説明

基板処理制御装置および基板処理制御方法、制御プログラム、可読記憶媒体

【課題】歩留まりおよび生産性の向上を図る。
【解決手段】圧力やガス流量などの装置動作条件を示す装置パラメータの現状態を抽出するパラメータ抽出手段41と、装置パラメータの現状態から装置加工結果を示す線幅や膜厚などの特徴量を算出する特徴量算出手段42と、算出した特徴量が規定範囲かどうかにより装置の処理を継続するかどうかを判断する継続判断手段43とを有し、継続判断手段43が装置の処理を継続すると判定した場合に所定の処理を行い、継続判断手段43が装置の処理を継続しないと判定した場合には、所定の処理を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製品の製造におけるエッチング処理などの基板処理制御装置および基板処理制御方法、この基板処理制御方法の各工程をコンピュータに実行させるための処理手順が記述された制御プログラム、この制御プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路を製造するためには、半導体基板上に様々な種類の膜を形成したり、または半導体基板上に形成された様々な種類の膜をエッチング処理して所定形状に形成したりする。プラズマエッチング装置では、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、ポリシリコン膜などの様々な膜のエッチング処理が行われている。
【0003】
従来より、かかる半導体基板のエッチング処理は決められたレシピに基づいて行われ、ロットの処理が終了した後に、線幅や膜厚測定結果の検査が行われる。この線幅や膜厚に異常が生じていた場合は、次のロットの処理に入る前に、高周波電力(RFパワー)、チャンバ内の圧力、チャンバ内に導入されるガスの流量、チャンバ内の温度などの各種のプロセスパラメータを修正し、次のロットの処理から新たなレシピに基づいて処理が行われる。
【0004】
近年では、高周波電力(RFパワー)、チャンバ内の圧力、チャンバ内に導入されるガスの流量、チャンバ内の温度などの装置の各種複数のプロセスパラメータに独立で監視して異常値が検出された場合に、装置の処理を停止して処理の異常を早期に検出できるようなシステムが構築されている。これが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−203835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の半導体基板のエッチング処理では、半導体基板の処理結果の検査をロットの処理後に行っており、プロセス中には半導体基板上の処理状態の異常を検知したとしても、不良品を製造することとなり、歩留まりが低下するという問題があった。
【0007】
近年、上記従来の半導体基板のエッチング処理では、各工程にて、エッチング装置での処理時のプロセスパラメータ(例:電力、温度、圧力、ガスの流量、RF反射波など)毎に、それぞれ管理スペックを設定している。各プロセスパラメータについて、設定したスペックの範囲外の値を検出した場合に、そのエッチング装置のエッチング処理を停止している。多数のプロセスパラメータに対して、それぞれスペックを設定する必要があり、エッチング処理されたウエハの特性値が正常範囲内でも、一つのプロセスパラメータの値により装置のエッチング処理が停止する可能性があり、これによって、生産性の低下を生じる。一方で、特性値が正常範囲外であっても設備が停止しない可能性があり、歩留りの低下を生じる。このように、生産性、歩留りからの最適なスペック設定が困難であり、また、特性値が分からないため、歩留りへの影響を予測できないという課題がある。
【0008】
即ち、高周波電力、チャンバ内の圧力、チャンバ内に導入されるガスの流量、チャンバ内の温度などのエッチング装置のプロセスパラメータが独立して監視されており、個々のプロセスパラメータの半導体基板の特徴量への影響が明確になっていないために、複数のプロセスパラメータのうち一つでもプロセスパラメータがスペックの範囲外となった場合に半導体基板の特性に影響がない場合であってのも装置のエッチング処理がストップするために生産性を不必要に低下させてしまうという問題が生じていた。
【0009】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、半導体装置の製造における歩留まりおよび生産性の向上を図ることができるエッチング処理などの基板処理制御装置および基板処理制御方法、この基板処理制御方法の各工程をコンピュータに実行させるための処理手順が記述された制御プログラム、この制御プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な可読記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基板処理制御装置は、装置動作条件を示す装置パラメータの現状態を抽出するパラメータ抽出手段と、該装置パラメータの現状態から装置加工結果を示す特徴量を算出する特徴量算出手段と、該特徴量算出手段で算出した特徴量が規定範囲内かどうかにより装置の処理を継続するかどうかを判断する継続判断手段とを有し、該継続判断手段が装置の処理を継続すると判定した場合に所定の基板の処理を行い、該継続判断手段が装置の処理を継続しないと判定した場合には、該所定の基板の処理を停止するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0011】
また、好ましくは、本発明の基板処理制御装置における継続判断手段が装置の処理を継続しないと判定した場合に、前記所定の基板の処理をすぐに停止するのではなく、関係する装置パラメータを制御することにより前記特徴量が前記規定範囲内になる調整が可能であるかどうかを判断し、該調整が不可能であれば、該所定の基板の処理を停止する調整判断手段と、該調整が可能であれば、該関係する装置パラメータを制御して該特徴量が規定範囲内になるように調整処理を行って前記パラメータ抽出手段による処理に移行する調整制御手段とを有する。
【0012】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御装置における装置パラメータは、前記装置のチャンバ内の圧力、該チャンバ内に導入されるガス流量、基板裏面冷却用のガス圧力、上部電極RFパワー、該上部電極で発生したプラズマを引き込むための下部電極RFパワー、該チャンバ内の温度、処理時間および基板処理枚数のうちの少なくともいずれかを含む。
【0013】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御装置における特徴量は、前記基板上に形成された回路パターンの線幅、膜厚および欠陥密度のうちの少なくともいずれかを含む。
【0014】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御装置における特徴量は、前記装置パラメータから物理モデルまたは統計モデルを用いて算出する。
