説明

圧電素子の電気的接続構造、圧電アクチュエータ、ヘッドサスペンション、及び導電性部材の電気的接続構造

【課題】 圧電素子への配線作業を、圧電素子の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行可能とする。
【解決手段】 圧電素子13の共有電極板19に給電するための端子部材57A−1のうち電気絶縁層61に貫通孔67Aを設ける。共有電極板19と端子部材57とを、電気絶縁層61側を圧電素子13側に向けて対面させ、かつ、共有電極板19と端子部材57との間であって貫通孔67Aの周辺に液止め部材69を介在させた状態で、貫通孔67A内に液状の導電性接着剤71を注入する。これによって、端子部材57A−1の配線部63Aと、圧電素子13の共有電極板19と、の間における僅かな高低差を埋めて両者間の電気的な接続関係を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置の磁気ヘッドスライダを支持するためのヘッドサスペンションに関する。特に、本発明は、電圧の印加状態に応じて変形する圧電素子を備え、圧電素子の変形に従って磁気ヘッド側をスウェイ方向に微少移動させる圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の小型化、精密化が急速に進展してきている。かかる情勢から、微小距離で位置決め制御が可能なマイクロアクチュエータの需要が高まっている。例えば、光学系の焦点補正や傾角制御、インクジェットプリンタ装置、磁気ディスク装置のヘッドアクチュエータ等の技術分野では、そうしたマイクロアクチュエータの要請が高い。
【0003】
一方、磁気ディスク装置では、記憶容量を大きくすることが喫緊の課題である。一般に磁気ディスク装置の大容量化は、ディスク1枚あたりの記憶容量を大きくすることで実現される。ディスクの直径を変えずに高記録密度化を実現するには、単位長さあたりのトラック数 (TPI : Track Per inch) を大きくすること、つまり、トラックの幅を狭くすることが必要である。そのため、トラックにおける幅方向の磁気ヘッドの位置決め精度を向上することが必要となる。かかる観点からも、微細領域で高精度の位置決めを実現可能なアクチュエータが望まれる。
【0004】
こうした要請に応えるために、本願出願人は、ベースプレートと、ベースプレートよりも薄いヒンジ部を備えた連結プレートと、フレキシャが設けられるロードビームと、一対の圧電素子と、などを備えたディスク装置用サスペンション(例えば、特許文献1参照)を提案している。
【0005】
上述の特許文献1に係る技術は、デュアル・アクチュエータ方式と呼ばれる。この方式では、精密位置決め用のアクチュエータとして、通常のボイルコイルモータに加えて、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)よりなる圧電素子を採用している。
【0006】
この圧電素子は、ロードビームの先端側を、サスペンションにおける幅方向(いわゆるスウェイ方向)に微少駆動する。同方式を用いたヘッドサスペンションによれば、シングル・アクチュエータ方式のものと比較して、磁気ヘッドの位置決めを高精度に行うことができる。
【0007】
こうしたデュアル・アクチュエータ方式を用いたヘッドサスペンションでは、圧電素子への給電をいかにして行うか、が問題となる。
【0008】
このような問題を解決するためのアプローチのひとつとして、圧電素子へ給電するために、ヘッドサスペンションに一対の配線を形成し、一方の配線は、ベース側電極とワイヤボンディングにより接続し、他方の配線は、一対の各圧電素子の上面露出部とをワイヤーボンディングで結線するように構成したヘッドサスペンション装置が開示されている(例えば、特許文献2の図9及び図10参照)。
【0009】
しかしながら、特許文献2に係るワイヤーボンディング技術では、接合強度を確保しつつワイヤーボンディング処理を施そうとすると、必然的に圧電素子に対して局所的な応力が加わることから、割れが生じてしまうおそれがある。割れが生じないように加減してワイヤーボンディング処理を施した場合には、接合強度を稼げないことから、電気的接続に係る信頼性を損なうおそれがある。
【0010】
要するに、圧電素子の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で、圧電素子への配線作業を遂行することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−50140号公報
【特許文献2】特開2003−61371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、従来技術では、圧電素子への配線作業を、圧電素子の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行することは困難であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、圧電素子への配線作業を、圧電素子の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行可能な圧電素子の電気的接続構造、圧電アクチュエータ、ヘッドサスペンションを得ること目的として、電圧の印加状態に応じて変形する圧電素子を有し、基部と磁気ヘッドとの間に介在させて設けられて前記圧電素子の変形に従って前記磁気ヘッド側をスウェイ方向に微少移動させる圧電アクチュエータにおいて、前記圧電素子に設けられる電極と、少なくとも電気絶縁層と配線部とを積層させて成る、前記電極に給電するための端子部材と、少なくとも前記電気絶縁層を貫通するように前記端子部材に設けられる貫通孔と、を備え、前記電極と前記端子部材とを、前記電気絶縁層側を前記圧電素子側に向けて対面させ、かつ、前記電極と前記端子部材との間であって前記貫通孔の周辺に液止め部材を介在させた状態で、前記貫通孔内に液状の導電性接着剤が注入されることによって、前記電極と前記配線部との間が電気的に接続されている、ことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る圧電素子の電気的接続構造では、前記電極と前記端子部材とを、前記電気絶縁層側を前記圧電素子側に向けて対面させ、かつ、前記電極と前記端子部材との間であって前記貫通孔の周辺に液止め部材を介在させた状態で、前記貫通孔内に液状の導電性接着剤が注入されることによって、前記圧電素子の電極と前記配線部との間が電気的に接続されている。
【0015】
従って、圧電素子への配線作業を、圧電素子の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明実施例に係るヘッドサスペンションの外観斜視図である。
