説明

基板処理方法及び基板処理装置

【課題】揮発性を有する乾燥液を用いて基板を乾燥させる際に、基板の表面にウォーターマークが発生して微細なパーティクルが付着するのを防止すること。
【解決手段】本発明では、基板を処理液で液処理した後に揮発性処理液で乾燥処理する基板処理方法及び基板処理装置において、前記基板に処理液を供給して処理する工程と、前記処理液の液膜が形成された前記基板を加熱する工程と、前記処理液の液膜が形成された基板へ揮発性処理液を供給する工程と、前記基板への前記揮発性処理液の供給を停止する工程と、前記揮発性処理液を除去して基板を乾燥する工程とを有し、前記基板を加熱する工程は前記揮発性処理液を供給する工程よりも前に開始され、前記基板の表面が前記揮発性処理液から露出するよりも前に、前記基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように前記基板が加熱されることにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理液で液処理した後に揮発性処理液で乾燥処理する基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体部品やフラットディスプレイなどを製造する場合には、半導体ウエハや液晶基板などの基板に対して基板処理装置を用いて各種の処理液で液処理を施し、その後、処理液の付着した基板を乾燥させる乾燥処理を施している。ここで、基板処理装置における処理液による液処理としては、洗浄液やエッチング液などの薬液で基板の表面を洗浄処理やエッチング処理するものや、洗浄処理やエッチング処理した基板の表面を純水などのリンス液でリンス処理するものなどがある。
【0003】
この基板処理における乾燥処理では、IPA(Isopropyl alcohol)などの揮発性を有する薬液を乾燥液として用い、基板の表面に揮発性処理液を吐出してリンス液などと置換することによって基板を迅速に乾燥させるようにしている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−227467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年の基板の表面に形成される回路パターンやエッチングマスクパターンなどの微細化に伴って、基板処理時に基板の表面に残存するより微細なパーティクルも問題となるようになってきた。上記従来の基板処理では、乾燥処理時に揮発性処理液の気化に伴って基板が冷却されて大気中の水分が基板上で結露してウォーターマークが発生してしまい、基板の表面により微細なパーティクルが付着するおそれがあった。
【0006】
そのため、揮発性処理液で乾燥処理する基板処理装置の内部に大量の乾燥空気を流して低湿度環境下で乾燥させる基板処理も行われている。
【0007】
しかしながら、上記従来の基板処理では、乾燥空気を必要とするために基板処理に要するランニングコストが増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、基板を処理液で液処理した後に揮発性処理液を供給することにより乾燥処理する基板処理方法において、前記基板に処理液を供給して処理する工程と、前記処理液の液膜が形成された前記基板を加熱する工程と、前記処理液の液膜が形成された基板へ揮発性処理液を供給する工程と、前記基板への前記揮発性処理液の供給を停止する工程と、前記揮発性処理液を除去して基板を乾燥する工程とを有し、前記基板を加熱する工程は前記揮発性処理液を供給する工程よりも前に開始され、前記基板の表面が前記揮発性処理液から露出するよりも前に、前記基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように前記基板が加熱されることにした。
【0009】
また、前記処理液は、基板上面に供給した薬液を除去してリンスする工程のためのリンス液であり、前記リンスする工程の前に前記基板を薬液で処理する工程をさらに有し、前記基板を加熱する工程は、高温のリンス液を用いて基板を加熱することにした。
【0010】
また、前記基板を加熱する工程は、前記基板の上面に前記高温のリンス液を供給することにした。
【0011】
また、前記基板を加熱する工程は、前記基板の上面及び下面に前記高温のリンス液を供給することにした。
【0012】
また、前記高温のリンス液として30℃〜70℃のリンス液を用いることにした。
【0013】
また、前記揮発性処理液として20℃〜70℃の揮発性処理液を用い、高温のリンス液として30℃〜70℃のリンス液を用いることにした。
【0014】
また、前記基板の上面に前記揮発性処理液を供給する工程の間に前記基板の下面に前記高温のリンス液を供給することにした。
【0015】
