説明

圧電材料、圧電素子、液体吐出ヘッド、超音波モータおよび塵埃除去装置

【課題】高い圧電性能と高いキュリー温度を両立した圧電材料を提供する。また、それを用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、超音波モータおよび塵埃除去装置を提供する。
【解決手段】下記一般式(1):xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O…(1)(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.25≦x≦0.75、yは0.15≦y≦0.70、zは0.05≦z≦0.60の範囲の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなることを特徴とする圧電材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電材料に関するものであり、特に鉛を含有しない圧電材料に関する。また、それを用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、超音波モータおよび塵埃除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料は、チタン酸ジルコニウム酸鉛(以下「PZT」という)のようなABO型ペロブスカイト型金属酸化物が一般的である。しかしながら、PZTはAサイト元素として鉛を含有するために、環境に対する影響が問題視されている。このため、鉛を含有しないペロブスカイト型金属酸化物を用いた圧電材料が求められている。
【0003】
鉛を含有しないペロブスカイト型金属酸化物の圧電材料として、チタン酸バリウムが知られている。特許文献1には、抵抗加熱2段焼結法を用いて作製したチタン酸バリウムが開示されている。ナノサイズのチタン酸バリウム粉末を前記2段焼結法によって焼結すると、圧電特性に優れたセラミックスが得られることが記載されている。しかしながら、チタン酸バリウムはキュリー温度が125℃と低いため、高温でのデバイス動作に適さないという課題があった。
【0004】
また非特許文献1には、チタン酸バリウムのキュリー温度を上げる試みとして、チタン酸バリウムと鉄酸ビスマスの固溶体が開示されている。しかしながら、鉄酸ビスマスの固溶量が増えるにつれてキュリー温度が高くなる一方で、圧電性能が著しく低下してしまっていた。
【0005】
すなわち、鉛を含有しないペロブスカイト型金属酸化物の圧電材料において、高い圧電性能と高いキュリー温度の両立は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−150247号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】”Journal of Applied Physics” 2000年、第87巻、第2号、p.855から862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、高い圧電性能と高いキュリー温度を両立した圧電材料を提供するものである。
また、本発明は、前記圧電材料を用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、超音波モータおよび塵埃除去装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る圧電材料は、下記一般式(1):
一般式(1) xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMg、Niから選択される少なくとも1種以上の元素であり、xは0.25≦x≦0.75、yは0.15≦y≦0.70、zは0.05≦z≦0.60の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなることを特徴とする。
本発明に係る圧電材料は、下記一般式(2):
一般式(2) xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMg、Niから選択される少なくとも1種以上の元素であり、xは0.10≦x<0.25、yは0.15≦y≦0.30、zは0.45≦z≦0.75の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る圧電材料は、下記一般式(3):
一般式(3) lBaTiO−mBiFeO−nBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMg、Niから選択される少なくとも1種以上の元素であり、lは0<l<1、mは0<m<1、nは0<n<1の数値を表わす。但し、l+m+n=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなる圧電材料であって、前記圧電材料がセラミックスであり、前記セラミックスを構成する結晶粒が拡散相転移構造を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る圧電素子は、第一の電極、圧電材料および第二の電極を少なくとも有する圧電素子であって、前記圧電材料が上記の圧電材料であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、上記の圧電素子を用いることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る超音波モータは、上記の圧電素子を用いることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る塵埃除去装置は、上記の圧電素子を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い圧電性能と高いキュリー温度を両立した圧電材料を提供することができる。本発明の圧電材料を用いることで、鉛を含む圧電材料を用いた場合と同等以上のノズル密度、および吐出力を有する液体吐出ヘッドを提供出来る。
本発明の圧電材料を用いることで、鉛を含む圧電材料を用いた場合と同等以上の駆動力、および耐久性を有する超音波モータを提供出来る。
本発明の圧電材料を用いることで、鉛を含む圧電材料を用いた場合と同等以上の塵埃除去効率を有する塵埃除去装置を提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧電材料の一実施態様を示す相図である。
【図2】本発明の圧電材料の結晶粒内部における微構造の概念図である。
【図3】本発明の液体吐出ヘッドの構成の一実施態様を示す概略図である。
【図4】本発明の超音波モータの構成の一実施態様を示す概略図である。
【図5】本発明の塵埃除去装置の一実施態様を示す概略図である。
【図6】図5における本発明の圧電素子の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の塵埃除去装置の振動原理を示す模式図である。
【図8】実施例3、4、13および比較例5のX線回折図形である。
【図9】本発明の圧電材料の請求項1および3の組成を示した相図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明に係る圧電材料は、下記一般式(1):
一般式(1) xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.25≦x≦0.75、yは0.15≦y≦0.70、zは0.05≦z≦0.60の範囲の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなることを特徴とする。
また、本発明に係る圧電材料は、下記一般式(2):
