説明

型厚調整方法

【課題】金型装置を交換した場合、型厚モータ及び型締モータを駆動させて、所定の型締力を発生する位置にまで型締装置が自動的に移動するようにして、金型装置を厚さの異なるものに交換した場合であっても、容易に、かつ、短時間で型締装置が所定の型締力を発生するように調整することができるようにする。
【解決手段】本発明の型厚調整方法においては、金型装置を取り付けた際の型開閉位置センサの検出信号に基づいて可動プラテンの位置を算出し、該算出した可動プラテンの位置とクロスヘッドの型締完了位置に対応する可動プラテン位置との差に対応する型締必要距離を求め、前記トグル式型締装置支持装置を該型締必要距離分移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機用自動型締力調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機等の成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され、溶融させられた樹脂を高圧で射出して金型装置のキャビティ空間に充填( てん) し、該キャビティ空間内において樹脂を冷却し、固化させることによって成形品を成形するようになっている。
【0003】
そのために、前記金型装置は、固定金型及び可動金型から成り、型締装置によって前記可動金型を進退させ、前記固定金型に対して接離させることによって、型閉、型締及び型開を行うことができるようになっている。そして、前記型締装置は、固定金型が取り付けられた固定プラテン、可動金型が取り付けられた可動プラテン、及び、該可動プラテンを進退させるためのトグル機構を備え、該トグル機構を作動させ、前記可動プラテンを進退させることによって、金型装置の型閉、型締及び型開を行うようになっている。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
【特許文献1】特開2002−337184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の成形機においては、金型装置を厚さの異なるものに交換した場合、型締装置による型締力が適切になるように調整するために、トグル機構がほぼ伸びきった状態で型厚モータを駆動して可動プラテンを前記金型装置の厚さの差に相当する調整距離だけ移動させるようになっているので、金型装置の交換に時間がかかってしまう。
【0006】
成形機の型締装置に倍力装置として広く使用されているトグル機構は、リンク角度によって発生する力、すなわち、型締力が変化するようになっている。そのため、金型装置を厚さの異なるものに交換した場合でも、所定の型締力を発生させるように、金型装置の型閉状態におけるリンク角度が所定の角度となるようにする必要がある。ところが、金型装置の型閉状態におけるリンク角度が所定の角度となるように調整するには、可動プラテンの位置が金型装置の型閉状態に対応する位置になるように、トグル機構が取り付けられているベースプレートをタイバーに沿って移動させる型厚モータを駆動して型締駆動装置全体を移動させながら、トグル機構を作動させる型締モータを駆動してリンク角度が所定の角度となるようにする必要があるので、長い時間がかかってしまう。
【0007】
そこで、金型装置を交換する場合、交換前の金型装置の型閉状態におけるトグル機構のリンク角度を保持した状態、すなわち、トグル機構がほぼ伸びきった状態で型厚モータを駆動して型締駆動装置全体を後退させる。この場合、交換前の金型装置は、可動プラテンからは取り外され、型閉状態のままで固定プラテンに取り付けられている。そして、交換前の金型装置に代えて交換後の金型装置が固定プラテンに取り付けられた後に、前記型締モータを駆動することなく、前記型厚モータを駆動して、トグル機構及び可動プラテンを含む型締装置全体を前進させる。この際、交換前後における金型装置の厚さの差に相当する調整距離だけ型締装置全体を前方又は後方に移動させることによって、金型装置を厚さの異なるものに交換した場合でも、型締装置による型締力が適切になるようになっている。
【0008】
ところが、前記従来の成形機において、金型装置の厚さの差に相当する調整距離は、目視によって把握したり、メジャーを使用して計測したりするようになっている。また、前記調整距離だけ移動させるための型厚モータの駆動量を手作によって設定したり、可動プラテンが前記調整距離だけ移動するのを目視しながら、手作業によって型厚モータを操作するようになっている。そのため、金型装置の交換に時間がかかってしまう。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、金型装置を交換した場合、型厚モータ及び型締モータを駆動させることで、金型装置を厚さの異なるものに交換した場合であっても、容易に、かつ、短時間で型厚調整をすることのできる型厚調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、本発明の型厚調整方法においては、金型装置を取り付けた際の型開閉位置センサの検出信号に基づいて可動プラテンの位置を算出し、該算出した可動プラテンの位置とクロスヘッドの型締完了位置に対応する可動プラテン位置との差に対応する型締必要距離を求め、該型締必要距離、前記トグル式型締装置支持装置を移動させるようにする。
【0011】
本発明の他の型厚調整方法においては、さらに、前記トグル式型締装置支持装置の移動後、前記クロスヘッドをクロスヘッド型締工程距離分後退させるとともに、前記可動プラテンをクロスヘッド型締工程距離に対応するプラテン型締工程距離分後退させ、前記トグル式型締装置支持装置を、該プラテン型締工程距離分前進させる請求項1に記載の型厚調整方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、型厚調整方法においては、金型装置を取り付けた際の型開閉位置センサの検出信号に基づいて可動プラテンの位置を算出し、該算出した可動プラテンの位置とクロスヘッドの型締完了位置に対応する可動プラテン位置との差に対応する型締必要距離を求め、該型締必要距離、前記トグル式型締装置支持装置を移動させるようにする。
【0013】
この場合、金型装置を交換した場合、型厚モータ及び型締モータを駆動させることで、金型装置を厚さの異なるものに交換した場合であっても、容易に、かつ、短時間で型厚調整をすることができる。
【0014】
さらに、他の型厚調整方法においては、前記トグル式型締装置支持装置の移動後、前記クロスヘッドをクロスヘッド型締工程距離分後退させるとともに、前記可動プラテンをクロスヘッド型締工程距離に対応するプラテン型締工程距離分後退させ、前記トグル式型締装置支持装置を、該プラテン型締工程距離分前進させることで、さらに、短時間で型締力調整まで行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明における成形機用自動型締力調整装置は、押出成形装置、ラミネータ、トランスファー成形装置、ダイキャストマシーン、IJ封止プレス等の各種の成形機に適用することができるものであるが、本実施の形態においては、説明の都合上、射出成形機に適用した場合について説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態における射出成形機の型締装置の概略図である。
【0017】
