説明

圧電振動デバイス

【課題】 気密封止時のベース内の温度勾配を抑制できるベースを用いることによって、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 内部に圧電振動素子を収容するための凹部3と、当該凹部3を囲繞し、上面に金属封止部材4が周状に形成された環状の堤部2とを具備する絶縁性材料からなるベース1であって、少なくとも前記べース1の長辺側の堤部の内部または内側面、または内部と内側面には、前記堤部2の深さ方向に伸びる、金属導体からなる熱伝導部5が一箇所以上形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面実装型の圧電振動デバイスの封止工程では、上面に金属膜層が形成された環状の堤部を有するセラミック積層体からなる容器体(ベース)と、金属からなる矩形状の蓋体とが、シーム溶接法などの封止手段によって気密接合される。
【0003】
前記シーム溶接時は、金属性の蓋体が高温状態になるため、当該蓋体に接触しているベースの温度も熱伝導により上昇する。しかし、前記蓋体と前記ベースの熱膨張率(線膨張係数)の違いから、前記シーム溶接が完了して常温まで温度が低下する際に、蓋体およびべースに引張応力等の各種応力が発生する。当該応力によって、図10に示すようにベース1の側面や底面などに割れやクラックが発生すると、気密不良や、ベース内部応力の増大による発振周波数のズレなどの不具合を引き起こすことになる。
【0004】
前記応力を緩和するために、上記金属膜層と前記蓋体との間に緩衝材として金属枠体を介在させた構成のベースがあるが、圧電振動デバイスの小型化によって、堤部の幅が狭くなり、前記金属膜層のベース基体に対する接合強度が低下し、シーム溶接後の冷却過程で蓋体と金属枠体とが収縮することによって発生する応力が前記金属膜層に加わり、ベース基体から金属膜層が剥離してしまう問題点があった。このような問題点を解決するために、導体が充填された溝状の切り欠きをベース側面の上端から中央部にかけて形成した電子部品収納用パッケージが特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−183724号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパッケージ(ベース)は、金属枠体の厚みが加わるため圧電振動デバイスの低背化に繋がらない。また、前記溝状の切り欠きによって、金属枠体と金属膜層とを接合するロウ材が、金属枠体と金属膜層との接合面から、溝状の切り欠きに充填された導体の露出表面にかけてフィレットを形成するので接合力の向上は望めるものの、前記導体が外部に露出しているために放熱され、シーム溶接によって高温になったベース上部の熱を効率よくベース下部に伝導させにくい。したがって、ベースに大きな温度勾配が発生するため熱応力が非均一な状態となり、ベースのクラック発生の原因となる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、気密封止時のベース内の温度勾配を抑制できるベースを用いることによって、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1によると、内部に圧電振動素子を収容するための凹部と、当該凹部を囲繞し、上面に金属封止部材が周状に形成された環状の堤部とを具備する絶縁性材料からなる平面視矩形状のベースであって、少なくとも前記ベース長辺側の堤部の内部または内側面、または内部と内側面に、前記堤部の深さ方向に伸びる、金属導体からなる熱伝導部が一箇所以上形成されているので、蓋体で前記凹部を封止する際に、高温になったベース上部の熱を前記熱伝導部を介して急速にベース下部方向へ伝えることができる。
【0009】
