説明

基板の製造方法

【課題】基板の製造方法の提供。
【解決手段】下地基板を反応炉内に搬入するステップと、下地基板の上にバッファー層を形成するステップと、バッファー層の上にセパレータ層を形成するステップと、セパレータ層の上に少なくとも二つの温度で半導体層を形成するステップと、下地基板を反応炉から搬出して自然冷却によってセパレータ層を中心に下地基板と半導体層を分離するステップとを含む基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板の製造方法に係り、特に、III−V族化合物半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は、半導体工程技術を用いて所定の基板の上にパワー素子、発光素子、受光素子などの電子素子を実装した電子部品の一つである。例えば、パワー素子は、基板の上にトランジスター、MOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ショットキーダイオードなどが実装され、受光素子は、基板の上に太陽電池、フォトセンサーなどが実装される。特に、GaNを用いた半導体発光素子は青色発光が可能であることから、既存に開発されているGaAs及びInP系の化合物半導体を用いた緑色と赤色の発光素子とともにフルカラーの実現を可能にして各種のディスプレイの光源として注目を集めている。
【0003】
しかしながら、高品位のGaN薄膜を成長させるためには、格子定数及び熱膨張係数が同じ高品位GaN単結晶基板が必要である。ところが、GaNは融点が約2400℃であり、5族窒素の分圧が3族よりも遥かに大きいため、GaN単結晶基板を成長させるためには、略40、000気圧の窒素圧力が必要であり、現在のSi、GaAs、InPなどの半導体単結晶成長技術ではGaN単結晶の製造が困難であることが知られている。
【0004】
この理由から、現在には、GaNと格子定数及び熱膨張係数の不整合度が大きなサファイア (sapphire、Al)などの異種基板を使用し、これを緩和させるために、AlNやGaNなどの緩衝層を用いてGaNエピ層を成長させる異種接合成長法(ヘテロエピタキシー)を利用している。
【0005】
良質のGaN単結晶を製造するために種々の方法が提案されているが、大きく、2種類の方法が用いられている。すなわち、異種基板の上にGaN層を成長させ、レーザーリフトオフ(Laser Lift off)またはウェットエッチングなどによりGaN基板を異種基板から分離する方法と、異種基板の上にGaN層を成長させた後、冷却に際してGaN基板と異種基板とが自動的に分離されるようにする方法である。
【0006】
前者の方法の例として、サファイア基板の上にHVPE成長方法を用いて低い欠陥を有するGaNを成長させた後、レーザーリフトオフ工程を用いてサファイア基板を分離することが開示されており(例えば、下記の特許文献1参照)、GaAs基板の上にGaNを成長し、GaAs基板をウェットエッチングにより除去することが開示されている(例えば、下記の特許文献2参照)。
【0007】
後者の方法の例として、ボイドを用いた自動分離法が開示されているが(例えば、下記の特許文献3参照)、これは、異種基板の上に薄いGaNを成長させた後、薄いTiを成長させ、水素雰囲気の熱処理によってTiの下の薄いGaN層にボイドを形成し、その上に厚いGaNを形成して冷却に際して異種基板とGaN基板とが自動的に分離されるようにする方法である。また、異種基板の上にMOCVDを用いたELOGaNテンプレートにHイオンを注入した後、低い温度で弱い層を形成し、高温で厚い良質のGaN成長を行った後、冷却に際して弱い層が自動的に分離されることが開示されている(例えば、下記の特許文献4参照)。
【0008】
しかしながら、上記の従来の自動分離方法は、低い歩留まりと高い製造コストを有していることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6、440、823号公報
【特許文献2】米国特許第6、693、201号公報
【特許文献3】米国特許第6、924、159号公報