一般式(2) xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMg、Niから選択される少なくとも1種以上の元素であり、xは0.10≦x<0.25、yは0.15≦y≦0.30、zは0.45≦z≦0.75の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなることを特徴とする。
【0018】
本発明において、ペロブスカイト型金属酸化物とは、岩波理化学辞典 第5版(岩波書店、1998年2月20日発行)に記載されているような、理想的には立方晶構造であるペロブスカイト型構造(ペロフスカイト型構造とも言う)を持つ金属酸化物を指す。ペロブスカイト型構造を持つ金属酸化物は一般にABOの化学式で表現される。ペロブスカイト型金属酸化物において、元素A、Bは各々イオンの形でAサイト、Bサイトと呼ばれる単位格子の特定の位置を占める。例えば、立方晶系の単位格子であれば、A元素は立方体の頂点、B元素は体心に位置する。O元素は酸素の陰イオンとして面心位置を占める。
【0019】
前記一般式(1)で表される金属酸化物は、BaTiO、BiFeO、Bi(M0.5Ti0.5)Oで表わされる3種類のペロブスカイト型金属酸化物の固溶体を意味している。前記一般式(1)において、Aサイトに位置する金属元素は主にBaおよびBiであり、Bサイトに位置する金属元素はTi、FeおよびMg、Niから選択される少なくとも1種の元素である。
【0020】
前記一般式(1)において、AサイトとBサイトの元素量の比は1対1と表記しているが、元素量の比が若干ずれた場合でも、ペロブスカイト型構造のみで構成される単相状態であれば、本発明の範囲に含まれる。例えば、鉛系圧電材料では、AサイトのPbを過剰に使用することや、複合ペロブスカイト型構造で実際のBサイト元素比が化学量論比からずれることが良く知られている。
【0021】
前記圧電材料がペロブスカイト型構造であることは、例えば、X線回折や電子線回折による構造解析から判断することが出来る。
【0022】
前記一般式(1)において、BaTiOの存在量を示すxは、0.25≦x≦0.75の範囲である。好ましくは0.25≦x≦0.55の範囲である。また、前記一般式(2)においてxは0.10≦x<0.25の範囲である。xが0.10より小さいと前記ペロブスカイト型構造以外の結晶相(以下、この結晶相を「異相」という)が生じてしまう恐れがある。一方、xが0.75より大きいと、キュリー温度が200℃未満となり、高温領域で圧電性を消失する恐れがある。本明細書において、キュリー温度とは、強誘電性が消失する温度をいう。その特定方法は、測定温度を変えながら強誘電性が消失する温度を直接測定する方法に加えて、ある周波数の微小交流電界を用いて測定温度を変えながら誘電率を測定し誘電率が最大を示す温度から求める方法がある。
【0023】
本発明の圧電材料において望ましいキュリー温度は、200℃以上500℃以下、より好ましくは200℃以上450℃以下である。キュリー温度が200℃以上である事により、デバイス化した場合に、温度による特性変動の少ない材料を提供出来る。また、キュリー温度が500℃以下である事により、素子化の際の分極処理が容易である材料を提供することができる。
【0024】
前記一般式(1)において、BiFeOの存在量を示すyは、0.15≦y≦0.70の範囲である。好ましくは0.20≦y≦0.70の範囲である。また、前記一般式(2)において、yは0.15≦y≦0.30の範囲である。yが0.15より小さいときは、以下の理由でxの値に関わらず問題がある。すなわちyが0.15より小さくかつ、xが0.5以上の範囲ではキュリー温度が低くなる恐れがあり、また、xが0.5より小さい範囲では異相が生じる恐れがある。一方、yが0.70より大きいと、絶縁性が低下する恐れがある。
【0025】
前記一般式(1)において、Bi(M0.5Ti0.5)Oの存在量を示すzは、0.05≦z≦0.60の範囲である。好ましくは0.05≦z≦0.25の範囲である。また、前記一般式(2)において、zは0.45≦z≦0.75の範囲である。zが0.05より小さいときは、以下の理由でxの値に関わらず問題がある。すなわちzが0.05より小さくかつ、xが0.5以上の範囲ではキュリー温度が低くなる恐れがあり、またxが0.5より小さい範囲では絶縁性が低下する恐れがある。一方、zが0.75より大きいと異相が生じてしまう恐れがある。
【0026】
前記一般式(1)において、Bi(M0.5Ti0.5)OのMはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素である。前記MはMgのみでも、Niのみでも、もしくはMgとNiの両方を含んでいても構わない。MgおよびNiは2価を取ることにより、4価のTiと疑似3価イオンを形成し、3価のBiとチャージバランスを取ることが可能となる。このとき、MとTiの比は1対1が好ましい。また前記一般式(1)において、Bi(M0.5Ti0.5)O中のMとTiの元素量は、ともに0.5と記載しているが、この量から0.4から0.6までずれた場合でも、ペロブスカイト型構造のみで構成される単相状態であれば、本発明の範囲に含まれる。
【0027】
また、本発明の圧電材料には特性調整成分や製造上含まれてしまう不純成分が含まれていても良い。
【0028】
前記一般式(1)において、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.25≦x≦0.75、yは0.15≦y≦0.70、zは0.05≦z≦0.60の範囲であるとき、圧電定数d33は100[pm/V]以上を有し、キュリー温度は200℃以上を有する。ここで、図1は本発明の圧電材料の一実施態様の相図であり、上記範囲はこの図のAの領域を表わしている。
【0029】
本明細書において、圧電定数d33とは、電界歪曲線の電界と歪の傾きから求めた定数である。ここで*印は、通常用いられる圧電定数d33が33方向のみの圧電特性を示すのに対し、この算出方法においては、僅かではあるが33以外の方向も寄与する可能性があるために付記した。本発明に係る圧電材料は、前記一般式(1)において、xは0.25≦x≦0.55、yは0.20≦y≦0.70、zは0.05≦z≦0.25の範囲であることが好ましい。
【0030】
前記一般式(1)において、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.25≦x≦0.55、yは0.20≦y≦0.70、zは0.05≦z≦0.25の範囲であるとき、圧電定数d33は200[pm/V]以上を有し、キュリー温度は200℃以上を有する。ここで、上記範囲は図1のBの領域を表わしている。
【0031】
図9は、本願発明の圧電材料の組成を示す上述のAの領域と共に、同じく本願発明の圧電材料の組成であり、一般式(2)で表現されるCの領域を図示したものである。一般式(2)で表現されるCの領域に対応する組成を有する本発明の圧電材料は、圧電定数d33は100[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上である。
【0032】
本発明の圧電材料は、MnおよびCuから選択される少なくとも一種を含有することにより圧電材料の絶縁性および密度が向上する。圧電材料の絶縁性が向上すると、高電界を印加する分極処理に耐え得ることができ、電気エネルギーと機械エネルギーの変換効率が向上する。また、圧電材料の密度が向上すると、圧電特性と機械的強度が向上する。
【0033】
本発明に係る圧電材料は、0.05質量%以上3.0質量%以下のMn(マンガン)およびCu(銅)から選択される少なくとも一種の元素を含有することが好ましい。MnおよびCuから選択される少なくとも一種の元素の量は、0.05質量%より少ないと絶縁性と密度の向上幅が小さくなる恐れがあり、3.0質量%より多くなると異相が発生する恐れがある。
【0034】
