基板処理装置、基板保持装置、および、基板保持方法
【課題】簡易な構成で、反った基板であっても確実に保持できる技術を提供する。
【解決手段】基板に対して描画処理を施す描画装置1は、基板Wの裏面に対向する保持面111が形成された保持板11と、保持面111に形成され、真空吸引により基板Wを保持面111に吸引する真空吸引口12と、保持面111に形成され、ベルヌーイ吸引により基板Wを保持面111に吸引する複数のベルヌーイ吸引口13とを備える。保持面111には、その中心と同心に配置された円形領域M1と、円形領域M1と同心に配置された円環状領域M2とが規定されており、円形領域M1と円環状領域M2とのそれぞれにベルヌーイ吸引口13が配置される。
【解決手段】基板に対して描画処理を施す描画装置1は、基板Wの裏面に対向する保持面111が形成された保持板11と、保持面111に形成され、真空吸引により基板Wを保持面111に吸引する真空吸引口12と、保持面111に形成され、ベルヌーイ吸引により基板Wを保持面111に吸引する複数のベルヌーイ吸引口13とを備える。保持面111には、その中心と同心に配置された円形領域M1と、円形領域M1と同心に配置された円環状領域M2とが規定されており、円形領域M1と円環状領域M2とのそれぞれにベルヌーイ吸引口13が配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、太陽電池用パネルなどの各種基板(以下、単に「基板」と称する)を保持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して様々な処理(例えば、基板に形成された感光材料への光の照射、基板への各種塗布液の塗布、等)を行う各種の基板処理装置(例えば、特許文献1参照)、あるいは、基板の移送を行う基板搬送装置等において、基板を保持する技術は必須である。
【0003】
当該技術に関して、例えば特許文献2、3には、基板の下面側を真空吸着ノズルを用いて吸着保持する構成が開示されている。また例えば特許文献4〜7には、ベルヌーイの原理を用いたベルヌーイノズル(保持面に形成された穴からガスを噴出することによりベルヌーイ効果を利用して基板を吸着するノズル)を用いて基板を吸着保持する構成が開示されている。また例えば特許文献8には、ベルヌーイノズルを用いて基板を持ち上げつつ、基板が移動しないように真空吸着ノズルによって固定する構成が開示されている。また例えば特許文献9には、ベルヌーイノズルと真空吸着ノズルとを併用して基板を吸着保持する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−150175号公報
【特許文献2】特開2008−270626号公報
【特許文献3】特開2005−19637号公報
【特許文献4】特開2009−28863号公報
【特許文献5】特開2005−142462号公報
【特許文献6】特開2002−64130号公報
【特許文献7】特開2010−52051号公報
【特許文献8】特開2004−193195号公報
【特許文献9】特開2006−80289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、基板に形成された感光材料への光の照射を行って基板上に回路などのパターンを形成する描画装置等においては、処理中に基板が保持面に対して位置ずれを起こしてしまうと描画精度が悪化してしまう。したがって、保持面に載置された基板を、位置ずれを生じさせないように確実に保持する必要がある。
【0006】
ところで、保持面に載置された状態において、基板は、必ずしも平坦形状であるとは限らない。例えば、保持面に基板を載置した搬送装置のハンドが基板の中央付近を支持していた場合、保持面に載置された基板は凸形状に反っている可能性がある。また、当該搬送装置のハンドが基板の外縁を支持していた場合、保持面に載置された基板は凹形状に反っている可能性がある。基板の薄型化が進む近年においては、基板は非常に反りやすくなっているため、保持面に載置された状態において基板が反っている可能性は非常に高い。
【0007】
上記の各特許文献2〜9に開示された構成のように、基板と保持面との間に負圧を形成することによって基板を保持面に吸着保持する態様においては、反った基板を確実に保持することが非常に難しい。というのも、保持面に載置された基板が反っている場合、基板の裏面の一部分において保持面との間に隙間ができ、この隙間から負圧が逃げてしまうからである。保持面と基板の裏面との間に十分な吸引圧が形成されないと、吸着不良となり、基板が保持面に対して位置ずれを起こす可能性が高くなってしまう。一方で、このような吸着不良を生じさせずに確実に吸着保持しようとすると、基板に非常に大きな吸引力を作用させなければならず、このためには、例えば大型の真空ポンプや大規模な配管系統等を設ける必要があり、装置の大型化、コストアップ等が避けられない。
【0008】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、反った基板であっても確実に保持できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって、基板の裏面に対向する保持面が形成された保持板と、前記保持面に形成され、真空吸引により前記基板を前記保持面に吸引する1以上の真空吸引口と、前記保持面に形成され、ベルヌーイ吸引により前記基板を前記保持面に吸引する複数のベルヌーイ吸引口と、を備え、前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る基板処理装置であって、前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0011】
第3の態様は、第1または第2の態様に係る基板処理装置であって、前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される。
【0012】
第4の態様は、第1の態様に係る基板処理装置であって、前記真空吸引口を複数個備え、前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0013】
第5の態様は、第4の態様に係る基板処理装置であって、前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい。
【0014】
第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記保持面上の圧力を検知する圧力センサ、を備え、前記保持面に基板が載置されると前記真空吸引口からの吸引を開始し、前記真空吸引口からの吸引を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する。
【0015】
第7の態様は、第6の態様に係る基板処理装置であって、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する。
【0016】
第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記保持板の裏面側に形成され、深さ方向の底面において前記ベルヌーイ吸引口と連通する凹部と、前記凹部の内部に配置されたベルヌーイ吸引ユニットと、を備え、前記ベルヌーイ吸引ユニットが、円柱状の凹空間が形成された本体部と、前記円柱状の凹空間に気体を噴出して前記円柱状の凹空間に旋回流を形成する噴出ノズルと、を備え、前記本体部が、前記凹部の深さ方向の底面および前記凹部の壁面との間に隙間を形成しつつ、前記凹部内に固定的に支持される。
【0017】
第9の態様は、第8の態様に係る基板処理装置であって、前記ベルヌーイ吸引口の径サイズが、前記円柱状の凹空間の径サイズよりも小さく形成される。
【0018】
第10の態様は、基板を保持する基板保持装置であって、基板の裏面に対向する保持面が形成された保持板と、前記保持面に形成され、真空吸引により前記基板を前記保持面に吸引する1以上の真空吸引口と、前記保持面に形成され、ベルヌーイ吸引により前記基板を前記保持面に吸引する複数のベルヌーイ吸引口と、を備え、前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される。
【0019】
第11の態様は、第10の態様に係る基板保持装置であって、前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0020】
第12の態様は、第10または第11の態様に係る基板保持装置であって、前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される。
【0021】
第13の態様は、第10の態様に係る基板保持装置であって、前記真空吸引口を複数個備え、前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0022】
第14の態様は、第13の態様に係る基板保持装置であって、前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい。
【0023】
第15の態様は、第10から第14のいずれかの態様に係る基板保持装置であって、前記保持面上の圧力を検知する圧力センサ、を備え、前記保持面に基板が載置されると前記真空吸引口からの吸引を開始し、前記真空吸引口からの吸引を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する。
【0024】
第16の態様は、第15の態様に係る基板保持装置であって、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する。
【0025】
第17の態様は、第10から第16のいずれかの態様に係る基板保持装置であって、前記保持板の裏面側に形成され、深さ方向の底面において前記ベルヌーイ吸引口と連通する凹部と、前記凹部の内部に配置されたベルヌーイ吸引ユニットと、を備え、前記ベルヌーイ吸引ユニットが、円柱状の凹空間が形成された本体部と、前記円柱状の凹空間に気体を噴出して前記円柱状の凹空間に旋回流を形成する噴出ノズルと、を備え、前記本体部が、前記凹部の深さ方向の底面および前記凹部の壁面との間に隙間を形成しつつ、前記凹部内に固定的に支持される。
【0026】
第18の態様は、第17の態様に係る基板保持装置であって、前記ベルヌーイ吸引口の径サイズが、前記円柱状の凹空間の径サイズよりも小さく形成される。
【0027】
第19の態様は、基板を保持する基板保持方法であって、a)基板の裏面を、保持板に形成された保持面に対向させた状態で、前記基板を前記保持面上に載置する工程と、b)前記保持面に形成された1以上の真空吸引口に、真空吸引により吸引圧を形成する工程と、c)前記保持面に形成された複数のベルヌーイ吸引口の少なくとも一つに、ベルヌーイ吸引により吸引圧を形成する工程と、を備え、前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される。
【0028】
第20の態様は、第19の態様に係る基板保持方法であって、前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0029】
第21の態様は、第19または第20の態様に係る基板保持方法であって、前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される。
【0030】
第22の態様は、第19の態様に係る基板保持方法であって、前記真空吸引口を複数個備え、前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0031】
第23の態様は、第22の態様に係る基板保持方法であって、前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい。
【0032】
第24の態様は、第19から第23のいずれかの態様に係る基板保持方法であって、前記保持面に基板が載置されると前記b)工程を開始し、前記b)工程を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に、前記c)工程を開始する。
【0033】
第25の態様は、第24の態様に係る基板保持方法であって、前記c)工程を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引を停止する。
【発明の効果】
【0034】
第1、第10、第19の態様によると、ベルヌーイ吸引口が、保持面に規定された円形領域と円環状領域とのそれぞれに配置されるので、基板が凸形状、凹形状のどちらに反っていても、ベルヌーイ吸引口からの吸引によってその反りを平坦化することができる。したがって、簡易な構成で、反った基板であっても確実にこれを吸着保持できる。
【0035】
第2、第11、第20の態様によると、基板は土手部の頂部と突起部の頂部とに当接した状態で吸着保持される。この構成によると、基板は、その裏面が土手部の高さ分だけ保持面から離間した状態で保持面に対して吸着保持されるので、基板の裏面に真空吸引口の吸引跡がつくおそれがない。
【0036】
第3、第12、第21の態様によると、保持面の円環状領域の周方向に沿って複数のベルヌーイ吸引口が配列される。この構成によると、基板が凹形状に反っている場合であっても、円環状領域に配置された各ベルヌーイ吸引口からの吸引圧によってその反りを平坦化して、基板を確実に吸着保持できる。
【0037】
第4、第13、第22の態様によると、保持面内に規定された複数の部分領域(複数の弧状領域および円形領域)のそれぞれに真空吸引口とベルヌーイ吸引口とが配置されるとともに、当該各部分領域を包囲する土手部が形成される。この構成によると、各部分領域と基板の裏面との間に密閉空間を形成して、当該部分領域単位で独立して基板の裏面を吸着保持できるので、無駄なく効率的に基板の反りを平坦化して、基板を確実に吸着保持できる。また、この構成によると、基板は、その裏面が土手部の高さ分だけ保持面から離間した状態で保持面に対して吸着保持されるので、基板の裏面に真空吸引口の吸引跡がつくおそれがない。
【0038】
第5、第14、第23の態様によると、複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しいものとされる。この構成によると、各弧状領域と基板の裏面との間に形成される密閉空間の体積が等しくなるので、各弧状領域において基板に同等の吸引力を作用させることができる。
【0039】
第6、第15、第24の態様によると、真空吸引口からの吸引を行っても保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合にベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する。この構成によると、例えば保持面に載置された基板がはじめから反りのない平坦な形状である場合は、ベルヌーイ吸引口からの吸引は行われないので、無駄な空気の消費が抑制される。
【0040】
第7、第16、第25の態様によると、ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する。つまり、ベルヌーイ吸引口からの吸引によって基板の反りが平坦化されて基板が適切に吸着保持されると、以後は真空吸引口からの吸引のみで基板を吸着保持する。この構成によると、ベルヌーイ吸引口からの吸引が必要最小限に抑えられるので、無駄な空気の消費が抑制される。
【0041】
第8、第17の態様によると、ベルヌーイ吸引ユニットが備える本体部が、保持板に形成された凹部の深さ方向の底面および壁面との間に隙間を形成しつつ、凹部内に固定的に支持されるので、円柱状の凹空間内から溢れ出た気体が本体部の周囲の隙間に沿って流れて保持板の裏面側に排出されることになる。この構成によると、ベルヌーイ吸引口が基板の裏面によって塞がれた状態となっても、ベルヌーイ吸引口の吸引圧を維持し続けることができる。
【0042】
第9、第18の態様によると、ベルヌーイ吸引口の径サイズが、凹部空間の径サイズよりも小さく形成される。この構成によると、基板の裏面における吸引圧が作用する領域が小さくなるため、ベルヌーイ吸引口からの吸引を行うことによって基板の平面度を悪化させるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】描画装置の側面図である。
【図2】描画装置の平面図である。
【図3】基板保持部の平面図である。
【図4】基板保持部を真空吸引口の形成位置で切断した部分断面図である。
【図5】基板保持部をベルヌーイ吸引口の形成位置で切断した部分断面図である。
【図6】基板保持部が備える配管系統を模式的に示す図である。
【図7】制御部のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図8】描画装置にて実行される基板に対する処理の流れを示す図である。
【図9】基板保持部が基板保持面に吸着保持する処理の流れを示す図である。
【図10】描画処理を説明するための図である。
【図11】第2の実施の形態に係る基板保持部の平面図である。
【図12】第2の実施の形態に係る基板保持部が備える配管系統を模式的に示す図である。
【図13】ベルヌーイ吸引口に順番に負圧を形成する態様の一例を説明するための図である。
【図14】変形例に係る基板保持部が備える配管系統を模式的に示す図である。
【図15】変形例に係る基板保持部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0045】
<<第1の実施の形態>>
<1.装置構成>
第1の実施の形態に係る描画装置1の構成について、図1、図2を参照しながら説明する。図1は、描画装置1の構成を模式的に示す側面図である。図2は、描画装置1の構成を模式的に示す平面図である。
【0046】
描画装置1は、レジスト等の感光材料の層が形成された基板Wの上面に光を照射して、パターンを露光する装置である。なお、基板Wは、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、太陽電池用パネルなどの各種基板のいずれであってもよい。図においては、円形の半導体基板が示されている。
【0047】
描画装置1は、本体フレーム101で構成される骨格の天井面および周囲面にカバーパネル(図示省略)が取り付けられることによって形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、各種の構成要素を配置した構成となっている。
【0048】
描画装置1の本体内部は、処理領域102と受け渡し領域103とに区分されている。処理領域102には、主として、基板保持部10、ステージ駆動機構20、計測部30、2個の光学ユニット40,40、および、撮像ユニット50が配置される。受け渡し領域103には、処理領域102に対する基板Wの搬出入を行う搬送装置60と、プリアライメント部70とが配置される。
【0049】
描画装置1の本体外部には、撮像ユニット50に照明光を供給する照明ユニット80が配置される。また、描画装置1の本体外部であって、受け渡し領域103に隣接する位置には、カセットCを載置するためのカセット載置部104が配置される。受け渡し領域103に配置された搬送装置60は、カセット載置部104に載置されたカセットCに収容された未処理の基板Wを取り出して処理領域102に搬入するとともに、処理領域102から処理済みの基板Wを搬出してカセットCに収容する。カセット載置部104に対するカセットCの受け渡しは外部搬送装置(図示省略)によって行われる。
【0050】
また、描画装置1には、描画装置1が備える各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する制御部90が配置される。