矩形状のベースと蓋体とをシーム溶接によって接合する時には、辺長の長い長辺側の方が、シームローラーの接触時間が長くなるため、ベース上面の温度もベースの長辺側の方が短辺側よりも高くなる。したがってベース内の温度勾配は長辺側の方が大きくなると考えられる。また、ベースの製造ばらつきによって、ベースの構造的に脆弱な部分にはクラックが発生することがある。しかし、上記構成によると、少なくとも前記ベース長辺側の堤部の内部または内側面、または前記堤部の内部と内側面に、前記堤部の深さ方向に伸びる、金属導体からなる熱伝導部が一箇所以上形成されているので、ベース上部の熱をベース下部方向へ急速に伝導させることができ、ベースの温度勾配が抑制されるとともに、ベース温度を均一化させることができるため、クラックの発生を抑制することができる。
【0010】
前記熱伝導部がベースの堤部の内部に形成されている場合は、当該熱伝導部がベース絶縁材料に包囲されているため、ベース上部の熱の放熱を抑制することができるとともに、ベース下部方向へ伝導されるので熱伝導効率に優れる。また、前記熱伝導部がベースの堤部の内側面に形成されている場合は、放熱による熱的損失を伴うものの、前記放熱は外部空間に対してではなく内部空間、すなわち前記凹部空間(キャビティ)内への放熱であるため熱的損失を抑制でき、ベースの温度勾配を抑制することができる。
【0011】
なお、前記熱伝導部の配設は、長辺側の堤部内部と、堤部内側面の両方に形成されていてもよい。このような構成の場合、前記ベース長辺側の堤部内部にだけ形成されている場合よりも、熱伝導部の熱容量をより多く確保することができるためベース温度の急速な均一化に、より効果が期待できる。
【0012】
また、前記熱伝導部の配設数は、前記ベース長辺側の堤部内部または内側面のいずれかに複数箇所、または前記堤部内部と内側面の各々に複数箇所に亘って配設されていてもよい。特に前記ベース長辺側の堤部内部と内側面の各々に複数配設されている場合は、ベースの温度勾配抑制により効果的である。
【0013】
また、前記熱伝導部は、一部あるいは全ての熱伝導部が前記金属封止部材と電気的に独立した状態であってもよい。例えば3枚のセラミックグリーンシートが積層されたベースの場合、中央の層(第2層)にだけ熱伝導部が形成され、堤部上面の前記金属封止部材と前記熱伝導部とが接続されていない状態であってもよい。このような構造であっても、前記金属封止部材の高温になった熱をベース基体(セラミック)を介する熱伝導によって当該熱伝導部に熱伝導するため、ベース温度の均一化を図ることができる。
【0014】
上記構成によると、熱伝導部の形成量を、前記金属封止部材と接続している場合よりも少なくすることができるため、熱伝導部の導体使用量を削減することができる。
【0015】
さらにまた、前記熱伝導部は、前記金属封止部材と電気的に接続したビアホール(導体が充填された円筒状の孔)と、前記セラミックグリーンシートの積層間に配線導体とを介して、前記金属封止部材と接続された構造にすることも可能である。本構造によってもベース温度の急速な均一化を図ることができる。
【0016】
さらに、前記熱伝導部の配設は、前記ベース長辺側の堤部だけでなく、短辺側の堤部にも形成されていてもよい。この場合、前記温度勾配を2方向から抑制することができるので、ベース温度の均一化により効果的である。
【0017】
なお、前記熱伝導部の形成によって、ベースの温度勾配を抑制することができるので、ベース堤部の幅を縮小することが可能となり、ベースの外形寸法に対するキャビティの容積をより大きく確保することができる。
【0018】
前述のように、ベースのキャビティ容積を大きくすることができるため、同一外形寸法のベースにおいて、従来よりもキャビティ内に搭載される圧電振動素子のサイズを拡大することが可能となり、設計の余裕度が増すことになる。また、更なる小型化要求にも対応した設計が可能となる。
【0019】
また、請求項2によると、前記熱伝導部は、前記金属封止部材と電気的に接続し、前記堤部の深さ方向に形成されているので、ベース上部の熱をより効率的にベース下部へ伝導させることができるとともに、ベース温度の急速な均一化に効果的である。
【0020】