本発明の圧電材料に含有されるMnおよびCuに用いる原料は特に限定されない。Mnの場合は、2価のMn化合物であっても良いし、4価のMn化合物であっても良い。同様に、Cuの場合は、1価のCu化合物であっても良いし、2価のCu化合物であっても良い。また、固体粉末を用いても良いし、液体原料を用いてもよい。Mnの原料としては、例えば酸化マンガン、二酸化マンガン、酢酸マンガン、炭酸マンガンなどが挙げられる。Cuの材料としては、例えば酸化銅、硝酸銅などが挙げられる。
【0035】
また、本発明の圧電材料に含有されるMnおよびCuの存在位置は特に限定されない。MnおよびCuは、ペロブスカイト型構造のBサイトに含まれても良いし、結晶粒界に酸化物の形で含まれていても同様の効果を期待できる。本発明に係る圧電材料は、前記圧電材料がセラミックスであり、前記セラミックスを構成する結晶粒の平均円相当径が500nm以上5μm以下であり、前記結晶粒の最大円相当径が5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0036】
本明細書における「セラミックス」とは、基本成分が金属酸化物であり、熱処理によって焼き固められた結晶粒子の凝集体(バルク体とも言う)、いわゆる多結晶を表す。焼結後に加工されたものも含まれる。ただし、粉末や粉末を分散させたスラリーは、この用語に含まない。
【0037】
本明細書における「円相当径」とは、顕微鏡観察法において一般に言われる「投影面積円相当径」を表し、結晶粒の投影面積と同面積を有する真円の直径を表す。本発明において、この円相当径の測定方法は特に制限されない。例えば圧電セラミックスの表面を偏光顕微鏡や走査型電子顕微鏡で撮影して得られる写真画像を画像処理して求めることができる。結晶粒の円相当径を求める際の拡大倍率の例は、5から5000倍程度である。倍率によって光学顕微鏡と電子顕微鏡を使い分けても構わない。セラミックスの表面ではなく研磨面や断面の画像から円相当径を求めても良い。
【0038】
本明細書における「平均円相当径」とは、前記圧電セラミックスを撮影して得られた写真画像を画像処理して求めた前記円相当径の平均値である。前記平均値は体積平均でも個数平均でも良いが、好ましくは個数平均である。
【0039】
本明細書における「最大円相当径」とは、前記圧電セラミックスを撮影して得られた写真画像を画像処理して求めた前記円相当径の最大値である。
【0040】
前記結晶粒の平均円相当径は、500nm以上5μm以下であることが好ましい。これらの範囲では、圧電材料の結晶粒に後述する拡散相転移構造が存在しやすいという利点がある。一方、500nm未満である場合は、密度が低くなり圧電特性が十分にならない恐れがある。また、5μmより大きくなると、機械的強度が低くなる恐れがある。
【0041】
また、前記結晶粒の最大円相当径が5μm以上10μm以下であることが好ましい。これらの範囲では、圧電材料の結晶粒に後述する拡散相転移構造が存在しやすいという利点がある。一方、5μm未満である場合は、密度が低くなり圧電特性が十分にならない恐れがある。また、10μmより大きくなると、機械的強度が低くなる恐れがある。
【0042】
本発明の圧電材料は、圧電材料がセラミックスであり、前記セラミックスを構成する結晶粒が拡散相転移構造を有することが好ましい。
【0043】
本発明の圧電材料に対して、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて構造解析を行うと、組成領域によって、結晶粒の微構造が異なることが分かる。図2は、本発明の圧電材料における結晶粒の微構造の概念図であり、図2を用いて前記微構造について説明する。結晶粒の微構造としては、(a)極性ナノ領域(以下「PNR=Polar Nano Region」という)と呼ばれる自発分極が数nm単位であるランダムな方向を向いた非常に局所的な領域が支配的な組成領域と、(b)ランダムな方向を向いた自発分極が数十から数百nm単位である領域が支配的な組成領域(以下、「ドメイン領域」という)と(c)ドメイン領域の中にPNRが存在する組成領域の3種類がある。本発明では、図2(c)に示した、ドメイン領域の中にPNRが存在する微構造を「拡散相転移構造(Diffuse Phase Transition)」と呼ぶ。また、(a)の領域はリラクサ−領域とも呼ばれる。
【0044】
続いて、この微構造がどのような組成領域において存在しているかについて、図1を用いて説明する。
【0045】
PNRが支配的な領域は、図1のy=0かつx≦0.5の範囲やz=0かつx≧0.4の範囲などに存在している。この領域では、抗電界が小さいため、電界に対する変位応答がよいという特徴がある。また、圧電特性が大きくなる傾向がある。しかし、誘電率の周波数分散が大きいため、ある一定の温度でも圧電特性が周波数に対して不安定になるため、好ましくない。
【0046】
ドメイン領域は、図1のy=0かつx>0.5の範囲やz=0かつx<0.4の範囲などに存在している。この領域では圧電性の起源となるドメインの構造が安定しており、一定温度における圧電特性が安定している。しかし、抗電界が大きいため、印加電界に対する変位応答が鈍くなる恐れがあり、好ましくない。
【0047】
拡散相転移構造は、図1のAの領域に存在する。この領域では、PNRが支配的な領域がもつ圧電特性が高いという特徴と、ドメイン領域がもつ圧電特性が安定しているという両者の特徴を有するため好ましい。具体的な特性としては、圧電特性d33が100[pm/V]以上かつキュリー温度を200℃以上有する。
【0048】
本発明の圧電材料は、下記一般式(3):
一般式(3) lBaTiO−mBiFeO−nBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、lは0<l<1、mは0<m<1、nは0<n<1の範囲の数値を表わす。但し、l+m+n=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなる圧電材料であって、前記圧電材料がセラミックスであり、前記セラミックスを構成する結晶粒が拡散相転移構造を有することを特徴とする。
【0049】
拡散相転移構造を有することにより、圧電特性が高くかつ安定しており、さらにキュリー温度が高いという特徴を有する。
【0050】
前記一般式(3)において、AサイトとBサイトの元素量の比は1対1と表記しているが、元素量の比が0.9対1.1程度までずれた場合でも、ペロブスカイト型構造のみで構成される単相状態であれば、本発明の範囲に含まれる。
【0051】
また、本発明の圧電材料の製造方法は特に限定されない。
【0052】
セラミックスを製造する場合は、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、蓚酸塩などの固体粉末を常圧下で焼結する一般的な手法を採用することが出来る。また、焼結したセラミックスを切断し重ねて接着する方法や、セラミックス粉体をシート状にして重ねるテープキャスティング法を用いて積層構造にしても構わない。
【0053】
原料は、Ba(バリウム)化合物、Ti(チタン)化合物、Bi(ビスマス)化合物、Fe(鉄)化合物、Mg(マグネシウム)化合物、Ni(ニッケル)化合物、Mn化合物およびCu化合物といった金属化合物から構成される。
【0054】
使用可能なBa化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、蓚酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。
【0055】
使用可能なTi化合物の例としては、酸化チタンなどが挙げられる。
【0056】
使用可能なBi化合物の例としては、酸化ビスマス、硝酸ビスマスなどが挙げられる。
【0057】
使用可能なFe化合物の例としては、酸化鉄、塩化鉄、硝酸鉄などが挙げられる。
【0058】
