説明

圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法

【課題】 低背化に対応し、安定した気密封止を行うことができる圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの気密封止方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 水晶基板3と、当該水晶基板3の表裏主面にレーザービームあるいは電子ビームによって接合される、透光性の第1のパッケージ基材2と第2のパッケージ基材4とからなる水晶振動子1であって、前記各パッケージ基材の前記水晶基板3との接合面の少なくとも周縁部分には、金属からなる下地層と、当該下地層の上に熱吸収接合材が形成されているとともに、前記熱吸収接合材は前記下地層よりも軟質金属で、かつ厚膜状態で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスと、圧電振動デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子に代表される圧電振動デバイスは、携帯電話などの移動体通信機等に広く用いられている。そして、表面実装型の水晶振動子は、低背化および省スペース化要求に対応した形態の水晶振動子であり、凹部を有する容器体(以下ベースと略称)と、前記凹部内に搭載される水晶板と、前記凹部を気密封止するための平板状の蓋体を主要構成部材として構成されている。
【0003】
近年の小型化に伴い、例えば水晶振動子の縦横寸法が、2.0×1.6mm程度まで小さくなってくると、個体での取り扱いが困難となってきている。そのため、複数の前記ベースがマトリクス状に連なった基板状のベース集合体と、多数個の水晶片が一体形成された水晶基板、複数の蓋体がマトリクス状に連なった蓋体集合体を用いて多数個の水晶振動子を一括的に製造する方法が知られている。このような製造方法において、例えば前記蓋体集合体を透光性材料で形成すると、レーザービームを当該蓋体集合体の内部を透過させて、蓋体とベースとの接合部を局所的に加熱して気密接合することができる。このような封止方法は、多数個での取り扱いではないが、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−326290号
【0005】
しかし、特許文献1においてベースはセラミックで形成されており、電子部品素子の小型化が進行するとセラミックパッケージ(セラミックベース)では限界が近づいてくる。また、低背化対応も困難になってくる。
【0006】
また、例えば凹部を有する透光性材料からなる蓋体の集合体2枚を、中心部よりも周囲の方が厚肉となるような水晶片(所謂、逆メサ形状)の集合体(水晶基板)の表裏主面に接合することによって水晶振動デバイスを形成する方法がある。このような構成の場合、前記2枚の蓋体集合体の前記凹部を前記水晶基板に対向するようにして位置決めし、当該蓋体集合体の外部からレーザー照射によって接合材(金属膜)を介して水晶基板と前記2枚の蓋体集合体とを接合する。このとき1つの水晶振動子の形成領域について図8を用いて説明すると、前記水晶基板の表裏主面の接合領域(レーザービーム照射領域)は平面視で重なった状態となっている。そして、レーザービームを二方向(第1のパッケージ基材2の上方からと、第2のパッケージ基材4の下方からの二方向で、かつ、断面視で同一直線上)から接合材に向けて照射することで水晶振動子1の気密封止が行われる。まず上側の接合材201および301にレーザービームを照射して、上側の接合材201および301の一部を溶融させて第1のパッケージ基材2と水晶振動片3を接合する。そして下側の接合材302および401にレーザービームを照射して第2のパッケージ基材4と水晶基板3を接合する。しかし、このときレーザービームが前記下側の接合材(302、401)を透過して上側の接合材(201、301)に到達して、第1のパッケージ基材と水晶振動片との接合領域に欠損(空隙)を生じる恐れがある。このような問題は、上側の接合材のレーザービームによる接合後に、第1のパッケージ基材と水晶振動片との接合体を上下反転させて水晶振動片の未接合面への第2のパッケージ基材の接合を行う場合でも同様である。以上のことから、安定した気密封止を行うことが困難となってくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低背化に対応し、安定した気密封止を行うことができる圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、圧電基板と、当該圧電基板の表裏主面にレーザービームあるいは電子ビームによって接合される、2つの透光性のパッケージ基材とからなる圧電振動デバイスであって、前記各パッケージ基材の前記圧電基板との接合面の少なくとも周縁部分には、金属からなる下地層と、当該下地層の上に熱吸収接合材が形成されているとともに、前記熱吸収接合材は前記下地層よりも軟質金属で、かつ厚膜状態で形成されている。したがって、レーザービームあるいは電子ビーム(以下、エネルギービームと略称)を前記圧電振動デバイスの外部から前記パッケージ基材に照射して、前記下地層と前記熱吸収接合材を溶融させる際に、前記前記熱吸収接合材が前記下地層よりも厚膜状態で形成されているため、エネルギービームが貫通し難くなる。よって、透過したエネルギービームが圧電基板の反対側の面にある金属膜(下地層および熱吸収部材)に悪影響(損傷等)を及ぼすのを抑制することができる。
【0009】
通常、抵抗加熱蒸着法等によって成膜された金属膜の表面状態は、微視的には凸凹状であり、“山”や“谷”が連続したような表面状態となっている。このような金属膜を互いに超音波溶接法によって接合する場合、接合界面は“山”の部分同士が点接触して接合したような状態となって、“谷”の部分が空隙(ボイド)となり、気密性が不完全な状態となることがある。また、前記“山”の部分の高さは非均一であるため、超音波接合後の状態において被接合物間で、微視的には僅かな傾きが生じることがある。しかしながら、本発明のパッケージ基材であれば、前記熱吸収接合材が前記下地層よりも軟質金属で、かつ厚膜状態で形成されているために、前記“山”の部分が外的加重によって変形しやすくなり、前記“谷”の部分を埋めるように金属を配することができる。これにより、パッケージ基材の圧電基板に対する前記傾きを抑制することができ、より確実な仮止め接合を行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明によると、超音波溶接法による仮止め接合時にエネルギービームによって厚膜状態の熱吸収接合材を溶融させるため、溶融した前記熱吸収接合材が前記“谷”の部分を埋めるように流入することによって接合界面が平滑化され、平らな状態に近づけることができる。これによって気密不良を防止し、安定した気密封止を行うことができる。