また、請求項3によると、前記ベースの凹部内に圧電振動素子を収容し、平面視矩形状の蓋体と前記金属封止部材とを、シーム溶接またはビーム溶接によって気密接合することを特徴とする圧電振動デバイスであり、気密接合時に前記蓋体からベース堤部上面の金属封止部材を介してベース上部に伝わった熱を、前記熱伝導部によってベース下部方向へ急速に伝導させることができる。これにより、ベースの温度勾配が抑制されるとともに、ベース温度を均一化させることによってクラックの発生を抑制することができるので、信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、気密封止時のベース上部の熱を効率良くべース下部へ伝導することによってベース内の温度勾配を抑制し、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
−第1の実施形態−
以下、本発明による第1の実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は圧電振動デバイスとして、表面実装型の水晶振動子を本発明に適用した場合を示す。
【0023】
図1は本発明の第1の実施形態を示すベースの斜視図を、図2は図1のA−A線における断面図を、図3は本発明の第1の実施形態を示すベース上面図を示している。図4は第1の実施形態を示すシーム溶接前の水晶振動子長辺方向の断面図であり、図5は第1の実施形態を示すシーム溶接完了後の水晶振動子長辺方向の断面図である。なお、図1乃至図5において、ベース底面に形成された外部接続電極およびベース内部に形成された配線導体の記載は省略している。また、図4乃至図5においては水晶振動板の表裏面に対向して形成されている一対の励振電極の記載を省略している。
【0024】
本発明で適用される表面実装型の水晶振動子のベース1は、図1に示すように内部に圧電振動素子を収容するための凹部3と、当該凹部3を囲繞する環状の堤部2とを具備するアルミナ等のセラミックを主体とした絶縁性材料からなる容器体である。
【0025】
ベース1は3枚のセラミックグリーンシートを積層して焼成によって形成され、ベース底面側から順に、1a,1b,1cで構成されている(図2参照)。そしてベース1の内部にはベース底面に形成された外部接続電極(図示せず)と接続した配線導体(図示せず)が形成されている。
【0026】
前記堤部2の上面は平坦な状態となっており、金属封止部材として、下から順にタングステンメタライズ層、ニッケルメッキ層、金メッキ層の3層からなる金属膜層4が周状に形成されている。なお、前記タングステンの代わりにモリブデンを用いてもよい。
【0027】
そして、前記ベース1の長辺側の対向する2つの堤部それぞれの内部には、円柱状の熱伝導部5が複数配設されている。本実施形態では、前記熱伝導部5は一長辺につき6箇所、すなわち全部で12箇所に配設されている。なお、図1において熱伝導部5は形成状態をわかりやすくするために点線で表示している。
【0028】
図2に示すように前記熱伝導部5は深さ方向については、前記金属膜層4と接続し、堤部2の内部を通って、前記ベース1の第1層目(1a)の上面の位置まで形成されている。平面方向については、堤部の幅(以下シールパスと称す)の中央を結ぶライン上に、円柱状の熱伝導部の中心軸が略一致するようにして長辺方向に一定間隔で整列して配設されている(図3参照)。なお、前記熱伝導部5の直径は、シールパスが0.2mmの場合、0.1mmφ程度が好ましい。
【0029】
前記熱伝導部5は導体からなり、本実施形態においては前記配線導体と同一の材料であり、タングステンあるいはモリブデンなどが使用される。そして前記熱伝導部5は、スクリーン印刷によって形成される。具体的にはセラミックグリーンシートに貫通孔(ビアホール)を形成し、スキージすることによって前記貫通孔内部に導体を充填した後、セラミックグリーンシートを複数枚積層して焼成によって一体的に形成される。そして、前記熱伝導部5の上端側、すなわち前記堤部2の上面にはタングステンメタライズ層が形成され、さらにその上面にニッケル層、金層の順に金属膜がメッキ法によって成膜される(図3参照)。
【0030】
図2において、ベース1の内底部(1aの上面)には一対の搭載パッド9(図示せず)が形成されており、これらの搭載パッドはベース1の内部(1a)に形成された前記配線導体を介して、ベース底面(1aの下面)に形成された前記外部接続電極と電気的に繋がっている。前記一対の搭載パッドは、例えばタングステンメタライズ層の上面にニッケル、金の順でメッキ等の手法により金属層が形成されている。本実施形態では搭載パッドはベース内底部上の一短辺部側に並列して形成されている。