図において、10は射出成形機の型締装置である。そして、17はフレーム、12は該フレーム17に固定された固定金型支持装置としての固定プラテン、15は該固定プラテン12との間に所定の距離を置いて、前記フレーム17に対して移動可能に配設されたベースプレートとしてのトグルサポートである。該トグルサポート15はトグル式型締装置支持装置として機能する。また、16は前記固定プラテン12とトグルサポート15との間に架設された複数、例えば、四本のガイド手段としてのタイバーである。
【0018】
そして、13は前記固定プラテン12と対向して配設され、前記タイバー16に沿って進退(図における左右方向に移動)可能に配設された可動金型支持装置としての可動プラテンである。また、11は金型装置であり、固定金型11a及び可動金型11bとから成る。そして、前記固定プラテン12における可動プラテン13と対向する金型取付面には、固定金型11aが取り付けられ、前記可動プラテン13における前記固定プラテン12と対向する金型取付面には可動金型11bが取り付けられる。
【0019】
なお、前記可動プラテン13の後端 (図における左端) には図示されないエジェクタピンを移動させるための駆動装置を取り付けるようにしてもよい。
【0020】
そして、前記可動プラテン13とトグルサポート15との間には、トグル式型締装置としてのトグル機構20が取り付けられ、前記トグルサポート15の後端には前記トグル機構20を作動させる型締用駆動源としての型締モータ26が配設される。そして、該型締モータ26は、回転運動を往復運動に変換するボールねじ機構等から成る図示されない運動方向変換装置を備え、駆動軸25を進退(図における左右方向に移動)させることによって、トグル機構20を作動させることができる。なお、前記型締モータ26は、サーボモータであることが望ましく、回転数を検出するエンコーダとしての型開閉位置センサ27を備える。
【0021】
ここで、前記トグル機構20は、前記駆動軸25に取り付けられたクロスヘッド24、該クロスヘッド24に揺動可能に取り付けられた第2トグルレバー23、前記トグルサポート15に揺動可能に取り付けられた第1トグルレバー21、及び、前記可動プラテン13に揺動可能に取り付けられたトグルアーム22から成る。そして、前記第1トグルレバー21と第2トグルレバー23との間、及び、第1トグルレバー21とトグルアーム22との間が、それぞれ、リンク結合される。なお、前記トグル機構20は、いわゆる、内巻五節点ダブルトグル機構であり、上下が対称の構成を有する。
【0022】
そして、前記型締モータ26が駆動して、被駆動部材としてのクロスヘッド24を進退させることによって、トグル機構20を作動させることができる。この場合、前記クロスヘッド24を前進(図における右方向に移動)させると、前記可動プラテン13が前進させられて型閉が行われる。そして、前記型締モータ26による推進力にトグル倍率を乗じた型締力が発生させられ、該型締力によって型締が行われる。
【0023】
また、前記トグルサポート15の後端(図における左端)には、前記固定プラテン12に対するトグルサポート15の位置を調整するために、型締位置調整装置35が配設される。ここで、前記トグルサポート15には、図示されないタイバー挿通孔が複数、例えば、四つ形成され、前記タイバー16の図における左端が、それぞれの前記タイバー挿通孔(こう)に挿入される。なお、前記タイバー16の図示されない右端は、固定ナット16aによって前記固定プラテン12に固定されている。
【0024】
そして、前記タイバー16は、図における左端の外周にねじが形成されたねじ部36を有し、調整ナット37がそれぞれのタイバー16のねじ部36に螺(ら)合される。なお、前記調整ナット37は、トグルサポート15の後端に回転可能に、かつ、タイバー16の軸方向に移動不能に取り付けられる。また、前記調整ナット37の外周には被駆動用歯車37aが取り付けられている。
【0025】
さらに、前記トグルサポート15の後端における上方部には、型締位置調整用駆動源としての型厚モータ31が配設される。そして、該型厚モータ31の回転軸には、駆動用歯車33が取り付けられている。ここで、前記調整ナット37の被駆動用歯車37a及び前記駆動用歯車33の周囲には、チェーン、歯付きベルト等の駆動用線状体34が架け回されている。そのため、前記型厚モータ31を駆動して、駆動用歯車33を回転させると、それぞれのタイバー16のねじ部36に螺合された調整ナット37が同期して回転させられる。これにより、前記型厚モータ31を所定の方向に所定の回転数だけ回転させて、トグルサポート15を所定の距離だけ進退させることができる。なお、前記型厚モータ31は、サーボモータであることが望ましく、回転数を検出するエンコーダとしての型締位置センサ32を備える。
【0026】
ところで、前記型厚モータ31の回転を調整ナット37に伝達する手段は、それぞれのタイバー16のねじ部36に螺合された調整ナット37が同期して回転させられるものであれば、いかなるものであってもよく、例えば、前記駆動用線状体34に代えて、前記駆動用歯車33及び駆動用歯車33のすべてに噛(か)み合う大径の歯車をトグルサポート15の後端に回転可能に配設することもできる。
【0027】
次に、前記トグル機構20の動作の特性について説明する。
【0028】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるトグル機構の要部拡大図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるトグル機構のクロスヘッドの位置とリンク角度との関係を示す図、図4は本発明の第1の実施の形態におけるトグル機構のクロスヘッドの位置と型締力との関係を示す図である。なお、図3においては横軸にクロスヘッドの位置を、縦軸にリンク角度を採り、図4においては横軸にクロスヘッドの位置を、縦軸に型締力を採っている。
【0029】
型締装置10において型閉を行う場合、型締モータ26が駆動するとクロスヘッド24は前進し、図2に示されるように、トグル機構20の中心軸線Aに沿って矢印Bで示される方向に移動する。この時、トグルアーム22の長手方向の中心軸線Cと第1トグルレバー21の長手方向の中心軸線Dとの間の角度としてのリンク角度θは、前記クロスヘッド24が前進するにしたがって減少する。
【0030】
この場合、前記クロスヘッド24の位置とリンク角度θとは、図3に示される曲線Eのように変化する。なお、図3において、クロスヘッド24の位置は、トグルサポート15に対する位置であり、最も後退した位置(図1において最も左方に移動した位置)を0(ゼロ)とし、前進するにしたがって数値が増えるようになっている。そして、線Fで示される位置が、金型装置10の型締が完了した状態に対応するクロスヘッド24の位置としての型締完了位置を示している。なお、クロスヘッド24が型締完了位置にあるとき、可動プラテン13も型締完了位置にある。そして、クロスヘッド24が型締完了位置にあるとき、トグル機構20がほぼ伸びきった状態となり、トグルアーム22と第1トグルレバー21とはほぼ直線状となる。ただし、微視的にみると、クロスヘッド24の位置が型締完了位置にあるとき、リンク角度θは、βで示される角度としてのクニッキング量となっている。すなわち、金型装置10の型締が完了した状態において、トグルアーム22と第1トグルレバー21とは完全には直線状とならず、クニッキング量βだけわずかに傾斜した状態になっている。
【0031】
また、図3において線Gで示される位置が、金型装置10の型閉した状態に対応するクロスヘッド24の位置としての型閉位置を示している。なお、クロスヘッド24が型閉位置にあるとき、可動プラテン13も型閉位置にある。そして、型締完了位置と型閉位置との差としてαがクロスヘッド型締工程距離となっている。なお、該クロスヘッド型締工程距離αは、トグル機構20が発生する型締力に応じて変更されるものである。したがって、前記型閉位置も前記型締力に応じて変更されるものである。
