説明

基板乾燥方法及び磁気記録媒体の製造方法

【課題】基板乾燥方法及び磁気記録媒体の製造方法において、基板と基板を保持する保持部材とが接触する部分の洗浄液を確実に除去することを目的とする。
【解決手段】洗浄液で洗浄済みの基板をスピン乾燥させる基板乾燥方法において、前記基板を保持する保持部材を加熱するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板乾燥方法及び磁気記録媒体の製造方法に係り、特に洗浄された基板を乾燥する基板乾燥方法及びこのような基板乾燥方法を用いた磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に各種層を形成して記録媒体等を製造する場合、基板は必要に応じてテキスチャリングや研磨等の加工を施された後に洗浄され、基板上の残渣物が除去される。洗浄された基板は乾燥され、その後基板上に各種層が形成される。
【0003】
近年、磁気ディスクに代表される高密度記録用の磁気記録媒体では、ヘッドの磁気記録媒体からの浮上量が非常に小さくなっている。このため、基板上に各種層をスパッタリング等により積層する場合、基板上に残渣物が残っていると記録層におけるデータ消失やヘッドが磁気ディスクと接触するヘッド・ディスク障害(HDI:Head Disk Interference)が発生してしまい、磁気ディスクを有する磁気ディスク装置の信頼性が低下してしまう。
【0004】
図1は、従来の基板乾燥方法の一例を説明する図である。図1において、1はディスク状の基板、2は乾燥工程で基板1を保持するチャックを示す。ここでは説明の便宜上、基板1はテキスチャリングや研磨等の加工を施された後に洗浄液3を用いて洗浄されているものとする。図1では、基板1は矢印方向に回転されることで、洗浄時に基板1上に付着した洗浄液3を遠心力で除去する。洗浄液3には、例えば純水、温水、イソプロピルアルコール(IPA:Isopropyl Alcohol)等を用いることができる。
【0005】
しかし、上記の如きスピン乾燥では、基板1とチャック2が接触する部分の洗浄液3を完全に除去することは難しい。図2は、スピン乾燥後に残留する洗浄液を説明する図である。図2中、(a)は基板1の平面図であり、(b)は(a)において破線で囲んで示す部分を拡大して示す側面図である。基板1の外周端面にはテーパ部が形成されているので、洗浄液3は特にこの基板1の外周端面のテーパ部とチャック2の傾斜部との間に残留し易い。
【0006】
スピン乾燥後に図2に示すように基板1とチャック2の間に洗浄液3が残留していると、基板1を次の工程に搬送するまでに残留する洗浄液3が基板1の表面まで流れる可能性がある。このような場合、基板1上の残渣物が残っている状態で次の工程が行われてしまうので、残渣物の上に形成された層が剥離して記録層におけるデータ消失を発生したり、残渣物により磁気ディスクの表面に突起が形成されてHDIを発生したりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−204197号公報
【特許文献2】特開平9−106544号公報
【特許文献3】特開2001−7179号公報
【特許文献4】特開2003−146703号公報
【特許文献5】特開2003−257017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の基板乾燥技術では、基板と基板を保持する保持部材とが接触する部分の洗浄液を完全に除去することは難しいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、基板と基板を保持する保持部材とが接触する部分の洗浄液を確実に除去することが可能な基板乾燥方法及び磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、洗浄液で洗浄済みの基板をスピン乾燥させる基板乾燥方法であって、前記基板を保持する保持部材を加熱する基板乾燥方法が提供される。
【0011】
本発明の一観点によれば、上記の基板乾燥方法により乾燥された基板に対し、記録層を含む複数の層を積層して磁気記録媒体を製造する磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の基板乾燥方法及び磁気記録媒体の製造方法によれば、基板と基板を保持する保持部材とが接触する部分の洗浄液を確実に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の基板乾燥方法の一例を説明する図である。
【図2】スピン乾燥後に残留する洗浄液を説明する図である。
【図3】洗浄済みの基板を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施例における基板乾燥方法を説明する図である。
【図5】スピン乾燥後に洗浄液が残留し易い箇所を説明する図である。