使用可能なMg化合物の例としては、酸化マグネシウム、蓚酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0059】
使用可能なNi化合物の例としては、酸化ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、蓚酸ニッケルなどが挙げられる。
【0060】
使用可能なMn化合物の例としては、炭酸マンガン、酸化マンガン、二酸化マンガン、酢酸マンガンなどが挙げられる。
【0061】
使用可能なCu化合物の例としては、酸化銅、硝酸銅、硫酸銅などが挙げられる。
【0062】
また、焼結方法は特に限定されない。焼結方法の例としては電気炉による焼結、通電加熱法、マイクロ波焼結法、ミリ波焼結法、HIP(熱間等方圧プレス)などが挙げられる。
【0063】
焼結温度は限定されないが、前記圧電セラミックスが十分に結晶成長する温度であることが望ましい。好ましい焼結温度は、800℃以上1150℃以下、好ましくは900℃以上1030℃以下である。前記温度範囲において焼結された圧電セラミックスは、良好な圧電特性を示す。
【0064】
焼結処理により得られる圧電セラミックスの特性を再現よく安定させるためには、焼結温度を上記範囲内で一定にして1時間以上24時間以下程度の焼結処理を行なうと良い。
焼結された圧電セラミックスの相対密度は90%以上が好ましく、95%以上であることがより好ましい。相対密度が90%よりも小さいと、圧電セラミックスの比誘電率が著しく低下し、機械的強度も低下するためである。相対密度を上げる手段としては、マンガンや銅を添加することや、テープキャスティング法を用いて成形体を作ることなどが挙げられる。
【0065】
以下に本発明の圧電材料を用いた圧電素子について説明する。
本発明に係る圧電素子は、第一の電極、圧電材料および第二の電極を少なくとも有する圧電素子であって、前記圧電材料が上記の圧電材料であることを特徴とする。
【0066】
第一の電極および第二の電極は、厚み5nmから2000nm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの酸化物を挙げることができる。第一の電極および第二の電極は、これらのうちの1種からなるものであっても、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。第一の電極と第二の電極が、それぞれ異なる材料であっても良い。
【0067】
第一の電極と第二の電極の製造方法は限定されず、金属ペーストの焼き付けにより形成しても良いし、スパッタ、蒸着法などにより形成してもよい。また第一の電極と第二の電極とも所望の形状にパターニングして用いても良い。
【0068】
図3は、本発明の液体吐出ヘッドの構成の一実施態様を示す概略図である。図3(a)、(b)に示すように、本発明の液体吐出ヘッドは、本発明の圧電素子101を有する液体吐出ヘッドである。圧電素子101は、第一の電極1011、圧電材料1012、第二の電極1013を少なくとも有する圧電素子である。圧電セラミックス1012は、図3(b)の如く、必要に応じてパターニングされている。
【0069】
図3(b)は液体吐出ヘッドの模式図である。液体吐出ヘッドは、吐出口105、個別液室102、個別液室102と吐出口105をつなぐ連通孔106、液室隔壁104、共通液室107、振動板103、圧電素子101を有する。図において圧電素子101は矩形状だが、その形状は、楕円形、円形、平行四辺形等の矩形以外でも良い。一般に、圧電材料1012は個別液室102の形状に沿った形状となる。
【0070】
本発明の液体吐出ヘッドに含まれる圧電素子101の近傍を図3(a)で詳細に説明する。図3(a)は、図3(b)に示された液体吐出ヘッドの幅方向での圧電素子の断面図である。圧電素子101の断面形状は矩形で表示されているが、台形や逆台形でもよい。図中では、第一の電極1011が下部電極、第二の電極1013が上部電極として使用されている。しかし、第一の電極1011と、第二の電極1013の配置はこの限りではない。例えば、第一の電極1011を下部電極として使用しても良いし、上部電極として使用しても良い。同じく、第二の電極1013を上部電極として使用しても良いし、下部電極として使用しても良い。また、振動板103と下部電極の間にバッファ層108が存在しても良い。
【0071】
なお、これらの名称の違いはデバイスの製造方法によるものであり、いずれの場合でも本発明の効果は得られる。
【0072】
前記液体吐出ヘッドにおいては、振動板103が圧電材料1012の伸縮によって上下に変動し、個別液室102の液体に圧力を加える。その結果、吐出口105より液体が吐出される。本発明の液体吐出ヘッドは、プリンタ用途や電子デバイスの製造に用いる事が出来る。
【0073】
振動板103の厚みは、1.0μm以上15μm以下であり、好ましくは1.5μm以上8μm以下である。振動板の材料は限定されないが、好ましくはSiである。振動板のSiにBやPがドープされていても良い。また、振動板上のバッファ層、電極層が振動板の一部となっても良い。
【0074】
バッファ層108の厚みは、5nm以上300nm以下であり、好ましくは10nm以上200nm以下である。
【0075】
吐出口105の大きさは、円相当径で5μm以上40μm以下である。吐出口105の形状は、円形であっても良いし、星型や角型状、三角形状でも良い。
【0076】
次に、本発明の圧電素子を用いた超音波モータについて説明する。
【0077】
図4は、本発明の超音波モータの構成の一実施態様を示す概略図である。
【0078】
本発明の圧電素子が単板からなる超音波モータを、図4(a)に示す。超音波モータは、振動子201、振動子201の摺動面に不図示の加圧バネによる加圧力で接触しているロータ202、ロータ202と一体的に設けられた出力軸203を有する。前記振動子201は、金属の弾性体リング2011、本発明の圧電素子2012、圧電素子2012を弾性体リング2011に接着する有機系接着剤2013(エポキシ系、シアノアクリレート系など)で構成される。本発明の圧電素子2012は、不図示の第一の電極と第二の電極によって挟まれた圧電材料で構成される。
【0079】
本発明の圧電素子に位相がπ/2異なる二相の交流電圧を印加すると、振動子201に屈曲進行波が発生し、振動子201の摺動面上の各点は楕円運動をする。この振動子201の摺動面にロータ202が圧接されていると、ロータ202は振動子201から摩擦力を受け、屈曲進行波とは逆の方向へ回転する。不図示の被駆動体は、出力軸203と接合されており、ロータ202の回転力で駆動される。
【0080】
圧電材料に電圧を印加すると、圧電横効果によって圧電材料は伸縮する。金属などの弾性体が圧電素子に接合している場合、弾性体は圧電材料の伸縮によって曲げられる。ここで説明された種類の超音波モータは、この原理を利用したものである。
【0081】
次に、積層構造を有した圧電素子を含む超音波モータを図4(b)に例示する。振動子204は、筒状の金属弾性体2041に挟まれた積層圧電素子2042よりなる。積層圧電素子2042は、不図示の複数の積層された圧電材料により構成される素子であり、積層外面に第一の電極と第二の電極、積層内面に内部電極を有する。金属弾性体2041はボルトによって締結され、圧電素子2042を挟持固定し、振動子204となる。
【0082】
圧電素子2042に位相の異なる交流電圧を印加することにより、振動子204は互いに直交する2つの振動を励起する。この二つの振動は合成され、振動子204の先端部を駆動するための円振動を形成する。なお、振動子204の上部にはくびれた周溝が形成され、駆動のための振動の変位を大きくしている。
【0083】
ロータ205は、加圧用のバネ206により振動子204と加圧接触し、駆動のための摩擦力を得る。ロータ205はベアリングによって回転可能に支持されている。
【0084】
次に、本発明の圧電素子を用いた塵埃除去装置について説明する。