【特許文献4】米国公開特許第2009/0278136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、製造工程を単純化させて製造コストを削減することができ、しかも、生産性を向上させることのできる基板の製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、表面特性及び結晶性に優れていることから、高性能半導体素子の製作に活用可能な基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による基板の製造方法は、下地基板を昇温させるステップと、前記下地基板の上にバッファー層を形成するステップと、前記バッファー層の上にセパレータ層を形成するステップと、前記セパレータ層の上に少なくとも二つの温度で半導体層を形成するステップと、前記下地基板を冷却して前記セパレータ層を中心に前記下地基板と前記半導体層を分離するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様による基板の製造方法は、下地基板を昇温させるステップと、前記下地基板をエッチングして複数の凹部を形成するステップと、前記下地基板の上にバッファー層を形成するステップと、前記バッファー層の上にセパレータ層を形成するステップと、前記セパレータ層の上に少なくとも二つの温度で半導体層を形成するステップと、前記下地基板を冷却して前記セパレータ層を中心に前記下地基板と前記半導体層を分離するステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
前記複数の凹部は、前記反応炉内に塩素を含む第1の原料ガスを供給して形成することが好ましい。
【0015】
前記バッファー層は、V族元素を含む第2の原料ガスを用いて形成することが好ましい。
【0016】
前記バッファー層は、NHガスを用いて前記下地基板を窒化させて形成することが好ましい。
【0017】
前記セパレータ層は、第1の温度で前記第1及び第2の原料ガスを用いて形成することが好ましい。
【0018】
前記セパレータ層は、NHとHClを用いてNHClから形成することが好ましい。
【0019】
前記半導体層は、III族元素を含む物質と前記第1の原料ガスによって形成された第3の原料ガスと前記第2の原料ガスを用いて形成することが好ましい。
【0020】
前記半導体層は、GaとHClによるGaClとNHの反応によって形成されたGaN層を備えることが好ましい。
【0021】
前記半導体層は、前記第1の温度で一部の厚さを形成し、前記第1の温度よりも高い温度で残りの厚さを形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、下地基板の上にバッファー層及びセパレータ層を形成し、その上部に低温及び高温で半導体層を形成した後、半導体層の形成された下地基板を搬出させて自然冷却による熱膨張係数の違いによって下地基板と半導体層を自動的に分離する。すなわち、半導体層と下地基板との間に弱いセパレータ層が形成されて半導体層を一層容易に分離することができる。なお、本発明は、下地基板の上にバッファー層、セパレータ層及び半導体層を単一の反応装置内においてインサイチュにて形成することから、工程を単純化させることができ、これにより、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に用いられる薄膜成長装置の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板の製造方法を説明するための工程手順図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る基板の製造方法を説明するための工程手順図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る基板の製造方法の各工程における基板表面の光学顕微鏡写真である。
【図7】本発明の一実施形態に係る基板の製造方法において自動的に分離された自立型GaN基板と分離されたサファイア基板の写真である。
【図8】本発明の一実施形態に係る基板の製造方法における各工程処理後のXRD測定データである。
【図9】本発明の一実施形態に係る基板の製造方法における各工程処理後のXRD測定データである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を詳述する。しかしながら、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる態様で実現され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、且つ、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0025】
図1は、本発明に用いられる薄膜成長装置の概略断面図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る基板の製造方法を説明するための工程手順図であり、図3は、本発明の一実施形態に係る基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0026】
