説明

基板の貼り合わせ装置及び貼り合わせ方法

【課題】ディスプレイパネル製造のための貼り合わせ工程において、基板の撓みを防止しつつ、容易に、かつ高精度にセルギャップを決定する。
【解決手段】対向する第1及び第2の基板10及び12間に挟まれた空間にシール材14を介在させて、第1の定盤40側に保持された第1の基板と第2の定盤48側に保持された第2の基板との位置合わせを行うディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、第1の基板の、表示セル領域空間32を形成する面とは反対側の外側面と、第1の定盤との間隙を真空にして第1の基板を第1の定盤側に吸引保持する工程と、第1の基板の外側面を、外側面と接触する第1の定盤から空気圧により突出する複数の押圧ピン71により押圧して、第1及び第2の基板を貼り合わせる工程と、シール材を硬化する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法及びその実施のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネル及び有機ELディスプレイパネルは、一般に2枚の基板を貼り合わせて製造される。以下に図5を参照しつつ、従来から行われている基板の貼り合わせ工程を説明する。図に示したように、第1の基板110を、X軸駆動機構132を具えた第1の定盤142で保持する。同様にシール材を設けた第2の基板112を、Y軸駆動機構134を具えた第2の定盤144で保持する。第1の基板110及び第2の基板112に付された合わせマークを観測しつつ、X軸、Y軸及び第2の定盤144のさらに下部に位置するθテーブル162でθ軸を調節する。すなわち、第2の基板112を回転駆動機構136で水平面内で回転させて第1の基板との位置合わせを行う。然る後、第1の定盤142又は第2の定盤144を、矢印A方向に作動することができる、定盤の上下昇降手段138及び加圧シリンダー160により結果として基板を押圧することで貼り合わせを行っている。このとき2枚の基板の間隔(以下、セルギャップとも称する。)が、例えばセルの周縁部とセルの中心部とで一定でない場合には、完成したディスプレイパネルに表示むらが生じてしまう。従って、製造されるディスプレイパネルの表示品質を高品質に、かつ一定に維持するためには、製造工程においてセルギャップを適切に維持する必要がある。この技術をセルギャップ制御(CELL GAP CONTROL)という。なお、上述したX軸駆動機構132、Y軸駆動機構134、回転駆動機構136、上下昇降手段138及び加圧シリンダ160による基板押圧機構は、従来より種々の機構があって周知である。このため、当業者ならばこれらの機構を容易に構成できるので、その詳細な説明は省略する。
【0003】
例えばガラス基板等を用いた液晶表示ディスプレイパネル製造における貼り合わせ工程では、シール材自体にグラスファイバ等からなるスペーサ繊維を混入して使用すると同時に、基板間の表示セル内部全面に樹脂、シリカ等からなるスペーサ粒子等のセルギャップ保持手段を散布せしめて行われている。また、表示セル領域内にレジスト等の構造によりセルギャップ保持手段を設ける場合もある。しかしながら、スペーサによるコントラストの低下等のマイナス効果が生じる。従って、表示品質を向上させるために、セル内部にスペーサ粒子を配置せずに精密なセルギャップ制御を行う、いわゆるスペーサレスな液晶ディスプレイが待望されている。
【0004】
また、近年需要の増大している有機ELパネル等においては、表示セル内部全面にスペーサ粒子を配することはできないので、精密なセルギャップ制御は実現されていないのが現状である。
【0005】
さらに、ディスプレイパネルの貼り合わせ及び封止工程において、例えば、ゴムスポンジといった弾性体を緩衝材として使用して、基板面を押圧することで、2枚の基板をシール材を挟んで封止する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、貼り合わせ及び封止工程において、2枚の基板を、撓みなく保持して対向させ、所定のセルギャップをディスプレイパネルの表示セル領域全体に渡って精度よく形成することは極めて困難である。
【0007】
ゴムスポンジにより基板面を押圧した状態で、紫外線照射によりシール材を硬化する場合には、紫外線によるゴムスポンジの塑型性の劣化が懸念され、基板の押圧工程が、所定の圧力及び所定の精度で行えない恐れがある。また、当該ゴムスポンジの繰り返しの使用により、塑型性が劣化して押圧力の再現性が失われてしまう恐れもある。
【0008】
従って、従来の製造方法では、基板面の押圧力を精度よく制御し、押圧力の再現性を確保することが困難であった。
【0009】
すなわち、従来の製造方法では、ディスプレイパネルの表示セル領域のセルギャップを一定にすることが困難であるため、例えば、表示品質の劣化といった問題を引き起こす恐れがある。
【特許文献1】特開平6−75233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板の貼り合わせ工程に際して、基板の撓みを防止しつつ、セルギャップを容易かつ高精度に設定することを可能ならしめると同時に、シール材を用いた単一の封止工程で、2枚の基板に挟まれた空間に形成される表示領域の周縁全周を封止することができる、ディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法及びその実施のための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、この発明は、対向する第1及び第2の基板間に挟まれた空間に表示セル領域空間及び表示セル領域空間を囲む周辺領域空間を形成するように、第1及び第2の基板のいずれかの基板にシール材を介在させて、第1の定盤側に保持された第1の基板と第2の定盤側に保持された第2の基板との位置合わせを行うディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法に関する発明であって、主として、下記のような工程を含んでいる。
【0012】
先ず、(1)工程として、第1の基板の、表示セル領域空間を形成する面とは反対側の外側面と、第1の定盤との間隙を真空にして第1の基板を第1の定盤側に吸引保持する。
【0013】
次いで、(2)工程として、第1の基板の外側面を、第1の基板の外側面と接触する第1の定盤から空気圧により突出する複数の押圧ピンにより押圧する。
【0014】
さらに(3)工程として、第1及び第2の基板を貼り合わせる。
【0015】
然る後、シール材を硬化する。
【0016】
この発明の貼り合わせ方法によれば、さらに、空気圧によって作動する押圧ピンにより、第1の基板の基板面を、複数の点により押圧する。
【0017】
このとき、複数の押圧ピンは、単一の吸排気手段が発生する空気圧により作動させるのがよい。