【図2】本発明実施例に係る圧電アクチュエータの外観斜視図である。
【図3】本圧電アクチュエータのA−A線に沿う矢視断面図である。
【図4】本発明実施例に係るヘッドサスペンションを裏面から視た平面図である。
【図5】図5は、第1〜第4端子部材付き配線部材の外観図であり、図5(A)は、配線部材をヘッドサスペンションの裏面側から視た外観図、図5(B)は、配線部材を圧電素子側から視た外観図である。
【図6】図6は、第1端子部材の外観図であり、図6(A)は、第1端子部材を圧電素子側から視た正面図、図6(B)は、第1端子部材の右側面図、図6(C)は、第1端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図7】図7は、第2端子部材の外観図であり、図7(A)は、第2端子部材を圧電素子側から視た正面図、図7(B)は、第2端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図8】図8は、第3端子部材の外観図であり、図8(A)は、第3端子部材を圧電素子側から視た正面図、図8(B)は、第3端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図9】図9は、第4端子部材の外観図であり、図9(A)は、第4端子部材を圧電素子側から視た正面図、図9(B)は、第4端子部材の右側面図、図9(C)は、第4端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図10】図10は、第5〜第8端子部材付き配線部材の外観図であり、図10(A)は、配線部材をヘッドサスペンションの裏面側から視た外観図、図10(B)は、配線部材を圧電素子側から視た外観図である。
【図11】図11は、第5端子部材の外観図であり、図11(A)は、第5端子部材を圧電素子側から視た正面図、図11(B)は、第5端子部材の右側面図、図11(C)は、第5端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図12】図12は、第6端子部材の外観図であり、図12(A)は、第6端子部材を圧電素子側から視た正面図、図12(B)は、第6端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図13】図13は、第7端子部材の外観図であり、図13(A)は、第7端子部材を圧電素子側から視た正面図、図13(B)は、第7端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図14】図14は、第8端子部材の外観図であり、図14(A)は、第8端子部材を圧電素子側から視た正面図、図14(B)は、第8端子部材の右側面図、図14(C)は、第8端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図15】本発明の変形実施例に係るヘッドサスペンションの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
圧電素子への配線作業を、圧電素子の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行可能にするといった目的を、前記電極と前記端子部材とを、前記電気絶縁層側を前記圧電素子側に向けて対面させ、かつ、前記電極と前記端子部材との間であって前記貫通孔の周辺に液止め部材を介在させた状態で、前記貫通孔内に液状の導電性接着剤が注入されることによって、前記圧電素子の電極と前記配線部との間が電気的に接続されている、圧電素子の電気的接続構造によって実現した。
【実施例】
【0018】
以下、本発明実施例に係る圧電素子の電気的接続構造、圧電アクチュエータ、ヘッドサスペンション、及び導電性部材の電気的接続構造について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
初めに、本発明実施例に係るヘッドサスペンションの概略構成について説明する。
【0020】
[本発明実施例に係るヘッドサスペンション]
図1は、本発明実施例に係るヘッドサスペンションの外観斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本発明実施例に係るヘッドサスペンション31は、次述する圧電素子13の取付部としての機能を兼ねたベースプレート33と、ロードビーム35と、ヒンジ部材としての機能を兼ねた連結プレート37と、などを備えている。
【0022】
このヘッドサスペンション31は、ベースプレート33に形成した後述する開口部43を有し、同開口部43に、電圧の印加状態に応じて変形する圧電素子13を埋め込み式に装着することで、圧電素子13の変形に従ってロードビーム35の先端側をスウェイ方向に変位させるように構成されている。
【0023】
ベースプレート33は、板厚が例えば150〜200μm程度の、例えばステンレス製薄板から構成されている。ベースプレート33は、U字状に湾曲した左右一対の可撓部41a,41bと、圧電素子13を収容可能な開口部43と、略円形のボス孔45と、を有している。一対の可撓部41a,41bは、圧電素子13の側面に対応したそれぞれの位置において、外側に凸となるように湾曲している。ベースプレート33は、不図示のボイスコイルモータによって駆動されるアクチュエータアームの先端部に固定され、ボイスコイルモータによって旋回駆動されるようになっている。
【0024】
ベースプレート33の素材としては、例えば、アルミニウム合金などの軽合金、又は軽合金とステンレス鋼とからなるクラッド材等を用いることもできる。かかる軽量素材を採用すれば、ベースプレート33の慣性質量(イナーシャ)を小さくすることを通じて、スウェイ方向の共振周波数を高くし、ひいてはヘッドサスペンション31のトレース能力向上に寄与することができる。
【0025】
なお、ベースプレート33に可撓部41a,41b及び開口部43を設ける構成に代えて、ベースプレート33に対してその後端側が重ね合わされた状態でレーザ溶接等の適宜の固着手段によって固着されるアクチュエータプレート34に、可撓部41a,41b及び開口部43を設ける構成を採用してもよい。
【0026】
すなわち、本発明は、ベースプレート33とアクチュエータプレート34を共に備えているヘッドサスペンション、及びベースプレート33を備えているがアクチュエータプレート34は備えていないヘッドサスペンションの両者を、その技術的範囲の射程に捉えている。ただし、以下では、説明の簡略化を企図して、”アクチュエータプレート34”は、”ベースプレート33”と一体であるものとして説明を進める。
【0027】