本発明の実施形態に係る基板の製造方法は、下地基板の上に窒化物半導体層を形成した後、下地基板の冷却に際して下地基板と窒化物半導体層とが自動的に分離される場合を想定している。このような本発明においては、薄膜成長装置としてHVPE装置が利用可能である。HVPE装置は、部位別にそれぞれ別々に温度が調節可能なファーネス内に反応管を形成し、反応管内に窒化物層を成長させるための原料ガスを供給するソース領域(Source Zone)と、原料ガスが反応して窒化物層が成長される反応領域(Reaction Zone)と、を含むことが好ましい。このような薄膜成長装置は、例えば、図1に示すように、内部空間にソース領域Aと反応領域Bが設けられた反応管100と、反応管100の外周に設けられてソース領域Aを加熱するソース領域加熱部210と、反応管100の外周に設けられて反応領域Bを加熱する反応領域加熱部220と、ソース領域Aに原料物質を供給するソース供給部400と、ソース領域加熱部210と反応領域加熱部220との間に配設されて両領域の熱的干渉を低減する断熱部材310と、を備えることが好ましい。
【0027】
反応管100は、中空のチューブ状に製作されて、一方の空間には原料物質が供給されるソース領域Aが設けられ、ソース領域Aと連通される他方の空間には基板10の上に膜が成長される反応領域Bが設けられる。
【0028】
反応管100の外側には、ソース領域Aを加熱するためのソース領域加熱部210と、反応領域Bを加熱するための反応領域加熱部220とが所定の距離だけ隔設される。このとき、ソース領域加熱部210及び反応領域加熱部220は、コアヒーター状または板状ヒーター状に形成されて反応管100の外周全体または少なくとも一部を取り囲むように設けられることが好ましい。例えば、反応管100の外周にコアヒーターをばね状に巻き取ってもよく、反応管100の外周に沿ってコアヒーターをS字状に配設してもよい。また、ソース領域加熱部210及び反応領域加熱部220は、ソース領域A及び反応領域Bを細分して加熱可能に複数設けられてもよい。これにより、細部領域別に温度分布及び加熱条件を一層細かく制御することができ、しかも、それぞれ別々に制御することができる。
【0029】
ソース領域Aには、外部から蒸着原料を供給するソース供給部400が配設される。ソース供給部400は、下地基板10の上に成長させようとする膜の種類に応じて種々選択可能である。例えば、III−V族のp型半導体膜を形成可能に構成され、このために、ソース供給部400は、低圧状態または真空状態に保たれる反応管100の一方の側に、第1、第2及び第3のガス供給管410、420、430と、第1のガス供給管410の中間に原料物質、例えば、GaなどのIII族元素とMgなどのp型ドーパントを入れるための坩堝440とが設けられる。第1のガス供給管410は、窒化物層、例えば、GaN層を形成するためにGaと反応してGaClを形成するためにHClガスを供給することが好ましく、第2のガス供給管420は、GaN層を形成するために第1のガス供給管410から供給されるGaClと反応するNHガスなどのV族元素を含む原料ガスを供給することが好ましい。また、第3のガス供給管430は、下地基板のエッチングのために、例えば、HClガスを供給することが好ましい。すなわち、HClガスは異なる経路を介して供給されてもよいが、下地基板のエッチングに際して第3のガス供給管430を介して供給され、GaN層の成長に際しては第1のガス供給管410を介して供給されることが好ましい。一方、第1、第2及び第3のガス供給管410、420、430に供給される原料ガスは、キャリアガス(carrier gas)、例えば、N、H、Arなどの不活性ガスとともに供給されることが好ましい。
【0030】
反応領域Bには、下地基板10が載置可能な基板保持台500が設けられ、一方の側には、反応管100の内部排気を行う排気部600が接続される。
【0031】
このような薄膜成長装置を用いて、例えば、GaN層を形成する場合に、坩堝430にGaを設け、坩堝430と接続されている第1のガス供給管410にHClガスを供給することにより、第1のガス供給管410の後段にGaClガスを形成する。そして、第2のガス供給管420を介してNHガスを供給して、反応領域に下記の反応式に従うGaClとNHとの反応によりGaN層を形成することができる。
【0032】
Ga+HCl(g)→GaCl(g)+1/2H(g)
GaCl(g)+NH(g)→GaN(s)+HCl(g)+H(g)
【0033】