【0018】
また、この発明の貼り合わせ方法によれば、好ましくは、第2の基板と第2の定盤についても同様に、表示セル領域空間を形成する面とは反対側の外側面と、第2の定盤との間隙を真空にして、第2の基板を第2の定盤側に吸引保持するのがよい。
【0019】
さらに(2)工程は、第1の基板を介してシール材の直上に配置される複数の押圧ピンにより行われる工程とするのがよい。
【0020】
この発明の貼り合わせ方法の特に(2)工程を実施するに際しては、好ましくは、第1の基板と第2の基板とを接近させ、かつ表示セル領域空間がシール材により密閉されていない状態で、第1の基板と第2の基板との間隙である表示セル領域空間を真空とするのがよい。
【0021】
この発明の貼り合わせ方法の実施に当たり、好ましくは、貼り合わせ工程を内部を真空にすることが可能な気密の処理室内で行うのがよい。上述した少なくとも(2)工程を、処理室内を常圧と真空との間で変化させる工程とするのが好適である。
【0022】
この発明の貼り合わせ方法の(2)工程において、第1及び第2の基板の間隙の気圧を、その外部の気圧と比較して、好ましくはシール材が破裂しない程度に低く維持した状態で、第1及び第2の基板を合わせた後に、押圧するのがよい。
【0023】
さらに、この発明の貼り合わせ方法において、貼り合わせ工程を真空にした処理室内で行うに際しては、好ましくは、処理室全体を真空にするための空気の吸引力を、第1及び第2の基板を第1及び第2の定盤に密着させるための空気の吸引力よりも小さくするのがよい。
【0024】
好ましくは、シール材の硬化を紫外線照射により行うのがよい。或いはまた、このシール材の硬化を加熱又は冷却することにより行ってもよい。
【0025】
この発明のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、スペーサ部を周辺領域から引き抜く工程は、シール材の硬化前又は硬化後のいずれの段階で行ってもよい。
【0026】
また、この発明のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置によれば、主として下記の構成要素を具えるのがよい。
【0027】
すなわち、第1及び第2の基板をシール材を介在させて貼り合わせるためのディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置は、第1及び第2の基板をそれぞれ保持する第1の定盤及び第2の定盤を具えている。第1の定盤は、第1の基板の外側面と接触する第1表面から空気圧により突出してこの外側面を押圧する複数の押圧ピンと、この押圧ピンを格納する格納室と、格納室に接続されていてこの格納室内に前記空気圧を発生させる第1吸排気手段と、第1の基板を支持するスペーサ部と、スペーサ部を支持するアーム部と、アーム部を伸縮するための水平方向及び垂直方向伸縮機構とを含む基板保持手段を具えている。
【0028】
また、貼り合わせ装置は、好ましくは、シ−ル材硬化手段を具るのがよい。このシ−ル材硬化手段は、2枚の基板間のシール材を硬化する働きをする。
【0029】
複数の押圧ピンは、貼り合わせ対象の基板に設けられるシール材の位置に合わせてその直上に配置する装置構成とするのがよい。
【0030】
複数の押圧ピンは、好ましくは、単一の吸排気手段が発生する空気圧により作動する押圧ピンとするのがよい。
【0031】
押圧ピンは、好ましくは、円盤状であって、当該円盤の側面全周に窪みが設けられている基部と、窪みを取り巻くように設けられている気密保持部材と、基部に設けられている棒状のピン部とを具えるのがよい。
【0032】
このピン部は、好ましくは、ステンレス鋼により形成するのがよい。
【0033】
また、この発明の貼り合わせ装置の他の好適例では、シール材により封止される前の、第1及び第2の基板との間隙、すなわち表示セル領域空間及び周辺領域空間とを真空にするための手段をさらに具える構成とするのがよい。
【0034】
この発明の貼り合わせ装置の構成例によれば、表示セル領域空間及び周辺領域空間とを真空にするための手段として、貼り合わせ用の処理室と、処理室を常圧と真空との間で変化させるための圧力調整手段とを含むのが好適である。
【0035】
また、第1の定盤及び第2の定盤の双方またはいずれか一方を石英定盤とすれば、シール材の硬化手段を紫外線照射装置としてシール材の硬化を行うのに好適である。
【発明の効果】
【0036】
この発明の製造装置及び製造方法によれば、空気圧で作動する複数の押圧ピンを用いて、複数の点により、基板面を柔軟に押圧することができる。従って、基板面に対する押圧力の分布を分散させ押圧力の偏りを防止することができるので、貼り合わせの際に、第1の基板の特に中心部に発生する撓みを抑えることができる。従って、特に基板の中央部に位置する表示セル領域のセルギャップと、周辺部におけるセルギャップとを均一にすることが可能となる。結果として、セルギャップを容易にかつ高精度に、設定することが可能となるので、製造されるディスプレイパネルの表示品質を、より向上させることができる。
【0037】
押圧ピンを、例えばステンレス鋼といった金属材料により形成すれば、シール材の硬化を紫外線照射により行う場合でも、押圧ピン自体が劣化してセルギャップ制御に悪影響を及ぼす懸念がなくなる。すなわち、押圧力の再現性を高めることができる。
【0038】
複数の押圧ピンを、単一の吸排気手段が発生させる空気圧により同調して作動させる構成とすれば、各押圧ピンの押圧力を同一圧力とすることができる。従って、貼り合わせ工程における第1の基板の撓みを、より抑制することができる。
【0039】
さらに、第2の基板の表示セル領域空間を形成する面とは反対側の外側面と、第2の定盤との間隙を真空にして、第2の基板を第2の定盤側に吸引保持するようにすれば、より安定に第2の基板を保持することができるので、さらなる工程の安定性、ひいてはセルギャップの均一性の向上に寄与する。
【0040】
さらに、複数の押圧ピンを貼り合わせ対象の基板に設けられるシール材の位置に合わせてその直上に配置する装置構成とすれば、表示セル領域に対応する基板面を押圧しないので、貼り合わせ工程における押圧力による基板の局所的な撓みを防止することができる。また、この貼り合わせ工程において、表示セル領域に対応する基板面には、押圧ピンが接触しないので、表示セル領域に対応する基板面を傷つけて表示品質を低下させてしまう恐れがなくなる。
【0041】
さらにまた、第1の基板と第2の基板とを接近させ、かつ表示セル領域空間がシール材により密閉されていない状態で、第1の基板と第2の基板との間隙、具体的には少なくとも表示セル領域空間を真空とするようにすれば、真空とすべき空間をより小さくすることができるので、貼り合わせ工程の時間を短縮することが可能であり、ディスプレイパネルのスループットが大いに向上する。
【0042】
