説明

型締装置の金型保護方法

【課題】金型の異常検出が的確かつ瞬時に行える金型保護方法を提供することを目的とする。
【解決手段】油圧シリンダ装置2を介して金型6を型閉じする型閉手段3を備えた型締装置1において、制御装置20は、前記金型6が型閉じストロークの所定位置から型閉完了位置の僅か手前まで移動する間に、封じ込められた前記油圧シリンダ装置2の圧力が所定値まで変化するか否かを判断し、前記油圧シリンダ装置2の圧力が所定値まで変化したときには金型異常であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置の型締装置における金型の損傷を防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形装置の型締装置における金型の損傷を防止する方法は、従来から様々なものが提案されている。そのうち多くのものは、金型の型合わせ面に挟持された異物により金型が損傷されない程度に型閉じの駆動力を低下させ、金型の型合わせ面が密着しないことを検出したときに前記駆動力を解消させるものである。しかしながら、この金型保護方式においては、金型保護のため型閉じの駆動力を低下させる必要があるため、型閉じの速度が不安定になるという問題がある。また、金型は異物を挟持してから異物が検出されるまでの間、異物を押圧したままとなるので、低圧といえども金型を損傷する可能性がある。
【0003】
またその他のものとしては、例えば特許文献1に開示されているように、型開閉・型締駆動装置の駆動力を型閉じ行程中継続的に検出して、その型閉じ圧力が設定値に達したとき警報を発する金型保護方法がある。この技術によれば、異常の検出を瞬時に行うことができ金型に加わる圧力を小さく抑えることができる。しかしながら、金型の駆動力を駆動源そのものの圧力で検出しているので、駆動源の機構における摩擦力あるいは最低作動圧やサージ圧等の影響で余分な駆動力を検出することになる。そのため、的確な異常検出ができないのである。また、駆動源がトグル機構であるときには、異物等の検出時のトグルは伸びきる寸前であるため、異物の押圧力をトグル機構の駆動力で検出する場合、駆動源のトルク上昇等の変化率は極めて小さなものとなり、異物検出の精度が低下するのである。
【0004】
【特許文献1】特開平1−113220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、金型の異常検出が的確かつ瞬時に行える金型保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、油圧シリンダ装置を介して金型を型閉じする型閉手段を備えた型締装置において、前記金型が型閉じする間に、封じ込められた前記油圧シリンダ装置の圧力が所定値まで変化することに基づいて金型異常と判断することをその要旨としている。
【0007】
これによれば、金型の異常検出を的確かつ瞬時に行うことができる。また、型閉手段の駆動力を低下させる必要がないので、型閉じ作動を安定に制御することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の型締装置の金型保護方法において、前記油圧シリンダ装置の圧力が所定値まで変化することに基づいて金型異常とする判断は、金型が型閉じストロークの所定位置から型閉完了位置の僅か手前まで移動する間に行われることをその要旨としている。
【0009】
これによれば、油圧シリンダ装置内の圧力変化を安定して検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の型締装置の金型保護方法において、前記型閉手段はトグル機構であることをその要旨としている。
【0011】
これによれば、油圧シリンダ装置内の圧力変化を高精度に検出することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の型締装置の金型保護方法において、前記油圧シリンダ装置はサーボ弁で駆動制御されることをその要旨としている。
【0013】
これによれば、油圧シリンダ装置内の圧力変化を敏感に検出することができるとともに、金型を短時間で保護することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の型締装置の金型保護方法において、前記油圧シリンダ装置の圧力が所定値まで変化することに基づいて金型異常とする判断がなされたとき、前記油圧シリンダ装置の圧力を減圧することをその要旨としている。
【0015】
これによれば、金型異常と判断された後、短時間で金型を保護することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、油圧シリンダ装置を介して金型を型閉じする型閉手段を備えた型締装置において、前記金型が型閉じする間に、封じ込められた前記油圧シリンダ装置の圧力が所定値まで変化することに基づいて金型異常と判断するので、金型の異常検出を的確かつ瞬時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明を実施する型締装置の概要を示すブロック構成図である。図2は、本発明の金型保護方法を示す流れ図である。
【0018】
