圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイス
【課題】 低背化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 ベース1の凹部7の一端側に形成された一対の搭載パッド12に、端部が面取り加工された水晶振動片2の長辺方向一端側の端面と、当該端面近傍で前記凹部7の内底面と対向する面取り加工領域の一部とが、導電性接合材5によって片持ち支持接合されている。そして、前記凹部7を蓋体3で気密封止してなる水晶振動子4であって、
前記凹部7の、水晶振動片2の長辺方向他端側の下方には枕部11が形成されているとともに、当該枕部11の上面は前記搭載パッド12の上面から前記枕部11に対して水平方向に延出した仮想線Lより上方に位置している。
【解決手段】 ベース1の凹部7の一端側に形成された一対の搭載パッド12に、端部が面取り加工された水晶振動片2の長辺方向一端側の端面と、当該端面近傍で前記凹部7の内底面と対向する面取り加工領域の一部とが、導電性接合材5によって片持ち支持接合されている。そして、前記凹部7を蓋体3で気密封止してなる水晶振動子4であって、
前記凹部7の、水晶振動片2の長辺方向他端側の下方には枕部11が形成されているとともに、当該枕部11の上面は前記搭載パッド12の上面から前記枕部11に対して水平方向に延出した仮想線Lより上方に位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイス用パッケージ(べース)および、これを用いた圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面実装型の水晶振動子の一例として、端部が面取り加工された平面視矩形状の水晶振動片の長辺側の一端を、凹部を有するパッケージ(以下べースと称す)内の内底面に形成された一対の搭載パッド上に導電性接着材を介して片持ち支持接合する形態の水晶振動子がある。前記片持ち支持接合は、前記導電性接着材を予め前記一対の搭載パッド上に塗布(以下、「下塗り」と称す)した後に水晶振動片の長辺側の一端を搭載し、塗布済の前記導電性接着材の上部に、水晶振動片の前記一端の上面を被覆するようにして導電性接着材を塗布(以下、「上塗り」と称す)し、加熱雰囲気中で前記導電性接着材を硬化させることによって行われる。このとき導電性接着材の熱収縮によって、水晶振動片の自由端側が持ち上がるため、水晶振動片の最厚肉部となる長辺の中央付近はベースの内底面とは離間した状態となっている。そして、前記凹部は、矩形状の蓋体でロウ材等の封止材を介して雰囲気加熱によって気密接合される。なお、このとき加熱によって溶融した封止材は、前記凹部を囲繞する堤部分の上面から蓋体の中心方向に伸長するフィレットを形成している(図8参照)。
【0003】
前記水晶振動片として一般的に使用されるATカット水晶板は、水晶板の厚みと発振周波数が反比例の関係にあり、低周波になるほど水晶板の厚みが厚くなる。そして低周波帯のATカット水晶板では、表裏面の中央領域に形成される励振電極下に振動エネルギーを閉じ込めるとともに、水晶振動片の端部を面取り加工(ベベル加工)することによって、水晶板が支持される部分(端部)における振動エネルギーを減衰させて良好な水晶振動子の特性を得るようにしている。
【0004】
近年の圧電振動デバイスの小型化および低背化に伴い、前記ベースも小型および低背化が進行している。一方、水晶振動子の低周波化が進むと水晶振動片の厚みも更に厚くなり、前記面取り加工された水晶振動片の最大厚み(中央付近)と最小厚み(端部)の差が拡大し、両凸レンズ状の断面形状に近づいてくる。このような水晶振動片を、低背化および小型化に対応したベースの内底面の搭載パッド上に導電性接着材を用いて接合する場合、上塗りした導電性接着材と、前記封止材のフィレットとの間隙が非常に小さくなり、近接した状態となってしまうため、前記上塗りが困難になってきている。しかし、上塗りを行わず下塗りだけでは、導電性接着材の硬化時の収縮によって、水晶振動子片の自由端側を充分に持ち上げることができず、水晶振動片の頂部(主面中央付近)とベースの内底面とが接触してしまうことがあった(図12参照)。自由端側を支持するために、水晶振動片の自由端近傍の下方に突起状の枕部が形成された形態の圧電振動デバイスは、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−008387号
【0006】
しかしながら、近年の圧電振動デバイスの小型化および、低背化に伴う水晶振動片の小型化に加え、低周波化によって水晶振動片の厚みが従来よりも厚くなって自重が増してくると、枕部を水晶振動片の自由端側の下方に配置しても、図13に示すように水晶振動片2の頂部の方が枕部11よりも先にベース1の内底面と接触してしまい、枕部11が有効に機能しなくなってきている。なお、ここで搭載パッド12と枕部11の高さは、ほぼ同等となっている(仮想線参照)。水晶振動片とベースの内底面とが接触してしまうと、水晶振動子の諸特性に悪影響を及ぼしていた。また、定常状態において水晶振動片の頂部とベースの内底面とが接触していない(近接している)場合であっても、外的要因による衝撃を受けた際に、水晶振動片の自由端側が変位することによって、前記頂部とベースの内底面とが接触し、前記励振電極のキズや発振停止等の不具合が生じることがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低背化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明によれば、少なくとも長辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子を収容するための凹部と、前記圧電振動素子の長辺方向一端側と接合される一対の搭載パッドと、前記圧電振動素子の長辺方向他端側の下方に位置する枕部とを前記凹部の内底面に具備する平面視矩形状のベースであって、前記枕部の上面が、前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置しているので、圧電振動素子の前記搭載パッドへの搭載時に、圧電振動素子の曲面の頂部(圧電振動素子の長辺の略中央部分で、最厚肉部となる部分)がベース内底部と接触することがない。つまり、圧電振動素子の自由端側が、先に前記枕部と接触するため、圧電振動素子の頂部とベース内底面との接触を防止することができる。なお、前記面取り加工は圧電振動素子の長辺端部に限定されるものではなく、短辺端部も面取り加工された圧電振動素子に対しても適用可能である。
【0009】
上記構成によると、圧電振動素子の長辺方向一端側が、例えば導電性接合材のペーストを介して一対の搭載パッドと片持ち支持接合される場合、前記導電性接合材の硬化時の収縮によって圧電振動片の自由端側が持ち上がり、定常状態で当該自由端側と枕部とが僅かに離間した状態(近接状態)となることがある。このような状態であっても、外的要因による衝撃を受けた際にも圧電振動素子の自由端側に近接する領域と枕部とが当接するだけであり、圧電振動素子(頂部)とベース内底面とは接触することはない。これは圧電振動素子の自由端側の近傍領域と枕部とが接触した状態となっても、前記頂部とベース内底面との間隙は確保されているためである。
【0010】
また、矩形状の圧電振動素子の前記面取り加工を、圧電振動素子の断面が両凸レンズ状(バイ・コンベックス形状)になるまで行った場合、長辺側と短辺側が同時に加工され、長辺および短辺ともに辺の中央付近が最も厚くなる。このような場合、前記枕部は、圧電振動素子の自由端付近で、圧電振動素子の短辺の略中央に近接する位置に形成することが好ましい。これは圧電振動素子の短辺方向における頂部付近の下方に相当する位置に枕部を形成することで、枕部の絶対的な形成厚み(高さ)を最小化することができるためである。また、前記構成の場合、外部衝撃を受けた際の圧電振動素子の短辺方向における変位量の抑制に最も効果的な位置となる。つまり、外部衝撃を受けて圧電振動素子が撓んだ際に、圧電振動素子の自由端における曲面頂部(短辺方向の略中央部分)が前記枕部と接触するため、圧電振動素子の撓み量を抑制することができ、耐衝撃性能が向上する。なお、上述の面取り加工は圧電振動片の両面(表裏)に限定されるものではなく、片面だけが面取り加工された形状であっても適用可能である。すなわち、凸状曲面が形成された側の面が、ベース内底面に対向して搭載される圧電振動素子に対しても前記構成は有効である。
【0011】
前記構成において、枕部は圧電振動素子の短辺方向における頂部付近の、下方に1箇所だけ形成するだけでなく、複数形成してもよい。例えば、圧電振動素子の短辺の中心を通る直線を基準として、短辺方向に対称となる位置に2つの枕部を形成してもよい。このような構成においても、前記2つの枕部上面の位置は、搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置している。
【0012】