また、貼り合わせ工程を内部を真空にすることが可能な気密の処理室内で、少なくとも(2)工程を、処理室内を常圧と真空との間で変化させる工程とすれば、特にその製造に使用される材料が湿気及び酸素に弱い有機EL表示パネルの製造工程において、表示パネル品質に大きな影響を与える要因を排除しつつ、精密なセルギャップ制御を行うことが可能になる。
【0043】
さらに(2)工程において、第1及び第2の基板の間隙の気圧を、その外部の気圧と比較して、シール材が破裂しない程度に低く維持した状態で貼り合わせた後に、押圧するようにすれば、製造されるディスプレイパネルの表示品質を向上させつつ、歩留まりを向上させることができる。
【0044】
さらにまた、貼り合わせ工程を真空にした処理室内で行うに際して、処理室全体を真空にするための空気の吸引力を、第1及び第2の基板を第1及び第2の定盤に密着させるための空気の吸引力よりも小さくするようにすれば、第1及び第2の基板の落下や、これら基板の定盤に対するずれの発生を防止することができる。従って、これら2枚の基板をより安定して保持することができるので、高精度なセルギャップの制御に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、図面には、この発明が理解できる程度に各構成成分の形状、大きさ及び配置関係が概略的に示されているに過ぎず、これによりこの発明が特に限定されるものではない。また、以下の説明に用いる各図において同様の構成成分については、同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合もあることを理解されたい。
【0046】
また、この発明を実施するに当たり、図5を参照して既に説明したX軸駆動機構、Y軸駆動機構、回転駆動機構、及び上下昇降手段を適宜使用するが、これら自体の構成や機能は、従来周知であり、この発明の要旨ではないので、その詳細な説明は省略する。
【0047】
以下の実施形態の説明において、この発明を、液晶表示パネル及び有機EL表示パネルの双方に適用する例につき説明する。有機EL表示パネルの場合には、貼り合わせる一方の基板に、予め、有機EL層が形成されているものとする。また、液晶表示パネルの場合には、主として液晶媒体を表示パネルの貼り合わせ前にセル領域に注入する「滴下液晶注入」工程を例にとって説明する。
【0048】
なお、周知の通り、1枚の基板には、多数の表示セル(ディスプレイパネル)がマトリクス状に配列されて形成される。しかしながら、以下に説明する実施の形態では、図示の複雑化を回避するために、2枚の基板間に1つの表示セルを形成する例を代表して取り上げて示し、かつ説明している。また、図中、画像表示に必要な電極その他のトランジスタ等の他の構成成分等は、この発明の説明に必須ではないので、図示を省略してある。
【0049】
<第1の実施の形態>
図1(A)及び(B)を参照して、この発明の第1の実施の形態のディスプレイパネル基板貼り合わせ装置及び当該装置による貼り合わせ方法につき説明する。
【0050】
図1は、この発明の第1の実施の形態の説明図である。図1(A)はディスプレイパネル基板貼り合わせ装置(以下、貼り合わせ装置と略称する。)の主要部を上方から俯瞰した態様を示す概略的な平面図である。図1(B)は、図1(A)のI−I’一点破線に沿って切断した切り口を示す概略的な図である。
【0051】
図1(A)及び(B)に示すように、この実施の形態の貼り合わせ装置は、主として、第1の定盤40と、これに対向する第2の定盤48及びシール材硬化手段60とを含んでいる。
【0052】
図1(B)に示すように、第1の定盤40は、保持される基板の表示セルが形成される面とは反対側の外側面と接触する基板接触面40aを有する。この基板接触面40aと対向する側の定盤面には、天板01が接して設けられている。第1の定盤40には、空気圧により基板接触面40aから突出して基板の外側面を押圧する基板押圧機構70が設けられている。
【0053】
基板押圧機構70は、複数の押圧ピン71と、この押圧ピン71を格納する円筒形状の空間である格納室70aを具えている(これらの構成の詳細については後述する。)。
【0054】
また、基板押圧機構70は、格納室70aに連通する天板01の開口01aに、接続されている。基板押圧機構70には、格納室70a、すなわち押圧ピン71の上端側に形成される空間に気体(空気)を供給又は排出して、格納室70a内の空気圧(圧力)を変動させることができる基板押圧用吸排気手段78を具えている。
【0055】
第1の定盤40には、第1の基板保持用吸排気口44a及びこれに接続される第1の基板保持用吸排気手段46aとが設けられている。この第1の基板保持用吸排気口44aも、天板01を貫通する開口01bに第1の基板保持用吸排気手段46aが接続される構成としてある。吸排気口の大きさ、設置数等は、パネルの所望の仕様等により任意に変更することができる。
【0056】
天板01には、基板を支持するための支持アーム(以下、基板保持機構とも称する。)42が設けられている。
【0057】
第2の定盤48は、保持される第2の基板の外側面と接触する第2の基板接触面48aを有する。この構成例では、第2の基板接触面48aと対向する反対側の定盤面にはベース板02が設けられている。
【0058】
第2の定盤48には、第2の基板保持用吸排気口44bが、ベース板02をも貫通するように設けられている。この第2の基板保持用吸排気口44bには、第2の基板保持用吸排気手段46bが接続されて設けられている。
【0059】
この第2の基板保持用吸排気手段46bは、従来公知の構成を具える真空ポンプ及び当該真空ポンプに接続される配管等により構成することができる。
【0060】
これら第1吸排気手段78及び第1及び第2の基板保持用吸排気手段46a及び46bは、従来公知の構成を具える真空ポンプ及び当該真空ポンプに接続される、例えば、圧力調整弁を具えた配管等により構成することができる。
【0061】
支持アーム(基板保持機構)42は、適当な厚みを有するスペーサ部42bと、スペーサ部42bを支持するアーム部42a及びこのアーム部42aを水平方向(図中、矢印A方向)及び垂直方向(図中、矢印B方向)に伸縮させて、スペーサ部42bを水平方向及び垂直方向に作動させる、水平方向及び垂直方向伸縮機構42cとを含んでいる。
【0062】
スペーサ部42bの厚みは、例えば表示セル領域32に何らかのセルギャップ保持手段、すなわち例えばスペーサ粒子等のスペーサ材を配してこれによりセルギャップを決定する場合には、スペーサ部42bを引き抜いた後にギャップ出し工程を行うことができるので、第1の基板10を安定に保持できる範囲内で、好ましくはセルギャップh1よりも大きな(厚い)厚みを有し、かつシール材14の高さよりも小さい(薄い)厚みとすればよい。
【0063】