【0015】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御装置における装置パラメータは、チャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(ClFlow、HBrFlow、OFLowおよびCFFlow)のガス流量(sccm)、裏面冷却のBack−He圧力(Torr)、上部電極RFパワー(SourcePowerW)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(BiasPowerW)であり、該装置パラメータに対するエッチシフト量との関係から係数を求めて前記物理モデルまたは統計モデルとしてのエッチシフトモデルの予測式を、
エッチシフトEtch Shift = −19.3 +0.772×Pressure −0.539×Cl2Flow +0.0260×HBrFlow −1.71×O2FLow +0.271×CF4Flow +0.0495×Back−He +0.0215 SourcePower +0.447×BiasPower
とする。
【0016】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御装置における装置パラメータは、チャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(ClFlow、HBrFlow、OFLowおよびCFFlow)のガス流量(sccm)、裏面冷却のBack−He圧力(Torr)、上部電極RFパワー( SourcePowerW)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(BiasPowerW)であり、該装置パラメータに対するエッチレート量との関係から係数を求めて前記物理モデルまたは統計モデルとしてのエッチレートモデルの予測式を、
エッチレートEtch Rate = 485 +32.5×Pressure +6.89×Cl2Flow −3.15×HBrFlow +13.8×O2FLow +8.25×CF4Flow −5.00×Back−He +1.17 SourcePower +8.86×BiasPower
とする。
【0017】
本発明の基板処理制御方法は、パラメータ抽出手段が、装置動作条件を示す装置パラメータの現状態を抽出するパラメータ抽出工程と、特徴量算出手段が、該装置パラメータの現状態から装置加工結果を示す特徴量を算出する特徴量算出工程と、継続判断手段が、特徴量算出工程で算出した特徴量が規定範囲内かどうかにより装置の処理を継続するかどうかを判断する継続判断工程とを有し、該継続判断工程で装置の処理を継続すると判定した場合に所定の基板の処理を行い、該継続判断工程で装置の処理を継続しないと判定した場合に該所定の基板の処理を停止するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0018】
また、好ましくは、本発明の基板処理制御方法における継続判断工程で装置の処理を継続しないと判定した場合に、前記所定の基板の処理をすぐに停止するのではなく、調整判断手段が、関係する装置パラメータを制御することにより前記特徴量が前記規定範囲内になる調整が可能であるかどうかを判断し、該調整が不可能であれば、該所定の基板の処理を停止する調整判断工程と、該調整が可能であれば、調整制御手段が、該関係する装置パラメータを制御して該特徴量が規定範囲内になるように調整処理を行って前記パラメータ抽出工程による処理に移行する調整制御工程とを有する。
【0019】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御方法における装置パラメータは、前記装置のチャンバ内の圧力、該チャンバ内に導入されるガス流量、基板裏面冷却用のガス圧力、上部電極RFパワー、該上部電極で発生したプラズマを引き込むための下部電極RFパワー、該チャンバ内の温度、処理時間および基板処理枚数のうちの少なくともいずれかを含む。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御方法における特徴量は、前記基板上に形成された回路パターンの線幅、膜厚および欠陥密度のうちの少なくともいずれかを含む。
【0021】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御方法における特徴量は、前記装置パラメータから物理モデルまたは統計モデルを用いて算出する。
【0022】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御方法における装置パラメータは、チャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(ClFlow、HBrFlow、OFLowおよびCFFlow)のガス流量(sccm)、裏面冷却のBack−He圧力(Torr)、上部電極RFパワー( SourcePowerW)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(BiasPowerW)であり、該装置パラメータに対するエッチシフト量の関係から係数を求めて前記物理モデルまたは前記統計モデルとしてのエッチシフトモデルの予測式を、
エッチシフトEtch Shift = −19.3 +0.772×Pressure −0.539×Cl2Flow +0.0260×HBrFlow −1.71×O2FLow +0.271×CF4Flow +0.0495×Back−He +0.0215 SourcePower +0.447×BiasPower
とする。
【0023】
さらに、好ましくは、本発明の基板処理制御方法における装置パラメータは、チャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(ClFlow、HBrFlow、OFLowおよびCFFlow)のガス流量(sccm)、裏面冷却のBack−He圧力(Torr)、上部電極RFパワー( SourcePowerW)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(BiasPowerW)であり、該装置パラメータに対するエッチレート量の関係から係数を求めて前記物理モデルまたは統計モデルとしてのエッチレートモデルの予測式を、
エッチレートEtch Rate = 485 +32.5×Pressure +6.89×Cl2Flow −3.15×HBrFlow +13.8×O2FLow +8.25×CF4Flow −5.00×Back−He +1.17 SourcePower +8.86×BiasPower
とする。
【0024】
本発明の制御プログラムは、本発明の上記基板処理制御方法の各工程をコンピュータに実行させるための処理手順が記述されたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0025】
本発明の可読記憶媒体は、本発明の上記制御プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能なものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0026】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0027】
半導体デバイスの歩留り改善や短納期化のためには、無駄のない生産を行う必要がある。そのためには、半導体ウェハである基板の線幅、膜厚および欠陥数などの特性値を短時間かつ精度良く予測することができる製造装置の制御方法が有効である。
