説明

基板上の固体層の形成

【課題】第一固体層(first solid layer)上に第二層(second layer)を形成するための化学反応を活性化することのできる第一固体層を基板の表面に形成する方法を提供する。
【解決手段】この方法は基板の表面と、硬化性組成物及び第二層形成の化学反応のための活性化剤を含む第一液を接触させ、そして硬化性組成物を硬化させて基板の表面へのその材料の付着度を増し、それにより基板の表面に第一固体層を形成して付着させ、第二流体(second fluid)と接触させた後に第二層の形成の化学反応を活性化させうることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上の固体層の形成、これに限定されるものではないが、特に金属イオンの還元により基板上に伝導性金属領域を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
工業上の応用において、基板の表面にある材料の固体層を形成することが望まれる場合は数多い。例えば、応用例において伝導性金属層を形成することが望まれる場合は多岐に亘り、プリント基板、携帯電話のアンテナ、高周波識別装置(RFID)、スマートカード、電池及び電源供給の接点、フラットスクリーン技術の一連のコンタクト(液晶画面、発光ポリマーディスプレイ等)、生物及び電気化学センサーの電極、スマート繊維(smart textile)及び装飾用目的等がある。
【0003】
本明細書においては、文意より他の意味に解されない限り、固体層、又は固体基板という文意での形容詞「固体」は、固相(液体、またはガスではなく)にあるものを指す。固体層または基板は、塑性があり、弾力性があり、弾性があり、硬く、粘着性があり、浸透性がありまたは固相と両立するあらゆる特性を持つ。
【0004】
本応用例の幾つかにおいては、形成された固体層はその表面を覆う場合がある。他の応用例においては、固体層はパターン化され、パタ−ンの細部の正確性、及び細かさが重要になってくることもある。例えば、プリント基板は銅の導電路が微妙なパターンを作ることがある。細部の正確性、及び細かさはそのようなプリント基板上での縮小化の可能な範囲、及びそこに作られる電子回路の信頼性を決めるものとして重要である。
【0005】
基板の表面に固体層を形成する方法のいくつかにおいては、触媒または他の活性化剤が必要となる。例えば、無電解めっきプロセスは、基板の表面に伝導性金属皮膜層を塗るという長年用いられた溶液化学塗布技術であり、基板の表面形状は平板、または起伏があってもよい。無電解プロセスでは基板は各浴槽に順次連続して浸される。
【0006】
基板の表面に銅の層を形成する無電解プロセスの例には以下のものがある:
まず、プラスチック基板の表面に銅が良く付着するよう、プラスチック基板表面を顕微鏡的に腐食させるために基板を68+−2℃のクロム酸/濃硫酸槽で腐食させる。
【0007】
次に、プラスチック基板表面に残っているあらゆる6価クロム種を約50℃で、約30%の濃縮塩化水素を含む浴槽で中和する。プラスチック基板はその後第三番目の浴槽に入れられ、プラスチック基板表面が次のステップにおいて触媒を吸収することができるように活性化剤が添加される。第三の浴槽は通常、室温に保たれた約30%濃度の濃塩酸槽である。
【0008】
次にプラスチック基板はスズ塩とパラジウムコロイドの希釈液を含む第4の浴槽に浸けられる。後のめっき工程で銅の堆積を促進するためにプラスチック材の表面にコロイドを堆積する。この浴槽は高い比率のスズ塩、約30%の濃縮塩酸を含み、室温で管理されている。
【0009】
プラスチック基板が浸される第5の浴槽は、吸収されたパラジウムを活性化する促進剤を含み、それにより迅速かつ均一な堆積の促進を図る。促進剤を含む浴槽は約30%の濃塩酸を含んでいる。
【0010】
最後に、活性化されたプラスチック基板はめっき液を含む第6の浴槽に浸され、プラスチック基板上のパラジウムコロイドの触媒作用により、銅がプラスチック基板の触媒に覆われた部分に堆積する。めっき液は銅塩、還元剤としてのフォルムアルデヒド、及びフォルムアルデヒドを活性化する水酸化ナトリウムを含む。めっき液の組成物は慎重に温度管理する必要があり、いくつかの商業的に適用可能な組成物の温度は45+−2℃が適当である。
【0011】
上記の化学反応例では、銅の層の形成には触媒が必要であり、また結果物の金属層が基板に付着するのを助けるために酸の事前処理工程が重要となる。
【0012】
この化学反応に対しては種々の代替方法が知られている。
【0013】
例えば、WO2004/068389 には基板上に伝導性金属領域を形成する方法が記載されており、基板上に金属イオンの溶液を堆積させること、及び基板上に還元剤の溶液を堆積させることを含んでいる。その場合、金属イオン及び還元剤は反応液において共に反応し、基板上に伝導性金属領域を形成する。幾つかの実施形態においては、伝導性金属領域の形成反応を開始するために触媒または他の活性化剤が必要となる場合がある。一般的には、触媒は基板表面に対して用いられ、その後その触媒の作用により基板表面に金属を堆積させる化学組成物と接触させる状態に置かれる。
【0014】
例えば、インクジェット印刷においては、高分子結合材を含む溶液中に触媒を適用する形で用いて、金属形成反応を行うために基板の上に触媒を堆積させることはよく知られている。例えば、エチルセルロースの様な結合材の使用について開示するWO 02/099162を参照願いたい。
【0015】
US6,495,456は、光活性触媒液(組成は記載されていない)を用いて、液体の照射された部分を(可能なら選択的に、例えば、マスクを用いて)活性化するために基板に光を照射し、そして活性化された部分に無電解めっきにより金属を形成することを含むプロセスによってチップ基板に電極を形成することを開示する。
【0016】
紫外線照射及び他の方法を用いて基板上に堆積された酢酸パラジウムをパラジウム金属に還元し、それに続いて銅の無電解めっきを行うことは知られている。パターン化された触媒を生産するため、還元はコンタクトマスクを使って選択的に行うことができる。代替的に、赤外線処理により生産されたパラジウムは、金属コンタクトマスクを使いエキシマーレーザー切除によりパターン化されることもある。Zhang et al 「無電解銅めっき用の酢酸パラジウムフィルムのVUV光誘導分解」(VUV light-induced decomposition of palladium acetate films for electroless copper plating)、Applied Surface Science 109/110 (1997) 487-492 及び Estrom 「IR及びエキシマVUVフォトンを用いたポリマーへの高速選択的な金属の堆積」(Fast selective metal deposition on polymers by using IR and excimer VUV photons)、Applied Surface Science 168 (2000) 1-4。
【0017】
US3,900,320 はプラスチックまたはセラミックベース材を金属化するプロセスを開示する。パラジウム塩のような触媒金属化合物を含むプレープレート液(pre-plate solution)、一又は二以上のポリマーのようなバインダー材及び溶媒がベース(基剤)に塗布され、乾燥させされて約20から約3000オングストロームの薄いポリマー層を形成し、その後に無電解めっき液に接触させることにより直接めっきされることもある。プレプレート液は特定の粘度特性と触媒金属化合物としての特定の高濃度水準を持つ。感光性樹脂の成形物は回路基板、印刷版等のような基板上に写真によるめっきパターンを生成するのに特に適したプレープレート液の構成物として用いることができる。
【発明の開示】
【0018】
本発明は、第一固体層(first solid layer)上に第二層(second layer)を形成するための化学反応を活性化することのできる第一固体層を基板の表面に形成する方法を提供する。この方法は基板の表面と、硬化性組成物及び第二層形成の化学反応のための活性化剤を含む第一液を接触させ、そしてその方法は硬化性組成物を硬化させて、基板の表面へのその材料の付着度を増し、それにより基板の表面に第一固体層を形成して付着させ、第二流体(second fluid)と接触させた後に第二層の形成の化学反応を活性化させうることを含む。
【0019】
硬化性組成物は化学的変化により硬化し、好ましくは凝固するものであることが望ましい。硬化プロセスは材料の付着度を増し、堅く、塑性があり、伸縮性があり、弾性があり、粘着性があり、浸透性がありまたは液状あるいは気相と対立するものとしての固相と両立する他のあらゆる特性を持つ固体層(第一固体層)を形成する。固体層は液体状、または気体状の部分を含むこともある。
【0020】
したがって、硬化性組成物においては結果物の第一固体層は基板に付着するものであり、基板を考慮して選択される。付着は化学結合、物理的結合、機械的結合またはこれらの混合により起こりうる。従来技術の非硬化性触媒液による場合に比較して、硬化性組成物の使用により広範囲の異なる基板に対して付着度が改善されている。
【0021】
硬化性組成物は、その組成物が液状の状態にある間に基板表面に接触させ、そして硬化させる。それに代り、硬化性組成物は硬化する前に、例えば乾燥等により固体の形に変えることはできるが、硬化は、通常硬化性組成物がまだ液状である場合に起こる。
【0022】