また、本発明では、基板を処理液で液処理した後に揮発性処理液を供給することにより乾燥処理する基板処理装置において、前記基板に処理液を供給するための処理液供給手段と、前記基板に揮発性処理液を供給するための揮発性処理液供給手段と、前記基板を加熱するための基板加熱手段と、前記揮発性処理液供給手段及び前記基板加熱手段を制御するための制御手段とを有し、前記制御手段は、前記処理液供給手段から前記基板に処理液を供給して前記基板を処理する工程と、前記基板加熱手段によって前記処理液の液膜が形成された前記基板を加熱する工程と、前記揮発性処理液供給手段から前記処理液の液膜が形成された前記基板へ揮発性処理液を供給する工程と、前記揮発性処理液供給手段から前記基板への揮発性処理液の供給を停止する工程と、前記揮発性処理液を除去して前記基板を乾燥する工程とを実行し、前記基板を加熱する工程は前記揮発性処理液を供給する工程よりも前に開始され、前記基板の表面が前記揮発性処理液から露出するよりも前に、前記基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように、前記基板加熱手段が前記基板を加熱することにした。
【0016】
また、前記基板処理装置は、前記基板に薬液を供給するための薬液供給手段と、前記薬液を除去するためのリンス液を供給するためのリンス液供給手段とをさらに有し、前記制御部は、前記薬液供給手段から前記基板に薬液を供給して前記基板を処理する工程と、前記リンス液供給手段から前記基板にリンス液を供給して前記基板をリンス処理する工程とをさらに実行し、前記基板を加熱する工程は、高温のリンス液を用いて前記基板を加熱させることにした。
【0017】
また、前記基板を加熱する工程は、前記基板の上面に前記高温のリンス液を供給することにした。
【0018】
また、前記基板を加熱する工程は、前記基板の上面及び下面に前記高温のリンス液を供給することにした。
【0019】
また、前記高温のリンス液として30℃〜70℃のリンス液を用いることにした。
【0020】
また、前記揮発性処理液として20℃〜70℃の揮発性処理液を用い、高温のリンス液として30℃〜70℃のリンス液を用いることにした。
【0021】
また、前記基板の上面に前記揮発性処理液を供給する工程の間に前記基板の下面に前記高温のリンス液を供給することにした。
【0022】
また、本発明では、基板を処理液で液処理した後に揮発性処理液を供給することにより乾燥処理する基板処理装置において、前記基板に処理液を供給するための処理液供給手段と、前記基板に揮発性処理液を供給するための揮発性処理液供給手段と、前記基板を加熱するための基板加熱手段と、基板処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体とを有し、前記基板処理プログラムは、前記処理液供給手段から前記基板に処理液を供給して前記基板を処理する工程と、前記基板加熱手段によって前記処理液の液膜が形成された前記基板を加熱する工程と、前記揮発性処理液供給手段から前記処理液の液膜が形成された前記基板へ揮発性処理液を供給する工程と、前記揮発性処理液供給手段から前記基板への揮発性処理液の供給を停止する工程と、前記揮発性処理液を除去して前記基板を乾燥する工程とを実行し、前記基板を加熱する工程は前記揮発性処理液を供給する工程よりも前に開始され、前記基板の表面が前記揮発性処理液から露出するよりも前に、前記基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように、前記基板加熱手段が基板を加熱することにした。
【発明の効果】
【0023】
そして、本発明では、揮発性処理液を用いた乾燥処理において、基板の表面が揮発性処理液から露出する前に基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように基板を加熱することで、乾燥処理時に揮発性処理液の気化熱によって基板の表面温度が低下しても、乾燥処理中の基板の表面温度が露点温度よりも高くなっているために、基板の表面で結露が生じることがなく、基板の表面にウォーターマークが発生して微細なパーティクルが付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】基板処理装置を示す平面図。
【図2】基板処理部を示す模式図。
【図3】基板処理方法を示す工程図。
【図4】基板処理部の動作説明図(基板受取工程)。
【図5】同動作説明図(洗浄処理工程)。
【図6】同動作説明図(リンス処理工程)。
【図7】同動作説明図(基板加熱工程)。
【図8】同動作説明図(乾燥処理工程前半)。
【図9】同動作説明図(乾燥処理工程後半)。
【図10】同動作説明図(基板受渡工程)。
【図11】他の基板処理部を示す模式図。