ロードビーム35にはフレキシャ39が設けられている。フレキシャ39は、ロードビーム35よりもさらに薄く精密な金属製の薄板ばねからなる。フレキシャ39における先端側には、磁気ヘッドを構成するスライダ(不図示)が設けられている。
【0028】
ロードビーム35は、フレキシャ39におけるスライダに負荷荷重を与えるもので、例えば30〜150μm程度の板厚のステンレス鋼で形成されている。ロードビーム35には、その両側部に一対の曲げ縁36a,36bが形成されている。これにより、ロードビーム35の剛性を高めるようにしている。ロードビーム35における後端側には、連結プレート37が一体に設けられている。
【0029】
ロードビーム35の素材としては、例えば、アルミニウム合金などの軽合金、又は軽合金とステンレス鋼とからなるクラッド材等を用いることもできる。かかる軽量素材を採用すれば、ロードビーム35の慣性質量(イナーシャ)を小さくすることを通じて、スウェイ方向の共振周波数を高くし、ひいてはヘッドサスペンション31のトレース能力向上に寄与することができる。
【0030】
連結プレート37は、板厚が例えば30μm程度のばね性を有する金属板から構成されている。連結プレート37の一部には、厚み方向の曲げ剛性を下げるための孔47が形成されている。この孔47の両側部に、厚み方向に撓むことのできる左右一対のヒンジ部49a,49bが形成されている。
【0031】
連結プレート37における後端側は、ベースプレート33における先端側に、その裏面側から重ね合わされて、レーザ溶接等の適宜の固着手段によって相互に固着されている。
【0032】
本発明実施例に係るヘッドサスペンション31の説明の途中であるが、ここで説明の便宜上、本発明実施例に係るヘッドサスペンションに組み込まれる圧電アクチュエータの構成及びその作用効果について説明する。
【0033】
[圧電アクチュエータ]
図2は、本発明実施例に係る圧電アクチュエータの外観斜視図、図3は、本圧電アクチュエータのA−A線に沿う矢視断面図である。
【0034】
図2及び図3に示すように、本発明実施例に係る圧電アクチュエータ11は、電圧の印加状態に応じて変形する、略矩形形状の圧電素子13を有し、圧電素子13の変形に従って被駆動部材(本発明実施例ではロードビーム35)を駆動する役割を果たす。
【0035】
ここで、”電圧の印加状態に応じて変形する”とは、電圧の印加又は開放に応じて変形する概念と、電圧の印加レベルに応じて変形する概念と、の両者を包含する概念である。
【0036】
圧電素子13は、共通の平面内において相互に所定距離離隔して配置される一対の第1及び第2電極板15,17と、一対の第1及び第2電極板15,17に対向して設けられる一つの共有電極板(本発明の”圧電素子の電極”に相当する。)19と、一対の第1及び第2電極板15,17と共有電極板19との間に設けられる圧電材料部21と、を備えて構成されている。
【0037】
第1及び第2電極板15,17と共有電極板19は、例えば金(Au)等の接触抵抗が低い金属材料を好適に用いることができる。また、一対の第1及び第2電極板15,17は、相互に略同一形状かつ略同一サイズに形成されている。さらに、共有電極板19は、一対の第1及び第2電極板15,17を統合したものと略同一形状かつ略同一サイズに形成されている。
【0038】
圧電材料部21は、第1電極板15への電圧の印加状態に応じて変形する第1圧電材料部21aと、第2電極板17への電圧の印加状態に応じて変形する第2圧電材料部21bとを、相互に異なる分極方向となるように配置して構成されている。具体的には、これら第1及び第2圧電材料部21a,21bは、例えば圧電セラミックスを素材として用いて、相互に180°異なる分極方向となるように配置されている。
【0039】
次に、本発明実施例に係る圧電アクチュエータ11の動作について、圧電素子13におけるX(図2参照)を固定側ベース部とする一方、Y(図2参照)を駆動側ベース部とし、さらに、一対の第1及び第2電極板15,17を電気的に接地する一方、共有電極板19に所要の電圧を印加した場合を想定して説明する。
【0040】
この場合、圧電素子13は、図2に示すように、第1電極板15における一方の端面23が収縮する一方、第2電極板17における他方の端面25が伸長することで、全体として略台形形状に歪む。すると、圧電素子13は、Z方向(図2参照)に微少距離だけ変位することで、駆動側ベース部Yにおける被駆動部材の位置を変位させることができる。
【0041】
上述とは逆に、共有電極板19を電気的に接地する一方、一対の第1及び第2電極板15,17に所要の電圧を印加した場合には、マイナスZ方向(図2のZ方向とは逆方向)に微少距離だけ変位することで、駆動側ベース部Yにおける被駆動部材の位置を変位させることができる。
【0042】
従って、本発明実施例に係る圧電アクチュエータによれば、第1及び第2電極板15,17と共有電極板19の3枚の各電極のそれぞれに対して都合3系統の電気的接続を確保すればよい。この結果、圧電素子への配線作業を、簡易かつ高信頼性を維持した状態で遂行するのを、各電極の構成面から補助することができる。
【0043】
また、一つの圧電素子13を用いて圧電アクチュエータを構成する本発明実施例では、部品点数削減を通じて、部品管理の煩わしさを低減するとともに、コスト的にも有利となる。
【0044】
次いで、引き続き本発明実施例に係るヘッドサスペンション31の説明に戻る。
【0045】
図4は、本発明実施例に係るヘッドサスペンションを裏面側から視た平面図である。
【0046】
図1及び図4に示すように、ベースプレート33における開口部43には、第1及び第2電極板15,17が上方に位置する一方で、共有電極板19が下方に位置するように、圧電素子13が埋め込み式に設けられている。
【0047】
ベースプレート33の開口部43の周縁における先端側及び後端側には、圧電素子13の接着性能向上を企図して、部分的なエッチング処理が施してある。
【0048】
圧電素子13と、ベースプレート33との間には、その周縁における先端側及び後端側に、適宜の厚みを有する非導電性接着剤層51が設けられている。この非導電性接着剤層51によって、圧電素子13の歪み(変位)を効果的にロードビーム35に伝達するとともに、圧電素子13における共有電極板19とベースプレート33間における電気的な絶縁を確保するようにしている。
【0049】
本実施例では、ベースプレート33と、連結プレート37とが相互に重なり合う部分によって、圧電アクチュエータ11における駆動側ベース部Yが構成されている。
【0050】
次に、本発明実施例に係る圧電素子の電気的接続構造及びその作用効果について説明する。
【0051】
[圧電素子の電気的接続構造]