活性化剤は、通常封入(entrapment)、固定化(immobilization)または他の手段により第一固体層に組み入れられ、通常硬化した組成物により形成されるマトリクス内の第一固体層全体に分散する。活性化剤はこのように第一層(first layer)に含まれることにより基板に付着する。
【0023】
硬化性組成物は通常、硬化し、好ましくは凝固することとなる反応をすることのできる一又は二以上の化学組成を含んでいる。
【0024】
好ましくは、硬化性組成物は一又は二以上のモノマー(monomer)及び/またはオリゴマー(oligomer)を含むのが良い。これらは使用することにより重合化し及び/または交差結合(cross-link)し、それにより硬化し、固体層を形成する。好ましくは、結果生成物は活性化剤を含むマトリクス、通常ポリマーマトリクスを形成するものが良い。少なくともいくつかのオリゴマーを含む硬化性組成物は、モノマーのみしか含まれない場合に比べしばしば毒性が低い場合がある。また、少なくともいくつかのオリゴマーが含まない場合は、柔軟性、硬度、及び摩擦抵抗性などの物理的特性が改善された第一層を作り出すことができる。
【0025】
硬化性組成物は適切な硬化条件に反応して硬化する。例えば、組成物は特定の波長帯の電磁照射(紫外線、青色、マイクロウエーブ、赤外線等)、電子線、または熱のような刺激により硬化することがある。組成物は、また、これ以外に適当な化学的条件、特に化学的硬化剤または硬化剤が存在する場合には反応し硬化することがある。この場合に、「2パック」アプローチが採られることもある。すなわち、第一液においてある化学成分が用いられ、第二化学成分が別途に(同時に、あるいは逐次的に)用いられる場合である。さらに他の可能性として、組成物は湿気、または空気のような種類の物の存在に反応して硬化する場合がある。好ましくは、硬化性組成物は上記した一又は二以上刺激に反応するようなものを選択するのがよい。ここでは紫外線により硬化する組成物が好ましい。
【0026】
大々的な、または相当な加熱が必要とされないような第一液を用いるのが好ましい。これにより、本発明による方法においては熱に弱い(heat-sensitive)プラスチック材料を含む広範囲の基板を使用することができるからである。特に、第一層は約300℃未満(ポリイミド基板(polyimide substrate)の使用を可能にする)の温度で形成されるのが好ましく、望ましくは約200℃(Teonexのようなポリエステル基板の使用を可能にする−(Teonex は商標である))、さらに望ましくは約100℃未満(広範囲の熱可塑性プラスチックの使用を可能にする)、さらに望ましくは約50℃未満(低Tg基板の使用を可能にする)及び、加熱を必要としない室温での形成が望ましい。加熱が必要である場合比較的短時間であるべきで、通常15分未満、工程の効率を考えると約2分未満であるのが好ましい。
【0027】
通常硬化性組成物はポリマーを形成しうる一又は二以上のモノマー及び/またはオリゴマー、及び上で検討したように、刺激に反応して重合化(polymerization)を開始する開始剤(initiator)を含んでいる。適当な開始剤は当業者によく知られている。例えば、過酸化ベンソイル(benzoyl peroxide), 過酸化ロリオール(lauryol peroxide), アゾビス-(1-ヒドロオキシシクロヘキサン(azobis-(1-hydroxycyclohexane)、またはAIBN (2,2’-アゾビシソブチロニトリル、2,2’-azobisisobutyronitrile) (全てPolysciences, Inc.,USA製) は熱に反応して重合化を開始するものとして含めることができる。Darocur 1173 (2-ヒドロ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-ワン、2-hydro-2-methyl-1-phenyl-propan-1-one)、Irgacure 184 (1-ヒドロオキシ-クロロヘキシルフェニル-ケトン、1-hydroxy- chrolohexylphenyl-ketone), Irgacure 369 2ベンジル−ジメチルアミノ‐1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンー1)(2-benzyl-2- dimethylamino-1- (4-morpholinophenyl)- butanone-1)、Irgacure 651 (2、2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−ワン、2,2-dimethoxy-1,2-diphenylethan-1-one), Irgacure 2959 (1-[4-(2-ヒドロオキシエトキシ)−フェニール]−2−ヒドロキシー2−メチルー1−プロパンー1−ワン、(1- [4- (2-hydroxyethoxy)-phenyl]-2-hydroxy-2-methyl-1-propane -1-one)、Irgacure 819 及び Irgacure 1700 (Darocur 及び Irgacure は商標である) はUV光開始剤(photo-initiator)の例であり、Chiba Speciality Chemicals, Manchester, UK及びBasel, Switzerlandより入手可能である。通常、そのような開始剤は刺激に対して反応する遊離基(free radical)を生み出す。開始剤が刺激に反応して陽イオン(cation)を発生させるエポキシ、ビニルエーテル、及びビニルエステルのような陽イオン硬化剤を用いる他の硬化プロセスも使用することができる。
【0028】
都合の良いことには、モノマー及び/またはオリゴマーはUV硬化インク、または他の硬化インクの分野において知られており、インクジェット印刷の硬化インクとして提案されたものである。適当なUV硬化剤には、アクリレート、メタアクリレートを含み、特に交差結合官能基の数により分類される以下のリストに含まれるものがある:
単官能基:
イソボルニルアクリレート(Isobornylacrylate (IBOA))、例えば、SR506D
オクチル デシル アクリレート(Octyl decyl acrylate (ODA))、例えば、 SR484
カプロラクトン アクリレート(Caprolactone acrylate)、例えば、SR495
ラウリル アクリレート(Lauryl acrylate)、例えば、SR335
二官能基:
トリプロピレン グリコール ジアクリレート(Tripropylene glycol diacrylate (TPGDA))、例えば、Actilane 424
1,6−ヘキサンジオール ジアクリレート(1,6-hexanediol diacrylate (HDDA))、例えば、Actilane 425
ジプロピレングリコール ジアクリレート(Dipropylene glycol diacrylate (DPGDA))、例えば、SR508
プロプオキシレート(2)ネオペンチル グリコール ジアクリレート(Propoxylated (2) neopentyl glycol diacrylate (PONPGDA))、例えば、SR9003
トリシクロデカン ジメタノールジアクリレート(Tricyclodecanedimethanol diacrylate (TCDDMDA))、例えば、SR833S
ポリエチレン グリコール400ジアクリレート(Polyethylene glycol 400 diacrylate (PEG400DA))、例えば、SR344
三官能基:
トリメチロール プロパン トリアクリレート(Trifunctional propane triacrylate (TMPTA))、例えば、Actilane 431
エトキシレート(3)トリメチロール プロパン トリアクリレート(Ethoxylated (3) trimethylol propane triacrylate)、例えば、SR454
エトキシレート(6)トリメチロール プロパン トリアクリレート(Ethoxylated (6) trimethylol propane triacrylate)、例えば、SR499
四官能基:
アクチレン505(テトラファンクショナル ポリエステル アクリレート オリゴマー)(Actilane 505 (a tetrafunctional polyester acrylate oligomer))
エトキシレート ペンタエリチリトール テトラアクリレート(Ethoxylated pentaerythritol tetraacrylate (PPTTA))、例えば、Actilane 440
ジメチロールプロパン テトラアクリレート(Ditrimethylolpropane tetraacrylate (di TMPTA))、例えば、Actilane 441
6官能基:
ジペンタエリチリトール ヘキサアクリレート(Dipentaerythritol hexaacrylate (DPHA))、例えば、Actilane 450
Actilane の範囲についてはAkzo Nobel, The Netherlandsより入手可能である。Actilane は商標である。
【0029】
SR の範囲はSartomer, USAより入手可能である。
【0030】
上記のアクリレートは全て、例えば、Irgacure 819, 及びIrgacure 1700のように開始剤から生成される遊離基に反応して硬化する。代わりに固体のモノマー及び/またはオリゴマーを使用することができるが、上記のアクリレートは全て液状である。