【図12】他の基板処理部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る基板処理装置及びこの基板処理装置で用いる基板処理方法並びに基板処理装置に基板の処理を行わせるための基板処理プログラムの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示すように、基板処理装置1は、基板搬入出台4と、基板搬送室5と、基板処理室6とを備えている。基板搬入出台4は、基板処理装置1の前端部に形成され、複数枚(たとえば、25枚。)の基板2(ここでは、半導体ウエハ。)を水平状態で収容するキャリア3を載置する。基板搬送室5は、基板搬入出台4の後部に形成され、基板2の搬送を行う。基板処理室6は、基板搬送室5の後部に形成され、基板2の洗浄や乾燥などの各種の処理を施す。
【0027】
基板搬入出台4は、4個のキャリア3を基板搬送室5の前壁7に密着させた状態で左右に間隔をあけて載置する。
【0028】
基板搬送室5は、内部に基板搬送装置8と基板受渡台9とを収容している。基板搬送装置8は、基板搬入出台4に載置されたいずれか1個のキャリア3と基板受渡台9との間で基板2を搬送する。
【0029】
基板処理室6は、中央部に基板搬送装置10を収容する。基板処理部11〜22は、基板搬送装置10の左右両側に並べて配置されている。
【0030】
そして、基板搬送装置10は、基板搬送室5の基板受渡台9と各基板処理部11〜22との間で基板2を1枚ずつ搬送する。各基板処理部11〜22は、基板2を1枚ずつ処理する。
【0031】
各基板処理部11〜22は、同様の構成となっており、代表して基板処理部11の構成について説明する。基板処理部11は、図2に示すように、基板2を水平に保持しながら回転させるための基板保持手段23と、基板保持手段23で保持した基板2の上面に向けて処理液(洗浄液やリンス液)を吐出するための処理液供給手段24と、基板保持手段23で保持した基板2の上面に向けて揮発性を有する乾燥液を吐出する揮発性処理液供給手段25と、基板保持手段23で保持した基板の上面に向けて不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出手段26とを有している。これらの基板保持手段23と処理液供給手段24と揮発性処理液供給手段25と不活性ガス吐出手段26は、制御手段27によって制御される。なお、制御手段27は、基板搬送装置8,10など基板処理装置1の全体を制御する。
【0032】
基板保持手段23は、回転軸28の上端部に円板状のテーブル29を水平に有している。テーブル29の周縁部には、基板2の周縁部と接触して基板2を水平に保持する複数個の基板保持体30が円周方向に間隔をあけて取付けられている。回転軸28には、回転駆動機構31が接続されている。回転駆動機構31が回転軸28及びテーブル29を回転させることによって、基板保持体30で保持した基板2を回転させる。この回転駆動機構31は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって回転制御される。
【0033】
また、基板保持手段23は、テーブル29の周囲に上方を開口させた昇降自在なカップ32を有している。カップ32は、テーブル29に載置した基板2を囲んで処理液や乾燥液の飛散を防止するとともに、処理液や乾燥液を回収する。カップ32には、昇降機構33を接続しており、昇降機構33によってカップ32を基板2に対して相対的に上下に昇降させるようにしている。この昇降機構33は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって昇降制御される。
【0034】
処理液供給手段24は、テーブル29よりも上方に処理液吐出ノズル34を移動可能に配置している。処理液吐出ノズル34には、移動機構35を接続しており、移動機構35によって処理液吐出ノズル34を基板2の外方の退避位置と基板2の中央直上方の吐出開始位置との間で移動させる。この移動機構35は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって移動制御される。
【0035】
また、処理液供給手段24には、処理液吐出ノズル34に洗浄液(フッ化水素)を供給するための洗浄液供給源36とリンス液(純水)を供給するためのリンス液供給源37が、洗浄液の供給・リンス液の供給・停止の切替えが可能な切替弁38を介して接続している。洗浄液供給源36と切替弁38との間には、流量調整器39を介設しており、流量調整器39によって処理液吐出ノズル34から基板2に供給する洗浄液の流量を調整する。この流量調整器39は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって流量制御される。一方、リンス液供給源37と切替弁38との間には、流量調整器40と加熱手段としてのヒーター41とを介設しており、流量調整器40によって処理液吐出ノズル34から基板2に供給するリンス液の流量を調整するとともに、ヒーター41によってリンス液の液温を調整するようにしている。この流量調整器40及びヒーター41は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって流量制御及び温度制御される。なお、処理液供給手段24は、ヒーター41によって加熱したリンス液を基板2に供給することで基板2を加熱することができ、基板加熱手段としての機能を備えている。