【0011】
さらに、本発明によると、熱吸収接合材はエネルギービームの照射による熱を効率良く吸収することができることに加え、厚膜状態で形成されているため熱吸収率が良好であり、当該熱吸収接合材の一部の内部領域が溶融するので、当該熱吸収接合材の圧電振動デバイス内部への飛散(スプラッシュ)を抑制することができる。また、熱吸収率が良好なことから、エネルギービームによる金属膜の溶融領域の拡大を最小化することができ、圧電振動デバイスに形成される引き回し電極等の配線導体に悪影響を与えることがない。
【0012】
また、上記目的を達成するために請求項2の発明によると、前記熱吸収接合材は、前記下地層の上に形成される第2の熱吸収接合材と、当該熱吸収接合材の上に形成される第1の熱吸収接合材の2層で構成されているとともに、
前記第1の熱吸収接合材の厚みが、前記第2の熱吸収接合材の厚みよりも厚く形成されている圧電振動デバイスであるので、下地層に比べて厚膜状態である熱吸収接合材の厚み制御を段階的に行うことができる。
【0013】
また、請求項3の発明によると、前記第1の熱吸収接合材は、めっき法によって形成されている圧電振動デバイスであるので、例えば前記第1および第2の熱吸収接合材として金を用い、第2の熱吸収接合材を真空蒸着によって形成し、第1の熱吸収接合材を電解めっき法によって形成すると、前記第2の熱吸収接合材が電解めっきによる第1の熱吸収接合材の形成時に下地層として機能する。また、フォトリソグラフィ法によって圧電基板上に所定のパターニングを行った後、水晶等からなる圧電基板をウエットエッチングする際の保護膜としても機能する。
【0014】
また、前記第1の熱吸収接合材は、めっき法を用いることによって、真空蒸着法を用いる場合よりも厚膜状態に成膜することが可能となる。そして、圧電基板とパッケージ基材とを金属膜(前記下地層および熱吸収接合材等)を介して、例えば超音波溶接法によって仮止め接合する際に、前記熱吸収接合材が前記下地層よりも軟質金属で、かつ厚膜状態で形成されているので、接合界面における前記“山”の部分を外的加重によって変形させやすくなり、前記“谷”の部分を埋めるように金属を配することができる。これにより、パッケージ基材の圧電基板への仮止め接合時の(微視的な)僅かな傾きを抑制することができ、より確実な仮止め接合を行うことが可能となる。
【0015】
めっき法で成膜した金属膜(めっき被膜)と、真空蒸着法によって成膜した金属膜(蒸着膜)の膜質状態を比較すると、蒸着膜の方が、めっき被膜よりも均質な状態となっており、めっき被膜の方は原子間の隙間が多い、“多孔質”な状態となっている。本発明において、めっき法によって形成される第1の熱吸収接合材の厚みを、蒸着法によって形成される第2の熱吸収接合材よりも数段に厚くすることで、前記“多孔質”な空間をより多く有した状態にすることができる。このような厚膜状態の第1の熱吸収接合材に、例えば短波長のグリーンレーザーが照射されると、ビームが膜内で多重反射を繰り返すことによって、より熱吸収率を向上させることができる。また、レーザービーム照射によって前記熱吸収接合材の一部の内部領域が溶融するので、当該熱吸収接合材の圧電振動デバイス内部への飛散(スプラッシュ)を抑制することができる。したがって、安定した特性の圧電振動デバイスを提供することができる。
【0016】
請求項4の発明によると、前記熱吸収接合材が金からなる圧電振動デバイスであるので、前記仮止め接合時のボイドの発生を抑制することができる。また、前記圧電基板の表裏主面に前記パッケージ基材を接合して得られる圧電振動デバイスの気密封止に、例えばグリーンレーザー(波長:532nm)を使用する場合、グリーンレーザーに対する熱吸収率が良好である金を前記熱吸収接合材に選定することで、レーザービームに起因する熱を効率的に吸収することができる。さらに第1の熱吸収接合材が厚膜状態であることと相まって、レーザービームが金属膜(前記下地層および熱吸収接合材等)を貫通するのを抑制することができる。また、グリーンレーザーに対する吸収率が高いことから前記金属膜が溶融し易く、圧電振動デバイス全体への熱伝搬を抑制することができる。
【0017】
請求項5の発明によると、表裏主面に金属膜が形成された透光性の圧電基板と、主面周縁部分の最上面にめっき法によって形成された熱吸収接合材を有する透光性の第1および第2のパッケージ基材と、を用意し、前記金属膜に、前記熱吸収接合材が重なるように前記各パッケージ基材を前記圧電基板上に位置決め載置する位置決め工程と、前記金属膜と前記熱吸収接合材を一部または全部接合することにより、前記各パッケージ基材と前記圧電基板とを仮止め接合する仮止め工程と、前記第1のパッケージ基材の熱吸収接合材と前記圧電基板の金属膜との接合領域と、前記第2のパッケージ基材の熱吸収接合材と前記圧電基板の金属膜との接合領域とが、平面視で重ならない位置にレーザービームあるいは電子ビームを照射して前記各パッケージ基材と前記圧電基板との接合を行う本接合工程とを、有する圧電振動デバイスの製造方法であるので、例えば一方向(圧電振動デバイスの外部)からレーザービームを照射して気密封止を行う場合、レーザービームが圧電基板の内部を透過して反対側の金属膜の接合領域には到達しない。さらに、前記熱吸収接合材が厚膜状態で形成されているので、レーザービームが前記金属膜を貫通し難くなる。したがって、透過したレーザービームが圧電基板の反対側の面にある金属膜に到達し難くなるので、圧電基板の反対側の面にある金属膜に悪影響(損傷等)を与えるのを抑制することができる。なお、ここでいう前記接合領域は前記レーザービームの照射領域のことである。
【0018】
前記第1および第2のパッケージ基材の外形寸法の大小に関わらず、圧電基板とパッケージ基材との接合領域は平面視で重ならない位置関係であればよいが、例えば前記第1および第2のパッケージ基材の外形寸法が異なった形態であってもよい。このような構成であれば、前記金属膜が前記各パッケージ基材の周縁部分に形成されているので前記接合領域が平面視で重ならない構造にすることが可能となる。したがって、エネルギービームを用いて前記各パッケージ基材と圧電基板との接合を一方向から行うのに好適である。一方のパッケージ基材と圧電基板の片面との接合後に、他方のパッケージ基材と前記圧電基板の未接合面との接合のために表裏(上下)反転させる方法も可能であるが、このような方法に比べ、本発明の圧電振動デバイスであれば封止工程における作業工数を削減することができ、生産効率が向上させることができる。
【0019】
