説明

基板処理システム

【課題】不活性ガスの供給流量にばらつきが生じてもチャンバー内を圧力を安定して保つことができ、初期動作時、不活性ガスの供給流量を増やして不活性ガス化に必要な時間を短縮させることができる基板処理システムを提供する。
【解決手段】基板に対し所定の処理を行う基板処理部と、前記基板処理部を密封状態に収容するチャンバーと、チャンバー内に不活性ガスを供給するガス供給部と、チャンバー内のガスを排気するガス排気部と、を備えており、前記チャンバー内の圧力がチャンバー外の圧力よりも高いチャンバー設定圧力になるように、前記ガス供給部の不活性ガスの供給流量と前記ガス排気部の排気流量とが調整される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に所定の処理を行う基板処理システムであって、チャンバー内を不活性ガスで満たした状態で基板の処理を行う基板処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスやマスク等の製作には、基板上にレジスト液を塗布する塗布装置、基板搬送装置、基板上の塗布膜を乾燥させる乾燥装置等、基板に所定の処理を行う様々な基板処理システムが用いられている。通常、レジスト液で形成された基板上の塗布膜は酸化を非常に嫌うため、これらの装置は、簡易的な密閉チャンバー内に配置されており、このチャンバー内で所定の処理が行われる。
【0003】
具体的には、下記特許文献1に示されるように、チャンバー内に塗布装置が配置されており、チャンバーには、チャンバー内に不活性ガスを供給する供給口と、チャンバ内の雰囲気を排気する排気口とが設けられている。そして、装置の稼働時には、供給口からチャンバ内に不活性ガスを供給しながら排気口から排気することで、チャンバー内の酸素濃度を極力減少させ、基板上にレジスト液を吐出して塗布膜が形成される。すなわち、チャンバーの供給口と排気口の寸法は、供給口からの不活性ガスの供給量よりも排気口からの排気量が少なくなるように設計されており、不活性ガスが供給されると、チャンバー内の酸素が新たに供給される不活性ガスと徐々に置き換わる(不活性ガス化)。そして、チャンバー内が僅かに高圧に保たれることにより、大気中の酸素がチャンバー内に侵入しないようになっている。したがって、チャンバー内の酸素濃度が所定の酸素濃度以下に抑えられ、基板上に形成された塗布膜が酸化するのを防止することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−211734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記基板処理システムでは、チャンバー内の酸素濃度を所定の酸素濃度に抑えることができないという問題があった。すなわち、不活性ガスの供給源は、工場ごとに設定されており、様々な装置で共通に使用されている。そのため、供給口と排気口との寸法で流量調整される上記基板処理システムでは、不活性ガスの使用状況により供給圧力が一時的に低下した場合、供給口から供給される不活性ガスの供給流量が排気口から排気される排気流量が下回る。その結果、チャンバー内が大気圧以下になることによりチャンバー内に大気中の酸素が侵入しやすくなりチャンバー内の酸素濃度が上昇する虞があるという問題があった。
【0006】
また、供給源の圧力が十分である場合には、チャンバー内に不活性ガスを供給する初期動作時において、不活性ガスの供給流量を増やしてチャンバー内の不活性ガス化に必要な時間を短縮させたいという要望がある。しかし、不活性ガスの供給流量を増加させると、排気口の排気流量がほぼ一定であるため、チャンバー内の圧力が過度に上昇し、チャンバーから不活性ガスが漏れたり、チャンバー自体が破壊されてしまう虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、不活性ガスの供給流量にばらつきが生じてもチャンバー内を圧力を安定して保つことができ、初期動作時、不活性ガスの供給流量を増やして不活性ガス化に必要な時間を短縮させることができる基板処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の基板処理システムは、基板を載置するステージと、前記ステージに載置された基板に対し所定の処理を行う基板処理ユニットと、前記ステージ及び基板処理ユニットを密封状態に覆うチャンバーと、前記チャンバー内に不活性ガスを供給するガス供給部と、前記チャンバー内のガスを排気するガス排気部と、を備えており、前記チャンバー内の圧力がチャンバー外の圧力よりも高いチャンバー内設定圧力値になるように、前記チャンバー内の圧力に基づいて前記ガス供給部の不活性ガスの供給流量と前記ガス排気部の排気流量とが調整されることを特徴としている。