【0085】
図5(a)および図5(b)は本発明の塵埃除去装置の一実施態様を示す概略図である。塵埃除去装置310は板状の圧電素子330と振動板320より構成される。振動板320の材質は限定されないが、塵埃除去装置310を光学デバイスに用いる場合には透光性材料や光反射性材料を振動板320として用いることができる。
【0086】
図6は図5における圧電素子330の構成を示す概略図である。図6(a)と(c)は圧電素子330の表裏面の構成、図6(b)は側面の構成を示している。圧電素子330は図6に示すように圧電材料331と第1の電極332と第2の電極333より構成され、第1の電極332と第2の電極333は圧電材料331の板面に対向して配置されている。図6(c)において圧電素子330の手前に出ている第1の電極332が設置された面を第1の電極面336、図6(a)において圧電素子330の手前に出ている第2の電極332が設置された面を第2の電極面337とする。
【0087】
ここで、本発明における電極面とは電極が設置されている圧電素子の面を指しており、例えば図6に示すように第1の電極332が第2の電極面337に回りこんでいても良い。
【0088】
圧電素子330と振動板320は、図5(a)、(b)に示すように圧電素子330の第1の電極面336で振動板320の板面に固着される。そして圧電素子330の駆動により圧電素子330と振動板320との間に応力が発生し、振動板に面外振動を発生させる。本発明の塵埃除去装置310は、この振動板320の面外振動により振動板320の表面に付着した塵埃等の異物を除去する装置である。面外振動とは、振動板を光軸方向つまり振動板の厚さ方向に変位させる弾性振動を意味する。
【0089】
図7は本発明の塵埃除去装置310の振動原理を示す模式図である。(a)は左右一対の圧電素子330に同位相の交番電界を印加して、振動板320に面外振動を発生させた状態を表している。左右一対の圧電素子330を構成する圧電セラミックスの分極方向は圧電素子330の厚さ方向と同一であり、塵埃除去装置310は7次の振動モードで駆動している。(b)は左右一対の圧電素子330に位相が180°反対である逆位相の交番電圧を印加して、振動板320に面外振動を発生させた状態を表している。塵埃除去装置310は6次の振動モードで駆動している。本発明の塵埃除去装置310は少なくとも2つの振動モードを使い分けることで振動板の表面に付着した塵埃を効果的に除去できる装置である。
【0090】
前述したように本発明の圧電素子は、液体吐出ヘッド、超音波モータや塵埃除去装置に好適に用いられる。
【0091】
本発明は、高い圧電性能と高いキュリー温度を両立した新規の圧電材料を提供するものである。なお、本発明の圧電材料は、誘電体としての特性を利用してコンデンサ材料、メモリ材料、センサ材料として用いる等、さまざまな用途に利用できる。
【0092】
本発明の圧電材料を用いることで、鉛を含む圧電材料を用いた場合と同等以上のノズル密度、および吐出力を有する液体吐出ヘッドを提供出来る。
【0093】
本発明の圧電材料を用いることで、鉛を含む圧電材料を用いた場合と同等以上の駆動力、および耐久性を有する超音波モータを提供出来る。
【0094】
本発明の圧電材料を用いることで、鉛を含む圧電材料を用いた場合と同等以上の塵埃除去効率を有する塵埃除去装置を提供出来る。
【0095】
本発明の圧電材料は、液体吐出ヘッド、モータに加え、超音波振動子、圧電アクチュエータ、圧電センサ、強誘電メモリ等のデバイスに用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を挙げて本発明の圧電材料をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0097】
(BaTiO−BiFeO−Bi(Mg0.5Ti0.5)Oの例)(実施例1から16、および比較例1から6)
(製造方法)
原料としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製:粒径100nm)、酸化ビスマス(レアメタリック社製:純度99.999%)、酸化鉄(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化マグネシウム(レアメタリック社製:純度99.9%)および酸化チタン(石原産業社製:純度99.9%)を用いた。表1の組成になるように秤量し、溶媒としてエタノールを用いて、ボールミルで湿式混合を24時間行った。その後、80℃で乾燥させ、混合粉を800℃から900℃の温度で6時間仮焼した。
仮焼された粉末は、粉砕し、再び溶媒としてエタノールを用いて、ボールミル湿式混合を16時間行った。その後、バインダーとしてPVA(ポリビニルアルコール)を2質量%加え、ボールミル混合を1時間行なった後、80℃で乾燥させて、造粒粉を得た。
次に、得られた造粒粉を粉砕し、250μmメッシュの篩にかけ整粒した。整粒された得られた粉末を金型内に充填し、200MPaの圧力で一軸加圧し、直径10mmの円盤状の成形体を作製した。
そして、得られた成形体を700℃で10時間バインダーを除去し、900℃から1000℃で6時間焼成することにより焼結体を得た。その後、得られた焼結体は厚みが0.4mmになるように研磨した。
【0098】
(構造評価)
研磨された焼結体の組成は、ICP質量分析により検量線を作製したX線蛍光分析(XRF)により評価した。
焼結体の結晶構造は、X線回折(XRD)の2θ−θ測定により評価した。また、TEMを用いて詳細な構造解析を行った。
焼結体の密度は、アルキメデス法で評価を行った。相対密度はXRDの結晶構造解析から求められる理論密度に対する、密度の実測値の割合として求めた。
焼結体の結晶粒の平均円相当径と最大円相当径はSEMによって観察し、平均円相当径は個数平均として求めた。
【0099】
(電気特性評価)
研磨された焼結体の電気特性を評価するために、焼結体を厚さ0.4mm、長さ15mm、幅4mmの短冊状に加工し、表裏両面に銀電極を塗布し、圧電素子を作製した。
圧電特性は、電界歪曲線の電界と歪の傾きから圧電定数d33を求めることにより評価した。歪の値は、電界を60kV/cm印加した時の値を採用し、圧電定数を計算した。
また、キュリー温度は誘電率の温度特性のピーク位置から求めた。誘電率の温度特性は昇温速度3℃/分で10℃ごとに1MHzの誘電率を計測して求めた。
【0100】
これらの結果を表1にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Mg0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。結晶構造の項目において○、×はそれぞれ、ペロブスカイト型構造のみであったこと、異相が存在していたことを表わす。
【0101】
【表1】

【0102】
蛍光X線分析の結果から、焼結後も秤量通りの組成になっていることが分かった。
構造評価においては、X線回折による構造解析(2θ−θ測定)から、比較例6以外はペロブスカイト型構造のみであることが分かった。ここで実施例3、4、13および比較例5のX線回折図形を図8に示す。また、密度はペロブスカイト型構造のみであったものはすべて90%以上の相対密度であった。さらに実施例のサンプルにおいては、結晶粒の平均円相当径は0.5μm以上5.0μm以下であり、結晶粒の最大円相当径は5.2μm以上9.8μm以下であった。そして、TEMによる構造解析の結果、全ての実施例のサンプルにおいて拡散相転移構造が確認された。比較例においては、比較例1、2、3および6はPNRが支配的であり、比較例4および5はドメイン領域が支配的であった。
電気特性においては、実施例の組成範囲のサンプルにおいては、全て圧電定数d33は100[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上であった。