【0031】
本発明で適用される表面実装型の水晶振動子は、表裏面に圧電振動素子を駆動させるための励振電極が形成された直方体形状のATカット水晶振動板6を、前記ベースの凹部内に形成された前記搭載パッド9上に導電性接合材10を介して電気的機械的に接続した後、平面視矩形状の金属からなる蓋体7を、ベース堤部上面の金属膜層4上に載置してシーム溶接によって気密接合することによって得られる(図4乃至図5参照)。
【0032】
図4において、蓋体7はコバールを基体とする平面視矩形状で金属性の蓋体であり、当該蓋体7の表裏面にはニッケルメッキ層(図示せず)が形成されている。また蓋体7の前記金属膜層4との接合面側には、前記ニッケルメッキ層の下(接合面側)に金属から成るロウ材8が全面に亘って形成されている。なお、本実施形態では、前記ロウ材として銀ロウが使用されている。
【0033】
まず、前記一対の搭載パッド9の上部に、ディスペンサ等によって導電性接合材10を適量塗布した後、水晶振動板保持ツール(図示せず)によって吸引保持された水晶振動板6を搭載し、所定の温度プロファイルにて前記導電性接合材10を硬化させ、水晶振動板6と搭載パッド9とを電気的機械的に接続する。なお、前記導電性接合材10は例えばペースト状のシリコーン系樹脂導電接合材が使用されるが、これに限定されるものではなく、エポキシ系樹脂導電接合材等を使用してもよい。
【0034】
水晶振動板6を導電性接合材10を介して前記搭載パッド9に接合した後、前記蓋体7を搭載ツール(図示せず)を使用して、ベース1の堤部上面に形成された金属膜層4の上に載置する。このとき、前記金属膜層4の上に、前記蓋体7の前記金属膜層4との接合面側に形成されたロウ材8が略一致するようにして蓋体7が載置される。
【0035】
前記蓋体7のベース上面への載置後に、一対のシームローラーRを蓋体7の対向する二長辺各々の略中央部分(2箇所)に当接させて仮止めを行う。前記仮止め作業は、蓋体7とベース1とを2箇所で仮固定することにより、接合位置のズレを防止する為に実施している。なお、前記仮止め作業は2箇所以上、例えば4箇所(一長辺に一定間隔に2箇所)で実施してもよい。
【0036】
前記仮止めの後に、図4に示すようにシームローラーRを蓋体2の対向する二長辺の、一端側の周辺上に当接させ、蓋体7と金属膜層4とに大電流を印加させながら、蓋体7の対向する二長辺の他端側に向って転動させることによって、水晶振動子1の長辺方向における前記ロウ材8と前記金属膜層4とが封止接合される(第1の封止工程)。
【0037】
次に、シームローラーRを、前記蓋体7の対向する二短辺の一端側の周辺上に当接させ、蓋体7と金属膜層4とに大電流を印加させながら、他端側に向って転動させることによって、短辺方向における前記ロウ材8と前記金属膜層4とが封止接合される(第2の封止工程)。なお、前記第1と第2の封止工程は不活性ガス雰囲気中にて行われる。
【0038】
前述のシーム溶接時において、高温状態になった金属性の蓋体7および前記金属膜層4を通じてベース1に熱が伝わるが、前記熱伝導部5により、前記金属膜層4の熱を当該ベースの下方へ急速に伝熱させることができる。つまり、複数の熱伝導部5によって、高温になった前記金属膜層4の熱を速くベース下方(本実施形態の場合、第1層目1aの上面周辺)にまで伝えることができるので、ベース内の温度勾配を抑制することができ、ベースの温度を均一化させることができる。この効果によって、ベース内部応力を緩和することができるので、クラックの発生を抑制することができる。
【0039】
なお、本実施形態では前記熱伝導部の配設数は、一長辺につき6箇所であるが、これに限定されるものではない。つまり、一長辺につき1箇所だけあるいは6箇所以下で形成されていてもよい。この場合、熱伝導部の形成位置は長辺の中央あるいは、長辺中央を含んで両側に近接する位置が好ましい。これはシーム溶接によってベースに加わる各種応力の集中をベース内部に分散させるためである。このような構成であっても、シーム溶接時に高温になったベース上部の熱をベース下部方向へ急速に伝導させることができるので、ベースの温度勾配が抑制され、クラックの抑制に効果がある。