このような薄膜成長装置を用いた本発明の一実施形態に係る基板の製造方法は、図2及び図3に示すように、下地基板を所定の温度に昇温させるステップ(S110)と、下地基板の上にバッファー層を形成するステップ(S120)と、バッファー層の上にセパレータ層を形成するステップ(S130)と、セパレータ層の上に第1の半導体層を成長させるステップ(S140)と、第1の半導体層の上に第2の半導体層を成長させて第1及び第2の半導体層からなる半導体層を形成するステップ(S150)と、下地基板を冷却させて下地基板と半導体層を自動的に分離して半導体基板を製造するステップ(S160)と、を含む。以下、このような本発明の一実施形態に係る基板の製造方法について詳述する。
【0034】
まず、高温に保たれる反応管100の反応領域Bに下地基板10を搬入させて下地基板10を昇温させる(S110)。ここで、反応領域Bは、950〜1050℃の温度に維持することが好ましい。また、下地基板10としては、サファイア基板、シリコンカーバイド(SiC)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、酸化亜鉛(ZnO)基板など半導体膜が蒸着可能なあらゆる基板が使用可能であるが、この実施形態においてはサファイア基板を用いる場合について説明する。
【0035】
次いで、基板の前処理工程として下地基板10の窒化処理を施して、図3(a)に示すように、下地基板10の上にバッファー層20を形成する(S120)。下地基板10の窒化処理を施すために、第2のガス供給管420を介してNHガスを反応領域Bに供給する。このとき、下地基板10の窒化処理時間は、約1分〜20分であることが好ましい。バッファー層20は、下地基板10に応じて種々の物質から形成可能であるが、例えば、サファイア基板を用いると、AlN層のバッファー層20が形成される。
【0036】
次いで、反応管100の反応領域Bの温度を下げて低温において、図3(b)に示すように、バッファー層20の上にセパレータ層30を形成する(S130)。セパレータ層30は、例えば、NHCl層として形成することが好ましい。NHCl層を形成するために、第2のガス供給管420を介してNHガスを供給し、第3のガス供給管430を介してHClを供給する。すなわち、NHとHClとの反応によってNHCl層が形成される。このとき、反応領域Bは、350〜450℃の温度に保たれ、約1分〜20分間ガスを供給することが好ましい。
【0037】
次いで、図3(c)に示すように、セパレータ層30の上に連続して第1の半導体層40Aを形成する(S140)。第1の半導体層40Aは、種々の物質層として形成可能であるが、例えば、GaN層として形成することが好ましい。GaN層を形成するために、坩堝440にGaに設け、第1のガス供給管410を介してHClガスを供給することにより反応管の反応領域BにGaClガスを供給し、第2のガス供給管420を介してNHガスを供給する。このため、GaClとNHとの反応によってGaN層が成長される。このとき、第1の半導体層40Aは、成長の初期にセパレータ層30の成長温度と同じ温度において一部の厚さを成長させた後、温度を次第に昇温させて残りの厚さを成長させることが好ましい。また、温度を次第に昇温させて一部の厚さを成長させた後に所定の温度に維持して残りの厚さを成長させることが好ましい。例えば、350〜450℃の温度において約1分〜10分間工程を行うことにより第1の半導体層40Aの一部を成長させた後、第1の半導体層40Aの成長中に反応領域Bの温度を、例えば、800〜900℃に次第に昇温させ、その後、所定の温度に維持して数〜数十μmの厚さに成長させることが好ましい。このようにして第1の半導体層40Aの一部の厚さをセパレータ層40の成長温度において成長させることにより、パウダー状に存在するセパレータ層30の気化を防ぐことができる。すなわち、セパレータ層30が低温において成長され、第1の半導体層40Aがこれよりも高い高温において成長されると、セパレータ層30が気化されて除去され得る。また、第1の半導体層40Aの残りの厚さを昇温させながら成長させることにより、今後、高温において第2の半導体層が成長されるときに、第1の半導体層40Aにひび割れが生じることを防ぐことができる。すなわち、第1の半導体層40Aをセパレータ層30の成長温度において完全に成長させた後、高温において第2の半導体層40Bを成長させると、温度差によって第1の半導体層40Aにひび割れが生じることがある。
【0038】