【0031】
モノマー及び/またはオリゴマ−のいくつかは(その全てではない)少なくとも3つの交差結合可能な官能基、例えば、3官能基、4官能基、及び6官能基を持つ上記リストの材料から選択される官能基を持つことが好ましい。そのような材料を使用することにより、より少ない交差結合可能な官能基を持つモノマー及び/またはオリゴマ−から形成されるポリマーよりも、交差結合度の高いポリマーの生産が可能となり、基板への付着力のより強い、より丈夫なフィルムを作ることができる。しかし、より高度の交差結合が可能なモノマー及び/またはオリゴマ−(少なくとも3つの交差結合可能な官能基をもつ)の割合が多すぎると、表面がもろくなり勝ちであるため避けるべきであろう。さらに、そのようなより高度の交差結合が可能なモノマー及び/またはオリゴマ−の割合が多くなりすぎると、硬化性組成物の粘度が余りに高くなりインクジェット印刷用には不適当になる。
【0032】
一般的に、交差結合可能な官能基の数が増えるにつれて、モノマー及び/またはオリゴマ−の粘度が高くなり、モノマー及びオリゴマ−内の使用に適した割合が小さくなる。適当な指標として、3官能基をもつ材料の割合は第一液の全モノマー及び/またはオリゴマ−の重量の75%を超えず、4官能基もつ材料の割合は第一液の全モノマー及びオリゴマ−の重量の35%を超えず、6官能基をもつ材料の割合は第一液の全モノマー及びオリゴマ−の重量の10%を超えないようにするべきである。
【0033】
本発明の方法は、都合の良いことに第一固体層の上に第二層を形成することを含んでいる。したがって、本方法は好ましくは更に、第一固体層と、活性化剤に活性化されて化学反応し第二層を形成する一又は二以上の試薬を含む第二流体を接触させることを含む。第二流体は第一層の活性化剤と接触して反応し、第一固体層上に第二層を形成する。
【0034】
第一固体層は必ずしも第二流体が適用される以前に硬化を終えている必要はない。材料の第二固体層は通常固形であり、第一層の活性化剤を含む種々の異なるプロセスにより形成される伝導性金属層であるのが都合が良い。プロセスは通常金属イオンの還元を含み、上で触れた無電解めっきプロセス、またWO2004/ 068389に開示されているプロセスを含む。
【0035】
本発明により可能となった第一層の基板表面への付着度の向上は、上記の通り、そのような伝導性金属層の付着を改善し、気泡や基板からの層の剥離を起こすことなく例えば、銅のような厚い金属層を作り出すことを可能とする。
【0036】
基板表面の層中に活性化剤が存在するため、通常第二流体中での細かい金属粒子の形成反応よりも、例えば、金属化(metallisation)の様な第二の反応が第一層上または第一層中で起こるであろう。第二流体は、第一固体層に同時または逐次に適用される一又は二以上の成分の形をとることこともある。
【0037】
第一層は基板の表面に直接付着する必要はなく、一又は二以上の、その間に介在する層があっても良い。さらに、第二層が最上部にあることや、または最終層である必要はなく、さらに一又は二以上の層がその上に形成されても良い。
【0038】
本発明の方法により、ある指定の第二層にとり基板の選択幅が、またその逆も同様であるが、そうでない場合に比べより大きく広がる。第一固体層が基板によく付着するように、また第二層が第一固体層によく付着するように、適当な第一液を選択することにより、第二層は、ある場合には第二固体層(second solid layer)が直接基板に付着する場合よりも、基板により確実に取り付けられる(affix)場合がある。これによりある指定の第二層にとり基板のより広い選択幅が生まれ、及び/または活性化剤が異なる技術により適応される場合よりもより厚い第二層が形成されうる。
【0039】
活性化剤は、金属化反応を触媒するパラジウムのような触媒であることが好ましい。しかし、活性化剤はこれに代わって第二層が化学反応を起こすように活性化することができる化学種を含んでもよいが、活性化剤はプロセスにおいて消費されまたは反応するため、厳密に言うと触媒とはいえない。
【0040】
活性化剤は代替的に、その試薬を第二固体層形成化学反応の成分(好ましくは他の成分)を含む第二流体に接触させた場合に、第一固体層上に第二層を形成することになる化学反応する一又は二以上の試薬を含んでも良い。
【0041】
活性化剤は前駆体(precursor)の形をとるかもしれない。この場合本発明の方法にはさらに、化学的に一又は二以上の前駆体試薬を活性化し、または触媒の形に変換するステップを含むこともある。例えば、酢酸パラジウムはその本来の位置において、続いて適用される還元剤溶液により還元され、適当な第二流体が加えられた場合に金属パラジウムを形成して、その上に金属を堆積することを触媒することができる。
【0042】
第一固体層は、基板表面の殆んどまたは全ての部分を覆うこともある。代替的に、第一固体層はあるパターンに従い基板上に形成されることもある。これは幾つかの方法により達成される。例えば、第一液は所望のパターンによる印刷、特にインクジェット印刷によるパターンに従い堆積されるかもしれない。代替的に、第一固体層は第一液が堆積された後にパターン化されるかも知れない。例えば、第一液は基板全体に亙り適用され、パターンに従い選択的に硬化され、そして硬化されない液は除去される。パターンに従い選択的に硬化される場合は、上で検討したように、例えばUV照射のような刺激に対する露出を制限するために、液体又は固体層に対するシャドウマスク、または固体層に対するコンタクトマスクの様なマスクを使用することにより達成することができる。レーザーによる書き込み(特定の開始剤に対して適当な波長のレーザーを用いる)及び電子ビームによる書き込みも使用することができる。電子ビーム書き込みでは光開始剤は必要ではなく、この方法では10nmオーダーの非常に細かい特徴を持つパターンを作り出すのに使用することができる。更に化学硬化剤を用いる場合には、硬化薬剤または硬化剤は所望するパターンに応じて選択的に適用されうる。全ての場合において、過剰な(硬化されない)材料は、酸、アルカリ、または溶剤などの適当な試薬中で洗浄により、霧吹き散布により、その液中に浸す等の技術により、またはエアーナイフ(air knife)のような物理的手段により除去することができる。
【0043】
基板上に堆積した活性化剤が軟らかく且つ流状のままの液体として堆積していた場合には、その程度に応じて不可能であったパターン化が硬化性組成物を用いることにより可能となる。
【0044】
第一液は広い範囲の技術により基板表面に広範囲に適用することが可能であり、それらの技術には、ジェット印刷、インクジェット印刷、スピンコーティング、ディップ(dip) コーティング、スプレイコーティング、エアロゾルスプレイ、ローラコーティング、カーテンコーティング、スクリーン印刷、リソ(litho)印刷, フレクソ(flexo)印刷、グラビア印刷及びパッド(pad)印刷のような、印刷技術、ディッピング技術、スプレーイング技術及びスピン技術、または他のいかなる液状体の応用技術も含まれる。
【0045】
好ましくは、第一液は例えば、印刷プロセス等の堆積プロセスにより基板に接触させるのが良い。好ましくは、堆積プロセスは、例えば、インクジェット印刷のような、好ましくはデジタルである非接触プロセスであるのがよい。第一液は好ましくは、例えば、単一液の容器からのインクジェット印刷のように単一液であるのがよい。
【0046】
印刷プロセスでは、通常は厚さが300nmより大きく、またおそらくこれより極めて厚さの大きい第一固体層を生成するであろう。
【0047】
第一液は、通常は液状であり、好ましくは部分的にまたは全体として非水溶性液であるが、代替的に固体またはコロイド状の一又は二以上の成分を含む懸濁液(suspension)、又は分散液(dispersion)の形、又は乳濁液(emulsion)の形であることもある。第一液の異なる成分は異なる形で存在することもある。第一液は通常、部分的にまたは全体が非水溶性であるのが望ましい運搬液(carrier liquid)(これは例えば、活性化剤のような溶剤として機能することもある)を含む。好ましい非水溶液については以下に検討する。運搬液は、例えば上で検討したように、液状であれば一又は二以上の硬化性モノマー及び/またはオリゴマ−により構成されるか、または運搬機能のみを果たす別の液体(硬化性組成物の部分ではない)により構成されることもある。
【0048】
第二流体は、好ましくは液状であり、また第二液(second liquid)もそうであるのが良い。
【0049】
第二液は溶液の形であることもあり、好ましくは、水溶性液であるのが良いが、代替的に固体またはコロイド状の一又は二以上の成分を含む懸濁液(suspension)、分散液(dispersion)の形、または乳濁液(emulsion)の形であることもある。このように第二液は、通常運搬液(carrier liquid)(これは溶剤として機能することがある)を含む。第二液の運搬液は好ましくは水を含むのが良い。
【0050】
第一液は、運搬液が部分的に溶解し、またはそうでなければ基板に浸透し、その結果第一固体層の基板に対する付着力を増し、第一液が基板に浸透するように基板に対して十分働き掛ける運搬液を含み、そしてまた(第一固体層を通して)第二層の基板に対する付着力を増すようなものが望ましい。
【0051】
