説明

圧電振動デバイス

【課題】 小型化に対応するとともに、耐衝撃性に優れ、良好な特性を有する圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 端部に近づくにつれて次第に薄肉となるように面取り加工された水晶片2の両端が、ベース1の凹部5に両持ち支持接合され、凹部5を平板状の蓋体で気密封止した水晶振動子において、平面視矩形の水晶片2の対角線上に位置する2つの端部は、凹部5の内底面8に斜対向形成された一対の搭載パッド12,12に対応するように接合材4を介して各々接合されている。内底面8には一対の枕部7,7が、水晶片の長辺側の自由端24,24より、当該長辺における固定端25,25の方向へ僅かに離間し、水晶片の長辺縁部に近接した位置に各々形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の圧電振動デバイスの小型化および低背化に伴い、水晶振動子も小型化が進んでいる。そして水晶振動子に使用されるパッケージ(以下ベースと称す)やパッケージ内部に搭載される水晶振動片(以下水晶片と称す)もさらなる小型化が必要となってきている。水晶片として主に使用されるATカット水晶片は、その厚みが周波数に反比例するため、低周波帯のATカット水晶片の場合、その厚みは高周波帯の水晶片に比べて厚くなる。そのため、良好な振動特性を得る目的で、平板状の水晶片の端面に面取り加工(以下ベベル加工と称す)が施される。具体的に前記ベベル加工は、水晶片の端部を薄肉化することによって、水晶片の支持部分(水晶片の端部)における振動エネルギーを減衰させるとともに、前記水晶片の表裏面の中央領域に形成される励振電極下に振動エネルギーを閉じ込めて良好な振動特性を得る機械的加工のことである。このような形状の水晶片の一端側が、ベース内部に片持ち支持接合された形態の水晶振動子が例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
低周波帯のATカット水晶片において小型化が進行してくると、振動特性確保のために、水晶片は中央部分の厚肉部と端部の薄肉部との厚み差が大きい、“米粒”のような断面形状に近づいてくる。このような形状の水晶片の一端側をベース内部に形成された搭載パッド上に導電性接合材を介して片持ち支持接合する場合、外的衝撃等を受けた際に、水晶片の自由端側が撓み、厚肉部分である中央部分がベース内底面と接触してしまう危険性がある。これに対し、図7に示すように水晶振動片の長辺両端を保持した構成(所謂、両持ち支持)の場合、片持ち支持構成に比べて前記危険性を減少させることができる。(両持ち支持形態は例えば特許文献2を参照)
【0004】
【特許文献1】特開2003−8387号
【特許文献2】特開2005−198237号
【0005】
ところで、前記ベベル加工は平面視矩形状の水晶片の長辺と短辺の両側に施される。つまり短辺方向についても中央付近が最も厚肉となり、両端部分が最も薄肉となっている。このような形状の水晶片をベース内部に形成される搭載パッド上に両持ち支持接合する場合、対向する2短辺端部の内、短辺端部の略中央部分がそれぞれ接合材を介して接合される。
【0006】
しかし、前述の短辺端部の略中央部分は最も厚肉となる部分であり、短辺方向における振動エネルギーは比較的高い領域となっている。このような部位を固定することにより、水晶片の振動特性が阻害され、特性劣化の要因となる。また、対向する2短辺端部の内、短辺端部の略中央部分での支持形態(2点接合)では、外部衝撃を受けた際に水晶片の撓みを充分に吸収することができず、水晶片がベース内底面と接触してしまうことがあった。その結果、水晶片の表裏主面に形成された励振電極の損傷や発振停止等の不具合が生じることがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、小型化に対応するとともに、耐衝撃性に優れ、良好な特性を有する圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明によれば、少なくとも端部が面取り加工された平面視矩形状の圧電振動片が、平面視矩形状のベースに形成された凹部内に両持ち支持接合され、前記凹部を平板状の蓋体で気密封止した圧電振動デバイスであって、平面視矩形の前記圧電振動片の対角線上に位置する2つの端部が、前記凹部の内底面に斜対向形成された一対の搭載パッドに対応するように、接合材を介して各々接合されてなり、前記凹部の内底面であって、前記一対の搭載パッドから前記圧電振動片の長辺方向に一定距離だけ各々離間し、当該長辺の縁部に近接し、かつ、当該圧電振動片の自由端となる角部を含まない位置に、絶縁材料からなる一対の枕部が各々形成されている。このような構成によって、外部衝撃が加わった際の、圧電振動片とベース内底面との接触を防止することができる。