型締装置1は、固定盤5と受圧盤14のそれぞれの四隅をタイバ4で連結し、固定盤5と受圧盤14の間に第1可動盤7と第2可動盤10をタイバ4に摺動させて移動可能に設けたものであり、射出装置を備えた射出成形機の一部とするほか単独で圧縮成型機等としても採用され得る。固定盤5と第1可動盤7の対向するそれぞれの面には固定金型と可動金型からなる金型6が型合わせ可能にそれぞれの盤に取り付けられている。第1可動盤7と第2可動盤10との間は、第2可動盤10に内蔵された油圧シリンダ装置2のピストン8で連結されている。第2可動盤10と受圧盤14との間には、型閉手段3としてのトグル機構11が設けられている。トグル機構11は、受圧盤14の中央部に回動自在に設けられたボールネジ12と、ボールネジ12に螺着するボールナット13とによって伸縮し第2可動盤10を固定盤5に対して近接・遠退させて型開閉させる。ボールネジ12は、サーボモータ18とベルト19で回動駆動される。型締手段としての油圧シリンダ装置2は、第2可動盤10に穿孔して設けられたシリンダ9と、シリンダ9に往復動自在に嵌挿されたピストン8とからなる。シリンダ9内のピストン8で画設され型締減圧時に油圧源に接続される第1可動盤7側の減圧室21と、シリンダ9内のピストン8で画設され型締加圧時に油圧源に接続される第2可動盤10側の加圧室22には、油圧シリンダ装置2の近傍に設けられるサーボ弁15が連通して接続されている。サーボ弁15には、ポンプ16等からなる油圧源が接続されている。加圧室22に連通する管路には圧力センサ17が取り付けられている。そして、圧力センサ17の信号は制御装置20に入力され、制御装置20からサーボ弁15とサーボモータ18へ制御信号が出力されている。
【0019】
この型締装置1において、型閉じするときの作動を図2に基づいて詳細に説明する。
【0020】
制御装置20は、それに格納・記憶されている制御シーケンスプログラムに従って型閉司令を出力する。サーボ弁15は、型閉司令に基づいた制御信号によって図示のような両ポート断か又はサーボロック状態となるように制御され、油圧シリンダ装置2の減圧室21と加圧室22に作動油が封じ込められてピストン8が剛体となるように作動する。従って油圧シリンダ装置2に作動油が封じ込められる状態とは、停止位置に位置決め制御を行うためにサーボ弁のスプルが微細な範囲で移動するサーボロック状態を含むものとする。そして、制御装置20は、サーボモータ18を駆動してトグル機構11を伸長させ型閉開始する(S1)。
【0021】
制御装置20は、第1可動盤7に取り付けられた金型6の半片が、その型閉じストロークの最遠端であり金型6の型合わせ面が密着する型閉完了位置の近傍に設定された金型保護開始位置としての所定位置に到達したか否かを判断する(S2)。型閉完了位置と所定位置は、型閉完了位置値と金型保護開始位置値としてそれぞれ制御装置20に設定可能となっており、この設定操作は型閉じ運転中でも可能である。
【0022】
金型6が所定位置に到達したときには、油圧シリンダ装置2の圧力が所定値まで変化したか否かを判断する演算処理が制御装置20において開始する(S3)。この工程を詳細に説明する。金型6の型合わせ面や嵌合部に成形品のバリ等の異物が存在するとき、あるいは、金型6の嵌合部における嵌入抵抗が熱膨張等のため大きくなったときには、油圧シリンダ装置2の加圧室22の作動油は封じ込まれているので、その圧力が上昇する。加圧室22の圧力は圧力センサ17で検出され、制御装置20に入力されている。制御装置20は、加圧室22の圧力を演算処理して、その変化率及び/又は変化量を求める。すなわち、加圧室22の圧力は、第1可動盤7の金型6の半片が型閉じ移動中に異物等で停止又は減速させられたときには、型閉じ速度に応じた変化率で、型閉じ駆動力に応じた変化量でもって変化する。制御装置20は、その変化率と変化量それぞれに対して所定値としての任意値に設定可能な設定値を有している。この所定値は、型閉じ運転中でも任意に設定操作可能である。制御装置20は、加圧室22の圧力における正の変化率及び/又は正の変化量が、所定値まで到達したか否かを判断するのである。変化率は単位時間毎に変化した圧力の値で求められる。変化量は、圧力の絶対値で求めることが好ましいが、記憶させておいた金型保護されない正常な場合の圧力から変化した量としてもよい。なお、圧力センサ17は、加圧室22の圧力を検出するように説明したが、圧力センサを減圧室21に連通する管路に設けて減圧室21の圧力を検出するようにしてもよい。その場合、金型6が異物等で型閉じを停止又は減速させられたときには、油圧シリンダ装置2の減圧室21の作動油は封じ込まれているので、その圧力は下降する。そして、制御装置20は、減圧室21の圧力を演算処理するが、その変化率及び/又は変化量は負のものとなる。従って、それに対する所定値も負の値となる。
【0023】
油圧シリンダ装置2の圧力が所定値まで変化したとき、制御装置20はサーボモータ18を急停止させた後、サーボロックさせる(S4)。またそれと同時に、制御装置20は、サーボ弁15を制御して減圧室21を加圧し、加圧室22を減圧する。これにより、ピストン8は剛性が解除され自由移動可能になるとともに、減圧室21の加圧が大きいときには強制的に型開き方向に駆動させることもできる(S5)。このようにして、金型6における異物等の押圧力が短時間で解除されるので金型の損傷を効果的に防止することができるのである。ここで、油圧シリンダ装置2の圧力を減圧及び加圧して金型6の異物等の押圧力を解除する制御は、油圧シリンダ装置2の容積が小さく、さらにサーボ弁15を用いているために極めて急速に行われ、慣性力の大きな第2可動盤10と型閉手段3の停止制御より速い場合が多いので、金型6における異物等の押圧時間を短縮して金型6の損傷を防止する点で効果的である。