上記構成の場合、枕部が1箇所だけに形成されている場合よりも、圧電振動片と枕部との接触時に受ける応力を分散させることができる。したがって応力集中の抑制効果によって、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、前記枕部が導電性材料の積層体で形成されているベースであるので、例えばタングステンなどの金属材料を多段に積層することで容易に枕部を形成することができる。圧電振動素子の表裏面には圧電振動素子を駆動させるための励振電極が形成されるが、請求項2の発明によると、外部衝撃を受けた際に前記励振電極と、導電性材料で形成された枕部とが接触しないように、予め励振電極の形成位置を考慮して設計することで、励振電極と枕部の接触時の電荷移動に伴う周波数変化を防止することが可能である。
【0014】
あるいはまた、導電性材料で枕部を形成し、少なくとも最上層を絶縁性材料で被覆することによっても前記電荷移動に伴う周波数変化を防止することができる。例えば絶縁性の樹脂によって枕部の表面を被覆する。前記励振電極の面積を圧電振動素子の周縁付近まで大きく設計した場合において、圧電振動素子の自由端付近と枕部とが定常状態で接触した状態、あるいは非接触の状態から外部衝撃によって接触状態に変化したときでも、枕部の接触面(上面)は絶縁状態となっているため、前記接触による電荷の移動が無く、励振電極間の容量変化を防止することができる。よって、圧電振動デバイスの周波数の変化を防止することができ、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイスを得ることができる。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、平面視略矩形状の前記圧電振動素子は、長辺および短辺の端部が面取り加工され、前記矩形の4隅における厚さが、当該矩形の長辺および短辺の中央部の厚さよりも薄く、4隅の表裏主面が近接している。このような圧電振動素子の周縁近傍における断面形状は、長辺および短辺方向の端部が、当該長辺および短辺の中央部分よりも非常に薄肉となった形状となっている。つまり、断面視で両凸レンズ状で、前記面取り加工された圧電振動素子の最大厚み(長辺および短辺の各中央付近)と最小厚み(4隅部分)の差が大きい断面形状となっている。このような形状の圧電振動素子においても、前記枕部の上面が前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置しているため、圧電振動素子の前記搭載パッドへの搭載時に、圧電振動素子の曲面の頂部(圧電振動素子の長辺の略中央部分で、最厚肉部となる部分)がベース内底面と接触することがない。
【0016】
なお、前記構成において枕部を圧電振動素子の自由端側の2つの角部の下方に各々形成してもよい。そして、前記枕部を例えば3層の積層体で形成し、最下層の上に、前記最下層よりも面積が小さい中間層を積層し、さらに中間層の上部に中間層よりも面積が小さい最上層を積層し、上層に行くほど面積が小さく、かつ一方向に漸次偏って積層されるようにする。つまり、圧電振動素子を一対の搭載パッド上に搭載したときに、前記最下層および前記中間層に平面視で圧電振動素子の縁部(角部近傍領域)が位置するように、一方向に漸次偏った階段状の枕部を配置する。このような形状の枕部を形成することによって、圧電振動素子を前記ベース内部に安定して搭載することができる。具体的に、一対の搭載パッド上に例えば導電性接合材を形成しておき、圧電振動素子を吸引ツールを用いて保持し、圧電振動素子の一短辺端部を導電性接合材上に載置する際、圧電振動素子に僅かな回転が生じて載置ずれが発生することがあるが、前記構成の枕部によって前記載置ずれを抑制することができる。つまり、前記枕部をベース内底面の適正な位置に配置することにより、圧電振動素子のベース内部への搭載時に回転が生じたとしても、当該枕部の最上層に圧電振動素子が接触して適正位置へ誘導される“ガイド”の機能を有するためである。
【0017】
また、請求項4にかかる発明によれば、請求項1乃至2に記載のベースを使用し、前記搭載パッドと、少なくとも長辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子の長辺方向一端側とを導電性接合材を介して接合し、前記ベースと板状の蓋体とを、当該ベースから前記蓋体の中心方向に伸長する封止材のフィレットを有する状態で気密封止した圧電振動デバイスであり、圧電振動素子の前記一端側の少なくとも、端面と、当該端面近傍で前記凹部の内底面と対向する面取り加工領域の一部とが、前記導電性接合材により前記搭載パッドに接合されている。そして、前記枕部の上面は、前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置している。上記構成によって、圧電振動素子の自由端側が先に前記枕部と接触する。このため、圧電振動素子の前記搭載パッドへの接合後の、圧電振動素子の曲面の頂部とベース内底部との接触を防止することができ、信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、低背化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供すること提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態において、圧電デバイスとして表面実装型の水晶振動子を例に挙げている。
【0020】
−第1の実施形態−
本発明による第1の実施形態を、図1乃至図5を基に説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向における断面図であり、図2は本発明の第1の実施形態を示すベースに水晶振動片が搭載された状態を示す平面図である。図3は図2のA−A線におけるベース単体の長辺方向における断面図であり、図4は図3において搭載パッドに導電性接合材が塗布された状態を示しており、図5は図4において水晶振動片が接合された状態を示している。なお、図1および図5において、水晶振動片の表裏面に形成される電極(詳細は後述)の記載は省略している。また、図1および、図3乃至図5においてベース底面(裏面)に形成される外部接続端子と、当該外部接続端子とベース内部の搭載パッドとを電気的に接続するための接続手段の記載は省略している。まず前記各構成部材について図1乃至図3を参照しながら説明した後、本実施形態で適用される水晶振動子の製造方法について図4乃至図5を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明による水晶振動子4は断面視凹状のベース1と、平面視矩形状の水晶振動片2と、平板状の蓋体3とから構成されている。水晶振動片2の長辺の一端側は、ベース1の内底面に形成された搭載パッド12の上部に導電性接合材5を介して接合されている。そして、ベース1の堤部10の上面と蓋体3とが、封止材6を介して気密接合されている。
【0022】
図1において、ベース1は平面視矩形状の容器体であり、アルミナセラミック材料から成る2枚のセラミックグリーンシートから構成されている。ベース1は平板状の第1シート1aの上部に、枠状の第2シート1bが積層され、焼成によって一体的に形成されており、前記枠状の第2シート1bによって凹部7が形成されている。前記第2シート1bの上面(堤部10の上面)は平坦な状態となっている。なお、本実施形態において前記ベース1の外形寸法は、長辺×短辺=2.5mm×2.0mmで、高さは約0.5mmとなっている。なお、前記ベース外形寸法は一例であり、前記外形寸法に限定されるものではない。
【0023】
図2に示すように前記凹部7の長手方向一端側の、前記第1シート1a上面には一対の搭載パッド12が並列して形成されている。前記搭載パッド12は、前記第1シート1aの上面にタングステンメタライズ処理を施し、その上部にニッケルメッキ処理が、さらにその上部に金メッキ処理が施されている。そして、前記搭載パッド12は、ベース1の底面(裏面)に形成されている外部接続端子(図示せず)と、ベース1の外周上下部の4角に形成されたキャスタレーション(C1〜C4)を介して電気的に接続されている。なお、前記搭載パッド12と前記外部接続端子との電気的接続は、導体が充填された導通路(ビアホール)を形成することによって行ってもよい。
【0024】
枕部11は、図1に示すように前記一対の搭載パッド12と対向し、凹部7の長手方向他端側の前記第1シート1aの上面に、水晶振動片2の自由端側と近接する位置に形成されている。本実施形態では前記枕部11は導電性材料によって形成されている。なお、この場合、水晶振動片をベース内部に収容した際に、後述する水晶振動片の表裏面に形成される電極(金属膜)の一部が平面視で、前記枕部11と重ならないような位置に設計される。なお、前記電極の一部が前記枕部11と平面視で重なる場合は、前記枕部11は絶縁性材料で形成することが好ましい。これは水晶振動片をベース内部に収容した際に、枕部と前記電極が接触している場合や、定常状態では枕部と前記電極とが離間していても外的衝撃によって接触してしまう場合の電荷移動を防止するためである。電荷の移動を防止することで、不要な容量の発生を抑制でき、結果として周波数変化を抑制することができる。しかしながら、前記枕部11を導電性材料によって形成した場合であっても。当該枕部の最上層を絶縁性材料で被覆することによって、枕部と電極との接触時の電荷移動を防止することは可能である。
【0025】