【0051】
以下において、描画装置1が備える各部の構成について説明する。
【0052】
<1−1.基板保持部10>
基板保持部10は、基板Wを水平姿勢に吸着保持する装置である。基板保持部10の構成について、図1、図2に加えて図3〜図6を参照しながら説明する。図3は、基板保持部10の平面図である。図4は基板保持部10を真空吸引口12の形成位置で切断した部分断面図である。図5は基板保持部10をベルヌーイ吸引口13の形成位置で切断した部分断面図である。図6は、基板保持部10が備える配管系統を模式的に示す図である。
【0053】
基板保持部10は、平板状の外形を有し、その上面に基板Wの裏面に対向する保持面111が形成される保持板11を備える。保持面111の平面度は、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値(例えば約2μm以下)となるように形成される。また、保持面111は、少なくとも基板Wの露光領域をカバーするサイズに形成される。ただし、この実施形態においては、基板Wは円形状であるとし、保持面111も平面視円形状に形成される。
【0054】
<吸引口12,13,13,・・,13>
保持面111には、複数の吸引口12,13,13,・・,13が形成される。複数の吸引口12,13,13,・・,13のうちの一個の吸引口12は、真空吸引により基板Wを保持面111に吸引する吸引口(以下「真空吸引口」という)12であり、残りの各吸引口13は、ベルヌーイ吸引により基板Wを保持面111に吸引する吸引口(以下「ベルヌーイ吸引口」という)13である。ベルヌーイ吸引口13は複数個(図示の例では、7個)形成される。
【0055】
ここで、複数のベルヌーイ吸引口13,13,・・,13のレイアウトについて説明する。保持面111には保持面111の中心(幾何学中心)と同心に配置された円形領域M1と、円形領域M1と同心に配置された円環状領域M2とが規定されており、ベルヌーイ吸引口13は、円形領域M1と円環状領域M2とのそれぞれに、少なくとも1個ずつ配置される。ただし、円環状領域M2には複数のベルヌーイ吸引口13,・・,13が配置されることが好ましい。また、円環状領域M2に複数のベルヌーイ吸引口13,・・,13が配置される場合、当該複数のベルヌーイ吸引口13,・・,13は、円環状領域M2の周方向に沿って配列されることが好ましい。
【0056】
この実施の形態においては、円形領域M1にはその中心に1個のベルヌーイ吸引口13が配置される。また、円環状領域M2には、6個のベルヌーイ吸引口13が、円環状領域M2の周方向に沿って等間隔に配列される。
【0057】
次に、真空吸引口12について具体的に説明する。真空吸引口12は、配管121を介して、気体を吸引する気体吸引部(例えば真空ポンプ)122と接続されている。また、配管121の途中には開閉弁(例えば電磁弁)123が介挿されている。気体吸引部122が稼働されるとともに開閉弁123が開放されると、配管121を介して真空吸引口12に負圧(吸引圧)が形成される。
【0058】
次に、ベルヌーイ吸引口13について具体的に説明する。保持板11の裏面側であって、複数のベルヌーイ吸引口13のそれぞれと対応する各位置には、凹部112が形成される。凹部112は、保持板11の裏面側に開口し、深さ方向の底面において対応するベルヌーイ吸引口13と連通する。
【0059】
凹部112の内部には、ベルヌーイ吸引ユニット130の本体部131が配置される。ただし、凹部112は、本体部131よりも一回り大きな寸法とされており、本体部131の端面133および側面は、凹部112の深さ方向の底面および壁面との間に微小な隙間(例えば、数百μm程度の隙間)Qを形成しつつ、凹部112内に固定的に支持される。
【0060】
本体部131における、凹部112の深さ方向の底面と対向する側の端面133は平坦に形成されており、この端面133には、円柱状の凹空間(円柱状凹空間)132が形成されている。ただし、本体部131は、円柱状凹空間132の中心部がベルヌーイ吸引口13と対向するような姿勢で凹部112内に配置されている。ここで、ベルヌーイ吸引口13の径サイズd13は、円柱状凹空間132の径サイズd132よりも小さく形成される。
【0061】
ベルヌーイ吸引ユニット130は、さらに、円柱状凹空間132の内周壁に沿って開口する一対の噴出ノズル134,134を備える。各噴出ノズル134は、配管135を介して、圧縮空気等の気体を供給する気体供給部(例えばコンプレッサ)136と接続されている。また、配管135の途中には開閉弁(例えば電磁弁)137とフィルタ(図示省略)が介挿されている。気体供給部136が稼働されるとともに開閉弁137が開放されると、配管135を介して各噴出ノズル134から圧縮気体が噴出される。一対の噴出ノズル134,134から円柱状凹空間132の内周壁に沿って噴出された気体は、円柱状凹空間132の内周壁に沿うように流れ、強い旋回流となって円柱状凹空間132の開放端から流出する。このとき、旋回流の中心部(すなわち、円柱状凹空間132の中心部)にはベルヌーイの定理に従って負圧が生じ、これによって、ベルヌーイ吸引口13に負圧(吸引圧)が形成される。なお、円柱状凹空間132から溢れ出た気体は、本体部131と凹部112との間に形成された隙間Qに沿って流れ、保持板11の裏面側に排出される。
【0062】
<土手部14、突起部15、環状突起部16>
保持面111には、その外縁に沿って土手部14が立設される。また、土手部14に包囲された保持面111内にはその全域にわたって複数の突起部15が満遍なく立設される(図4、図5)。さらに、各ベルヌーイ吸引口13の外縁および後述する各ピン孔18の外縁に沿って環状の突起部(環状突起部)16が立設される。ただし、図3においては、突起部15の図示を省略している。
【0063】
土手部14の頂部と各突起部15の頂部と各環状突起部16の頂部とはすべて面一に形成されており、これら各頂部が配置される平面の平面度も、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値(例えば2μm程度)となるように形成される。保持面111に平坦な基板Wが載置されると、当該基板Wの裏面が土手部14の頂部全域、全ての突起部15の頂部、および、全ての環状突起部16の頂部と当接し、土手部14とこれに包囲された保持面111内の領域と基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。この状態で、保持面111に開口された真空吸引口12に負圧が形成されると、当該密閉空間が減圧され、基板W(具体的には、少なくとも基板Wにおける露光領域を含む部分)は、その裏面が保持面111から土手部14の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111に吸着保持されることになる。
【0064】
<圧力センサ17>
保持面111には、圧力センサ17が配置される。圧力センサ17は保持面111上の圧力を検出する。
【0065】
<ピン孔18>
基板保持部10は、保持面111に対して基板Wを昇降させるための複数のリフトピン181を備える。また、保持面111には、各リフトピン181を挿通可能なピン孔18が形成されている。各リフトピン181はリフトピン駆動機構(図示省略)と接続されており、各ピン孔18を介して保持面111に対して同期して出没可能に設けられる。各リフトピン181は、搬送装置60と保持面111との間で基板Wの受け渡しが行われる場合に、その先端が保持面111から突出した上方位置(突出位置)と、その先端が保持面111以下となる下方位置(待避位置)との間を往復移動される。
【0066】
<吸着制御部19>
基板保持部10は、さらに、基板保持部10が備える各部を制御する吸着制御部19を備える。吸着制御部19は、後に具体的に説明する制御部90において、例えばCPU91がプログラムPに従って所定の演算処理を行うことによって、あるいは、専用の論理回路等でハードウエア的に実現される(図7)。
【0067】
吸着制御部19は、圧力センサ17と電気的に接続されており、圧力センサ17からの検知信号を取得可能に構成されている。また、吸着制御部19は、開閉弁123および開閉弁137のそれぞれと電気的に接続されており、圧力センサ17から得られる検知信号等に基づいて、各開閉弁123,137を独立して開閉制御する。つまり、吸着制御部19は、圧力センサ17から得られる検知信号等に基づいて、保持面111に形成された複数の吸引口(真空吸引口12および複数のベルヌーイ吸引口13,13,・・,13)のそれぞれにおける吸引圧の形成を制御する。この制御態様については後に具体的に説明する。
【0068】
<1−2.ステージ駆動機構20>
再び図1、図2を参照する。ステージ駆動機構20は、基板保持部10を基台105に対して移動させる機構であり、基板保持部10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動させる。ステージ駆動機構20は、具体的には、基板保持部10を回転させる回転機構21(図1)を備える。ステージ駆動機構20は、さらに、回転機構21を介して基板保持部10を支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23とを備える。ステージ駆動機構20は、さらに、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25とを備える。
【0069】
回転機構21は、図1に示すように、基板保持部10の上面(保持面111)の中心を通り、保持面111に垂直な回転軸Aを中心として基板保持部10を回転させる。回転機構21は、例えば、上端が保持面111の裏面側に固着され、鉛直軸に沿って延在する回転軸部211と、回転軸部211の下端に設けられ、回転軸部211を回転させる駆動部(例えば、回転モータ)212とを含む構成とすることができる。この構成においては、駆動部212が回転軸部211を回転させることにより、基板保持部10が水平面内で回転軸Aを中心として回転することになる。
【0070】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ231とを有している。また、ベースプレート24には、副走査方向に延びる一対のガイド部材232が敷設されており、各ガイド部材232と支持プレート22との間には、ガイド部材232に摺動しながら当該ガイド部材232に沿って移動可能なボールベアリングが設置されている。つまり、支持プレート22は、当該ボールベアリングを介して一対のガイド部材232上に支持される。この構成においてリニアモータ231を動作させると、支持プレート22はガイド部材232に案内された状態で副走査方向に沿って滑らかに移動する。
【0071】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子と描画装置1の基台105上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ251を有している。また、基台105には、主走査方向に延びる一対のガイド部材252が敷設されており、各ガイド部材252とベースプレート24との間にはエアベアリングが設置されている。エアベアリングにはユーティリティ設備から常時エアが供給されており、ベースプレート24は、エアベアリングによってガイド部材252上に非接触で浮上支持される。この構成においてリニアモータ251を動作させると、ベースプレート24はガイド部材252に案内された状態で主走査方向に沿って摩擦なしで滑らかに移動する。
【0072】
<1−3.計測部30>
計測部30は、基板保持部10の位置を計測する機構であり、基板保持部10外から基板保持部10に向けてレーザ光を出射するとともにその反射光を受光し、当該反射光と出射光との干渉から基板保持部10の位置(具体的には、主走査方向に沿うY位置、および、回転方向に沿うθ位置)を計測する、干渉式のレーザ測長器により構成される。
【0073】
計測部30は、例えば、基板保持部10の−Y側の側面に取り付けられるとともに、−Y側の面に主走査方向に垂直な反射面を備えるプレーンミラー31と、ステージの−Y側において基台105に対して固定される各部(具体的には、レーザ光源32、スプリッタ33、第1リニア干渉計34、第1レシーバ35、第2リニア干渉計36および第2レシーバ37)とを備える構成とすることができる。
【0074】
この計測部30においては、レーザ光源32から出射されたレーザ光は、スプリッタ33により2分割され、一方の一部が第1リニア干渉計34を介してプレーンミラー31上の第1の部位に入射し、プレーンミラー31からの反射光が、第1リニア干渉計34において元のレーザ光の一部(これが参照光として利用される)と干渉して第1レシーバ35により受光される。第1レシーバ35における、反射光と参照光との干渉後の強度変化に基づいて、第1リニア干渉計34とプレーンミラー31との主走査方向における距離が特定される。この第1レシーバ35からの出力に基づいて、専門の演算回路(図示省略)にて基板保持部10の主走査方向における位置が求められる。
【0075】
一方、レーザ光源32から出射されてスプリッタ33により分割された他方のレーザ光の一部は、取付台38の内部を+X側から−X側へと通過し、第2リニア干渉計36を介してプレーンミラー31に入射する。ここで、第2リニア干渉計36からのレーザ光は、プレーンミラー31上の第1の部位から副走査方向に一定距離だけ離間したプレーンミラー31上の第2の部位に入射することになる。プレーンミラー31からの反射光は、第2リニア干渉計36において元のレーザ光の一部と干渉して第2レシーバ37により受光される。第2レシーバ37における、反射光と参照光との干渉後の強度変化に基づいて、第2リニア干渉計36とプレーンミラー31との主走査方向における距離が特定される。第2レシーバ37からの出力と上述した第1レシーバ35からの出力に基づいて、専門の演算回路(図示省略)にて基板保持部10の回転角度が求められる。
【0076】
<1−4.光学ユニット40>
光学ユニット40は、基板保持部10上に保持された基板Wの上面に光を照射して露光するための機構である。上述したとおり、描画装置1は2個の光学ユニット40,40を備える。一方の光学ユニット40は基板Wの+X側半分の露光を担当し、他方の光学ユニット40は基板Wの−X側半分の露光を担当する。これら2個の光学ユニット40,40は、基板保持部10およびステージ駆動機構20を跨ぐようにして基台105上に架設されたフレーム107に、間隔をあけて固設される。なお、2個の光学ユニット40,40の間隔は必ずしも一定に固定されている必要はなく、光学ユニット40,40の一方あるいは両方の位置を変更可能とする機構を設けて、両者の間隔を調整可能としてもよい。
【0077】
2個の光学ユニット40,40はいずれも同じ構成を備える。すなわち、各光学ユニット40は、天板を形成するボックスの内部に配置されたレーザ駆動部41、レーザ発振器42および照明光学系43と、フレーム107の+Y側に取り付けられた付設ボックスの内部に収容されたヘッド部400とを備える。ヘッド部400は、空間光変調部44と投影光学系45とを主として備える。
【0078】
レーザ発振器42は、レーザ駆動部41からの駆動を受けて、出力ミラー(図示省略)からレーザ光を出射する。照明光学系43は、レーザ発振器42から出射された光(スポットビーム)を、強度分布が均一な線状の光(光束断面が線状の光であるラインビーム)とする。レーザ発振器42から出射され、照明光学系43にてラインビームとされた光は、ヘッド部400に入射し、パターンデータD(図7参照)に応じた空間変調を施された上で基板Wに照射される。
【0079】
ヘッド部400に入射した光は、具体的には、ミラー46を介して、定められた角度で空間光変調部44に入射する。空間光変調部44は、当該入射光を空間変調して、パターンの描画に寄与させる必要光と、パターンの描画に寄与させない不要光とを、互いに異なる方向に反射させる。ただし、光を空間変調させるとは、具体的には、光の空間分布(振幅、位相、および偏光等)を変化させることを意味する。
【0080】
空間光変調部44は、具体的には、電気的な制御によって入射光を空間変調させる空間光変調器441を備える。空間光変調器441は、その反射面の法線が、ミラー46を介して入射する入射光の光軸に対して傾斜して配置され、当該入射光を制御部90の制御に基づいて空間変調させる。空間光変調器441は、例えば、回折格子型の空間変調器(例えば、GLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・開閉弁)(シリコン・ライト・マシーンズ(サンノゼ、カリフォルニア)の登録商標)等を利用して構成される。回折格子型の空間変調器は、格子の深さを変更することができる回折格子であり、例えば、半導体装置製造技術を用いて製造される。
【0081】
空間光変調器441は、複数の空間光変調素子を一次元に並べた構成となっている。各空間光変調素子の動作は、電圧のオン/オフで制御される。すなわち、例えば電圧がオフされている状態においては空間光変調素子の表面は平面となっており、この状態で空間光変調素子に光が入射すると、その入射光は回折せずに正反射する。これにより、正反射光(0次回折光)が発生する。一方、例えば電圧がオンされている状態においては、空間光変調素子の表面には平行な溝が周期的に並んで複数本形成される。この状態で空間光変調素子に光が入射すると、正反射光(0次回折光)は打ち消しあって消滅し、他の次数の回折光(±1次回折光、±2次回折光、および、さらに高次の回折光)が発生する。より正確には、0次回折光の強度が最小となり、他の次数の回折光の強度が最大となる。空間光変調器441は、複数の空間光変調素子のそれぞれに対して独立に電圧を印加可能なドライバ回路ユニットを備えており、各空間光変調素子の電圧が独立して切り換え可能となっている。
【0082】
投影光学系45は、空間光変調器441にて空間変調された光のうち、パターンの描画に寄与させるべきでない不要光を遮断するとともにパターンの描画に寄与させるべき必要光のみを基板Wの表面に導いて、当該表面に結像させる。ただし、空間光変調器441にて空間変調された光には、0次回折光と、0次以外の次数の回折光(具体的には、±1次回折光、±2次回折光、および、比較的微量の±3次以上の高次回折光)とが含まれており、0次回折光はパターンの描画に寄与させるべき必要光であり、それ以外の回折光はパターンの描画に寄与させるべきでない不要光である。これら必要光と不要光とは互いに異なる方向に沿って出射される。すなわち、必要光はZ軸に沿って−Z方向に、不要光はZ軸から±X方向に僅かに傾斜した軸に沿って−Z方向に、それぞれ出射される。投影光学系45は、例えば、遮断板によって、Z軸から±X方向に僅かに傾斜した軸に沿って進行する不要光を遮断するとともに、Z軸に沿って進行する必要光のみを通過させる。投影光学系45は、この遮断板の他に、入射光の幅を広げる(あるいは狭める)ズーム部を構成する複数のレンズ、入射光を定められた倍率として基板W上に結像させる対物レンズ、等をさらに含む構成とすることができる。
【0083】
光学ユニット40に描画動作を実行させる場合、制御部90は、レーザ駆動部41を駆動してレーザ発振器42から光を出射させる。出射された光は照明光学系43にてラインビームとされ、ミラー46を介して空間光変調部44の空間光変調器441に入射する。空間光変調器441においては、複数の空間光変調素子が、副走査方向(X軸方向)に沿って並んで配置されており、入射光はその線状の光束断面を空間光変調素子の配列方向に沿わせるようにして、一列に配列された複数の空間光変調素子に入射する。制御部90は、パターンデータDに基づいてドライバ回路ユニットに指示を与え、ドライバ回路ユニットが指示された空間光変調素子に対して電圧を印加する。これによって、各空間光変調素子にて個々に空間変調された光が形成され、基板Wに向けて出射されることになる。空間光変調器441が備える空間光変調素子の個数を「N個」とすると、空間光変調器441からは、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光が出射されることになる。空間光変調器441にて空間変調された光は、投影光学系45に入射し、ここで、不要光が遮断されるとともに必要光のみが基板Wの表面に導かれ、定められた倍率とされて基板Wの表面に結像される。