【0032】
なお、前記クロスヘッド24の位置と、可動金型11bが取り付けられる可動プラテン13の位置との関係は、トグル機構20の特性に基づいて、あらかじめ知られているので、前記クロスヘッド24の位置に基づいて可動金型11bの金型合わせ面(パーティング面)の位置を把握することもできる。したがって、図3において曲線Eによって示される特性に基づいて、可動金型11bの金型合わせ面の位置とリンク角度θとの関係を把握することもできる。
【0033】
また、前記クロスヘッド24の位置とトグル機構20が発生する型締力とは、__図4に示される曲線Hのように変化する。そして、図4においても、図3と同様に、クロスヘッド24の位置は前進するにしたがって数値が増えるようになっている。また、線Iで示される位置が、金型装置10の型締が完了した状態に対応するクロスヘッド24の位置としての型締完了位置を示している。なお、図4において示されるクロスヘッド24の位置は型締完了位置の近傍を拡大して示したものである。また、型締力は、金型装置10の型閉から型締完了までのクロスヘッド型締工程距離αに応じて変化するものであり、図4に示される曲線Hは定性的な変化を示すものである。
【0034】
なお、前記クロスヘッド24の位置に基づいて可動金型11bの金型合わせ面の位置を把握することもできるので、図4において曲線Hによって示される特性に基づいて、可動金型11bの金型合わせ面の位置と型締力との関係を把握することもできる。
【0035】
ところで、一般のトグル機構を利用した型締装置と同様に、本実施の形態において、トグル機構20が発生する型締力は、固定プラテン12、トグルサポート15及びタイバー16を含む型締装置10全体のばね定数、すなわち、型締剛性を比例定数として変化する。なお、前記型締装置10においては、タイバー16の剛性が他の部材と比較して低いので、型締剛性はタイバー16の剛性に等しいと考えることができる。したがって、本実施の形態において、トグル機構20が発生する型締力は、タイバー16の剛性としてのばね定数を比例定数として、金型装置10の型閉から型締完了までにトグルサポート15が固定プラテン12に対して移動する量に比例して変化すると言える。すなわち、固定プラテン12、トグルサポート15等の部材の剛性が十分に高いので、型締装置10が発生する型締力は、実質的に、四本のタイバー16が弾性変形して伸びることによって発生し、該タイバー16の伸び量に比例すると言える。また、該タイバー16の伸び量は、前記クロスヘッド型締工程距離αに対応する可動プラテン13の移動量としてのプラテン型締工程距離にほぼ等しい。
【0036】
なお、金型装置10の型締が完了した状態におけるリンク角度θは、トグル機構20が発生する型締力が変化しても、一定である。そのため、トグルサポート15に対するクロスヘッド24の型締完了位置も、トグル機構20が発生する型締力が変化しても、一定である。
【0037】
次に、前記型締装置10の動作を制御する成形機用自動型締力調整装置について説明する。
【0038】
図5は本発明の第1の実施の形態における成形機用自動型締力調整装置の構成を示す図である。
【0039】
図5において、41は型厚調整制御装置であり、あらかじめ設定された型厚目標値42を記憶手段に格納し、型開閉位置センサ27の検出信号、型締位置センサ32の検出信号及び前記型厚目標値42に基づいて、型厚モータ31の動作を制御する。なお、前記型厚目標値42は、金型装置11の厚さ(図1における横方向の寸法)の変化に対応する型締完了時における可動金型11bの金型合わせ面の位置の目標値である。また、43は型締力調整制御装置であり、あらかじめ設定された型締力目標値44を記憶手段に格納し、型開閉センサ27の検出信号及び前記型締力目標値44に基づいて、型締モータ26の動作を制御する。ここで、前記型厚調整制御装置41及び型締力調整制御装置43は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、CRT、液晶ディスプレイ等の表示手段、キーボード等の入力手段、通信インターフェイス等を備える一種のコンピュータであるが、いかなる装置であってもよい。前記型厚調整制御装置41及び型締力調整制御装置43として、パーソナルコンピュータ、サーバ、ワークステーション等の汎(はん)用の装置を使用することもできる。また、前記型厚調整制御装置41及び型締力調整制御装置43は、それぞれ、独立して構成された装置であってもよいし、互いに一体的に構成された装置であってもよいし、他の制御装置やコンピュータの中に構築されたシステムの一つであってもよい。なお、本実施の形態において、前記型厚調整制御装置41及び型締力調整制御装置43は、射出成形機の動作を制御する図示されない射出成形機用制御装置に組み込まれているものとする。また、該射出成形機用制御装置は、操作盤等の入力手段を備え、必要に応じてオペレータが前記入力手段を操作することによって、型締装置10を手動運転することができるようになっている。
【0040】
ここで、前記型開閉位置センサ27は、直接的には、型締モータ26の回転数を検出するものである。しかし、該型締モータ26の回転運動はボールねじ機構等から成る図示されない運動方向変換装置によって駆動軸25の往復運動に変換されるので、型締モータ26の回転数を検出することによって、前記駆動軸25に取り付けられたクロスヘッド24の位置の変化を検出することができる。そして、前述されたように、前記クロスヘッド24の位置に基づいて可動プラテン13の位置及び可動金型11bの金型合わせ面の位置を把握することもできるので、前記型開閉位置センサ27は、検出した型締モータ26の回転数に基づいて、トグルサポート15に対する可動プラテン13の位置及び可動金型11bの金型合わせ面の位置を検出することができる。
【0041】
また、前記型締位置センサ32は、直接的には、型厚モータ31の回転数を検出するものである。しかし、該型厚モータ31の回転運動は調整ナット37及びタイバー16のねじ部36によって、トグルサポート15の往復運動に変換されるので、型厚モータ31の回転数を検出することによって、固定プラテン12に対する前記トグルサポート15の位置の変化を検出することができる。そして、前述されたように、前記トグルサポート15に対するクロスヘッド24の型締完了位置が一定であり、かつ、前記クロスヘッド24の位置に基づいて可動金型11bの金型合わせ面の位置を把握することもできるので、前記型締位置センサ32は、検出した型厚モータ31の回転数に基づいて、型締完了時における可動金型11bの金型合わせ面の位置を検出することができる。
【0042】
そして、前記型厚調整制御装置41は、型厚目標値42と型開閉位置センサ27の検出した可動金型11bの金型合わせ面の位置との差分を算出し、該差分と型締位置センサ32が検出した型締完了時における可動金型11bの金型合わせ面の位置との差分に基づいて、型厚モータ31の駆動量(回転数)を決定し、該駆動量だけ駆動するように前記型厚モータ31に指令を送信する。これにより、前記トグルサポート15は、金型装置11の厚さの変化に応じた量だけ移動する。したがって、型締完了時における可動金型11bの金型合わせ面の位置は、金型装置11の厚さの変化に応じて変化する。
【0043】