【図6】熱風によるチャックの加熱を説明する側面図である。
【図7】レーザ光によるチャックの加熱を説明する側面図である。
【図8】ヒータによるチャックの加熱を説明する側面図である。
【図9】チャックの様々な温度についてパーティクル数と基板回転数の関係を示す測定データを示す図である。
【図10】基板の様々な回転数についてパーティクル数とチャック温度の関係を示す測定データを示す図である。
【図11】チャックの様々な温度についてパーティクル数と乾燥時間の関係を示す測定データを示す図である。
【図12】一対の回転機構が反転テーブルに取り付けられた乾燥装置を示す側面図である。
【図13】熱風によるチャックの加熱のオン・オフタイミングを説明する図である。
【図14】レーザ光によるチャックの加熱のオン・オフタイミングを説明する図である。
【図15】ヒータによるチャックの加熱のオン・オフタイミングを説明する図である。
【図16】磁気記録媒体の製造方法の工程の一部を説明する図である。
【図17】チャックの第1の変形例を説明する図である。
【図18】チャックの第2の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示の基板乾燥方法及び磁気記録媒体の製造方法では、洗浄液で洗浄済みの基板をスピン乾燥させる際に、基板を保持する保持部材を加熱する。これにより、基板と保持部材とが接触する部分の洗浄液をより確実に基板から振り切ることができる。
【0015】
以下に、本発明の基板乾燥方法及び磁気記録媒体の製造方法の各実施例を、図3以降と共に説明する。
【実施例】
【0016】
図3は、洗浄済みの基板を示す平面図である。図3において、11はディスク状の基板、12は乾燥工程で基板11を保持する保持部材(以下、チャックと言う)を示す。ここでは説明の便宜上、基板11はテキスチャリングや研磨等の加工を施された後に洗浄液3を用いて洗浄されているものとするが、テキスチャリングや研磨等の加工は必須ではない。洗浄された基板11の表面は、洗浄液13により湿潤した状態にある。洗浄液13には、例えば純水、温水、イソプロピルアルコール(IPA:Isopropyl Alcohol)等を用いることができる。
【0017】
尚、本実施例では基板11がディスク形状を有するが、基板11の形状は特に限定されない。又、基板11を保持するチャック12の数は3個に限定されず、4個以上設けても良い。チャック12は、基板11の装着時と取り外し時に基板11の移動を容易にするために移動可能な構造を有するが、この構造自体は周知であるためこの構造の図示と説明は省略する。
【0018】
図4は、本発明の一実施例における基板乾燥方法を説明する図である。基板11は、チャック12が加熱された状態で矢印方向に回転されることで、洗浄時に基板11上に付着した洗浄液13を遠心力で除去する。
【0019】
図5は、スピン乾燥後に洗浄液13が残留し易い箇所を説明する図である。図5中、(a)は基板11の平面図であり、(b)は(a)において破線で囲んで示す部分を拡大して示す側面図である。基板11の外周端面にはテーパ部が形成されているので、洗浄液13は特にこの基板11の外周端面のテーパ部とチャック12の傾斜部とが接触する部分、即ち、箇所Pに残留し易い。しかし、チャック12を加熱することで、基板11とチャック12とが接触する部分の箇所Pにある洗浄液13をより確実に振り切ることができる。これは、スピン乾燥時のチャック12の加熱及びその余熱により、基板11とチャック12の接点部での乾燥が促進されることによると考えられる。尚、チャック12の形状は図5(b)の形状に限定されるものではなく、チャック12の形状にかかわらず、チャック12を加熱することで基板11とチャック12との間の洗浄液13をより確実に振り切ることができる。
【0020】
チャック12を加熱するタイミングは特に限定されないが、少なくとも基板11の回転中は洗浄液13を振り切るのに適した温度を有することが望ましい。又、チャック12を加熱するタイミングや加熱温度は、基板11の材質、チャック12の材質(即ち、熱伝導性)、洗浄液13の種類等に応じて選定しても良い。基板11をチャック12に装着する時点でチャック12が既に洗浄液13を振り切るのに適した温度に加熱されていれば、乾燥効率を更に向上可能である。
【0021】
チャック12を加熱する方法は特に限定されないが、図6に示すように熱風によりチャック12を加熱しても、図7に示すようにレーザ光によりチャック12を加熱しても、図8に示すように熱源をチャック12内に設けてチャック12を加熱しても良い。図6では、熱風源(図示せず)からの熱風が各チャック12を加熱する。又、図7では、レーザ光源(図示せず)からのレーザ光が各チャック12に照射されて各チャック12を加熱する。更に、図8では、電源14からの電流を電線15を介して各チャック12内に設けられたヒータ16に印加して発熱させることで各チャック12をヒータ16により加熱する。図6〜図8中、17はチャック12に固定されておりモータ等の駆動源(図示せず)により回転される回転板を示す。尚、回転板17の回転方法は、従来のスピン乾燥技術で採用されている方法を採用可能である。