【0036】
揮発性処理液供給手段25は、テーブル29よりも上方に乾燥液吐出ノズル42を移動可能に配置している。乾燥液吐出ノズル42には、移動機構43が接続されており、移動機構43によって乾燥液吐出ノズル42を基板2の外方の退避位置と基板2の中央上方の吐出開始位置との間で移動させる。この移動機構43は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって移動制御される。
【0037】
また、揮発性処理液供給手段25には、乾燥液吐出ノズル42に揮発性処理液としての乾燥液(IPA)を供給するための乾燥液供給源44が、流量調整器45とヒーター51とを介して接続している。流量調整器45によって乾燥液吐出ノズル42から基板2に供給する乾燥液の流量の調整や供給の停止を行い、ヒーター51によって乾燥液の液温を調整する。この流量調整器45及びヒーター51は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって流量制御及び温度制御される。
【0038】
不活性ガス吐出手段26は、テーブル29よりも上方に不活性ガス吐出ノズル46を移動可能に配置している。不活性ガス吐出ノズル46には、移動機構47を接続しており、移動機構47によって不活性ガス吐出ノズル46を基板2の外方の退避位置と基板2の中央上方の吐出開始位置との間で移動させる。この移動機構47は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって移動制御される。
【0039】
また、不活性ガス吐出手段26は、不活性ガス吐出ノズル46に不活性ガス(窒素ガス)を供給するための不活性ガス供給源48を流量調整器49を介して接続しており、流量調整器49によって不活性ガス吐出ノズル46から基板2に供給する不活性ガスの流量の調整や供給の停止を行う。この流量調整器49は、制御手段27に接続しており、制御手段27によって流量制御される。
【0040】
基板処理装置1は、以上に説明したように構成しており、制御手段27(コンピュータ)で読み取り可能な記録媒体50に記録した基板処理プログラムにしたがって各基板処理部11〜22で基板2を処理するようにしている。なお、記録媒体50は、基板処理プログラム等の各種プログラムを記録できる媒体であればよく、ROMやRAMなどの半導体メモリー型の記録媒体であってもハードディスクやCD−ROMなどのディスク型の記録媒体であってもよい。
【0041】
上記基板処理装置1では、基板処理プログラムによって図3に示す工程図に従って以下に説明するようにして基板2の処理を行うようにしている。
【0042】
まず、基板処理プログラムは、図3に示すように、基板搬送装置10から基板2を各基板処理部11〜22の基板保持手段23で受取る基板受取工程を実行する。
【0043】
この基板受取工程において基板処理プログラムは、図4に示すように、制御手段27によって基板保持手段23の昇降機構33を制御してカップ32を所定位置まで降下させる。その後、基板保持体30は、基板搬送装置10から基板2を受け取り、支持する。その後、制御手段27によって基板保持手段23の昇降機構33を制御してカップ32を所定位置まで上昇させる。
【0044】
次に、基板処理プログラムは、図3に示すように、基板受取工程で受取った基板2に対して処理液(ここでは、フッ化水素及び純水)で液処理する液処理工程を実行する。ここで、液処理工程は、基板2に対してフッ化水素で洗浄処理する洗浄処理工程と、洗浄処理工程後に基板2に対して純水を供給してフッ化水素を基板2から除去するリンス処理を行うリンス処理工程とで構成している。
【0045】
洗浄処理工程において基板処理プログラムは、図5に示すように、制御手段27によって回転駆動機構31を制御して基板保持手段23のテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持する基板2を所定回転速度で回転させる。さらに、制御手段27によって移動機構35を制御して処理液供給手段24の処理液吐出ノズル34を基板2の中央部上方に移動させる。そして、制御手段27によって流量調整器39を開放及び流量制御して、洗浄液供給源36から供給される常温のフッ化水素を処理液吐出ノズル34から基板2の上面に向けて一定時間吐出させる。その後、制御手段27によって流量調整器39を閉塞制御して、処理液吐出ノズル34からのフッ化水素の吐出を停止させる。なお、処理液吐出ノズル34は、基板2の中央部上方で停止した状態でフッ化水素を基板2の上面中央部に吐出してもよく、移動機構35で基板2の中央部上方と基板2の外周端縁上方との間で移動しながらフッ化水素を基板2の上面に吐出してもよい。
【0046】