【0084】
後に明らかになるように、光学ユニット40は、このように副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光を断続的に照射し続けながら(すなわち、基板Wの表面にパルス光を繰り返して投影し続けながら)、主走査方向(Y軸方向)に沿って基板Wに対して相対的に移動される。したがって、光学ユニット40が主走査方向に沿って基板Wを1回横断すると、基板Wの表面に、副走査方向に沿ってN画素分の幅をもつ一本のパターン群が描画されることになる。この、N画素分の幅をもつ1本のパターン描画領域を、以下の説明では「1ストライプ分の領域」ともいう。
【0085】
なお、ヘッド部400には、空間光変調部44と投影光学系45との間に、空間光変調部44で変調された光の経路を副走査方向に沿って僅かにシフトさせる光路補正部をさらに設けてもよい。この場合、必要に応じて光路補正部に光の経路をシフトさせることによって、基板Wに照射される光の位置を副走査方向に沿って微調整することが可能となる。光路補正部は、例えば、2個のウェッジプリズム(非平行な光学面を備えることにより入射光の光路を変更できるプリズム)と、一方のウェッジプリズムを、他方のウェッジプリズムに対して、入射光の光軸の方向(Z軸方向)に沿って直線的に移動させるウェッジプリズム移動機構とから実現することができる。この構成においては、ウェッジプリズム移動機構を駆動制御して、2個のウェッジプリズム間の離間距離を調整することによって、必要な量だけ入射光をシフトさせることができる。
【0086】
<1−5.撮像ユニット50>
撮像ユニット50は、基板Wの上面に形成されたアライメントマークを撮像する。撮像ユニット50は、鏡筒、対物レンズ、および、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成されるCCDイメージセンサ(いずれも図示省略)を備える。また、撮像ユニット50は、照明ユニット80から延びるファイバ81と接続される。照明ユニット80から出射される光はファイバ81によって鏡筒に導かれ、鏡筒を介して基板Wの上面に導かれる。そして、その反射光が、対物レンズを介してCCDイメージセンサで受光される。これによって、基板Wの上面の撮像データが取得されることになる。CCDイメージセンサは、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得するとともに、取得した撮像データを制御部90に送信する。なお、撮像ユニット50はオートフォーカス可能なオートフォーカスユニットをさらに備えていてもよい。
【0087】
<1−6.搬送装置60>
搬送装置60は、基板Wを支持するための2本のハンド61,61と、ハンド61,61を独立に移動させるハンド駆動機構62とを備える。各ハンド61は、ハンド駆動機構62によって駆動されることにより進退移動および昇降移動されて、基板保持部10の保持面111に対する基板Wの受け渡しを行う。
【0088】
<1−7.プリアライメント部70>
プリアライメント部70は、基板Wの回転位置を粗く補正する装置である。プリアライメント部70は、例えば、回転可能に構成された載置台と、載置台に載置された基板Wの外周縁の一部に形成された切り欠き部(例えば、ノッチ、オリエンテーションフラット等)の位置を検出するセンサと、載置台を回転させる回転機構とから構成することができる。この場合、プリアライメント部70におけるプリアライメント処理は、まず、載置台に載置された基板Wの切り欠き部の位置をセンサで検出し、続いて、回転機構が、当該切り欠き部の位置が定められた位置となるように(例えば、切り欠きの方向が基板保持部10の移動方向(例えば、X方向))と平行になるように)載置台を回転させることによって行われる。
【0089】
<1−8.制御部90>
制御部90は、描画装置1が備える各部と電気的に接続されており、各種の演算処理を実行しつつ描画装置1の各部の動作を制御する。
【0090】
図7は、制御部90のハードウエア構成を示すブロック図である。制御部90は、例えば、CPU91、ROM92、RAM93、外部記憶装置94等がバスライン95を介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。ROM92は基本プログラム等を格納しており、RAM93はCPU91が所定の処理を行う際の作業領域として供される。外部記憶装置94は、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。外部記憶装置94にはプログラムPが格納されており、このプログラムPに記述された手順に従って、主制御部としてのCPU91が演算処理を行うことにより、各種機能が実現されるように構成されている。プログラムPは、通常、予め外部記憶装置94等のメモリに格納されて使用されるものであるが、CD−ROMあるいはDVD−ROM、外部のフラッシュメモリ等の記録媒体に記録された形態(プログラムプロダクト)で提供され(あるいは、ネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより提供され)、追加的または交換的に外部記憶装置94等のメモリに格納されるものであってもよい。なお、制御部90において実現される一部あるいは全部の機能は、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
【0091】
また、制御部90では、入力部96、表示部97、通信部98もバスライン95に接続されている。入力部96は、各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、オペレータから各種の入力設定指示を受け付ける。表示部97は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、CPU91による制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、LAN等を介したデータ通信機能を有する。
【0092】
外部記憶装置94には、基板Wに露光すべきパターンを記述したデータ(パターンデータ)Dが格納される。パターンデータDは、例えば、CADを用いて生成されたCADデータをラスタライズしたデータであり、回路パターンなどを表現している。制御部90は、基板Wに対する一連の処理に先立ってパターンデータDを取得して外部記憶装置94に格納している。なお、パターンデータDの取得は、例えばネットワーク等を介して接続された外部端末装置から受信することにより行われてもよいし、記録媒体から読み取ることにより行われてもよい。
【0093】
<2.基板Wに対する処理の流れ>
次に、描画装置1において実行される基板Wに対する一連の処理の流れについて、図8を参照しながら説明する。図8は、当該処理の流れを示す図である。以下に説明する一連の動作は、制御部90の制御下で行われる。
【0094】
まず、搬送装置60が、カセット載置部104に載置されたカセットCから未処理基板Wを取り出して描画装置1(具体的には、プリアライメント部70)に搬入する(ステップS1)。
【0095】
続いて、プリアライメント部70にて、基板Wに対するプリアライメント処理が行われる(ステップS2)。プリアライメント処理は、上述したとおり、例えば、載置台に載置された基板Wの切り欠き部の位置をセンサで検出し、当該切り欠き部の位置が定められた位置となるように載置台を回転させることによって行われる。これによって、載置台に載置された基板Wが定められた回転位置におおまかに位置合わせされた状態におかれることになる。
【0096】
続いて、搬送装置60が、プリアライメント処理済みの基板Wをプリアライメント部70から搬出してこれを基板保持部10の保持面111に載置する(ステップS3)。この処理は、具体的には次のように行われる。まず、ステージ駆動機構20が、基板保持部10を定められた受け渡し位置まで移動させる。基板保持部10が受け渡し位置に配置されると、続いて、リフトピン駆動機構(図示省略)が一群のリフトピン181を下方位置から上方位置に移動させる。これによって、保持面111から一群のリフトピン181が突出した状態となる。続いて、搬送装置60が、プリアライメント処理済みの基板Wを支持したハンド61を保持面111に沿って差し込んで、さらにハンド61を下方に移動させる。これによって、ハンド61上に載置されていた基板Wが一群のリフトピン181上に移載される。続いて、ハンド61が引き抜かれると、リフトピン駆動機構14が、一群のリフトピン181を上方位置から下方位置に移動させる。これによって、基板Wが保持面111に載置された状態となる。
【0097】
保持面111に基板Wが載置されると、続いて、基板保持部10が基板Wを吸着保持する(ステップS4)。この処理の流れについて、図9を参照しながら具体的に説明する。図9は、当該処理の流れを示す図である。
【0098】
保持面111に基板Wが載置されると、吸着制御部19は、まず、開閉弁123を開放する。すると、真空吸引口12に負圧(吸引圧)が形成される(ステップS41)。
【0099】
基板Wが反りのない平坦な形状である場合、土手部14の頂部全域、全ての突起部15の頂部、および、全ての環状突起部16の頂部のそれぞれと基板Wの裏面とが当接し、土手部14と、これに包囲されている保持面111と、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。したがって、この場合、真空吸引口12に負圧が形成されると当該密閉空間の圧力が低下し、基板Wは、その裏面が保持面111から土手部14の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111に吸着保持される。保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側(真空圧側)となったことが圧力センサ17の出力情報から確認されると(すなわち、圧力センサ17の検知圧力が所定値(例えば−60kPa)より小さくなると)(ステップS42でYES)、吸着制御部19は、基板Wは適切に吸着保持されたと判断して基板Wを吸着保持する一連の処理を終了する。
【0100】
一方、基板Wに反りが生じており平坦な形状ではない場合、基板Wの裏面と土手部14の頂部の少なくとも一部との間に隙間が生じる。したがって、この場合、真空吸引口12に負圧が形成されても、この隙間から負圧が逃げてしまい、保持面111上の圧力はなかなか低下しない。真空吸引口12からの吸引を開始してから一定の時間が経過しても、保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが圧力センサ17の出力情報から確認されない場合(すなわち、圧力センサ17の検知圧力が所定値(例えば−60kPa)以上の場合)(ステップS42でNO)、吸着制御部19は、基板Wは保持面111に適切に吸着保持されていない(吸着不良)と判断し、開閉弁137を開放する。すると、複数のベルヌーイ吸引口13,13,・・,13の全てに負圧(吸引圧)が形成される(ステップS43)。
【0101】
上述した通り、ベルヌーイ吸引口13は、保持面111に規定される円形領域M1と、円環状領域M2とのそれぞれに少なくとも1個ずつ配置される(図3参照)。基板Wが凸形状に反っている場合、基板Wの中心部付近は円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13が形成する負圧によって保持面111に対して強く吸引される。一方、基板Wが凹形状に反っている場合、基板Wの周縁付近は円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13が形成する負圧によって保持面111に対して強く吸引される。したがって、基板Wに凸形状、凹形状、どちらの反りが生じている場合であっても、ベルヌーイ吸引口13が形成する負圧によって基板Wは平坦化される。
【0102】
基板Wが平坦な形状となると、上述したとおり、基板Wの裏面が土手部14の頂部全域、全ての突起部15の頂部、および、全ての環状突起部16の頂部と当接し、土手部14と、これに包囲されている保持面111と、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。すると、真空吸引口12および各ベルヌーイ吸引口13に形成される負圧によって当該密閉空間の圧力が低下し、基板Wは、その裏面が保持面111から土手部14の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111に吸着保持される。保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが圧力センサ17の出力情報から確認されると(すなわち、圧力センサ17の検知圧力が所定値(例えば−60kPa)より小さくなると)(ステップS44でYES)、吸着制御部19は、開閉弁137を閉鎖して各ベルヌーイ吸引口13からの吸引を停止させる(ステップS45)。上述したとおり、基板Wは既に平坦な形状となっており、土手部14とこれに包囲されている保持面111と基板Wの裏面との間には密閉空間が形成されているため、各ベルヌーイ吸引口13からの吸引を停止しても、真空吸引口12に形成される負圧によって基板Wが適切に吸着保持された状態が維持される。以上で、吸着制御部19は、基板Wを吸着保持する一連の処理を終了する。
【0103】
再び図8を参照する。基板Wが吸着保持された状態となると、続いて、当該基板Wが適正な回転位置にくるように精密に位置合わせする処理(ファインアライメント)が行われる(ステップS5)。具体的には、まず、ステージ駆動機構20が、基板保持部10を受け渡し位置から撮像ユニット50の下方位置まで移動させる。基板保持部10が撮像ユニット50の下方に配置されると、続いて、撮像ユニット50が、基板W上のアライメントマークを撮像して、当該撮像データを取得する。続いて、制御部90が、撮像ユニット50により取得された撮像データを画像解析してアライメントマークの位置を検出し、その検出位置に基づいて基板Wの回転位置の適正位置からのずれ量を算出する。ずれ量が算出されると、回転機構21が、当該算出されたずれ量だけ基板保持部10を回転させる。これによって、基板Wが適正な回転位置にくるように位置合わせされる。
【0104】
基板Wが適切な回転位置におかれると、続いて、パターンの描画処理が行われる(ステップS6)。描画処理について、図10を参照しながら説明する。図10は、描画処理を説明するための図である。
【0105】
描画処理は、ステージ駆動機構20が基板保持部10に載置された基板Wを光学ユニット40,40に対して相対的に移動させつつ、光学ユニット40,40のそれぞれから基板Wの上面に空間変調された光を照射させることによって行われる。
【0106】
具体的には、ステージ駆動機構20は、まず、撮像ユニット50の下方位置に配置されている基板保持部10を主走査方向(Y軸方向)に沿って+Y方向に移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる(主走査)。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は基板W上を主走査方向に沿って−Y方向に横断することになる(矢印AR11)。主走査が行われる間、各光学ユニット40は、パターンデータDに応じた空間変調が形成された光(具体的には、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光)を、基板Wに向けて断続的に照射し続ける(すなわち、基板Wの表面にパルス光が繰り返して投影され続ける)。つまり、各光学ユニット40は、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光を断続的に照射し続けながら基板W上を主走査方向に沿って横断する。したがって、光学ユニット40が主走査方向に沿って基板Wを1回横断すると、基板Wの表面に、副走査方向に沿ってN画素分の幅をもつ一本のパターン群が描画されることになる。ここでは、2個の光学ユニット40が同時に基板Wを横断するので、一回の主走査により2本のパターン群が描画されることになる。
【0107】
1回の主走査が終了すると、ステージ駆動機構20は、基板保持部10を副走査方向(X軸方向)に沿って+X方向に、1ストライプの幅に相当する距離だけ移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して副査方向に沿って相対的に移動させる(副走査)。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は副走査方向に沿って−X方向に、1ストライプの幅分だけ移動することになる(矢印AR12)。
【0108】
副走査が終了すると、再び主走査が行われる。すなわち、ステージ移動機構20は、基板保持部10を主走査方向に沿って−Y方向に移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は、基板W上における、先の主走査で描画された1ストライプ分の描画領域の隣を、主走査方向に沿って+Y方向に移動して横断することになる(矢印AR13)。ここでも、各光学ユニット40は、パターンデータDに応じた空間変調が形成された光を、基板Wに向けて断続的に照射し続けながら基板W上を主走査方向に沿って横断する。これによって、先の主走査で描画された1ストライプ分の描画領域の隣に、さらに1ストライプ分の領域の描画が行われることになる。以後、同様に、主走査と副走査とが繰り返して行われ、基板Wの表面の全域にパターンが描画されると描画処理が終了する。
【0109】
再び図8を参照する。描画処理が終了すると、ステージ駆動機構20が、基板保持部10を受け渡し位置まで移動させる。基板保持部10が受け渡し位置に配置されると、吸着制御部19が、開閉弁123を閉鎖して真空吸引口12からの吸引を停止させる。これによって、真空吸引口12より気体が密閉空間に流入し、基板Wの吸着状態が解除される(ステップS7)。
【0110】
基板Wの保持面111に対する吸着状態が解除されると、続いて、搬送装置60が、保持面111に載置された処理済みの基板Wを受け取って描画装置1から搬出し、カセット載置部104に載置されたカセットCに収容する(ステップS8)。搬送装置60が保持面111から基板Wを受け取る処理は、具体的には次のように行われる。まず、リフトピン駆動機構(図示省略)が、一群のリフトピン181を下方位置から上方位置に移動させる。これによって、基板Wの下面は一群のリフトピン181により支持されて基板保持部10から持ち上げられて保持面111から引きはがされた状態となる。続いて、搬送装置60が、ハンド61を保持面111と基板Wの下面との間に差し込み、さらにハンド61を上昇させる。これによって、一群のリフトピン181の上に支持されていた基板Wがハンド61上に移載される。続いてハンド61が引き抜かれると、リフトピン駆動機構14が、一群のリフトピン181を上方位置から下方位置に移動させる。
【0111】
<3.効果>