また、前記型締力調整制御装置43は、型締力目標値44と型開閉位置センサ27の検出した可動金型11bの金型合わせ面の位置との差分に基づいて、型締モータ26の駆動量(回転数)を決定し、該駆動量だけ駆動するように前記型締モータ26に指令を送信する。これにより、前記トグルサポート15は、型締完了位置に移動する。したがって、可動金型11bの金型合わせ面の位置は、所定の型締力を発生する位置になる。
【0044】
次に、前記構成の成形機用自動型締力調整装置の動作について説明する。ここでは、型締装置10の金型装置交換の動作について説明する。
【0045】
図6は本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第1の図、図7は本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第2の図、図8は本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第3の図、図9は本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第4の図、図10は本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第5の図である。
【0046】
まず、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、型締装置10を作動させて型閉を行わせる。この場合、型締モータ26が所定の回転数だけ回転してクロスヘッド24を所定の型閉位置にまで前進させる。これにより、可動プラテン13も所定の型閉位置にまで前進するので、可動金型11bの金型合わせ面が固定金型11aの金型合わせ面に接触して型閉が行われる。
【0047】
続いて、オペレータは、手作業によって、金型装置11の側面に図6に示されるような結合部材14を取り付ける。ここで、該結合部材14は、型閉状態にある固定金型11aと可動金型11bとを結合して一体化する部材であり、前記金型装置11を型締装置10に取り付けたり、型締装置10から取り外したりするときに前記金型装置11の側面に取り付けられる。なお、前記結合部材14は射出成形機の運転時には取り外される。
【0048】
続いて、オペレータは、手作業によって、固定金型11a又は可動金型11bに、図7に示されるようなクレーン取付金具47を取り付け、該クレーン取付金具47に天井走行クレーン等の図示されないクレーンのワイヤロープ、鎖等の線状体48の先端部を係合させ、前記金型装置11の重量を前記クレーンによって支持させる。なお、前記固定金型11a又は可動金型11bに線状体48の先端部を係合させる部材があらかじめ配設されている場合には、前記クレーン取付金具47を取り付ける必要はない。
【0049】
続いて、オペレータは、手作業によって、前記固定金型11a及び可動金型11bを固定プラテン12及び可動プラテン13から、それぞれ、取り外す、すなわち、前記固定金型11a及び可動金型11bと固定プラテン12及び可動プラテン13との取り合いを解除する。そして、前記クレーンを作動させ、図7における矢印Jで示されるように、金型装置11を上方に吊り上げて、型締装置10から取り出し、金型置き場等の所定の場所にまで移動させる。
【0050】
続いて、オペレータは、前記クレーンを作動させ、クレーン取付金具47に線状体48の先端部を係合させた交換後の金型装置11’を、図8における矢印Kで示されるように上方から吊り下げて、固定プラテン12と可動プラテン13との間に搬入する。なお、交換後の金型装置11’は、交換前の金型装置11よりも厚さが厚いものであるとする。
【0051】
続いて、オペレータは、前記クレーンを作動させるとともに、手作業によって金型装置11’の姿勢を調整して、固定金型11a’の軸心と固定プラテン12の軸心とを一致させる。そして、オペレータは、手作業によって、前記固定金型11a’を固定プラテン12に取り付ける、すなわち、前記固定金型11a’と固定プラテン12との取り合いを行う。
【0052】
続いて、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、型締装置10を作動させて、可動プラテン13を前進させる。そして、該可動プラテン13の金型取付面が可動金型11b’の背面に接触した位置で前記可動プラテン13を停止させる。前記位置は、交換後の金型装置11’における可動プラテン13の型閉位置である。この場合、交換後の金型装置11’が交換前の金型装置11よりも厚さが厚いので、トグルアーム22と第1トグルレバー21とは、図9に示されるように、節点において大きく傾斜している。すなわち、リンク角度θが前記図6に示される場合よりも大きくなっている。
【0053】
続いて、オペレータは、手作業によって、前記可動金型11b’と可動プラテン13との取り合いを行う。そして、オペレータは、手作業によって、線状体48の先端部をクレーン取付金具47から取り外し、該クレーン取付金具47を固定金型11a’又は可動金型11b’から取り外し、結合部材14’を金型装置11’から取り外す。
【0054】
続いて、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、成形機用自動型締力調整装置を作動させる。この場合、およその位置調整としての型厚調整と、微細な位置調整としての型締力調整とが行われる。まず、型厚調整が開始され、型厚調整制御装置41が作動して、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいてクロスヘッド24の位置を検出する。この場合、トグルアーム22と第1トグルレバー21とが節点において大きく傾斜してリンク角度θが大きな値となっているので、図3に示される曲線Eから分かるように、クロスヘッド24は型締完了位置よりも後退した位置にある。そこで、前記型厚調整制御装置41は、クロスヘッド24を型締完了位置にまで移動させることができるようにするために、型厚モータ31を作動させてトグルサポート15を後退させる。
【0055】
この場合、前記型厚調整制御装置41は、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいて検出した可動プラテン13の位置とクロスヘッド24の型締完了位置に対応する可動プラテン13の位置との差に対応する距離としての型締必要距離だけ、トグルサポート15を後退させるために必要な型厚モータ31の回転数を算出し、該回転数だけ型厚モータ31を回転させる。これにより、前記トグルサポート15が前記型締必要距離だけ後退するので、可動金型11b’の金型合わせ面が固定金型11a’の金型合わせ面から離れ、前記可動金型11b’の金型合わせ面と固定金型11a’の金型合わせ面との間に前記型締必要距離だけの間隙(げき)が生じる。
【0056】
続いて、型締力調整制御装置43が作動し、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいて、クロスヘッド24の位置が型締完了位置になるように型締モータ26を作動させる。この場合、前記型締力調整制御装置43は、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいて検出したクロスヘッド24の位置と型締完了位置との差に対応する距離だけクロスヘッド24を移動させるために必要な型締モータ26の回転数を算出し、該回転数だけ型締モータ26を回転させる。すると、可動プラテン13は前記型締必要距離だけ前進する。そして、前記可動金型11b’の金型合わせ面と固定金型11a’の金型合わせ面とが接触して型閉が行われる。このとき、トグルアーム22と第1トグルレバー21とは完全には直線状とならず、クニッキング量βだけわずかに傾斜した状態になっている。これにより、およその位置調整としての型厚調整が完了する。