また、一方向からではなく二方向(対向する第1および第2のパッケージ基材の外側から)エネルギービームを照射する場合は、エネルギービームによる金属膜の接合領域が平面視で重ならないように、圧電振動デバイスの表裏(上下)でずれた状態でエネルギービームを照射すればよい。このように照射することで、エネルギービームが一方のパッケージ基材および透光材料からなる圧電基板の内部を透過して圧電基板の反対側の金属膜に到達しても、他方のパッケージ基材と圧電基板との接合に寄与する金属膜の接合領域へダメージを与えることがない。
【0020】
上記構成によると、第1と第2のパッケージ基材は透光性材料で形成されているが、具体的には水晶またはガラスを用い、圧電基板に例えば水晶を用いることによって、エネルギービームを効率良く透過させることができ、より精度の高い気密封止を行うことができる。
【0021】
なお、前記仮止め工程は、例えば超音波溶接法によって仮止め接合を行うことが可能であるが、治具を用いることによって行うことも可能である。つまり、前記圧電基板上にパッケージ基材に嵌合するような開口部を有する治具を用いて、圧電基板とパッケージ基材との位置決めを機械的に行う方法によって仮止め固定し、接合材部分にエネルギービームを照射することでパッケージ基材と圧電基板とを接合することができる。なお、このとき前記治具を透光性材料で形成しておけば、例えば圧電基板よりも小さい外形寸法のパッケージ基材を用いる場合に治具に直接エネルギービームを照射して当該治具の内部を透過させ、圧電基板の反対側の面にある金属膜までエネルギービームを到達させて接合を行うことも可能である。
【0022】
また、気密封止の手段としてレーザービームあるいは電子ビームを用いているので、高融点の金属膜に対しても対応可能となるとともに、例えばシーム溶接法などの加熱封止方法に比べて処理時間を短縮することができる。
【0023】
また、透光性材料からなるパッケージ基材および圧電基板の内部を透過させて接合界面にある前記金属膜を溶融させることができるので、従来のような非透光性材料からなる部材を用いてレーザービームあるいは電子ビームによって接合界面にある金属膜を溶融させる場合に比べ、封止痕が滑らかで、封止痕を狭小化することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、低背化に対応し、安定した気密封止を行うことができる圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
−第1の実施形態−
以下、圧電基板として水晶基板を用いた水晶振動子を例に挙げて、本発明による第1の実施形態について図1乃至図3に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示すパッケージ基材の長辺方向の断面図で、図2は本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図であり、図3は図2のA部拡大図である。なお、図2において水晶振動子の底面(裏面)に形成される外部接続端子と、当該外部接続端子と水晶基板の表裏主面に形成された電極とを電気的に接続する配線導体の記載は省略している。
【0026】
本実施形態で適用される水晶振動子1は、図2に示すように第1のパッケージ基材2と第2のパッケージ基材4が水晶振動片3の表裏主面に接合された構成となっている。本実施形態では前記第1と第2のパッケージ基材の各々に形成される金属膜は同一の材料で形成されているが、区別のために前記第1と第2のパッケージ基材の各々に形成される金属膜に付与する番号を変えている(第1のパッケージ基材2の下面側に形成される金属膜を第1の金属膜201、第2のパッケージ基材4の下面側に形成される金属膜を第4の金属膜401としている)。以下、水晶振動子1単体の構成要素について説明した後、水晶振動子1の製造方法について説明を行う。
【0027】
図1に示す第1のパッケージ基材は透光性材料である水晶が使用されており、平面視矩形状の基板である。第1のパッケージ基材の外形寸法は平面視において、図2に示すように水晶振動片3の外形寸法と略同一となっている。前記第1のパッケージ基材2の水晶振動片3との接合面側の周縁には、第1の金属膜201が周状に形成されている。ここで、前記第1の金属膜201は後述する第2の金属膜301の形成幅と略同一となるように形成されている。第1のパッケージ基材2は、図1に示すように片面側(水晶振動片3との接合面側)の周縁部分に金属膜(第1の金属膜201)が周状に形成されている。前記第1の金属膜201は、下地層211とその上部の第1の熱吸収接合材212とで構成されている。ここで、前記下地層211にはクロム(Cr)が、前記第1の熱吸収接合材212には金(Au)が使用されており、下地層211は真空蒸着法によって成膜されている。第1の熱吸収接合材212は電解めっき法によって成膜されており、下地層211に比して厚膜状態で成膜されている。具体的には本実施形態では前記下地層の厚みは0.01μm程度で、第1の熱吸収接合材212の厚みは1.1〜1.2μmの範囲となっている。なお、前記膜厚は一例であり、本数値に限定されるものではない。また、本実施例では第1の熱吸収接合材212を電解めっき法によって形成しているが、電解めっき法以外の手段によって形成してもよい。
【0028】
第2のパッケージ基材4の材料には、第1のパッケージ基材2と同様に水晶が使用されている。第2のパッケージ基材4も平面視矩形状の平板であり、第2のパッケージ基材4の外形寸法は水晶振動片3の外形寸法と略同一となっている。そして第2のパッケージ基材4の水晶振動片3との接合面側の周縁には、第4の金属膜401が周状に形成されている。ここで、前記第4の金属膜401の膜構成(図示せず)および材料は前記第1のパッケージ基材201と同様であり、形成幅は前記第3の金属膜302の形成幅と略同一となっている。第4の金属膜401を構成する下地層と第1の熱吸収接合材の厚みは、前記第1のパッケージ基材1における各厚みと同等である。
【0029】
図2において前記水晶振動片3は平面視矩形状のATカット水晶板であり、中央領域が薄肉となった凹陥部31と、当該凹陥部の周囲には環状の厚肉部32が形成されている。前記凹陥部31は、水晶振動子片3を薄肉化する部分以外の領域にレジストを形成し、ウエットエッチングによって形成される。
【0030】
前記凹陥部31の表裏主面には、水晶振動片3を駆動させるための一対の励振電極33が対向して形成されている。ここで、励振電極33は水晶振動片3の表裏主面に下から順に、クロム,金の膜構成で蒸着法等によって成膜されている。なお、前記電極の膜構成はこれに限定されるものではなく、その他の膜構成であってもよい。そして、前記励振電極33は引き出し電極(図示せず)と接続されており、引き出し電極の一部は、水晶振動子片3を厚み方向に縦貫する導通路(図示せず)および第2のパッケージ基材4の内部の配線導体(図示せず)を介して最終的に第2のパッケージ基材4の下面に形成された外部接続端子(図示せず)に電気的に繋がっている。水晶振動子1は前記外部接続端子が回路基板上に形成される導体(ランドパターン)に半田等によって固定されて使用されることになる。なお、前記励振電極33と前記外部接続端子との電気的接続方法は一例であり、本実施形態に限定されるものではない。