【0103】
(実施例17から23:MnやCuを含んだ材料系)
(製造方法)
原料としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製:粒径100nm)、酸化ビスマス(レアメタリック社製:純度99.999%)、酸化鉄(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化マグネシウム(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化チタン(石原産業社製:純度99.9%)、炭酸マンガンおよび酸化銅を用いた。表2の組成になるように秤量し、実施例1から16と同様の方法で焼結体を作製した。
【0104】
(構造評価)
研磨された焼結体は実施例1から16と同様の方法で組成、結晶構造、密度、結晶粒の平均円相当径および最大円相当径を評価した。
【0105】
(電気特性評価)
研磨された焼結体の電気特性は、実施例1から16と同様の方法で評価した。
【0106】
これらの結果を表2にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Mg0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。また、Mn量、Cu量はそれぞれxBaTiO−yBiFeO−zBi(Mg0.5Ti0.5)Oの100質量部に対する質量を表わす。さらに、結晶構造の項目において○は、ペロブスカイト型構造のみであったことを表わす。
【0107】
【表2】

【0108】
蛍光X線分析の結果から、焼結後も秤量通りの組成になっていることが分かった。
構造評価においては、X線回折による構造解析から、全てのサンプルにおいてペロブスカイトのみであることが分かった。また、密度は全てのサンプルで94%以上の相対密度であり、マンガンや銅を含まない実施例1から16に比べて高い値となった。そして、全てのサンプルにおいて結晶粒の平均円相当径と最大円相当径を評価し、平均円相当径は1.0μm以上4.2μm以下であり、最大円相当径は5.4μm以上9.9μm以下であった。さらに、TEMによる構造解析の結果、全てのサンプルにおいて拡散相転移構造が確認された。
電気特性においては、全てのサンプルにおいて、圧電定数d33は110[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上であった。
【0109】
(BaTiO−BiFeO−Bi(Ni0.5Ti0.5)Oの例)
(実施例24から33、および比較例7から10)
(製造方法A:通常焼結法)
原料としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製:粒径100nm)、酸化ビスマス(レアメタリック社製:純度99.999%)、酸化鉄(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化ニッケル(レアメタリック社製:純度99.9%)および酸化チタン(石原産業社製:純度99.9%)を用いた。表3の組成になるように秤量し、溶媒としてエタノールを用いて、ボールミルで湿式混合を24時間行った。その後、80℃で乾燥させ、混合粉を750℃から850℃の温度で6時間仮焼した。
仮焼された粉末は、粉砕し、再び溶媒としてエタノールを用いて、ボールミルで湿式混合を16時間行った。続いて、混合粉を80℃で乾燥させた後に、再度850℃から900℃の温度で6時間仮焼した。その後、バインダーとしてPVAを2質量%加え、ボールミル混合を1時間行なった後、80℃で乾燥させて、造粒粉を得た。
次に、得られた造粒粉を粉砕し、250μmメッシュの篩にかけ整粒した。整粒された得られた粉末を金型内に充填し、200MPaの圧力で一軸加圧し、直径10mmの円盤状の成形体を作製した。
そして、得られた成形体を500℃で10時間バインダーを除去し、950℃から1030℃で6時間焼成することにより焼結体を得た。その後、得られた焼結体は厚みが0.4mmになるように研磨した。
【0110】
(製造方法B:テープキャスティング法)
原料としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製:粒径100nm)、酸化ビスマス(レアメタリック社製:純度99.999%)、酸化鉄(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化ニッケル(レアメタリック社製:純度99.9%)および酸化チタン(石原産業社製:純度99.9%)を用いた。表3の組成になるように秤量し、溶媒としてエタノールを用いて、ボールミルで湿式混合を24時間行った。その後、80℃で乾燥させ、混合粉を750℃から850℃の温度で6時間仮焼した。
仮焼された粉末は、粉砕し、再び溶媒としてエタノールを用いて、ボールミルで湿式混合を16時間行った。続いて、混合粉を80℃で乾燥させた後に、再度850℃から900℃の温度で6時間仮焼した。その後、55vol%トルエン+45vol%エタノールの混合溶液を、混合粉末に対して90質量%となるように加えた。これに対してバインダーとして重量平均分子量が40万のPVP(ポリビニルピロリドン)及び可塑剤(フタル酸ブチル)を、それぞれ、粉末量に対し6質量%となるよう配合した。この混合物をボールミルで、5時間の湿式混合を行い、スラリーを作製した。
次に、ドクターブレード装置で、スラリーを厚さ40から45μmのテープ状に成形し、乾燥させた。さらに、このテープを2×2cmサイズに切りだし、40枚積層した後に、80℃×100kg/cm(9.8MPa)×10分の条件で圧着し、厚さ1.8mmの成形体を得た。
そして、得られた成形体を650℃で10時間バインダーを除去し、950℃から1030℃で6時間焼成することにより焼結体を得た。その後、得られた焼結体は厚みが0.4mmになるように研磨した。
【0111】
(構造評価)
研磨された焼結体は実施例1から23と同様の方法で組成、結晶構造、密度、結晶粒の平均円相当径および最大円相当径を評価した。
【0112】
(電気特性評価)
研磨された焼結体の電気特性は、実施例1から23と同様の方法で評価した。
【0113】
これらの結果を表3にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Ni0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。結晶構造の項目において○、×はそれぞれ、ペロブスカイト型構造のみであったこと、異相が存在していたことを表わす。
【0114】
【表3】

【0115】
蛍光X線分析の結果から、焼結後も秤量通りの組成になっていることが分かった。
構造評価においては、X線回折による構造解析から、比較例10以外はペロブスカイト型構造のみであることが分かった。また、密度はペロブスカイト型構造のみであったものはすべて90%以上の相対密度であり、テープキャスティング法を用いると相対密度が97%以上とより高くなっていることが分かる。さらに実施例のサンプルにおいては、結晶粒の平均円相当径は0.9μm以上5.0μm以下であり、結晶粒の最大円相当径は6.1μm以上9.8μm以下であった。そして、TEMによる構造解析の結果、全ての実施例のサンプルにおいて拡散相転移構造が確認された。比較例においては、比較例7および8はPNRが支配的であり、比較例9および10はドメイン領域が支配的であった。
電気特性においては、実施例の組成範囲のサンプルにおいては、全て圧電定数d33は105[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上であった。
【0116】
(実施例34から39:MnやCuを含んだ材料系)
(製造方法)