第一液及び第二液は、好ましくは異なる運搬液を含むのがよい。そうすることにより第一層の形成、及び第一層の基板への付着に適した第一液の運搬液が選択され、また第二層形成に適した第二液の運搬液が選択されうる。好ましくは、第二液の運搬液は水であるのがよい。このように水性金属化反応(aqueous metallization chemistry)及び非水性の第一段階は同じプロセスの異なるステップを用いることができる。好ましくは、第一液の運搬液は部分的にまたは全体として非水性であるのが良い。
【0052】
通常印刷の質及び付着は、圧倒的に第一液及びそれにより形成される第一固体層の特性により決定される。したがって、本発明では、ある程度第一液は要求されるパターンの品質により選択され、及び第二流体は第二層の所望される特性により選択されることとなる。そのため特定の用途に適した、適当な第一液及び第二流体の化学組成をデザインする場合においての柔軟度を増すことができる。
【0053】
第一液は第二流体の湿気特性に比べて、一又は二以上の基板において向上した湿気特性を持つものが選択されることもある。そうすることにより、第一液が第二流体と同じ運搬液(例えば、水)から適用された場合よりも、より正確な、精密なパターンを得ることができ、細かい特徴を出すことができ、及び端の輪郭がより鮮明となるであろう。活性化剤が湿気特性の劣る運搬要素を用いる異なる技術により表面に適用された場合に比べて、通常、第一液が流出したり(bleed)また滲み(feathering)が起きるのが減るであろう。湿気特性が改善することにより、より正確な、より精密なパターンが実現され、線に沿った液の連続する点(spot)が互いにさらに分離して堆積されうる(インクジェット印刷のような技術により)ため、液の使用容量が減り、またより狭い線幅及びより微細な特徴の達成が可能となる。
【0054】
このように、活性化剤を含む第一液を用いることは、基板上に材料を堆積するインクジェット印刷の場合には特に有益である。多くの硬化性液はインクジェット印刷の使用に適した適当な粘度を持ち、良好なプリントヘッド動作を示す。インクジェット印刷液に適した粘度は、通常印刷ヘッドの稼動温度において1から20cPsの範囲である。
【0055】
この工程は、多層構造を作り上げるために繰り返される(任意的に、異なる第一液及び第二流体を用いることもある)。
【0056】
第一固体層は、国際出願PCT/GB2004/004589に開示されているように、好ましくは少なくとも第二流体中で部分的に不溶である第一化学官能基を含んでいるのがよい。このことは、第二流体に接触して第二層が形成される間に第一層の物理的な一体性が維持されることを意味する。これにより基板表面との関係において第二層の付着度が改善する結果となる。第一化学官能基は第二流体中で完全に不溶解である必要はないが、好ましくは、この効果を達成するために十分な程度に非溶解であればよい。したがって、第一化学官能基は、第二層が形成される間、第一層の一体性を保つことができる程度に十分に第二流体中で非溶解であればよい。
【0057】
第二流体は、上記で触れたように水性であるのが好ましく、そしてめ第一化学官能基は好ましくは、少なくとも部分的に水に非溶解であるのがよい。第一化学官能基は第一液及び第一層にも存在するかも知れない、あるいは例えば、交差結合により、第一液の中の反応物質(これは恐らく第二流体に溶けるであろう)から第一層中に形成されることもある。第一化学官能基は好ましくは、セラミックでないのが良い。第一化学官能基は、プラスチック基板の様な広範囲の有機基板に対して、改善された付着効果を得るために重量で少なくとも50%の有機材料、及び/またはシリコン材料を含む、少なくともその殆どがまたは完全に有機材料、及び/またはシリコン材料をベースにするものが良い。第一化学官能基は第二流体を吸収して膨張することもある。第一化学官能基は、例えば、第一液中の一又は二以上の硬化性モノマー及び/またはオリゴマ−のような硬化性組成物の反応生成物により構成されることもある。そのような材料は第一液に含まれ、適当な溶解特性を持って反応し第一層にポリマーを形成することもある。ポリマー製品はまた、金属、ガラス、セラミック及びプラスチック材料を含む非常に広範囲の基板に対し良好な付着性を示す。このように、第一液は、第一層に第一化学官能基を構成し、または第一化学官能基を形成する一又は二以上の成分を含んでいるのが望ましい。
【0058】
国際出願PCT/GB2004/004589に開示されているように、第一液の構成物としては、第二流体を第一固体層に接触させた場合に第一固体層が第二流体に浸透するようなものが選択されるのが好ましい。我々は、そうすることにより第一固体層の効果的な活性化、及び触媒活性が著しく改善することを発見した。特に、第二流体は第一固体層に浸透して、第二流体が第一固体層中の活性化剤に接近することができる。第二層形成反応はこのように基板表面上で、または表面に近いところで起き、基板上に望ましい材料の第二層を作り出すのである。さらに、第二流体の第一固体層へ浸透することにより材料の第二層が第一固体層と混ざり、付着した第一固体層を通して、材料の第二層の基板への付着力を増大させ、層を通した導電性(第二層が導電性を持つその最上部表面から基板表面まで)が改善することとなる。
【0059】
したがって、国際出願PCT/GB2004/004589に開示されているように、第一層は第二流体で少なくとも部分的に可溶である、混和が可能である、または膨張するあるいは第二流体に浸透する第二化学官能基を含むことが好ましい。第二流体は、上記した通り、水性であるのが好ましく、そして第二化学官能基は少なくとも水に部分的にも可溶であり、または水中で膨張し、あるいは水に浸透することが好ましい。第二化学官能基は第一液、及びまた第一層にも存在するものである、または第一液の反応物質から第一層に形成されるかもしれない。適当な第二化学官能基については以下に検討するが、ポリビニル ピロリドン(polyvinyl pyrrolidone, PVP)を含み、この物質は可水溶性であり、また第一液の成分として含まれることもある。第二化学官能基は第二流体中で少なくとも部分的に溶解し、または膨張し、あるいは第二流体に浸透するものであり、そうすることにより流体が第一固体層に浸透し、活性化剤に接触することができる。第一化学官能基は、基板及び第二層に付着するという一体性を十分保持し、その結果「スポンジ様」の構造を採る。それにより、そうでない場合に比べて活性化剤に対しての接触がより可能となり、より低濃度の活性化剤を利用することができ、その結果経費節減が可能となる。特に、硬化性組成物の活性化剤に対する重量比が15:1より大きく、好ましくは25:1より大きい第一液を使用することが可能となる。第一液中の活性化剤の割合の低い第一液を使用できることにより、例えば、粘度や溶媒の選択等のような第一液の構成をより自由に選択することが可能となる。
【0060】
したがって、第一液は、第二流体中で少なくとも部分的に可溶である、または混和が可能である、あるいは第二流体に浸透が可能である第二化学官能基を第一層に構成部分として持ち、または形成する一又は二以上の成分を含むことがある。好ましい第二化学官能基のひとつはポリビニルピロリドン(polyvinyl- pyrrolidone, PVP)であるが、この物質は可水性である。他の官能基には
(ポリアクリル酸(polyacrylic acid), ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate), ポリエチレン イミン(polyethylene imine), ポリエチレン オキシド(polyethylene oxide), ポリエチレン グリコール(polyethylene glycol), ゼラチン(gelatin)、またはそれのコポリマー(copolymers)を含む。第二流体が第一固体層に接触すると可溶組成は溶解する。例えば、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)は、第一固体層上に伝導金属領域を形成するために用いることができる金属イオン及び還元剤の水溶液に接触して溶解する(下記を参照願いたい)。結果物の固体層中のポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)は重量の約5%が適当である。
【0061】
第一液は代わりに(または、同様に)、HEMA (2−ヒドロオキシエチル メタアクリレート、2-hydroxyethyl methacrylate), GMA (グリセリル メタアクリレート、glyceryl methacrylate) または NVP (n-ビニル ポリビニルピロリドン、n-vinyl pyrrollidinone)のような水で膨張するモノマー及び/またはオリゴマ−を含んでいても良い。これらの代わりに自身で第二流体内で、及び/または重合化した際に膨張する他のモノマー及び/またはオリゴマ−も使用することができるであろう。そうすることにより第二流体が第一固体層に浸透し、付着力を向上させ、第一固体層の表面に単に活性化剤が存在する場合に比べてより多くの活性化剤に接近することが可能となる。
【0062】
第一液は代わりに(または、同様に)、第二液と混和する高沸点の溶剤を含んでいても良く、この場合この高沸点の溶剤は第一固体層に液状のままに残るであろう。例えば、第二液が水溶性である場合はNMP (n-メチル ピロリジノン n-methyl pyrrollidinone)を用いることができる。そうすることで第一層のマトリクスに第二液が浸透することを許し、第二層の第一固体層に対する付着度を向上させることができる。他の適合する溶媒にはエチレングリコール、ジエチレン グリコールまたはグリセロールが含まれる。