【0009】
上記基板処理システムによれば、前記ガス供給部の不活性ガスの供給流量と前記ガス排気部の排気流量とがチャンバー内の圧力に基づいて調整されるため、前記チャンバー内の圧力をチャンバー設定圧力に安定して維持することができる。すなわち、不活性ガスの供給流量にばらつきが生じても、その供給流量に応じて排気流量が調節されることにより、チャンバ内を一定のチャンバー設定圧力に維持される。したがって、チャンバー内がチャンバー外よりも高圧になることにより、チャンバ外からチャンバ内に酸素が侵入するのを抑えることができ、チャンバ内の酸素濃度が上昇するのを抑えることができる。また、不活性ガスの供給流量を増加させた場合でも、その供給流量に応じて排気流量を増大させてチャンバ内をチャンバ設定圧力に維持することができるため、初期動作時においてチャンバ内に大量の不活性ガスを供給することができる。したがって、チャンバー内の酸素を不活性ガスと置き換えるために必要な不活性ガスを大量に供給することにより、初期動作時における不活性ガス化に必要な時間を短縮させることができる。
【0010】
また、前記チャンバー設定圧力には、上限圧力値と下限圧力値とが設定されており、チャンバー内の圧力が上限圧力値と下限圧力値との間に維持されるように、前記ガス供給部の不活性ガスの供給流量と前記ガス排気部の排気流量とが調整される構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、上限圧力値と下限圧力値を閾値として設定することで、より簡単な構成でチャンバー内をチャンバー設定圧力に維持することができる。
【0012】
また、前記ガス供給部の供給流量と前記ガス排気部の排気流量とを共に大きくしてチャンバー内の圧力を設定圧力値に維持する初期運転モードと、前記ガス供給部の供給流量と前記ガス排気部の排気流量とを共に小さくしてチャンバー内の圧力を設定圧力値に維持する通常運転モードとを有しており、前記初期運転モードは、チャンバー内の酸素濃度が設定値以下になった場合に通常運転モードに切替えられる構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、初期運転モードによりチャンバー設定圧力を維持した状態で、初期運転時におけるチャンバー内の酸素濃度を素早く低下させることができる。また、通常運転モードによりチャンバー設定圧力を維持した状態で、不活性ガスの供給量を抑えて無駄に不活性ガスが消費されるのを抑えることができる。
【0014】
また、前記ガス排気部には、チャンバーに連通して接続される排気配管を有しており、この排気配管には配管内の圧力変動に応じて容積を変えることのできるバッファー部を有しており、このバッファー部の容積が変化することにより、配管内の急な圧力変動が吸収される構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、チャンバー内の圧力が一時的に急激に上昇した場合であっても、バッファー部の容積が膨張することによりチャンバー設定圧力を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の基板処理システムによれば、不活性ガスの供給流量にばらつきが生じてもチャンバー内を圧力を安定して保つことができ、初期動作時では、不活性ガスの供給流量を増やして不活性ガス化に必要な時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の基板処理システムを示す概略図である。
【図2】上記基板処理システムの制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】チャンバー内の圧力の変化を示す図である。
【図4】上記基板処理システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の基板処理システムについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態における基板処理システムを概略的に示す図である。
【0019】
図1に示すように、基板処理システム1は、基板処理装置10とガス供給部20とガス排気部30とを有しており、ガス供給部20から基板処理装置10に不活性ガスを供給し、基板処理装置10のガスをガス排気部30から排気することにより、基板処理装置10において基板を特定の環境下に維持しつつ、基板に所定の処理を行うようになっている。
【0020】