【0057】
ここで、クロスヘッド24が型締完了位置にある状態で型閉が行われているが、射出成形機を作動させて成形を行う場合には、クロスヘッド24が型締完了位置よりクロスヘッド型締工程距離αだけ後退した型閉位置にある状態で型閉が行われるようになっている。そこで、トグルサポート15の位置を微調整して、クロスヘッド24が型閉位置にある状態で金型装置11’の型閉が行われるようにする必要がある。そのため、微細な位置調整としての型締力調整が行われる。
【0058】
この場合、前記型厚調整制御装置41は、前記クロスヘッド型締工程距離αだけクロスヘッド24を後退させるために必要な型締モータ26の回転数を算出し、該回転数だけ型締モータ26を回転させる。なお、前記クロスヘッド型締工程距離αは、型締装置10が発生する型締力に応じて変化するものであり、所望の型締力に基づいてあらかじめ算出され、型締力目標値44として記憶手段に格納されている。これにより、可動プラテン13がクロスヘッド型締工程距離αに対応する移動量としてのプラテン型締工程距離だけ後退し、前記可動金型11b’の金型合わせ面と固定金型11a’の金型合わせ面との間にプラテン型締工程距離だけの間隙が生じる。
【0059】
続いて、前記型厚調整制御装置41は、前記プラテン型締工程距離だけトグルサポート15を後退させるために必要な型厚モータ31の回転数を算出し、該回転数だけ型厚モータ31を回転させる。なお、前記プラテン型締工程距離は、クロスヘッド型締工程距離αに基づいてあらかじめ算出され、型厚目標値42としてあらかじめ記憶手段に格納されている。これにより、前記トグルサポート15が前記プラテン型締工程距離だけ前進するので、図10に示されるように、可動金型11b’の金型合わせ面が固定金型11a’の金型合わせ面に接触して型閉が行われ、型締力調整が完了する。
【0060】
そして、型締力調整が完了すると、交換後の金型装置11’が型締装置10に適切に取り付けられた状態となり、型締装置10の金型装置交換が完了する。これにより、射出成形機を作動させて、前記交換後の金型装置11’を使用した成形を行うことができる。
【0061】
このように、本実施の形態においては、型締装置10の金型装置交換において、交換後の金型装置11’を取り付けると、型厚調整制御装置41及び型締力調整制御装置43がトグルサポート15の位置を、所定の型締力を発生することができる位置になるように自動的に調整する。そのため、金型装置11を厚さの異なるものに交換した場合であっても、容易に、かつ、短時間でトグル機構20が所定の型締力を発生するように調整することができる。
【0062】
また、型締モータ26のエンコーダを型開閉位置センサ27として使用し、型厚モータ31のエンコーダを型締位置センサ32として使用するので、成形機用自動型締力調整装置の構成を簡素化し、コストを低くすることができる。
【0063】
なお、本実施の形態においては、型厚調整が完了したときに、トグルアーム22と第1トグルレバー21とが完全には直線状とならずにクニッキング量βだけ傾斜した状態となるようになっているが、トグルアーム22と第1トグルレバー21とが直線状になるようにすることもできる。この場合は、型締力調整において、クロスヘッド24を後退させる距離を、前記クニッキング量βに対応するクロスヘッド24の移動距離だけ延長し、かつ、トグルサポート15を後退させる距離を、前記クニッキング量βに対応する可動プラテン13の移動距離だけ延長する必要がある。
【0064】
さらに、本実施の形態においては、型厚調整において、型厚調整制御装置41がトグルサポート15を型締必要距離だけ後退させる動作を行った後に、型締力調整制御装置43が可動プラテン13を前記型締必要距離だけ前進させる動作を行うようになっている。しかし、型厚調整制御装置41がトグルサポート15を型締必要距離だけ後退させる動作と、型締力調整制御装置43が可動プラテン13を前記型締必要距離だけ前進させる動作とをほぼ同時に行うようにすることもできる。この場合、トグルサポート15を後退させる動作を、可動プラテン13を前進させる動作よりもわずかに早く実行させることが望ましい。
【0065】
さらに、型締力調整が完了したときに、型締モータ26を駆動して、型締を行わせ、所望の型締力が発生するか否かを検証することもできる。所望の型締力が発生していない場合には、即座に型締力調整をやり直すことができる。
【0066】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同じ構造のもの及び同じ動作については、説明を省略する。ここでは、交換後の金型装置11''が交換前の金型装置11よりも厚さが薄い場合の動作について説明する。
【0067】
図11は本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第1の図、図12は本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第2の図、図13は本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第3の図、図14は本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第4の図、図15は本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第5の図である。
【0068】
まず、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、型締装置10を作動させて型閉を行わせる。この場合、型締モータ26が所定の回転数だけ回転してクロスヘッド24を所定の型閉位置にまで前進させる。これにより、可動プラテン13も所定の型閉位置にまで前進するので、可動金型11bの金型合わせ面が固定金型11aの金型合わせ面に接触して型閉が行われる。
【0069】
続いて、オペレータは、手作業によって、金型装置11の側面に図11に示されるような結合部材14を取り付ける。
【0070】
続いて、オペレータは、手作業によって、固定金型11a又は可動金型11bに、図12に示されるようなクレーン取付金具47を取り付け、該クレーン取付金具47に天井走行クレーン等の図示されないクレーンのワイヤロープ、鎖等の線状体48の先端部を係合させ、前記金型装置11の重量を前記クレーンによって支持させる。
【0071】
続いて、オペレータは、手作業によって、前記固定金型11a及び可動金型11bと固定プラテン12及び可動プラテン13との取り合いを解除する。そして、前記クレーンを作動させ、図12における矢印Jで示されるように、金型装置11を上方に吊り上げて、型締装置10から取り出し、金型置き場等の所定の場所にまで移動させる。
【0072】
続いて、オペレータは、前記クレーンを作動させ、クレーン取付金具47に線状体48の先端部を係合させた交換後の金型装置11''を、図13における矢印Kで示されるように上方から吊り下げて、固定プラテン12と可動プラテン13との間に搬入する。なお、交換後の金型装置11''は、交換前の金型装置11よりも厚さが薄いものであるとする。
【0073】
続いて、オペレータは、前記クレーンを作動させるとともに、手作業によって金型装置11''の姿勢を調整して、固定金型11a''の軸心と固定プラテン12の軸心とを一致させる。そして、オペレータは、手作業によって、前記固定金型11a''と固定プラテン12との取り合いを行う。
【0074】