第1の実施の形態においては、ベルヌーイ吸引口13が、保持面111に形成された円形領域M1と円環状領域M2とのそれぞれに配置されるので、基板Wが凸形状、凹形状のどちらに反っていても、ベルヌーイ吸引口13からの吸引によってその反りを平坦化することができる。したがって、簡易な構成で、反った基板Wであっても確実に基板W(具体的には、少なくとも基板Wにおける露光領域を含む部分)を吸着保持できる。したがって、基板Wに対する一連の処理が行われる間、保持面111に対して基板Wが位置ずれを起こすといった事態の発生が回避され、基板Wに対する一連の処理を適切に行うことができる。すなわち、高精度な描画処理が担保される。
【0112】
また、第1の実施の形態においては、基板Wは土手部14の頂部、および、突起部15の頂部等に当接した状態で吸着保持される。この構成によると、基板Wは、その裏面が保持面111から土手部14の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111に対して吸着保持されるので、基板Wの裏面に真空吸引口12の吸引跡がつくおそれがない。
【0113】
また、第1の実施の形態においては、保持面111の円環状領域M2の周方向に沿って複数のベルヌーイ吸引口13が配列される。この構成によると、基板Wが凹形状に反っている場合であっても、円環状領域M2に配置された各ベルヌーイ吸引口13からの吸引圧によってその反りを平坦化して、基板Wを確実に吸着保持できる。
【0114】
また、第1の実施の形態においては、真空吸引口12からの吸引を行っても保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合にベルヌーイ吸引口13からの吸引を開始する。この構成によると、例えば保持面111に載置された基板Wがはじめから反りのない平坦な形状である場合は、ベルヌーイ吸引口13からの吸引は行われないので、無駄な空気の消費が抑制される。また、基板Wの裏面が汚染される危険もない。
【0115】
また、第1の実施の形態においては、ベルヌーイ吸引口13からの吸引を開始した後に保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側となると、ベルヌーイ吸引口13からの吸引を停止する。つまり、ベルヌーイ吸引口13からの吸引によって基板Wの反りが平坦化されて基板Wが適切に吸着保持されると、以後は真空吸引口12からの吸引のみで基板Wを吸着保持する。この構成によると、ベルヌーイ吸引口13からの吸引が必要最小限に抑えられるので、無駄な空気の消費が抑制される。また、基板Wの裏面が汚染される危険も低くなる。
【0116】
また、第1の実施の形態においては、真空吸引口12からの吸引が行われている状態(すなわち、基板Wの少なくとも一部が真空吸引口12からの吸引圧によって保持面111に吸引された状態)で各ベルヌーイ吸引口13からの吸引を開始する。この構成によると、各ベルヌーイ吸引口13からの吸引を開始した際に基板Wが位置ずれを起こすといった事態が生じにくい。
【0117】
また、第1の実施の形態においては、ベルヌーイ吸引ユニット130の本体部131と保持板11に形成された凹部112との間に隙間Qが形成されており、円柱状凹空間132から溢れ出た気体は隙間Qに沿って流れて保持板11の裏面側に排出されるようになっている。したがって、基板Wの裏面がベルヌーイ吸引口13の外縁に形成された環状突起部16の頂部と当接した状態(すなわち、ベルヌーイ吸引口13が基板Wの裏面によって塞がれた状態)となっても、円柱状凹空間132内に強い旋回流を形成し続けることができる。すなわち、ベルヌーイ吸引口13の負圧を維持し続けることができる。
【0118】
また、第1の実施の形態においては、ベルヌーイ吸引口13の径サイズd13が、円柱状凹空間132の径サイズd132よりも小さく形成される。この構成によると、基板Wの裏面における吸引圧が作用する領域が小さくなるため、ベルヌーイ吸引口13からの吸引を行うことによって基板Wの平面度を悪化させるおそれがない。
【0119】
<<第2の実施の形態>>
第2の実施の形態に係る描画装置について説明する。この実施の形態に係る描画装置は、基板Wを水平姿勢に吸着保持する基板保持部が備える保持面の構成と、基板Wを保持面に吸着保持させる態様とにおいて、第1の実施の形態と相違する。以下においては、第1の実施の形態と相違する点を説明し、同じ構成については説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0120】
<1.基板保持部10a>
基板保持部10aの構成について、図11、図12を参照しながら説明する。図11は、基板保持部10aの平面図である。図12は、基板保持部10aが備える配管系統を模式的に示す図である。
【0121】
基板保持部10aは、第1の実施の形態に係る基板保持部10と同様、平板状の外形を有し、その上面に基板Wの裏面に対向する保持面111aが形成される保持板11aを備える。この実施形態においても、保持面111aの平面度は、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値となるように形成される。また、保持面111aは、少なくとも基板Wの露光領域をカバーするサイズに形成される。また、この実施形態においても、基板Wは円形状であるとし、保持面111aも平面視円形状に形成される。
【0122】
<吸引口12a,・・,12a,13a,・・,13a>
保持面111aには、複数の吸引口12a,・・,12a,13a,・・,13aが形成される。この複数の吸引口12a,・・,12a,13a,・・,13aのうちの半分の吸引口12a,・・,12aは、真空吸引により基板Wを保持面111aに吸引する真空吸引口12aである。また、残り半分の吸引口13a,・・,13aは、ベルヌーイ吸引により基板Wを保持面111aに吸引するベルヌーイ吸引口13aである。真空吸引口12aとベルヌーイ吸引口13aとは同数個ずつ(図示の例では、7個ずつ)形成される。
【0123】
ここで、複数の真空吸引口12a,・・,12a、および、複数のベルヌーイ吸引口13a,・・,13aのレイアウトについて説明する。上記の実施の形態と同様、ここでも、保持面111aには、保持面111aの中心と同心に配置された円形領域M1と、円形領域M1と同心に配置された円環状領域M2とが規定される。円環状領域M2は、さらに、その周方向に沿って複数(図示の例では6個)の弧状領域M22,M22,・・,M22に分割されている。つまり、この実施の形態に係る保持面111aには、円形領域M1および複数の弧状領域M22,M22,・・,M22が規定されている。以下において、円形領域M1および各弧状領域M22のそれぞれを「部分領域Mi」と総称する。真空吸引口12aとベルヌーイ吸引口13aとは、保持面111aに規定される複数の部分領域Miのそれぞれに少なくとも1個ずつ(図示の例では1個ずつ)配置される。
【0124】
ただし、各弧状領域M22は互いに同じ面積とされることが好ましい。また、各弧状領域M22と円形領域M1とが互いに同じ面積とされる(つまり、各部分領域Miが同じ面積とされる)ことも好ましい。さらに、各部分領域Miが同じ面積とされる場合、各部分領域Miには、真空吸引口12aとベルヌーイ吸引口13aとが同数個ずつ配置されることが好ましい。
【0125】
各真空吸引口12aは、真空吸引口12aの個数分だけ分岐した分岐配管121aの各分岐側端部と接続されている。一方、分岐配管121aの合流側端部は気体吸引部122と接続されている。また、分岐配管121aの途中(合流側の部分)には開閉弁123aが介挿されている。気体吸引部122が稼働されるとともに開閉弁123aが開放されると、分岐配管121aを介して複数の真空吸引口12a,・・,12aのそれぞれに負圧(吸引圧)が形成される。
【0126】
各ベルヌーイ吸引口13aは、ベルヌーイ吸引ユニット130が配置された凹部112と連通している。ベルヌーイ吸引ユニット130の構成は上述したとおりである。各ベルヌーイ吸引ユニット130が備える一対の噴出ノズル134,134のそれぞれは、ベルヌーイ吸引口13aの個数分だけ分岐した分岐配管135aの各分岐側端部と接続されている。一方、分岐配管135aの合流側端部は気体供給部136と接続されている。また、分岐配管135aの途中(分岐側の各部分)には開閉弁137aが介挿されている。さらに、分岐配管135aの途中(合流側の部分)にはフィルタ(図示省略)が介挿されている。気体供給部136が稼働されるとともに、複数の開閉弁137a,・・,137aのいずれかが開放されると、分岐配管135aを介して、当該開閉弁137aが介挿されている分岐部と接続されたベルヌーイ吸引ユニット130に圧縮気体が供給される(具体的には、当該ベルヌーイ吸引ユニット130が備える一対の噴出ノズル134,134のそれぞれから圧縮気体が噴出される)。これによって、当該ベルヌーイ吸引ユニット130が配置された凹部112と連通されているベルヌーイ吸引口13aに負圧が形成される。つまり、この構成においては、複数のベルヌーイ吸引口13a,・・,13aのそれぞれに独立して負圧を形成できるようになっている。
【0127】
<土手部14a>
保持面111aには、各部分領域Miの境界に沿って土手部14aが立設される。すなわち、保持面111aには、各部分領域Miを包囲するような土手部14aが立設される。また、第1の実施の形態と同様、土手部14aにより包囲された各部分領域Mi内にはその全域にわたって複数の突起部15が満遍なく立設される(図4、図5参照)。さらに、各ベルヌーイ吸引口13aの外縁および各ピン孔18の外縁に沿って環状突起部16が立設される。ただし、図11においては、突起部15の図示を省略している。
【0128】
第1の実施の形態と同様、土手部14aの頂部と各突起部15の頂部と各環状突起部16の頂部とはすべて面一に形成されており、これら各頂部が配置される平面の平面度も、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値となるように形成される。保持面111aに平坦な基板Wが載置されると、当該基板Wの裏面が全ての土手部14aの頂部全域、全ての突起部15の頂部、および、全ての環状突起部16の頂部と当接し、各土手部14aとこれに包囲された各部分領域Miと基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。この状態で、各部分領域Miに開口された真空吸引口12aに負圧が形成されると、各密閉空間が減圧され、基板W(具体的には、少なくとも基板Wにおける露光領域を含む部分)は、その裏面が保持面111aから土手部14aの高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111aに吸着保持されることになる。
【0129】
<圧力センサ17a>
保持面111aには、複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aが配置される。圧力センサ17aは、保持面111a上に規定される複数の部分領域Miのそれぞれに1個ずつ配置され、当該配置位置における保持面111a上の圧力を検出する。
【0130】
<リフトピン181>
基板保持部10aは、第1の実施の形態に係る基板保持部10と同様、保持面111aに対して基板Wを昇降させるための複数のリフトピン181と、保持面111aに形成され、各リフトピン181を挿通可能なピン孔18とを備える。リフトピン181およびピン孔18の構成は第1の実施の形態に係るリフトピン181と同様である。
【0131】
<吸着制御部19a>
基板保持部10aは、第1の実施の形態に係る基板保持部10と同様、基板保持部10aが備える各部を制御する吸着制御部19aを備える。吸着制御部19aは、制御部90において、例えばCPU91がプログラムPに従って所定の演算処理を行うことによって、あるいは、専用の論理回路等でハードウエア的に実現される(図7参照)。
【0132】
吸着制御部19aは、複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのそれぞれと電気的に接続されており、各圧力センサ17aからの検知信号を取得可能に構成されている。また、吸着制御部19aは、開閉弁123a、および複数の開閉弁137a,137a,・・,137aのそれぞれと電気的に接続されており、各圧力センサ17aから得られる検知信号に基づいて、各開閉弁123a,137a,137a,・・,137aを独立して開閉制御する。つまり、吸着制御部19aは、各圧力センサ17aから得られる検知信号等に基づいて、保持面111aに形成された複数の吸引口(複数の真空吸引口12a,12a,・・,12aおよび複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13a)のそれぞれにおける吸引圧の形成を制御する。この制御態様については後に具体的に説明する。
【0133】
<2.基板Wを吸着保持する処理の流れ>
基板保持部10aが基板Wを保持面111aに吸着保持する処理の流れ(図8のステップS4の処理の流れ)について説明する。この処理は、第1の実施の形態に係るステップS4の処理の流れとほぼ同様であるので、先に参照した図8を参照しながら説明する。
【0134】
保持面111aに基板Wが載置されると、吸着制御部19aは、まず、開閉弁123aを開放する。すると、複数の真空吸引口12a,12a,・・12aのそれぞれに負圧が形成される(ステップS41)。
【0135】
保持面111aに規定される部分領域Miにおいて、当該部分領域Miを包囲する土手部14aの頂部全域と基板Wの裏面とが当接している場合、土手部14aと、これに包囲されている部分領域Miと、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。したがって、この場合、当該部分領域Miに配置された真空吸引口12aに負圧が形成されると、当該密閉空間の圧力が低下する。
【0136】
基板Wが反りのない平坦な形状である場合、全ての部分領域Mi(すなわち、保持面111aの全域)において、保持面111a上の圧力が低下する。全ての部分領域Miにおいて保持面111a上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのそれぞれの出力情報から確認されると(ステップS42でYES)、吸着制御部19aは、基板Wは保持面111aに適切に吸着保持されたと判断して基板Wを吸着保持する一連の処理を終了する。
【0137】
一方、基板Wに反りが生じており平坦な形状ではない場合、少なくとも1個の部分領域Miにおいて、当該部分領域Miを包囲する土手部14aの頂部の少なくとも一部と基板Wの裏面との間に隙間が生じる。したがって、この場合、当該部分領域Miに配置された真空吸引口12aに負圧が形成されても、この隙間から負圧が逃げてしまい、当該部分領域Miにおいて保持面111a上の圧力はなかなか低下しない。真空吸引口12aからの吸引を開始してから一定の時間が経過しても、全ての部分領域Miにおいて保持面111a上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのそれぞれの出力情報から確認されない場合(つまり、吸引圧が所定値より低圧側にならない部分領域Miが1個以上存在する場合)(ステップS42でNO)、吸着制御部19aは、基板Wは保持面111aに適切に吸着保持されていない(吸着不良)と判断して、続いて、開閉弁137aを開放してベルヌーイ吸引口13aに負圧を形成する(ステップS43)。
【0138】
ステップS43の処理について具体的に説明する。上述したとおり、基板保持部10aは複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aを備えており、吸着制御部19aは開閉弁137a,137a,・・,137aを独立して開閉制御することにより各ベルヌーイ吸引口13aに独立して負圧を形成できるようになっている。ここで、全ての開閉弁137a,137a,・・,137aを開放した場合に、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧と、1個の開閉弁137aのみを開放し、他の開閉弁137a,・・,137aを閉鎖した場合に、当該開放された開閉弁137aと対応するベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧とを比べると、後者の方が低圧側となる。すなわち、後者の方が吸引力が強い。後者の場合は、気体供給部136から供給される圧縮気体が分散されず、1個のベルヌーイ吸引ユニット130に大量の圧縮気体を集中的に供給できるからである。
【0139】
そこで、吸着制御部19aは、例えば、複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aの一部を(好ましくは1個ずつ)次々と選択し、選択された一部のベルヌーイ吸引口13aのみに負圧を形成するように各開閉弁137aを開閉制御する。つまり、吸着制御部19aは、まず、複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aの一部を選択し、当該選択したベルヌーイ吸引口13aと対応する開閉弁137a(具体的には、当該ベルヌーイ吸引口13aと連通する凹部112に配置されたベルヌーイ吸引ユニット130に接続された分岐配管135aの分岐部分に介挿された開閉弁137a)を開放状態とし、その他の各開閉弁137aを閉鎖状態とする。この状態で定められた時間が経過すると、吸着制御部19aは、続いて別のベルヌーイ吸引口13aを選択し、当該選択したベルヌーイ吸引口13aと対応する開閉弁137aのみを開放状態とし、他の各開閉弁137aを閉鎖状態とする。以降も同様に開閉弁137aを次々と切り換える。これによって、複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aのそれぞれに、順番に負圧が形成されていくことになる。
【0140】
ここで、各ベルヌーイ吸引口13aに負圧を形成する順番(すなわち、ベルヌーイ吸引口13aを選択する順番)はどのように規定してもよい。例えば、図13に模式的に示されるように、まず、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに負圧を形成し(n1)、続いて、円環状領域M2に配置された複数のベルヌーイ吸引口13aのそれぞれに、反時計回り(あるいは、時計回りでもよい)の順に負圧を形成し(n2→n3→n4→・・→n7)、再び円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに負圧を形成する(n1)、という態様を採用してもよい(すなわち、n1→n2→n3→n4→・・→n7→n1→n2→・・)。この構成においては、例えば、基板Wに凸形状の反りが生じている場合、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aからの1回目の吸引が行われた時点では基板Wの中心付近を確実に吸着できなかったとしても、他のベルヌーイ吸引口13aからの吸引が次々と行われる中で基板Wは吸着されやすい部分(反り量が少ない部分)から徐々に平坦化されていくため、二回目以降に円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aからの吸引が行われる時点で、基板Wの中心付近を確実に吸着できる。
【0141】
また例えば、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aには常に負圧を形成し続け、その一方で、円環状領域M2に配置された複数のベルヌーイ吸引口13aのそれぞれに、反時計回り(あるいは、時計回りでもよい)の順に次々と負圧を形成する、という態様を採用してもよい。
【0142】