その後、リンス処理工程において基板処理プログラムは、図6に示すように、制御手段27によって回転駆動機構31を制御して、基板保持手段23のテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持する基板2を所定回転速度で回転させる。この状態において、制御手段27によって移動機構35を制御して処理液供給手段24の処理液吐出ノズル34を基板2の中央部上方に移動させる。そして、制御手段27によってヒーター41を停止制御した状態で流量調整器40を開放及び流量制御して、リンス液供給源37から供給される純水をヒーター41で加熱せずに常温のまま処理液吐出ノズル34から基板2の上面に向けて一定時間吐出させる。
【0047】
次に、基板処理プログラムは、図3に示すように、液処理工程で液処理した基板2を加熱する基板加熱工程を実行する。
【0048】
この基板加熱工程において基板処理プログラムは、図7に示すように、制御手段27によって回転駆動機構31を制御して、基板保持手段23のテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持する基板2を所定回転速度で回転させる。この状態において、制御手段27によってヒーター41を駆動制御するとともに流量調整器40を開放及び流量制御して、リンス液供給源37から供給される純水をヒーター41で所定温度(例えば、60℃)に加熱して処理液吐出ノズル34から基板2の上面に向けて一定時間吐出させる。その後、制御手段27によって流量調整器40を閉塞制御して処理液吐出ノズル34からの純水の吐出を停止させるとともにヒーター41を停止制御する。
【0049】
このように、基板加熱工程では、液処理工程で用いた処理液の温度よりも高温の液体(リンス液)を基板2の上面に吐出させることで熱伝導により基板2を加熱するようにしている。ここで、基板2の加熱は、後述する乾燥処理工程中の基板2の表面温度が露点温度よりも高くなる温度まで加熱するようにしている。
【0050】
ここで、リンス処理工程と基板加熱工程とを別工程として記載したが、基板加熱工程で高温のリンス液を基板2の上面に吐出した場合には、基板加熱工程をリンス処理と同時に行うことができる。これにより、基板処理装置1での基板処理時間を短縮することができてスループットを向上させることができる。一方、高温のリンス液を用いることでリンス処理工程よりも前の工程(ここでは、洗浄処理工程であるが、エッチング処理工程などの場合もある。)での処理に影響を及ぼす場合(たとえば、基板2の温度が上がることでエッチング液によるエッチングが進行してしまう場合など。)には、基板加熱工程の前に常温のリンス液でリンス処理工程を行うようにすれば、基板2を加熱することによって生じるおそれがある悪影響を防止することができる。
【0051】
次に、基板処理プログラムは、図3に示すように、基板加熱工程で加熱した基板2に対して乾燥処理を行う乾燥処理工程を実行する。
【0052】
この乾燥処理工程において基板処理プログラムは、図8に示すように、制御手段27によって回転駆動機構31を制御して、基板保持手段23のテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持する基板2を所定回転速度で回転させる。この状態において、制御手段27によって移動機構43を制御して揮発性処理液供給手段25の乾燥液吐出ノズル42を基板2の中央部上方に移動させ、制御手段27によって流量調整器45を開放及び流量制御して、乾燥液供給源44から供給される高温(たとえば、50℃)のIPAを乾燥液吐出ノズル42から基板2の上面に向けて一定時間吐出させる。ここでも、乾燥液吐出ノズル42は、基板2の中央部上方で停止した状態で高温のIPAを基板2の上面中央部に吐出してもよく、移動機構43で基板2の中央部上方と基板2の外周端縁上方との間で移動しながら高温の乾燥液を基板2の上面に吐出してもよい。
【0053】
さらに、乾燥処理工程において基板処理プログラムは、図9に示すように、制御手段27によって回転駆動機構31を制御して基板保持手段23のテーブル29及びテーブル29の基板保持体30で保持する基板2を所定回転速度で回転させる。この状態において、制御手段27によって移動機構43を制御して、揮発性処理液供給手段25の乾燥液吐出ノズル42を基板2の外周端縁上方へ向けて移動させる。この時、制御手段27によって移動機構47を制御して、不活性ガス吐出手段26の不活性ガス吐出ノズル46を基板2の中央部上方に移動させた後、乾燥液吐出ノズル42に追従して基板2の外周端縁上方へ向けて移動させる。制御手段27によって流量調整器45,49を開放及び流量制御して、乾燥液供給源44及び不活性ガス供給源48から供給される高温(たとえば、50℃)のIPAと常温の窒素ガスを乾燥液吐出ノズル42及び不活性ガス吐出ノズル46から基板2の上面に向けて一定時間吐出させる。その後、制御手段27によって流量調整器45,49を閉塞制御して乾燥液吐出ノズル42及び不活性ガス吐出ノズル46からのIPA及び窒素ガスの吐出を停止させる。
【0054】