続いて、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、成形機用自動型締力調整装置を作動させる。まず、型締力調整制御装置43が作動し、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいて、クロスヘッド24の位置が型締完了位置になるように型締モータ26を作動させる。この場合、前記型締力調整制御装置43は、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいて検出したクロスヘッド24の位置と型締完了位置との差に対応する距離だけクロスヘッド24を移動させるために必要な型締モータ26の回転数を算出し、該回転数だけ型締モータ26を回転させる。すると、可動プラテン13も、クロスヘッド24の移動距離に対応する距離だけ前進する。これにより、トグルアーム22と第1トグルレバー21とは完全には直線状とならず、クニッキング量βだけわずかに傾斜した状態になる。すなわち、リンク角度θが金型装置10の型締が完了した状態に対応する角度になる。
【0075】
この場合、交換後の金型装置11''が交換前の金型装置11よりも厚さが薄いので、図14に示されるように、前記可動金型11b''と可動プラテン13との間に隙(すき)間が生じている。そこで、型厚調整制御装置41は、交換後の金型装置11''と交換前の金型装置11との厚さの差に対応する距離だけトグルサポート15を後退させるために型厚モータ31を回転させる。可動プラテン13の金型取付面が可動金型11b''の背面に接触した位置で型厚モータ31に負荷がかかるので、それを検知して該型厚モータ31の回転を停止させ、前記可動プラテン13を停止させる。
【0076】
続いて、オペレータは、手作業によって、前記可動金型11b''と可動プラテン13との取り合いを行う。そして、オペレータは、手作業によって、線状体48の先端部をクレーン取付金具47から取り外し、該クレーン取付金具47を固定金型11a''又は可動金型11b''から取り外し、結合部材14''を金型装置11''から取り外す。これにより、型厚調整が完了する。
【0077】
続いて、微細な位置調整としての型締力調整が行われる。この場合、前記型厚調整制御装置41は、前記クロスヘッド型締工程距離αだけクロスヘッド24を後退させるために必要な型締モータ26の回転数を算出し、該回転数だけ型締モータ26を回転させる。なお、前記クロスヘッド型締工程距離αは、型締装置10が発生する型締力に応じて変化するものであり、所望の型締力に基づいてあらかじめ算出され、型締力目標値44として記憶手段に格納されている。これにより、可動プラテン13がクロスヘッド型締工程距離αに対応する移動量としてのプラテン型締工程距離だけ後退し、前記可動金型11b''の金型合わせ面と固定金型11a''の金型合わせ面との間にプラテン型締工程距離だけの間隙が生じる。
【0078】
続いて、前記型厚調整制御装置41は、前記プラテン型締工程距離だけトグルサポート15を後退させるために必要な型厚モータ31の回転数を算出し、該回転数だけ型厚モータ31を回転させる。なお、前記プラテン型締工程距離は、クロスヘッド型締工程距離αに基づいてあらかじめ算出され、型厚目標値42としてあらかじめ記憶手段に格納されている。これにより、前記トグルサポート15が前記プラテン型締工程距離だけ前進するので、図15に示されるように、可動金型11b''の金型合わせ面が固定金型11a''の金型合わせ面に接触して型閉が行われ、型締力調整が完了する。
【0079】
そして、型締力調整が完了すると、交換後の金型装置11''が型締装置10に適切に取り付けられた状態となり、型締装置10の金型装置交換が完了する。これにより、射出成形機を作動させて、前記交換後の金型装置11''を使用した成形を行うことができる。
【0080】
このように、本実施の形態においては、型締装置10の金型装置交換において、交換後の金型装置11''が交換前の金型装置11よりも厚さが薄い場合であっても、交換後の金型装置11''を取り付けると、型厚調整制御装置41及び型締力調整制御装置43がトグルサポート15の位置を、所定の型締力を発生することができる位置になるように自動的に調整する。そのため、金型装置11を厚さの異なるものに交換した場合であっても、容易に、かつ、短時間でトグル機構20が所定の型締力を発生するように調整することができる。
【0081】
なお、本実施の形態においては、型厚調整が完了したときに、トグルアーム22と第1トグルレバー21とが完全には直線状とならずにクニッキング量βだけ傾斜した状態となるようになっているが、トグルアーム22と第1トグルレバー21とが直線状になるようにすることもできる。この場合は、型締力調整において、クロスヘッド24を後退させる距離を、前記クニッキング量βに対応するクロスヘッド24の移動距離だけ延長し、かつ、トグルサポート15を後退させる距離を、前記クニッキング量βに対応する可動プラテン13の移動距離だけ延長する必要がある。
【0082】
さらに、型締力調整が完了したときに、型締モータ26を駆動して、型締を行わせ、所望の型締力が発生するか否かを検証することもできる。所望の型締力が発生していない場合には、即座に型締力調整をやり直すことができる。
【0083】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、前記第1及び第2の実施の形態と同じ構造のもの及び同じ動作については、説明を省略する。ここでは、交換後の金型装置11''' が交換前の金型装置11よりも厚さが厚い場合であって、型厚調整において型締力調整も行う動作について説明する。
【0084】
図16は本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第1の図、図17は本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第2の図、図18は本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第3の図、図19は本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第4の図、図20は本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第5の図、図21は本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第6の図である。
【0085】
まず、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、型締装置10を作動させて型閉を行わせる。この場合、型締モータ26が所定の回転数だけ回転してクロスヘッド24を所定の型閉位置にまで前進させる。これにより、可動プラテン13も所定の型閉位置にまで前進するので、可動金型11bの金型合わせ面が固定金型11aの金型合わせ面に接触して型閉が行われる。
【0086】
続いて、オペレータは、手作業によって、金型装置11の側面に図16に示されるような結合部材14を取り付ける。
【0087】
続いて、オペレータは、手作業によって、固定金型11a又は可動金型11bに、図17に示されるようなクレーン取付金具47を取り付け、該クレーン取付金具47に天井走行クレーン等の図示されないクレーンのワイヤロープ、鎖等の線状体48の先端部を係合させ、前記金型装置11の重量を前記クレーンによって支持させる。
【0088】