【0031】
水晶振動片3の厚肉部32の表裏主面には、第2の金属膜301および第3の金属膜302が形成されており、前記金属膜(301と302)は同一材料となっている。第2および第3の金属膜は下地層のクロムと、その上層の金層で構成されている。水晶振動片3の厚肉部32の表裏面(周縁領域)に、真空蒸着法によって周状に成膜されている。ここで、第2の金属膜301と第3の金属膜302とは平面視で重なった位置関係にある。しかしながら、レーザービームによる封止時(後述)の前記金属膜への照射位置は異なっている。つまり、レーザービームによるパッケージ基材と圧電基板との接合領域は平面視で重ならない位置関係となっている。なお、ここでいう接合領域とはレーザービームの金属膜への照射領域のことをいう。なお、第2の金属膜301と第3の金属膜302との位置関係は一例であり、前記位置関係は本実施形態に限定されるものではない。例えば、第2の金属膜301と第3の金属膜302とが平面視で前記接合領域を除いて、一部分だけが重なっている位置関係であってもよい。
【0032】
以上は水晶振動子1を構成する主要部材の説明であるが、前述の第1および第2のパッケージ基材2,4と、水晶振動片3は、それぞれウエハ状態から一括的に成形され、最終的に複数の水晶振動子が形成された後に個割り分割によって個片化される。このような方法により、水晶振動子1を構成する部材(第1および第2のパッケージ基材、水晶振動片)全てをウエハ状態で取り扱うことが可能となるため、従来のように個片状態で構成部材を取り扱う方法に比べて、取り扱いが非常に簡便になる。さらに従来のようなセラミックパッケージに比べて小型化を図ることができる。以下、一単位を構成する水晶振動子について製造方法を説明する。
【0033】
まず、第1のパッケージ基材2に形成された第1の金属膜201を、水晶振動片3の上面(第1のパッケージ基材2との接合面側)に形成されている第2の金属膜301上に、平面視で略一致するように位置決め載置される(位置決め工程)。なお、前記位置決め載置は画像認識手段によって適切な搭載位置が認識される。そして、前記位置決め工程後に、第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との仮止め接合を超音波溶接法によって行う(仮止め工程)。このとき、金属膜201、301の接触領域全体が接合されることになる。なお、前記仮止め接合は第1の金属膜201と第2の金属膜301の接触領域全体だけでなく、前記接触領域の一部が接合された状態でもよい。この場合、例えば各種ビームによって前記接触領域の一部を仮止め接合すればよい。前記超音波接合の際に、第1の熱吸収接合材212が下地層211よりも軟質金属で、かつ厚膜状態で形成されているので、接合界面における前記“山”の部分を外的加重によって変形させやすくなり、前記“谷”の部分を埋めるように金属を配することができる。これにより、パッケージ基材の圧電基板への仮止め接合時の(微視的な)僅かな傾きを抑制することができる。さらに、厚膜状態の第1の熱吸収接合材212を溶融させるため、溶融した前記接合材が接合部の空隙(ボイド)の部分を埋めるように流入することによって接合界面が平滑化され、平らな状態に近づけることができる。以上の効果によって、より確実な仮止め接合を行うことができる。
【0034】
前記仮止め接合された第1の金属膜201と第2の金属膜301に対して、真空雰囲気中で上方(具体的には仮止め接合された第1のパッケージ基材2よりも上部の位置)から、グリーンレーザーを用いてレーザービームを照射する。レーザービームは透光性材料である第1のパッケージ基材2の内部を透過して、前記仮止めされた第1の金属膜201と第2の金属膜301に到達して当該金属膜を溶融させる。このとき、図3に示すようにレーザービームは第1の金属膜201および第2の金属膜301を溶融させるが、第1の熱吸収接合材212が他の金属膜(211、312、311)に比べ厚膜状態で形成されているため、レーザービームが第1の金属膜201および第2の金属膜301を貫通し難くなる。したがって、透過したレーザービームが圧電基板の反対側の面にある金属膜に到達し難くなり、圧電基板の反対側の面にある金属膜に悪影響(損傷等)を及ぼすのを抑制することができる。これによって第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との本接合が完了する(本接合工程)。
【0035】
前記本接合工程において、第1の熱吸収接合材212と(第2の金属膜の)上層金属膜312とが金で構成されているので、グリーンレーザーの波長である532nmに対する熱吸収率が良好である。また、グリーンレーザーはレーザーパルス幅が非常に短いため、レーザー加工時に周囲への熱伝搬しにくい利点があり、レーザービームによる金属膜の溶融領域の拡大を最小化することができ、水晶振動子に形成される引き回し電極等の配線導体への悪影響を抑制することができる。
【0036】
めっき法で成膜した金属膜(めっき被膜)と、真空蒸着法によって成膜した金属膜(蒸着膜)の膜質状態を比較すると、蒸着膜の方が、めっき被膜よりも均質な状態となっており、めっき被膜の方は原子間の隙間が多い、“多孔質”な状態となっている。本実施形態ではめっき法によって形成される第1の熱吸収接合材212の厚みは、蒸着法によって形成される第2の熱吸収接合材213よりも数段に厚くなっているため、前記“多孔質”な空間をより多く有した状態となっている。このような厚膜状態の第1の熱吸収接合材212に短波長のグリーンレーザーが照射されると、ビームが膜内で多重反射を繰り返すことによって、より熱吸収率を向上させることができる。
【0037】
次に、上記第1のパッケージ基材2と接合された水晶振動片3を上下反転させ、水晶振動片3の第2のパッケージ基材4との接合面側に形成されている第3の金属膜302上に、第2のパッケージ基材4に形成された第4の金属膜401を、平面視で略一致するように、位置決め載置する(位置決め工程)。前記位置決め載置も前記画像認識手段によって適切な搭載位置が認識されるようになっている。そして、前記位置決め工程後に、前述の第3の金属膜302と第4の金属膜401を介して超音波溶接法による金の拡散接合によって、水晶振動片3と第2のパッケージ基材4との仮止め接合を行う(仮止め工程)。このとき、金属膜302、401の接触領域全体が接合されることになる。なお、前記仮止め接合は第3の金属膜302と第4の金属膜401の接触領域全体だけでなく、前記接触領域の一部が接合された状態でもよい。この場合、例えば各種ビームによって前記接触領域の一部を仮止め接合すればよい。
【0038】