また例えば、保持面111a上における吸引圧が小さい部分領域Miに配置されたベルヌーイ吸引口13aに優先的に負圧を形成する態様としてもよい。この場合、吸着制御部19aは、まず、保持面111a上に配置された複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのうち、最も小さい吸引圧を検出した圧力センサ17aと対応するベルヌーイ吸引口13a(すなわち、当該圧力センサ17aが配置されている部分領域Miに配置されているベルヌーイ吸引口13a)をまず選択し、続いて、次に小さい吸引圧を検出した圧力センサ17aと対応するベルヌーイ吸引口13aを選択し、以降も同様の態様でベルヌーイ吸引口13aを選択する。
【0143】
吸着制御部19が上記の態様で複数の開閉弁137a,137a,・・,137aを開閉制御すると、各ベルヌーイ吸引口13に順に形成される負圧によって基板Wは徐々に平坦化される。上述した通り、ベルヌーイ吸引口13aは、保持面111aに規定される円形領域M1と、円環状領域M2とのそれぞれに少なくとも1個ずつ配置される。したがって、基板Wに凸形状、凹形状、どちらの反りが生じている場合であっても、各ベルヌーイ吸引口13aに次々と形成される負圧によって基板Wは平坦化される。
【0144】
基板Wが平坦な形状となると、上述したとおり、全ての部分領域Mi(すなわち、保持面111aの全域)において、保持面111a上の圧力が低下する。全ての部分領域Miにおいて保持面111a上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのそれぞれの出力情報から確認されると(ステップS44でYES)、吸着制御部19aは、全ての開閉弁137a,137a,・・,137aを閉鎖して全てのベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aからの吸引を停止させる(ステップS45)。上述したとおり、基板Wは既に平坦な形状となっており、全ての部分領域Miにおいて、土手部14aと、これに包囲されている部分領域Miと、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成されているため、各ベルヌーイ吸引口13aからの吸引を停止しても、各真空吸引口12aに形成される負圧によって基板Wが保持面111aに吸着保持された状態が維持される。以上で、吸着制御部19aは、基板Wを吸着保持する一連の処理を終了する。
【0145】
<3.効果>
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、第2の実施の形態においては、保持面111a内に規定された複数の部分領域Mi(複数の弧状領域M22および円形領域M1)のそれぞれに真空吸引口12aとベルヌーイ吸引口13aとが配置されるとともに、当該各部分領域Miを包囲する土手部14aが形成される。この構成によると、各部分領域Miと基板Wの裏面との間に密閉空間を形成して、当該部分領域Mi単位で独立して基板Wの裏面を吸着保持できるので、無駄なく効率的に基板Wの反りを平坦化して、基板Wを確実に吸着保持できる。
【0146】
特に、複数の弧状領域M22のそれぞれの面積を互いに等しいものとしておけば、各弧状領域M22と基板Wの裏面との間に形成される密閉空間の体積が等しくなるので、各弧状領域M22において基板Wに同等の吸引力を作用させることができる。これによって、基板Wにどのような反りが生じていても、確実にこれを平坦化して吸着保持することが可能となる。
【0147】
<<変形例>>
<1.第1の変形例>
第2の実施の形態において、吸着制御部19aが、処理対象となる基板Wの反り形状を示す情報(反り形状情報)を、例えば入力部96(図7)を介してオペレータから受け付けることによって取得し(あるいは、保持面111aの付近に配置された光学センサ等で保持面111aに載置された基板Wの反り形状を計測することによって取得し)、当該反り形状情報に応じて、各開閉弁137aを開閉制御する構成としてもよい。
【0148】
具体的には、例えば、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wが凹形状に反っている場合、円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13aのみに負圧を形成するように各開閉弁137aを開閉制御する。すると、当該ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧によって基板Wはスムースに平坦化される。一方、処理対象となる基板Wが凸形状に反っている場合、吸着制御部19aは、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aのみに負圧を形成するように各開閉弁137aを開閉制御する。すると、当該ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧によって基板Wはスムースに平坦化される。
【0149】
<2.第2の変形例>
上記の各実施の形態において、真空吸引口12,12aの負圧(吸引圧)、ベルヌーイ吸引口13,13aの負圧(吸引圧)を調整可能としてもよい。
【0150】
具体的には、例えば第2の実施の形態において、複数の真空吸引口12a,・・,12aと気体吸引部122とをつなぐ分岐配管121aの途中(合流側の部分)に、開閉弁123aに加えて、流量調整弁124aを介挿してもよい(図14)。この構成によると、流量調整弁124aと電気的に接続された吸着制御部19aが流量調整弁124aを制御することによって、分岐配管121a内の気体の吸引量を任意の値に変更することができる。これによって、複数の真空吸引口12a,・・,12aのそれぞれに形成される負圧(吸引圧)を任意の値に変更することが可能となる。
【0151】
また、例えば第2の実施の形態において、複数のベルヌーイ吸引ユニット130,・・,130と気体供給部136とをつなぐ分岐配管135aの途中(分岐側の各部分)に、流量調整弁138aを介挿してもよい(図14)。この構成によると、各流量調整弁138aと電気的に接続された吸着制御部19aが各流量調整弁138aを制御することによって、各ベルヌーイ吸引ユニット130に供給される圧縮気体の流量を任意の値に変更することができる。これによって、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧(吸引圧)を独立して任意の値に変更することが可能となる。
【0152】
例えば、図14に示される構成例において、吸着制御部19aが、処理対象となる基板Wの厚みを示す情報(厚み情報)を、例えば入力部96(図7)を介してオペレータから受け付けることによって取得し(あるいは、保持面111aの付近に配置された光学センサ等で保持面111aに載置された基板Wの厚みを計測することによって取得し)、当該厚み情報に応じて各吸引口12a,13aに形成する負圧の値を調整する構成としてもよい。
【0153】
この場合、例えば、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wの厚みが基準値よりも薄い場合、流量調整弁124aを制御して分岐配管121a内の気体の吸引量を基準値よりも小さくする。すると、各真空吸引口12aに形成される吸引圧が基準値よりも高圧側となり(すなわち、各真空吸引口12aの吸引力が弱くなり)、薄い基板Wを破損することなく安全に吸着保持できる。一方、処理対象となる基板Wの厚みが基準値よりも厚い場合、吸着制御部19aは、流量調整弁124aを制御して分岐配管121a内の気体の吸引量を基準値よりも大きくする。すると、各真空吸引口12aに形成される吸引圧が基準値よりも低圧側となり(すなわち、各真空吸引口12aの吸引力が強くなり)、厚い基板Wも確実に吸着保持できる。
【0154】
また、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wの厚みが基準値よりも薄い場合、流量調整弁124aの制御に加えて(あるいは、当該制御に代えて)、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも小さくする。すると、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧が基準値よりも高圧側となり、薄い基板Wを破損することなく安全に吸着保持できる。一方、処理対象となる基板Wの厚みが基準値よりも厚い場合、吸着制御部19aは、流量調整弁124aの制御に加えて(あるいは、当該制御に代えて)、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも大きくする。すると、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧が基準値よりも低圧側となり、厚い基板Wも良好に吸着保持できる。
【0155】
なお、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wの厚みが非常に薄い場合、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも小さくして各ベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧を基準値よりも高圧側にするとともに、開閉弁123aを閉鎖して真空吸引口12aからの吸引を停止してもよい。この場合、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧だけで、基板Wを保持面111aに吸着保持することになるため、非常に薄い基板Wであっても、これを破損せずに安全に保持面111aに吸着保持できる。
【0156】
また、図14に示される構成例において、吸着制御部19aが、処理対象となる基板Wの反り量を示す情報(反り量情報)を、例えば入力部96(図7)を介してオペレータから受け付けることによって取得し(あるいは、保持面111aの付近に配置された光学センサ等で保持面111aに載置された基板Wの反り量を計測することによって取得し)、厚み情報に加えて(あるいは、厚み情報に代えて)、当該反り量情報に応じてベルヌーイ吸引口13a、真空吸引口12aの負圧を調整する構成としてもよい。
【0157】
この場合、例えば、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wの反り量が基準値よりも小さい場合、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも小さくする。反り量が小さい場合、各ベルヌーイ吸引口13aの吸引力が比較的弱くても(すなわち、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧が基準値より高圧側にあっても)も基板Wを平坦化することができるところ、この構成によると、空気の消費量を効果的に抑えつつ、基板Wを確実に保持面111aに吸着保持できる。一方、処理対象となる基板Wの反り量が基準値よりも大きい場合、吸着制御部19aは、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも大きくする。すると、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧が基準値よりも低圧側となり、反り量が大きい基板Wも良好に吸着保持できる。
【0158】
また、図14に示される構成例において、吸着制御部19aが、処理対象となる基板Wの反り形状を示す情報(反り形状情報)を、例えば入力部96(図7)を介してオペレータから受け付けることによって取得し(あるいは、保持面111aの付近に配置された光学センサ等で保持面111aに載置された基板Wの反り形状を計測することによって取得し)、厚み情報、反り量情報に加えて(あるいは、これら各情報に代えて)、当該反り形状情報に応じて各ベルヌーイ吸引口13a、真空吸引口12aの負圧を調整する構成としてもよい。
【0159】
この場合、例えば、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wが凸形状に反っている場合、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧が、円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧よりも低圧側となるように各流量調整弁138aを制御する。すると、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される比較的大きな吸引力によって基板Wはスムースに平坦化される。一方、処理対象となる基板Wが凹形状に反っている場合、吸着制御部19aは、円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧が、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧よりも低圧側となるように各流量調整弁138aを制御する。すると、円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される比較的大きな吸引力によって基板Wはスムースに平坦化される。
【0160】
<3.第3の変形例>
上記の各実施の形態においては、吸引力を高めるためにベルヌーイ吸引口13,13aの径サイズd13は、円柱状凹空間132の径サイズd132よりも小さく形成されていたが、ベルヌーイ吸引口13,13aの径サイズは円柱状凹空間132の径サイズd132と略同一に形成されてもよい。図15には、第1の実施の形態に係るベルヌーイ吸引口13の径サイズを円柱状凹空間132の径サイズd132と略同一に形成した場合の保持面111の様子が示されている。この構成によると、円柱状凹空間132の中心部に形成された負圧をそのまま保持面111,111a上に作用させることができる。
【0161】
<4.第4の変形例>
上記の各実施の形態においては、ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引によって基板Wが保持面111,111aに適切に吸着保持されたことが確認されると(ステップS44でYES)、各ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引を停止する(ステップS45)構成としたが、基板Wが保持面111,111aに吸着保持されたことが確認された後も、各ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引を続行してもよい。ただし、上述したとおり、各ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引を早期に停止すれば、空気の消費量を抑えることができるとともに、保持面111,111a上の基板Wが汚染される危険も小さくなるため、ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引はなるべく早期に停止することが好ましい。
【0162】
<5.第5の変形例>
上記の各実施の形態においては、円環状領域M2の内径は円形領域M1の外径と一致する構成とされていたが、円環状領域M2の内径は円形領域M1の外径よりも大きい構成であってもよい。
【0163】
また、上記の各実施の形態においては、保持面111,111a上に1個の円環状領域M2を形成する構成としたが、円環状領域M2をさらに複数の円環状領域に分割し、各円環状領域の周方向に沿って複数のベルヌーイ吸引口を等間隔に配列してもよい。
【0164】
<6.第6の変形例>
第2の実施の形態においては、吸着不良と判断された場合、吸着制御部19aは複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aを一個ずつ(あるいは、複数個ずつ)次々と選択し、選択された一部のベルヌーイ吸引口13aのみに負圧を形成するように各開閉弁137aを開閉制御する構成としたが(例えば図13参照)、吸着不良と判断された場合、吸着制御部19aは複数の開閉弁137a,137a,・・,137aの全てを開放状態として複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aの全てに負圧を形成してもよい。なお、この場合は、各開閉弁137aを分岐配管135aの各分岐部にそれぞれ設けずに、合流側の部分に1個だけ設ける構成としてもよい。
【0165】
<7.第7の変形例>
第2の実施の形態において、複数の真空吸引口12a,12a,・・,12aのそれぞれと気体吸引部122とを接続する分岐配管121aにおいて、分岐配管121aの合流側の部分に開閉弁123aを介挿する構成としたが、分岐側の各部分に開閉弁をそれぞれ介挿し、吸着制御部19aが各開閉弁を独立して開閉制御する構成としてもよい。この構成によると、複数の真空吸引口12a,・・,12aのそれぞれに独立して負圧を形成することができる。この構成において、吸着制御部19aは複数の真空吸引口12a,12a,・・,12aを一個ずつ(あるいは、複数個ずつ)次々と選択し、選択された一部の真空吸引口12aのみに負圧を形成するように各開閉弁を開閉制御する構成としてもよい。
【0166】
<8.その他の変形例>
上記の各実施形態では、空間光変調器441として変調単位である固定リボンと可動リボンとが一次元に配設された回折格子型の空間光変調器であるGLVが用いられていたが、このような形態には限られない。例えば、GLVに限らず、ミラーのような変調単位が、一次元に配列されている空間光変調器が利用される形態であってもよい。また、例えば、DMD(Digital Micromirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス:テキサスインスツルメンツ社の登録商標)のような変調単位であるマイクロミラーが二次元的に配列された空間光変調器が利用されてもよい。
【0167】
また、上記の各実施の形態においては、基板保持部10,10aが、基板Wに対して光を照射して基板Wにパターンを形成する描画装置1に搭載された態様を示していたが、基板保持部10,10aは、描画装置1以外の各種の基板処理装置、あるいは、基板搬送装置等に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0168】
1 描画装置
10,10a 基板保持部
11 保持板
111,111a 保持面
12,12a 真空吸引口
13,13a ベルヌーイ吸引口
14,14a 土手部
15 突起部
19,19a 吸着制御部
M1 円形領域
M2 円環状領域
90 制御部
W 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、太陽電池用パネルなどの各種基板(以下、単に「基板」と称する)を保持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して様々な処理(例えば、基板に形成された感光材料への光の照射、基板への各種塗布液の塗布、等)を行う各種の基板処理装置(例えば、特許文献1参照)、あるいは、基板の移送を行う基板搬送装置等において、基板を保持する技術は必須である。
【0003】
当該技術に関して、例えば特許文献2、3には、基板の下面側を真空吸着ノズルを用いて吸着保持する構成が開示されている。また例えば特許文献4〜7には、ベルヌーイの原理を用いたベルヌーイノズル(保持面に形成された穴からガスを噴出することによりベルヌーイ効果を利用して基板を吸着するノズル)を用いて基板を吸着保持する構成が開示されている。また例えば特許文献8には、ベルヌーイノズルを用いて基板を持ち上げつつ、基板が移動しないように真空吸着ノズルによって固定する構成が開示されている。また例えば特許文献9には、ベルヌーイノズルと真空吸着ノズルとを併用して基板を吸着保持する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−150175号公報