【0024】
S4及びS5の工程と同時に、制御装置20は金型保護異常警報を発して、作業者に異常を伝え対処させる(S6)。
【0025】
一方、行程S3で油圧シリンダ装置2の圧力が所定値まで変化しないと判断されたときには、制御装置20は予め記憶・格納した型閉完了位置値とα値との加算値に金型6の半片の検出位置値が到達したか否かを判断する(S7)。α値は型締装置1の大きさや状態に応じて設定される固定値(実施例では0.1mm)であり、誤作動防止の目的を有する。なお、加算値の位置は金型保護開始位置としての所定位置と型閉完了位置との間であって、型閉完了位置に僅かな距離隔てた手前の位置である。
【0026】
金型6の半片の検出位置値が加算値に到達したときには、行程S3の油圧シリンダ装置2の圧力監視を停止する(S8)。その後、金型6はα値に相当する距離を型閉じして型閉完了位置に到達する。そして、制御装置20はサーボ弁15を制御しポンプ16の圧油を加圧室22へ供給して金型6の型締を行う(S9)。
【0027】
型締装置1は、上述したように構成されているので、油圧シリンダ装置2は金型6の型締に要するだけの最小のストロークを有するのみである。また、減圧室21と加圧室22を封じ込めるサーボ弁15は油圧シリンダ装置2の近傍に配設する。そのため、封じ込められた減圧室21と加圧室22の容積は極めて小さなものとなる。これは、通常の直圧式の型締シリンダと比較した場合にはさらに顕著なものである。このように、油圧シリンダ装置2の容積が小さく、さらにサーボ弁を備えることにより、油圧シリンダ装置2内の圧力変化が敏感に現出可能となるのである。
【0028】
なお、本発明は、当業者の知識に基づいて様々な変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものを含む。また、前記変更等を加えた実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りいずれも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。例えば、型締装置は、縦型であっても横型であってもよい。また、型閉手段は、型閉じや型開閉のためのみならず型締め機能を備えていてもよいし、トグル機構に限らず、シリンダ、クランク、リニアモータ、電磁石、あるいはボールネジとボールナットのみで構成されたものであってもよい。また、油圧シリンダ装置は、第2可動盤に設ける態様を示したが、第1可動盤や金型に設けてもよい。また、油圧シリンダ装置は、ピストンを備えた複動式で説明したが、単動式であってもよいし、密閉した可撓な容器であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施する型締装置の概要を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の金型保護方法を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0030】
1 型締装置
2 油圧シリンダ装置
3 型閉手段
4 タイバ
5 固定盤
6 金型
7 第1可動盤
8 ピストン
9 シリンダ
10 第2可動盤
11 トグル機構
12 ボールネジ
13 ボールナット
14 受圧盤
15 サーボ弁
16 ポンプ
17 圧力センサ
18 サーボモータ
19 ベルト
20 制御装置
21 減圧室
22 加圧室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダ装置を介して金型を型閉じする型閉手段を備えた型締装置において、
前記金型が型閉じする間に、封じ込められた前記油圧シリンダ装置の圧力が所定値まで変化することに基づいて金型異常と判断することを特徴とする型締装置の金型保護方法。
【請求項2】
前記油圧シリンダ装置の圧力が所定値まで変化することに基づいて金型異常とする判断は、金型が型閉じストロークの所定位置から型閉完了位置の僅か手前まで移動する間に行われる請求項1に記載の型締装置の金型保護方法。
【請求項3】
前記型閉手段はトグル機構である請求項1又は2に記載の型締装置の金型保護方法。
【請求項4】
前記油圧シリンダ装置はサーボ弁で駆動制御される請求項1乃至3のいずれかの項に記載の型締装置の金型保護方法。
【請求項5】
前記油圧シリンダ装置の圧力が所定値まで変化することに基づいて金型異常とする判断がなされたとき、前記油圧シリンダ装置の圧力を減圧する請求項4に記載の型締装置の金型保護方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−131895(P2010−131895A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310800(P2008−310800)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】