また、例えばスペーサレス液晶表示パネル及び有機EL表示パネルの場合には、表示セル領域にスペーサ材が存在しないので、好ましくはスペーサ部42bの厚みをセルギャップh1と実質的に等しくなるように設定するのがよい。すなわち、スペーサ部42bを、シール材の硬化後のセルギャップh1を設定する厚みと形状とを有するように設定するのがよい。スペーサ部42bの長さは、周辺領域30内に挿入及び抜き出しが可能であって、第1の基板10を安定に保持できる程度の長さとするのがよい。
【0064】
スペーサ部42bの材質については、この発明の目的を損なわない範囲で、適宜選択することができるが、好ましくはその材質を例えば純ニッケルとするのがよい。このスペーサ部42bの製造は、好ましくは例えば電鋳による製造方法を適用するのがよい。
【0065】
スペーサ部42bの作動機構、すなわち支持アーム42の水平方向及び垂直方向伸縮機構42c及び各吸排気手段は、図中、ブロックでそれぞれ示してある。作動機構42cは、支持アーム42により第1の基板10を保持しつつ、スペーサ部42bを挿入する方向又は引き抜く方向(矢印A方向)及び第1の基板10を支持しつつ、第1の定盤40に引きつける方向及び離す方向(矢印B方向)にスペーサ部42bを作動させる構成となっていれば、設計に応じた任意好適な構成の機構でよい。支持アーム42の水平方向及び垂直方向伸縮機構42cは、所定の方向に所定の指定した距離だけ前進又は後退できるように、微調整可能に構成されていればよく、その構成自体は従来既知の任意好適な構成を用いればよい。すなわち、水平方向及び垂直方向伸縮機構42cは、この発明の目的を損なわない範囲で、任意好適な従来公知の構成を適宜選択すればよく、好ましくは例えば、マイクロモータ、サーボモータ、油圧シリンダ等のいずれかの手段で構成するのがよい。
【0066】
基板保持機構42は、この構成例では水平方向及び垂直方向伸縮機構42cが天板01に接続される構成としてある。しかしながら、基板を保持することができることができれば、他の構成、例えば第1の定盤40等に設けてもよい。
【0067】
ここで、図2及び図3を参照して、基板押圧機構70が具える押圧ピン71と、この押圧ピン71を格納する格納室70aの構成例及びその動作、すなわち基板保持動作及び基板押圧動作につき説明する。
【0068】
図2(A)は、第1の基板10を、基板保持機構42が第1の定盤40に密着させて保持する動作を説明するために図1(B)と同じ位置で貼り合わせ装置を切断した切り口を示す模式的な図である。図2(B)は、図2(A)中の符号Hで囲まれた部分領域を拡大して示す部分拡大図である。
【0069】
図3(A)は、第1の基板10を押圧する動作を説明するために、図2(A)と同様に、図1(B)と同じ位置で貼り合わせ装置を切断した切り口を示す模式的な図である。図3(B)は、図3(A)中の符号Hで囲まれた部分領域を拡大して示す部分拡大図である。
【0070】
第1及び第2の基板10及び12には、ディスプレイパネルとして完成したときに表示領域となる表示セル領域32と表示セル領域32の外側を囲む周辺領域30を形成するための境界を設定しておく。ここで、第1及び第2の基板10及び12の互いに対向している側の基板面を内側面とし、この内側面とはそれぞれ反対側の基板面を上述と同様に外側面と称する。
【0071】
第1の基板10は、その外側面が、第1の定盤40の基板接触面40aに密着するように、スペーサ部42bに保持される。このとき、第1の基板10は、第1の基板10の下面側の表示セルとなるべき領域、すなわち表示セル領域32の外側に位置する周辺領域30に、支持アーム42を作動させて、この例では東西南北の4方向から4つのスペーサ部42bを挿入する。そして、第1の基板10は、スペーサ部42bの上面に接するように、載置される。
【0072】
ここでいう周辺領域30とは、実際の表示に利用されない表示セル周縁のマージン領域である。表示セル領域32とは、デバイスとして完成したときに画像表示を行うこととなる領域である。
【0073】
この発明の第1の基板10及び第2の基板12には、例えばガラス基板、フレキシブルなプラスチック基板、エポキシ樹脂基板のいずれかの基板等を適用できる。
【0074】
次いで、第1の定盤40に設けられた第1の基板保持用吸排気口44a及びこれに接続されている第1の基板保持用吸排気手段46aである真空ポンプにより、第1の定盤40の基板接触面40aと第1の基板10の外側面との間隙(図1(B)に符号h2で示してある高さに相当する。)の空気を真空引きする。このとき、支持アーム42を、水平方向及び垂直方向伸縮機構42cにより垂直方向に作動させる。すると、第1の基板10は、第1の定盤40の基板接触面40aに第1の基板の外側面が吸着されて保持される。
【0075】
このようにすれば、第1の基板10を、第1の定盤40に密着させて安定に保持することができる。すなわち、第1の基板10は、特に基板の中心部に撓みが発生することなく第1の定盤40に吸着して安定に保持される。
【0076】
ここで、格納室70a及び押圧ピン71の構成につき、図2(B)を参照して説明する。
【0077】
上述した円筒形状の空間である格納室70aの上側端部(以下、天井とも称する。)には、この構成例では天板01の開口01aに連通する第1開口部70bが形成されている。
【0078】
格納室70aの下側端部(以下、底部とも称する。)には、第2開口部70cが形成されている。これら第1及び第2開口部70b及び70cは、円筒形状の格納室70aの天井及び底部を画成する円よりも小さい径(幅)とされている。
【0079】
これら第1及び第2開口部70b及び70cを含む格納室70a内には、押圧ピン71が格納される。
【0080】
押圧ピン71は、厚さの薄い円筒形状、すなわち円盤状であって、当該円盤の側面全周に窪み72aが設けられている基部72を含んでいる。この基部72は、例えばステンレス鋼等の金属(合金)、プラスチック又は樹脂といった任意好適な材料により形成することができる。好ましくはステンレス鋼(例えば、JIS規格 SUS304)とするのがよい。また、基部72の径d2は、格納室70aを画成する壁面に沿って、垂直方向に押圧ピン71が移動できる程度の径とすればよい。すなわち、格納室70aの径d1は、基部72の径d2よりも若干大きくするのがよい。
【0081】
窪み72aには、気密保持部材76が巻き付けられるように格納されている。この気密保持部材76は、例えば、ゴムパッキンといった弾性を有する部材により構成するのがよい。この気密保持部材76は、常時、格納室70aの壁面にその全周が接触し、かつ接触した状態を保ったまま壁面上を垂直方向に摺動することができるようにその大きさ(太さ及び径)を考慮して、基部72と組み合わせる。従って、押圧ピン71、すなわち基部72の上面と、格納室70aの壁面とにより画成される空間は、この気密保持部材76により気密な空間とされる。以下、この空間を単に気密空間73とも称する。
【0082】