図5(A)は、第1〜第4端子部材付き配線部材をヘッドサスペンションの裏面側から視た外観図、図5(B)は、第1〜第4端子部材付き配線部材を圧電素子側から視た外観図、図6(A)は、第1端子部材を圧電素子側から視た正面図、図6(B)は、第1端子部材の右側面図、図6(C)は、第1端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図、図7(A)は、第2端子部材を圧電素子側から視た正面図、図7(B)は、第2端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図、図8(A)は、第3端子部材を圧電素子側から視た正面図、図8(B)は、第3端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図、図9(A)は、第4端子部材を圧電素子側から視た正面図、図9(B)は、第4端子部材の右側面図、図9(C)は、第4端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図、図10(A)は、第5〜第8端子部材付き配線部材をヘッドサスペンションの裏面側から視た外観図、図10(B)は、第5〜第8端子部材付き配線部材を圧電素子側から視た外観図、図11(A)は、第5端子部材を圧電素子側から視た正面図、図11(B)は、第5端子部材の右側面図、図11(C)は、第5端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図、図12(A)は、第6端子部材を圧電素子側から視た正面図、図12(B)は、第6端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図、図13(A)は、第7端子部材を圧電素子側から視た正面図、図13(B)は、第7端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図、図14(A)は、第8端子部材を圧電素子側から視た正面図、図14(B)は、第8端子部材の右側面図、図14(C)は、第8端子部材の取付状態を示す図4のB−B線に沿う矢視断面図である。
【0052】
以下の説明において、共通の部材には共通の符合を付して、重複した説明を省略する。また、相互に類似する構成については、その相違点を中心に説明する。さらに、例えば、端子部材57A,57Bに代えて”端子部材57”のように”A”または”B”等の添え字を省略して表記したときは、端子部材57を総称するものとする。”端子部材57”以外の部材も同様とする。
【0053】
本発明実施例に係るヘッドサスペンション31の組立時において、圧電素子13は、開口部43の内周面によって所定の位置に位置決めされる。その結果、図4,図5及び図10等に示すように、圧電素子13に対する給電、並びに磁気ヘッドにおける読み取りまたは書き込み信号を伝送するための、フレキシャ39における配線部材55のうち端子部材57と、圧電素子13における共有電極板19とが、相互に対面するように位置する。これら両者間の高低差は数10μm程度とごく僅かである。
【0054】
なお、図5(A),図10(A)に示すように、端子部材57(配線部材55も同様)は、導電性基材(フレキシャ39のSUS製基材)59上に、電気絶縁層61を介して例えば銅線等からなる配線部63を、都合三層に積層させて構成されている。
【0055】
また、図5(B),図10(B)に示すように、端子部材57のうち、圧電素子13の共有電極板19と対面する範囲65について、共有電極板19と導電性基材59間における短絡事故を未然に回避する目的で、導電性基材59はエッチング処理によって除去されている。
【0056】
さて、端子部材57Aと、圧電素子13の共有電極板19と、の間における僅かな高低差を埋めて両者間の電気的な接続関係を確保するために、第1〜第4端子部材57A−1〜4に係る基本となる圧電素子の電気的接続構造は、圧電素子13に設けられる共有電極板19と、共有電極板19に給電するための端子部材57Aと、電気絶縁層61のみを貫通するように端子部材57Aに設けられる貫通孔67Aと、を備える。共有電極板19と端子部材57Aとを、電気絶縁層61側を圧電素子13側に向けて対面させ、かつ、共有電極板19と端子部材57Aとの間であって貫通孔67Aの周辺に液止め部材69を介在させた状態で、貫通孔67A内に液状の導電性接着剤71が注入される。これによって、共有電極板19と配線部63Aとの間を電気的に接続するように構成されている。
【0057】
第1〜第4端子部材57A−1〜4に係る圧電素子の電気的接続構造では、図5(A),図5(B)に示すように、貫通孔67Aは、電気絶縁層61のみを貫通するように端子部材57Aに設けられている。配線部63Aには孔が空けられていない。
【0058】
従って、電気絶縁層61に空けられた貫通孔67Aを通して、配線部63Aの端面を望むことができるようになっている。
【0059】
ここで、液止め部材69は、貫通孔67に導電性接着剤液71が注入されたとき、共有電極板19と端子部材57との間に生じる隙間を狭くさせ、かかる狭い隙間で毛細管現象を発生させる目的で、共有電極板19と端子部材57との間に介在させている。
【0060】
液止め部材69の材質は、導電性接着剤71の立体障害としての役割を果たす目的を考慮すると、導電性接着剤71に係る素材との相性が良好(浸食や溶解等の作用がない)である限りにおいて、例えば金属や樹脂など、あらゆる材質を採用することができる。導電性接着剤71としては、例えば銀ペーストなど、適宜の素材を採用することができる。
【0061】
なお、圧電素子13における第1及び第2電極板15,17の各々と、ベースプレート33との各間には、図1に示すように、各間における電気的な接続を確保するための一対の導電性接着剤53a,53bが塗布されている。これにより、第1及び第2電極板15,17の各々と、ベースプレート33との各間における電気的な接続関係が担保されている。
【0062】
次いで、第1端子部材57A−1に係る圧電素子の電気的接続構造について、前述した基本となる接続構造との差異に注目して説明すると、図6(A),図6(B),図6(C)に示すように、共有電極板19と第1端子部材57A−1との間であって貫通孔67Aの周囲にわたりリング状の液止め部材69−1を介在させた状態で、貫通孔67A内に液状の導電性接着剤71が注入されることによって、共有電極板19と配線部63Aとの間を電気的に接続するように構成されている。
【0063】
リング状の液止め部材69−1は、前述のエッチング処理時に、貫通孔67Aの周囲にわたり導電性基材59を残すことで形成されている。ただし、かかる処理を遂行する際に、エッチング処理によって貫通孔67Aの周囲にわたり導電性基材59を部分的に残した時に、エッチング処理によって除去されていない本体となる導電性基材59との間において、電気的な接続関係が完全に絶たれていることを要する。これは、共有電極板19と導電性基材59間における短絡事故を未然に回避することに基づく。かかる構成に代えて、導電性基材59に係るエッチング処理を完遂すると同時に、導電性基材59とは別体のリング状の液止め部材69−1を適用してもよい。