【0028】
本発明においては、圧力やガス流量などの装置動作条件を示す装置パラメータの現状態を抽出するパラメータ抽出手段と、装置パラメータの現状態から装置加工結果を示す線幅や膜厚などの特徴量を算出する特徴量算出手段と、算出した特徴量が規定範囲かどうかにより装置の処理を継続するかどうかを判断する継続判断手段とを有し、継続判断手段が装置の処理を継続すると判定した場合に所定の処理を行い、継続判断手段が装置の処理を継続しないと判定した場合には、所定の処理を停止する。
【0029】
また、継続判断手段が装置の処理を継続しないと判定した場合に、所定の処理をすぐに停止するのではなく、関係する装置パラメータを制御することにより特徴量が規定範囲内になるかどうかの調整が可能であるかどうかを判断し、調整が不可能であれば、所定の処理を停止する調整判断手段と、その調整が可能であれば、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるように調整処理を行ってパラメータ抽出手段による処理に移行する調整制御手段とを有する。
【0030】
このように、特徴量算出手段が現状態の装置パラメータから算出した特徴量が規定範囲内かどうかにより継続判断手段が装置の処理を継続するかどうかを判断するかまたは、調整制御手段が、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるように調整処理を行って、半導体装置の製造における歩留まりおよび生産性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
以上により、本発明によれば、特徴量算出手段が現状態の装置パラメータから算出した特徴量が規定範囲内かどうかにより継続判断手段が装置の処理を継続するかどうかを判断するかまたは、調整制御手段が、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるように調整処理するため、半導体装置の製造における歩留まりおよび生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態1におけるエッチング制御装置の要部構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のエッチング制御装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本実施形態1のプラズマエッチング装置を模式的に示す縦断面図である。
【図4】代表的なゲートエッチング工程(その1)を説明するための半導体装置の縦断面図である。
【図5】代表的なゲートエッチング工程(その2)を説明するための半導体装置の縦断面図である。
【図6】線幅予測のためのエッチシフト量を管理するエッチシフトモデルを説明するための図であって、横軸の各装置パラメータに対する縦軸のエッチシフト量の依存性を示す図である。
【図7】エッチシフト量の予測値と実測値との関係を示す図である。
【図8】膜厚予測のためのエッチ量を管理するエッチレートモデルを説明するための図であって、横軸の各装置パラメータに対する縦軸のエッチレート量の依存性を示す図である。
【図9】エッチ量の予測値と実測値との関係を示す図である。
【図10】欠陥数予測のためのパーティクル数を管理する欠陥数モデルを説明するための図であって、エッチング装置の累積処理枚数に対するウエハ当たりのパーティクル数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の半導体製品の製造における基板処理制御方法および基板処理制御装置の実施形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図における構成部材のそれぞれの厚みや長さなどは図面作成上の観点から、図示する構成に限定されるものではない。
【0034】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1におけるエッチング制御装置の要部構成例を示すブロック図である。
【0035】
図1において、本実施形態1の基板処理制御装置としてのエッチング制御装置1は、コンピュータシステムで構成されており、各種入力指令を可能とするキーボードやマウス、画面入力装置などの操作入力部2と、各種入力指令に応じて表示画面上に、初期画面、選択誘導画面および処理結果画面などの各種画像を表示可能とする表示部3と、全体的な制御を行う制御手段としてのCPU4(中央演算処理装置)と、CPU4の起動時にワークメモリとして働く一時記憶手段としてのRAM5と、CPU4を動作させるための制御プログラムおよびこれに用いる各種データなどが記録されたコンピュータ読み取り可能な可読記録媒体(記憶手段)としてのROM6とを有している。
【0036】
CPU4は、操作入力部2からの入力指令の他、ROM6内からRAM5内に読み出された制御プログラムおよびこれに用いる各種データに基づいて、圧力、温度、RFパワーおよびガス流量などの装置動作条件を示す装置パラメータ(プロセスパラメータ)の現状態を抽出するパラメータ抽出手段41と、装置パラメータの現状態から、エッチング処理後の線幅や膜厚などの装置加工結果を示す特徴量を算出する特徴量算出手段42と、算出した特徴量が規定範囲かどうかにより装置の処理を継続するかどうかを判断する継続判断手段43とを有し、継続判断手段43が規定範囲内で装置の処理を継続すると判定した場合に所定のエッチング処理を行い、継続判断手段43が規定範囲外で装置の処理を継続しないと判定した場合には、所定のエッチング処理を停止する。
【0037】
また、好ましくは、CPU4は、操作入力部2からの入力指令の他、ROM6内からRAM5内に読み出された制御プログラムおよびこれに用いる各種データに基づいて、継続判断手段43が装置の処理を継続しないと判定した場合に、所定のエッチング処理をすぐに停止するのではなく、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるかどうかの調整が可能であるかを判断し、その調整が不可能であれば(NO)、エッチング処理を停止する調整判断手段44と、その調整が可能であれば(YES)、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるように調整処理する調整制御手段45とを有している。
【0038】
パラメータ抽出手段41は、少なくとも一つのパターン領域からなる回路パターンを形成した基板に対して、基板のエッチング工程の装置パラメータの現状態を抽出する。装置パラメータの現状態は、さらに詳細に後述するが、現時点でのチャンバ内の圧力(mTorr)、チャンバ内に導入されるガス流量(sccm)、裏面冷却用のHe圧力(Torr)、上部電極RFパワー(高周波電力W)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(高周波電力W)、さらに、チャンバ内の温度、処理時間および基板処理枚数のうちの少なくともいずれかを含む。
【0039】
特徴量算出手段42は、各エッチング工程の装置パラメータから基板毎の特徴量を算出する。基板毎の特徴量としては、基板上に形成された回路パターンの線幅、膜厚および欠陥密度などのいずれかを含む。基板毎の特徴量の算出には、基板の各エッチング工程の装置パラメータから、詳細に後述する物理モデルまたは統計モデルを用いる。