【0040】
あるいはまた、前記熱伝導部の配設数は、一長辺につき6箇所以上であってもよい。この場合は、より多くの面積でベース上部の熱をベース下部へ伝導することができるため、ベースの温度勾配抑制に、より効果的に機能する。
【0041】
さらにまた、前記熱伝導部の配設は前記ベース長辺側の堤部の内部だけでなく、短辺側の内部であってもよい。この場合、前記温度勾配を2方向から抑制することができるので、ベース温度の均一化により効果が期待できる。
【0042】
なお、前記熱伝導部の形状は円柱に限定されるものではなく、角柱状や楕円柱状であってもよい。
【0043】
また、前記熱伝導部の形成によってベースの温度勾配を抑制することができるので、ベースのシールパスを縮小することが可能となり、ベースの外形寸法に対する凹部空間(キャビティ)の容積をより大きく確保することができる。
【0044】
さらに、ベースのキャビティ容積を大きくすることができるため、同一外形寸法のベースにおいて、従来よりもキャビティ内に搭載される圧電振動素子のサイズを拡大することが可能となり、設計の余裕度が増す。また、更なる小型化要求にも対応した設計が可能となる。
【0045】
また、前記熱伝導部5の導体材料としてタングステンあるいはモリブデンの他に、これらの導体よりもさらに熱伝導率の良い導体、例えば銅などを用いることも可能である。
【0046】
本発明のベースであれば前記金属膜層の上面に金属枠体を形成することなく、シーム溶接後の応力緩和を図ることができるため、圧電振動デバイスの低背化に寄与することができる。なお、本実施形態では金属枠体を用いない構成であるが、金属枠体を用いた構成のベースであってもよい。例えば金属枠体を前記金属膜層の上に金属封止材を介して接合した構成のベースに対しても本発明の適用は可能である。この場合、熱伝導部は金属枠体と前記金属膜とに接続した状態で前記堤部の深さ方向に形成されていればよい。
【0047】
本実施形態の場合、不活性ガス雰囲気にて封止が行われるが、真空雰囲気の場合、封止後のキャビティ内への熱拡散を抑える効果が期待できる。
【0048】
さらに、本実施形態では蓋体とベースとの気密封止接合にシーム溶接を用いているが、レーザーや電子ビームなどによるビーム溶接においても適用可能である。
【0049】
−第1の実施形態の変形例−
なお、本発明の実施形態の変形例として、図6に示すように、ベースの第2の層1bと第3の層1cとに形成される熱伝導部の幅(直径)が異なった形態にすることも可能である。つまり、第2の層1bにおける熱伝導部の直径よりも、上層に位置する第3の層1cにおける熱伝導部の直径の方が大きくなるように形成する。これは高温に達する前記金属膜層4に、より近い第3の層1cにある熱伝導部の直径の方を大きくすることによって、より多くの熱容量を確保するためである。このような構成によってもシーム溶接時に高温になったベース上部の熱をベース下部方向へ急速に伝導させることができるので、ベースの温度勾配が抑制され、クラックの抑制に効果が期待できる。
【0050】
また、他の変形例として、前記ベースを4層のセラミックグリーンシート(ベース底面側から順に、第1層(平板),第2層(平板),第3層(枠板),第4層(枠板))を積層して、第2層から第4層の間に円柱状の熱伝導部を形成するとともに、前記第2と第4の層に形成された熱伝導部の直径が、第3層の熱伝導部の直径よりも大きくなるように形成してもよい。あるいは第3層と第4層の熱伝導部の直径が、第2層の熱伝導部の直径よりも大きくなるように形成してもよい。
【0051】
さらにまた、本発明の実施形態の他の変形例として、少なくとも長辺側の堤部の内部に複数の熱伝導部を配設し、シーム溶接によってベースに加わる各種応力が集中すると考えられる位置、つまり長辺中央付近の熱伝導部だけを、他の熱伝導部に対して体積の大きい長楕円形状とすることによって、熱勾配抑制効果を高めることも可能である。さらに前記長楕円形状の熱伝導部に、銅などの熱伝導率のよい導体を用いることによって、より高い熱勾配抑制効果も期待できる。
【0052】
−第2の実施形態−
