説明

基板に穴を開ける方法

この発明は、レーザーを用いて、印刷スクリーンとして実現する基板(2)の所定の位置に穴(1)を開ける方法に関する。そのために、基板(2)は、張り枠として実現された固定手段(3)を用いて位置決めされている。この場合、基板(2)の応力状態を変化させることとなる、後の処理手順による穴(1)の場所的な変位は、先ずは中央の基準点(4)の座標を決めることによって防止される。次に、各穴(1)の所定の位置とこの基準点(4)との間隔(a)を求めて、それらから優先順位(5)を作成する。この場合、この優先順位(5)は、レーザーヘッドの運動起動を制御して、基板(2)に穴(1)を開ける処理プログラム(6)に対するベースを成すものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の所定の位置に穴を開ける方法、とりわけ処理時間中、特に張り枠として実現された固定手段を用いて、基板を位置決めし、レーザーを用いて、スクリーン又はマスクを製作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実際には、この方法により製作された基板は、既に多方面で、例えばSMT部品で電子コンポーネントを製造する際において、印刷スクリーンとして使用されている。シルクスクリーン法では、これらの部品を取り付ける前に、基板の穴を通して、はんだペーストをプリント回路基板の端子パッド上に押圧している。
【0003】
シルクスクリーン法を実施するための前提条件は、印刷スクリーンの形状が安定していることであり、これらのスクリーンは、現在大抵は鋼鉄又はニッケルから、稀にはポリイミド樹脂から作られている。シルクスクリーン印刷では、印刷スクリーンを形成する基板の材料の強度が、押圧されるはんだペーストの高さを規定する。
【0004】
伝統的なSMT製作以外に、印刷スクリーンを用いたシルクスクリーン印刷法は、特にウェーハ、高重合体製チップケース、多層セラミック基板、フリップチップ及びOLED(有機発光ダイオード)の製造時にも使用されている。
【0005】
そのようなスクリーン又はマスクの別の重要な利用分野は、スパッタリング法又は蒸着法での利用に関する分野である。
【0006】
最適な印刷結果のために、印刷スクリーンには、開ける穴の位置及び寸法の精度と再現性並びに印刷スクリーンの面全体に渡っての均一な応力分布に関する高い要求条件が課せられている。
【0007】
実際には、基板での穴開けに伴う材料の弱体化が問題であることが分かっており、それは、張り枠を用いて固定された基板の応力状態を全体的に変化させることとなる。この応力状態の変化は、望ましくない位置の変位、特に既にその前に開けた穴の張り枠に対する、又その後に開ける穴に対するずれを引き起こすこととなる。
【0008】
従って、実際には、先ずは第一の作業工程において、すべての所望の穴を、所定の位置にではあるが、取り敢えず小さくした寸法で開けることが多い。そして、第二の作業工程において、これらの穴をそれぞれの目的とする寸法に拡大している。そうすることによって、第一の作業工程後に生じた変位を、第二の作用工程で調整することができる。この場合、第二の作業工程に関する時間的な追加負担が欠点であることが分かる。
【0009】
また、変化した応力状態を計算機上でのモデルを用いて予め求めて、それから、穴を開ける際の位置決めに用いる補正値を導き出すことが、既に考えられている。しかし、この考えは、非常に負担のかかり、経済的に僅かな成果しか期待できないことが分かっている。
【0010】
また、特許文献1により、印刷スクリーンの製造方法が周知であり、この方法では、金属製スクリーンを、初期締付力を加えた枠と直に取り外し可能な形で接合して、次に、この枠の初期締付力を取り去ることによって張りを持たせている。印刷パターンを形成する穴は、金属製スクリーンを枠に取り付ける前又はそれに続いて、金属製スクリーンへのパンチ又は穿孔によって開けることができる。この印刷スクリーンは、プリント回路基板の組立、コンポーネントの製作の際、又はウェーハのバンピングの際に使用することができる。
【0011】
特許文献2にもとづくマスク構造の製造方法では、マスクの窪みにおける形成する構造と目的とする構造とのシステム的なずれを大幅に回避するために、マスク基板の構造化を一連の部分工程で実行しており、その際これらの部分工程を順番に調整して、これらによって生じるずれを補正し、それによって誤差の修正を達成している。
【0012】
更に、特許文献3も、穴を備えたスクリーン又はマスクを記載している。
【特許文献1】ドイツ特許出願公開明細書第10034648号
【特許文献2】ドイツ特許出願公開明細書第10141497号
【特許文献3】米国特許出願公開明細書第2003/0041753号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明の課題は、最初に述べた種類の方法を改善して、既に開けられた穴が、その後の作業手順のために場所的に変位することを簡単に回避可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、この発明にもとづき、請求項1の特徴による方法で解決される。この発明の別の実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0015】
即ち、この発明では、先ずは固定手段から離れた中央領域内に、基準点の座標を決めて、次に各穴の所定の位置とこの基準点との間隔を算出して、最後にそれらから、穴と基準点との間隔の優先順位を決めて、この優先順位を、処理プログラムが穴を開ける際の順番に関するベースとする方法を規定している。この方法によって、これらの間隔に応じて決まる処理の順番にもとづき、基板の応力状態を均一化又は一定に保持して、それによって前に開けられた穴がその後に開けられた穴のために位置的に変位することをほぼ回避することが、驚くほど簡単に、初めて可能となる。この場合、この基準点は、基本的に中央領域内において自由に選定することが可能であり、例えば幾何学的な中心点と一致させることができる。この場合、その後に開ける穴の位置との求める間隔は、ベクトル計算で算出される。穴を開けるには、レーザーを用いた処理以外に、ジェット切断法、例えばウォータージェット切断法、及び切削法を用いることもできる。