【0009】
上記構成によると、前記位置に枕部を対向配置することにより、例えば圧電振動デバイスに大きな外部衝撃が加わって圧電振動片の自由端側が大きく撓み、圧電振動片(ベース内底面と対向する側)が、ベースの内底面と接触するのを防止することができる。具体的に、前記外部衝撃を圧電振動デバイスが受けた際に、圧電振動片のベース内底面に対向する面と前記枕部とが、圧電振動片の最厚肉部(圧電振動片の長辺方向においては略中央部分)とベース内底面よりも先に接触するため、圧電振動片とベース内底面との接触を回避することができる。
【0010】
板状の圧電振動片の角部は外部衝撃等により、欠けやチッピングが生じやすく、このような欠けやチッピングが発生すると圧電振動デバイスの諸特性に悪影響を与える。本発明の構成によれば、一対の枕部が、ベースの内底面であって前記一対の搭載パッドから前記圧電振動片の長辺方向に一定距離だけ各々離間し、当該長辺の縁部に近接し、かつ、当該圧電振動片の自由端となる角部を含まない位置に形成されるため、圧電振動片の2長辺の自由端(具体的に自由端となる側の角部)の直下には有体物は形成されていない。つまり、外部衝撃を受けたときに圧電振動片の角部は枕部と接触することがなく、圧電振動片の角部の欠けやチッピングを防止することができる。これにより、圧電振動デバイスの特性劣化を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の構成によると、平面視矩形の圧電振動片の対角線上に位置する2つの端部が、ベース内底面に斜対向形成された一対の搭載パッドに対応し、接合材を介して各々接合される構成であるので、同形状の圧電振動片の短辺端部の略中央部分を接合する構成と比べて、圧電振動デバイスの特性劣化を抑制できる。つまり、本発明の支持構成によれば、圧電振動片の短辺方向において振動エネルギーが減衰する領域(角部を含む領域)を搭載パッドに接合しているので、圧電振動片の振動特性が阻害されず良好な特性を得ることができる。
【0012】
さらに上記構成によると、前記枕部は絶縁材料で形成されているので、例えば圧電振動片を駆動させるための励振電極が、圧電振動片の表裏面の周縁付近まで大きく形成されている場合、外部衝撃を受けて前記励振電極と前記枕部との接触状態が変化しても、電荷の移動が無く、励振電極間の容量が変化しないため発振周波数の変化を防止することができる。したがって、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイスを得ることができる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、前記一対の枕部が、前記圧電振動片の2長辺の自由端となる角部に近接した位置に、斜対向して形成されていてもよい。
【0014】
上記構成によると、前記位置に枕部を対向配置することにより、例えば圧電振動デバイスに大きな外部衝撃が加わって圧電振動片の自由端側が大きく撓み、圧電振動片(ベース内底面と対向する側)が、ベースの内底面と接触するのを防止することができる。具体的に、前記外部衝撃を圧電振動デバイスが受けた際に、圧電振動片のベース内底面に対向する面と前記位置に形成された枕部とが、圧電振動片の最厚肉部(圧電振動片の長辺方向においては略中央部分)とベース内底面よりも先に接触するため、圧電振動片とベース内底面との接触を回避することができる。
【0015】
また、請求項3にかかる発明によれば、前記一対の枕部が、前記圧電振動片の2長辺の略中央部分に近接した位置に形成されていてもよい。
【0016】