基板処理装置10は、基台11上に基板処理部40を有しており、この基板処理部40がチャンバー12内に収容されている。本実施形態では、基板処理部40は塗布装置であり、この塗布装置により基板上にレジスト液等の塗布膜が形成されるようになっている。塗布装置は、基板を載置するステージ41と、塗布液を塗布する塗布ユニット42とを有しており、塗布ユニット42から塗布液が吐出されることにより基板上に均一厚さの塗布膜が形成されるようになっている。具体的には、塗布ユニット42は、基台11上のほぼ中央位置に固定されて設けられており、一方向に延びるスリットノズル43aを有する口金43を有している。すなわち、このスリットノズル43aから供給された塗布液がスリットノズル43aから長手方向に亘って吐出されるようになっている。また、ステージ41が塗布ユニット42に対して一方向に移動できるように設けられており、移動するステージ41がスリットノズル43aを横切るようになっている。したがって、ステージ41上に基板が載置された状態でステージ41が一方向に移動しつつ、スリットノズル43aから塗布液が吐出されることにより、基板上には、均一厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0021】
この基板処理部40(本実施形態では塗布装置)はチャンバー12内に収容されている。チャンバー12は、側面部を有する直方体12aと、塗布ユニット42が位置する中央部分が上方に突出した凸頂部12bとが組み合わされた形状を有している。このチャンバー12は、金属製のフレームに透明性のアクリル板を取付けて形成されており、外部から内部の基板処理部40を視認できるようになっている。そして、各フレームの継ぎ手部分およびフレームとアクリル板との間には、それぞれシール部材が設けられており、基板処理部40がチャンバー12内に密封されるようになっている。すなわち、ガス供給部20から供給された不活性ガスはチャンバー12内に貯留され、外部の酸素等がチャンバー12内に侵入するのを防止できるようになっている。
【0022】
また、チャンバー12の凸頂部12bには、ガス供給部20との連結部13が設けられており、ガス供給部20からこの連結部13を通じて不活性ガスが供給される。チャンバー12の側方部分には、ガス排気部30との連結部14が設けられており、ガス排気部30からこの連結部14を通じてチャンバー12内のガスが排気される。
【0023】
また、チャンバー12の側面部には、グローブボックス15が設けられている。このグローブボックス15は、基板処理部40をチャンバー12の外部からメンテナンスするものであり、チャンバー12にゴム製の手袋が取付けられることによって形成されている。具体的には、チャンバー12の側面部に2カ所貫通穴が形成されており、この貫通穴を塞ぐようにゴム製の手袋が取付けられている。すなわち、ゴム製の手袋の指先がチャンバー12内部に向かって延びるように取付けられている。したがって、スリットノズル43aの拭取りなどのメンテナンス時には、このゴム製の手袋に作業者が手を入れて基板処理部40に対して所定のメンテナンス処理を行うことにより、チャンバー12内のガス環境(酸素濃度)を変えることなくメンテナンス作業を行うことができる。
【0024】
また、チャンバー12には、酸素濃度計16及び圧力計17が取付けられており、チャンバー12内の酸素濃度と圧力とが計測できるようになっている。そして、酸素濃度計16及び圧力計17は、それぞれ後述の制御装置90に電気的に接続されており、それぞれの計測結果が制御装置90に入力されるようになっている。
【0025】
また、チャンバー12の凸頂部12bにガス供給部20が設けられており、ガス供給部20から窒素等の不活性ガスがチャンバー12内に供給される。ガス供給部20は、凸頂部12bの連結部13に接続される供給配管21と、この供給配管21に設けられたレギュレータ22とを有している。そして、供給配管21は、窒素等の不活性ガスボンベと接続されており、レギュレータ22を調節することにより、チャンバー12内に供給される不活性ガスの流量を制御できるようになっている。このレギュレータ22は電空レギュレータ22であり、制御装置90からの電気信号によって開閉状態を無段階に制御される。したがって、制御装置90により、チャンバー12内の不活性ガスの供給流量を増加又は減少させることができる。
【0026】
また、供給配管21には流量計23が設けられている。そして、この流量計23が制御装置90に電気的に接続されており、計測された排気流量が制御装置90に入力できるようになっている。
【0027】