本実施形態では、前記枕部11は導電性材料から成る直方体状の突起物であり、図3に示すように、タングステンメタライズを3層、積層することによって形成されている。具体的にはベース1を構成する2枚のセラミックグリーンシートの内、底面に相当する第1シート1aに、所定形状の配線導体をメタライズによって形成した後、枕部11および搭載パッド12を形成する領域と、第2シート1bが積層される領域以外の部分をマスキングして、タングステンをスキージすることによって1層分のタングステン層を形成する。その後、上記のマスキング処理を再度行い、タングステンをスキージすることによって2層分の搭載パッドおよび枕部が積層された状態となる。搭載パッド12は上記スキージ処理を2回行った後、さらに表面処理が施される。具体的には前記タングステンの表面に、まずニッケルめっき処理が、次いで金めっき処理が施されて搭載パッド12の作製完了となる。前記2回目のスキージ処理を行った後、前記搭載パッド12の上面もマスキングし、枕部11の形成領域については開口した状態のままとする。そして、3回目のスキージ処理を行うことによって3層のタングステンが積層されて枕部11の完成となる。
【0026】
本実施形態において、枕部11は3層全てが平面視で同一面積にて形成されているが、これに限定されるものではなく、3層の面積が異なった形態であってもよい。例えば、最下層(枕部第1層目)の上に、前記最下層よりも面積が小さい中間層(枕部第2層)を積層し、さらにその上部に前記中間層よりも面積が小さい最上層を積層し、上層にいくほど面積が小さくなった,例えば“ピラミッド状”に積層した形態であってもよい(図示せず)。このように枕部を成型することによって、水晶振動片2の曲面形状に対応した断面形状に近づけることができ、多段構成の枕部の稜線部分で、水晶振動片2と線接触するようにできるため、抗力を複数箇所に分散させることができる。
【0027】
本実施形態において、枕部11はタングステンメタライズを3層積層した構造としているが、これに限定されるものではなく、3層以上積層した構造にしてもよい。
【0028】
上記のように形成された枕部11と、一対の搭載パッド12の、高さ(厚み)方向における相対関係は、図1に示すように枕部11の方が搭載パッド12よりも高くなっている。すなわち、前記枕部11の上面が、前記一対の搭載パッド12の上面から当該枕部11に対して水平方向に延出した仮想線Lよりも上方に位置している。このような相対位置関係によって、搭載パッド12上に、端部が面取り加工された水晶振動片2の長辺一端側を導電性接合材を用いて接合したときに、水晶振動片2の頂部(最厚肉部)がベース内底面(第1シート1aの上面)に接触するよりも前に、水晶振動片2が枕部11と接触するようになる。したがって水晶振動子2に外部衝撃が加わったとしても、水晶振動片2の頂部とベース内底面との接触を回避することができる。なお、本実施形態において前記枕部11の外形寸法は、0.2mm×0.15mmであるが、枕部の外形寸法は前記外形寸法に限定されるものではない。本実施形態では、前記搭載パッド12の高さは約40μmで、前記枕部11の高さは約45μmとなっている。
【0029】
次に、本実施形態で使用される水晶振動片2について説明する。図1で水晶振動片2は、平面視矩形状のATカット水晶板であり、長辺および短辺の両方において面取り加工が施されている。そして、前記水晶振動片2は主面(フラットな部分)領域を有しており、2種類の曲率を有する曲面が形成されるように面取り加工が施されている。なお、前記水晶振動片では端部付近が面取り加工された水晶振動片を例として挙げているが、表裏両面が凸レンズ状(バイ・コンベックス形状)や、片面だけが凸レンズ状(プラノ・コンベックス形状)となるように加工された水晶振動片に対しても本発明は適用可能である。
【0030】
本発明の実施形態において使用される水晶振動片の発振周波数は、基本波振動モードで13MHzである。なお、前記周波数は一例であり、基本波振動モードで13MHz以外の周波数帯においても本発明の適用は可能であるが、基本波振動モードで16MHz以下の周波数帯において、特に本発明の構成が有効に機能する。
【0031】
図2に示すように、水晶振動片2の表裏面には、当該水晶振動片2を駆動させるための励振電極21a、21b(裏面側の21bは図示せず)と、前記励振電極から引き出される引出電極22a、22b(裏面側の22bは図示せず)と、前記引出電極と接続し,水晶振動片2の短辺端部両側に形成された一対の接続電極23a、23b(裏面側の23bは図示せず)とが形成されている。これらの電極は水晶振動片の上に、クロム(Cr)−金(Au)−クロム(Cr)の順序で蒸着法等によって成膜される。なお、前記電極の膜構成は、これに限定されるものではなく、例えば水晶振動板の上に、Cr−Auの順に、あるいは水晶振動板の上に、Cr−Ag(銀)の順に、または水晶振動板の上に、Cr−Ag−Crの順で膜構成されたものであってもよい。なお、前述したように、本実施形態では水晶振動片2をベース1の凹部7に収容したときの、水晶振動片2の裏面側の前記励振電極21bと、枕部11とは平面視で重ならない位置関係となっている。以上が水晶振動片2についての説明である。
【0032】
次に、本実施形態で使用される蓋体3は平面視矩形状であり、セラミック材料で構成されている。前記蓋体3の平面視の面積は、ベース1の平面視の面積よりも僅かに小さくなっている。そして、前記蓋体3の下面、すなわちベース1の堤部10の上面との接合面側の周縁には封止材6が周状に形成されている。本実施形態では前記封止材6として低融点ガラスが使用されている。ここで前記封止材6の幅寸法は、ベース1の堤部10の幅寸法よりも大きくなっている。なお、上記蓋体3に形成された封止材6の幅寸法と、ベース1の堤部10の幅寸法との大小関係は一例であり、これに限定されるものではない。例えば封止材6の幅寸法と堤部10の幅寸法は同等であってもよい。
【0033】
本実施形態では、前記蓋体の材料としてセラミック材料が用いられているが、セラミック材料以外に、コバールを母材として、その周囲にニッケルめっき層、金めっき層が形成された金属性材料を用いてもよい。この場合、封止材としてAn−Sn合金等の金属ロウ材が使用される。以上が水晶振動子の各構成部材についての説明である。
【0034】
次に、本発明における水晶振動子の製造方法について、図4乃至図5に基づいて説明を行う。まず、図4に示すようにベース1の内底面に形成された一対の搭載パッド12の上に導電性接合材5を、ディスペンサを用いて塗布する。そして、所定形状に端面加工された水晶振動片2の長辺一端側(前述の一対の接続電極23a、23bが形成されている短辺端部)を、先ほど2つの搭載パッド上に塗布した導電性接合材5の上に載置する。そして、所定温度プロファイルに制御された加熱雰囲気中にて導電性接合材5を硬化させる。ここで、水晶振動片2の前記一端側(固定端となる側)の端面(短辺の側面部分)と、当該端面の近傍で、下面側の面取加工領域(凹部7の内底面と対向する側の面取り加工領域)の一部とが、導電性接合材5によって搭載パッド12と接合されている。なお、導電性接合材5は上面側の面取り領域(凹部7の内底面と対向しない側の面取り領域)に多くの量の導電性接合材が及ばない構成が、水晶振動子の内部クリアランスの点から好ましい。
【0035】
本実施形態では前記導電性接合材として、シリコーン系の導電性樹脂接合材が使用されている。なお、導電性接合材5はシリコーン系の導電性樹脂接合材に限定されるものではなく、シリコーン系以外にもエポキシ系などの導電性樹脂接合材を使用してもよい。
【0036】
前記導電性接合材の硬化時には、導電性接合材の熱収縮によって収縮応力が発生し、当該応力によって、水晶振動片2の自由端側は上方へ持ち上げられる方向に応力が働く。本実施形態では水晶振動片2と搭載パッド12との接合が完了した状態(定常状態)において、図5に示すように枕部11の一部が水晶振動片2の自由端に近接した部分と接触し、水晶振動片2は固定端側の方向に僅かに傾斜した状態となって搭載パッド12と枕部11によって支持されている。なお、水晶振動片2と搭載パッド12との接合が完了した状態(定常状態)において、枕部11が水晶振動片2の自由端と離間していてもよい。
【0037】
前記水晶振動片2と前記搭載パッド12との接合後に、発振周波数の微調整を行った後、前記ベース1の堤部10の上面に、外周が略一致するようにして蓋体3を載置する(図5参照)。このとき、蓋体3の周縁に形成された封止材6と前記堤部10の上面とは当接しており、封止材6は凹部内側方向へ張り出した状態となっている。そして、この状態で所定温度に加熱することによって封止材6を溶融させ、蓋体3とベース1とを気密接合する。なお、前記気密接合は、堤部10の上面から蓋体3の中心方向に伸長する封止材6のフィレット61が形成されている。これにより、より確実な気密封止が可能となっている。以上の工程により、表面実装型の水晶振動子4の完成となる。
【0038】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態を、図6乃至図7を用いて説明する。図6は本発明の第2の実施形態を示すベースの平面図であり、図7は図6のB−B線における断面図である。図7において、水晶振動片の表裏面に形成される電極と、ベース底面に形成される外部接続端子、キャスタレーションの記載は省略している。なお、前述の実施形態と同様の構成部分については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同様の効果を有する。
【0039】