以下、本発明の第2の実施形態について図7を基に説明する。図7は第2の実施形態を示すベースの斜視図であり、熱伝導部は形成状態をわかりやすくするために一部を点線で表示している。なお、第1の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同様の効果を有する。また、本実施形態においても表面実装型の水晶振動子を本発明に適用した場合を示す。
【0053】
図7においてベース12は、3枚のセラミックグリーンシートの積層体であり、ベース底面側から順に、1a,1b,1cで構成されている。そしてベース12の内部にはベース底面に形成された外部接続電極(図示せず)と接続した配線導体(図示せず)が形成されている。また、堤部2の上面は平坦な状態で、金属封止部材として第1の実施形態と同様の膜構成で3層からなる金属膜層4が周状に形成されている。
【0054】
図7に示すように本実施形態において熱伝導部は、長辺側の堤部2の内部に形成されているだけでなく、長辺側の堤部2の内側面にも形成されている。前記堤部2の内側面に形成された熱伝導部51は堤部上面の金属膜層4と接続し、前記1b層の下面の深さまで形成され、円柱を高さ方向に2分割した“半円柱”形状となっている。本実施形態では、前記熱伝導部5は一長辺につき6箇所、すなわち全部で12箇所に配設され、前記熱伝導部51は一長辺の堤部内壁に6箇所、すなわち全部で12箇所に配設されている。なお、図7において熱伝導部51は形成状態をわかりやすくするために塗り潰して表示している。
【0055】
前記熱伝導部51はセラミックグリーンシート状態において全円状の貫通孔を環状に複数形成しておき、当該貫通孔の中にタングステンあるいはモリブデンの導体を充填した後、それぞれの孔の直径を通って面積を2分する周状のラインでプレス加工することによって形成される。本実施形態では、熱伝導部51の導体材料は前記熱伝導部5と同等の材料で構成されている。しかしながら、熱伝導部51と熱伝導部5の材料が異なった材料であってもよい。
【0056】
上記構成の場合、熱伝導部の熱容量を前記ベース長辺側の堤部の内部にだけ形成されている場合よりも更に多く確保することができるため、ベース12の温度の急速な均一化により効果的である。また、前記熱伝導部51は短辺側の2つの堤部の内側面にも形成されていてもよい。あるいはまた、熱伝導部51は堤部2の内側面にだけ形成された状態であってもよい。
【0057】
本実施形態の場合、不活性ガス雰囲気にて封止が行われるが、真空雰囲気の場合、封止後のキャビティ内への熱拡散を抑える効果が期待できる。
【0058】
なお、ベース内側面に熱伝導部51を配設する場合、少なくとも長辺側の一つの堤部の内側面の中央周辺に1箇所形成するのが熱勾配抑制効果の点から好ましく、一つの堤部に1箇所以上形成する場合は長辺の内側面中央を含んで両側に近接する位置に形成するのが好ましい。
【0059】
なお、本発明の実施形態において堤部2の内部と内側面に熱伝導部を配設する場合、必ずしもシールパス(堤部幅)方向において直線上に整列している必要はなく、例えば図8のように堤部内部の熱伝導部と堤部内側面の熱伝導部とがシールパス方向に非整列(互い違い)となった状態であってもよい。
【0060】
上記構成であれば、堤部側面方向から見たときに前記熱伝導部がより分散した状態で形成されるため、より高い熱勾配抑制効果が期待できる。
【0061】
−第2の実施形態の変形例−
さらに、第2の実施形態の変形例を図9を基に説明する。図9は第2の実施形態の変形例を示すベース長辺方向の堤部の断面図である。なお、前述の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0062】
図9において、熱伝導部5は一つの長辺側堤部の内部に6箇所形成され、深さ方向にはベース14の堤部上面の金属膜層4に接続し、第1層目(1a)の上面の位置に亘って形成されている。複数の熱伝導部5の間隔は一定ではなく、長辺側の堤部の略中央付近にから、前記堤部両端付近にかけて漸次前記間隔が広くなるように形成されている。つまり長辺側の堤部の中央付近では間隔が狭い“密”な状態になっており、逆に長辺側の堤部両端付近では間隔が拡がった“疎”な状態になっている。
【0063】