また、チャンバー12の側面部は、連結部14を介してガス排気部30と連結されており、チャンバー12内のガスがガス排気部30を通じてチャンバー12外に排出できるようになっている。ガス排気部30は、チャンバー12の側面部に連通して接続される排気配管31と、この排気配管31に設けられたブロワ32とを有している。図1の例では、側面部の2カ所に排気配管31が連結されており、これら2カ所の排気配管31が合流し所定の排ガス処理装置(不図示)に連結されている。そして、排気配管31の合流部分にブロワ32が設けられ、このブロワ32を作動させることにより、チャンバー12内のガスが排気配管31を通じて排気されるようになっている。このブロワ32は制御装置90によりその回転数が制御されるようになっており、制御装置90からの電気信号によってブロワ32の回転数が無段階に制御される。このようにブロワ32の回転数が制御されることにより、チャンバー12内のガスの排気流量が調節される。
【0028】
このガス供給部20とガス排気部30とによってチャンバー12内の圧力を制御することができる。すなわち、ガス供給部20からの不活性ガスの供給流量に比べて、ガス排気部30の排気流量を小さくすることにより、チャンバー12内の圧力を高く保つことができる。本実施形態では、レギュレータ22とブロワ32とを適宜調節することにより、チャンバー12外の大気圧よりも僅かに高い圧力を保つことができるように調節されている。これにより、チャンバー12内を不活性ガスで満たし、チャンバー12外から酸素が侵入するのを抑えることができるようになっている。
【0029】
また、排気配管31には、バッファー部33が設けられている。このバッファー部33は、チャンバー12内の急激な圧力上昇を抑えるものである。これにより、チャンバー12が高圧により破損されるのを防止することができる。具体的には、バッファー部33は、ゴム又は樹脂等の弾性変形可能な材料で形成された袋状部材であり、この袋状部材内が所定の圧力に達すると弾性的に膨張するようになっている。すなわち、チャンバー12が圧力上昇により破損しない圧力で膨張する材料で形成されている。そして、バッファー部33は入出口を有しており、この入出口それぞれに排気配管31が接続されている。これにより、チャンバー12内の圧力が急に上昇するのを抑えることができる。すなわち、チャンバー12内の圧力が急に上昇すると、これに伴って排気配管31内の圧力も上昇するが、バッファー部33に必要以上の圧力がかかるとバッファー部が膨張することにより、排気配管31内の圧力を低下させ、ひいてはチャンバー12内の圧力を低下させる。これにより、チャンバー12内の急激な圧力上昇を抑え、チャンバー12の破損を防止できるようになっている。
【0030】
また、排気配管31には、流量計34が設けられている。そして、この流量計34が制御装置90に電気的に接続されており、計測された排気流量が制御装置90に入力できるようになっている。
【0031】
なお、供給配管21には、空気を供給する空気供給配管51が別途連結されており、チャンバー12内に空気を供給できるようになっている。具体的には、空気供給配管51がエアボンベと連結されており、空気供給配管51には制御装置90に電気的に接続されたレギュレータ52が設けられている。そして、このレギュレータ52の開閉動作を制御することにより、チャンバー12内にエアを供給することができる。
【0032】
また、チャンバー12には、開放配管54が接続されており、チャンバー12内の不活性ガスを一気に排気できるようになっている。すなわち、真空ポンプに接続された開放配管54がチャンバー12に接続されており、制御装置90に開閉動作が制御される開放弁55が設けられている。そして、開放弁55が開放されると真空ポンプによりチャンバー12内が吸気され、チャンバー12内のガスが一気に排気される。これにより、この開放配管54と空気供給配管51とによって、基板処理装置10に何らかの不具合が生じた場合、不活性ガスがチャンバー12外に充満するのを防止することができる。具体的には、開放配管54の開放弁55が開放されるとともに、レギュレータ52も開状態にされることにより、チャンバー12内が排気されるとともに、空気供給配管51から空気が供給される。これにより、チャンバー12内の不活性ガスが一気に空気と入れ替わるため、チャンバー12外に不活性ガスが充満するのを抑えることができる。
【0033】
次に、上記基板処理装置10の制御系の構成について図2に示すブロック図を用いて説明する。
【0034】
図2は、この基板処理装置10に設けられた制御装置90の制御系を示すブロック図である。図2に示すように、この基板処理装置10には、上述した各種ユニットの駆動等を統括的に制御する制御装置90が設けられている。この制御装置90は、制御本体部91、駆動制御部92、圧力検知部93、酸素濃度検知部94、流量検知部95とを有している。そして、制御本体部91は、主制御部91a、判定部91b、設定部91c、記憶部91dとを有している。
【0035】