原料としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製:粒径100nm)、酸化ビスマス(レアメタリック社製:純度99.999%)、酸化鉄(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化ニッケル(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化チタン(石原産業社製:純度99.9%)、炭酸マンガンおよび酸化銅を用いた。表4の組成になるように秤量し、実施例1から33と同様の方法で焼結体を作製した。
【0117】
(構造評価)
研磨された焼結体は実施例1から33と同様の方法で組成、結晶構造、密度、結晶粒の平均円相当径および最大円相当径を評価した。
【0118】
(電気特性評価)
研磨された焼結体の電気特性は、実施例1から33と同様の方法で評価した。
【0119】
これらの結果を表4にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Ni0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。また、Mn量、Cu量はそれぞれxBaTiO−yBiFeO−zBi(Ni0.5Ti0.5)Oの100質量部に対する質量を表わす。さらに、結晶構造の項目において○は、ペロブスカイト型構造のみであったことを表わす。
【0120】
【表4】

【0121】
蛍光X線分析の結果から、焼結後も秤量通りの組成になっていることが分かった。
構造評価においては、X線回折による構造解析から、全てのサンプルにおいてペロブスカイト型構造のみであることが分かった。また、密度は全てのサンプルで94%以上の相対密度であり、マンガンや銅を含まずに同様の製法で作製した実施例24から33のサンプルに比べて高い値となった。そして、全てのサンプルにおいて結晶粒の平均円相当径と最大円相当径を評価し、平均円相当径は0.5μm以上4.0μm以下であり、最大円相当径は6.1μm以上10.0μm以下であった。さらに、TEMによる構造解析の結果、全てのサンプルにおいて拡散相転移構造が確認された。
電気特性においては、全てのサンプルにおいて、圧電定数d33は100[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上であった。
【0122】
(BaTiO−BiFeO−Bi(Mg0.5Ti0.5)Oの例2)
(実施例40から45および比較例11)
(製造方法)
実施例1から16と同じ原料を用いて、表5の組成になるように秤量し、実施例1から16と同様の方法で焼結体を作製した。
【0123】
(構造評価)
研磨された焼結体は実施例1から39と同様の方法で組成、結晶構造、密度、結晶粒の平均円相当径および最大円相当径を評価した。
【0124】
(電気特性評価)
研磨された焼結体の電気特性は、実施例1から39と同様の方法で評価した。
【0125】
これらの結果を表5にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Mg0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。また、結晶構造の項目において○は、ペロブスカイト型構造のみであったことを表わす。
【0126】
【表5】

【0127】
蛍光X線分析の結果から、焼結後も秤量通りの組成になっていることが分かった。
【0128】
構造評価においては、X線回折による構造解析から、全てのサンプルにおいてペロブスカイト型構造のみであることが分かった。また、密度は全てのサンプルで90%以上の相対密度であった。そして、全てのサンプルにおいて結晶粒の平均円相当径と最大円相当径を評価し、平均円相当径は3.9μm以上7.5μm以下であり、最大円相当径は8.4μm以上13.7μm以下であった。さらに、TEMによる構造解析の結果、全てのサンプルにおいて拡散相転移構造が確認された。
【0129】
電気特性においては、全てのサンプルにおいて、圧電定数d33は100[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上であった。
【0130】
(実施例46から51:MnやCuを含んだ材料系)
(製造方法)
実施例17から23と同じ原料を用いて、表6の組成になるように秤量し、実施例17から23と同様の方法で焼結体を作製した。
【0131】
(構造評価)
研磨された焼結体は実施例1から45と同様の方法で組成、結晶構造、密度、結晶粒の平均円相当径および最大円相当径を評価した。
【0132】
(電気特性評価)
研磨された焼結体の電気特性は、実施例1から45と同様の方法で評価した。
【0133】
これらの結果を表6にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Mg0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。また、Mn量、Cu量はそれぞれxBaTiO−yBiFeO−zBi(Mg0.5Ti0.5)Oの100質量部に対する質量を表わす。さらに、結晶構造の項目において○は、ペロブスカイト型構造のみであったことを表わす。
【0134】
【表6】

【0135】
蛍光X線分析の結果から、焼結後も秤量通りの組成になっていることが分かった。
【0136】
構造評価においては、X線回折による構造解析から、全てのサンプルにおいてペロブスカイト型構造のみであることが分かった。また、密度は全てのサンプルで94%以上の相対密度であり、マンガンや銅を含まない実施例40から45に比べて高い値となった。そして、全てのサンプルにおいて結晶粒の平均円相当径と最大円相当径を評価し、平均円相当径は3.1μm以上6.5μm以下であり、最大円相当径は8.2μm以上10.0μm以下であった。さらに、TEMによる構造解析の結果、全てのサンプルにおいて拡散相転移構造が確認された。
【0137】
電気特性においては、全てのサンプルにおいて、圧電定数d33は100[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上であった。
【0138】
(BaTiO−BiFeO−Bi(Ni0.5Ti0.5)Oの例2)
(実施例52から57および比較例11)
(製造方法)
実施例24から33と同じ原料を用いて、表7の組成になるように秤量し、実施例24から33と同様の方法で焼結体を作製した。
【0139】
(構造評価)
研磨された焼結体は実施例1から51と同様の方法で組成、結晶構造、密度、結晶粒の平均円相当径および最大円相当径を評価した。
【0140】
(電気特性評価)
研磨された焼結体の電気特性は、実施例1から51と同様の方法で評価した。
【0141】
これらの結果を表7にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Ni0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。また、結晶構造の項目において○は、ペロブスカイト型構造のみであったことを表わす。
【0142】
【表7】

【0143】
蛍光X線分析の結果から、焼結後も秤量通りの組成になっていることが分かった。
【0144】
構造評価においては、X線回折による構造解析から、全てのサンプルにおいてペロブスカイト型構造のみであることが分かった。また、密度は全てのサンプルで90%以上の相対密度であった。そして、全てのサンプルにおいて結晶粒の平均円相当径と最大円相当径を評価し、平均円相当径は3.4μm以上7.9μm以下であり、最大円相当径は7.2μm以上14.6μm以下であった。さらに、TEMによる構造解析の結果、全てのサンプルにおいて拡散相転移構造が確認された。
【0145】
電気特性においては、全てのサンプルにおいて、圧電定数d33は100[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上であった。