【0022】
本発明者らは、乾燥時に上記の如くチャック12を加熱した場合、回転板17の回転数、チャック12の温度及び乾燥時間に応じて乾燥後の基板11上に残留するパーティクル数を実験により測定した。測定に用いた基板11はアルミ製で直径2.75インチであり、チャック12はPEEK(Polyetheretherketone)樹脂であった。洗浄液13には純水を使用した。又、基板11上のパーティクル数は、特にパーティクルが残留する可能性が高い基板11の中心から半径32.5mmの位置から最外周までの領域で測定した。尚、パーティクルとは、洗浄前に基板11に施されたテキスチャリングや研磨等の加工により発生した残留物を指す。
【0023】
図9は、チャック12の様々な温度(℃)についてパーティクル数(個)と回転板17の回転数(rpm)、即ち、基板11の回転数(rpm)の関係を示す測定データを示す図である。図9中、◆印はチャック温度が25℃でのデータ、■印はチャック温度が40℃でのデータ、▲印はチャック温度が50℃でのデータ、×印はチャック温度が60℃でのデータ、*印はチャック温度が75℃でのデータを示す。チャック温度が25℃でのデータは、チャック12を加熱しない従来の乾燥方法で得られるデータに相当する。
【0024】
図10は、基板11の様々な回転数(rpm)についてパーティクル数(個)とチャック12の温度(℃)の関係を示す測定データを示す図である。◆印は基板回転数が4500rpmでのデータ、■印は基板回転数が4250rpmでのデータ、▲印は基板回転数が4000rpmでのデータ、×印は基板回転数が3750rpmでのデータ、*印は基板回転数が3500rpmでのデータ、●印は基板回転数が3250rpmでのデータ、+印は基板回転数が3000rpmでのデータ、□印は基板回転数が2750rpmでのデータ、−印は基板回転数が2500rpmでのデータを示す。
【0025】
図11は、チャック12の様々な温度(℃)についてパーティクル数(個)と乾燥時間(秒)の関係を示す測定データを示す図である。◆印はチャック温度が25℃でのデータ、■印はチャック温度が40℃でのデータ、▲印はチャック温度が50℃でのデータ、×印はチャック温度が60℃でのデータ、*印はチャック温度が75℃でのデータを示す。チャック温度が25℃でのデータは、チャック12を加熱しない従来の乾燥方法で得られるデータに相当する。
【0026】
図9〜図11において、パーティクル数が20個以下であれば、基板11の表面には残留物は殆ど無く、パーティクルは無視できる程度である。従って、図9からは、チャック温度が40℃〜60℃であれば、基板回転数を3500rpm〜4250rpmに設定することでパーティクルを良好に除去可能であることが確認された。尚、基板回転数が4250rpmを超えると、駆動源自体の振動等の外乱が発生してパーティクル数が増加した。又、図10からは、基板回転数が3500rpm〜4250rpmであれば、チャック温度を40℃〜60℃に設定することでパーティクルを良好に除去可能であることが確認された。更に、図11から、チャック温度が40℃〜60℃であれば、乾燥時間を6秒以上に設定することでパーティクルを良好に除去可能であることが確認された。
【0027】
又、本発明者らによる実験結果によると、基板11の材質、チャック12の材質及び洗浄液13の種類にかかわらず、図9〜図11と同様の傾向が見られることが確認された。つまり、洗浄液13で洗浄済みの基板11をスピン乾燥させる際に、基板11を保持するチャック12を加熱することで、基板11とチャック12との間の洗浄液13をより確実に振り切ることが可能であることが確認された。
【0028】
図12は、一対の回転機構が反転テーブルに取り付けられた乾燥装置を示す側面図である。図12において、一対の回転機構21はチャック12、回転板(又は、スピンドル)17及び回転軸19を含む同じ構成を有する。各回転機構21は、反転テーブル23に回転可能に設けられている。反転テーブル23は、フレーム41に回転可能に設けられている。反転テーブル23のシャフト24は、モータ25により上限の回転機構21の位置が反転するように例えば180度回転可能である。この例では、上側の回転機構21が基板11の受け渡しを行い、下側の回転機構21がスピン乾燥に使用される。このため、モータ31は、伝達機構32,33を介して下側の回転機構21の回転軸19を回転して基板11を矢印方向に回転する。
【0029】
次に、熱風によるチャック12の加熱のオン・オフタイミングを、図13と共に説明する。図13中、図12と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。又、各回転機構21は、図6の如き方法で加熱されるものとする。図13及び後述する図14及び図15では、加熱又は余熱により目標温度を有する状態のチャック12はクロスハッチングを付して示す。