【0040】
継続判断手段43は、算出された基板毎の特徴量が、設定された規定範囲外の場合に装置の処理を停止し、また、算出された基板毎の特徴量が、設定された規定範囲内の場合に装置のエッチング処理を継続する。従来であれば、多数存在する装置パラメータのうちの少なくとも一つが所定の規定範囲を脱した場合に装置のエッチング処理を停止していたが、本実施形態1では、装置パラメータの一つが所定範囲を脱した場合であっても、複数または多数の装置パラメータから計算された基板毎の特徴量が設定された規定範囲を脱しない限り、装置のエッチング処理は停止されないので、装置のエッチング処理などの処理を停止する確率が少なくなって歩留まりを含め生産性が向上する。
【0041】
また、好ましくは、継続判断手段43において、装置パラメータの変化に対する基板毎の特徴量の変化が大きい装置パラメータが所定範囲を脱した場合には、装置の処理を停止しなければ不良になることが多いが、このような場合にも、所定のエッチング処理をすぐに停止するのではなく、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるかどうかの調整が可能であるかを判断し、その調整が不可能であれば(NO)、エッチング処理を停止する調整判断手段44を設けることができる。
【0042】
調整判断手段44は、関係する各装置パラメータを制御して、線幅、膜厚および欠陥密度のうちの少なくともいずれかの特徴量が規定範囲内になるかどうか、つまり調整可能かどうを判断する。
【0043】
調整制御手段45は、関係する各装置パラメータを制御して、線幅、膜厚および欠陥密度の特徴量が各規定範囲内になるように調整処理を行って、パラメータ抽出手段41による処理に移行する。
【0044】
ROM6は、ハードディスク、光ディスク、磁気ディスクおよびICメモリなどの可読記録媒体(記憶手段)で構成されている。この制御プログラムおよびこれに用いる各種データは、携帯自在な光ディスク、磁気ディスクおよびICメモリなどからROM6にダウンロードされてもよいし、コンピュータのハードディスクからROM6にダウンロードされてもよいし、無線または有線、インターネットなどを介してROM6にダウンロードされてもよい。後述するエッチング制御方法をコンピュータに実行させるための処理手順が記述された制御プログラムをコンピュータ読み取り可能な可読記憶媒体に格納して、コンピュータ(CPU4)によりエッチング制御するものである。
【0045】
次に、半導体製品の製造における基板処理制御方法としてのエッチング制御方法について説明する。
【0046】
本実施形態1の基板処理制御方法として、エッチング制御装置1を用いたエッチング制御方法は、パラメータ抽出手段41が、少なくとも一つのパターン領域からなる回路パターンを形成した基板(ウエハ)に対して、基板のエッチング工程の装置パラメータを抽出するパラメータ抽出工程と、特徴量算出手段42が、各エッチング工程の装置パラメータから基板毎の特徴量を算出する特徴量算出工程と、継続判断手段43が、算出された特徴量の目標値に基づいて装置の処理を装置パラメータを変更して継続、または算出された基板毎の特徴量が設定された規定範囲外の場合に装置の処理を停止する継続判断工程とを有する。
【0047】
また、好ましくは、エッチング制御方法は、操作入力部2からの入力指令の他、ROM6内からRAM5内に読み出された制御プログラムおよびこれに用いる各種データに基づいて、継続判断手段43が装置の処理を継続しないと判定した場合に、所定のエッチング処理をすぐに中止するのではなく、調整判断手段44が、関係する各装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるかどうかの調整が可能であるかを判断し、調整が不可能であれば(NO)、エッチング処理を停止する調整判断工程と、その調整が可能であれば(YES)、調整制御手段45が、関係する各装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるように調整処理する調整制御工程とを有している。
【0048】
半導体基板のエッチング処理において、エッチング装置のパラメータは、処理後に計測される線幅や膜厚および欠陥数などの半導体製品の特徴量より算出される。これにより、処理状態が適切(特徴量が規定範囲内)であると認められるときは、半導体基板に対するエッチング処理をそのままの継続し、エッチング処理状態が不適切(特徴量が規定範囲外)であると認められるときは、半導体基板に対する装置パラメータ(プロセスパラメータ)の少なくともいずれかを変更するかまたは半導体基板に対するエッチング処理を停止する。このようにして、半導体基板に対するエッチング処理中に適切な処置をとることにより、半導体装置の製造における歩留まりの向上を図ることが可能となり、生産性の低下を最小限に抑えることが可能となる。
【0049】
上記構成により、以下、その動作を説明する。
【0050】
図2は、図1のエッチング制御装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0051】
図2に示すように、まず、ステップS1でパラメータ抽出手段41が装置パラメータの現状況のモニタリングを行う。このモニタリングは、パラメータ抽出手段41が、少なくとも一つのパターン領域からなる回路パターンを形成した基板(半導体ウエハ)に対して、基板のエッチング工程のチャンバ圧力やガス流量などの装置パラメータの現状態を検出する。
【0052】
次に、ステップS2〜S4で同時に、特徴量算出手段42が、基板の各エッチング工程で抽出した各装置パラメータから、後述する物理モデルまたは統計モデルを用いて、ステップS2で特徴量の線幅のエッチシフトを計算して予測し、ステップS3で特徴量の膜厚のエッチレートを計算して予測し、ステップS4で特徴量の欠陥密度を装置パラメータの基板処理枚数から予測する。
【0053】
続いて、ステップS5〜S7で同時に継続判断手段43が継続判断処理を行う。即ち、ステップS5で継続判断手段43が、ステップS2で予測した線幅のエッチシフト量が規定範囲内にあるかどうか、即ち、ステップS2で予測した線幅が「OK」かどうかを判断する。また、ステップS6で継続判断手段43が、ステップS3で予測した膜厚のエッチレート量が規定範囲内にあるかどうか、即ち、ステップS3で予測した膜厚が「OK」かどうかを判断する。また、ステップS7で継続判断手段43が、ステップS4で予測した欠陥数(パーティクル数)が規定範囲内かどうか、即ち、ステップS4で予測した欠陥密度が「OK」かどうかを判断する。
【0054】
さらに、ステップS8で、ステップS2で予測した線幅が「OK」、ステップS3で予測した膜厚が「OK」およびステップS4で予測した欠陥密度が「OK」の全て「OK」かどうかを継続判断手段43が判断する。継続判断手段43が、各特徴量の全てが「OK」の場合に、次のステップS9で基板のエッチング処理を実行して良好な線幅、膜厚および欠陥密度とすることができる。
【0055】