図6において、枕部13は凹部7の底面の一端側に並列形成されており、水晶振動片2をベース1の内部に収容したときに、水晶振動片2の自由端寄りで、短辺方向の面取りされた部分(曲面部分)と対応した位置に一対で配置されている。具体的にはベース1の2短辺の中心を結んだ直線を基準線として、当該基準線を挟んで両側に一定距離だけ離間して、凹部7の底面の一端側に枕部13が2つ形成されている。そして、前記一対の枕部13の高さ(厚み)は、搭載パッド12の上面から枕部13へ向かって水平方向に延出した仮想線(図示せず)よりも枕部13の上面が上方に位置するように形成されている。
【0040】
なお、第2の実施形態の変形例として、図8乃至9に示すように2つの枕部13,13を水晶振動片2の自由端側から内側方向に離間した位置の下方に形成してもよい。このような位置に枕部を形成すれば、外部衝撃を受けた際に水晶振動片2の自由端側よりも厚肉となる領域で水晶振動片が枕部13と接触することになり、水晶振動片2の頂部のベース1の内底面との接触を防止することができる。
【0041】
また、前記枕部13の高さは、第1の実施形態における枕部11の高さに比べ、高くなるように形成されている。これは水晶振動片2の面取り加工が長辺方向だけでなく短辺方向においても施されているとともに、2つの枕部13が短辺方向における頂部(最厚肉部であり、短辺方向の略中央部分に相当)の下方から、凹部7の両端寄りの離れた位置に形成されているためである。すなわち、図7に示すように水晶振動片2の面取り部分(曲面部分)に枕部13を近接させるためである。このような構造により、水晶振動片2の前記搭載パッド12への搭載時に、水晶振動片2の曲面の頂部(最厚肉部)がベース内底部と接触することがない。つまり、水晶振動片2の自由端側が先に前記枕部と接触して、水晶振動片2の頂部とベース内底面とは接触することがない。また、導電性接合材5の硬化時の収縮によって水晶振動片2の自由端側が持ち上がって、定常状態で当該自由端側と枕部13とが僅かに離間した状態であっても、外的要因による衝撃を受けた際に、水晶振動片2の自由端側に近接する領域と枕部13とが当接するだけであり、水晶振動片2(頂部)とベース内底面とは接触することがない。これは、前記頂部とベース内底面との間隙が確保されているためであり、これにより、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイスを提供することができる。
【0042】
−第3の実施形態−
本発明の第3の実施形態を、図10乃至図11を用いて説明する。図10は本発明の第3の実施形態を示すベースの平面図であり、図11は図10のD−D線における断面図である。図10乃至11において、水晶振動片の表裏面に形成される電極と、ベース底面に形成される外部接続端子、キャスタレーションの記載は省略している。なお、前述の実施形態と同様の構成部分については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同様の効果を有する。
【0043】
図10乃至11によれば、平面視略矩形状の水晶振動片2は、長辺および短辺の端部が面取り加工され、前記矩形の4隅における厚さは当該矩形の長辺および短辺の中央部の厚さよりも薄くなっている。そして、水晶振動片2の4隅の表裏主面が近接した形状となっている。このような水晶振動片2の周縁近傍における断面形状は、長辺および短辺方向の端部が、当該長辺および短辺の中央部分よりも非常に薄肉となっており、水晶振動片の平面視で中心付近のフラットな領域(主面)が少なく、その周囲の曲面の領域が多い形状となっている。つまり、断面視で略両凸レンズ状で、前記面取り加工された圧電振動素子の最大厚み(長辺および短辺の各中央付近)と最小厚み(4隅部分)の差が大きい断面形状となっている。
【0044】
このような形状の水晶振動片においても、枕部13の上面が一対の搭載パッド12,12の上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線Lより上方に位置しているため、水晶振動片2の前記搭載パッドへの搭載時に、水晶振動片の曲面の頂部(水晶振動片の長辺の略中央部分で、最厚肉部となる部分)がベース内底面と接触することがない。
【0045】
本実施形態では、枕部13は水晶振動片2の自由端側の2つの角部の下方に各々形成されている。前記枕部13は3層の積層体で形成されており、最下層の上に、前記最下層よりも面積が小さい中間層を積層し、さらに中間層の上部に中間層よりも面積が小さい最上層を積層し、上層に行くほど面積が小さく、かつ一方向に漸次偏って積層されている。つまり、水晶振動片2を一対の搭載パッド12,12上に搭載したときに、前記最下層および前記中間層に平面視で水晶振動片の縁部(角部近傍領域)が位置するように、一方向に漸次偏った階段状の枕部13,13が配置されている。このような形状の枕部を形成することによって、水晶振動片2をベース内部に安定して搭載することができる。具体的に、一対の搭載パッド12,12上に導電性接合材5,5を形成しておき、水晶振動片を吸引ツールを用いて保持し、水晶振動片の一短辺端部を導電性接合材上に載置する際、水晶振動片に僅かな回転が生じて載置ずれが発生することがあるが、本構造の枕部によって前記載置ずれを抑制することができる。つまり、枕部13をベース内底面の適正な位置に配置することにより、水晶振動片のベース内部への搭載時に回転が生じたとしても、当該枕部の最上層に水晶振動片が接触して適正位置へ誘導される“ガイド”の機能を有するためである。なお、本構造の枕部はベースの堤部10と繋がった状態で形成されていてもよい。
【0046】
本発明の実施形態では蓋体側にだけ封止材が形成され、ベース側には封止材が形成されていない構成となっているが、前記構成に限定されるものではなく、例えばベースの堤部上面にだけ封止材が形成された構成や、蓋体とベースの両方に封止材が形成された構成であってもよい。
【0047】
さらに本発明の実施形態では、封止材としてガラス材を例にしているが、セラミックベースと金属製の蓋体を用い、封止材に銀ロウ材等のロウ材を用いたレーザー封止、電子ビーム封止による封止等でも適用できる。さらに本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶と他の電子部品素子を組み込んだ水晶発振器など、電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスにも適用可能である。
【0048】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向における断面図。
【図2】本発明のベースに水晶振動片が搭載された状態を示す平面図。
【図3】図2のA−A線におけるベース単体の長辺方向における断面図。
【図4】図3において導電性接合材が塗布された状態を示す断面図。
【図5】図4において水晶振動片が接合された状態を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示すベースの平面図。
【図7】図6のB−B線における断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態のその他の例を示すベースの平面図。
【図9】図8のC−C線における断面図。
【図10】発明の第3の実施形態を示すベースの平面図。
【図11】図10のD−D線における断面図。
【図12】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図。
【図13】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 ベース
2 水晶振動片
3 蓋体
4 水晶振動子
5 導電性接合材
6 封止材
7 凹部
10 堤部
11、13 枕部
12 搭載パッド
1a 第1シート
1b 第2シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイス用パッケージ(べース)および、これを用いた圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面実装型の水晶振動子の一例として、端部が面取り加工された平面視矩形状の水晶振動片の長辺側の一端を、凹部を有するパッケージ(以下べースと称す)内の内底面に形成された一対の搭載パッド上に導電性接着材を介して片持ち支持接合する形態の水晶振動子がある。前記片持ち支持接合は、前記導電性接着材を予め前記一対の搭載パッド上に塗布(以下、「下塗り」と称す)した後に水晶振動片の長辺側の一端を搭載し、塗布済の前記導電性接着材の上部に、水晶振動片の前記一端の上面を被覆するようにして導電性接着材を塗布(以下、「上塗り」と称す)し、加熱雰囲気中で前記導電性接着材を硬化させることによって行われる。このとき導電性接着材の熱収縮によって、水晶振動片の自由端側が持ち上がるため、水晶振動片の最厚肉部となる長辺の中央付近はベースの内底面とは離間した状態となっている。そして、前記凹部は、矩形状の蓋体でロウ材等の封止材を介して雰囲気加熱によって気密接合される。なお、このとき加熱によって溶融した封止材は、前記凹部を囲繞する堤部分の上面から蓋体の中心方向に伸長するフィレットを形成している(図8参照)。
【0003】