主制御部91aは、予め記憶されたプログラムに従って一連の塗布動作を実行すべく、駆動制御部92を介して各ユニットのモータ類、レギュレータ22、52等の駆動機器を駆動制御するとともに基板処理動作に必要な各種演算を行うものである。具体的には、基板処理部40である塗布装置を制御すべく、塗布ユニット42から塗布液を吐出させるとともに、ステージ41の移動を駆動制御する。そして、各レギュレータ22の開閉状態及びブロワ32の回転数を制御し、チャンバー12内がチャンバー12外より僅かに高い圧力(チャンバー設定圧力)に設定される。
【0036】
判定部91bは、チャンバー12内の圧力、酸素濃度、ブロワ回転数が所定の設定値であるかを判定するものである。例えば、チャンバー12内の圧力が設定された圧力(チャンバー設定圧力)になっているか否かが判定される。具体的には、後述の記憶部91dには、チャンバー設定圧力の上限値と下限値とが閾値として記憶されており、チャンバー12内の圧力がこれらの閾値の範囲内にあるか否かが判定される。仮にチャンバー設定圧力の上限値を超えている場合には、駆動制御部92を通じてブロワ32の回転数を増加させてチャンバー12内のガスの排気流量を増大させることによりチャンバー12内の圧力が閾値内に入るように調整する。そして、ブロワ32の回転数を増加させてもチャンバー12内の圧力が閾値内に入らない場合には、ガス供給部20のレギュレータ22を調節することにより供給流量を減少させてチャンバー12内の圧力が閾値内に入るように調整する。同様に、チャンバー設定圧力の下限値を超えている場合には、駆動制御部92を通じてブロワ32の回転数を減少させる。そして、ブロワ32の回転数を減少させても閾値内に入らない場合は、ガス供給部20のレギュレータ22を調節することにより供給流量を増加させてチャンバー12内の圧力が閾値内に入るように調整する。このようにして、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力になるように調整される。
【0037】
また、判定部91bは、チャンバー12内の酸素濃度についても判定し、チャンバー12内が製品製造に適した酸素濃度であるか否かを判定する。具体的には、チャンバー12内の酸素濃度が記憶部91dに記憶された酸素濃度に達しているか否かが判定される。
【0038】
設定部91cは、チャンバー設定圧力、レギュレータ22の開閉度、ブロワ32の回転数の設定を行うものである。本実施形態の基板処理装置10では、装置の稼働環境に応じて2つのモードが用意されている。すなわち、初期運転モードと通常運転モードである。初期運転モードは、装置の稼働初期に用いるモードであり、チャンバー12内の酸素濃度を早急に低下させることを主目的とするモードである。具体的には、初期運転モードは、チャンバー設定圧力の上限値及び下限値を維持しつつ、ガス供給部20のレギュレータ22を大きく開状態(絞りを小さく)とするとともに、ブロワ32の回転数を大きくする。これにより、チャンバー12内の酸素をできるだけ早く不活性ガスと置換する。また、通常運転モードは、チャンバー12内の酸素濃度が設定酸素濃度以下の状態を維持しつつ、不活性ガスの使用量を抑えて塗布装置を稼働させるためのモードである。具体的には、チャンバー設定圧力の上限値及び下限値を維持した状態で、初期運転モードに比べてガス供給部20のレギュレータ22を小さい開状態(絞りを大きく)とするとともに、ブロワ32の回転数を小さく設定する。これにより、チャンバー12内の圧力をチャンバー設定圧力に維持しつつ、不活性ガスの消費を抑えることができる。
【0039】
このような初期運転モード及び通常運転モードに応じたレギュレータ22の開閉度、ブロワ32の回転数を駆動制御部92を通じて設定することができる。この初期運転モードと通常運転モードとの切替は、チャンバー12内の酸素濃度によって切替えられる。すなわち、チャンバー12内が大気の状態では、レギュレータ22の開閉度及びブロワ回転数を初期運転モードに設定され、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に維持される。そして、チャンバー12内が記憶部91dに記憶された設定酸素濃度に到達すると、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に維持されつつ、通常運転モードのレギュレータ22の開閉度及びブロワ回転数に設定される。これにより、チャンバー12内がチャンバー設定圧力に維持された状態で、初期運転モードでチャンバー12内を不活性ガスに早期に置換し、通常運転モードで不要な不活性ガスの供給を抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態では、オートチューニング機能を有しており、これによりチャンバー設定圧力が最適値になるように調整される。具体的には、図3に示すように、チャンバー12内の圧力が最初に設定したチャンバー設定圧力の閾値内に所定時間(閾値保持時間)維持されると、チャンバー設定圧力の閾値領域が小さくなる上限値及び下限値に再度設定する。そして、再度設定した閾値領域にチャンバー12内の圧力が閾値保持時間維持されると、さらにチャンバー設定圧力の閾値領域が小さくなる上限値及び下限値に設定される。これを繰り返すことにより、チャンバー設定圧力を最適値に収束させて維持できることととなり、通常運転モードにおける不活性ガスのムダな使用を抑えることができる。