次に、ステップS5〜S7で継続判断手段43による継続判断処理において少なくともいずれかが「NO」の場合、即ち、線幅、膜厚および欠陥密度のうちの少なくともいずれかが規定範囲内ではない場合(特徴量が規定範囲外)に、ステップS10において、調整判断手段44が、関係する各装置パラメータを制御して、線幅、膜厚および欠陥密度のうちの少なくともいずれかが規定範囲内になるかどうか、つまり調整可能かどうを判断する。ステップS10で調整が不可能な場合(NO)にはステップS11でエッチング処理を停止処理する。
【0056】
また、ステップS10で調整が可能な場合(YES)には、ステップS12で調整制御手段45が、関係する各装置パラメータを制御して、線幅、膜厚および欠陥密度が各規定範囲内になるように調整処理する。その調整処理後、ステップS1の関係する各装置パラメータのモニタリング処理に移行する。
【0057】
ここで、本実施形態1のエッチング制御装置1およびこれを用いたエッチング制御方法についてさらに詳細に説明する。まずは、プラズマエッチング装置について簡単に説明する。
【0058】
図3は、本実施形態1のプラズマエッチング装置を模式的に示す縦断面図である。
【0059】
図3において、本実施形態1のプラズマエッチング装置11は、ドーム状部材12の外周側にコイル13が巻きつけられて上部電極14を構成している。下部電極を構成するステージ15上に半導体ウエハ16が搭載されている。上部電極14と下部電極上の半導体ウエハ16との間の上部電極14側に、チャンバ17内にここでは4種類のCl、HBr、OおよびCFのガスを導入するガス導入口を持つガス導入管18が配設されている。下部電極を構成するステージ15には、半導体ウエハ16の裏面を冷却するためのHeが供給されている。
【0060】
上記構成により、上部電極14に所定のRFパワー(高周波電力W)が印加され、上部電極14で発生したガス導入管18からのガスのプラズマを引き込む下部電極に所定のRFパワーが印加されて、ステージ15上の基板としての半導体ウエハ16、即ち、少なくとも一つのパターン領域からなる回路パターンを形成した半導体ウエハ16上のレジスト膜が開口した部分が所定線幅で所定膜厚になるようにエッチング処理される。
【0061】
次に、代表的なエッチング工程の一つであるゲートエッチング工程の制御について説明する。
【0062】
図4および図5は、代表的なゲートエッチング工程を説明するための半導体装置の縦断面図である。
【0063】
図4に示すように、まず、半導体ウエハとしてのシリコンウエハなどからなる半導体基板21上に、LOCOS法やShallow Trench Isolation(STI)などの既知の方法で素子分離層22を形成して素子分離を行い、半導体基板21上に、フォトレジストパターンを形成し、イオン注入および熱処理を行ってウェル形成を行う(図示しない)。
【0064】
半導体基板21上にCVD法や熱酸化などにより、例えばSiO膜またはSiON膜からなるゲート酸化膜23を形成し、さらに例えばポリシリコン膜(またはメタル)からなるゲート膜24を形成する。その後、既知のアライメント方法でゲート膜を24上にレジストパターン25を形成し、プラズマエッチング装置11に供じる(図3)。
【0065】
プラズマエッチング装置11によるエッチング処理時の制御については詳細は後述する。その後に残存するレジストパターン25を例えば酸素プラズマなどにより除去した後、ゲートパターン側壁に付着するエッチング処理時の反応生成物を例えばフッ化水素などの薬液を用いて除去し、図5に示すように、半導体基板21上の所定位置に所望形状のゲート電極24aを形成する。
【0066】
ゲート電極24aを形成後の半導体基板21が所望の特性(例えば線幅、膜厚、ゲート酸化膜残膜および欠陥密度など)が得られているかを計測する。
【0067】
その後、イオン注入工程や熱処理工程を実施し、層間絶縁膜として、例えばBPSGまたは熱酸化により成膜したシリコン酸化膜を形成し、CMP法などで平坦化した後にコンタクトホールを既知のリソグラフィー法やドライエッチング法で形成し、タングステンなどの材料を埋め込んでコンタクトプラグを形成し、その上部にアルミニウムなどの材料で金属配線層を形成する。さらに、その後は、半導体製品に必要とされる金属配線層をビアプラグを介して既知の方法で形成し、最後に最上層の金属配線層上に接続窓を形成して半導体装置を得る(図示しない)。
【0068】
次に、ゲートエッチング工程の制御のうち線幅制御方法について説明する。
【0069】
ゲートエッチング工程の装置パラメータ(プロセスパラメータ)としては、例えば、(1)処理時の圧力、(2)ガスの種類および供給量(ガスの種類は例えば、塩素ガス、臭化水素ガス、酸素、4フッ化メタン)、(3)半導体基板冷却用ガス(ヘリウム)の圧力、(4)RFパワー、(5)処理時間などがある。
【0070】
例えばゲートエッチング条件として、圧力60ミリトール(mTorr)、塩素流量 60sccm、臭化水素流量100sccm、酸素流量5sccm、4フッ化炭素流量25sccm、冷却用ヘリウムガス圧力8トール(Torr)、RFパワー(ソース電極;上部電極)800W、(バイアス電極;下部電極)80Wの条件について、各装置パラメータを独立で変化させた場合のエッチシフト値を算出し、エッチシフト値の各パラメータ毎の依存性を算出する。これを後述する図6に示している。
【0071】
全ての装置パラメータとエッチシフト量の関係より、物理モデルまたは統計モデルとして例えばエッチシフトモデルは以下のように抽出する。
【0072】
エッチシフト量=k + α*圧力 + β*塩素流量 + γ*臭化水素流量 + θ*酸素流量 + w*4フッ化炭素 + x*冷却用ヘリウム圧力 + y*RFパワー(ソース電極) + z*RFパワー(バイアス電極)
k、α、β、γ、θ、w、x、y、zはそれぞれ係数が算出される。
【0073】
上記で算出されたエッチシフトモデルおよび各係数とエッチシフトのターゲットよりエッチング処理時の装置パラメータのスペック(許容値)が算出される。
【0074】
上記で算出されたスペックを各装置パラメータで抽出した値からエッチシフトモデルに基づくエッチシフト量の予測値を算出する機能を有する制御装置へ入力することにより、定められたスペックの規定範囲内で半導体基板の処理が行われる。また、処理中にスペックの範囲を超えた処理が行われた場合には、エッチング処理を停止またはエッチシフト値がスペック内(規定範囲内)となるように各装置パラメータの変更により処理が継続され得る。
【0075】
さらに、図6および図7を用いてゲートエッチング工程の制御項目のうち線幅制御方法について更に具体的に説明する。
【0076】
図6は、線幅予測のためのエッチシフト量を管理するエッチシフトモデルを説明するための図であって、横軸の各装置パラメータに対する縦軸のエッチシフト量の依存性を示す図である。
【0077】
図6に示すように、縦軸がエッチシフト量で、横軸が、エッチング装置の装置パラメータとして、左からチャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(Cl、HBr、OおよびCF)のガス流量(sccm)、裏面冷却のHe圧力(Torr)、上部電極RFパワー(高周波電力W)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(高周波電力W)である。
【0078】