前記水晶振動片として一般的に使用されるATカット水晶板は、水晶板の厚みと発振周波数が反比例の関係にあり、低周波になるほど水晶板の厚みが厚くなる。そして低周波帯のATカット水晶板では、表裏面の中央領域に形成される励振電極下に振動エネルギーを閉じ込めるとともに、水晶振動片の端部を面取り加工(ベベル加工)することによって、水晶板が支持される部分(端部)における振動エネルギーを減衰させて良好な水晶振動子の特性を得るようにしている。
【0004】
近年の圧電振動デバイスの小型化および低背化に伴い、前記ベースも小型および低背化が進行している。一方、水晶振動子の低周波化が進むと水晶振動片の厚みも更に厚くなり、前記面取り加工された水晶振動片の最大厚み(中央付近)と最小厚み(端部)の差が拡大し、両凸レンズ状の断面形状に近づいてくる。このような水晶振動片を、低背化および小型化に対応したベースの内底面の搭載パッド上に導電性接着材を用いて接合する場合、上塗りした導電性接着材と、前記封止材のフィレットとの間隙が非常に小さくなり、近接した状態となってしまうため、前記上塗りが困難になってきている。しかし、上塗りを行わず下塗りだけでは、導電性接着材の硬化時の収縮によって、水晶振動子片の自由端側を充分に持ち上げることができず、水晶振動片の頂部(主面中央付近)とベースの内底面とが接触してしまうことがあった(図12参照)。自由端側を支持するために、水晶振動片の自由端近傍の下方に突起状の枕部が形成された形態の圧電振動デバイスは、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−008387号
【0006】
しかしながら、近年の圧電振動デバイスの小型化および、低背化に伴う水晶振動片の小型化に加え、低周波化によって水晶振動片の厚みが従来よりも厚くなって自重が増してくると、枕部を水晶振動片の自由端側の下方に配置しても、図13に示すように水晶振動片2の頂部の方が枕部11よりも先にベース1の内底面と接触してしまい、枕部11が有効に機能しなくなってきている。なお、ここで搭載パッド12と枕部11の高さは、ほぼ同等となっている(仮想線参照)。水晶振動片とベースの内底面とが接触してしまうと、水晶振動子の諸特性に悪影響を及ぼしていた。また、定常状態において水晶振動片の頂部とベースの内底面とが接触していない(近接している)場合であっても、外的要因による衝撃を受けた際に、水晶振動片の自由端側が変位することによって、前記頂部とベースの内底面とが接触し、前記励振電極のキズや発振停止等の不具合が生じることがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低背化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明によれば、少なくとも長辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子を収容するための凹部と、前記圧電振動素子の長辺方向一端側と接合される一対の搭載パッドと、前記圧電振動素子の長辺方向他端側の下方に位置する枕部とを前記凹部の内底面に具備する平面視矩形状のベースであって、前記枕部の上面が、前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置しているので、圧電振動素子の前記搭載パッドへの搭載時に、圧電振動素子の曲面の頂部(圧電振動素子の長辺の略中央部分で、最厚肉部となる部分)がベース内底部と接触することがない。つまり、圧電振動素子の自由端側が、先に前記枕部と接触するため、圧電振動素子の頂部とベース内底面との接触を防止することができる。なお、前記面取り加工は圧電振動素子の長辺端部に限定されるものではなく、短辺端部も面取り加工された圧電振動素子に対しても適用可能である。
【0009】
上記構成によると、圧電振動素子の長辺方向一端側が、例えば導電性接合材のペーストを介して一対の搭載パッドと片持ち支持接合される場合、前記導電性接合材の硬化時の収縮によって圧電振動片の自由端側が持ち上がり、定常状態で当該自由端側と枕部とが僅かに離間した状態(近接状態)となることがある。このような状態であっても、外的要因による衝撃を受けた際にも圧電振動素子の自由端側に近接する領域と枕部とが当接するだけであり、圧電振動素子(頂部)とベース内底面とは接触することはない。これは圧電振動素子の自由端側の近傍領域と枕部とが接触した状態となっても、前記頂部とベース内底面との間隙は確保されているためである。
【0010】
また、矩形状の圧電振動素子の前記面取り加工を、圧電振動素子の断面が両凸レンズ状(バイ・コンベックス形状)になるまで行った場合、長辺側と短辺側が同時に加工され、長辺および短辺ともに辺の中央付近が最も厚くなる。このような場合、前記枕部は、圧電振動素子の自由端付近で、圧電振動素子の短辺の略中央に近接する位置に形成することが好ましい。これは圧電振動素子の短辺方向における頂部付近の下方に相当する位置に枕部を形成することで、枕部の絶対的な形成厚み(高さ)を最小化することができるためである。また、前記構成の場合、外部衝撃を受けた際の圧電振動素子の短辺方向における変位量の抑制に最も効果的な位置となる。つまり、外部衝撃を受けて圧電振動素子が撓んだ際に、圧電振動素子の自由端における曲面頂部(短辺方向の略中央部分)が前記枕部と接触するため、圧電振動素子の撓み量を抑制することができ、耐衝撃性能が向上する。なお、上述の面取り加工は圧電振動片の両面(表裏)に限定されるものではなく、片面だけが面取り加工された形状であっても適用可能である。すなわち、凸状曲面が形成された側の面が、ベース内底面に対向して搭載される圧電振動素子に対しても前記構成は有効である。
【0011】
前記構成において、枕部は圧電振動素子の短辺方向における頂部付近の、下方に1箇所だけ形成するだけでなく、複数形成してもよい。例えば、圧電振動素子の短辺の中心を通る直線を基準として、短辺方向に対称となる位置に2つの枕部を形成してもよい。このような構成においても、前記2つの枕部上面の位置は、搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置している。
【0012】
上記構成の場合、枕部が1箇所だけに形成されている場合よりも、圧電振動片と枕部との接触時に受ける応力を分散させることができる。したがって応力集中の抑制効果によって、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、前記枕部が導電性材料の積層体で形成されているベースであるので、例えばタングステンなどの金属材料を多段に積層することで容易に枕部を形成することができる。圧電振動素子の表裏面には圧電振動素子を駆動させるための励振電極が形成されるが、請求項2の発明によると、外部衝撃を受けた際に前記励振電極と、導電性材料で形成された枕部とが接触しないように、予め励振電極の形成位置を考慮して設計することで、励振電極と枕部の接触時の電荷移動に伴う周波数変化を防止することが可能である。
【0014】
あるいはまた、導電性材料で枕部を形成し、少なくとも最上層を絶縁性材料で被覆することによっても前記電荷移動に伴う周波数変化を防止することができる。例えば絶縁性の樹脂によって枕部の表面を被覆する。前記励振電極の面積を圧電振動素子の周縁付近まで大きく設計した場合において、圧電振動素子の自由端付近と枕部とが定常状態で接触した状態、あるいは非接触の状態から外部衝撃によって接触状態に変化したときでも、枕部の接触面(上面)は絶縁状態となっているため、前記接触による電荷の移動が無く、励振電極間の容量変化を防止することができる。よって、圧電振動デバイスの周波数の変化を防止することができ、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイスを得ることができる。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、平面視略矩形状の前記圧電振動素子は、長辺および短辺の端部が面取り加工され、前記矩形の4隅における厚さが、当該矩形の長辺および短辺の中央部の厚さよりも薄く、4隅の表裏主面が近接している。このような圧電振動素子の周縁近傍における断面形状は、長辺および短辺方向の端部が、当該長辺および短辺の中央部分よりも非常に薄肉となった形状となっている。つまり、断面視で両凸レンズ状で、前記面取り加工された圧電振動素子の最大厚み(長辺および短辺の各中央付近)と最小厚み(4隅部分)の差が大きい断面形状となっている。このような形状の圧電振動素子においても、前記枕部の上面が前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置しているため、圧電振動素子の前記搭載パッドへの搭載時に、圧電振動素子の曲面の頂部(圧電振動素子の長辺の略中央部分で、最厚肉部となる部分)がベース内底面と接触することがない。
【0016】