矩形状の圧電振動片の面取り加工を、圧電振動片の断面形状が両凸レンズ状(バイコンベックス形状)になるまで施した場合、長辺側と短辺側が同時に加工され、長辺および短辺ともに辺の中央付近が最も厚くなる。このような形状の圧電振動片をベースに搭載した場合であっても、上記構成によれば前記一対の枕部は、圧電振動片の2長辺の略中央部分に近接する位置に形成されているため、圧電振動片の長辺方向における曲面の頂部と、枕部との位置関係は略同一線上に位置することになる。したがって、外部衝撃を受けた際の圧電振動片の長辺方向における変位量の抑制に効果的である。また、外部衝撃を受けて圧電振動片が撓んだ場合であっても、圧電振動片の短辺側の端部(縁部)と前記枕部とが接触するため、短辺方向においても変位量を抑制することができ、耐衝撃性能が向上する。なお、前記面取り加工は圧電振動片の両面(表裏)に限定されるものではなく、片面だけが面取り加工された形状であっても適用可能である。すなわち、凸状曲面が形成された側の面が、ベース内底面に対向して搭載される圧電振動片に対しても前記構成は有効である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、小型化に対応するとともに、耐衝撃性に優れ、良好な特性を有する圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態において、圧電デバイスに表面実装型の水晶振動子を適用した例を説明する。本実施形態で適用される水晶振動子は、断面視凹状のベースと、平面視矩形状の水晶振動片と、平板状の蓋体とから構成されている。
【0019】
−第1の実施形態−
本発明による第1の実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の平面図であり、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3は図1のB−B線に沿った断面図である。なお、図1乃至図3において説明の便宜上、ベースの開口部を気密封止する蓋体(後述)の記載は省略している。また、図2乃至図3においてベース底面(裏面)に形成される外部接続端子と、当該外部接続端子とベース内部の搭載パッドとを電気的に接続するための接続手段の記載は省略している。さらに図2乃至図3において、水晶振動片の表裏面に形成される各種電極(後述)の記載は省略している。
【0020】
図1は本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の平面図であり、凹部5を気密封止する平板状の蓋体の記載は省略しており、ベース1の内部に水晶振動片2(以下、水晶片2と略記)が導電性接合材4を介して接合された状態となっている。本実施形態において前記水晶振動子の外形寸法は、長辺×短辺=3.2mm×2.5mmで、高さは約0.75mmとなっている。なお、前記水晶振動子の外形寸法は一例であり、前記外形寸法に限定されるものではない。
【0021】
図1乃至図2に示すように、ベース1は凹部5を有する、上部が開口した平面視矩形状の箱状体である。ベース1は3枚のセラミックグリーンシートの積層体であって、底板となる平板状の第1層1aの上部に枠状の第2層1bが積層され、さらに第2層の上部に枠状の第3層1cが積層された構造となっている。これらの3つの層は所定位置に内部配線導体の印刷処理を施した後に位置決め積層され、焼成によって一体成形されている。前記第3層1cの上面は平坦な状態となっている。
【0022】
ベース1の凹部5の周囲には、第2層1bおよび第3層1cとで構成される堤部10が環状に形成されており、凹部5の内底面8(第1層1aの上面で、堤部10が形成されていない領域)には、一対の段部11,11が形成されている。一対の段部11,11は平面視略長方形の内底面8の対角線上に斜対向する位置関係で形成されている。そして一対の段部11,11の上面には金属膜からなる一対の搭載パッド12,12が形成されている。前記搭載パッド12は、段部11の上面にタングステンメタライズを施し、その上部にニッケルメッキが、さらにその上部に金メッキが施された層構成となっている。そして、前記搭載パッド12はベース内部に形成された配線導体(図示せず)を介して、ベース1の底面(裏面)に形成された外部接続端子(図示せず)と電気的に接続されている。なお、前記搭載パッド12と前記外部接続端子との電気的接続は、ベース外周の角部の上下方向に導体(所謂、キャスタレーション)を形成することによって行ってもよい。
【0023】