【0063】
第一液は代わりに(又は、同様に)、微小孔フィルム構造を作る微小孔粒子を含むこともできる。微少孔粒子は有機(例えば、PPVPポリ ポリビニルピロリドン(poly(polyvinylpyrrolidone))又は無機(例えば、シリカ)のいずれでも良い。
【0064】
第一化学官能基の第二化学官能基に対する重量比は、好ましくは約5:1、より好ましくは約10:1、最も好ましくは15:1より大きいのが良い。第一化学官能基を相対的に多く用いると基板に対する付着力が向上し、硬化が速くなり結果として第一固体層の耐久性が増し、第一液の構成に、より柔軟性を持たせることができる。
【0065】
第一液は、揮発性があり基板に対して適用された後に、部分的にまたは全部が蒸発する運搬液(carrier liquid)を含んでいてもよい。例えば、第一液は水または、第二流体を第一層に接触させる前に、使用中に蒸発してしまう(好ましくは)一又は二以上の有機溶剤を含むこともある。この場合の方法には、(もし可能なら)刺激剤を適用し、及び第二流体を第一層に接触させることの何れか一方、またはその双方を行う前に揮発性の運搬液を蒸発をさせるための小休止を取ることを含むこともある。運搬液のいくらかが第一固体層に液状で残り、第一層マトリクスをオープンにすることは好都合かもしれない。
【0066】
しかしながら、好ましくは第一液の堆積と硬化の間に相当の遅延が生じないことが必要であり、その場合は乾燥または事前硬化(pre-curing)ステップは必要ない。これにより像(image)の鮮明度のロスを引き起こす基板の過湿潤(over-wetting)を減らすことができる。好ましくは、堆積と硬化の間の遅れは20秒以下であるのが良い。さらに硬化プロセス自体は非常に素早く、通常1秒以下で実施することが可能であり、それにより像の品質(image quality)をコントロールすることができる。
【0067】
運搬液がモノマー及び/またはオリゴマ−の液体である場合には、実質的に第一液の全ての組成分は、たとえ化学的に変化した形であったとしても第一固体層に残っていることもある。
【0068】
活性化剤はまた第一液に含まれているので、活性化剤は通常は例えば、ポリマーにより形成されたマトリックスの形で第一層内に閉じ込められるであろう。活性化剤はまた例えば、モノマーまたはオリゴマ−単位と反応する反応基を持つ分子上に活性化剤を含むことにより、マトリクスの部分として固定化されていることもありうる。活性化剤は最初は不活性であるが、第一液が硬化されて後に始めて、または刺激に反応して、または第二流体の組成分と接触して活性化されることもある。
【0069】
本発明は、特に第二固体層としての、伝導性金属の層の生成に応用することができる。伝導性金属層は通常、触媒、金属イオン及び還元剤を含む反応において金属イオンを還元することにより形成される。無電解めっき及びWO2004/ 068389に開示されているプロセスを含む種々の異なる技術を用いることができる。そのプロセスでの一つの試薬、通常は触媒であるが、本発明の方法により基板上の第一層中に堆積され(通常インクジェット印刷により)、また他の必要な試薬は第二流体中(及びおそらく他の一又は二以上の媒体中)に(インクジェット印刷、浸漬(immersion)または他の手法により)堆積され、そして第二固体層を構成する伝導性金属層を形成する反応を起こす。
【0070】
第二層が、金属イオン及び還元剤の反応により形成される金属伝導性領域である本発明の実施の形態においては、活性化剤は都合の良いことには、通常は触媒または触媒先駆体である金属または金属含有材料を含む。適している金属として、プラチナ、銀、パラジウム、イリジウム、青銅、アルミニウム、金及び銅のコロイドまたは粒子のような金属コロイド、又は粒子を含む。適している金属含有材料としては伝導性金属の塩または複合物を含み、好ましくは、遷移金属、特にパラジウム、プラチナ、及び銀の塩を含むのが良い。塩は塩化パラジウムのような無機塩、または、例えば、酢酸パラジウム(palladium acetate)またはプロピオン酸パラジウム(palladium propanoate)のような有機塩であることもある。好ましい有機塩はアルカノアーテス(alkanoates)である。ここでの好ましい活性化剤は酢酸パラジウムである。硬化性組成物の活性化剤の金属部分に対する重量比は約15:1、好ましくは、25:1より大きいことが望ましい。
【0071】
遷移金属の有機酸塩例えば、酢酸パラジウムの堆積に適した溶剤にはジアセトンアルコール(diacetone alcohol)、ジアセトンアルコール(diacetone alcohol)とメタオキシ プロパノール(metahoxy propanol)の重量比50:50の混合物、及びトルエン(toluene)とメタオキシ プロパノールの重量比50:50の混合物を含む。共溶媒(co-solvent)は、インクジェット印刷に適したレベルに粘度を増すため含むのが良い。例えば、酢酸パラジウムの様な塩は堆積される液の重量の1から3%の範囲の量、好ましくは、約2%含まれるのが良い。
【0072】
活性化剤が触媒または触媒前躯体である場合は、第二流体は、共に反応し活性化剤により活性化され、第一固体層上に伝導性金属領域を形成する金属イオン及び還元剤を含む液であるのが都合が良い。第二流体の組成物は、好ましくは、それが自然に反応するものでなく、第一固体層に存在する活性化剤を接触させた場合に初めて反応するものであることが好ましい。第二流体はさらに、還元剤を活性化する酸または塩基のようなpH変更試薬を含むこともある。
【0073】
金属イオン、還元剤及び任意選択的な塩基/酸は、基板上で混合し反応液を作り出す2または3の別々の構成液に含まれても良い。更なる詳細はWO2004/ 068389に記載の通りである。
【0074】
第二層形成の化学反応は、触媒または触媒前躯体ではなく、伝導性金属領域を形成する金属イオンと還元剤の間の反応である場合には、活性化剤は酸、または塩基のような一又は二以上の金属イオン、還元剤またはpH変更試薬であることもある。第二流体は、それが第一層に接触したときに第二層形成反応が開示されるようなものであろう。活性化剤が金属イオン、通常は金属塩または金属複合体(そして、またおそらく酸/塩基も)を含む場合には、第二流体は還元剤を、例えば、ホルムアルデヒドの場合の塩基の様な適当なpH調整試薬と共に含むこともある。第二流体はまた同じ、または異なる金属のイオンを追加的に含むこともある。活性化剤は金属粒またはコロイドであってもよい。活性化剤が還元剤 (そして、おそらくまた塩基または酸)を含む場合には、第二流体は、通常金属塩又は金属複合物として金属イオンを含むのが好ましい。第二流体はさらに、第一の還元剤と同じまたは異なる還元剤を更に含むこともある。最初にDMAB(ジメチルアミンボラン、dimethylamineborane)のようなより強力な還元剤を用い、その後により純粋な、より伝電度の高い金属層を生み出すフォルムアルデヒドのような還元力の弱い還元剤を使うのが適当であろう。活性化剤がpH変更試薬を含む場合には、第二流体は、通常の場合金属イオン、還元剤、及び任意選択的にさらにpH変更試薬を含む。
【0075】
金属イオンはどの伝導性金属のイオンであっても良いが、特に遷移金属が良い。好ましい伝導性金属には、銅、ニッケル、銀、金、コバルト、白金族金属、またはこれらの二以上よりなる合金が含まれる。伝導性金属は非金属要素を含んでも良く、例えば、伝導性金属はリン化ニッケル(nickel phosphorus)であっても良い。
【0076】
金属イオンは通常は、例えば硫酸銅のような塩の形である。金属イオンは、またこれに代わりEDTA (エチレン ジアミン テトラ酢酸、ethylene diamine tetra acetic acid) またはシアン化合物 (cyanide)の様な錯体(complex)中に存在するかも知れない。
【0077】
適当な還元剤の例として、フォルムアルデヒド、グルコース、他の殆どのアルデヒド、 次亜リン酸ナトリウム(sodium hypophosphite)、グリオキシル酸(glyoxylic acid)または DMAB(ジメチルアミンボラン、dimethylamine- borane)がある。
【0078】
任意選択的に、基板は第一液がその上に堆積する前に余熱されることがある。そうすることにより、液は迅速に乾燥して広がることが少ないため線を細くすることができる。例えば、Melinexポリエステル基板(Melinexは商標である)は高熱エアーガンを用いて350℃の空気で4秒間熱しても良い。
【0079】
好ましくは、第一液はインクジェット印刷により基板上に堆積されるのが良い。第二流体はインクジェット印刷、または他の技術を用い第一層の上に堆積される。第一液及び/またはその結果物である第一層がパターン化される場合は、第二流体は同じパターンに従い堆積されるかもしれない。
【0080】
インクジェット印刷プロセスは、通常デジタルコントロールされており、同じ機器を用いて異なったパターンを異なった基板に対して描くことができる。これは特に、一回限りの製品、注文製品、または各々区別可能であるユニークな製品シリーズの生産にとっては重要である。
【0081】