なお、前記構成において枕部を圧電振動素子の自由端側の2つの角部の下方に各々形成してもよい。そして、前記枕部を例えば3層の積層体で形成し、最下層の上に、前記最下層よりも面積が小さい中間層を積層し、さらに中間層の上部に中間層よりも面積が小さい最上層を積層し、上層に行くほど面積が小さく、かつ一方向に漸次偏って積層されるようにする。つまり、圧電振動素子を一対の搭載パッド上に搭載したときに、前記最下層および前記中間層に平面視で圧電振動素子の縁部(角部近傍領域)が位置するように、一方向に漸次偏った階段状の枕部を配置する。このような形状の枕部を形成することによって、圧電振動素子を前記ベース内部に安定して搭載することができる。具体的に、一対の搭載パッド上に例えば導電性接合材を形成しておき、圧電振動素子を吸引ツールを用いて保持し、圧電振動素子の一短辺端部を導電性接合材上に載置する際、圧電振動素子に僅かな回転が生じて載置ずれが発生することがあるが、前記構成の枕部によって前記載置ずれを抑制することができる。つまり、前記枕部をベース内底面の適正な位置に配置することにより、圧電振動素子のベース内部への搭載時に回転が生じたとしても、当該枕部の最上層に圧電振動素子が接触して適正位置へ誘導される“ガイド”の機能を有するためである。
【0017】
また、請求項4にかかる発明によれば、請求項1乃至2に記載のベースを使用し、前記搭載パッドと、少なくとも長辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子の長辺方向一端側とを導電性接合材を介して接合し、前記ベースと板状の蓋体とを、当該ベースから前記蓋体の中心方向に伸長する封止材のフィレットを有する状態で気密封止した圧電振動デバイスであり、圧電振動素子の前記一端側の少なくとも、端面と、当該端面近傍で前記凹部の内底面と対向する面取り加工領域の一部とが、前記導電性接合材により前記搭載パッドに接合されている。そして、前記枕部の上面は、前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置している。上記構成によって、圧電振動素子の自由端側が先に前記枕部と接触する。このため、圧電振動素子の前記搭載パッドへの接合後の、圧電振動素子の曲面の頂部とベース内底部との接触を防止することができ、信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、低背化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供すること提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態において、圧電デバイスとして表面実装型の水晶振動子を例に挙げている。
【0020】
−第1の実施形態−
本発明による第1の実施形態を、図1乃至図5を基に説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向における断面図であり、図2は本発明の第1の実施形態を示すベースに水晶振動片が搭載された状態を示す平面図である。図3は図2のA−A線におけるベース単体の長辺方向における断面図であり、図4は図3において搭載パッドに導電性接合材が塗布された状態を示しており、図5は図4において水晶振動片が接合された状態を示している。なお、図1および図5において、水晶振動片の表裏面に形成される電極(詳細は後述)の記載は省略している。また、図1および、図3乃至図5においてベース底面(裏面)に形成される外部接続端子と、当該外部接続端子とベース内部の搭載パッドとを電気的に接続するための接続手段の記載は省略している。まず前記各構成部材について図1乃至図3を参照しながら説明した後、本実施形態で適用される水晶振動子の製造方法について図4乃至図5を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明による水晶振動子4は断面視凹状のベース1と、平面視矩形状の水晶振動片2と、平板状の蓋体3とから構成されている。水晶振動片2の長辺の一端側は、ベース1の内底面に形成された搭載パッド12の上部に導電性接合材5を介して接合されている。そして、ベース1の堤部10の上面と蓋体3とが、封止材6を介して気密接合されている。
【0022】
図1において、ベース1は平面視矩形状の容器体であり、アルミナセラミック材料から成る2枚のセラミックグリーンシートから構成されている。ベース1は平板状の第1シート1aの上部に、枠状の第2シート1bが積層され、焼成によって一体的に形成されており、前記枠状の第2シート1bによって凹部7が形成されている。前記第2シート1bの上面(堤部10の上面)は平坦な状態となっている。なお、本実施形態において前記ベース1の外形寸法は、長辺×短辺=2.5mm×2.0mmで、高さは約0.5mmとなっている。なお、前記ベース外形寸法は一例であり、前記外形寸法に限定されるものではない。
【0023】
図2に示すように前記凹部7の長手方向一端側の、前記第1シート1a上面には一対の搭載パッド12が並列して形成されている。前記搭載パッド12は、前記第1シート1aの上面にタングステンメタライズ処理を施し、その上部にニッケルメッキ処理が、さらにその上部に金メッキ処理が施されている。そして、前記搭載パッド12は、ベース1の底面(裏面)に形成されている外部接続端子(図示せず)と、ベース1の外周上下部の4角に形成されたキャスタレーション(C1〜C4)を介して電気的に接続されている。なお、前記搭載パッド12と前記外部接続端子との電気的接続は、導体が充填された導通路(ビアホール)を形成することによって行ってもよい。
【0024】
枕部11は、図1に示すように前記一対の搭載パッド12と対向し、凹部7の長手方向他端側の前記第1シート1aの上面に、水晶振動片2の自由端側と近接する位置に形成されている。本実施形態では前記枕部11は導電性材料によって形成されている。なお、この場合、水晶振動片をベース内部に収容した際に、後述する水晶振動片の表裏面に形成される電極(金属膜)の一部が平面視で、前記枕部11と重ならないような位置に設計される。なお、前記電極の一部が前記枕部11と平面視で重なる場合は、前記枕部11は絶縁性材料で形成することが好ましい。これは水晶振動片をベース内部に収容した際に、枕部と前記電極が接触している場合や、定常状態では枕部と前記電極とが離間していても外的衝撃によって接触してしまう場合の電荷移動を防止するためである。電荷の移動を防止することで、不要な容量の発生を抑制でき、結果として周波数変化を抑制することができる。しかしながら、前記枕部11を導電性材料によって形成した場合であっても。当該枕部の最上層を絶縁性材料で被覆することによって、枕部と電極との接触時の電荷移動を防止することは可能である。
【0025】
本実施形態では、前記枕部11は導電性材料から成る直方体状の突起物であり、図3に示すように、タングステンメタライズを3層、積層することによって形成されている。具体的にはベース1を構成する2枚のセラミックグリーンシートの内、底面に相当する第1シート1aに、所定形状の配線導体をメタライズによって形成した後、枕部11および搭載パッド12を形成する領域と、第2シート1bが積層される領域以外の部分をマスキングして、タングステンをスキージすることによって1層分のタングステン層を形成する。その後、上記のマスキング処理を再度行い、タングステンをスキージすることによって2層分の搭載パッドおよび枕部が積層された状態となる。搭載パッド12は上記スキージ処理を2回行った後、さらに表面処理が施される。具体的には前記タングステンの表面に、まずニッケルめっき処理が、次いで金めっき処理が施されて搭載パッド12の作製完了となる。前記2回目のスキージ処理を行った後、前記搭載パッド12の上面もマスキングし、枕部11の形成領域については開口した状態のままとする。そして、3回目のスキージ処理を行うことによって3層のタングステンが積層されて枕部11の完成となる。
【0026】
本実施形態において、枕部11は3層全てが平面視で同一面積にて形成されているが、これに限定されるものではなく、3層の面積が異なった形態であってもよい。例えば、最下層(枕部第1層目)の上に、前記最下層よりも面積が小さい中間層(枕部第2層)を積層し、さらにその上部に前記中間層よりも面積が小さい最上層を積層し、上層にいくほど面積が小さくなった,例えば“ピラミッド状”に積層した形態であってもよい(図示せず)。このように枕部を成型することによって、水晶振動片2の曲面形状に対応した断面形状に近づけることができ、多段構成の枕部の稜線部分で、水晶振動片2と線接触するようにできるため、抗力を複数箇所に分散させることができる。
【0027】
本実施形態において、枕部11はタングステンメタライズを3層積層した構造としているが、これに限定されるものではなく、3層以上積層した構造にしてもよい。
【0028】
上記のように形成された枕部11と、一対の搭載パッド12の、高さ(厚み)方向における相対関係は、図1に示すように枕部11の方が搭載パッド12よりも高くなっている。すなわち、前記枕部11の上面が、前記一対の搭載パッド12の上面から当該枕部11に対して水平方向に延出した仮想線Lよりも上方に位置している。このような相対位置関係によって、搭載パッド12上に、端部が面取り加工された水晶振動片2の長辺一端側を導電性接合材を用いて接合したときに、水晶振動片2の頂部(最厚肉部)がベース内底面(第1シート1aの上面)に接触するよりも前に、水晶振動片2が枕部11と接触するようになる。したがって水晶振動子2に外部衝撃が加わったとしても、水晶振動片2の頂部とベース内底面との接触を回避することができる。なお、本実施形態において前記枕部11の外形寸法は、0.2mm×0.15mmであるが、枕部の外形寸法は前記外形寸法に限定されるものではない。本実施形態では、前記搭載パッド12の高さは約40μmで、前記枕部11の高さは約45μmとなっている。
【0029】