【0041】
記憶部91dは、様々な各種データが格納されているとともに、演算結果等を一時的に格納するためのものである。具体的には、初期運転モード及び通常運転モードにおけるチャンバー設定圧力の閾値データ、閾値保持時間、設定酸素濃度、レギュレータの開閉度、ブロワ回転数等が記憶されている。チャンバー設定圧力の閾値データには、上限値と下限値とが複数セット用意されており、最も大きい閾値領域として、上限値P1、下限値P2が設定され、中間的な閾値領域として、上限値P3、下限値P4が設定され、最終的に最も小さい閾値領域として、上限値P5、下限値P6が設定されている(図3参照)。また、ブロワ回転数は、初期運転モードがRa、通常運転モードがRbとして設定されており、初期運転モードのRaは通常運転モードのRbに比べて大きい値に設定されている。また、レギュレータ22の開閉度についても、初期運転モードにおける絞り量が通常運転モードの絞り量に比べて小さく設定されており、初期運転モードにおける供給流量が通常運転モードの供給流量に比べて大きくなるようになっている。
【0042】
駆動制御部92は、制御本体部91からの制御信号に基づいて、各モータ類、駆動機器等を駆動制御するものである。具体的には、各レギュレータ22の開閉度、ブロワ32の回転数等が制御されるようになっている。
【0043】
圧力検知部93は、チャンバー12内の圧力を検知するものである。具体的には、チャンバー12に取付けられた圧力計17から入力される信号により、チャンバー12内の圧力が検知される。検知された圧力は制御本体部91の記憶部91dに記憶される。
【0044】
酸素濃度検知部94は、チャンバー12内の酸素濃度を検知するものである。具体的には、チャンバー12に取付けられた酸素濃度計16から入力される信号により、チャンバー12内の酸素濃度が検知される。検知された酸素濃度は制御本体部91の記憶部91dに記憶される。
【0045】
流量検知部95は、供給配管21内及び排気配管31内のガス流量を検知するものである。具体的には、供給配管21に取付けられた流量計23から入力される信号、及び、排気配管31に取付けられた流量計34から入力される信号により、供給配管21内及び排気配管31内のガス流量が検知される。検知されたガス流量は制御本体部91の記憶部91dに記憶される。
【0046】
次にこの基板処理装置10における動作について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0047】
まず、ステップS1において、初期運転が行われる(初期運転モード)。すなわち、チャンバー12は大気で満たされているため、チャンバー12内の酸素濃度を設定酸素濃度以下になるまで初期運転が行われる。具体的には、チャンバー設定圧力を最も閾値領域の大きい組合わせ、すなわち上限値P1、下限値P2に設定される。また、レギュレータ22を初期運転モードの開閉度に設定されるとともにブロワ回転数をRaに設定される。そして、不活性ガスの供給流量とチャンバー12内のガス排気流量とが共に大流量で釣り合いを保ちつつ、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に収束される。すなわち、不活性ガスの供給流量がガス排気流量よりも僅かに上回る状態に維持される。ここで、仮にチャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力の上限値又は下限値を超えた場合には、ブロワ回転数の調節が行われる。すなわち、上限値を超えた場合には、ブロワ回転数を僅かに上昇させてチャンバー12内の圧力を低下させる。また、下限値を超えた場合には、ブロワ回転数を僅かに低下させてチャンバー12内の圧力を増加させる。これにより、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力を維持しつつ、大流量の不活性ガスがチャンバー12内に供給されることで、チャンバー12内の酸素濃度を早急に低下させることができる。
【0048】
そして、初期運転モードは、チャンバー12内の酸素濃度が設定酸素濃度に到達するまで行われる(ステップS2でNOの方向)。そして、チャンバー12内の酸素濃度が設定酸素濃度に到達すると、ステップS2によりYESの方に進み、ステップS3により通常運転が行われる(通常運転モード)。