基板は、プラスチック、セラミック、天然の材料、繊維等を含む広い範囲から選択が可能である。第二層が伝導性金属である場合の実施の形態においては、適当な基板には、例えばシート状であるプラスチック材料、繊維が含まれる。基板はその上に、導電性材料、半伝導性材料、抵抗材料、蓄電材料、誘電性材料などの電気部品、または液晶、発光ポリマー等の光学材料を載せることもある。上記のように、本発明の方法では相当な加熱を必要とすることもないため、熱に弱いプラスチック材料を含め広範囲の基板に対し用いることができる。本発明の方法では結果物の基板に伝導性金属領域を形成する前に、一又は二以上の電気部品を基板に、好ましくは、インクジェット印刷によって堆積するステップを含むこともある。
【0082】
同様に、本発明の方法はさらに、生成される伝導性金属領域上に電気部品を堆積して、複合デバイス(complex device)を作り上げるステップを含むこともある。さらにこの堆積ステップはまたインクジェット印刷技術を用いて行っても良い。
【0083】
本発明は特に電池の配線において応用される。本発明の方法により基板上に異なる伝導性金属の2つの領域を形成することにより基板上に電池が形成され、電解質(これはインクジェット印刷により印刷されるかもしれない)により2つの領域を電解的に結ぶことにより電気化学電池が形成される。
【0084】
複数の電気化学電池が電気的に直列、または並列に連結されることにより利用可能な電圧及び/または電流を上げることができる。本発明はまた本発明の方法によって、1つの基板上に異なる伝導性金属の2領域を形成し、電解質(これはインクジェット印刷により印刷されるかもしれない)により2つの領域を電解的に結ぶことにより電池を形成する方法を含む。本発明の範囲にはこの方法により形成される電池が含まれる。
【0085】
このように、本発明の方法は電気品の製造の一段階として用いることができる。特に、ピクセルの複雑なパターンを含むディスプレイのような複雑なパターンを有する電気品の製造に適している。他の応用分野には以下の製品の製造を含む。すなわち、自動車ラジオ、携帯電話、及び/または衛星航行システム等の各アンテナ;無線通信周波数シールド機器;エッジコネクタ、回路基板の接点及びバスコネクタ;無線通信周波数識別タッグ(RFID tag);フレキシブルプリント回路基板を含むプリント回路基板の電導トラック;電気回路を含むスマート テキスタイル(smart textile);装飾品、車のフロントガラスヒーター;電池及び/または燃料電池の部品;セラミック部品;変圧器及び誘導電力供給、特に小型の場合;セキュリティ機器;コンデンサー及びコンダクターのようなプリント回路基板の部品;メンブレーンキーボード、特にその電気接触部分;使い切り品、低価格電子品;使い切り電子発光ディスプレイ;バイオセンサー、機械センサー、化学及び電気化学センサーである。
【0086】
本方法はまた、回路中の、または回路のための2つの部品間の電気配線を作りだすことにも応用できる。
【0087】
本方法はまた、装飾的特徴を生み出すために用いることができる。
【0088】
本方法は、第二層により構成される伝導性金属領域に、例えば、電解または無電解めっきにより、または浸漬金属化(immersion metallization)によりさらに一つの追加金属層を形成するステップを含むこともある。
【0089】
第一液及び/または第二液がインクジェット印刷される場合は、各液は粘度、表面張力、伝導性、pH, ろ過性、粒子サイズ及び経年劣化安定性についてインクジェット印刷用インクとしての特定要件を満たす必要がある。蒸発を抑えるために一又は二以上の組成溶液に一又は二以上の保湿剤が加えられることもある。必要とされるこれらの特性に関する特定の数値はインクジェット技術により異なり、これらの特性を満たす適当な組成溶液は、特定の用途に対して当業者が容易に作り出すことができる。
【0090】
本方法はまた、本発明の方法により造りだされる製品にも適用される。
【0091】
本発明の更なる特徴には、本発明は基板の表面に第一固体層を形成する硬化層形成組成物を含む液を提供する。該液は第二層形成の化学反応を活性化するのに適した活性化剤、及び液が硬化する化学反応(通常ある刺激に反応して)を起こす一又は二以上の化学組成物を含む。
【0092】
本発明はまた、第二流体と組み合わされる活性化剤液を含む。
【0093】
好ましくは、一又は二以上の化学組成物は、重合化して凝固した第一層を形成するモノマー及び/またはオリゴマ−を含む。
【0094】
活性化剤は好ましくは触媒であるのが良い。しかし、活性化剤は、第二固体層が化学反応を起こす様に活性化するが、プロセス中に消費されまたは反応する化学種を含むこともありうる。
【0095】
活性化剤は、第二層形成化学反応の組成物(好ましくは、他の組成物)を含む第二液と接触させた場合に、第一固体層上に第二層を形成する化学反応起こす一又は複数の試薬を含むこともある。
【0096】
遷移金属の有機酸塩を含有させるための適当な溶媒には、ジアセトン アルコール(diacetone alcohl)、重量比で等量のジアセトン アルコールとメトキシプロパノール(methoxyropanol)の混合物、及び重量比で等量のトルエンとメトキシプロパノールの混合物を含む。インクジェット印刷に適したレベルに粘度を増すため、好ましくは共溶媒が含まれるのが良い。遷移金属の有機酸塩は酢酸パラジウムの重量の1−3%であるのが好ましく、最も好ましくは、含有液の重量の2%であるのがよい。等量濃度の遷移金属の他の有機酸塩も用いることができる。
【0097】
好ましい層形成活性剤溶液の特徴については上記で検討した。
【0098】
本発明の更なる特徴として、基板の表面に、その上に第二固体層を形成する化学反応を活性化するのに適した第一層を形成する方法を提供する。この方法には以下のステップを含む;層形成化学反応のための活性化剤を含む硬化性液を基板表面に適用するステップ、及び硬化性液を硬化させそれにより基板表面に第一固体層を形成し、第二固体形成反応を活性化することができるステップである。
【0099】
本発明は、さらに基板上に固体層を形成する方法を含む。その方法は以下のステップが含む。すなわち、層形成化学反応のための活性化剤を含む硬化性液を基板表面に適用するステップ、硬化性液を硬化して、それにより基板表面に第一固体層を形成し、その上に第二固体形成する化学反応を活性化することができるステップ、及び第二固体形成化学反応の組成物を含む第二液を第一固体層に接触させ、活性化剤により活性化することで第一固体層上に第二固体層の形成をするステップである。
【0100】
例証として、本発明をさらに以下の実施例により説明する。以下実施例においては、断らない限りパーセント数値は重量パーセントである。
【0101】
実施例1
ALF116 及びALF117により表示するUV硬化性触媒構成物は下記表1に示す構成により準備された。使用されたモノマー、オリゴマー及び開始剤(initiator)は、関連するUV硬化性インクジェット分野において、優れた硬化特性及びプラスリック基板に対する付着力を持つものとして知られている。これらの構成物は、その液中で酢酸パラジウム触媒が溶解する運搬液として作用するある溶媒(ジアセトン アルコール及びメトキシプロパノール、(diacetone alcohl and methoxy propanol)を含む。溶媒は、Xaar, UKのXJ500/180プリントヘッドを用いてインクジェット印刷によりMelinex(Melinexは商標)ポリエステル基板にこれら組成物を適用した後に蒸発をさせた。インクは、その後UVの適用により硬化を始め、モノマー及びオリゴマ−成分が重合化して硬化した。
【0102】
UV硬化性触媒組成物
(数値は重量パーセント)
【表1】

【0103】
PVP K30はISP, Tadworth, UKより供給されたポリビニル ピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)のあるグレードである。アクチレーン505(Actilane 505)は、Akzo Nobel UV Resins, Manchester, UK より供給されたUV硬化性反応型四官能基ポリエステル アクリレート オリゴマー(UV-curable reactive tertafunctinal polyester acrylate oligomer)である。DPHAはUCB Dragenbos, Belgiumより供給されたジペンタエリチリトール ヘキサアクリレート、UV硬化性六官能基モノマー(UV-curable hexafunctional monomer)である。 Irgacure 819及びIrgacure 1700はCiba Speciality Chemicals, Macclesfield, UKより供給されたUV光開始剤(UV photo-initiators)である(Irgacureは商標である)。DPGDAはUCB Dragenbos, Belgiumより供給されたジプロピレン グリコール ジアクリレート、UV硬化反応性希釈モノマー(UV-curable reactive diluent monomer)である。モノマー及びオリゴマ−は液体状である。ジアセトンアルコール及びメトキシプロパノールは酢酸パラジウムの溶媒である。
【0104】
PVPは水溶性(第二)化学官能基を構成する。モノマー及びオリゴマ−、Actilane 505、DPHA 及びDPGDAは反応して非水溶性(第一)化学官能基を構成するポリマーを形成する。
【0105】