ベース1の内底面8には、前記ベース1と同材料から成る直方体形状の枕部7が形成されている。前記枕部7は一対で形成されており、その形成位置は凹部5の内底面8であって、一対の搭載パッド12,12から水晶片2の長辺方向に一定距離だけ各々離間し、水晶片の長辺縁部に近接した位置となっている。具体的に図1に示すように、枕部7,7は水晶片の長辺側の自由端24,24より、当該長辺における固定端25,25の方向へ僅かに離間した位置に各々形成されている。そして、平面視で略長方形である枕部7の上面に、水晶片の長辺縁部が平面視で重なるように配置されている。なお、一対の枕部7,7は水晶片2の表裏面に形成された励振電極とは平面視で重ならない位置関係となっている。本実施形態において前記枕部の平面視の外形寸法は、0.2mm×0.15mmであるが、枕部の外形寸法は前記外形寸法に限定されるものではない。また、枕部と水晶表裏面に形成される励振電極とは、平面視で部分的に重なっていてもよい。
【0024】
前記一対の段部11,11と、前記一対の枕部7,7とは同一層に形成されており、略同一の厚み(高さ)となっている。しかし、一対の段部11,11上面には前述の3層からなる金属膜(搭載パッド12,12)が形成されるため、ベース完成状態では段部11側の方が枕部7よりも高く(厚く)なっている。本実施形態では搭載パッド12の内底面8からの高さは約110μmで、枕部7の内底面8からの高さは約100μmとなっている。このような高さ関係により、定常状態(導電性接合材を用いて水晶片2が搭載パッド12と接合された状態)において、枕部7は水晶片2と非接触状態となっている。これにより、定常状態では水晶片の自由端における振動を阻害することがないため、良好な振動特性を得ることができる。さらに、枕部は一対かつ、斜対向して水晶片の自由端近傍に配置されているので、1つの枕部だけが内底面8上に形成されている場合に比べ、水晶片に大きな外部衝撃が加わった際にバランスよく水晶片を受け止めることができ、振動特性の劣化を抑制することができる。
【0025】
図1に示すように、本実施形態で使用される水晶片2は平面視矩形状のATカット水晶振動板であり、ベベル加工が施されている。ベベル加工により、端部に近づくにつれて次第に薄肉となる両凸レンズに近い断面形状となっている(図2参照)。また、図3に示すように水晶片2の短辺方向も両凸レンズに近い断面形状となっている。本実施形態における水晶振動子の発振周波数は9.8MHzとなっている。なお、本実施形態では両凸レンズに近い断面形状に加工された水晶片を例に挙げているが、両凸レンズ形状(バイコンベックス形状)や、水晶片の片面だけが凸レンズ状(プラノコンベックス形状)や、端部だけが面取り加工され、水晶片の主面(フラットな部分)が残存した形状、さらには前記面取り加工部分が複数の曲率で形成された水晶片に対しても本発明は適用可能である。つまり、少なくともベース内底面と対向する側の面が曲率を有している水晶片に対して本発明は適用可能である。
【0026】
水晶片2の表裏面には、当該水晶片2を駆動させるための励振電極21a、21b(裏面側の21bは図示せず)と、前記励振電極から引き出される引出電極22a、22bと、前記引出電極と接続し,水晶片2の両端部に形成された一対の接続電極23a、23bとが形成されている。接続電極23a、23bは各々、水晶片の角部を含んで角部近傍の短辺と長辺に及んで形成されている。そして、前記引出電極と接続電極は平面視で水晶片の対角線上に位置するように形成されている。これらの電極は水晶片の上に、クロム(Cr)−金(Au)−クロム(Cr)の順序で蒸着法等によって成膜される。なお、前記電極の膜構成はこれに限定されるものではなく、例えば水晶片の上に、Cr−Auの順に、あるいは水晶片の上に、Cr−Ag(銀)の順に、または水晶片の上に、Cr−Ag−Crの順で膜構成されたものであってもよい。
【0027】
水晶片2の表裏面に形成された接続電極23a,23bは、前記一対の搭載パッド12,12上に、導電性接合材4を介して一対一で接合されている。前記接合は、所定温度プロファイルに制御された雰囲気下で前記導電性接合材4を硬化させることによって行われる。前記導電性接合材として、例えばシリコーン系の導電性樹脂接合材が使用される。なお、導電性接合材はシリコーン系の導電性樹脂接合材に限定されるものではなく、シリコーン系以外にもエポキシ系などの導電性樹脂接合材を使用してもよい。ここで水晶片2と搭載パッド12との接合が完了した状態(定常状態)において、図2に示すように枕部7と、水晶片2の内底面8と対向する面26との間には僅かな空隙が形成されている。
【0028】