前記仮止め接合された第3の金属膜302と第4の金属膜401に対して、真空雰囲気中にて、水晶振動片3の上方(具体的には仮止め接合された第3の金属膜302と第4の金属膜401に対して鉛直方向で上方から)から、グリーンレーザーを用いてレーザービームを照射する。レーザービームは透光性材料である水晶振動片3の内部を透過して、仮止め接合された第3の金属膜302と第4の金属膜401に到達して当該金属膜を溶融させる。これによって水晶振動片3と第2のパッケージ基材4との本接合を行う(本接合工程)。ただし、このときのレーザービームの照射位置は前述の第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との接合時のレーザービームの照射位置とは平面視で重ならない位置となっている。つまり、第1のパッケージ基材2と、第2のパッケージ基材4に照射されるレーザービームの位置は図2に示すように水平方向にずれた状態となっている。このようにずれた状態(接合領域が平面視で重ならない状態)でレーザービームを照射することによって、レーザービームが水晶振動片の内部を透過しても水晶振動片の表裏主面にある金属膜の接合領域に互いに損傷を与えることがない。よって、安定した気密封止を行うことができる。
【0039】
以上のように本発明による製造方法によると、前記本接合工程において接合領域は平面視で重なっていないため、レーザービームの照射時に他方の金属膜の接合領域に損傷を与えることがない。また、第1の熱吸収接合材は前記エネルギービームの照射による熱を効率良く吸収することができることに加え、厚膜状態で形成されているため熱吸収率が良好であり、金属からなる当該熱吸収接合材の一部の内部領域が溶融するので、当該熱吸収接合材の水晶振動子内部への飛散(スプラッシュ)を抑制することができる。したがって、安定した気密封止を行うことができる。また、パッケージ基材が従来のようにセラミック等の絶縁性物質(非透光性材料)で形成されている場合に比べ、本発明では透光性材料で形成されているため、レーザービームのエネルギー損失を抑制できるとともに、仮止め接合部分が可視化されているので、容易にビーム照射後の接合状態を視認することができる。
【0040】
前記本接合工程で使用されるレーザービームの照射径は、金属膜201、301、302、401の形成幅に比して小さいため、照射位置を選択することが可能である。なお、本実施形態では前記金属膜の形成幅は約150μmで、レーザービーム(後述)の照射径は80μm以下である。なお、本実施形態では本接合は真空雰囲気中にて行われているが、真空雰囲気に限定されるものではなく、例えば窒素などの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0041】
なお、超音波溶接法による仮止め接合部分の接合界面には、微視的には非常に小さな空隙(ボイド)が発生することがあるが、レーザービームを用いて仮止め接合部分の金属自体を溶融させることによって、前記空洞部分を埋めて平滑化を図ることができる。また、前記熱吸収接合材が厚膜状態で形成されているため前記平滑化効果により有効に機能する。したがって、気密不良を防止でき、安定した気密封止を行うことができる。
【0042】
本実施形態では第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との本接合を実施した後に、水晶振動片3と第2のパッケージ基材4との超音波溶接による仮止め接合および本接合を行っているが、この順序に限定されるものではない。例えば、先に水晶振動片3と第1および第2のパッケージ基材2,4との仮止め接合を行った後に、レーザービームによる本接合を行ってもよい。あるいはまた、2台のレーザー照射装置を用いることによって、第1および第2パッケージ基材2,4と水晶振動片3との本接合を一括同時に行うことも可能である。この場合、気密封止工程に要する時間を短縮することができるため、水晶振動子1の生産効率の向上に寄与する。なお、本実施形態では本接合時にグリーンレーザーを用いているが、これに限定されるものではなく、他の波長のレーザーや、電子ビームに対して本発明は適用可能である。また、本実施形態では金属膜材料として金を使用しているが、グリーンレーザー(の波長)は金に対する吸収率が良いため、封止効率を向上させることができる。なお、グリーンレーザーと金との組み合わせは一例であり、本組み合わせに限定されるものではなく、レーザー波長に応じて良好な吸収率が得られる金属材料を熱吸収接合材に選定することが可能である。
【0043】
本実施形態では第1と第2のパッケージ基材側に熱吸収接合材が形成された構成となっているが、水晶振動片側にも熱吸収接合材を形成した構成であってもよい。または、水晶振動片側だけに熱吸収接合材を形成した構成であっても本発明は適用可能である。
【0044】
また、本発明の実施形態では、2つのパッケージ基材の材料として水晶が使用されているが、水晶以外にガラスやサファイアを使用してもよい。
【0045】
−第2の実施形態−
本実施形態における第2の実施形態を、圧電基板として水晶基板を用いた水晶振動子を例に挙げて、図4乃至図6を用いて説明する。図4は本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図である。図5は図4のB部拡大図であり、図6は本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の平面図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0046】
図4に示すように、水晶振動片3の厚肉部32の表裏面には、第2の金属膜301および第3の金属膜302が形成されている。そして、前記金属膜(301と302)は下地層(Cr)の上に金層(Au)が形成された構成となっている。第2の金属膜301は水晶振動片3の上面側の周縁から内側に離間し、厚肉部32の上面の位置に真空蒸着法によって周状に成膜されている。第3の金属膜302は、水晶振動片3の下面側の周縁を含む領域に真空蒸着法によって周状に成膜されている。ここで、第2の金属膜301と第3の金属膜302とは平面視で重ならない位置関係にある。つまり金属膜(201、301と302、401)の、エネルギービームによる接合領域は重ならない位置関係にある。
【0047】
本実施形態では、図4に示す第1のパッケージ基材2は透光性材料である水晶が使用されており、平面視矩形状の基板である。そして、第1のパッケージ基材2の外形寸法は平面視において、水晶振動片3の外形寸法よりも小さくなるように形成されている。なお、第1のパッケージ基材2の周縁部分は、前記水晶振動片3の厚肉部分32の上面内側寄りの位置と、第1の金属膜201と第2の金属膜301を介して接合される。
【0048】