エッチシフト量とは、例えばゲートのポリシリコン(またはメタル)をエッチングする場合に、エッチング後の線幅−フォト後の線幅に対応しており、エッチングでどれだけ線幅が変動したかを示す値である。フォト後の線幅はエッチング時点で分かっているので、エッチング装置で制御するのはエッチシフト量であって、エッチシフト量がエッチング装置の個々のパラメータに対してどの程度の係数になっているのかである。8種類のパラメータに対するエッチシフト量の関係において、中心にあるのは個々のパラメータの制御すべきターゲットである。個々のパラメータがエッチング装置側で変化したときに、エッチング後の線幅がどの程度変動するのかを予測することができる。
【0079】
この8種類の装置パラメータに対するエッチシフトの関係から係数を求めて予測式(エッチシフトモデル)を作ることができる。
【0080】
エッチシフトEtch Shift = −19.3 +0.772×Pressure −0.539×Cl2Flow +0.0260×HBrFlow −1.71×O2FLow +0.271×CF4Flow +0.0495×Back−He +0.0215 SourcePower +0.447×BiasPower
この予測式(エッチシフトモデル)を用いてエッチシフト量を予測することができる。例えば、チャンバ内の圧力のターゲットが5mTorrのところ、従来では、4mTorrになるとエッチング装置のエッチング処理が停止するが、本実施形態1では、チャンバ内の圧力が4mTorrのときに、他のパラメータを含めてエッチシフトがどのようになるかを確認することができ、確認結果において、エッチシフト量が正常(規定範囲内)であればエッチング装置のエッチング処理を停止する必要がない。さらに、所定の線幅を得るために、他の装置パラメータを調整することもできる。例えばチャンバ内の圧力が4mTorrのときに、他の装置パラメータの例えばClのガス流量を変化させる。これによって、線幅が安定した半導体ウエハを得ることができて、歩留まりおよび生産性を向上させることができる。
【0081】
図7は、エッチシフト量の予測値と実測値との関係を示す図である。
【0082】
図7に示すように、上記予測式(エッチシフトモデル)をグラフ化したものであり、図7の左右方向の破線がエッチシフト実測値の中心を示し、このときのエッチシフト実測値が「6.3」である。エッチシフトの予測値が「6.3」のときに、エッチシフトの実測値も「6.3」である。このエッチシフト中心ほどエッチシフトの予測値と実測値とが一致しているが、中心から離れるほどエッチシフトの予測値と実測値とが分散する。そのバラツキの範囲内を規定範囲内として一点鎖線で示している。例えばエッチシフトの予測値が「0」のとき、即ち、エッチ後の線幅−フォト後の線幅が「0」のとき、エッチシフトの実測値は「0」を含む一点鎖線の範囲内でばらつく。
【0083】
図8は、膜厚予測のためのエッチ量を管理するエッチレートモデルを説明するための図であって、横軸の各装置パラメータに対する縦軸のエッチレート量の依存性を示す図である。
【0084】
図8に示すように、縦軸がエッチレート量で、横軸が、エッチング装置のパラメータとして、左からチャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(Cl、HBr、OおよびCF)のガス流量(sccm)、上部電極RFパワーWs(高周波電力W)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワーWb(高周波電力W)、裏面冷却のHe圧力(Torr)である。
【0085】
エッチレート量とは、例えばゲートのポリシリコンまたはメタルをエッチングする場合に、エッチング後の所望の残膜厚を得るためのエッチ量であり、エッチングでどれだけの膜厚になるかを示す単位エッチ量である。エッチレート量がエッチング装置の個々の装置パラメータに対してどの程度の係数になっているのかを知る必要がある。8種類のパラメータに対するエッチレート量の関係において、中心にあるのは個々の装置パラメータの制御すべきターゲットである。個々の装置パラメータがエッチング装置側で変化したときに、エッチング後のエッチレート量がどの程度変動するのかを予測することができる。
【0086】
この8種類の装置パラメータに対するエッチ量の関係から係数を求めて予測式(エッチレートモデル)を作ることができる。
【0087】
エッチレートEtch Rate = 485 +32.5×Pressure +6.89×Cl2Flow −3.15×HBrFlow +13.8×O2FLow +8.25×CF4Flow −5.00×Back−He +1.17 SourcePower +8.86×BiasPower
この予測式(エッチレートモデル)を用いてエッチ量を予測することができる。例えば、チャンバ内の圧力のターゲットが6.3mTorrのところ、従来では、4mTorrになるとエッチング装置のエッチング処理が停止するが、本実施形態1では、チャンバ内の圧力が4mTorrのときに、他のパラメータを含めてエッチ量がどのようになるかを確認することができ、エッチ量が正常であればエッチング装置を停止する必要がない。さらに、所定の膜厚を得るために、他のパラメータを調整することもできる。例えばチャンバ内の圧力が4mTorrのときに、他のパラメータの例えばClのガス流量を変化させる。これによって、膜厚が安定した半導体ウエハで生産性を向上させることができる。
【0088】
図9は、エッチ量の予測値と実測値との関係を示す図である。
【0089】
図9に示すように、上記予測式(エッチレートモデル)をグラフ化したものであり、図9の左右方向の破線が実測値の中心位置を示し、このときの単位エッチ量(エッチレート量)の実測値が「2673」である。エッチ量の予測値が「2673」のときに、エッチ量の実測値も略「2673」である。この中心位置ほど単位エッチ量(エッチレート量)の予測値と実測値が一致しているが、中心から離れるほど単位エッチ量(エッチレート量)の予測値と実測値が分散する。そのバラツキの規定範囲内を一点鎖線で示している。
【0090】
図10は、欠陥数予測のためのパーティクル数を管理する欠陥数モデルを説明するための図であって、エッチング装置の累積処理枚数に対するウエハ当たりのパーティクル数を示す図である。
【0091】
図10に示すように、装置周辺に膜が付着してそれが累積的に増加してくるので、ウエハ1枚当たりのパーティクル数はエッチング装置の基板累積処理枚数に対して指数関数的に上昇する。特徴量のスペックは、ウエハ1枚当たりのパーティクル数を15個以下とする。この場合、装置パラメータとして、エッチング装置の基板累積処理枚数を800枚以下に設定する必要がある。
【0092】
以上により、本実施形態1によれば、圧力やガス流量などの装置動作条件を示す装置パラメータの現状態を抽出するパラメータ抽出手段41と、装置パラメータの現状態から装置加工結果を示す線幅や膜厚などの特徴量を算出する特徴量算出手段42と、算出した特徴量が規定範囲かどうかにより装置の処理を継続するかどうかを判断する継続判断手段43とを有し、継続判断手段43が装置の処理を継続すると判定した場合に所定の処理を行い、継続判断手段43が装置の処理を継続しないと判定した場合には、所定の処理を停止する。
【0093】
また、継続判断手段43が装置の処理を継続しないと判定した場合に、所定の処理をすぐに停止するのではなく、関係する装置パラメータを制御することにより特徴量が規定範囲内になるかどうかの調整が可能であるかどうかを判断し、調整が不可能であれば、所定の処理を停止する調整判断手段44と、その調整が可能であれば、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるように調整処理を行ってパラメータ抽出手段による処理に移行する調整制御手段45とを有する。