【0064】
また、第2端子部材57A−2に係る圧電素子の電気的接続構造について、前述した第1端子部材57A−1に係る接続構造との差異に注目して説明すると、図7(A),図7(B)に示すように、共有電極板19と第2端子部材57A−2との間であって貫通孔67Aの周方向にわたりリング状部材部材69−1を放射状にぶつ切りした形状の孤立片73が複数(実施例では4つ)均等に設けられる孤立片群からなる液止め部材69−2を介在させた状態で、貫通孔67A内に液状の導電性接着剤71が注入されることによって、共有電極板19と配線部63Aとの間を電気的に接続するように構成されている。
【0065】
孤立片群からなる液止め部材69−2は、前述のエッチング処理時に、貫通孔67Aの周辺に所要形状の孤立片に係る導電性基材59を残すことで形成することができる。
【0066】
さらに、第3端子部材57A−3に係る圧電素子の電気的接続構造について、前述した第2端子部材57A−2に係る接続構造との差異に注目して説明すると、図8(A),図8(B)に示すように、共有電極板19と第3端子部材57A−3との間であって貫通孔67Aの周方向にわたりドット形状の孤立片73が複数(実施例では4つ)均等に設けられる孤立片群からなる液止め部材69−3を介在させた状態で、貫通孔67A内に液状の導電性接着剤71が注入されることによって、共有電極板19と配線部63Aとの間を電気的に接続するように構成されている。
【0067】
孤立片群からなる液止め部材69−3は、前述のエッチング処理時に、貫通孔67Aの周辺に所要形状の孤立片に係る導電性基材59を残すことで形成することができる。
【0068】
そして、第4端子部材57A−4に係る圧電素子の電気的接続構造について、前述した第1端子部材57A−1に係る接続構造との差異に注目して説明すると、図9(A),図9(B)に示すように、第1端子部材57A−1に係る接続構造では、リング状の液止め部材69−1が電気絶縁層61側に密着(貼着を含む。以下、同じ。)して設けられていたのに対し、第4端子部材57A−4に係る接続構造では、リング状の液止め部材69−4が共有電極板19側に密着して設けられている。
【0069】
一方、端子部材57Bと、圧電素子13の共有電極板19と、の間における僅かな高低差を埋めて両者間の電気的な接続関係を確保するために、第5〜第8端子部材57B−1〜4に係る基本となる圧電素子の電気的接続構造は、共有電極板19と、共有電極板19に給電するための端子部材57Bと、電気絶縁層61及び配線部63Bを貫通するように端子部材57Bに設けられる貫通孔67Bと、を備える。共有電極板19と端子部材57Bとを、電気絶縁層61側を圧電素子13側に向けて対面させ、かつ、共有電極板19と端子部材57Bとの間であって貫通孔67Bの周辺に液止め部材69を介在させた状態で、貫通孔67B内に液状の導電性接着剤71が注入される。これによって、共有電極板19と配線部63Bとの間を電気的に接続するように構成されている。
【0070】
第1〜第4端子部材57A−1〜4に係る圧電素子の電気的接続構造では、図5(A),図5(B)に示すように、貫通孔67Aは、電気絶縁層61のみを貫通するように端子部材57Aに設けられるのに対し、第5〜第8端子部材57B−1〜4に係る圧電素子の電気的接続構造では、図10(A),図10(B)に示すように、貫通孔67Bは、電気絶縁層61及び配線部63Bを貫通するように端子部材57Bに設けられる点が、大きく相違している。
【0071】
従って、電気絶縁層61及び配線部63Bに空けられた貫通孔67Bを通して、配線部63Bの孔の内周面を望むことができるようになっている。
【0072】
液止め部材69の存在目的又は材質は、第1〜第4端子部材57A−1〜4に係る圧電素子の電気的接続構造のそれと同様である。
【0073】
次いで、第5端子部材57B−1に係る圧電素子の電気的接続構造について、前述した第1端子部材57A−1に係る圧電素子の電気的接続構造との差異に注目して説明すると、図11(A),図11(B),図11(C)に示すように、電気絶縁層61及び配線部63Bを貫通するように端子部材57Bに貫通孔67Bを設けた点が、大きく相違している。リング状の液止め部材69−1を用いる点など、その他の構成は共通である。
【0074】
また、第6端子部材57B−2に係る圧電素子の電気的接続構造について、前述した第2端子部材57A−2に係る圧電素子の電気的接続構造との差異に注目して説明すると、図12(A),図12(B)に示すように、電気絶縁層61及び配線部63Bを貫通するように端子部材57Bに貫通孔67Bを設けた点が、大きく相違している。孤立片73が複数均等に設けられる孤立片群からなる液止め部材69−2を用いる点など、その他の構成は共通である。
【0075】
さらに、第7端子部材57B−3に係る圧電素子の電気的接続構造について、前述した第3端子部材57A−3に係る接続構造との差異に注目して説明すると、図13(A),図13(B)に示すように、電気絶縁層61及び配線部63Bを貫通するように端子部材57Bに貫通孔67Bを設けた点が、大きく相違している。ドット形状の孤立片73が複数均等に設けられる孤立片群からなる液止め部材69−3を用いる点など、その他の構成は共通である。
【0076】
そして、第8端子部材57B−4に係る圧電素子の電気的接続構造について、前述した第4端子部材57A−4に係る接続構造との差異に注目して説明すると、図14(A),図14(B)に示すように、電気絶縁層61及び配線部63Bを貫通するように端子部材57Bに貫通孔67Bを設けた点が、大きく相違している。共有電極板19側に密着して設けられるリング状の液止め部材69−4を用いる点など、その他の構成は共通である。
【0077】
本発明実施例に係る基本となる圧電素子の電気的接続構造によれば、貫通孔67内に導電性接着剤液71が注入されたとき、共有電極板19と端子部材57との隙間に液止め部材69が介在していると、その隙間に狭小部分が生じる。この狭小部分では毛細管現象が発生し、同狭小部分において導電性接着剤液71が這うように浸透・拡散する。
【0078】
これに対し、液止め部材69が介在していない前記隙間が広い部分では毛細管現象が発生しないため、同隙間が広い部分において導電性接着剤液71が浸透・拡散することはない。
【0079】
このように、液止め部材69の介在部分における外延を越えてまで導電性接着剤液71が浸透・拡散することはない。液止め部材69の介在部分における外延があたかも堤防のように機能することで、液止め部材69の介在部分における外延の内側に導電性接着剤液71がとどまる。その結果、確実な接合強度をもって、圧電素子13への機械的ストレスを一切与えることなく、共有電極板19と配線部63との間における電気的接続を担保することができる。