このように、乾燥処理工程では、基板2の上面に向けて揮発性を有する乾燥液を吐出することで、基板2の上面において残留する水分を乾燥液で置換し、水分とともに乾燥液を蒸発させて基板2の上面を乾燥させるようにしている。
【0055】
その際に、揮発性を有する乾燥液を用いているために、乾燥液が気化するときに気化熱を基板2から奪うことになって基板2の表面の全体或いは一部の温度が低下する。基板2の表面近傍の空気の湿度が70%である場合には、基板2の表面での露点温度が19.1℃であるが、基板2の表面温度が常温(25℃)である場合、気化熱によって基板2の表面温度が常温から露点温度以下まで低下する。それにより、基板2の表面で大気中の水分が結露してしまい、結露によって基板2の表面にウォーターマークが発生し、微細なパーティクルが付着することが実験により確認された。
【0056】
そこで、本発明では、乾燥処理工程の直前に基板加熱工程を行い、基板2の表面が乾燥液から露出する前に乾燥処理中の基板2の表面温度が露点温度よりも高くなるように予め基板2の表面を加熱することにした(例えば、基板2の表面を60℃のリンス液で加熱して基板2の表面温度が35℃となるように加熱することにした。)。
【0057】
すると、乾燥処理工程において乾燥処理中の基板2の表面温度が乾燥液の気化熱によって低下しても、基板2の表面温度が露点温度よりも高い温度で維持され、基板2の表面で結露が生じることがなくなり、基板2の表面にウォーターマークが発生して微細なパーティクルが付着するのを防止できることが確認された。
【0058】
なお、基板2の加熱は、基板2の表面が乾燥液から露出する前に乾燥処理中の基板2の表面温度が露点温度よりも高くなるように基板2を加熱すればよいが、リンス液などの高温の液体を用いて基板2を加熱する場合には、液体の水分によって基板2の表面近傍の湿度が増加し、それに伴って、露点温度も上昇してしまう(たとえば、温度が25℃で湿度が70%のときは露点温度が19.1℃であるが、湿度が90%となると露点温度が23.2℃に上昇してしまう。)。つまり、リンス液などの液体を用いて基板2を加熱する場合には、液体の温度が低すぎると(たとえば、30℃未満。)、乾燥処理中の基板2の表面温度を露点温度よりも高くすることができず、一方、液体の温度が高すぎても(たとえば、70℃を超過。)、湿度の増加に伴って露点温度が上昇し、結局、乾燥処理中の基板2の表面温度を露点温度よりも高くすることができなくなる。よって、湿度の増加に伴う露点温度の上昇も考慮して所定の温度範囲の液体を用いて基板2を加熱する必要がある。したがって、リンス液としては、30℃〜70℃のリンス液を用いることが好ましく、その場合に、乾燥液としては、20℃〜70℃の乾燥液を用いることが好ましい。
【0059】
基板処理プログラムは、最後に、図3に示すように、基板2を各基板処理部11〜22の基板保持手段23から基板搬送装置10に受渡す基板受渡工程を実行する。
【0060】
この基板受渡工程において基板処理プログラムは、図10に示すように、制御手段27によって基板保持手段23の昇降機構33を制御してカップ32を所定位置まで降下させる。そして、基板保持体30で支持した基板2を基板搬送装置10に受け渡す。その後、制御手段27によって基板保持手段23の昇降機構33を制御してカップ32を所定位置まで上昇させる。なお、この基板受渡工程は、先の基板受取工程と同時に行うようにすることもできる。
【0061】
以上に説明したように、上記基板処理装置1では、基板処理プログラムに従って実行する基板処理方法において、基板2への揮発性処理液の供給を開始する工程と、基板2への揮発性処理液の供給を停止する工程とを実行するとともに、基板2への揮発性処理液の供給を停止する前、特に、基板2の表面が乾燥液から露出する前に基板2を加熱する基板加熱工程を実行して、乾燥処理中の基板2の表面温度が露点温度よりも高くなるように基板2を加熱し、その後、乾燥処理を行うようにしている。
【0062】
そのため、上記基板処理装置1では、乾燥処理時に揮発性を有する乾燥液の気化熱によって基板2の表面温度が低下しても、基板2の表面が乾燥液から露出する前の基板2の表面温度が露点温度よりも高くなっているために、基板2の表面で結露が生じることがなく、基板2の表面にウォーターマークが発生して微細なパーティクルが付着することを防止できる。
【0063】
上記基板処理装置1では、基板加熱工程で基板2に高温のリンス液を供給することで基板2を加熱するようにしているが、これに限られず、高温の乾燥液を基板2に供給して基板2の加熱を行うようにしてもよい。また、図11に示すように、基板処理部52としてテーブル29の上方にLEDランプ53を配置して、LEDランプ53で基板2を照射することで基板2を加熱するように構成することもできる。LEDランプ53の照射により基板2の温度を急速に昇温することができるので、基板2の表面が乾燥液から露出しないように乾燥液の液膜を維持する時間が短くてすみ、乾燥液の消費量を少量に抑えることができる。また、乾燥液の供給を開始する前に、基板表面の温度を露点温度よりも高くなるまで昇温してもよい。さらに、図12に示すように、基板処理部54としてテーブル29の中央部に吐出口55を形成し、吐出口55から高温の流体(ここでは、リンス液)を供給して基板2の裏面から基板2を加熱するように構成することもできる。これらの実施形態においても、基板2の表面上にリンス液や乾燥液の液膜を保持し、基板2の表面を露出させることなく、基板表面の温度が露点温度よりも高くなるまで加熱するようにしている。