基部72の下面側には、ピン部74が設けられている。ピン部74は、基部72の下面に対して垂直方向に延在する棒状の部材により構成されている。このピン部74の先端は、第1の基板10に接触してこれを押圧する。ピン部74の径は、ディスプレイパネルの基板、シール材の材質、ピン部自体の強度、押圧力等を勘案して任意好適な径とすることができるが、好ましくは、例えば、0.5〜3mm径程度の円柱状部材とすればよい。
【0083】
ピン部74は、上述した基部72と一体として形成することができる。また、ピン部74の材質を基部72と異なる材質として、すなわち別体として形成し、これらを組み合わせて押圧ピン71として構成してもよい。
【0084】
また、ピン部74の先端部は、接触する第1の基板10の損傷を防止するために、滑らかな曲面として形成するのがよい。好ましくは、例えば半球状とするのがよい。
【0085】
図1(A)に示すように、このような構成の押圧ピン71を具えた基板押圧機構70は、第1の基板10又は第2の基板12に設けられているシール材14の直上に位置するように、複数個が設けられている。これら複数個の基板押圧機構70は、好ましくは、それぞれ互いに等間隔に設けるのがよい。隣接する基板押圧機構70同士の間隔、すなわちピン部74のピッチは、貼り合わせ工程に必要な押圧力の程度、ピン部74が基板面に押圧する際の押圧力の分散程度等の条件を考慮して決定されるが、好ましくは5mmから40mmの範囲とするのがよい。
【0086】
また、これら複数の基板押圧機構70には、単一の系統の基板押圧用吸排気手段78、すなわち単一の真空ポンプを接続して、複数の押圧ピン71を同一のタイミングで同調させて動作させる構成とするのがよい。
【0087】
このようにすれば、複数の押圧ピンを押す圧力を均一にすることができるので、基板の撓みを防止しつつ、セルギャップを高精度に設定することができる。また、装置をより簡易な構成とすることができるので、装置の小型化及びコストダウンにも貢献する。
【0088】
図中、基板押圧用吸排気手段78から延びる複数の配管により複数の基板押圧機構それぞれを接続する例を示したが、これに限定されず、例えば、定盤40内に、一端が基板押圧用吸排気手段78に接続されている配管の他端が接続される気密室(図示せず。)を設け、各基板押圧機構70と気密室とを相互に接続することで押圧力を制御する構成としてもよい。
【0089】
上述したように、第1の基板10は、第1の定盤40の基板接触面40aに吸着されて保持される。このとき、格納室70aの気密空間73も、基板押圧用吸排気手段78及びこれに接続されている配管により真空引きされる。この真空引きにより、押圧ピン71全体は、格納室70a内に格納される。すなわち、押圧ピン71は、そのピン部74の先端部が、基板接触面40aから露出しないように、格納室70a内に格納される。
【0090】
すなわち、この構成例では、押圧ピン71の全長(図中、垂直方向の高さ)h6は、格納室70aの高さh3と、格納室70aの底部70dから基板接触面40aまでの高さh8の和とに等しくしてある。従って、このとき、ピン部74の先端部は、基板接触面40aと同じレベルとなっている。
【0091】
図2(B)に示す状態、すなわち第1の基板10の保持状態においては、ピン部74の先端部は基板接触面40aから突出しないように、押圧ピン71全体を設定する。このとき、ピン部74の先端部は、好ましくは第2開口部70c内に位置するように設定するのがよい。このようにすれば、格納室70a内での押圧ピン71の挙動を安定させることができる。
【0092】
基部72の厚さ(高さ)h4は、格納室70aの高さh3よりも小さい。従って、高さh3のうち、基部72の厚さh4が占める高さを除く高さh5が、押圧ピン71、すなわち基部72の下面の格納室70a内での移動距離であるストロークh5となる。
【0093】
図3(B)に示すように、この構成例では、押圧ピン71のストロークh5は、基板接触面40aからピン部74が突出する突出長、すなわち、ピン部74の先端部の移動距離である押圧ストロークh2及び気密空間73の最大の高さに等しくなっている。
【0094】
従って、図1(B)及び図3(B)に示す押圧ストロークh2は、格納室70aの高さh3、基部72の高さh4、及びピン部74の長さh7を設定することにより、任意好適な所定のストロークとして調節することができる。
【0095】
図2(B)に示すように、基板保持状態では、気密空間73(図3(B)参照。)は消滅し、押圧ピン71、すなわち基部72の上面71aは、格納室70aの天井に接触して固定される。このようにして、第1の基板10を第1の定盤40に保持する。
【0096】
次いで、図1(B)に示すように、第2の基板12を、第1の基板と離間させた状態で、第1の基板10と対向させて、第2の定盤48に載置する。
【0097】
第2の基板12は、第1の基板10と同様に第2の基板保持用吸排気口44b及びこれに接続されていて、第1の基板保持用吸排気手段46aと同様の構成を具えた第2の基板保持用吸排気手段46bにより第2の定盤48に吸着させて保持する構成とするのがよい。
【0098】
第1の基板10と第2の基板12との間の端縁部内側領域空間には、周辺領域30及び表示セル領域32を形成するように、周辺領域30と表示セル領域32とを隔てるための硬化前の柔軟なシール材14を予め設けてある。シール材14は、表示セル領域32が途切れることのない連続した壁により形成するように配置されている。
【0099】
また、この例では、シール材14を、第2の基板12に施してあるが、これに限られず、特に液晶媒体の注入工程が必要のない有機EL表示パネルの場合には、第1の基板10に設けてもよい。
【0100】
このシール材14には、好ましくは従来から使用されている、例えばグラスファイバー繊維等をスペーサ材として含有する紫外線硬化型又は熱硬化型シール材を使用するのがよい。このようにした場合には、このスペーサ材の厚さ(高さ)によりセルギャップが決定されることになる。しかしながら、シール材14は、この発明の目的を損なわない範囲で、任意好適なスペーサ材、及び当該スペーサ材を含有するシール材を適宜選択することができる。
【0101】
従って、シール材14は、貼り合わせ工程前に、所定のセルギャップh1よりもその厚みを多少大きくして配置することが好ましい。すなわち、後述する基板の押圧及びシール材14の硬化工程の終了時に、所定のセルギャップと等しい厚さとなるように基板に設けておくのがよい。しかしながら、シール材が硬化工程で膨張する等の性質を有することが予めわかっている場合にはこの限りではない。
【0102】
そして、従来技術として説明した、図示されていないX軸作動機構、Y軸作動機構、回転作動機構及びCCDカメラ等を使用して、2枚の基板の精密な位置合わせを行う。第1及び第2の基板10及び12の対向面は互いに実質的に平行になるように調節される。
【0103】
次いで、特に液晶表示パネルの場合には、必要ならば、シール材14により画成される表示セル領域32にスペーサ粒子等のスペーサ材(図示せず。)を散布する。この場合には、このスペーサ材の厚さ(高さ)によりセルギャップが決定されることとなる。