【0049】
具体的には、チャンバー設定圧力を最も閾値領域の大きい組合わせである上限値P1、下限値P2に設定され、また、レギュレータ22を通常運転モードの開閉度に設定されるとともにブロワ回転数をRbに設定される。その結果、通常運転モードの開閉度は、初期運転モードの開閉度よりも絞りが大きいため、供給流量は抑えられる。また、通常運転モードのブロワ回転数Rbは、初期運転モードのブロワ回転数Raよりも小さいため、排気流量も抑えられる。すなわち、通常運転モードは、初期運転モードに比べて供給流量及び排気流量が小流量で釣り合いが保たれ、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に収束される。これにより、通常運転モードは、初期運転モードに比べて不活性ガスの消費量が抑えられる。
【0050】
ここで、仮にチャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力の上限値又は下限値を超えた場合には、ブロワ回転数の調節が行われる。すなわち、上限値を超えた場合には、ブロワ回転数を僅かに上昇させてチャンバー12内の圧力を低下させる。また、下限値を超えた場合には、ブロワ回転数を僅かに低下させてチャンバー12内の圧力を増加させる。このようにして、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力の閾値内に所定時間入っている場合には、チャンバー設定圧力の閾値がより狭い範囲の閾値領域に変更される。すなわち、上限値がP1からP3に変更され、下限値がP2からP4に変更される。そして、上限値又は下限値を超えた場合には、先ほどと同様にして、ブロワ回転数を増減させてチャンバー12内の圧力が閾値領域内に入るように調節される。これを繰り返すことにより、最終的に最も狭い閾値領域である上限値P5、下限値P6に設定され、この範囲内にチャンバー設定圧力が維持される。これによりチャンバー設定圧力が最適値になるように調整される(オートチューニング機能)。
【0051】
次に、ステップS4により、装置を停止させるか否かが判断される。具体的には、基板に対する処理が終了し基板を取り出す場合、又は、強制的に基板処理装置10を停止させる場合には、ステップS4においてYESの方向に進み、基板処理装置10の動作が終了する。また、基板に対する処理を継続して行う場合には、ステップS4において、NOの方向に進み、基板処理装置10の動作が継続される。
【0052】
次に、ステップS5により、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に保たれているか否かが判断される。すなわち、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に保たれている場合には、ステップS5でYESに進み、通常運転モードが継続して実行される。仮に、メンテナンス作業を行うなどして、チャンバー設定圧力の範囲外になっている場合には、ステップS5でNOの方向に進み、ブロア32の回転数を増加させる。具体的には、本実施形態のメンテナンス作業として口金43の拭取り作業がある。拭取り作業は、グローブボックス15の手袋に手を入れつつ口金43の拭取り作業を行うため、手袋に手を入れた分だけチャンバー12内の圧力が上昇し、チャンバー設定圧力の上限値を超えることとなる。このように、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力の上限値を急激に超えようとすると、バッファー部33が膨張し、上昇した圧力を緩和しようとする。それでも、チャンバー設定圧力の上限値を超えている場合には、チャンバー設定圧力が保たれていないと判断し、ステップS5においてNOの方向に進み、ステップS6においてブロワ回転数が増大される。
【0053】
ステップS6において、ブロワ回転数が増大されると、チャンバー12内の圧力が低下する。そして、ステップS7において、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に収まったか否かが判断される。すなわち、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力の閾値(上限値と下限値)の範囲に入ると、チャンバー設定圧力に収まったと判断され、ステップS7においてYESの方向に進み、ステップS8によりブロワ回転数が減少される。そして、再度、通常運転モードが実行され、上述したオートチューニング機能によりチャンバー設定圧力が最適値になるように調整される。
【0054】