【0030】
図13中、(a)の状態では、下側の回転機構21が基板11のスピン乾燥を行っているものとし、この状態で基板11が装着されていない上側の回転機構21のチャック12に熱風を当ててチャック12を目標温度まで加熱する。目標温度は、例えば40℃〜60℃の範囲内に設定される。上側の回転機構21のチャック12が目標温度に達すると、図13(b)に示すようにスピン乾燥処理を施すべき洗浄済みの基板11を上側の回転機構21のチャック12に装着する。チャック12が目標温度に達したか否かは、センサ(図示せず)を設けて検出しても、或いは、チャック12が目標温度に達するのに要する加熱時間を予め求めておいて加熱時間が経過したか否かをタイマ(図示せず)により検出しても良い。上側の回転機構21のチャック12に当てる熱風は、チャック12が目標温度に達した時点、或いは、基板11がチャック12に装着された時点で停止される。
【0031】
次に、図13(c)に示すように、上側の回転機構21のチャック12の熱風による加熱が停止され、且つ、下側の回転機構21のチャック12が保持する基板11のスピン乾燥が完了した時点で、反転テーブル23を180度回転することで上側の回転機構21と下側の回転機構21の位置を入れ替える。従って、下側の回転機構21のチャック12が余熱により目標温度を有する状態で、図13(d)に示すように回転板17を回転して基板11に対するスピン乾燥を行うことができる。これと同時に、上側の回転機構21から乾燥済みの基板11を取り外す。以後は、図13(a)の状態から上記と同様の動作を繰り返すことで、複数の基板11のスピン乾燥を確実、且つ、効率的に行うことができる。
【0032】
次に、レーザ光によるチャック12の加熱のオン・オフタイミングを、図14と共に説明する。図14中、図12と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。又、各回転機構21は、図7の如き方法で加熱されるものとする。
【0033】
図14中、(a)の状態では、下側の回転機構21が基板11のスピン乾燥を行っているものとし、この状態で基板11が装着されていない上側の回転機構21のチャック12にレーザ光を照射してチャック12を目標温度まで加熱する。目標温度は、例えば40℃〜60℃の範囲内に設定される。上側の回転機構21のチャック12が目標温度に達すると、図14(b)に示すようにスピン乾燥処理を施すべき洗浄済みの基板11を上側の回転機構21のチャック12に装着する。チャック12が目標温度に達したか否かは、センサ(図示せず)を設けて検出しても、或いは、チャック12が目標温度に達するのに要する加熱時間を予め求めておいて加熱時間が経過したか否かをタイマ(図示せず)により検出しても良い。上側の回転機構21のチャック12へのレーザ光の照射は、チャック12が目標温度に達した時点、或いは、基板11がチャック12に装着された時点で停止される。尚、図14(b)において、上側の回転機構21のチャック12のレーザ光の照射による加熱は、基板11がチャック12に装着された状態で行っても良い。
【0034】
次に、図14(c)に示すように、上側の回転機構21のチャック12のレーザ光による加熱が停止され、且つ、下側の回転機構21のチャック12が保持する基板11のスピン乾燥が完了した時点で、反転テーブル23を180度回転することで上側の回転機構21と下側の回転機構21の位置を入れ替える。従って、下側の回転機構21のチャック12が余熱により目標温度を有する状態で、図14(d)に示すように回転板17を回転して基板11に対するスピン乾燥を行うことができる。これと同時に、上側の回転機構21から乾燥済みの基板11を取り外す。以後は、図14(a)の状態から上記と同様の動作を繰り返すことで、複数の基板11のスピン乾燥を確実、且つ、効率的に行うことができる。
【0035】
次に、ヒータによるチャック12の加熱のオン・オフタイミングを、図15と共に説明する。図15中、図12と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。又、各回転機構21は、図8の如き方法で加熱されるものとする。
【0036】