【0104】
さらに、液晶表示パネルの場合には、第1及び第2の基板10及び12を貼り合わせる前に、図示されていない液晶注入装置で、液晶媒体を第2の基板12のシール材14により囲まれた表示セル領域32となる基板内面に注入する。
【0105】
然る後、第1の定盤40及び第2の定盤48のいずれか又は両方を上述した各作動機構を用いて作動させることにより、第1及び第2の基板10及び12の内側面同士の間隙を狭めていき、シール材14を介して、第1及び第2の基板10及び12を重ね合わせる。このとき、スペーサ部42bの下面を第2の基板12の内側面に接触させる。
【0106】
次いで、第1の基板保持用吸排気手段46a(図1(A)参照。)による真空引きを解除して、常圧に戻す。このようにして、第1の基板10の基板接触面40aに対する密着を解除する。このとき、基板支持アーム42のアーム部42aを水平方向及び垂直方向伸縮機構42cにより少し伸長させ、同時に基板押圧用吸排気手段78による真空引きを解除する。
【0107】
さらに、図3(A)及び(B)に示すように、基板押圧用吸排気手段78により、格納室70a内に空気又は不活性ガス等の気体を送り込んで、押圧ピン71を押し下げることにより気密空間73を形成する。このとき、ピン部74の先端は、基板接触面40aから押圧ストロークh2だけ突出して、第1の基板10に接触し、これを押圧する。この押圧工程により、これら2枚の基板10及び12はシール材14により隙間無く気密に重ね合わせられる。また、スペーサ部42bの厚さ、シール材14に含有されるスペーサ材又は散布されたスペーサ材により規定されるセルギャップh1を得る。
【0108】
押圧力、すなわち気密空間73の圧力の程度は、格納室70aの径と、その配置間隔、すなわち押圧ピン71のピンピッチ、適用されるシール材14の物性等を勘案して、厚めに設けられているシール材14を押し込んでセルギャップh1を設定するのに十分な圧力とすればよい。
【0109】
然る後、シール材硬化手段60による紫外線照射、加熱又は冷却によりシール材14の硬化を行う。このとき、好ましくは、気密室73の圧力は維持した状態でシール材14の硬化を行うのがよい。また、好ましくは、スペーサ部42bを挿入した状態で、シール材14の硬化を行うのがよい。
【0110】
シール材14の硬化工程は、常法に従い、紫外線硬化型シール材の場合には紫外線照射を、熱又は冷却硬化型シール材の場合には加熱又は冷却を行い、2又は3以上の種類のシール材を組み合わせる必要がある場合には、それぞれ必要な手段及び工程を組み合わせて行えばよい。
【0111】
以上の工程により表示パネルの貼り合わせが完了する。
【0112】
上述の説明においては、シール材14の直上に相当する第1の基板10の外側面を複数のピン部74により押圧する例を説明したが、この発明の目的を損なわないことを条件として、シール材14の直上領域、シール材14により画成される表示セル領域32に相当する第1の基板10の外側面及び当該表示セル領域32外の領域である周辺領域30に相当する基板10の外側面のいずれか、又はこれらを組み合わせた領域に相当する第1の基板10の外側面を、複数のピン部74により押圧する構成としてもよい。
【0113】
また、この構成例では、スペ−サ部42bは、塊状の直方体ブロックであって、厚みはセルギャップh1に実質的に等しく一定としてある。この構成例では、矩形の基板を使用しているので、スペ−サ部42bの厚みより広い間隔の基板間にスペーサ部42bを挿入し、かつ第1の基板10の下側を東西南北の4つの方向から支持している。
【0114】
しかしながら、第1の基板10の支持は、ディスプレイパネルの品質を損なわないことを条件として、例えば対向する2方向のみからスペーサ部を挿入して行ってもよい。或いは、例えば基板の複数の角隅部、例えば4箇所又は対向する2箇所の周辺領域30にスペーサ部42bを挿入して第1の基板10を保持してもよい。
【0115】
この発明の貼り合わせ装置及び貼り合わせ方法は、今後液晶表示セル作製工程において主流となるであろうと予想される、いわゆる「滴下液晶注入」工程を含む液晶表示パネルの製造工程及び有機EL表示パネルの製造工程に適用して特に好適である。また、液晶媒体を第1及び第2の基板の貼り合わせ後に注入する従来の基板の貼り合わせ工程にも使用して好適である。
【0116】
この第1の実施の形態の貼り合わせ装置の構成によれば、単一の真空吸排気系により同調して、すなわちそれぞれの押圧ピンが同一のタイミングで、同一のストロークで、駆動される複数の押圧ピンを用いて柔軟に、かつピン毎に均一な圧力で基板面を押圧するので、基板面の加圧を伴う貼り合わせ工程における基板の撓みを効果的に防止することができる。従って、より正確にセルギャップを制御することができる。
【0117】
<第2の実施の形態>
図4を参照して、この発明の第2の実施の形態につき説明する。
【0118】
図4は、この発明の貼り合わせ方法に使用して好適な貼り合わせ装置の全体構成例を示す図である。
【0119】
この実施の形態の貼り合わせ方法は、気密にして真空にすることができる処理室50内に第1及び第2の定盤を格納して、第1の基板10と第2の基板12との間隙、すなわち周辺領域30の空間と表示セル領域32の空間とを、真空にして、貼り合わせ工程を実施するディスプレイパネル基板を貼り合わせる工程を含むことを特徴としている。
【0120】
すなわち、この実施の形態の貼り合わせ装置は、第1の基板10と第2の基板12との間隙、すなわち周辺領域30と表示セル領域32とを真空条件にして貼り合わせを行うための気密の処理室50を画成する構成を含んでいる。この処理室50は容器状又は箱状の構造体(以下、単に箱状体52と称する。)により気密に構成される。そして、この箱状体52は、処理室50を常圧から真空へ又は真空から常圧へ任意自在に変化させるための圧力調整手段を含んでいる。
【0121】
この構成例では、圧力調整手段とは、上述した基板保持用及び基板押圧用吸排気手段と同様の真空排気系である。この構成例では、処理室50は、直方体の1面が開放されている箱状体52を伏せることにより画成される気密の空間である。箱状体52の開放端部には、この開放端部の末端上に全周をとりまく箱状体気密保持部材58が設けられている。この気密保持部材58は、弾性を有する素材により形成されるOリング、パッキン等の従来公知の構成を適用することができる。この構成例では、気密保持部材58、すなわち、箱状体52の解放端部をベース板02の上面に隙間なく接触させて気密の処理室50を画成する。
【0122】
この箱状体52と、ベース板02とは、基板及び貼り合わせ工程終了後の構造体の受け渡しを行うために、着脱自在とされるか、又は箱状体52に受け渡し用の開閉自在な窓部を設けておくのがよい。
【0123】
この箱状体の材質は、必要な真空度に応じた従来公知の任意好適な材質を選択すればよい。