【0094】
このように、特徴量算出手段42が現状態の装置パラメータから算出した特徴量が規定範囲内かどうかにより継続判断手段43が装置の処理を継続するかどうかを判断するかまたは、調整制御手段45が、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるように調整処理を行うため、半導体製品の製造における歩留まりの向上および生産性の向上を図ることができる。この場合、エッチング工程の装置パラメータの目標値を基板の特徴量から設定することができる。
【0095】
要するに、基板の歩留りに密接に結びつく、各工程のプロセス特性値および欠陥密度の値から、エッチング装置の制御を行なうことができるため、生産性、歩留りの面から、各パラメータの最適なスペック設定が可能となる。このため、半導体デバイスの歩留り改善や短納期化に対応した、無駄のない生産が可能になる。
【0096】
なお、本実施形態1では、特に説明しなかったが、半導体製品の製造におけるエッチング制御方法では、装置パラメータ(プロセスパラメータ)の変更は、半導体基板の特徴量とプロセスパラメータとの関係を示すプロセストレンドデータに基づいて行われることを特徴としてもよい。このようにすれば、かかるデータに基づいて、プロセスパラメータを適切に変更することが可能となる。
【0097】
なお、本実施形態1では、特に説明しなかったが、半導体製品の製造におけるエッチング制御方法では、装置パラメータ(プロセスパラメータ)には、チャンバに印加する高周波の電力、チャンバ内における圧力、チャンバに導入されるガスの流量、チャンバ内における温度、および半導体基板を挟むようにチャンバ内に配置された電極間の距離のうちの少なくともいずれかが含まれることを特徴としてもよい。半導体基板の処理状態が適切でないとき、上記したプロセスパラメータを変更することにより処理状態が修正され、その結果、所望の処理結果および所望の特性を有する半導体製品を効率よく得ることが可能となる。
【0098】
なお、本実施形態1では、特に説明しなかったが、エッチング制御方法では、半導体基板の特徴量には、半導体基板上の線幅、膜厚および欠陥密度のうちの少なくともいずれかが含まれることを特徴としてもよい。エッチング処理においては、処理中にモニタされた電流信号および電圧信号に基づいて、上記した装置パラメータを算出することができる。よって、かかる装置パラメータから計算される特徴量が規定範囲内かどうかに基づいてエッチング処理が適切か否かを判定することが可能となり、これにより、半導体基板に対する処理中に適切な処置を取ることにより、半導体製品における歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0099】
なお、本実施形態1では、特に説明しなかったが、半導体製品の製造におけるエッチング制御方法は、上記した本発明に係る半導体製品の製造におけるエッチング制御方法を有効に実施するための装置である。
【0100】
即ち、半導体製品の製造におけるエッチング制御方法は、少なくとも一つのパターン領域からなる回路パターンを形成した半導体基板に対し、基板のエッチング工程の装置パラメータを抽出する工程と、各エッチング工程の装置パラメータから基板毎の特徴量を算出する工程と、算出された特徴量の目標値に基づいて装置の処理を処理時間及び装置パラメータの少なくともいずれかを変更して継続、または算出された基板毎の特徴量が設定された規定範囲外の場合に装置の処理を停止する工程とを備えることを特徴とする。
【0101】
なお、本実施形態1でも説明したが、本発明に係る半導体製品の製造におけるエッチング装置の制御方法における基板毎の特徴量の算出は、基板の各エッチング工程の装置パラメータから物理モデルまたは統計モデルを用いることを特徴とする。
【0102】
なお、本実施形態1では、プラズマエッチング装置11を用いてエッチング処理について本発明の基板処理制御装置および基板処理制御方法をエッチング制御装置およびエッチング制御方法に適用して説明したが、これに限らず、図4および図5のゲート膜24を形成する場合に、装置パラメータを酸素流量やチャンバ内温度およびチャンバ内圧力とし、特徴量を膜厚として本発明の基板処理制御装置および基板処理制御方法を薄膜形成制御装置および薄膜形成制御方法に適用することもできる。
【0103】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、半導体製品の製造におけるエッチング処理などの基板処理制御装置および基板処理制御方法、この基板処理制御方法の各工程をコンピュータに実行させるための処理手順が記述された制御プログラム、この制御プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な可読記憶媒体の分野において、特徴量算出手段が現状態の装置パラメータから算出した特徴量が規定範囲内かどうかにより継続判断手段が装置の処理を継続するかどうかを判断するかまたは、調整制御手段が、関係する装置パラメータを制御して特徴量が規定範囲内になるように調整処理するため、半導体装置の製造における歩留まりおよび生産性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 エッチング制御装置(基板処理制御装置)
2 操作入力部
3 表示部
4 CPU(制御部)
41 パラメータ抽出手段
42 特徴量算出手段
43 継続判断手段
44 調整判断手段
45 調整制御手段
5 RAM(一時記憶手段)
6 ROM(可読記録媒体)
11 プラズマエッチング装置
12 ドーム状部材
13 コイル
14 上部電極
15 ステージ
16 半導体ウエハ(基板)
17 チャンバ
18 ガス導入管
21 半導体基板
22 素子分離層
23 ゲート酸化膜
24 ゲート膜
24a ゲート電極
25 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置動作条件を示す装置パラメータの現状態を抽出するパラメータ抽出手段と、該装置パラメータの現状態から装置加工結果を示す特徴量を算出する特徴量算出手段と、該特徴量算出手段で算出した特徴量が規定範囲内かどうかにより装置の処理を継続するかどうかを判断する継続判断手段とを有し、該継続判断手段が装置の処理を継続すると判定した場合に所定の基板の処理を行い、該継続判断手段が装置の処理を継続しないと判定した場合には、該所定の基板の処理を停止する基板処理制御装置。
【請求項2】
前記継続判断手段が装置の処理を継続しないと判定した場合に、前記所定の基板の処理をすぐに停止するのではなく、関係する装置パラメータを制御することにより前記特徴量が前記規定範囲内になる調整が可能であるかどうかを判断し、該調整が不可能であれば、該所定の基板の処理を停止する調整判断手段と、該調整が可能であれば、該関係する装置パラメータを制御して該特徴量が規定範囲内になるように調整処理を行って前記パラメータ抽出手段による処理に移行する調整制御手段とを有する請求項1に記載の基板処理制御装置。
【請求項3】