次に、本実施形態で使用される水晶振動片2について説明する。図1で水晶振動片2は、平面視矩形状のATカット水晶板であり、長辺および短辺の両方において面取り加工が施されている。そして、前記水晶振動片2は主面(フラットな部分)領域を有しており、2種類の曲率を有する曲面が形成されるように面取り加工が施されている。なお、前記水晶振動片では端部付近が面取り加工された水晶振動片を例として挙げているが、表裏両面が凸レンズ状(バイ・コンベックス形状)や、片面だけが凸レンズ状(プラノ・コンベックス形状)となるように加工された水晶振動片に対しても本発明は適用可能である。
【0030】
本発明の実施形態において使用される水晶振動片の発振周波数は、基本波振動モードで13MHzである。なお、前記周波数は一例であり、基本波振動モードで13MHz以外の周波数帯においても本発明の適用は可能であるが、基本波振動モードで16MHz以下の周波数帯において、特に本発明の構成が有効に機能する。
【0031】
図2に示すように、水晶振動片2の表裏面には、当該水晶振動片2を駆動させるための励振電極21a、21b(裏面側の21bは図示せず)と、前記励振電極から引き出される引出電極22a、22b(裏面側の22bは図示せず)と、前記引出電極と接続し,水晶振動片2の短辺端部両側に形成された一対の接続電極23a、23b(裏面側の23bは図示せず)とが形成されている。これらの電極は水晶振動片の上に、クロム(Cr)−金(Au)−クロム(Cr)の順序で蒸着法等によって成膜される。なお、前記電極の膜構成は、これに限定されるものではなく、例えば水晶振動板の上に、Cr−Auの順に、あるいは水晶振動板の上に、Cr−Ag(銀)の順に、または水晶振動板の上に、Cr−Ag−Crの順で膜構成されたものであってもよい。なお、前述したように、本実施形態では水晶振動片2をベース1の凹部7に収容したときの、水晶振動片2の裏面側の前記励振電極21bと、枕部11とは平面視で重ならない位置関係となっている。以上が水晶振動片2についての説明である。
【0032】
次に、本実施形態で使用される蓋体3は平面視矩形状であり、セラミック材料で構成されている。前記蓋体3の平面視の面積は、ベース1の平面視の面積よりも僅かに小さくなっている。そして、前記蓋体3の下面、すなわちベース1の堤部10の上面との接合面側の周縁には封止材6が周状に形成されている。本実施形態では前記封止材6として低融点ガラスが使用されている。ここで前記封止材6の幅寸法は、ベース1の堤部10の幅寸法よりも大きくなっている。なお、上記蓋体3に形成された封止材6の幅寸法と、ベース1の堤部10の幅寸法との大小関係は一例であり、これに限定されるものではない。例えば封止材6の幅寸法と堤部10の幅寸法は同等であってもよい。
【0033】
本実施形態では、前記蓋体の材料としてセラミック材料が用いられているが、セラミック材料以外に、コバールを母材として、その周囲にニッケルめっき層、金めっき層が形成された金属性材料を用いてもよい。この場合、封止材としてAn−Sn合金等の金属ロウ材が使用される。以上が水晶振動子の各構成部材についての説明である。
【0034】
次に、本発明における水晶振動子の製造方法について、図4乃至図5に基づいて説明を行う。まず、図4に示すようにベース1の内底面に形成された一対の搭載パッド12の上に導電性接合材5を、ディスペンサを用いて塗布する。そして、所定形状に端面加工された水晶振動片2の長辺一端側(前述の一対の接続電極23a、23bが形成されている短辺端部)を、先ほど2つの搭載パッド上に塗布した導電性接合材5の上に載置する。そして、所定温度プロファイルに制御された加熱雰囲気中にて導電性接合材5を硬化させる。ここで、水晶振動片2の前記一端側(固定端となる側)の端面(短辺の側面部分)と、当該端面の近傍で、下面側の面取加工領域(凹部7の内底面と対向する側の面取り加工領域)の一部とが、導電性接合材5によって搭載パッド12と接合されている。なお、導電性接合材5は上面側の面取り領域(凹部7の内底面と対向しない側の面取り領域)に多くの量の導電性接合材が及ばない構成が、水晶振動子の内部クリアランスの点から好ましい。
【0035】
本実施形態では前記導電性接合材として、シリコーン系の導電性樹脂接合材が使用されている。なお、導電性接合材5はシリコーン系の導電性樹脂接合材に限定されるものではなく、シリコーン系以外にもエポキシ系などの導電性樹脂接合材を使用してもよい。
【0036】
前記導電性接合材の硬化時には、導電性接合材の熱収縮によって収縮応力が発生し、当該応力によって、水晶振動片2の自由端側は上方へ持ち上げられる方向に応力が働く。本実施形態では水晶振動片2と搭載パッド12との接合が完了した状態(定常状態)において、図5に示すように枕部11の一部が水晶振動片2の自由端に近接した部分と接触し、水晶振動片2は固定端側の方向に僅かに傾斜した状態となって搭載パッド12と枕部11によって支持されている。なお、水晶振動片2と搭載パッド12との接合が完了した状態(定常状態)において、枕部11が水晶振動片2の自由端と離間していてもよい。
【0037】
前記水晶振動片2と前記搭載パッド12との接合後に、発振周波数の微調整を行った後、前記ベース1の堤部10の上面に、外周が略一致するようにして蓋体3を載置する(図5参照)。このとき、蓋体3の周縁に形成された封止材6と前記堤部10の上面とは当接しており、封止材6は凹部内側方向へ張り出した状態となっている。そして、この状態で所定温度に加熱することによって封止材6を溶融させ、蓋体3とベース1とを気密接合する。なお、前記気密接合は、堤部10の上面から蓋体3の中心方向に伸長する封止材6のフィレット61が形成されている。これにより、より確実な気密封止が可能となっている。以上の工程により、表面実装型の水晶振動子4の完成となる。
【0038】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態を、図6乃至図7を用いて説明する。図6は本発明の第2の実施形態を示すベースの平面図であり、図7は図6のB−B線における断面図である。図7において、水晶振動片の表裏面に形成される電極と、ベース底面に形成される外部接続端子、キャスタレーションの記載は省略している。なお、前述の実施形態と同様の構成部分については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同様の効果を有する。
【0039】
図6において、枕部13は凹部7の底面の一端側に並列形成されており、水晶振動片2をベース1の内部に収容したときに、水晶振動片2の自由端寄りで、短辺方向の面取りされた部分(曲面部分)と対応した位置に一対で配置されている。具体的にはベース1の2短辺の中心を結んだ直線を基準線として、当該基準線を挟んで両側に一定距離だけ離間して、凹部7の底面の一端側に枕部13が2つ形成されている。そして、前記一対の枕部13の高さ(厚み)は、搭載パッド12の上面から枕部13へ向かって水平方向に延出した仮想線(図示せず)よりも枕部13の上面が上方に位置するように形成されている。
【0040】
なお、第2の実施形態の変形例として、図8乃至9に示すように2つの枕部13,13を水晶振動片2の自由端側から内側方向に離間した位置の下方に形成してもよい。このような位置に枕部を形成すれば、外部衝撃を受けた際に水晶振動片2の自由端側よりも厚肉となる領域で水晶振動片が枕部13と接触することになり、水晶振動片2の頂部のベース1の内底面との接触を防止することができる。
【0041】
また、前記枕部13の高さは、第1の実施形態における枕部11の高さに比べ、高くなるように形成されている。これは水晶振動片2の面取り加工が長辺方向だけでなく短辺方向においても施されているとともに、2つの枕部13が短辺方向における頂部(最厚肉部であり、短辺方向の略中央部分に相当)の下方から、凹部7の両端寄りの離れた位置に形成されているためである。すなわち、図7に示すように水晶振動片2の面取り部分(曲面部分)に枕部13を近接させるためである。このような構造により、水晶振動片2の前記搭載パッド12への搭載時に、水晶振動片2の曲面の頂部(最厚肉部)がベース内底部と接触することがない。つまり、水晶振動片2の自由端側が先に前記枕部と接触して、水晶振動片2の頂部とベース内底面とは接触することがない。また、導電性接合材5の硬化時の収縮によって水晶振動片2の自由端側が持ち上がって、定常状態で当該自由端側と枕部13とが僅かに離間した状態であっても、外的要因による衝撃を受けた際に、水晶振動片2の自由端側に近接する領域と枕部13とが当接するだけであり、水晶振動片2(頂部)とベース内底面とは接触することがない。これは、前記頂部とベース内底面との間隙が確保されているためであり、これにより、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイスを提供することができる。
【0042】
−第3の実施形態−
本発明の第3の実施形態を、図10乃至図11を用いて説明する。図10は本発明の第3の実施形態を示すベースの平面図であり、図11は図10のD−D線における断面図である。図10乃至11において、水晶振動片の表裏面に形成される電極と、ベース底面に形成される外部接続端子、キャスタレーションの記載は省略している。なお、前述の実施形態と同様の構成部分については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同様の効果を有する。
【0043】