次いで、NHガスを供給し続けながら反応管の反応領域Bを昇温させて、図3(d)に示すように、第1の半導体層40Aの上に第2の半導体層40Bを形成する(S150)。第2の半導体層40Bは、第1の半導体層40Aと同じ物質、例えば、GaN層から形成されることが好ましい。良質の半導体層40を形成するために、第2の半導体層40Bは、例えば、約980〜1080℃の高温において数百um〜数mmの厚さに成長される。このため、第1の半導体層40A及び第2の半導体層40Bからなる半導体層40が形成される。すなわち、半導体層40は、一部の厚さが低温において成長され(第1の半導体層40A)、残りの厚さが高温において成長される(第2の半導体層40B)。このため、セパレータ層30の気化を防いで良質の半導体層40を形成ことができる。
【0039】
次いで、数百μm〜数mmの厚さの半導体層40が形成された下地基板10を反応炉から搬出すると、下地基板10及び半導体層40が冷却されながら、下地基板10と半導体層40との熱膨張係数の違いにより、図3(e)に示すように、下地基板10と半導体層40とが自動的に分離される(S160)。すなわち、半導体層40と下地基板10との間に設けられる弱いセパレータ層30が分離されて半導体層40と下地基板10とが自動的に分離される。これにより、半導体基板が製造される。
【0040】
上述したように、本発明の一実施形態に係る基板の製造方法は、下地基板10の上にバッファー層20及びセパレータ層30を形成し、その上部に低温及び高温において半導体層40を形成した後、半導体層40が形成された下地基板10を搬出し、自然冷却による熱膨張係数の違いによってセパレータ層30が分離されて下地基板10と半導体層40を自動的に分離する。すなわち、半導体層40と下地基板10との間に弱い結晶性のセパレータ層30が形成されて、半導体層40を分離し易くすることが好ましい。なお、本発明は、下地基板10の上にバッファー層20、セパレータ層30及び半導体層40が単一の反応装置内においてインサイチュにて形成されることから、工程を単純化させることができ、これにより、生産性を向上させることができる。
【0041】
図4は、本発明の他の実施形態に係る基板の製造方法を説明するための工程手順図であり、図5は、本発明の他の実施形態に係る基板の製造方法を工程順に示す断面図である。また、図6は、本発明の一実施形態に係る基板の製造方法の各工程における基板表面の光学顕微鏡写真であり、図7は、下地基板と半導体層とが自動的に分離された写真である。そして、図8及び図9は、本発明の他の実施形態に係る基板の製造方法における各工程処理後のXRD測定データである。
【0042】
本発明の他の実施形態に係る基板の製造方法は、図4及び図5に示すように、下地基板を所定の温度に昇温させるステップ(S210)と、下地基板をエッチングするステップ(S220)と、下地基板の上にバッファー層を形成するステップ(S230)と、バッファー層の上にセパレータ層を形成するステップ(S240)と、セパレータ層の上に第1の半導体層を成長させるステップ(S250)と、第1の半導体層の上に第2の半導体層を成長させて第1及び第2の半導体層からなる半導体層を形成するステップ(S260)と、下地基板を自然冷却させて下地基板と半導体層を自動的に分離して半導体基板を製造するステップ(S270)と、を含む。すなわち、本発明の他の実施形態は、バッファー層を形成する前に基板をエッチングする。以下、このような本発明の他の実施形態に係る基板の製造方法を詳述する。
【0043】
まず、例えば、950〜1050℃の温度に保たれる反応管100の反応領域Bに下地基板10を搬入させて下地基板10を昇温させる(S210)。
【0044】
次いで、下地基板の前処理工程として下地基板10をエッチングして、図5(a)に示すように、下地基板10に凹部11を形成する(S220)。このために、GaCl供給用のHClガス供給管、すなわち、第1のガス供給管410とは別設された第3のガス供給管430を介してHClガスを供給することにより、下地基板10をエッチングすることが好ましい。下地基板10のエッチング工程は、約1分〜20分間行うことが好ましい。下地基板10、例えば、サファイア基板は、結晶形状が六角形状であるため、サファイア基板の表面には、図5(a)に示すように、円形の凹部11が複数形成される。これにより、下地基板10の表面に10Å〜300Å、さらに好ましくは、14Å〜110Åの表面粗さ(Ra)が形成される。図6(a)は、サファイア基板のエッチング処理後のサファイア基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真(倍率:100倍)であり、サファイア基板の表面がエッチングされて円形の凹部が形成された様子を示している。このようにして下地基板10の上に凹部11を形成すると、下地基板10の表面断面積が増大し、今後、バッファー層20及びセパレータ層30が一層形成され易くなる。
【0045】