【0124】
箱状体52は、処理室用吸排気口54と、例えば圧力調整弁等を具えた配管(図示せず。)を介して当該吸排気口54と接続されている処理室用吸排気手段56とを含んでいる。処理室50内は、処理室用吸排気手段56により、常圧から真空へ、又は真空から常圧へ自在に調整できる構成とされる。
【0125】
上述した基板保持用、基板押圧用及び処理室用吸排気手段を構成する真空ポンプ近傍には、例えば防塵、水分除去、有機溶媒等の除去のための例えばフィルターのような手段が設置されることが好ましい。
【0126】
また、処理室50内では、既に説明したのと同様の種々の基板駆動機構、特に第1の基板10を保持する支持アーム(基板保持機構)42及び図示されていないが従来技術の項で説明した上下昇降手段、X軸駆動機構、Y軸駆動機構及び回転駆動機構等の駆動を行えるように構成する。
【0127】
次に貼り合わせ工程につき説明するが、第1の実施の形態と同様の構成及び工程についての詳細な説明は、省略する場合もある。
【0128】
第1の定盤40は、処理室50で、上述と同様に、第1の基板10を保持する。
【0129】
第1の基板10及び第2の基板12のいずれかの基板上には、周辺領域30及び表示セル領域32を形成するように、予めシール材14が設けられているものとする。
【0130】
然る後、処理室50の排気を行って、真空にする。この真空排気処理を、処理室用吸排気口54と、図示されていない圧力調整弁等を具えた配管を介して、接続された処理室用吸排気手段56を使用して行う。
【0131】
また、好ましくは第1の基板10の落下を防ぐために、第1の基板10を第1の定盤40により支持するための吸引力(真空度)よりも処理室50の吸引力(真空度)が弱くなるように設定するのがよい。すなわち、第1の定盤40の基板吸着面40aと第1の基板10との間隙(h2)の真空度を、処理室50の真空度よりも高くして、第1の基板10を基板接触面40aと密着させるのが好ましい。
【0132】
そして、シール材14を介して第1の基板10と第2の基板12とを密着させて、重ね合わせる。
【0133】
然る後、第1の基板10を第1の定盤40側に密着させていた真空を解除する。そして第1の実施の形態と同様に押圧ピン71を作動させて、基板を押圧することでセルギャップh1を設定しつつ、2枚の基板を貼り合わせる。
【0134】
次いで、シール材14を硬化した後にスペーサ部42bを引き抜く。シール材14がシール硬化により、寸法に変化を生じないか、又は変化を生じたとしても支障をきたさない範囲内の変化であって実質的に変化を生じないならば、あるいは表示セル領域32にスペーサ粒子等を配して、これによりセルギャップを決定する場合には、スペーサ部42bを引き抜いた後にシール材14を硬化する。
【0135】
ここで、本明細書中、用語「常圧」とは、この発明の装置をとりまく大気圧を表し、用語「真空」とは、空気を吸引排気することにより大気圧よりも圧力の低くなった状態をいう。この真空の程度は、空気を排気するときの吸引力により比較される。この真空の程度は、上述したように目的及び構成に応じて適宜設定することができる。
【0136】
この第2の実施の形態の装置及び貼り合わせ方法によれば、特にその製造に使用される材料が湿気及び酸素に弱い有機ELパネルの製造工程において、パネル品質に大きな影響を与えるこれらの要因を排除しつつ、簡単な工程で正確なセルギャップ制御を行うことが可能になる。
【0137】
この発明の貼り合わせ装置では、基板が帯電破壊されるのを防ぐために、基板が接する部分のすべてが絶縁性の素材で形成されることが好ましい。
【0138】
さらに、この発明の貼り合わせ装置にイオンシャワーのような静電除去手段を装備することが好ましい。あるいは、処理室内壁に、例えばアルコールなどの溶剤を適度に塗布しておくことにより、基板の帯電を効果的に防止することができる。
【0139】
さらにこの発明の貼り合わせ装置によれば、第1の定盤40定盤及び/又は第2の定盤48が石英で構成された定盤であって、さらに硬化手段として紫外線照射装置を具えることが好ましい。
【0140】
さらにまたこの発明の貼り合わせ装置によれば、第1の定盤40及び第2の定盤48とが金属で構成される加熱又は冷却定盤であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
この発明のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法及びその実施のための装置によれば、液晶ディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネルといった2枚の基板を貼り合わせるディスプレイパネルの製造に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】第1の実施の形態の説明図である。
【図2】貼り合わせ装置による基板の保持動作の説明図である。
【図3】貼り合わせ装置による貼り合わせ動作の説明図である。
【図4】第2の実施の形態の貼り合わせ装置の構成例の説明図である。
【図5】従来の基板貼り合わせ工程及び貼り合わせ装置を説明するための要部の概略的な模式図である。
【符号の説明】
【0143】
01:天板
01a:第1の開口
02:ベース板
10、110:第1の基板
12、112:第2の基板
14、114:シール材
30:周辺領域
32:表示セル領域
40、142:第1の定盤
40a:第1の基板接触面
42:支持アーム(基板保持機構)
42a:アーム部
42b:スペーサ部
42c:水平方向及び垂直方向伸縮機構
44a:第1の基板保持用吸排気口
44b:第2の基板保持用吸排気口
46a:第1の基板保持用吸排気手段
46b:第2の基板保持用吸排気手段
48、144:第2の定盤
48a:第2の基板接触面
50:処理室
52:箱状体
54:処理室用吸排気口
56:処理室用吸排気手段
58:箱状体気密保持部材
60:シール材硬化手段
70:基板押圧機構
70a:格納室
70b:第1開口部
70c:第2開口部
70d:底面
71:押圧ピン
71a:上面
72:基部
73:気密空間
74:ピン部
76:気密保持部材
78:基板押圧用吸排気手段
132:X軸駆動機構、134:Y軸駆動機構
136:回転駆動機構、138:上下昇降機構
160:加圧シリンダ
162:θテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1及び第2の基板間に挟まれた空間に表示セル領域空間及び該表示セル領域空間を囲む周辺領域空間を形成するように前記第1及び第2の基板のいずれかにシール材を介在させて、第1の定盤側に保持された第1の基板と第2の定盤側に保持された第2の基板との位置合わせを行うディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、