【特許文献2】特開2008−270626号公報
【特許文献3】特開2005−19637号公報
【特許文献4】特開2009−28863号公報
【特許文献5】特開2005−142462号公報
【特許文献6】特開2002−64130号公報
【特許文献7】特開2010−52051号公報
【特許文献8】特開2004−193195号公報
【特許文献9】特開2006−80289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、基板に形成された感光材料への光の照射を行って基板上に回路などのパターンを形成する描画装置等においては、処理中に基板が保持面に対して位置ずれを起こしてしまうと描画精度が悪化してしまう。したがって、保持面に載置された基板を、位置ずれを生じさせないように確実に保持する必要がある。
【0006】
ところで、保持面に載置された状態において、基板は、必ずしも平坦形状であるとは限らない。例えば、保持面に基板を載置した搬送装置のハンドが基板の中央付近を支持していた場合、保持面に載置された基板は凸形状に反っている可能性がある。また、当該搬送装置のハンドが基板の外縁を支持していた場合、保持面に載置された基板は凹形状に反っている可能性がある。基板の薄型化が進む近年においては、基板は非常に反りやすくなっているため、保持面に載置された状態において基板が反っている可能性は非常に高い。
【0007】
上記の各特許文献2〜9に開示された構成のように、基板と保持面との間に負圧を形成することによって基板を保持面に吸着保持する態様においては、反った基板を確実に保持することが非常に難しい。というのも、保持面に載置された基板が反っている場合、基板の裏面の一部分において保持面との間に隙間ができ、この隙間から負圧が逃げてしまうからである。保持面と基板の裏面との間に十分な吸引圧が形成されないと、吸着不良となり、基板が保持面に対して位置ずれを起こす可能性が高くなってしまう。一方で、このような吸着不良を生じさせずに確実に吸着保持しようとすると、基板に非常に大きな吸引力を作用させなければならず、このためには、例えば大型の真空ポンプや大規模な配管系統等を設ける必要があり、装置の大型化、コストアップ等が避けられない。
【0008】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、反った基板であっても確実に保持できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって、基板の裏面に対向する保持面が形成された保持板と、前記保持面に形成され、真空吸引により前記基板を前記保持面に吸引する1以上の真空吸引口と、前記保持面に形成され、ベルヌーイ吸引により前記基板を前記保持面に吸引する複数のベルヌーイ吸引口と、を備え、前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る基板処理装置であって、前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0011】
第3の態様は、第1または第2の態様に係る基板処理装置であって、前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される。
【0012】
第4の態様は、第1の態様に係る基板処理装置であって、前記真空吸引口を複数個備え、前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0013】
第5の態様は、第4の態様に係る基板処理装置であって、前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい。
【0014】
第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記保持面上の圧力を検知する圧力センサ、を備え、前記保持面に基板が載置されると前記真空吸引口からの吸引を開始し、前記真空吸引口からの吸引を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する。
【0015】
第7の態様は、第6の態様に係る基板処理装置であって、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する。
【0016】
第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記保持板の裏面側に形成され、深さ方向の底面において前記ベルヌーイ吸引口と連通する凹部と、前記凹部の内部に配置されたベルヌーイ吸引ユニットと、を備え、前記ベルヌーイ吸引ユニットが、円柱状の凹空間が形成された本体部と、前記円柱状の凹空間に気体を噴出して前記円柱状の凹空間に旋回流を形成する噴出ノズルと、を備え、前記本体部が、前記凹部の深さ方向の底面および前記凹部の壁面との間に隙間を形成しつつ、前記凹部内に固定的に支持される。
【0017】
第9の態様は、第8の態様に係る基板処理装置であって、前記ベルヌーイ吸引口の径サイズが、前記円柱状の凹空間の径サイズよりも小さく形成される。
【0018】
第10の態様は、基板を保持する基板保持装置であって、基板の裏面に対向する保持面が形成された保持板と、前記保持面に形成され、真空吸引により前記基板を前記保持面に吸引する1以上の真空吸引口と、前記保持面に形成され、ベルヌーイ吸引により前記基板を前記保持面に吸引する複数のベルヌーイ吸引口と、を備え、前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される。
【0019】
第11の態様は、第10の態様に係る基板保持装置であって、前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0020】
第12の態様は、第10または第11の態様に係る基板保持装置であって、前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される。
【0021】
第13の態様は、第10の態様に係る基板保持装置であって、前記真空吸引口を複数個備え、前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0022】
第14の態様は、第13の態様に係る基板保持装置であって、前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい。
【0023】
第15の態様は、第10から第14のいずれかの態様に係る基板保持装置であって、前記保持面上の圧力を検知する圧力センサ、を備え、前記保持面に基板が載置されると前記真空吸引口からの吸引を開始し、前記真空吸引口からの吸引を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する。
【0024】
第16の態様は、第15の態様に係る基板保持装置であって、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する。
【0025】
第17の態様は、第10から第16のいずれかの態様に係る基板保持装置であって、前記保持板の裏面側に形成され、深さ方向の底面において前記ベルヌーイ吸引口と連通する凹部と、前記凹部の内部に配置されたベルヌーイ吸引ユニットと、を備え、前記ベルヌーイ吸引ユニットが、円柱状の凹空間が形成された本体部と、前記円柱状の凹空間に気体を噴出して前記円柱状の凹空間に旋回流を形成する噴出ノズルと、を備え、前記本体部が、前記凹部の深さ方向の底面および前記凹部の壁面との間に隙間を形成しつつ、前記凹部内に固定的に支持される。
【0026】
第18の態様は、第17の態様に係る基板保持装置であって、前記ベルヌーイ吸引口の径サイズが、前記円柱状の凹空間の径サイズよりも小さく形成される。
【0027】
第19の態様は、基板を保持する基板保持方法であって、a)基板の裏面を、保持板に形成された保持面に対向させた状態で、前記基板を前記保持面上に載置する工程と、b)前記保持面に形成された1以上の真空吸引口に、真空吸引により吸引圧を形成する工程と、c)前記保持面に形成された複数のベルヌーイ吸引口の少なくとも一つに、ベルヌーイ吸引により吸引圧を形成する工程と、を備え、前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される。
【0028】
第20の態様は、第19の態様に係る基板保持方法であって、前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0029】
第21の態様は、第19または第20の態様に係る基板保持方法であって、前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される。
【0030】
第22の態様は、第19の態様に係る基板保持方法であって、前記真空吸引口を複数個備え、前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、を備え、前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される。
【0031】
第23の態様は、第22の態様に係る基板保持方法であって、前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい。
【0032】
第24の態様は、第19から第23のいずれかの態様に係る基板保持方法であって、前記保持面に基板が載置されると前記b)工程を開始し、前記b)工程を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に、前記c)工程を開始する。
【0033】
第25の態様は、第24の態様に係る基板保持方法であって、前記c)工程を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引を停止する。
【発明の効果】
【0034】
第1、第10、第19の態様によると、ベルヌーイ吸引口が、保持面に規定された円形領域と円環状領域とのそれぞれに配置されるので、基板が凸形状、凹形状のどちらに反っていても、ベルヌーイ吸引口からの吸引によってその反りを平坦化することができる。したがって、簡易な構成で、反った基板であっても確実にこれを吸着保持できる。
【0035】
第2、第11、第20の態様によると、基板は土手部の頂部と突起部の頂部とに当接した状態で吸着保持される。この構成によると、基板は、その裏面が土手部の高さ分だけ保持面から離間した状態で保持面に対して吸着保持されるので、基板の裏面に真空吸引口の吸引跡がつくおそれがない。
【0036】
第3、第12、第21の態様によると、保持面の円環状領域の周方向に沿って複数のベルヌーイ吸引口が配列される。この構成によると、基板が凹形状に反っている場合であっても、円環状領域に配置された各ベルヌーイ吸引口からの吸引圧によってその反りを平坦化して、基板を確実に吸着保持できる。
【0037】
第4、第13、第22の態様によると、保持面内に規定された複数の部分領域(複数の弧状領域および円形領域)のそれぞれに真空吸引口とベルヌーイ吸引口とが配置されるとともに、当該各部分領域を包囲する土手部が形成される。この構成によると、各部分領域と基板の裏面との間に密閉空間を形成して、当該部分領域単位で独立して基板の裏面を吸着保持できるので、無駄なく効率的に基板の反りを平坦化して、基板を確実に吸着保持できる。また、この構成によると、基板は、その裏面が土手部の高さ分だけ保持面から離間した状態で保持面に対して吸着保持されるので、基板の裏面に真空吸引口の吸引跡がつくおそれがない。
【0038】
第5、第14、第23の態様によると、複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しいものとされる。この構成によると、各弧状領域と基板の裏面との間に形成される密閉空間の体積が等しくなるので、各弧状領域において基板に同等の吸引力を作用させることができる。
【0039】
第6、第15、第24の態様によると、真空吸引口からの吸引を行っても保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合にベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する。この構成によると、例えば保持面に載置された基板がはじめから反りのない平坦な形状である場合は、ベルヌーイ吸引口からの吸引は行われないので、無駄な空気の消費が抑制される。
【0040】
第7、第16、第25の態様によると、ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する。つまり、ベルヌーイ吸引口からの吸引によって基板の反りが平坦化されて基板が適切に吸着保持されると、以後は真空吸引口からの吸引のみで基板を吸着保持する。この構成によると、ベルヌーイ吸引口からの吸引が必要最小限に抑えられるので、無駄な空気の消費が抑制される。
【0041】
第8、第17の態様によると、ベルヌーイ吸引ユニットが備える本体部が、保持板に形成された凹部の深さ方向の底面および壁面との間に隙間を形成しつつ、凹部内に固定的に支持されるので、円柱状の凹空間内から溢れ出た気体が本体部の周囲の隙間に沿って流れて保持板の裏面側に排出されることになる。この構成によると、ベルヌーイ吸引口が基板の裏面によって塞がれた状態となっても、ベルヌーイ吸引口の吸引圧を維持し続けることができる。
【0042】
第9、第18の態様によると、ベルヌーイ吸引口の径サイズが、凹部空間の径サイズよりも小さく形成される。この構成によると、基板の裏面における吸引圧が作用する領域が小さくなるため、ベルヌーイ吸引口からの吸引を行うことによって基板の平面度を悪化させるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】描画装置の側面図である。
【図2】描画装置の平面図である。
【図3】基板保持部の平面図である。
【図4】基板保持部を真空吸引口の形成位置で切断した部分断面図である。
【図5】基板保持部をベルヌーイ吸引口の形成位置で切断した部分断面図である。
【図6】基板保持部が備える配管系統を模式的に示す図である。
【図7】制御部のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図8】描画装置にて実行される基板に対する処理の流れを示す図である。
【図9】基板保持部が基板保持面に吸着保持する処理の流れを示す図である。
【図10】描画処理を説明するための図である。
【図11】第2の実施の形態に係る基板保持部の平面図である。
【図12】第2の実施の形態に係る基板保持部が備える配管系統を模式的に示す図である。
【図13】ベルヌーイ吸引口に順番に負圧を形成する態様の一例を説明するための図である。
【図14】変形例に係る基板保持部が備える配管系統を模式的に示す図である。
【図15】変形例に係る基板保持部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0045】
<<第1の実施の形態>>
<1.装置構成>
第1の実施の形態に係る描画装置1の構成について、図1、図2を参照しながら説明する。図1は、描画装置1の構成を模式的に示す側面図である。図2は、描画装置1の構成を模式的に示す平面図である。
【0046】
描画装置1は、レジスト等の感光材料の層が形成された基板Wの上面に光を照射して、パターンを露光する装置である。なお、基板Wは、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、太陽電池用パネルなどの各種基板のいずれであってもよい。図においては、円形の半導体基板が示されている。
【0047】
描画装置1は、本体フレーム101で構成される骨格の天井面および周囲面にカバーパネル(図示省略)が取り付けられることによって形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、各種の構成要素を配置した構成となっている。
【0048】
描画装置1の本体内部は、処理領域102と受け渡し領域103とに区分されている。処理領域102には、主として、基板保持部10、ステージ駆動機構20、計測部30、2個の光学ユニット40,40、および、撮像ユニット50が配置される。受け渡し領域103には、処理領域102に対する基板Wの搬出入を行う搬送装置60と、プリアライメント部70とが配置される。
【0049】
描画装置1の本体外部には、撮像ユニット50に照明光を供給する照明ユニット80が配置される。また、描画装置1の本体外部であって、受け渡し領域103に隣接する位置には、カセットCを載置するためのカセット載置部104が配置される。受け渡し領域103に配置された搬送装置60は、カセット載置部104に載置されたカセットCに収容された未処理の基板Wを取り出して処理領域102に搬入するとともに、処理領域102から処理済みの基板Wを搬出してカセットCに収容する。カセット載置部104に対するカセットCの受け渡しは外部搬送装置(図示省略)によって行われる。
【0050】
また、描画装置1には、描画装置1が備える各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する制御部90が配置される。
【0051】
以下において、描画装置1が備える各部の構成について説明する。
【0052】
<1−1.基板保持部10>
基板保持部10は、基板Wを水平姿勢に吸着保持する装置である。基板保持部10の構成について、図1、図2に加えて図3〜図6を参照しながら説明する。図3は、基板保持部10の平面図である。図4は基板保持部10を真空吸引口12の形成位置で切断した部分断面図である。図5は基板保持部10をベルヌーイ吸引口13の形成位置で切断した部分断面図である。図6は、基板保持部10が備える配管系統を模式的に示す図である。
【0053】
基板保持部10は、平板状の外形を有し、その上面に基板Wの裏面に対向する保持面111が形成される保持板11を備える。保持面111の平面度は、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値(例えば約2μm以下)となるように形成される。また、保持面111は、少なくとも基板Wの露光領域をカバーするサイズに形成される。ただし、この実施形態においては、基板Wは円形状であるとし、保持面111も平面視円形状に形成される。
【0054】
<吸引口12,13,13,・・,13>
保持面111には、複数の吸引口12,13,13,・・,13が形成される。複数の吸引口12,13,13,・・,13のうちの一個の吸引口12は、真空吸引により基板Wを保持面111に吸引する吸引口(以下「真空吸引口」という)12であり、残りの各吸引口13は、ベルヌーイ吸引により基板Wを保持面111に吸引する吸引口(以下「ベルヌーイ吸引口」という)13である。ベルヌーイ吸引口13は複数個(図示の例では、7個)形成される。
【0055】
ここで、複数のベルヌーイ吸引口13,13,・・,13のレイアウトについて説明する。保持面111には保持面111の中心(幾何学中心)と同心に配置された円形領域M1と、円形領域M1と同心に配置された円環状領域M2とが規定されており、ベルヌーイ吸引口13は、円形領域M1と円環状領域M2とのそれぞれに、少なくとも1個ずつ配置される。ただし、円環状領域M2には複数のベルヌーイ吸引口13,・・,13が配置されることが好ましい。また、円環状領域M2に複数のベルヌーイ吸引口13,・・,13が配置される場合、当該複数のベルヌーイ吸引口13,・・,13は、円環状領域M2の周方向に沿って配列されることが好ましい。