このような位置に枕部7を配置することにより、例えば水晶振動子に大きな外部衝撃が加わって水晶片の2つの自由端24,24側が大きく撓み、水晶片2の内底面8と対向する面26(以下、対向面と略記)がベースの内底面8と接触するのを防止することができる。具体的に、前記外部衝撃を水晶振動子が受けた際に、水晶片2の内底面8に対向する面26と前記位置に形成された枕部7とが、水晶片2の最厚肉部(水晶片の長辺方向においては略中央部分)と内底面8よりも先に接触するため、水晶片2と内底面8との接触を回避することができる。
【0029】
また図3に示すように、水晶片2の短辺方向においても枕部7が水晶片2の短辺周縁に近接した位置に形成されているため、例えば水晶振動子に大きな外部衝撃が加わって水晶片の自由端24,24側が撓んでも、枕部7が当該枕部の直上に位置する水晶と接触するため、自由端24,24の変位量が抑制され、水晶片2と内底面8との接触を防止することができる。つまり、前記外部衝撃を水晶振動子が受けた際に、水晶片2が枕部7と接触することで前記対向面26と内底面8との空隙を維持することができる。
【0030】
本実施形態で使用される蓋体は、平面視矩形状のセラミック材料から成り、蓋体の下面、すなわちベース1の堤部10の上面との接合面側には、全面に封止材が形成されている。本実施形態では前記封止材として低融点ガラスが使用されている。なお、前記蓋体材料として、セラミック材料以外にコバールを母材とし、その上部にニッケルめっき層、金めっき層が形成された層構成であってもよい。この場合、封止材としてAn−Sn合金等の金属ロウ材が使用される。前記水晶片2と前記搭載パッド12とを導電性接合材4を介して接合した後、周波数の微調整を行い、前記ベース1の堤部10の上面に前記蓋体の外周が略一致するようにして蓋体を被せ、所定温度に加熱することにより、蓋体に形成されたガラス材を溶融させ、蓋体とベース1とが気密封止される。本気密封止により、表面実装型水晶振動子の完成となる。
【0031】
板状の圧電振動片の角部は外部衝撃等により、欠けやチッピングが生じやすく、このような欠けやチッピングが発生すると圧電振動デバイスの諸特性に悪影響を与える。本発明の構成によれば、一対の枕部が、ベースの内底面であって前記一対の搭載パッドから前記圧電振動片の長辺方向に一定距離だけ各々離間し、当該長辺の縁部に近接し、かつ、当該圧電振動片の自由端となる角部を含まない位置に形成されるため、圧電振動片の2長辺の自由端(具体的に自由端となる側の角部)の直下には有体物は形成されていない。つまり、外部衝撃を受けたときに圧電振動片の角部は枕部と接触することがなく、圧電振動片の角部の欠けやチッピングを防止することができる。これにより、圧電振動デバイスの特性劣化を抑制することができる。
【0032】
また、本発明の構成によると、平面視矩形の圧電振動片の対角線上に位置する2つの端部が、ベース内底面に斜対向形成された一対の搭載パッドに対応し、接合材を介して各々接合される構成であるので、同形状の圧電振動片の短辺端部の略中央部分を接合する構成と比べて、圧電振動デバイスの特性劣化を抑制できる。つまり、本発明の支持構成によれば、圧電振動片の短辺方向において振動エネルギーが減衰する領域(角部を含む領域)を搭載パッドに接合しているので、圧電振動片の振動特性が阻害されず良好な特性を得ることができる。
【0033】
さらに上記構成によると、前記枕部は絶縁材料で形成されているので、例えば圧電振動片を駆動させるための励振電極が、圧電振動片の表裏面の周縁付近まで大きく形成されている場合、外部衝撃を受けて前記励振電極と前記枕部との接触状態が変化しても、電荷の移動が無く、励振電極間の容量が変化しないため発振周波数の変化を防止することができる。したがって、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイスを得ることができる。
【0034】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態を、図4を用いて説明する。図4は本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の平面図であり、図5は図4のC−C線に沿った断面図、図6は図4のD−D線に沿った断面図を表している。なお、図5乃至図6において水晶片の表裏面に形成される各種電極およびベース底面に形成される外部接続端子、ベース内部に形成される内部配線導体の記載は省略している。なお、第1の実施形態と同様の構成部分については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同様の効果を有する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0035】