前記第1のパッケージ基材2の水晶振動片3との接合面側の周縁部分には、第1の金属膜201が周状に成膜されている。ここで、前記第1の金属膜201は金からなり、前記第2の金属膜301の形成幅と略同一となるように形成されている。前記第1の金属膜201は下地層211と、その上部に第2の熱吸収接合材213が、さらに上部に第1の熱吸収接合材212が積層された構成となっている(図5参照)。第1の金属膜201の構成材料としては、下地層211にクロム(Cr)が、第1および第2の熱吸収接合材(212、213)には金(Au)が使用されている。下地層211と第2の熱吸収接合材213は真空蒸着法によって成膜され、第1の熱吸収接合材212は電解めっき法によって成膜されている。なお、各層の厚みは第1の実施形態に準じる。ただし、本実施形態では第1と第2の熱吸収接合材の厚みの総和が第1の実施形態における熱吸収接合材の厚みと略同一となっている。ここで、第1の熱吸収接合材212は第2の熱吸収接合材213に比して厚膜状態で形成されている。
【0049】
第2の熱吸収接合材213は、電解めっきによる第1の熱吸収接合材212の形成時に下地層として機能する。また、フォトリソグラフィ法によって圧電基板上に所定のパターニングを行った後、水晶等からなる圧電基板をウエットエッチングする際の保護膜としても機能する。
前記第1の熱吸収接合材212は、めっき法を用いることによって真空蒸着法を用いる場合よりも厚膜状態に成膜することが可能となる。
【0050】
第2のパッケージ基材4の材料には、第1のパッケージ基材2と同様に水晶が使用されている。第2のパッケージ基材4も平面視矩形状の平板であり、第2のパッケージ基材4の外形寸法は水晶振動片3の外形寸法と略同一となっている。そして第2のパッケージ基材4の水晶振動片3との接合面側の周縁には、第4の金属膜401が周状に形成されている。ここで、前記第4の金属膜401も金が使用されており、前記第4の金属膜401の形成幅は前記第3の金属膜302の形成幅と略同一となっている。そして、パッケージ基材4の片面に形成された第4の金属膜401も前記第1のパッケージ基材2と同様に、下地層(図示せず)と、その上部に第2の熱吸収接合材(図示せず)が、さらに上部に第1の熱吸収接合材(図示せず)が積層された構成となっている。なお、前記下地層と第1および第2の熱吸収接合材の厚みは第1のパッケージ基材2に準じる。
【0051】
このような構成の圧電振動デバイスを製造する場合、第1のパッケージ基材2に形成された第1の金属膜201が、水晶振動片3の上面(第1のパッケージ基材2との接合面側)に形成されている第2の金属膜301上に、平面視で略一致するように位置決め載置される(位置決め工程)。なお、前記位置決め載置は画像認識手段によって適切な搭載位置が認識される。このとき、第1のパッケージ基材2は水晶振動片3に平面視で内包された状態となっている。前記位置決め工程後に、前述の第1の金属膜201と第2の金属膜301を介して超音波溶接法による金の拡散接合によって、第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との仮止め接合を行う(仮止め工程)。このとき、第1の熱吸収接合材212が第2の熱吸収接合材213よりも軟質金属で、かつ厚膜状態で形成されているので、接合界面における微視的に見たときの凹凸の凸部分を外的加重によって変形させやすくなり、前記凹部を埋めるように金属を配することができる。これにより、パッケージ基材の圧電基板への仮止め接合時の(微視的な)僅かな傾きを抑制することができる。さらに、厚膜状態の第1の熱吸収接合材212を溶融させるため、溶融した前記接合材が接合部の空隙(ボイド)の部分を埋めるように流入することによって接合界面が平滑化され、平らな状態に近づけることができる。以上の効果によって、より確実な仮止め接合を行うことができる。
【0052】
次に、前記仮止め接合された第1の金属膜201と第2の金属膜301に対して、真空雰囲気中にて、水晶振動片3の上方(具体的には仮止め接合された第1の金属膜201と第2の金属膜301に対して鉛直方向で上方から)から、グリーンレーザーを照射する。レーザービームは透光性材料である水晶振動片3の内部を透過して、前記第1の金属膜201と第2の金属膜301との仮止め接合部分の金属膜に到達して、当該金属膜を溶融させる。これによって水晶振動片3と第1のパッケージ基材2との本接合を行う(本接合工程)。このとき、厚膜状態の第1の熱吸収接合材の溶融により、溶融した前記接合材が接合部の空隙(ボイド)の部分を埋めるように流入することによって接合界面が平滑化され、平らな状態に近づけることができる。さらに、本実施形態では前記第1の熱吸収接合材212として軟質金属である金が、第2の熱吸収接合材213の質量よりも充分に大きな質量で形成されているため、より前記効果を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態によると、前記仮止め接合された金属膜に対し、一方向からレーザービームを照射してパッケージ基材と水晶振動片との本接合を行うので、レーザービームの照射時に水晶振動片の表裏主面の金属膜に欠損(空隙)を生じることがない。つまり、第1および第2のパッケージ基材と水晶振動片との接合領域は平面視で重なっていないため、レーザービームが第1のパッケージ基材および圧電基板の内部を透過して、第2のパッケージ基材側の金属膜に到達しても、第3および第4の金属膜の接合領域へは損傷を与えることがない。したがって、安定した気密封止を行うことができる。
【0054】
次に、水晶振動片3と第2のパッケージ基材4との接合を行うが、接合手順は前述の第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との接合方法と同様の手順であるので説明は割愛する。ただし、レーザービームの照射方向は前述の第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との接合時と同方向であるが、第1および第2のパッケージ基材と水晶振動片との接合領域は平面視で重なっていない構成であるため、レーザービームは水晶振動片3の内部を透過して第3および第4の金属膜(302、401)に到達する。このような構成により、前述の第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との接合完了部位にレーザービームが到達することがなくなるので、第1と第2の金属膜の接合領域へ損傷を与えることがない。したがって、安定した気密封止を行うことが可能となる。なお、レーザービームの照射順序は本実施形態に限定されるものではなく、本実施形態と逆の照射順序でもよい。つまり、第2のパッケージ基材への照射を先に実施してもよい。
【0055】