【0146】
(実施例58から63:MnやCuを含んだ材料系)
(製造方法)
実施例34から39と同じ原料を用いて、表8の組成になるように秤量し、実施例34から39と同様の方法で焼結体を作製した。
【0147】
(構造評価)
研磨された焼結体は実施例1から57と同様の方法で組成、結晶構造、密度、結晶粒の平均円相当径および最大円相当径を評価した。
【0148】
(電気特性評価)
研磨された焼結体の電気特性は、実施例1から57と同様の方法で評価した。
【0149】
これらの結果を表8にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Ni0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。また、Mn量、Cu量はそれぞれxBaTiO−yBiFeO−zBi(Ni0.5Ti0.5)Oの100質量部に対する質量を表わす。さらに、結晶構造の項目において○は、ペロブスカイト型構造のみであったことを表わす。
【0150】
【表8】

【0151】
蛍光X線分析の結果から、焼結後も秤量通りの組成になっていることが分かった。
【0152】
構造評価においては、X線回折による構造解析から、全てのサンプルにおいてペロブスカイト型構造のみであることが分かった。また、密度は全てのサンプルで94%以上の相対密度であり、マンガンや銅を含まない実施例52から57に比べて高い値となった。そして、全てのサンプルにおいて結晶粒の平均円相当径と最大円相当径を評価し、平均円相当径は2.8μm以上6.5μm以下であり、最大円相当径は6.2μm以上9.8μm以下であった。さらに、TEMによる構造解析の結果、全てのサンプルにおいて拡散相転移構造が確認された。
【0153】
電気特性においては、全てのサンプルにおいて、圧電定数d33は100[pm/V]以上であり、キュリー温度は200℃以上であった。
【0154】
(実施例8による液体吐出ヘッド)
実施例8と同じ圧電材料を用いて、図3に示される液体吐出ヘッドを作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が確認された。
【0155】
(実施例20による超音波モータ)
実施例20と同じ圧電材料を用いて、図4に示される超音波モータ作製した。交番電圧の印加に応じたモータの回転挙動が確認された。
【0156】
(実施例30による塵埃除去装置)
実施例30と同じ圧電材料を用いて、図5に示される塵埃除去装置を作製した。プラスチック製ビーズを散布し、交番電圧を印加したところ、良好な塵埃除去率が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明によれば、環境に有害な成分を含まずに高い圧電性能を有する圧電材料を提供することができる。また、本発明は、前記圧電材料を用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、超音波モータおよび塵埃除去装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0158】
101 圧電素子
102 個別液室
103 振動板
104 液室隔壁
105 吐出口
106 連通孔
107 共通液室
108 バッファ層
1011 第一の電極
1012 圧電材料
1013 第二の電極
201 振動子
202 ロータ
203 出力軸
204 振動子
205 ロータ
206 バネ
2011 弾性体リング
2012 圧電素子
2013 有機系接着剤
2041 金属弾性体
2042 積層圧電素子
310 塵埃除去装置
320 振動板
330 圧電素子
331 圧電材料
332 第1の電極
333 第2の電極
336 第1の電極面
337 第2の電極面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O (1)(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.25≦x≦0.75、yは0.15≦y≦0.70、zは0.05≦z≦0.60の範囲の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなることを特徴とする圧電材料。
【請求項2】
前記一般式(1)において、xは0.25≦x≦0.55、yは0.20≦y≦0.70、zは0.05≦z≦0.25の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の圧電材料。
【請求項3】
下記一般式(2):
xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O (2)(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.10≦x<0.25、yは0.15≦y≦0.30、zは0.45≦z≦0.75の範囲の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなることを特徴とする圧電材料。
【請求項4】
前記圧電材料に0.05質量%以上3.0質量%以下のMnおよびCuから選択される少なくとも一種の元素を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電材料。
【請求項5】
前記圧電材料がセラミックスであり、前記セラミックスを構成する結晶粒の平均円相当径が500nm以上5μm以下であり、前記結晶粒の最大円相当径が5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電材料。
【請求項6】
前記圧電材料がセラミックスであり、前記セラミックスを構成する結晶粒が拡散相転移構造を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電材料。
【請求項7】
下記一般式(3):
lBaTiO−mBiFeO−nBi(M0.5Ti0.5)O (3)(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、lは0<l<1、mは0<m<1、nは0<n<1の範囲の数値を表わす。但し、l+m+n=1である。)
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなる圧電材料であって、前記圧電材料がセラミックスであり、前記セラミックスを構成する結晶粒が拡散相転移構造を有することを特徴とする圧電材料。
【請求項8】
第一の電極、圧電材料および第二の電極を少なくとも有する圧電素子であって、前記圧電材料が請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電材料であることを特徴とする圧電素子。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電素子を用いた液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項8に記載の圧電素子を用いた超音波モータ。
【請求項11】
請求項8に記載の圧電素子を用いた塵埃除去装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−148954(P2012−148954A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194072(P2011−194072)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度文部科学省元素戦略プロジェクトの委託研究の成果で、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【Fターム(参考)】