【0016】
この方法の特に有利な実施形態では、この基準点を、周知の基板パラメータ、特に材料及び寸法をベースとして、経験的に又は計算により算出した処理特性にもとづき決定する。こうすることによって、例えば材料の部分的な堆積などの基板の方向に依存した材料特性を等しく考慮に入れることができる。特に、こうすることによって、基本的に三次元的に変形した基板を処理することもできる。
【0017】
例えば面重心又は応力状態の中心を基準点と決めることができる。これに対して、実際には、この方法の特に現実に合った実施構成は、開ける穴に関する重心を基準点と決めた場合に達成される。
【0018】
実際には、これらの穴は、ほぼ任意の寸法と幾何学形状を持つことができる。それに対して、この方法で穴を同じ面積で開ける実施構成は、特に目的に適っている。こうすることによって、異なる寸法又は幾何学形状による応力状態への違った影響を回避することができる。そのような違った寸法又は幾何学形状が必要である場合には、それらを個別の等しい穴から構成する。
【0019】
また、この発明の特に有利な実施形態は、基準点に対して最も短い間隔を持つ穴を開けることから処理プログラムを開始する、従って先ずは基板の中央領域を処理する場合に達成される。そこに開けた穴は、経験的に応力状態を最小限変化させるものである。
【0020】
この処理を、基準点を出発点として放射状に行うことができる。これに対して、この処理を、基準点の周りを廻る運動軌道で、特に螺旋状に行い、それによって処理ヘッドの運動軌道を最適化することで処理時間を低減するのが、特に有利である。
【0021】
更に、処理プログラムが、処理時間中に検出した測定値を追加的な補正値のベースとするのが、特に現実に合っていることが分かる。この場合、そのために固定手段と関連付けることができる相応のパラメータによって、例えば応力状態を検出して、処理プログラムを補正することにより、望ましくない変化に対抗することができる。
【0022】
この場合、処理プログラムが、穴が場所的に重なることによって生じる、基板材料の方向に依存した弱体化を補正値のベースとして、各穴の位置と基準点との間隔にもとづく処理の順番とは異なる形で、偏って開けた穴による望ましくない基板の弱体化を防止するのは特に有利であり、そのために、例えば基板を四分割又は部分への分割を行い、それらに対してそれぞれ開ける穴の面積全体の評価を行うことによって防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明は、様々な実施構成を許容している。この発明の原理を更に明らかにするために、その中の一つを、図面に描き、以下において説明する。
【0024】
図示していないレーザーを用いて、印刷スクリーンとして実現された基板2の所定の位置に、個々の穴1を開けるための構成の原理図を図示している。そのために、張り枠として実現された固定手段3を用いて、基板2を位置決めしている。この場合、後の処理手順のために変化した応力状態による穴1の場所的な変位は、先ずは中央の基準点4の座標を決めることによって防止される。それに続いて、この基準点4と各穴1の所定の位置との間隔aを求めて、それらから優先順位5を作成する。この場合、この順番5は、レーザーヘッドの運動軌道を制御して、基板2に穴1を開ける処理プログラム6に対するベースを成すものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の原理図
【符号の説明】
【0026】
1 穴
2 基板
3 固定手段
4 基準点
5 優先順位
6 処理プログラム
a 間隔
I,II,III,IV,V,VI,VII 穴の順番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の所定の位置に穴を開ける方法、とりわけ処理時間中、特に張り枠として実現された固定手段を用いて、基板を位置決めし、レーザーを用いてスクリーン又はマスクを製作する方法において、
先ずは、固定手段から離れた中央領域内に基準点の座標を決めて、次に各穴の所定の位置とこの基準点との間隔を算出し、最後にこれらの間隔から、穴と基準点との間隔の優先順位を求めて、この優先順位を、処理プログラムが穴を開ける際の順番に関するベースとすることを特徴とする方法。
【請求項2】
当該の基準点を、周知の基板パレメータ、特に材料及び寸法にもとづき、経験的に又は計算により算出した処理特性によって決めることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開ける穴に関する重心を、当該の基準点と決めることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
穴を同じ面積で開けることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
当該の処理プログラムが、基準点に対して最も短い間隔を持つ穴を開けることから開始することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
当該の処理が、基準点の周りを廻る運動軌道で、特に螺旋形に行われることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
当該の処理プログラムが、処理時間中に検出した測定値を追加的な補正値のベースとすることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
当該の処理プログラムが、穴が場所的に重なることによる、基板材料の方向に依存した弱体化を、補正値のベースとすることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−35316(P2006−35316A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215516(P2005−215516)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(399007154)エル・ピー・ケー・エフ・レーザー・ウント・エレクトロニクス・アクチエンゲゼルシヤフト (8)
【Fターム(参考)】