次いで、基板の前処理工程として下地基板10を窒化処理して、図5(b)に示すように、下地基板10の上にバッファー層20を形成する(S230)。下地基板10を窒化処理するために、第3のガス供給管430を介したHClの供給を中断し、第2のガス供給管420を介してNHガスを反応領域Bに供給する。バッファー層20は、例えば、サファイア基板を用いると、AlN層のバッファー層20が形成される。図6(b)は、サファイア基板を窒化処理した後のサファイア基板の表面を光学顕微鏡(倍率:500倍)にて観察した写真であり、図8(a)は、窒化処理後のサファイア基板のXRD測定データである。同図に示すように、サファイア基板が窒化されてAlN層が形成されている。
【0046】
次いで、反応管100の反応領域Bの温度を下げて低温において、図5(c)に示すように、バッファー層20の上にセパレータ層30を形成する(S240)。セパレータ層30は、例えば、NHCl層として形成することが好ましく、このために、第2のガス供給管420を介してNHガスを供給し、第3のガス供給管430を介してHClを供給する。このとき、反応領域Bは、350〜450℃の温度に保たれ、約1分〜20分間ガスを供給することが好ましい。図6(c)は、NHCl層を形成した後のサファイア基板の表面を光学顕微鏡(倍率:500倍)にて観察した写真であり、図8(b)は、NHCl層の形成後のXRD測定データであり、AlN層の上にNHCl層が形成されていることを示している。
【0047】
次いで、図5(d)に示すように、セパレータ層30の上に連続して第1の半導体層40Aを形成する(S250)。第1の半導体層40Aは、例えば、GaN層として形成することが好ましく、このために、坩堝440にGaを設け、第1のガス供給管410を介してHClガスを供給することにより、反応管の反応領域BにGaClガスを供給し、第2のガス供給管420を介してNHガスを供給する。また、反応領域Bを昇温させながら第1の半導体層40Aを成長させることが好ましい。例えば、350〜450℃の温度において約1分〜10分間工程を行うことにより第1の半導体層40Aを成長させ、連続した成長を行いながら、第1の半導体層40Aの成長中に反応領域Bの温度を、例えば、800〜900℃に昇温させて第1の半導体層40Aを成長させることが好ましい。なお、第1の半導体層40Aの成長中に反応領域Bの温度を、例えば、800〜900℃に昇温させた後、所定の温度に保って、数〜数十μmの厚さに成長させることが好ましい。図6(d)は、低温におけるGaN層の成長後に光学顕微鏡(倍率:500倍)にて基板の表面を観察した写真である。
【0048】
次いで、NHガスを供給し続けながら反応管の反応領域Bの温度を950〜1050℃に昇温させて、図5(e)に示すように、第1の半導体層40Aの上に第2の半導体層40Bを形成する(S250)。第2の半導体層40Bは、第1の半導体層40Aと同じ物質、例えば、GaN層から形成されることが好ましい。良質の半導体層40を形成するために、第2の半導体層40Bは、高温において数百μm〜数mmの厚さに成長される。このため、第1の半導体層40A及び第2の半導体層40Bからなる半導体層40が形成される。
【0049】
次いで、数百μm〜数mmの厚さの半導体層40が形成された下地基板10を反応炉から搬出すると、下地基板10及び半導体層40が冷却されながら、下地基板10と半導体層40との間の熱膨張係数の違いに起因して、図5(f)に示すように、下地基板10と半導体層40が自動的に分離される(S160)。すなわち、半導体層40とその下側のセパレータ層30が自動的に分離される。これにより、半導体基板が製造される。図7は、自動的に分離されたサファイア基板(2インチのキャリアに置かれている基板)と半導体基板(斜めに立てられた基板)の写真である。図9(a)は、サファイア基板の分離された面のXRD測定データであり、サファイア基板の主ピークと表面に残留しているGaNの主ピークとが弱く観察されている。図9(b)は、分離されたGaN基板のN−face、すなわち、サファイア基板にくっついていた面に対するXRD測定データであり、第1のGaN層の成長ステップの初期の成長面においてc軸方向ではない多数の軸方向に配列されて成長される結果を示している。図9(c)は、分離されたGaN成長基板のGa−face、すなわち、GaN成長表面に対するXRD測定データであり、GaN成長面がC軸に配列されて単結晶に上手に成長された結果を示している。
【0050】