図15中、(a)の状態では、下側の回転機構21が基板11のスピン乾燥を行っているものとし、この状態で基板11が装着されていない上側の回転機構21のチャック12のヒータ15に電源14からの電流を印加してチャック12を目標温度まで加熱する。目標温度は、例えば40℃〜60℃の範囲内に設定される。上側の回転機構21のチャック12が目標温度に達すると、図15(b)に示すようにスピン乾燥処理を施すべき洗浄済みの基板11を上側の回転機構21のチャック12に装着する。チャック12が目標温度に達したか否かは、センサ(図示せず)を設けて検出しても、或いは、チャック12が目標温度に達するのに要する加熱時間を予め求めておいて加熱時間が経過したか否かをタイマ(図示せず)により検出しても良い。上側の回転機構21のチャック12のヒータ15への電流の印加は、チャック12が目標温度に達した時点、或いは、基板11がチャック12に装着された時点で停止される。尚、図15(b)において、上側の回転機構21のチャック12のヒータ15による加熱は、基板11がチャック12に装着された状態で行っても良い。
【0037】
次に、図15(c)に示すように、上側の回転機構21のチャック12のヒータ15による加熱が停止され、且つ、下側の回転機構21のチャック12が保持する基板11のスピン乾燥が完了した時点で、反転テーブル23を180度回転することで上側の回転機構21と下側の回転機構21の位置を入れ替える。従って、下側の回転機構21のチャック12が余熱により目標温度を有する状態で、図15(d)に示すように回転板17を回転して基板11に対するスピン乾燥を行うことができる。これと同時に、上側の回転機構21から乾燥済みの基板11を取り外す。以後は、図15(a)の状態から上記と同様の動作を繰り返すことで、複数の基板11のスピン乾燥を確実、且つ、効率的に行うことができる。
【0038】
尚、図15(d)において、下側の回転機構21のチャック12が保持する基板11を回転中に、これらのチャック12をヒータ15により加熱するようにしても良い。
【0039】
次に、本実施例における基板乾燥方法を用いた磁気記録媒体の製造方法を、図16と共に説明する。図16は、磁気記録媒体の製造方法の工程の一部を説明する図である。ここでは、説明の便宜上、磁気ディスクが製造される場合の前処理を説明する。
【0040】
加工工程ST1では、基板11の一方の表面に対してテキスチャリングや研磨等の加工が施される。加工された基板11は、周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対してテキスチャリングや研磨等の加工が施された後、この反転・搬送機構により洗浄工程ST2へ移送される。
【0041】
洗浄工程ST2では、基板11の両面に対して例えば純水のシャワによる第1の洗浄工程を行い、周知の反転・搬送機構によりテープとシャワを併用した第2の洗浄工程へ移送される。第2の洗浄工程では、基板11の一方の表面に対してテープとシャワを併用した洗浄が施される。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第2の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により第3の洗浄工程へ移送され、基板11の両面に対して例えば純水のシャワによる洗浄が行われる。第3の洗浄工程では、純水のシャワにUS(Ultrasonic)波又はMS(Megasonic)波を印加する。
【0042】
第3の洗浄工程を経た基板11は、周知の判定・搬送機構により第4の洗浄工程へ移送され、基板11の一方の表面に対して洗浄ローラによるスクラブとシャワを併用した洗浄が施される。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第4の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により第5の洗浄工程へ移送され、基板11の一方の表面に対してシャワノズルによる純水のシャワによる洗浄が行われる。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第5の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により乾燥工程ST3へ移送される。
【0043】
乾燥工程ST3では、例えば図12の如き乾燥装置により基板11の乾燥が行われ、基板11の一方の表面が乾燥されると、上記周知の反転・搬送機構により基板11が反転され、乾燥装置により基板11の他方の表面が乾燥される。つまり、基板11の両面を乾燥する場合は、図12において基板11を乾燥させた下側の回転機構21を上側の回転機構21と入れ替えて基板11を上側の回転機構21のチャック12から一端取り外して反転してから再度上側の回転機構21のチャック21に装着する。
【0044】
乾燥工程ST3の後は、基板11は周知の搬送機構により成膜工程へ移送され、基板11上に磁気ディスクの記録層を含む各種層がスパッタリング等の工程により順次積層されて、最終的に磁気ディスクが製造される。磁気ディスクは、水平磁気記録方式を採用する構造を有するものであっても、垂直磁気記録方式を採用する構造を有するものであっても良い。
【0045】