めっき法で成膜した金属膜(めっき被膜)と、真空蒸着法によって成膜した金属膜(蒸着膜)の膜質状態を比較すると、蒸着膜の方が、めっき被膜よりも均質な状態となっており、めっき被膜の方は原子間の隙間が多い、“多孔質”な状態となっている。本実施形態ではめっき法によって形成される第1の熱吸収接合材212の厚みは、蒸着法によって形成される第2の熱吸収接合材213よりも数段に厚くなっているため、前記“多孔質”な空間をより多く有した状態となっている。このような厚膜状態の第1の熱吸収接合材212に短波長のグリーンレーザーが照射されると、ビームが膜内で多重反射を繰り返すことによって、より熱吸収率を向上させることができる。また、レーザービーム照射によって前記熱吸収接合材の一部の内部領域が溶融するので、当該熱吸収接合材の水晶振動子内部への飛散(スプラッシュ)を抑制することができる。したがって、安定した特性の水晶振動子を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態のように、第1〜第4の金属膜を、第1と第2のパッケージ基材の周縁領域に形成するとともに、前記第1のパッケージ基材が平面視で第2のパッケージ基材に内包された状態であれば、前記接合領域が平面視で重ならない構造にすることが可能となり、接合領域も平面視で重ならない構造とすることができる。したがって、エネルギービームを用いて第1と第2のパッケージ基材と圧電基板との接合を一方向から行うのに好適である。これにより、二方向からエネルギービームを照射して接合を行う場合よりも簡便な封止工程を実現できる。また、一つのパッケージ基材と圧電基板3の片面との接合後に、もう一つのパッケージ基材と圧電基板3の片面との接合のために表裏(上下)反転させる方法も可能であるが、このような方法に比べ、本発明の圧電振動デバイスであれば封止工程における作業工数を削減することができ、生産効率が向上する。
【0057】
なお、図6に示すように、水晶振動片の内側方向(凹陥部31)から外側に離れた位置、つまり金属膜201、301、302、401の周縁に近い位置(図6のLで示す周状のライン)にレーザービームを照射すると金属膜の溶融時のスプラッシュ(溶融金属の飛散)を抑制効果が期待できるため好適である。なお、本実施形態では本接合は真空雰囲気中にて行われているが、真空雰囲気に限定されるものではなく、例えば窒素などの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0058】
−第3の実施形態−
本実施形態における第3の実施形態を、圧電薄膜共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)を例に挙げて、図7を用いて説明する。図7は第2の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図であり、前述の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0059】
第1および第2のパッケージ基材は、ともに水晶からなる平面視矩形状の平板であり、第1のパッケージ基材2は水晶基板5よりも小さな外形寸法で形成されている。第2のパッケージ基材4は水晶基板5と略同一の外形寸法となっている。そして、第1のパッケージ基材2と第2のパッケージ基材4の各々の、水晶基板5との接合面側にも第1の金属膜201と第4の金属膜401がそれぞれ周状に形成されている。なお、前記金属膜201および401の膜構成および膜厚は前記第2の実施形態と同様であるので説明は割愛する。
【0060】
本実施形態では、図7に示すように水晶基板5の上面に、下部電極36と上部電極35に挟まれるように窒化アルミニウム(AlN)の圧電薄膜34が形成されている。なお前記窒化アルミニウムの代わりに酸化亜鉛(ZnO)を用いることも可能である。そして水晶基板5の下部電極36の下部は、エッチングによってキャビティ(空洞)37が形成されている。そして前記上部電極35および下部電極36は、水晶基板5の内部を厚み方向に縦貫する導通路(図示せず)と、第2のパッケージ基材4の内部の配線導体(図示せず)を介して、最終的に第2のパッケージ基材4の下面側に形成された外部接続端子(図示せず)と電気的に繋がっている。なお、前記上部電極35および下部電極36は、(Mo)で構成されている。ここでモリブデン以外にアルミニウム(Al)やルテニウム(Ru)を用いてもよい。
【0061】
水晶基板5の表裏主面には、第2の実施形態と同様に、第2の金属膜301と第3の金属膜302が真空蒸着法によって周状に形成されている。前記金属膜301と302は図7に示すように、平面視で一部が重なった状態となっている。すなわち、第2の金属膜301の外周縁部分と、第3の金属膜302の内周縁部分を含む領域が平面視で重なった状態となっている。ただし、第1のパッケージ基材2および第2のパッケージ基材4とのレーザービームによる接合領域(具体的には第1の金属膜201および第4の金属膜401の一部領域に相当する部分)は平面視で重なっていない状態となっている。このような金属膜の配置により、例えば水晶基板5および第2のパッケージ基材4の外形寸法を縮小することができるので、圧電振動デバイスの更なる小型化を図ることが可能となる。
【0062】
第1のパッケージ基材2は、平面視で水晶基板5に内包されるように、水晶基板5の表面側に位置決め載置される(位置決め工程)。そして、前記位置決め工程後に、前記第1の金属膜201と第2の金属膜301を介して超音波溶接による仮止め接合が行われる(仮止め工程)。このとき、第1の熱吸収接合材212が第2の熱吸収接合材213よりも軟質金属で、かつ厚膜状態で形成されているので、接合界面における微視的に見たときの凹凸の凸部分を外的加重によって変形させやすくなり、前記凹部を埋めるように金属を配することができる。これにより、パッケージ基材の圧電基板への仮止め接合時の(微視的な)僅かな傾きを抑制することができるので、確実な仮止め接合が可能となる。
【0063】
第1のパッケージ基材2と水晶基板5との仮止め接合後、グリーンレーザーを前記仮止め接合部分に照射して第1のパッケージ基材2と水晶基板5との本接合を行う(本接合工程)。同様にして、水晶基板5と第2のパッケージ基材4との仮止め接合と本接合を行う。同様にして、水晶基板5と第2のパッケージ基材4との仮止め接合および本接合を行う。なお、グリーンレーザーの照射位置は前述の第2の実施形態と同様に、第1のパッケージ基材2および第2のパッケージ基材4とのレーザービームによる接合領域は平面視で重なっていないため、レーザービームが水晶基板5の内部を透過しても水晶基板5の表裏主面にある金属膜の接合領域に互いに損傷を与えることがない。よって、安定した気密封止を行うことができる。
【0064】