【0080】
従って、圧電素子13への配線作業を、圧電素子13の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行することができる。
【0081】
仮に、共有電極板19と端子部材57との隙間に液止め部材69が介在していない場合には、上述した液止め部材69の介在部分における外延は存在しない。つまり、導電性接着剤液71の浸透・拡散を抑止するためのいわゆる堤防は一切存在しない。
【0082】
このため、貫通孔67内に導電性接着剤液71が注入されたとき、共有電極板19と端子部材57との隙間において、導電性接着剤液71が無節操に浸透・拡散してしまう事態を招来しかねない。
【0083】
その結果、1)導電性接着剤液の貫通孔内への注入量のコントロールを行うことが難しく、導電性接着剤液の貫通孔内への注入作業を自動化することに困難を伴う、2)ヘッドサスペンションの剛性バランスが崩れ、振動特性が劣化する、3)導電性接着剤液がひどく浸透・拡散した場合、圧電素子の電極と何らかの導電性部材との間で電気的短絡が生じる、などといった諸問題を生じるおそれがあった。
【0084】
これに対し、本発明実施例に係る圧電素子の電気的接続構造では、共有電極板19と端子部材57との隙間に液止め部材69が介在している。このため、貫通孔67内に導電性接着剤液71が注入されたとき、共有電極板19と端子部材57との隙間において、導電性接着剤液71が無節操に浸透・拡散することはない。
【0085】
従って、上述した諸問題を未然に回避して、1)導電性接着剤液の貫通孔内への注入量を容易にコントロールすることができ、導電性接着剤液71の貫通孔67内への注入作業を円滑に自動化することができる、2)ヘッドサスペンションの剛性バランスが適正に保たれ、振動特性を良好に維持できる、3)導電性接着剤液71が無節操に浸透・拡散することは抑止されているため、共有電極板19と何らかの導電性部材との間で電気的短絡が生じることはない、といった本発明特有の効果を奏する。
【0086】
また、第1又は第5端子部材57A−1,57B−1に係る圧電素子の電気的接続構造によれば、貫通孔67A,67Bに導電性接着剤液71が注入されたとき、共有電極板19と端子部材57A,57Bとの隙間にリング状の液止め部材69−1が介在していると、その隙間に貫通孔67A,67Bの周囲にわたって狭小部分(図6(C)参照)が生じる。この狭小部分では毛細管現象が発生し、同狭小部分において導電性接着剤液71が這うように浸透・拡散する。
【0087】
これに対し、液止め部材69が介在していない前記隙間が広い部分では毛細管現象が発生しないため、同隙間が広い部分において導電性接着剤液71が浸透・拡散することはない。
【0088】
このように、リング状の液止め部材69−1の介在部分における外延を越えてまで導電性接着剤液71が浸透・拡散することはない。液止め部材69−1の介在部分におけるリング状の外延があたかも堤防のように機能することで、前記リング状の外延の内側に導電性接着剤液71がとどまる。その結果、より一層確実な接合強度をもって、圧電素子13への機械的ストレスを一切与えることなく、共有電極板19と配線部63A,63Bとの間における電気的接続を担保することができる。
【0089】
従って、圧電素子13への配線作業を、圧電素子13の歩留まり低下を抑制しつつ、より一層高信頼性を維持した状態で遂行することができる。
【0090】
さらに、第2端子部材57A−2若しくは第3端子部材57A−3に係る圧電素子の電気的接続構造によれば、貫通孔67Aに導電性接着剤液71が注入されたとき、共有電極板19と第2端子部材57A−2若しくは第3端子部材57A−3との隙間に、孤立片群からなる液止め部材69−2若しくは69−3が介在していると、その隙間に狭小部分(図7(B),図8(B)参照)が生じる。すなわち、共有電極板19と第2端子部材57A−2若しくは第3端子部材57A−3との間に生じる隙間と、各孤立片73,75間に生じる空間と、が相俟って、異形の狭小部分が生じる。この狭小部分では毛細管現象が発生し、同狭小部分において導電性接着剤液71が這うように浸透・拡散する。
【0091】
同様に、第6端子部材57B−2若しくは第7端子部材57B−3に係る圧電素子の電気的接続構造によれば、貫通孔67Bに導電性接着剤液71が注入されたとき、共有電極板19と第6端子部材57B−2若しくは第7端子部材57B−3との隙間に、孤立片群からなる液止め部材69−2若しくは69−3が介在していると、その隙間に狭小部分(図12(B),図13(B)参照)が生じる。すなわち、共有電極板19と、第6端子部材57B−2若しくは第7端子部材57B−3との間に生じる隙間と、各孤立片73,75間に生じる空間と、が相俟って、異形の狭小部分が生じる。この狭小部分では毛細管現象が発生し、同狭小部分において導電性接着剤液71が這うように浸透・拡散する。
【0092】
これに対し、液止め部材69が介在していない前記隙間が広い部分では毛細管現象が発生しないため、同隙間が広い部分において導電性接着剤液71が浸透・拡散することはない。
【0093】
このように、孤立片群からなる液止め部材69−2若しくは69−3の介在部分における外延(図7(A),図12(A)中の符合77で示す点線部分、若しくは図8(A),図13(A)中の符合79で示す点線部分参照)を越えてまで導電性接着剤液71が浸透・拡散することはない。液止め部材69−2若しくは69−3の介在部分における外延があたかも堤防のように機能することで、前記外延の内側に導電性接着剤液71がとどまる。その結果、確実な接合強度をもって、圧電素子13への機械的ストレスを一切与えることなく、共有電極板19と配線部63A,63Bとの間における電気的接続を担保することができる。
【0094】
従って、圧電素子13への配線作業を、圧電素子13の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行することができる。
【0095】
そして、第4又は第8端子部材57A−4,57B−4に係る圧電素子の電気的接続構造によれば、貫通孔67A,67Bに導電性接着剤液71が注入されたとき、共有電極板19と端子部材57A,57Bとの間に生じる隙間に、共有電極板19側に密着(貼着を含む。)して設けられているリング状の液止め部材69−4が介在していると、その隙間に狭小部分(図9(C),図14(C)参照)が生じる。この狭小部分では毛細管現象が発生し、同狭小部分において導電性接着剤液71が這うように浸透・拡散する。
【0096】