【0056】
この実施の形態においては、円形領域M1にはその中心に1個のベルヌーイ吸引口13が配置される。また、円環状領域M2には、6個のベルヌーイ吸引口13が、円環状領域M2の周方向に沿って等間隔に配列される。
【0057】
次に、真空吸引口12について具体的に説明する。真空吸引口12は、配管121を介して、気体を吸引する気体吸引部(例えば真空ポンプ)122と接続されている。また、配管121の途中には開閉弁(例えば電磁弁)123が介挿されている。気体吸引部122が稼働されるとともに開閉弁123が開放されると、配管121を介して真空吸引口12に負圧(吸引圧)が形成される。
【0058】
次に、ベルヌーイ吸引口13について具体的に説明する。保持板11の裏面側であって、複数のベルヌーイ吸引口13のそれぞれと対応する各位置には、凹部112が形成される。凹部112は、保持板11の裏面側に開口し、深さ方向の底面において対応するベルヌーイ吸引口13と連通する。
【0059】
凹部112の内部には、ベルヌーイ吸引ユニット130の本体部131が配置される。ただし、凹部112は、本体部131よりも一回り大きな寸法とされており、本体部131の端面133および側面は、凹部112の深さ方向の底面および壁面との間に微小な隙間(例えば、数百μm程度の隙間)Qを形成しつつ、凹部112内に固定的に支持される。
【0060】
本体部131における、凹部112の深さ方向の底面と対向する側の端面133は平坦に形成されており、この端面133には、円柱状の凹空間(円柱状凹空間)132が形成されている。ただし、本体部131は、円柱状凹空間132の中心部がベルヌーイ吸引口13と対向するような姿勢で凹部112内に配置されている。ここで、ベルヌーイ吸引口13の径サイズd13は、円柱状凹空間132の径サイズd132よりも小さく形成される。
【0061】
ベルヌーイ吸引ユニット130は、さらに、円柱状凹空間132の内周壁に沿って開口する一対の噴出ノズル134,134を備える。各噴出ノズル134は、配管135を介して、圧縮空気等の気体を供給する気体供給部(例えばコンプレッサ)136と接続されている。また、配管135の途中には開閉弁(例えば電磁弁)137とフィルタ(図示省略)が介挿されている。気体供給部136が稼働されるとともに開閉弁137が開放されると、配管135を介して各噴出ノズル134から圧縮気体が噴出される。一対の噴出ノズル134,134から円柱状凹空間132の内周壁に沿って噴出された気体は、円柱状凹空間132の内周壁に沿うように流れ、強い旋回流となって円柱状凹空間132の開放端から流出する。このとき、旋回流の中心部(すなわち、円柱状凹空間132の中心部)にはベルヌーイの定理に従って負圧が生じ、これによって、ベルヌーイ吸引口13に負圧(吸引圧)が形成される。なお、円柱状凹空間132から溢れ出た気体は、本体部131と凹部112との間に形成された隙間Qに沿って流れ、保持板11の裏面側に排出される。
【0062】
<土手部14、突起部15、環状突起部16>
保持面111には、その外縁に沿って土手部14が立設される。また、土手部14に包囲された保持面111内にはその全域にわたって複数の突起部15が満遍なく立設される(図4、図5)。さらに、各ベルヌーイ吸引口13の外縁および後述する各ピン孔18の外縁に沿って環状の突起部(環状突起部)16が立設される。ただし、図3においては、突起部15の図示を省略している。
【0063】
土手部14の頂部と各突起部15の頂部と各環状突起部16の頂部とはすべて面一に形成されており、これら各頂部が配置される平面の平面度も、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値(例えば2μm程度)となるように形成される。保持面111に平坦な基板Wが載置されると、当該基板Wの裏面が土手部14の頂部全域、全ての突起部15の頂部、および、全ての環状突起部16の頂部と当接し、土手部14とこれに包囲された保持面111内の領域と基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。この状態で、保持面111に開口された真空吸引口12に負圧が形成されると、当該密閉空間が減圧され、基板W(具体的には、少なくとも基板Wにおける露光領域を含む部分)は、その裏面が保持面111から土手部14の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111に吸着保持されることになる。
【0064】
<圧力センサ17>
保持面111には、圧力センサ17が配置される。圧力センサ17は保持面111上の圧力を検出する。
【0065】
<ピン孔18>
基板保持部10は、保持面111に対して基板Wを昇降させるための複数のリフトピン181を備える。また、保持面111には、各リフトピン181を挿通可能なピン孔18が形成されている。各リフトピン181はリフトピン駆動機構(図示省略)と接続されており、各ピン孔18を介して保持面111に対して同期して出没可能に設けられる。各リフトピン181は、搬送装置60と保持面111との間で基板Wの受け渡しが行われる場合に、その先端が保持面111から突出した上方位置(突出位置)と、その先端が保持面111以下となる下方位置(待避位置)との間を往復移動される。
【0066】
<吸着制御部19>
基板保持部10は、さらに、基板保持部10が備える各部を制御する吸着制御部19を備える。吸着制御部19は、後に具体的に説明する制御部90において、例えばCPU91がプログラムPに従って所定の演算処理を行うことによって、あるいは、専用の論理回路等でハードウエア的に実現される(図7)。
【0067】
吸着制御部19は、圧力センサ17と電気的に接続されており、圧力センサ17からの検知信号を取得可能に構成されている。また、吸着制御部19は、開閉弁123および開閉弁137のそれぞれと電気的に接続されており、圧力センサ17から得られる検知信号等に基づいて、各開閉弁123,137を独立して開閉制御する。つまり、吸着制御部19は、圧力センサ17から得られる検知信号等に基づいて、保持面111に形成された複数の吸引口(真空吸引口12および複数のベルヌーイ吸引口13,13,・・,13)のそれぞれにおける吸引圧の形成を制御する。この制御態様については後に具体的に説明する。
【0068】
<1−2.ステージ駆動機構20>
再び図1、図2を参照する。ステージ駆動機構20は、基板保持部10を基台105に対して移動させる機構であり、基板保持部10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動させる。ステージ駆動機構20は、具体的には、基板保持部10を回転させる回転機構21(図1)を備える。ステージ駆動機構20は、さらに、回転機構21を介して基板保持部10を支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23とを備える。ステージ駆動機構20は、さらに、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25とを備える。
【0069】
回転機構21は、図1に示すように、基板保持部10の上面(保持面111)の中心を通り、保持面111に垂直な回転軸Aを中心として基板保持部10を回転させる。回転機構21は、例えば、上端が保持面111の裏面側に固着され、鉛直軸に沿って延在する回転軸部211と、回転軸部211の下端に設けられ、回転軸部211を回転させる駆動部(例えば、回転モータ)212とを含む構成とすることができる。この構成においては、駆動部212が回転軸部211を回転させることにより、基板保持部10が水平面内で回転軸Aを中心として回転することになる。
【0070】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ231とを有している。また、ベースプレート24には、副走査方向に延びる一対のガイド部材232が敷設されており、各ガイド部材232と支持プレート22との間には、ガイド部材232に摺動しながら当該ガイド部材232に沿って移動可能なボールベアリングが設置されている。つまり、支持プレート22は、当該ボールベアリングを介して一対のガイド部材232上に支持される。この構成においてリニアモータ231を動作させると、支持プレート22はガイド部材232に案内された状態で副走査方向に沿って滑らかに移動する。
【0071】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子と描画装置1の基台105上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ251を有している。また、基台105には、主走査方向に延びる一対のガイド部材252が敷設されており、各ガイド部材252とベースプレート24との間にはエアベアリングが設置されている。エアベアリングにはユーティリティ設備から常時エアが供給されており、ベースプレート24は、エアベアリングによってガイド部材252上に非接触で浮上支持される。この構成においてリニアモータ251を動作させると、ベースプレート24はガイド部材252に案内された状態で主走査方向に沿って摩擦なしで滑らかに移動する。
【0072】
<1−3.計測部30>
計測部30は、基板保持部10の位置を計測する機構であり、基板保持部10外から基板保持部10に向けてレーザ光を出射するとともにその反射光を受光し、当該反射光と出射光との干渉から基板保持部10の位置(具体的には、主走査方向に沿うY位置、および、回転方向に沿うθ位置)を計測する、干渉式のレーザ測長器により構成される。
【0073】
計測部30は、例えば、基板保持部10の−Y側の側面に取り付けられるとともに、−Y側の面に主走査方向に垂直な反射面を備えるプレーンミラー31と、ステージの−Y側において基台105に対して固定される各部(具体的には、レーザ光源32、スプリッタ33、第1リニア干渉計34、第1レシーバ35、第2リニア干渉計36および第2レシーバ37)とを備える構成とすることができる。
【0074】
この計測部30においては、レーザ光源32から出射されたレーザ光は、スプリッタ33により2分割され、一方の一部が第1リニア干渉計34を介してプレーンミラー31上の第1の部位に入射し、プレーンミラー31からの反射光が、第1リニア干渉計34において元のレーザ光の一部(これが参照光として利用される)と干渉して第1レシーバ35により受光される。第1レシーバ35における、反射光と参照光との干渉後の強度変化に基づいて、第1リニア干渉計34とプレーンミラー31との主走査方向における距離が特定される。この第1レシーバ35からの出力に基づいて、専門の演算回路(図示省略)にて基板保持部10の主走査方向における位置が求められる。
【0075】
一方、レーザ光源32から出射されてスプリッタ33により分割された他方のレーザ光の一部は、取付台38の内部を+X側から−X側へと通過し、第2リニア干渉計36を介してプレーンミラー31に入射する。ここで、第2リニア干渉計36からのレーザ光は、プレーンミラー31上の第1の部位から副走査方向に一定距離だけ離間したプレーンミラー31上の第2の部位に入射することになる。プレーンミラー31からの反射光は、第2リニア干渉計36において元のレーザ光の一部と干渉して第2レシーバ37により受光される。第2レシーバ37における、反射光と参照光との干渉後の強度変化に基づいて、第2リニア干渉計36とプレーンミラー31との主走査方向における距離が特定される。第2レシーバ37からの出力と上述した第1レシーバ35からの出力に基づいて、専門の演算回路(図示省略)にて基板保持部10の回転角度が求められる。
【0076】
<1−4.光学ユニット40>
光学ユニット40は、基板保持部10上に保持された基板Wの上面に光を照射して露光するための機構である。上述したとおり、描画装置1は2個の光学ユニット40,40を備える。一方の光学ユニット40は基板Wの+X側半分の露光を担当し、他方の光学ユニット40は基板Wの−X側半分の露光を担当する。これら2個の光学ユニット40,40は、基板保持部10およびステージ駆動機構20を跨ぐようにして基台105上に架設されたフレーム107に、間隔をあけて固設される。なお、2個の光学ユニット40,40の間隔は必ずしも一定に固定されている必要はなく、光学ユニット40,40の一方あるいは両方の位置を変更可能とする機構を設けて、両者の間隔を調整可能としてもよい。
【0077】
2個の光学ユニット40,40はいずれも同じ構成を備える。すなわち、各光学ユニット40は、天板を形成するボックスの内部に配置されたレーザ駆動部41、レーザ発振器42および照明光学系43と、フレーム107の+Y側に取り付けられた付設ボックスの内部に収容されたヘッド部400とを備える。ヘッド部400は、空間光変調部44と投影光学系45とを主として備える。
【0078】
レーザ発振器42は、レーザ駆動部41からの駆動を受けて、出力ミラー(図示省略)からレーザ光を出射する。照明光学系43は、レーザ発振器42から出射された光(スポットビーム)を、強度分布が均一な線状の光(光束断面が線状の光であるラインビーム)とする。レーザ発振器42から出射され、照明光学系43にてラインビームとされた光は、ヘッド部400に入射し、パターンデータD(図7参照)に応じた空間変調を施された上で基板Wに照射される。
【0079】
ヘッド部400に入射した光は、具体的には、ミラー46を介して、定められた角度で空間光変調部44に入射する。空間光変調部44は、当該入射光を空間変調して、パターンの描画に寄与させる必要光と、パターンの描画に寄与させない不要光とを、互いに異なる方向に反射させる。ただし、光を空間変調させるとは、具体的には、光の空間分布(振幅、位相、および偏光等)を変化させることを意味する。
【0080】
空間光変調部44は、具体的には、電気的な制御によって入射光を空間変調させる空間光変調器441を備える。空間光変調器441は、その反射面の法線が、ミラー46を介して入射する入射光の光軸に対して傾斜して配置され、当該入射光を制御部90の制御に基づいて空間変調させる。空間光変調器441は、例えば、回折格子型の空間変調器(例えば、GLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・開閉弁)(シリコン・ライト・マシーンズ(サンノゼ、カリフォルニア)の登録商標)等を利用して構成される。回折格子型の空間変調器は、格子の深さを変更することができる回折格子であり、例えば、半導体装置製造技術を用いて製造される。
【0081】
空間光変調器441は、複数の空間光変調素子を一次元に並べた構成となっている。各空間光変調素子の動作は、電圧のオン/オフで制御される。すなわち、例えば電圧がオフされている状態においては空間光変調素子の表面は平面となっており、この状態で空間光変調素子に光が入射すると、その入射光は回折せずに正反射する。これにより、正反射光(0次回折光)が発生する。一方、例えば電圧がオンされている状態においては、空間光変調素子の表面には平行な溝が周期的に並んで複数本形成される。この状態で空間光変調素子に光が入射すると、正反射光(0次回折光)は打ち消しあって消滅し、他の次数の回折光(±1次回折光、±2次回折光、および、さらに高次の回折光)が発生する。より正確には、0次回折光の強度が最小となり、他の次数の回折光の強度が最大となる。空間光変調器441は、複数の空間光変調素子のそれぞれに対して独立に電圧を印加可能なドライバ回路ユニットを備えており、各空間光変調素子の電圧が独立して切り換え可能となっている。
【0082】
投影光学系45は、空間光変調器441にて空間変調された光のうち、パターンの描画に寄与させるべきでない不要光を遮断するとともにパターンの描画に寄与させるべき必要光のみを基板Wの表面に導いて、当該表面に結像させる。ただし、空間光変調器441にて空間変調された光には、0次回折光と、0次以外の次数の回折光(具体的には、±1次回折光、±2次回折光、および、比較的微量の±3次以上の高次回折光)とが含まれており、0次回折光はパターンの描画に寄与させるべき必要光であり、それ以外の回折光はパターンの描画に寄与させるべきでない不要光である。これら必要光と不要光とは互いに異なる方向に沿って出射される。すなわち、必要光はZ軸に沿って−Z方向に、不要光はZ軸から±X方向に僅かに傾斜した軸に沿って−Z方向に、それぞれ出射される。投影光学系45は、例えば、遮断板によって、Z軸から±X方向に僅かに傾斜した軸に沿って進行する不要光を遮断するとともに、Z軸に沿って進行する必要光のみを通過させる。投影光学系45は、この遮断板の他に、入射光の幅を広げる(あるいは狭める)ズーム部を構成する複数のレンズ、入射光を定められた倍率として基板W上に結像させる対物レンズ、等をさらに含む構成とすることができる。
【0083】
光学ユニット40に描画動作を実行させる場合、制御部90は、レーザ駆動部41を駆動してレーザ発振器42から光を出射させる。出射された光は照明光学系43にてラインビームとされ、ミラー46を介して空間光変調部44の空間光変調器441に入射する。空間光変調器441においては、複数の空間光変調素子が、副走査方向(X軸方向)に沿って並んで配置されており、入射光はその線状の光束断面を空間光変調素子の配列方向に沿わせるようにして、一列に配列された複数の空間光変調素子に入射する。制御部90は、パターンデータDに基づいてドライバ回路ユニットに指示を与え、ドライバ回路ユニットが指示された空間光変調素子に対して電圧を印加する。これによって、各空間光変調素子にて個々に空間変調された光が形成され、基板Wに向けて出射されることになる。空間光変調器441が備える空間光変調素子の個数を「N個」とすると、空間光変調器441からは、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光が出射されることになる。空間光変調器441にて空間変調された光は、投影光学系45に入射し、ここで、不要光が遮断されるとともに必要光のみが基板Wの表面に導かれ、定められた倍率とされて基板Wの表面に結像される。
【0084】
後に明らかになるように、光学ユニット40は、このように副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光を断続的に照射し続けながら(すなわち、基板Wの表面にパルス光を繰り返して投影し続けながら)、主走査方向(Y軸方向)に沿って基板Wに対して相対的に移動される。したがって、光学ユニット40が主走査方向に沿って基板Wを1回横断すると、基板Wの表面に、副走査方向に沿ってN画素分の幅をもつ一本のパターン群が描画されることになる。この、N画素分の幅をもつ1本のパターン描画領域を、以下の説明では「1ストライプ分の領域」ともいう。
【0085】
なお、ヘッド部400には、空間光変調部44と投影光学系45との間に、空間光変調部44で変調された光の経路を副走査方向に沿って僅かにシフトさせる光路補正部をさらに設けてもよい。この場合、必要に応じて光路補正部に光の経路をシフトさせることによって、基板Wに照射される光の位置を副走査方向に沿って微調整することが可能となる。光路補正部は、例えば、2個のウェッジプリズム(非平行な光学面を備えることにより入射光の光路を変更できるプリズム)と、一方のウェッジプリズムを、他方のウェッジプリズムに対して、入射光の光軸の方向(Z軸方向)に沿って直線的に移動させるウェッジプリズム移動機構とから実現することができる。この構成においては、ウェッジプリズム移動機構を駆動制御して、2個のウェッジプリズム間の離間距離を調整することによって、必要な量だけ入射光をシフトさせることができる。