また、ステップS7において、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に収まっていないと判断されると、ステップS7においてNOの方向に進み、ステップS9において不活性ガスの供給量が抑えられる。具体的には、ガス供給部20のレギュレータ22の絞りを大きくして開閉度の調節が行われる。そして、ステップS10により、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力に収まったか否かが判断される。すなわち、チャンバー12内の圧力がチャンバー設定圧力の閾値(上限値と下限値)の範囲に入るか否かが判断され、閾値の範囲に入らない場合には、ステップS10においてNOの方向に進み、レギュレータ22の調節が行われる。また、チャンバー12内の圧力が閾値の範囲に入ったと判断された場合には、ステップS10においてYESの方向に進み、通常運転モードが実行され、上述したオートチューニング機能によりチャンバー設定圧力が最適値になるように調整される。
【0055】
上記実施形態における基板処理システム1によれば、前記ガス供給部20の不活性ガスの供給流量と前記ガス排気部30の排気流量とが調整されるため、前記チャンバー12内の圧力をチャンバー設定圧力に安定して維持することができる。すなわち、不活性ガスの供給流量にばらつきが生じても、その供給流量に応じて排気流量が調節されることにより、チャンバー12内を一定のチャンバー設定圧力に維持されるとともに、初期動作時、不活性ガスの供給流量を増やしてチャンバー12内を不活性ガス化にするのに必要な時間を短縮させることができる。
【0056】
上記実施形態では、基板処理装置10を稼働させる条件として、酸素濃度を計測する例について説明したが、酸素濃度と合わせて露点温度を計測し、酸素濃度と露点温度の両方を基板処理装置10を稼働させる条件してもよい。具体的には、チャンバー12に露点温度計を設置し、露点温度計により得られたデータと酸素濃度計16より得られたデータとにより、初期運転モードから通常運転モードに切替えるように構成してもよい。
【0057】
上記実施形態では、ガス排気部30にブロワ32を設ける例について説明したが、真空ポンプやプロセスポンプを用いるものであってもよい。これらであってもチャンバー12内のガスを十分に排気することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 基板処理システム
10 基板処理装置
12 チャンバー
20 ガス供給部
21 供給配管
22 レギュレータ
30 ガス排気部
31 排気配管
32 ブロワ
33 バッファー部
40 基板処理部
90 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対し所定の処理を行う基板処理部と、
前記基板処理部を密封状態に収容するチャンバーと、
チャンバー内に不活性ガスを供給するガス供給部と、
チャンバー内のガスを排気するガス排気部と、
を備えており、
前記チャンバー内の圧力がチャンバー外の圧力よりも高いチャンバー設定圧力になるように、前記チャンバー内の圧力に基づいて、前記ガス供給部の不活性ガスの供給流量と前記ガス排気部の排気流量とが調整されることを特徴とする基板処理システム。
【請求項2】
前記チャンバー設定圧力には、上限圧力値と下限圧力値とが設定されており、チャンバー内の圧力が上限圧力値と下限圧力値との間に維持されるように、前記ガス供給部の不活性ガスの供給流量と前記ガス排気部の排気流量とが調整されることを特徴とする基板処理システム。
【請求項3】
前記ガス供給部の供給流量と前記ガス排気部の排気流量とを共に大きくしてチャンバー内の圧力をチャンバー設定圧力に維持する初期運転モードと、
前記初期運転モードよりも前記ガス供給部の供給流量と前記ガス排気部の排気流量とを共に小さくしてチャンバー内の圧力をチャンバー設定圧力に維持する通常運転モードとを有しており、
前記初期運転モードは、チャンバー内の酸素濃度が設定値以下になった場合に通常運転モードに切替えられることを特徴とする基板処理システム。
【請求項4】
前記ガス排気部には、チャンバーに連通して接続される排気配管を有しており、この排気配管には排気配管内の圧力変動に応じて容積を変えることのできるバッファー部を有しており、このバッファー部の容積が変化することにより、チャンバー内の急な圧力変動が吸収されることを特徴とする基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−74408(P2012−74408A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215801(P2010−215801)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】