ALF116は良く硬化し(ラインスピードは40m/分)、引っかき傷に対して強いフィルムを作った。しかし、銅層形成溶液(Enplate 872 A (30% w/w), Enplate 872B (30% w/w), Enplate 872 C (10% w/w), t−ブタノール (t-butanol ) (5% w/w), エチレングリコール (ethylene glycol) (20% w/w) 及び ポリエチレングリコール 1500 (polyethylene glycol 1500) (5% w/w)よりなる)がフィルムに適用された場合、銅は堆積しなかった。その理由は硬化したフィルムの表面が滑らかで、不浸透性であるためであり、そのため触媒をプラスチック層に閉じ込め、銅層形成溶液との接触を妨げるためと思われる。
【0106】
Enplate 872A, 872B及び 872Cは銅めっき液であり、Enthone-OMI of Woking, UK、から入手可能である。Enplate 872Aは硫酸銅を含む。Enplate 872B はシアン化物錯化剤(cyanide complexing agent)及びホルムアルデヒドを含む。Enplate 872Cは水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)を含む。(Enplateは商標である)。 Enplate 872 A, B 及びCは無電解銅めっきの組成溶液として普通に用いられる。 エチレングリコール(ethylene glycol)は保湿剤として存在し、表面張力を下げる働きをする。t−ブタノール(t-butanol)は表面張力を下げ湿気を増大させる共溶媒である。ポリエチレン グリコール 1500(Polyethylene glycol-1500)は保湿剤として機能する。
【0107】
これに対して、ALF 117は少量(乾燥フィルムの重量の5%)のポリビニル ピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)を含んでおり、水溶性銅層形成溶液を加えた段階で、ポリビニル ピロリドンが硬化した層から溶出し、または膨張し、または浸透性を保持し、それにより触媒部位(catalytic site)を露出させる目的で組成物に加えられたものである。ALF116の場合と同様に、40m/分の条件で非常に良く硬化し、そしてこの場合は銅が堆積した(計算数値で100nm/分)。
【0108】
基板を60℃で24時間乾燥した結果、プラスチック基板に銅層を直接結合させる方法による最良の触媒組成が示す引っかき傷に対する抵抗力と、同程度の引っかき傷抵抗力特性を持つ材料を得た。
【0109】
以上より、触媒の活性を維持するためには、ある形の水溶性、膨張性または第二液を第一層へ浸透させるための他の手段が必要であることが分かった。
【0110】
実施例2
さらに下記表2に纏めたようにALF120, ALF121, 及びALF124で表示される3つの組成物を準備した。これらは全て表1のAF117の変形である。
【0111】
UV硬化性触媒組成物
【表2】

【0112】
上記実施例1に記載の、ALF120, ALF121, 及びALF124の組成物がMelinex ポリエステル基板に適用された。
【0113】
これらのインクは、H電球を使用したFusion UV 500ワットランプ(Fusion は商標である)を用いて10m/分の速度で1回走行で硬化させた。硬化させた後、インクはDMAB(ジメチルアミンボラン、dimethylamineborane)液により、続いて銅層形成液により処理された。銅層形成液は、Enplate 872A (30% w/w), Enplate 872B (30% w/w), Enplate 872C (10% w/w), t-ブタノール(t-butanol)(5% w/w), エチレン グリコール(ethylene glycol) ( 20% w/w) 及びポリエチレングリコール1500(polyethylene glycol 1500)(5% w/w)よりなる。ALF 120 又は ALF 124では銅は堆積しなかった。しかし、ALF121では均一な銅の層が堆積し、この銅層は伝導性が良く下部の基板に良く付着していた。ALF 120 又は ALF 124では銅は堆積しなかったことより、PVP材料が触媒の活性維持のための主要因であり、またこれは上に述べた可水性の構造を通して起きるものと思われることに対する新たな証明となろう。
【0114】
実施例3
ALF121は、インクジェット印刷によるインクの堆積に良い特性を与えるためにさらに修飾された。そのような2つのインクを、下記表3にALF125, 及びALF126bとして表示する。
【0115】
インクジェット適用UVインク組成物
【表3】

【0116】
ALF125, 及びALF126bは、XaarJet 128-200プリントヘッド(Xaar of Cambridge, UKより入手可能)を用いて共に良いインクジェット印刷特性を示し、上記実施例1及び2に記載の手順に従った結果、Melinexポリエステル基板上に堆積した銅の品質は良いものであった。しかしながら、200nm以上の厚さの銅サンプルを作った場合は、ALF125ではALF126bよりも容易に気泡ができた。
【0117】
この理由は、ALF126bはより高い官能基材料(Actilane 505 は四官能基、DPHAは六官能基)を含み、そのためにより良く交差結合し基板に良く付着して、より強固な、より丈夫なフィルムを形成するためと思われる。
【0118】
この結果に基づき、またPVPをHEMA (2−ヒドロオキシエチル メタアクリレート;2-hydroxyethyl methacrylate), GMA (グリセリル メタアクリレート; glyceryl methacrylate) または NVP (n―ビニル ピロリジノン; n-vinyl pyrrolidinone)のような水膨張性モノマーで置換することも可能と思われる。代替的に、NMP(n―メチル ピロリジノン; n-methyl pyrrolidinone), エチレン グリコール (ethylene glycol), ジエチレン グリコール(diethylene lycol)またはグリセロール(glycerol)のような高沸点の水混和性溶媒は、UV硬化した層をオープンな状態にし銅溶液による浸透を可能とするために用いることができるであろう。代替的に、微小孔のあるフィルム構造を、シリカ(無機)またはPPVP(ポリ ポリビニル ピロリジノンpoly polyvinyl pyrrolidinone)粒子(有機)のような微小孔のある粒子を用いて準備することもできよう。
【0119】
実施例4
ALF126bは、さらにUV硬化性触媒インクが最適効果を生ずるように修飾され、ALF126fとして知られているものを作り出した。これはMelinex (Melinexは商標である)ポリエステル基板上に伝導性銅層を堆積するのに用いられた。ALF126fの組成は次の通りである。
【0120】
ALF126fインクジェットUVインク組成物
【表4】

【0121】
この流体はXJ500/180プリントヘッド(Xaar of Cambridge, Englandより入手可能)により180x250dpiで印刷された。サンプルはその後Fusion 500 ワットH-電球により各20m/分で4回走行し、第一層を形成した。シングルジェットを用いて一行印刷したときの厚さは500nmであった。印刷範囲が広くなると層の厚さは増し、おそらくこの印刷の解像度の場合の理論的な最大値2.9 ミクロンまでになることもあろう。サンプルは脱イオン水中に1.6%ジメチルアミンボレン(dimethylamineborane (DMAB))溶液を含む化学薬品浴槽に沈められ、40℃+−2℃で2分間処理され、その後脱イオン水洗浄され、そして乾燥された。この処理により酢酸パラジウム(palladium acetate)が金属パラジウムに還元され、触媒が活性化された。その後サンプルは、75%脱イオン水及びEnplate Cu 872A, Enplate Cu 872B, 及び Enplate Cu 872Cを重量比で3:3:1よりなる銅層形成溶液で処理された。サンプルは銅層形成溶液に浸され2分間攪拌され、その間、温度管理槽中の温度は45+−2℃に保たれた。
【0122】
ALF126bの場合と同様、ALF126fは良好なインクジェット印刷特性を示し、堆積銅の品質は良好であった。
【0123】
実施例5
ALF126fインクは、12μmドローダウンバー(drawdown bar)を用いてMelinex 339 (Dupon Teijin Films) ポリエステル基板に塗布された。その後液状フィルムは、25ミクロンアルミフォイルにパターン化された開口を通してUV光に曝された。UV光源はH-電球を用いたFusion システムF500を用い、合計0.70J/cm2のUV線量を投与した。フィルムの露光された部分は硬化し、凝固した。露光しなかった部分は液状のままであり、エタノールを用いて容易に洗い流された。さらにUVランプの下で4回走行させた(pass)結果完全に硬化した。
【0124】
フィルムはその後40℃の1.6%のDMAB溶液に2分浸され、洗浄されそして45℃の無電解銅めっき槽(Enplate Cu 872A, Enplate Cu 872B, 及び Enplate Cu 872Cを各重量比で3:3:1含む)に2分間入れられ、再び脱イオン水で洗浄された。露出された部分に金属銅がめっきされたが、非露出部分は被膜されていないままであった。
【0125】
実施例6 レーザーによる直接書き込み