前記本接合工程において、前記熱吸収接合材は金からなるため、レーザービームの照射による熱を効率良く吸収することができることに加え、厚膜状態で形成されているため、熱吸収率が良好であり、当該熱吸収接合材の一部の内部領域が溶融するので当該熱吸収接合材の水晶振動子内部への飛散(スプラッシュ)を抑制することができる。よって、安定した特性の水晶振動子を提供することができる。
【0065】
また、レーザービームによって仮止め接合された部分の金属膜を溶融させることによって、
接合界面における空隙(ボイド)に溶融金属を充填させることが可能になる。これにより、前記接合界面における空隙を抑制して平らな状態に近づけることができる。その結果、良好な気密性を有する圧電薄膜デバイスを提供することができる。
【0066】
さらに、第1の熱吸収接合材が第2の熱吸収接合材に比べ厚膜状態で形成されているため、レーザービームが第1と第2の金属膜を貫通し難くなる。したがって、一方向からレーザービームをパッケージ基材に向けて照射する場合、透過したレーザービームが水晶基板5の反対側の面にある金属膜(熱吸収部材)に到達し難くなり、水晶基板5の反対側の面にある金属膜(302、401)の損傷等を防止することができる。また、前記熱吸収接合材に金を、レーザーにグリーンレーザーを用いることで、高効率でレーザービームを吸収することが可能となる。
【0067】
なお、本発明の実施形態において封止に用いられる金属膜として、金が用いられているが、これに限定されるものではなく、金以外に、金−錫合金(Au−Sn合金)や、錫−銀合金(Sn−Ag合金)、金−ゲルマニウム(Au−Ge合金)など他の金属を使用することも可能である。例えば金属膜として金−錫合金を用いる場合、金属膜の融点が低下するため、レーザーの出力を低下させて調整することによって対応が可能である。
【0068】
また、本発明の実施形態では、平面視矩形状で平板状の2つのパッケージ基材が用いられているが、これに限定されるものではなく、2つのパッケージ基材によって水晶基板に形成された励振電極を気密封止できれば、パッケージ基材の形状は任意に設定してもよい。例えば、凹状に形成された2つのパッケージ基材の凹部分が、水晶基板に対向するようにして気密接合された形態であってもよい。あるいは、平板状のパッケージ基材と水晶基板と、箱状体で凹状に形成されたパッケージ基材とで構成された形態であってもよい。
【0069】
本発明の実施形態の説明では、レーザービームを一方向から照射する例を挙げているが、一方向からに限定されるものではなく、対向する二方向からの照射であってもよい。すなわち、圧電基板を挟んで対向する2つパッケージ基材の外側(パッケージ基材の非接合面の外側)からの照射であってもよい。
【0070】
本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、集積回路等の電子部品に水晶振動子を組み込んだ水晶発振器など、電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスの製造方法にも適用可能である。
【0071】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すパッケージ基材の長辺方向の断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【図3】図2のA部拡大図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【図5】図4のB部拡大図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の平面図。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【図8】従来の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【符号の説明】
【0074】
1 水晶振動子
2 第1のパッケージ基材
3 水晶振動片
4 第2のパッケージ基材
5 水晶基板
201 第1の金属膜
301 第2の金属膜
302 第3の金属膜
401 第4の金属膜
211、311 下地層
212 第1の熱吸収接合材
213 第2の熱吸収接合材
312 上層金属膜(第2の金属膜の)
31 凹陥部
32 厚肉部
33 励振電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、当該圧電基板の表裏主面にレーザービームあるいは電子ビームによって接合される、2つの透光性のパッケージ基材とからなる圧電振動デバイスであって、
前記各パッケージ基材の前記圧電基板との接合面の少なくとも周縁部分には、金属からなる下地層と、当該下地層の上に熱吸収接合材が形成されているとともに、
前記熱吸収接合材は前記下地層よりも軟質金属で、かつ厚膜状態で形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記熱吸収接合材は、前記下地層の上に形成される第2の熱吸収接合材と、当該熱吸収接合材の上に形成される第1の熱吸収接合材の2層で構成されているとともに、
前記第1の熱吸収接合材の厚みが、前記第2の熱吸収接合材の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記第1の熱吸収接合材は、めっき法によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記熱吸収接合材が、金からなることを特徴とする請求項1乃至3に記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
表裏主面に金属膜が形成された透光性の圧電基板と、主面周縁部分の最上面にめっき法によって形成された熱吸収接合材を有する透光性の第1および第2のパッケージ基材と、を用意し、
前記金属膜に、前記熱吸収接合材が重なるように前記各パッケージ基材を前記圧電基板上に位置決め載置する位置決め工程と、
前記金属膜と前記熱吸収接合材を一部または全部接合することにより、前記各パッケージ基材と前記圧電基板とを仮止め接合する仮止め工程と、
前記第1のパッケージ基材の熱吸収接合材と前記圧電基板の金属膜との接合領域と、前記第2のパッケージ基材の熱吸収接合材と前記圧電基板の金属膜との接合領域とが、平面視で重ならない位置にレーザービームあるいは電子ビームを照射して前記各パッケージ基材と前記圧電基板との接合を行う本接合工程とを、
有する圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−135826(P2009−135826A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311487(P2007−311487)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】