続いて、オペレータは、手作業によって、前記固定金型11a及び可動金型11bと固定プラテン12及び可動プラテン13との取り合いを解除する。そして、前記クレーンを作動させ、図17における矢印Jで示されるように、金型装置11を上方に吊り上げて、型締装置10から取り出し、金型置き場等の所定の場所にまで移動させる。
【0089】
続いて、オペレータは、前記クレーンを作動させ、クレーン取付金具47に線状体48の先端部を係合させた交換後の金型装置11''' を、図18における矢印Kで示されるように上方から吊り下げて、固定プラテン12と可動プラテン13との間に搬入する。なお、交換後の金型装置11''' は、交換前の金型装置11よりも厚さが厚いものであるとする。
【0090】
続いて、オペレータは、前記クレーンを作動させるとともに、手作業によって金型装置11''' の姿勢を調整して、固定金型11a''' の軸心と固定プラテン12の軸心とを一致させる。そして、オペレータは、手作業によって、前記固定金型11a''' と固定プラテン12との取り合いを行う。
【0091】
続いて、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、型締装置10を作動させて、可動プラテン13を前進させる。そして、該可動プラテン13の金型取付面が可動金型11b''' の背面に接触した位置で前記可動プラテン13を停止させる。前記位置は、交換後の金型装置11''' における可動プラテン13も型閉位置である。この場合、交換後の金型装置11''' が交換前の金型装置11よりも厚さが厚いので、トグルアーム22と第1トグルレバー21とは、図19に示されるように、節点において大きく傾斜している。すなわち、リンク角度θが前記図6に示される場合よりも大きくなっている。
【0092】
続いて、オペレータは、手作業によって、前記可動金型11b''' と可動プラテン13との取り合いを行う。そして、オペレータは、手作業によって、線状体48の先端部をクレーン取付金具47から取り外し、該クレーン取付金具47を固定金型11a''' 又は可動金型11b''' から取り外し、結合部材14''' を金型装置11''' から取り外す。
【0093】
続いて、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、成形機用自動型締力調整装置を作動させる。この場合、型厚調整において型締力調整も行われる。まず、型厚調整制御装置41が作動して、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいてクロスヘッド24の位置を検出する。この場合、トグルアーム22と第1トグルレバー21とが節点において大きく傾斜してリンク角度θが大きな値となっているので、図3に示される曲線Eから分かるように、クロスヘッド24は型閉位置よりも後退した位置にある。そこで、前記型厚調整制御装置41は、クロスヘッド24を型閉位置にまで移動させることができるようにするために、型厚モータ31を作動させてトグルサポート15を後退させる。
【0094】
この場合、前記型厚調整制御装置41は、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいて検出した可動プラテン13の位置とクロスヘッド24の型閉位置に対応する可動プラテン13の位置との差に対応する距離としての型閉必要距離だけ、トグルサポート15を後退させるために必要な型厚モータ31の回転数を算出する。このとき、型締力調整制御装置43も作動し、図4に示される曲線Hから分かるように、型締完了位置も考慮して型厚モータ31の回転数を算出し、該回転数だけ型厚モータ31を回転させる。これにより、前記トグルサポート15が前記型閉必要距離だけ後退するので、図20に示されるように、可動金型11b''' の金型合わせ面が固定金型11a''' の金型合わせ面から離れ、前記可動金型11b''' の金型合わせ面と固定金型11a''' の金型合わせ面との間に前記型閉必要距離だけの間隙が生じる。
【0095】
続いて、前記型締力調整制御装置43は、型締モータ26を回転させ、図21に示されるように、前記可動金型11b''' の金型合わせ面と固定金型11a''' の金型合わせ面とが接触するまで回転させる。これにより、型厚調整及び型締力調整が完了する。
【0096】
そして、交換後の金型装置11''' が型締装置10に適切に取り付けられた状
態となり、型締装置10の金型交換が完了する。これにより、射出成形機を作動
させて、前記交換後の金型装置11''' を使用した成形を行うことができる。
【0097】
このように、本実施の形態においては、型厚調整制御装置41及び型締力調整制御装置43によって、型厚調整において型締力調整も行われる。そのため、より短い時間で型締装置10が所定の型締力を発生するように調整することができる。
【0098】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、前記第1〜第3の実施の形態と同じ構造のもの及び同じ動作については、説明を省略する。ここでは、交換後の金型装置11''が交換前の金型装置11よりも厚さが薄い場合であって、型厚調整において型締力調整も行う動作について説明する。なお、前記第2の実施の形態における図11〜15を援用して説明する。
【0099】
まず、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、型締装置10を作動させて型閉を行わせる。この場合、型締モータ26が所定の回転数だけ回転してクロスヘッド24を所定の型閉位置にまで前進させる。これにより、可動プラテン13も所定の型閉位置にまで前進するので、可動金型11bの金型合わせ面が固定金型11aの金型合わせ面に接触して型閉が行われる。
【0100】
続いて、オペレータは、手作業によって、金型装置11の側面に図11に示されるような結合部材14を取り付ける。
【0101】
続いて、オペレータは、手作業によって、固定金型11a又は可動金型11bに、図11に示されるようなクレーン取付金具47を取り付け、該クレーン取付金具47に天井走行クレーン等の図示されないクレーンのワイヤロープ、鎖等の線状体48の先端部を係合させ、前記金型装置11の重量を前記クレーンによって支持させる。
【0102】
続いて、オペレータは、手作業によって、前記固定金型11a及び可動金型11bと固定プラテン12及び可動プラテン13との取り合いを解除する。そして、前記クレーンを作動させ、図12における矢印Jで示されるように、金型装置11を上方に吊り上げて、型締装置10から取り出し、金型置き場等の所定の場所にまで移動させる。
【0103】
続いて、オペレータは、前記クレーンを作動させ、クレーン取付金具47に線状体48の先端部を係合させた交換後の金型装置11''を、図13における矢印Kで示されるように上方から吊り下げて、固定プラテン12と可動プラテン13との間に搬入する。なお、交換後の金型装置11''は、交換前の金型装置11よりも厚さが薄いものであるとする。
【0104】
続いて、オペレータは、前記クレーンを作動させるとともに、手作業によって金型装置11''の姿勢を調整して、固定金型11a''の軸心と固定プラテン12の軸心とを一致させる。そして、オペレータは、手作業によって、前記固定金型11a''と固定プラテン12との取り合いを行う。
【0105】