上述した本発明の他の実施形態は、下地基板10をエッチングして凹部11を形成した後、バッファー層20、セパレータ層30及び半導体層40を単一の装置を用いてインサイチュにて形成し、下地基板10の搬出に際して自然冷却によって下地基板10と半導体層40を自動的に分離している。しかしながら、凹部11を形成するための下地基板10のエッチング工程は、サファイア基板の表面研磨のための化学的・機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)ステップにおいてCMPスラリーのPh濃度を高めて基板の表面をエッチングするか、あるいは、400℃〜550℃の温度を有するKOH溶融塩に浸して数分間、例えば、5分〜10分間エッチングして形成することができる。すなわち、基板のエッチング工程は、HClガスを用いたドライエッチング、KOH溶融塩を用いたウェットエッチング、スラリーの濃度を高めたCMP工程のいずれかを用いて行うことができる。ここで、ウェットエッチングまたはCMP工程により凹部11を形成する場合に、これらの方法により凹部11を形成した後、薄膜成長装置に凹部11付き下地基板10を搬入した後、薄膜成長工程を行うことができる。
【0051】
本発明の技術的思想は前記実施形態により具体的に述べられたが、前記実施形態はその説明のためのものであり、その制限のためのものではないということを理解しなければならない。なお、本発明の技術分野における当業者は、本発明の技術思想の範囲内において種々の実施形態が可能であるということが理解できるであろう。
【符号の説明】
【0052】
10:下地基板
11:凹部
20:バッファー層
30:セパレータ層
40:半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板を昇温させるステップと、
前記下地基板の上にバッファー層を形成するステップと、
前記バッファー層の上にセパレータ層を形成するステップと、
前記セパレータ層の上に少なくとも二つの温度で半導体層を形成するステップと、
前記下地基板を冷却して前記セパレータ層を中心に前記下地基板と前記半導体層を分離するステップと
を含む基板の製造方法。
【請求項2】
下地基板を昇温させるステップと、
前記下地基板をエッチングして複数の凹部を形成するステップと、
前記下地基板の上にバッファー層を形成するステップと、
前記バッファー層の上にセパレータ層を形成するステップと、
前記セパレータ層の上に少なくとも二つの温度で半導体層を形成するステップと、
前記下地基板を冷却して前記セパレータ層を中心に前記下地基板と前記半導体層を分離するステップと
を含む基板の製造方法。
【請求項3】
前記複数の凹部は、前記反応炉内に塩素を含む第1の原料ガスを供給して形成することを特徴とする請求項2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記バッファー層は、V族元素を含む第2の原料ガスを用いて形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記バッファー層は、NHガスを用いて前記下地基板を窒化させて形成することを特徴とする請求項4に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記セパレータ層は、第1の温度で前記第1及び第2の原料ガスを用いて形成することを特徴とする請求項4に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記セパレータ層は、NHとHClを用いてNHClから形成することを特徴とする請求項6に記載の基板の製造方法。
【請求項8】
前記半導体層は、III族元素を含む物質と前記第1の原料ガスによって形成された第3の原料ガスと前記第2の原料ガスを用いて形成することを特徴とする請求項6に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
前記半導体層は、GaとHClによるGaClとNHの反応によって形成されたGaN層を備えることを特徴とする請求項8に記載の基板の製造方法。
【請求項10】
前記半導体層は、前記第1の温度で一部の厚さを形成し、前記第1の温度よりも高い温度で残りの厚さを形成することを特徴とする請求項9に記載の基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−89975(P2013−89975A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232668(P2012−232668)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【出願人】(512272731)ルミジエヌテック カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】