前記装置パラメータは、前記装置のチャンバ内の圧力、該チャンバ内に導入されるガス流量、基板裏面冷却用のガス圧力、上部電極RFパワー、該上部電極で発生したプラズマを引き込むための下部電極RFパワー、該チャンバ内の温度、処理時間および基板処理枚数のうちの少なくともいずれかを含む請求項1に記載の基板処理制御装置。
【請求項4】
前記特徴量は、前記基板上に形成された回路パターンの線幅、膜厚および欠陥密度のうちの少なくともいずれかを含む請求項1に記載の基板処理制御装置。
【請求項5】
前記特徴量は、前記装置パラメータから物理モデルまたは統計モデルを用いて算出する請求項1に記載の基板処理制御装置。
【請求項6】
前記装置パラメータは、チャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(ClFlow、HBrFlow、OFLowおよびCFFlow)のガス流量(sccm)、裏面冷却のBack−He圧力(Torr)、上部電極RFパワー(SourcePowerW)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(BiasPowerW)であり、該装置パラメータに対するエッチシフト量との関係から係数を求めて前記物理モデルまたは統計モデルとしてのエッチシフトモデルの予測式を、
エッチシフトEtch Shift = −19.3 +0.772×Pressure −0.539×Cl2Flow +0.0260×HBrFlow −1.71×O2FLow +0.271×CF4Flow +0.0495×Back−He +0.0215 SourcePower +0.447×BiasPower
とする請求項5に記載の基板処理制御装置。
【請求項7】
前記装置パラメータは、チャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(ClFlow、HBrFlow、OFLowおよびCFFlow)のガス流量(sccm)、裏面冷却のBack−He圧力(Torr)、上部電極RFパワー( SourcePowerW)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(BiasPowerW)であり、該装置パラメータに対するエッチレート量との関係から係数を求めて前記物理モデルまたは統計モデルとしてのエッチレートモデルの予測式を、
エッチレートEtch Rate = 485 +32.5×Pressure +6.89×Cl2Flow −3.15×HBrFlow +13.8×O2FLow +8.25×CF4Flow −5.00×Back−He +1.17 SourcePower +8.86×BiasPower
とする請求項5に記載の基板処理制御装置。
【請求項8】
パラメータ抽出手段が、装置動作条件を示す装置パラメータの現状態を抽出するパラメータ抽出工程と、特徴量算出手段が、該装置パラメータの現状態から装置加工結果を示す特徴量を算出する特徴量算出工程と、継続判断手段が、特徴量算出工程で算出した特徴量が規定範囲内かどうかにより装置の処理を継続するかどうかを判断する継続判断工程とを有し、該継続判断工程で装置の処理を継続すると判定した場合に所定の基板の処理を行い、該継続判断工程で装置の処理を継続しないと判定した場合に該所定の基板の処理を停止する基板処理制御方法。
【請求項9】
前記継続判断工程で装置の処理を継続しないと判定した場合に、前記所定の基板の処理をすぐに停止するのではなく、調整判断手段が、関係する装置パラメータを制御することにより前記特徴量が前記規定範囲内になる調整が可能であるかどうかを判断し、該調整が不可能であれば、該所定の基板の処理を停止する調整判断工程と、該調整が可能であれば、調整制御手段が、該関係する装置パラメータを制御して該特徴量が規定範囲内になるように調整処理を行って前記パラメータ抽出工程による処理に移行する調整制御工程とを有する請求項8に記載の基板処理制御方法。
【請求項10】
前記装置パラメータは、前記装置のチャンバ内の圧力、該チャンバ内に導入されるガス流量、基板裏面冷却用のガス圧力、上部電極RFパワー、該上部電極で発生したプラズマを引き込むための下部電極RFパワー、該チャンバ内の温度、処理時間および基板処理枚数のうちの少なくともいずれかを含む請求項8に記載の基板処理制御方法。
【請求項11】
前記特徴量は、前記基板上に形成された回路パターンの線幅、膜厚および欠陥密度のうちの少なくともいずれかを含む請求項8に記載の基板処理制御方法。
【請求項12】
前記特徴量は、前記装置パラメータから物理モデルまたは統計モデルを用いて算出する請求項8に記載の基板処理制御方法。
【請求項13】
前記装置パラメータは、チャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(ClFlow、HBrFlow、OFLowおよびCFFlow)のガス流量(sccm)、裏面冷却のBack−He圧力(Torr)、上部電極RFパワー( SourcePowerW)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(BiasPowerW)であり、該装置パラメータに対するエッチシフト量の関係から係数を求めて前記物理モデルまたは前記統計モデルとしてのエッチシフトモデルの予測式を、
エッチシフトEtch Shift = −19.3 +0.772×Pressure −0.539×Cl2Flow +0.0260×HBrFlow −1.71×O2FLow +0.271×CF4Flow +0.0495×Back−He +0.0215 SourcePower +0.447×BiasPower
とする請求項12に記載の基板処理制御方法。
【請求項14】
前記装置パラメータは、チャンバ内の圧力Pressure(mTorr)、チャンバ内に導入される4種類(ClFlow、HBrFlow、OFLowおよびCFFlow)のガス流量(sccm)、裏面冷却のBack−He圧力(Torr)、上部電極RFパワー( SourcePowerW)、上部電極で発生したプラズマを引き込む下部電極RFパワー(BiasPowerW)であり、該装置パラメータに対するエッチレート量の関係から係数を求めて前記物理モデルまたは統計モデルとしてのエッチレートモデルの予測式を、
エッチレートEtch Rate = 485 +32.5×Pressure +6.89×Cl2Flow −3.15×HBrFlow +13.8×O2FLow +8.25×CF4Flow −5.00×Back−He +1.17 SourcePower +8.86×BiasPower
とする請求項12に記載の基板処理制御方法。
【請求項15】
請求項8から14のいずれかに記載の基板処理制御方法の各工程をコンピュータに実行させるための処理手順が記述された制御プログラム。
【請求項16】
請求項15に記載の制御プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な可読記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84746(P2013−84746A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223401(P2011−223401)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】