図10乃至11によれば、平面視略矩形状の水晶振動片2は、長辺および短辺の端部が面取り加工され、前記矩形の4隅における厚さは当該矩形の長辺および短辺の中央部の厚さよりも薄くなっている。そして、水晶振動片2の4隅の表裏主面が近接した形状となっている。このような水晶振動片2の周縁近傍における断面形状は、長辺および短辺方向の端部が、当該長辺および短辺の中央部分よりも非常に薄肉となっており、水晶振動片の平面視で中心付近のフラットな領域(主面)が少なく、その周囲の曲面の領域が多い形状となっている。つまり、断面視で略両凸レンズ状で、前記面取り加工された圧電振動素子の最大厚み(長辺および短辺の各中央付近)と最小厚み(4隅部分)の差が大きい断面形状となっている。
【0044】
このような形状の水晶振動片においても、枕部13の上面が一対の搭載パッド12,12の上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線Lより上方に位置しているため、水晶振動片2の前記搭載パッドへの搭載時に、水晶振動片の曲面の頂部(水晶振動片の長辺の略中央部分で、最厚肉部となる部分)がベース内底面と接触することがない。
【0045】
本実施形態では、枕部13は水晶振動片2の自由端側の2つの角部の下方に各々形成されている。前記枕部13は3層の積層体で形成されており、最下層の上に、前記最下層よりも面積が小さい中間層を積層し、さらに中間層の上部に中間層よりも面積が小さい最上層を積層し、上層に行くほど面積が小さく、かつ一方向に漸次偏って積層されている。つまり、水晶振動片2を一対の搭載パッド12,12上に搭載したときに、前記最下層および前記中間層に平面視で水晶振動片の縁部(角部近傍領域)が位置するように、一方向に漸次偏った階段状の枕部13,13が配置されている。このような形状の枕部を形成することによって、水晶振動片2をベース内部に安定して搭載することができる。具体的に、一対の搭載パッド12,12上に導電性接合材5,5を形成しておき、水晶振動片を吸引ツールを用いて保持し、水晶振動片の一短辺端部を導電性接合材上に載置する際、水晶振動片に僅かな回転が生じて載置ずれが発生することがあるが、本構造の枕部によって前記載置ずれを抑制することができる。つまり、枕部13をベース内底面の適正な位置に配置することにより、水晶振動片のベース内部への搭載時に回転が生じたとしても、当該枕部の最上層に水晶振動片が接触して適正位置へ誘導される“ガイド”の機能を有するためである。なお、本構造の枕部はベースの堤部10と繋がった状態で形成されていてもよい。
【0046】
本発明の実施形態では蓋体側にだけ封止材が形成され、ベース側には封止材が形成されていない構成となっているが、前記構成に限定されるものではなく、例えばベースの堤部上面にだけ封止材が形成された構成や、蓋体とベースの両方に封止材が形成された構成であってもよい。
【0047】
さらに本発明の実施形態では、封止材としてガラス材を例にしているが、セラミックベースと金属製の蓋体を用い、封止材に銀ロウ材等のロウ材を用いたレーザー封止、電子ビーム封止による封止等でも適用できる。さらに本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶と他の電子部品素子を組み込んだ水晶発振器など、電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスにも適用可能である。
【0048】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向における断面図。
【図2】本発明のベースに水晶振動片が搭載された状態を示す平面図。
【図3】図2のA−A線におけるベース単体の長辺方向における断面図。
【図4】図3において導電性接合材が塗布された状態を示す断面図。
【図5】図4において水晶振動片が接合された状態を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示すベースの平面図。
【図7】図6のB−B線における断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態のその他の例を示すベースの平面図。
【図9】図8のC−C線における断面図。
【図10】発明の第3の実施形態を示すベースの平面図。
【図11】図10のD−D線における断面図。
【図12】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図。
【図13】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 ベース
2 水晶振動片
3 蓋体
4 水晶振動子
5 導電性接合材
6 封止材
7 凹部
10 堤部
11、13 枕部
12 搭載パッド
1a 第1シート
1b 第2シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも長辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子を収容するための凹部と、前記圧電振動素子の長辺方向一端側と接合される一対の搭載パッドと、前記圧電振動素子の長辺方向他端側の下方に位置する枕部とを前記凹部の内底面に具備する平面視矩形状のベースであって、
前記枕部の上面が、前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置していることを特徴とするベース。
【請求項2】
前記枕部が導電性材料の積層体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベース。
【請求項3】
平面視略矩形状の前記圧電振動素子は、長辺および短辺の端部が面取り加工され、前記矩形の4隅における厚さが、当該矩形の長辺および短辺の中央部の厚さよりも薄く、4隅の表裏主面が近接していることを特徴とする請求項1乃至2に記載のベース。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載のベースを使用し、前記搭載パッドと、少なくとも長辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子の長辺方向一端側とを導電性接合材を介して接合し、前記ベースと板状の蓋体とを、当該ベースから前記蓋体の中心方向に伸長する封止材のフィレットを有する状態で気密封止した圧電振動デバイスであって、
圧電振動素子の前記一端側の少なくとも、端面と、当該端面近傍で前記凹部の内底面と対向する面取り加工領域の一部とが、前記導電性接合材により前記搭載パッドに接合されており、
前記枕部の上面は、前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置していることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項1】
少なくとも長辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子を収容するための凹部と、前記圧電振動素子の長辺方向一端側と接合される一対の搭載パッドと、前記圧電振動素子の長辺方向他端側の下方に位置する枕部とを前記凹部の内底面に具備する平面視矩形状のベースであって、
前記枕部の上面が、前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置していることを特徴とするベース。
【請求項2】
前記枕部が導電性材料の積層体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベース。
【請求項3】
平面視略矩形状の前記圧電振動素子は、長辺および短辺の端部が面取り加工され、前記矩形の4隅における厚さが、当該矩形の長辺および短辺の中央部の厚さよりも薄く、4隅の表裏主面が近接していることを特徴とする請求項1乃至2に記載のベース。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載のベースを使用し、前記搭載パッドと、少なくとも長辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子の長辺方向一端側とを導電性接合材を介して接合し、前記ベースと板状の蓋体とを、当該ベースから前記蓋体の中心方向に伸長する封止材のフィレットを有する状態で気密封止した圧電振動デバイスであって、
圧電振動素子の前記一端側の少なくとも、端面と、当該端面近傍で前記凹部の内底面と対向する面取り加工領域の一部とが、前記導電性接合材により前記搭載パッドに接合されており、
前記枕部の上面は、前記一対の搭載パッドの上面から前記枕部に対して水平方向に延出した仮想線より上方に位置していることを特徴とする圧電振動デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−124688(P2009−124688A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251424(P2008−251424)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
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