(1)前記第1の基板の、前記表示セル領域空間を形成する面とは反対側の外側面と、前記第1の定盤との間隙を真空にして前記第1の基板を前記第1の定盤側に吸引保持する工程と、
(2)前記第1の基板の前記外側面を、該外側面と接触する前記第1の定盤から空気圧により突出する複数の押圧ピンにより押圧して、前記第1及び第2の基板を貼り合わせる工程と、
(3)前記シール材を硬化する工程と
を含むことを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項2】
請求項1に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、
前記(2)工程は、複数の押圧ピンが、単一の吸排気手段が発生させる空気圧により同調して作動することにより行われる工程であることを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、
前記(2)工程が、前記第2の基板の、前記表示セル領域空間を形成する面とは反対側の外側面と、第2の定盤との間隙を真空にして前記第2の基板を前記第2の定盤側に吸引保持する工程をさらに含むことを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、
前記(2)工程は、シール材の直上に配置される前記複数の押圧ピンが、前記第1の基板を押圧する工程であることを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、
前記(2)工程は、前記第1の基板と第2の基板とを接近させ、かつ前記表示セル領域空間が前記シール材により密閉されていない状態で、前記表示セル領域空間を真空として行うことを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、
前記(1)から(3)工程を、内部を真空にすることが可能な処理室内で行い、該処理室の圧力を常圧と真空との間で変化させる工程をさらに含むことを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、
前記(2)工程は、第1及び第2の基板の間隙の気圧を、その外部の気圧と比較して、前記シール材が破裂しない程度に低く維持した状態で、第1及び第2の基板を合わせた後に、押圧力を付加する工程をさらに含むことを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、
前記表示セル領域空間又は前記処理室全体を真空にするための空気の吸引力を、前記第1及び第2の基板を前記第1及び第2の定盤にそれぞれ密着させるための空気の吸引力よりも小さくすることを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法において、前記シール材の硬化を紫外線照射により行うことを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ方法。
【請求項10】
第1及び第2の基板をそれぞれ保持する第1の定盤及び第2の定盤を具え、該第1及び第2の基板をシール材を介在させて貼り合わせるためのディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置において、
前記第1の定盤は、前記第1の基板の外側面と接触する基板接触面から空気圧により突出して前記外側面を押圧する複数の押圧ピン、該押圧ピンを格納する格納室、及び該格納室に接続されていて前記格納室内に前記空気圧を発生させる基板押圧用吸排気手段を含む基板押圧機構と、前記第1の基板を支持するスペーサ部、該スペーサ部を支持するアーム部、該アーム部を伸縮するための水平方向及び垂直方向伸縮機構を含む基板保持手段とを具えていることを特徴とするディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。
【請求項11】
前記押圧ピンは、円盤状であって、当該円盤の側面全周に窪みが設けられている基部と、窪み全周を取り巻いて設けられている気密保持部材と、前記基部に設けられている棒状のピン部とを具えていることを特徴とする請求項10に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。
【請求項12】
前記ピン部は、ステンレス鋼により形成されていることを特徴とする請求項11に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。
【請求項13】
前記複数の押圧ピンは、単一の吸排気手段が発生する空気圧により作動する押圧ピンであることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。
【請求項14】
前記複数の押圧ピンは、貼り合わせ対象の基板に設けられるシール材の直上に所定の間隔で配置されていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。
【請求項15】
前記第1の定盤の前記基板吸着面に設けられていて、前記第1の基板の外側面を吸着保持する複数の吸排気口と、該吸排気口に接続されている基板保持用吸排気手段をさらに具えていることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。
【請求項16】
前記第2の定盤の基板吸着面に設けられていて、前記第2の基板の外側面を吸着保持する複数の吸排気口と、該吸排気口に接続されている第2基板保持用吸排気手段をさらに具えていることを特徴とする請求項15に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。
【請求項17】
前記第1及び第2の基板を格納する貼り合わせ用の処理室と、
該処理室を常圧と真空との間で変化させるための圧力調整手段とを含むことを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。
【請求項18】
前記第1の定盤及び第2の定盤の双方またはいずれか一方が石英定盤であり、かつ、前記シール材の硬化手段として、紫外線照射装置を含むことを特徴とする請求項10〜17のいずれか一項に記載のディスプレイパネル基板の貼り合わせ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−119286(P2006−119286A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305925(P2004−305925)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000115588)ランテクニカルサービス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】