上記構成は、長辺側の堤部の中央近辺が、シーム溶接によってベース14に加わる各種応力の集中領域と考えられることから、長辺側の堤部の中央付近においてより多くの熱容量をベース下部方向へ熱移動させて熱勾配を抑制することを目的としている。上記構成により、ベース温度の均質化をより効率的に行うことができる。なお、熱伝導部間の間隔は任意に設定可能であり、図9に示す形態に限定されるものではない。
【0064】
本発明の実施形態では圧電振動デバイスとしてATカット水晶振動子を挙げているが、その他の例として音叉型水晶振動子や、その他のカットの水晶振動子の製造においても本発明は適用可能である。さらに、ベース内底部上にICを搭載した後、ワイヤボンディングやフェースダウンボンディング等によってIC接続端子とベース内底部に形成されたパッド電極とが電気的に接続され、その上方に圧電振動素子が搭載された構造の発振器、あるいは、前記ICと圧電振動素子の位置関係が上下逆構造の発振器の製造においても本発明は適用可能である。また、前記圧電振動デバイス内に収容される圧電振動素子は単数に限定されるものではなく、複数の圧電振動素子が収容されていてもよい。
【0065】
また、複数個の蓋体またはベースがマトリクス状に整列して一体的に形成された集合基板を用いた製造方法についても本発明の適用は可能である。なお、本発明において蓋体の材料は封止方法がシーム溶接の場合は金属製となるが、ビーム溶接の場合は金属以外にセラミックも使用可能である。
【0066】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すベースの斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示すベース上面図である。
【図4】第1の実施形態を示すシーム溶接前の水晶振動子長辺方向の断面図である。
【図5】第1の実施形態を示すシーム溶接後の水晶振動子長辺方向の断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の変形例を示す長辺方向堤部の断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示すベースの斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例を示すベースの上面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の変形例を示す長辺方向堤部の断面図である。
【図10】従来の水晶振動子の長辺方向の断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1、11、12、13、14 ベース
2 堤部
3 凹部
4 金属膜層
5、51 熱伝導部
6 水晶振動板
7 蓋体
8 ロウ材
9 搭載パッド
10 導電性接合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に圧電振動素子を収容するための凹部と、当該凹部を囲繞し、上面に金属封止部材が周状に形成された環状の堤部とを具備する絶縁性材料からなる平面視矩形状のベースであって、少なくとも前記べースの長辺側の堤部の内部または内側面、または内部と内側面に、前記堤部の深さ方向に伸びる、金属導体からなる熱伝導部が一箇所以上形成されていることを特徴とするべース。
【請求項2】
前記熱伝導部は、前記金属封止部材と電気的に接続し、前記堤部の深さ方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のべース。
【請求項3】
前記ベースの凹部内に圧電振動素子を収容し、平面視矩形状の蓋体と前記金属封止部材とを、シーム溶接またはビーム溶接によって気密接合することを特徴とする圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−10660(P2009−10660A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169802(P2007−169802)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】