電極構成、金属膜構成の接合に適用することができる。
【0054】
次に本発明による製造例について図4乃至図6とともに説明する。図4はパッケージが複数個マトリクス状に一体形成されたウェハ状態を示す平面図であり、図5はリッドが複数個マトリクス状に一体形成されたウェハ状態を示す平面図であり、図6はウェハ状態のリッドに対してインクジェット法により接合材を形成する方法を示す側面図である。
【0055】
セラミックウェハW1はシート成型法により形成された、パッケージ(セラミックパッケージ)1が複数個マトリクス状に形成されている。各パッケージは図1で示すような底板部と堤部を有する上方に開口した箱形構成である。底板部の長手方向の一端には金属体からなる電極パッド12,13が並列して形成されており、また堤部の上面には金属層が形成されている。これら電極パッド並びに堤部はセラミックスと一体焼成されたメタライズ層の上面にニッケル、金の順に積層形成された構成である。また各パッケージ外周の4つの角には上下に貫通したキャスタレーションC1,C2,C3,C4が形成されており、パッケージ個々に分離する際の作業を容易にしている。
【0056】
またこのセラミックウェハW1に対応する金属ウェハW2を図5に示している。この金属ウェハW2は大きな平板構成であり、コア材としてコバール材が用いられ、その表裏にニッケル層がメッキや圧延による方法により形成されている。この金属ウェハW2にはセラミックウェハW1に形成されたパッケージの堤部形状に対応して、マトリクス状に金属微粒子ペースト接合材31がパターニングされている。
【0057】
この金属ウェハW2への金属微粒子ペースト接合材31のパターニングは、インクジェット印刷法により形成している。インクジェット印刷法はプリンタ等で汎用されているが、例えば圧電素子による機械的な振動によりノズル内のインクを微少吐出させ、所定のパターンを描画する印刷方法である。このような手法はインクに含まれる粒子サイズを小さくすることが必要であるが、本発明による金属微粒子ペースト接合材は粒子サイズが小さいため、当該印刷法の適用が比較的容易である。
【0058】
図6に示すように、インクジェットノズルTから所定量の金属微粒子ペースト接合材を吐出させ、所定形状にパターニングする。パターニングはインクジェットノズルTを平面的に移動させるとともに、吐出の実行および停止を併せて制御することにより所望形状のパターンを描くことができる。また金属ウェハ側を平面的に移動させることによってもパターニング実行ができる。なお、圧電振動デバイスの小型化が進むことにより微細なパターニングが必要となるが、このような場合は、接合材の粘度を低くする等、微少吐出に適した液状に特性調整する必要がある。本実施の形態においては、5〜10mPa・S程度の粘度に調整したものを用いている。
【0059】
インクジェット印刷法を用いると所望の塗布パターンを微細にし、かつ高速に塗布することができる利点を有しているが、複数のノズルを持つことにより複数の接合材を塗布形成する場合にも適している。例えば、上述の金の金属微粒子ペースト接合材用と錫の金属微粒子ペースト接合材用の複数のインクジェットノズルを用意し、順次または同時に吐出する等の適宜使い分けを行ってもよい。
【0060】
そして図示していないが、各パッケージに励振電極形成された水晶振動板を導電接合し、その後ウェハ同士を接合する。当該接合はセラミックウェハW1と金属ウェハW2を、セラミックウェハの各パッケージの堤部と金属ウェハの各リッドに形成された金属微粒子ペースト接合材とが重なるように接合する。そして金属微粒子ペースト接合材の硬化温度まで加熱し、それぞれをウェハ状態で気密封止する。その後、ダイシングやエネルギービーム等により各圧電振動デバイスに切り離す。
【0061】
なお本発明による圧電振動デバイスは上記製造方法以外の製造方法を適用することももちろん有効である。例えばパッケージやリッドを個別に製造するとともに、リッド側に金属微粒子ペースト接合材を形成し、パッケージの堤部とリッドの金属微粒子ペースト接合材とを重ね合わせ加熱により気密封止をしてもよい。
【0062】
また、金属微粒子ペースト接合材をパッケージの堤部側に形成してもよい。例えば、図4において、堤部上部に金属微粒子ペースト接合材をインクジェット印刷法やディスペンサ等による接合材吐出手段等により形成してもよい。
【0063】
さらには水晶振動板を搭載するパッケージは箱形ではなく平板構成であってもよい。この場合は水晶振動板を搭載するキャビティ(振動空間)が必要となるので、リッドを逆凹型にし、ここで形成される凹部をキャビティとしてもよいし、あるいはスペーサ等によりキャビティをつくり出してもよい。
【0064】
なお、上記各実施形態の例示においては、ATカット水晶振動板を用いた表面実装型の水晶振動子を例示したが、音叉型水晶振動子や水晶フィルタ、あるいは弾性表面波デバイスに適用することもできるし、あるいは水晶発振器等の圧電振動素子と他の回路素子等を組みあわせた構成にも適用することが可能である。また圧電振動板もATカット水晶振動板以外にSCカット水晶振動板や圧電セラミック振動板等、他の圧電材料を用いてもよい。
【0065】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形
で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎ
ず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであ
って、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属す
る変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
水晶振動子、水晶発振器等の圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による実施の形態を示す内部断面図。
【図2】図1において閉蓋前の平面図。
【図3】リッドの一部拡大図。
【図4】製造方法を示す平面図。
【図5】製造方法を示す平面図。
【図6】製造方法を示す側面図。
【符号の説明】
【0068】
1 パッケージ
2 水晶振動板(圧電振動板)
3 リッド
31 金属微粒子ペースト接合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電極パッドが形成され、圧電振動素子を保持するパッケージと、表面に励振電極が形成され、前記電極パッドに保持される圧電振動素子と、前記パッケージと接合され、圧電振動素子をパッケージ内に気密封止するリッドとからなる圧電振動デバイスであって、前記パッケージとリッドとを平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により接合したことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
パッケージのリッドとの接合領域には金属膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
周囲に堤部を有するとともに少なくとも一対の電極パッドの形成され、圧電振動素子を保持するパッケージと、表面に励振電極が形成され、当該励振電極から延出した引出電極形成部分で前記電極パッドに保持される圧電振動素子と、前記パッケージと接合材により接合され、圧電振動素子をパッケージ内に気密封止するリッドとからなる圧電振動デバイスであって、前記堤部には金属層が形成されるとともに、前記接合材は平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材からなり、当該接合材によりパッケージとリッドとを気密接合したことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記金属微粒子ペースト接合材は多層構成であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
多層構成の各層は単一または複数の金属微粒子が用いられ、少なくとも一部の層に異種の金属微粒子が用いられていることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
金属微粒子ペーストによる接合を行う金属膜は、その平均表面粗さが、1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項7】
金属微粒子ペースト接合材の金属微粒子と接合面の金属膜とが同種金属であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項8】
金属微粒子ペースト接合材は複数種の金属微粒子を有し、当該金属微粒子の一部が銅からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項9】
前記金属微粒子ペースト接合材の有機溶媒には、加熱接合後にパッケージとリッドの接合部分に介在するバインダ樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の圧電振動デバイスを製造するにあたり、前記金属微粒子ペースト接合材の形成をインクジェット印刷法で行ったことを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の圧電振動デバイスを製造するにあたり、パッケージとリッドとを金属微粒子ペースト接合材により接合する際、加熱により前記金属微粒子表面の有機系被膜と有機溶媒とを除去したことを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−274104(P2007−274104A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94502(P2006−94502)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】