これに対し、液止め部材69が介在していない前記隙間が広い部分では毛細管現象が発生しないため、同隙間が広い部分において導電性接着剤液71が浸透・拡散することはない。
【0097】
このように、リング状の液止め部材69−4の介在部分における外延を越えてまで導電性接着剤液71が浸透・拡散することはない。液止め部材69−4の介在部分におけるリング状の外延があたかも堤防のように機能することで、前記リング状の外延の内側に導電性接着剤液71がとどまる。その結果、より一層確実な接合強度をもって、圧電素子13への機械的ストレスを一切与えることなく、共有電極板19と配線部63A,63Bとの間における電気的接続を担保することができる。
【0098】
従って、第1又は第5端子部材57A−1,57B−1に係る圧電素子の電気的接続構造と同様に、圧電素子13への配線作業を、圧電素子13の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行することができる。
【0099】
次に、本発明実施例に係るヘッドサスペンション31の動作について、一対の第1及び第2電極板15,17を電気的に接地する一方、共有電極板19に所要の電圧を印加した場合を想定して説明する。
【0100】
この場合、圧電素子13は、図2に示す通り、第1電極板15における一方の端面23が収縮する一方、第2電極板17における他方の端面25が伸長することで、全体として略台形形状に歪む。
【0101】
すると、圧電素子13は、Z方向(図1参照)に微少距離だけ変位することで、駆動側ベース部Yにおける被駆動部材としてのロードビーム35の位置を、スウェイ方向に変位させることができる。
【0102】
上述とは逆に、共有電極板19を電気的に接地する一方、一対の第1及び第2電極板15,17に所要の電圧を印加した場合には、マイナスZ方向(図1参照)に微少距離だけ変位することで、駆動側ベース部Yにおける被駆動部材としてのロードビーム35の位置を、スウェイ方向に変位させることができる。
【0103】
従って、本発明実施例に係る圧電アクチュエータ11を組み込んだヘッドサスペンション31によれば、圧電素子13における第1及び第2電極板15,17と共有電極板19の3枚の各電極のそれぞれに対して都合3系統の電気的接続を確保すればよい。
【0104】
この結果、圧電素子への配線作業を、簡易かつ高信頼性を維持した状態で遂行するのを、各電極の構成面から補助することができる。
【0105】
また、ベースプレート33によって埋込み式に圧電素子13をその下面側から支持させるとともに、圧電素子13のほぼ全周にわたってベースプレート33で包囲させる構成を採用したので、圧電素子13を接着する際の位置決めが容易で、かつ、圧電素子13の損傷を回避できるとともに、脆く欠けやすい圧電素子13を効果的に保護することができる。
【0106】
さらに、共有電極板19と、同共有電極板19に対面する端子部材57との間の電気的接続について、接続箇所は一箇所のみであるから、フレキシャ39における配線本数削減、並びにフレキシャ39における配線箇所の少数化に由来する取り数向上に寄与することができる。
【0107】
最後に、本発明に係る電気的接続構造は、易破壊性を有する導電性部材に適用することができる。
【0108】
すなわち、本発明実施例に係る導電性部材の電気的接続構造では、易破壊性を有する導電性部材に電極を設ける。前記電極に給電するための、少なくとも電気絶縁層と配線部とを積層させてなる端子部材に貫通孔を設ける。前記電極と前記端子部材とを、前記電気絶縁層側を前記導電性部材側に向けて対面させ、かつ、前記電極と前記端子部材との間であって前記貫通孔の周辺に液止め部材を介在させた状態で、前記貫通孔内に液状の導電性接着剤が注入される。これによって、前記電極と前記配線部との間が電気的に接続されている、構成を採用してもよい。
【0109】
なお、”端子部材に貫通孔を設ける”とは、電気絶縁層のみを貫通するように端子部材に貫通孔を設ける態様と、電気絶縁層及び配線部を貫通するように端子部材に貫通孔を設ける態様と、の両者を含む概念である。
【0110】
このように構成すれば、貫通孔内に液状の導電性接着剤が注入されたとき、前記電極と前記端子部材との隙間に前記液止め部材が介在していると、その隙間に狭小部分が生じる。この狭小部分では毛細管現象が発生し、同狭小部分において導電性接着剤液が這うように浸透・拡散する。
【0111】
これに対し、前記液止め部材が介在していない前記隙間が広い部分では毛細管現象が発生しないため、同隙間が広い部分において導電性接着剤液が浸透・拡散することはない。
【0112】
このように、液止め部材の介在部分における外延を越えてまで導電性接着剤液が浸透・拡散することはない。液止め部材の介在部分における外延があたかも堤防のように機能することで、前記外延の内側に導電性接着剤液がとどまる。その結果、確実な接合強度をもって、圧電素子への機械的ストレスを一切与えることなく、前記電極と前記配線部との間における電気的接続を担保することができる。
【0113】
従って、圧電素子への配線作業を、圧電素子の歩留まり低下を抑制しつつ高信頼性を維持した状態で遂行することができる。
【0114】
[その他]
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは技術思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う圧電素子の電気的接続構造、圧電アクチュエータ、ヘッドサスペンション、及び導電性部材の電気的接続構造もまた、本発明における技術的範囲の射程に包含されるものである。
【0115】
すなわち、例えば、ベースプレート33に可撓部41a,41b及び開口部43を設ける構成に代えて、アクチュエータプレート34に可撓部41a,41b及び開口部43を設ける構成を採用したヘッドサスペンションも、本発明の技術的範囲の射程に含まれる。従って、本件出願に係る発明の構成要件”ベースプレート”は、本発明実施例に係る”ベースプレート33”及び”アクチュエータプレート34”の両者を含む概念である。そのため、本発明の請求項に記載の構成要件”ベースプレート”は、必要に応じて”アクチュエータプレート”と読み替えることが可能である。具体的には、例えば、”ベースプレートに形成した開口部”は、必要に応じて”アクチュエータプレートに形成した開口部”と読み替えて、その技術的範囲を解釈することができる。
【0116】
また、本発明実施例中、本発明実施例に係る圧電アクチュエータが、ベースプレート33と、フレキシャ39が設けられるロードビーム35と、の間に取り付けられる態様を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。具体的には、例えば、ヘッドサスペンションをキャリッジアームに固定して、キャリッジアームの回動により磁気ヘッドを移動させるヘッド移動機構において、ヘッドサスペンション、磁気ヘッドスライダ、若しくは磁気ヘッド素子それ自体を微少移動させるために、基部と磁気ヘッドとの間に本発明実施例に係る圧電アクチュエータを介在させて設ける構成を採用してもよい。