【0064】
また、基板加熱工程は、上記基板処理装置1では、乾燥処理工程よりも前に行うようにしているが、基板2の表面が乾燥液から露出する前に基板2の加熱を行うようにすればよく、乾燥処理工程開始時に露点温度よりも高い温度まで昇温しきっていなくてもよい。すなわち、乾燥処理工程中に基板加熱工程をも行うようにしてもよい。たとえば、液処理工程(リンス処理工程)が終了した後に、乾燥液を基板2に供給するとともに、基板2の裏面に高温(たとえば、30℃〜80℃)の純水を一定時間(たとえば、5秒間)供給して停止して基板2を加熱し、その後(たとえば、5秒後)、乾燥液とともに不活性ガスを基板2に供給するようにしてもよい。この場合、基板2の裏面に高温の乾燥液を供給してもよいが、乾燥液の消費量を抑えるためには、高温の純水を供給することが好ましい。また、基板2の表面温度が露点温度よりも高い温度まで加熱された時点で、高温の純水や乾燥液の供給を停止することが好ましい。
【0065】
なお、上記基板処理装置1では、洗浄液としてフッ化水素を用い、リンス液として純水を用い、揮発性処理液としてIPAを用いているが、これに限られず、他の処理液を用いた場合やエッチング処理など他の処理を行う場合にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 基板処理装置 2 基板
3 キャリア 4 基板搬入出台
5 基板搬送室 6 基板処理室
7 前壁 8 基板搬送装置
9 基板受渡台 10 基板搬送装置
11〜22 基板処理部 23 基板保持手段
24 処理液供給手段 25 揮発性処理液供給手段
26 不活性ガス吐出手段 27 制御手段
28 回転軸 29 テーブル
30 基板保持体 31 回転駆動機構
32 カップ 33 昇降機構
34 処理液吐出ノズル 35 移動機構
36 洗浄液供給源 37 リンス液供給源
38 混合器 39 流量調整器
40 流量調整器 41 ヒーター
42 乾燥液吐出ノズル 43 移動機構
44 乾燥液供給源 45 流量調整器
46 不活性ガス吐出ノズル 47 移動機構
48 不活性ガス供給源 49 流量調整器
50 記録媒体 51 ヒーター
52 基板処理部 53 LEDランプ
54 基板処理部 55 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液で液処理した後に揮発性処理液を供給することにより乾燥処理する基板処理方法において、
前記基板に処理液を供給して処理する工程と、
前記処理液の液膜が形成された前記基板を加熱する工程と、
前記処理液の液膜が形成された基板へ揮発性処理液を供給する工程と、
前記基板への前記揮発性処理液の供給を停止する工程と、
前記揮発性処理液を除去して基板を乾燥する工程と、
を有し、
前記基板を加熱する工程は前記揮発性処理液を供給する工程よりも前に開始され、前記基板の表面が前記揮発性処理液から露出するよりも前に、前記基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように前記基板が加熱されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記処理液は、基板上面に供給した薬液を除去してリンスする工程のためのリンス液であり、前記リンスする工程の前に前記基板を薬液で処理する工程をさらに有し、
前記基板を加熱する工程は、高温のリンス液を用いて基板を加熱することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板を加熱する工程は、前記基板の上面に前記高温のリンス液を供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記基板を加熱する工程は、前記基板の上面及び下面に前記高温のリンス液を供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記高温のリンス液として30℃〜70℃のリンス液を用いたことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記揮発性処理液として20℃〜70℃の揮発性処理液を用い、高温のリンス液として30℃〜70℃のリンス液を用いたことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板の上面に前記揮発性処理液を供給する工程の間に前記基板の下面に前記高温のリンス液を供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を処理液で液処理した後に揮発性処理液を供給することにより乾燥処理する基板処理装置において、