続いて、オペレータは、射出成形機用制御装置の入力手段を操作して、成形機用自動型締力調整装置を作動させる。まず、型締力調整制御装置43が作動し、図4に示す曲線Hを考慮し、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいて、クロスヘッド24の位置が型締完了位置になるように型締モータ26を作動させる。この場合、前記型締力調整制御装置43は、型開閉位置センサ27の検出信号に基づいて検出したクロスヘッド24の位置と型閉位置との差に対応する距離だけクロスヘッド24を移動させるために必要な型締モータ26の回転数を算出し、該回転数だけ型締モータ26を回転させる。すると、可動プラテン13も、クロスヘッド24の移動距離に対応する距離だけ前進する。これにより、トグルアーム22と第1トグルレバー21とは完全には直線状とならず、わずかに傾斜した状態になる。すなわち、リンク角度θが金型装置10が型閉した状態に対応する角度になる。
【0106】
この場合、交換後の金型装置11''が交換前の金型装置11よりも厚さが薄いので、図14に示されるように、前記可動金型11b''と可動プラテン13との間に隙間が生じている。そこで、型厚調整制御装置41は、型厚モータ31を回転させ、可動プラテン13の金型取付面が可動金型11b''の背面に接触するまで回転させる。
【0107】
続いて、オペレータは、手作業によって、前記可動金型11b''と可動プラテン13との取り合いを行う。そして、オペレータは、手作業によって、線状体48の先端部をクレーン取付金具47から取り外し、該クレーン取付金具47を固定金型11a''又は可動金型11b''から取り外し、結合部材14''を金型装置11''から取り外す。これにより、型厚調整及び型締力調整が完了する。
【0108】
そして、交換後の金型装置11''が型締装置10に適切に取り付けられた状態となり、型締装置10の金型交換が完了する。これにより、射出成形機を作動させて、前記交換後の金型装置11''を使用した成形を行うことができる。
【0109】
このように、本実施の形態においては、交換後の金型装置11''が交換前の金型装置11よりも厚さが薄い場合であっても、型厚調整制御装置41及び型締力調整制御装置43によって、型厚調整において型締力調整も行われる。そのため、より短い時間で型締装置10が所定の型締力を発生するように調整することができる。
【0110】
なお、前記実施の形態においては、可動プラテンが横方向(水平方向)に移動する横置型の射出成形機について説明したが、本発明の成形機用自動型締力調整装置は、可動プラテンが縦方向(垂直方向)に移動する縦置型の射出成形機にも適用することができる。また、本発明の成形機用自動型締力調整装置は、射出成形機の他に、ダイキャストマシーン、IJ封止プレス等の成形機にも適用することができる。
【0111】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1の実施の形態における射出成形機の型締装置の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるトグル機構の要部拡大図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるトグル機構のクロスヘッドの位置とリンク角度との関係を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるトグル機構のクロスヘッドの位置と型締力との関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における成形機用自動型締力調整装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第1の図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第2の図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第3の図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第4の図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第5の図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第1の図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第2の図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第3の図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第4の図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第5の図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第1の図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第2の図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第3の図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第4の図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第5の図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態における射出成形機の金型装置を交換する動作を示す第6の図である。
【符号の説明】
【0113】
11、11’、11''、11''' 金型装置
12 固定プラテン
13 可動プラテン
15 トグルサポート
16 タイバー
20 トグル機構
26 型締モータ
27 型開閉位置センサ
31 型厚モータ
32 型締位置センサ
41 型厚調整制御装置
43 型締力調整制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型支持装置と、該固定金型支持装置に対向して配置された可動金型支持装置に厚さが異なる金型装置が交換された際に、タイバーに沿ってトグル式型締装置支持装置を移動させる型厚調整方法において、
(a)前記金型装置を取り付けた際の型開閉位置センサの検出信号に基づいて可動プラテンの位置を算出し、
(b)該算出した可動プラテンの位置とクロスヘッドの型締完了位置に対応する可動プラテン位置との差に対応する型締必要距離を求め、
(c)該型締必要距離、前記トグル式型締装置支持装置を移動させることを特徴とする型厚調整方法。
【請求項2】
(a)前記トグル式型締装置支持装置の移動後、前記クロスヘッドをクロスヘッド型締工程距離分後退させるとともに、前記可動プラテンをクロスヘッド型締工程距離に対応するプラテン型締工程距離分後退させ、
(b)前記トグル式型締装置支持装置を、該プラテン型締工程距離分前進させる請求項1に記載の型厚調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2009−255592(P2009−255592A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183157(P2009−183157)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【分割の表示】特願2003−43718(P2003−43718)の分割
【原出願日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】