図17は、チャックの第1の変形例を説明する図である。図17中、図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図17中、(a)は基板11とチャック12Aを示す平面図であり、(b)は(a)において破線で囲んで示す部分を拡大して示す側面図である。図17(b)に示すように、チャック12Aが基板11とが接触する部分には、単一の溝121が形成されている。溝121は、基板11とチャック12Aとが接触する部分に残留し易い洗浄液13を逃がす機能を有する。従って、基板11とチャック12Aとが接触する部分に残留し易い洗浄液13は、基板11が回転される際に溝121の機能により振り切り易くなり、チャック12Aの加熱による相乗効果により、より確実に洗浄液13を除去することができる。
【0046】
図18は、チャックの第2の変形例を説明する図である。図18中、図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図18中、(a)は基板11とチャック12Bを示す平面図であり、(b)は(a)において破線で囲んで示す部分を拡大して示す側面図である。図18(b)に示すように、チャック12Bが基板11とが接触する部分には、一対の溝122が形成されている。溝122は、基板11とチャック12Bとが接触する部分に残留し易い洗浄液13を逃がす機能を有する。従って、基板11とチャック12Bとが接触する部分に残留し易い洗浄液13は、基板11が回転される際に溝122の機能により振り切り易くなり、チャック12Bの加熱による相乗効果により、より確実に洗浄液13を除去することができる。
【0047】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
洗浄液で洗浄済みの基板をスピン乾燥させる基板乾燥方法であって、
前記基板を保持する保持部材を加熱する、基板乾燥方法。
(付記2)
前記保持部材を、前記保持部材へ熱風を当てること、前記保持部材にレーザ光を照射すること、前記保持部材内に設けられたヒータを発熱させることのいずれかにより加熱する、付記1記載の基板乾燥方法。
(付記3)
前記保持部材を目標温度まで加熱して加熱を停止した後、余熱により前記保持部材が前記目標温度を有する状態で前記基板を回転させる、付記1又は2記載の基板乾燥方法。
(付記4)
前記目標温度は、40℃〜60℃の範囲内で設定される、付記3記載の基板乾燥方法。
(付記5)
前記基板の回転数は、3500rpm〜4250rpmの範囲内で設定される、付記4記載の基板乾燥方法。
(付記6)
前記保持部材を有する回転機構を一対用い、一方の回転機構により1つの基板を乾燥中に、他方の回転機構の保持部材を加熱する、付記1乃至5のいずれか1項記載の基板乾燥方法。
(付記7)
前記基板と接触する部分に前記洗浄液を逃がす溝が形成された保持部材を用いる、付記1乃至6のいずれか1項記載の基板乾燥方法。
(付記8)
付記1乃至7のずれか1項記載の基板乾燥方法により乾燥された基板に対し、記録層を含む複数の層を積層して磁気記録媒体を製造する、磁気記録媒体の製造方法。
(付記9)
洗浄液で洗浄済みの基板をスピン乾燥させる乾燥装置であって、
前記基板を保持する保持部材を加熱する機構を備えた、乾燥装置。
(付記10)
各々が前記保持部材を有する一対の回転機構を備え、
一方の回転機構により1つの基板を乾燥中に、他方の回転機構の保持部材が加熱される、付記9記載の乾燥装置。
【0048】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
11 基板
12,12A,12B チャック
13 洗浄液
17 回転板
21 回転機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液で洗浄済みの基板をスピン乾燥させる基板乾燥方法であって、
前記基板を保持する保持部材を加熱する、基板乾燥方法。
【請求項2】
前記保持部材を目標温度まで加熱して加熱を停止した後、余熱により前記保持部材が前記目標温度を有する状態で前記基板を回転させる、請求項1記載の基板乾燥方法。
【請求項3】
前記目標温度は、40℃〜60℃の範囲内で設定される、請求項2記載の基板乾燥方法。
【請求項4】
前記基板の回転数は、3500rpm〜4250rpmの範囲内で設定される、請求項3記載の基板乾燥方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のずれか1項記載の基板乾燥方法により乾燥された基板に対し、記録層を含む複数の層を積層して磁気記録媒体を製造する、磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−176735(P2010−176735A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16425(P2009−16425)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】