前記基板に処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記基板に揮発性処理液を供給するための揮発性処理液供給手段と、
前記基板を加熱するための基板加熱手段と、
前記揮発性処理液供給手段及び前記基板加熱手段を制御するための制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記処理液供給手段から前記基板に処理液を供給して前記基板を処理する工程と、
前記基板加熱手段によって前記処理液の液膜が形成された前記基板を加熱する工程と、
前記揮発性処理液供給手段から前記処理液の液膜が形成された前記基板へ揮発性処理液を供給する工程と、
前記揮発性処理液供給手段から前記基板への揮発性処理液の供給を停止する工程と、
前記揮発性処理液を除去して前記基板を乾燥する工程と、
を実行し、
前記基板を加熱する工程は前記揮発性処理液を供給する工程よりも前に開始され、前記基板の表面が前記揮発性処理液から露出するよりも前に、前記基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように、前記基板加熱手段が前記基板を加熱することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記基板処理装置は、
前記基板に薬液を供給するための薬液供給手段と、
前記薬液を除去するためのリンス液を供給するためのリンス液供給手段と、をさらに有し、
前記制御部は、
前記薬液供給手段から前記基板に薬液を供給して前記基板を処理する工程と、
前記リンス液供給手段から前記基板にリンス液を供給して前記基板をリンス処理する工程と、をさらに実行し、
前記基板を加熱する工程は、高温のリンス液を用いて前記基板を加熱させることを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板を加熱する工程は、前記基板の上面に前記高温のリンス液を供給することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板を加熱する工程は、前記基板の上面及び下面に前記高温のリンス液を供給することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記高温のリンス液として30℃〜70℃のリンス液を用いたことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記揮発性処理液として20℃〜70℃の揮発性処理液を用い、高温のリンス液として30℃〜70℃のリンス液を用いたことを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記基板の上面に前記揮発性処理液を供給する工程の間に前記基板の下面に前記高温のリンス液を供給することを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項15】
基板を処理液で液処理した後に揮発性処理液を供給することにより乾燥処理する基板処理装置において、
前記基板に処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記基板に揮発性処理液を供給するための揮発性処理液供給手段と、
前記基板を加熱するための基板加熱手段と、
基板処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体と、
を有し、
前記基板処理プログラムは、
前記処理液供給手段から前記基板に処理液を供給して前記基板を処理する工程と、
前記基板加熱手段によって前記処理液の液膜が形成された前記基板を加熱する工程と、
前記揮発性処理液供給手段から前記処理液の液膜が形成された前記基板へ揮発性処理液を供給する工程と、
前記揮発性処理液供給手段から前記基板への揮発性処理液の供給を停止する工程と、
前記揮発性処理液を除去して前記基板を乾燥する工程と、
を実行し、
前記基板を加熱する工程は前記揮発性処理液を供給する工程よりも前に開始され、前記基板の表面が前記揮発性処理液から露出するよりも前に、前記基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように、前記基板加熱手段が基板を加熱することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−146951(P2012−146951A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223208(P2011−223208)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】