構造は直接レーザー書き込みプロセスを用いて直接書き込まれた。12ミクロンから24ミクロンの間のALF126fインクの液状フィルムが、ドローダウン(drawdown)法を用いてMelinex 339 (MelinexはDupon Teijin Filmsの商標である) ポリエステル基板上に準備された。液状フィルムは直ちにOrbotech DP100 SL 直接レーザー書き込みシステム(Direct laser write system)に入れられた (Orbotech は商標である)。このシステムは355nmで作動する4 W Paladin (Paladin は商標である) ダイオード励起固体レーザー(diode pumped solid state laser) (Coherent Ltd) を用いる。
【0126】
パターンは、窒素ガス(必須ではない)雰囲気中で20mJから100mJの量のエネルギーを使い作り出された。硬化しない部分はエタノールを用いて洗い流された。サンプルはその後1.6%のDMAB液に2分浸し、DI水中で洗浄し、45℃のEnplate銅めっき溶液(Enplate Cu 872A, Enplate Cu 872B, 及び Enplate Cu 872Cを重量比で3:3:1含む)に2分間浸しめっきされた。その結果は20ミクロン程度までの細かい銅が良く付着したものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に第二層を形成する化学反応を活性化することのできる第一固体層を、基板の表面に形成する方法であって、前記方法は:
基板表面と第一液を接触させることを含み、前記第一液は硬化性組成物及び前記第二層を形成する化学反応のための活性化剤を含み、前記硬化性組成物は重合し及び/又は交差結合して硬化し、それにより固体層を形成するアクリレート(acrylate)またはメタアクリレート(methacrylate)モノマー及び/又はオリゴマーの混合物を含み、組成物は、少なくとも3つの交差結合可能な官能基を持つある割合のアクリレート(acrylate)またはメタアクリレート(methacrylate)モノマー及び/又はオリゴマーを含み、前記硬化性組成物はさらに、刺激に反応して硬化反応を開始する遊離基を生成する開始剤を含み、及び前記硬化性組成物を前記刺激に露出して遊離基により基板表面への材料の付着力を増大させる硬化性組成物を硬化させて、第一固体層を形成し、それにより第二流体と接触させた後に前記第二層を形成する化学反応を活性化することができ、前記第一固体層は、第二流体において少なくとも部分的に不溶解である第一化学官能基を含み、及び第一固体層は、第二流体において少なくとも部分的に溶解し、混和し、または膨張し、またはそうでなければ第二流体により浸透される第二化学官能基を含む、
ことを含む。
【請求項2】
さらに、前記第一固体層と、活性化剤により活性化され、前記第二層を形成する化学反応のための一又は二以上の試薬を含む前記第二流体を、接触させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二層が伝導性金属層を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二層形成化学反応は伝導性金属領域を形成する金属イオンと還元剤との間の反応であり、前記活性化剤が一又は二以上の触媒金属イオン、還元剤またはpH変更試薬を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第一液の全モノマー及び/またはオリゴマ−の重量の75%を超えない割合が3つの交差結合可能な官能基を持つ、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
第一液の全モノマー及び/またはオリゴマ−重量の35%を超えない割合が4つの交差結合可能な官能基を持つ、請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
第一液の全モノマー及び/またはオリゴマ−重量の10%を超えない割合が5つの交差結合可能な官能基を持つ、請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一化学官能基の前記第二化学官能基に対する重量比率が約5:1より大きく、好ましくは約10:1より大きく、より好ましくは約15:1より大きい請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第一液中での硬化性組成物の活性化剤に対する重量割合が約15:1より大きく、好ましくは約25:1より大きい請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一液が印刷プロセス、好ましくは、非接触デジタル印刷プロセスにより基板表面に接触させられる請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第一固体層がパターンに従って基板表面に形成される請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一液がパターンに従いデジタルインクジェット印刷により基板表面に堆積される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一液が基板表面に広範囲に適用され、パターンに従い選択的に硬化される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第二流体がインクジェット印刷により第一固体層に堆積される請求項1乃至13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記刺激が電磁照射である、請求項1乃至14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記電磁照射が紫外線照射である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記活性化剤が金属または金属を含む材料を含む請求項1乃至16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化性組成物の前記活性化剤の金属部分に対する重量比率が約25:1より大きい請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化剤が触媒を含む請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか一項に記載の方法を含む電気品の製造方法。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか一項に記載の方法であって、電池を生産するために用いる方法。
【請求項22】
回路の2つの部品間を電気的に接続するために用いる請求項1乃至21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
装飾的特徴を作り出すために用いる請求項1乃至22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1乃至23の何れか一項に記載の方法により製作された物。
【請求項25】
基板表面に第一固体層を形成する硬化性層形成組成物を含む液であって、該液は第二層形成化学反応を活性化することが可能な活性化剤、及び硬化することにより基板表面への材料の付着力を増大させ、基板に付着した第一固体層を形成し、及び該第二層形成化学反応を活性化することのできる前記硬化性組成物を含み、前記硬化性組成物は重合し及び/又は交差結合して遊離基に反応して硬化し、それにより固体層を形成するアクリレート(acrylate)またはメタアクリレート(methacrylate)モノマー及び/又はオリゴマーの混合物を含み、組成物は、少なくとも3つの交差結合可能な官能基を持つある割合のアクリレート(acrylate)またはメタアクリレート(methacrylate)モノマー及び/又はオリゴマーを含み、前記硬化性組成物はさらに、刺激に反応して硬化反応を開始する遊離基を生成する開始剤を含み、前記第一固体層は、第二流体において少なくとも部分的に不溶解である第一化学官能基を含み、及び第一固体層は、第二流体において少なくとも部分的に溶解し、混和し、または膨張し、またはそうでなければ第二流体により浸透される第二化学官能基を含む、
前記液。
【請求項26】
液の全モノマー及び/またはオリゴマ−重量の75%を超えない割合が3つの交差結合可能な官能基を持つ、請求項25に記載の液。
【請求項27】
液の全モノマー及び/またはオリゴマ−重量の35%を超えない割合が4つの交差結合可能な官能基を持つ、請求項25又は26に記載の液。
【請求項28】
液の全モノマー及び/またはオリゴマ−重量の10%を超えない割合が5つの交差結合可能な官能基を持つ、請求項25乃至27の何れか1項に記載の液。

【公開番号】特開2011−251534(P2011−251534A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157663(P2011−157663)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2006−542017(P2006−542017)の分割
【原出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(506150320)コンダクティブ・インクジェット・テクノロジー・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】