図4乃至図5に示すように枕部は、第1の実施形態と枕部7の形成位置が異なっている。具体的に、枕部7は水晶片2の2長辺の略中央部分で、当該2長辺縁部に近接する位置に対向して形成されている。このような位置に枕部を設けることで、例えば水晶振動子に大きな外部衝撃が加わった際に、面取り加工された水晶片2の最厚肉部となる長辺方向の略中央部分とベース内底面との接触を抑制することができる。
【0036】
本実施形態では枕部は段部11の高さ(厚み)よりも、低く(薄肉)形成されている。この場合、枕部7は絶縁性材料(例えば樹脂等)を積層塗布した後、硬化させることによって形成する。
【0037】
前記一対の枕部は、水晶片2の2長辺の略中央部分に近接する位置に形成されているため、水晶片2の長辺方向における曲面の頂部と、枕部との位置関係は略同一線上に位置することになる。したがって、外部衝撃を受けた際の水晶片2の短辺方向における長辺方向における変位量の抑制に効果的である。つまり、外部衝撃を受けて水晶片2が撓んだ場合であっても、水晶片2の短辺側の端部(縁部)と前記枕部と接触するため、短辺方向においても変位量を抑制することができ、耐衝撃性能が向上する。
【0038】
本発明の実施形態では、封止材としてガラス材を例にしているが、セラミックベースと金属製の蓋体を用い、封止材に銀ロウ材等のロウ材を用いたレーザー封止、電子ビーム封止による封止等でも適用できる。さらに本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶発振器など電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスにも適用可能である。
【0039】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の平面図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】図1のB−B線に沿った断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の平面図。
【図5】図4のC−C線に沿った断面図。
【図6】図4のD−D線に沿った断面図。
【図7】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図。
【符号の説明】
【0042】
1 ベース
1a 第1層
1b 第2層
1c 第3層
2 水晶振動片
21 自由端
22 固定端
3 蓋体
4 導電性接合材
5 凹部
7 枕部
8 内底面
10 堤部
11 段部
12 搭載パッド
21a、21b 励振電極
22a、22b 引出電極
23a、23b 接続電極
24 自由端
25 固定端
26 対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも端部が面取り加工された平面視矩形状の圧電振動片が、平面視矩形状のベースに形成された凹部内に両持ち支持接合され、前記凹部を平板状の蓋体で気密封止した圧電振動デバイスであって、
平面視矩形の前記圧電振動片の対角線上に位置する2つの端部が、前記凹部の内底面に斜対向形成された一対の搭載パッドに対応するように、接合材を介して各々接合されてなり、
前記凹部の内底面であって、前記一対の搭載パッドから前記圧電振動片の長辺方向に一定距離だけ各々離間し、当該長辺の縁部に近接し、かつ、当該圧電振動片の自由端となる角部を含まない位置に、絶縁材料からなる一対の枕部が各々形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記一対の枕部が、前記圧電振動片の2長辺の自由端となる角部に近接した位置に、斜対向して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記一対の枕部が、前記圧電振動片の2長辺の略中央部分に近接した位置に各々形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−21613(P2010−21613A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177698(P2008−177698)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】