【0117】
そして、本発明実施例中、一つの圧電素子13を用いて圧電アクチュエータ11を構成して、こうして構成した一つの圧電素子13に対し、本発明に係る圧電素子の電気的接続構造を適用する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。具体的には、例えば図10に示すように、一対の圧電素子81a,81bを用いて圧電アクチュエータ83を構成して、こうして構成した一対の圧電素子81a,81bのそれぞれに対し、本発明に係る圧電素子の電気的接続構造を適用してもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0118】
11 圧電アクチュエータ
13 圧電素子(圧電アクチュエータの一部を構成する。)
15 第1電極板
17 第2電極板
19 共有電極板(圧電素子の電極)
21 圧電材料部
21a,21b 第1,第2圧電材料部
31 ヘッドサスペンション
33 ベースプレート
34 アクチュエータプレート
35 ロードビーム
37 連結プレート(ヒンジ部材)
39 フレキシャ
41a,41b 一対の可撓部
43 開口部
49a,49b ヒンジ部
53a,53b 一対の導電性接着剤
55A,55B 配線部材
57A,57B 端子部材
59 導電性基材
61 電気絶縁層
63A,63B 配線部
65 エッチング抜き部分
67A,67B 貫通孔
69 液止め部材
71 導電性接着剤
73,75 孤立片
81a,81b 一対の圧電素子(圧電アクチュエータの一部を構成する。)
83 圧電アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加状態に応じて変形する圧電素子を有し、基部と磁気ヘッドとの間に介在させて設けられて前記圧電素子の変形に従って前記磁気ヘッド側をスウェイ方向に微少移動させる圧電アクチュエータにおいて、
前記圧電素子に設けられる電極と、
少なくとも電気絶縁層と配線部とを積層させて成る、前記電極に給電するための端子部材と、
少なくとも前記電気絶縁層を貫通するように前記端子部材に設けられる貫通孔と、
を備え、
前記電極と前記端子部材とを、前記電気絶縁層側を前記圧電素子側に向けて対面させ、かつ、前記電極と前記端子部材との間であって前記貫通孔の周辺に液止め部材を介在させた状態で、前記貫通孔内に液状の導電性接着剤が注入されることによって、前記電極と前記配線部との間が電気的に接続されている、
ことを特徴とする圧電素子の電気的接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の圧電素子の電気的接続構造であって、
前記貫通孔は、前記電気絶縁層及び前記配線部を貫通するように前記端子部材に設けられる、
ことを特徴とする圧電素子の電気的接続構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の圧電素子の電気的接続構造であって、
前記液止め部材は、前記電極と前記端子部材との間であって前記貫通孔の周囲にわたり設けられるリング状部材からなる、
ことを特徴とする圧電素子の電気的接続構造。
【請求項4】
請求項1又は2記載の圧電素子の電気的接続構造であって、
前記液止め部材は、前記電極と前記端子部材との間であって前記貫通孔の周方向にわたり相互に孤立させて複数設けられる孤立片群からなる、
ことを特徴とする圧電素子の電気的接続構造。
【請求項5】
請求項4記載の圧電素子の電気的接続構造であって、
前記孤立片群からなる液止め部材は、リング状部材を放射状にぶつ切りした形状の孤立片、ドット形状の孤立片、若しくはこれらの組合せからなる、
ことを特徴とする圧電素子の電気的接続構造。
【請求項6】
請求項1又は2記載の圧電素子の電気的接続構造であって、
前記液止め部材は、前記導電性基材とは別体の部材であって、前記端子部材側若しくは前記圧電素子の電極側に貼着されている、
ことを特徴とする圧電素子の電気的接続構造。
【請求項7】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の圧電素子の電気的接続構造であって、
前記端子部材は、導電性基材上に、電気絶縁層を介して配線部を積層させて構成され、
前記端子部材のうち、前記圧電素子の電極と対面する範囲について、前記導電性基材はエッチング処理によって除去されている、
ことを特徴とする圧電素子の電気的接続構造。
【請求項8】
請求項7記載の圧電素子の電気的接続構造であって、
前記液止め部材は、前記エッチング処理時に、前記貫通孔の周辺における前記導電性基材を残すことで形成されている、
ことを特徴とする圧電素子の電気的接続構造。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の圧電素子の電気的接続構造を採用したことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項10】
請求項9記載の圧電アクチュエータがベースプレートとロードビームとの間に設けられ、前記圧電素子の変形に従って前記ロードビームの先端側をスウェイ方向に微少移動させることを特徴とするヘッドサスペンション。
【請求項11】
易破壊性を有する導電性部材に設けられる電極と、
少なくとも電気絶縁層と配線部とを積層させて成る、前記電極に給電するための端子部材と、
少なくとも前記電気絶縁層を貫通するように前記端子部材に設けられる貫通孔と、
を備え、
前記電極と前記端子部材とを、前記電気絶縁層側を前記導電性部材側に向けて対面させ、かつ、前記電極と前記端子部材との間であって前記貫通孔の周辺に液止め部材を介在させた状態で、前記貫通孔内に液状の導電性接着剤が注入されることによって、前記電極と前記配線部との間が電気的に接続されている、
ことを特徴とする導電性部材の電気的接続構造。
【請求項12】
請求項11記載の導電性部材の電気的接続構造であって、
前記貫通孔は、前記電気絶縁層及び前記配線部を貫通するように前記端子部材に設けられる、
ことを特徴とする導電性部材の電気的接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−86649(P2010−86649A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190417(P2009−190417)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】