【0086】
<1−5.撮像ユニット50>
撮像ユニット50は、基板Wの上面に形成されたアライメントマークを撮像する。撮像ユニット50は、鏡筒、対物レンズ、および、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成されるCCDイメージセンサ(いずれも図示省略)を備える。また、撮像ユニット50は、照明ユニット80から延びるファイバ81と接続される。照明ユニット80から出射される光はファイバ81によって鏡筒に導かれ、鏡筒を介して基板Wの上面に導かれる。そして、その反射光が、対物レンズを介してCCDイメージセンサで受光される。これによって、基板Wの上面の撮像データが取得されることになる。CCDイメージセンサは、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得するとともに、取得した撮像データを制御部90に送信する。なお、撮像ユニット50はオートフォーカス可能なオートフォーカスユニットをさらに備えていてもよい。
【0087】
<1−6.搬送装置60>
搬送装置60は、基板Wを支持するための2本のハンド61,61と、ハンド61,61を独立に移動させるハンド駆動機構62とを備える。各ハンド61は、ハンド駆動機構62によって駆動されることにより進退移動および昇降移動されて、基板保持部10の保持面111に対する基板Wの受け渡しを行う。
【0088】
<1−7.プリアライメント部70>
プリアライメント部70は、基板Wの回転位置を粗く補正する装置である。プリアライメント部70は、例えば、回転可能に構成された載置台と、載置台に載置された基板Wの外周縁の一部に形成された切り欠き部(例えば、ノッチ、オリエンテーションフラット等)の位置を検出するセンサと、載置台を回転させる回転機構とから構成することができる。この場合、プリアライメント部70におけるプリアライメント処理は、まず、載置台に載置された基板Wの切り欠き部の位置をセンサで検出し、続いて、回転機構が、当該切り欠き部の位置が定められた位置となるように(例えば、切り欠きの方向が基板保持部10の移動方向(例えば、X方向))と平行になるように)載置台を回転させることによって行われる。
【0089】
<1−8.制御部90>
制御部90は、描画装置1が備える各部と電気的に接続されており、各種の演算処理を実行しつつ描画装置1の各部の動作を制御する。
【0090】
図7は、制御部90のハードウエア構成を示すブロック図である。制御部90は、例えば、CPU91、ROM92、RAM93、外部記憶装置94等がバスライン95を介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。ROM92は基本プログラム等を格納しており、RAM93はCPU91が所定の処理を行う際の作業領域として供される。外部記憶装置94は、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。外部記憶装置94にはプログラムPが格納されており、このプログラムPに記述された手順に従って、主制御部としてのCPU91が演算処理を行うことにより、各種機能が実現されるように構成されている。プログラムPは、通常、予め外部記憶装置94等のメモリに格納されて使用されるものであるが、CD−ROMあるいはDVD−ROM、外部のフラッシュメモリ等の記録媒体に記録された形態(プログラムプロダクト)で提供され(あるいは、ネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより提供され)、追加的または交換的に外部記憶装置94等のメモリに格納されるものであってもよい。なお、制御部90において実現される一部あるいは全部の機能は、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
【0091】
また、制御部90では、入力部96、表示部97、通信部98もバスライン95に接続されている。入力部96は、各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、オペレータから各種の入力設定指示を受け付ける。表示部97は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、CPU91による制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、LAN等を介したデータ通信機能を有する。
【0092】
外部記憶装置94には、基板Wに露光すべきパターンを記述したデータ(パターンデータ)Dが格納される。パターンデータDは、例えば、CADを用いて生成されたCADデータをラスタライズしたデータであり、回路パターンなどを表現している。制御部90は、基板Wに対する一連の処理に先立ってパターンデータDを取得して外部記憶装置94に格納している。なお、パターンデータDの取得は、例えばネットワーク等を介して接続された外部端末装置から受信することにより行われてもよいし、記録媒体から読み取ることにより行われてもよい。
【0093】
<2.基板Wに対する処理の流れ>
次に、描画装置1において実行される基板Wに対する一連の処理の流れについて、図8を参照しながら説明する。図8は、当該処理の流れを示す図である。以下に説明する一連の動作は、制御部90の制御下で行われる。
【0094】
まず、搬送装置60が、カセット載置部104に載置されたカセットCから未処理基板Wを取り出して描画装置1(具体的には、プリアライメント部70)に搬入する(ステップS1)。
【0095】
続いて、プリアライメント部70にて、基板Wに対するプリアライメント処理が行われる(ステップS2)。プリアライメント処理は、上述したとおり、例えば、載置台に載置された基板Wの切り欠き部の位置をセンサで検出し、当該切り欠き部の位置が定められた位置となるように載置台を回転させることによって行われる。これによって、載置台に載置された基板Wが定められた回転位置におおまかに位置合わせされた状態におかれることになる。
【0096】
続いて、搬送装置60が、プリアライメント処理済みの基板Wをプリアライメント部70から搬出してこれを基板保持部10の保持面111に載置する(ステップS3)。この処理は、具体的には次のように行われる。まず、ステージ駆動機構20が、基板保持部10を定められた受け渡し位置まで移動させる。基板保持部10が受け渡し位置に配置されると、続いて、リフトピン駆動機構(図示省略)が一群のリフトピン181を下方位置から上方位置に移動させる。これによって、保持面111から一群のリフトピン181が突出した状態となる。続いて、搬送装置60が、プリアライメント処理済みの基板Wを支持したハンド61を保持面111に沿って差し込んで、さらにハンド61を下方に移動させる。これによって、ハンド61上に載置されていた基板Wが一群のリフトピン181上に移載される。続いて、ハンド61が引き抜かれると、リフトピン駆動機構14が、一群のリフトピン181を上方位置から下方位置に移動させる。これによって、基板Wが保持面111に載置された状態となる。
【0097】
保持面111に基板Wが載置されると、続いて、基板保持部10が基板Wを吸着保持する(ステップS4)。この処理の流れについて、図9を参照しながら具体的に説明する。図9は、当該処理の流れを示す図である。
【0098】
保持面111に基板Wが載置されると、吸着制御部19は、まず、開閉弁123を開放する。すると、真空吸引口12に負圧(吸引圧)が形成される(ステップS41)。
【0099】
基板Wが反りのない平坦な形状である場合、土手部14の頂部全域、全ての突起部15の頂部、および、全ての環状突起部16の頂部のそれぞれと基板Wの裏面とが当接し、土手部14と、これに包囲されている保持面111と、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。したがって、この場合、真空吸引口12に負圧が形成されると当該密閉空間の圧力が低下し、基板Wは、その裏面が保持面111から土手部14の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111に吸着保持される。保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側(真空圧側)となったことが圧力センサ17の出力情報から確認されると(すなわち、圧力センサ17の検知圧力が所定値(例えば−60kPa)より小さくなると)(ステップS42でYES)、吸着制御部19は、基板Wは適切に吸着保持されたと判断して基板Wを吸着保持する一連の処理を終了する。
【0100】
一方、基板Wに反りが生じており平坦な形状ではない場合、基板Wの裏面と土手部14の頂部の少なくとも一部との間に隙間が生じる。したがって、この場合、真空吸引口12に負圧が形成されても、この隙間から負圧が逃げてしまい、保持面111上の圧力はなかなか低下しない。真空吸引口12からの吸引を開始してから一定の時間が経過しても、保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが圧力センサ17の出力情報から確認されない場合(すなわち、圧力センサ17の検知圧力が所定値(例えば−60kPa)以上の場合)(ステップS42でNO)、吸着制御部19は、基板Wは保持面111に適切に吸着保持されていない(吸着不良)と判断し、開閉弁137を開放する。すると、複数のベルヌーイ吸引口13,13,・・,13の全てに負圧(吸引圧)が形成される(ステップS43)。
【0101】
上述した通り、ベルヌーイ吸引口13は、保持面111に規定される円形領域M1と、円環状領域M2とのそれぞれに少なくとも1個ずつ配置される(図3参照)。基板Wが凸形状に反っている場合、基板Wの中心部付近は円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13が形成する負圧によって保持面111に対して強く吸引される。一方、基板Wが凹形状に反っている場合、基板Wの周縁付近は円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13が形成する負圧によって保持面111に対して強く吸引される。したがって、基板Wに凸形状、凹形状、どちらの反りが生じている場合であっても、ベルヌーイ吸引口13が形成する負圧によって基板Wは平坦化される。
【0102】
基板Wが平坦な形状となると、上述したとおり、基板Wの裏面が土手部14の頂部全域、全ての突起部15の頂部、および、全ての環状突起部16の頂部と当接し、土手部14と、これに包囲されている保持面111と、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。すると、真空吸引口12および各ベルヌーイ吸引口13に形成される負圧によって当該密閉空間の圧力が低下し、基板Wは、その裏面が保持面111から土手部14の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111に吸着保持される。保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが圧力センサ17の出力情報から確認されると(すなわち、圧力センサ17の検知圧力が所定値(例えば−60kPa)より小さくなると)(ステップS44でYES)、吸着制御部19は、開閉弁137を閉鎖して各ベルヌーイ吸引口13からの吸引を停止させる(ステップS45)。上述したとおり、基板Wは既に平坦な形状となっており、土手部14とこれに包囲されている保持面111と基板Wの裏面との間には密閉空間が形成されているため、各ベルヌーイ吸引口13からの吸引を停止しても、真空吸引口12に形成される負圧によって基板Wが適切に吸着保持された状態が維持される。以上で、吸着制御部19は、基板Wを吸着保持する一連の処理を終了する。
【0103】
再び図8を参照する。基板Wが吸着保持された状態となると、続いて、当該基板Wが適正な回転位置にくるように精密に位置合わせする処理(ファインアライメント)が行われる(ステップS5)。具体的には、まず、ステージ駆動機構20が、基板保持部10を受け渡し位置から撮像ユニット50の下方位置まで移動させる。基板保持部10が撮像ユニット50の下方に配置されると、続いて、撮像ユニット50が、基板W上のアライメントマークを撮像して、当該撮像データを取得する。続いて、制御部90が、撮像ユニット50により取得された撮像データを画像解析してアライメントマークの位置を検出し、その検出位置に基づいて基板Wの回転位置の適正位置からのずれ量を算出する。ずれ量が算出されると、回転機構21が、当該算出されたずれ量だけ基板保持部10を回転させる。これによって、基板Wが適正な回転位置にくるように位置合わせされる。
【0104】
基板Wが適切な回転位置におかれると、続いて、パターンの描画処理が行われる(ステップS6)。描画処理について、図10を参照しながら説明する。図10は、描画処理を説明するための図である。
【0105】
描画処理は、ステージ駆動機構20が基板保持部10に載置された基板Wを光学ユニット40,40に対して相対的に移動させつつ、光学ユニット40,40のそれぞれから基板Wの上面に空間変調された光を照射させることによって行われる。
【0106】
具体的には、ステージ駆動機構20は、まず、撮像ユニット50の下方位置に配置されている基板保持部10を主走査方向(Y軸方向)に沿って+Y方向に移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる(主走査)。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は基板W上を主走査方向に沿って−Y方向に横断することになる(矢印AR11)。主走査が行われる間、各光学ユニット40は、パターンデータDに応じた空間変調が形成された光(具体的には、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光)を、基板Wに向けて断続的に照射し続ける(すなわち、基板Wの表面にパルス光が繰り返して投影され続ける)。つまり、各光学ユニット40は、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光を断続的に照射し続けながら基板W上を主走査方向に沿って横断する。したがって、光学ユニット40が主走査方向に沿って基板Wを1回横断すると、基板Wの表面に、副走査方向に沿ってN画素分の幅をもつ一本のパターン群が描画されることになる。ここでは、2個の光学ユニット40が同時に基板Wを横断するので、一回の主走査により2本のパターン群が描画されることになる。
【0107】
1回の主走査が終了すると、ステージ駆動機構20は、基板保持部10を副走査方向(X軸方向)に沿って+X方向に、1ストライプの幅に相当する距離だけ移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して副査方向に沿って相対的に移動させる(副走査)。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は副走査方向に沿って−X方向に、1ストライプの幅分だけ移動することになる(矢印AR12)。
【0108】
副走査が終了すると、再び主走査が行われる。すなわち、ステージ移動機構20は、基板保持部10を主走査方向に沿って−Y方向に移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は、基板W上における、先の主走査で描画された1ストライプ分の描画領域の隣を、主走査方向に沿って+Y方向に移動して横断することになる(矢印AR13)。ここでも、各光学ユニット40は、パターンデータDに応じた空間変調が形成された光を、基板Wに向けて断続的に照射し続けながら基板W上を主走査方向に沿って横断する。これによって、先の主走査で描画された1ストライプ分の描画領域の隣に、さらに1ストライプ分の領域の描画が行われることになる。以後、同様に、主走査と副走査とが繰り返して行われ、基板Wの表面の全域にパターンが描画されると描画処理が終了する。
【0109】
再び図8を参照する。描画処理が終了すると、ステージ駆動機構20が、基板保持部10を受け渡し位置まで移動させる。基板保持部10が受け渡し位置に配置されると、吸着制御部19が、開閉弁123を閉鎖して真空吸引口12からの吸引を停止させる。これによって、真空吸引口12より気体が密閉空間に流入し、基板Wの吸着状態が解除される(ステップS7)。
【0110】
基板Wの保持面111に対する吸着状態が解除されると、続いて、搬送装置60が、保持面111に載置された処理済みの基板Wを受け取って描画装置1から搬出し、カセット載置部104に載置されたカセットCに収容する(ステップS8)。搬送装置60が保持面111から基板Wを受け取る処理は、具体的には次のように行われる。まず、リフトピン駆動機構(図示省略)が、一群のリフトピン181を下方位置から上方位置に移動させる。これによって、基板Wの下面は一群のリフトピン181により支持されて基板保持部10から持ち上げられて保持面111から引きはがされた状態となる。続いて、搬送装置60が、ハンド61を保持面111と基板Wの下面との間に差し込み、さらにハンド61を上昇させる。これによって、一群のリフトピン181の上に支持されていた基板Wがハンド61上に移載される。続いてハンド61が引き抜かれると、リフトピン駆動機構14が、一群のリフトピン181を上方位置から下方位置に移動させる。
【0111】
<3.効果>
第1の実施の形態においては、ベルヌーイ吸引口13が、保持面111に形成された円形領域M1と円環状領域M2とのそれぞれに配置されるので、基板Wが凸形状、凹形状のどちらに反っていても、ベルヌーイ吸引口13からの吸引によってその反りを平坦化することができる。したがって、簡易な構成で、反った基板Wであっても確実に基板W(具体的には、少なくとも基板Wにおける露光領域を含む部分)を吸着保持できる。したがって、基板Wに対する一連の処理が行われる間、保持面111に対して基板Wが位置ずれを起こすといった事態の発生が回避され、基板Wに対する一連の処理を適切に行うことができる。すなわち、高精度な描画処理が担保される。
【0112】
また、第1の実施の形態においては、基板Wは土手部14の頂部、および、突起部15の頂部等に当接した状態で吸着保持される。この構成によると、基板Wは、その裏面が保持面111から土手部14の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111に対して吸着保持されるので、基板Wの裏面に真空吸引口12の吸引跡がつくおそれがない。
【0113】
また、第1の実施の形態においては、保持面111の円環状領域M2の周方向に沿って複数のベルヌーイ吸引口13が配列される。この構成によると、基板Wが凹形状に反っている場合であっても、円環状領域M2に配置された各ベルヌーイ吸引口13からの吸引圧によってその反りを平坦化して、基板Wを確実に吸着保持できる。
【0114】
また、第1の実施の形態においては、真空吸引口12からの吸引を行っても保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合にベルヌーイ吸引口13からの吸引を開始する。この構成によると、例えば保持面111に載置された基板Wがはじめから反りのない平坦な形状である場合は、ベルヌーイ吸引口13からの吸引は行われないので、無駄な空気の消費が抑制される。また、基板Wの裏面が汚染される危険もない。
【0115】
また、第1の実施の形態においては、ベルヌーイ吸引口13からの吸引を開始した後に保持面111上の吸引圧が所定値より低圧側となると、ベルヌーイ吸引口13からの吸引を停止する。つまり、ベルヌーイ吸引口13からの吸引によって基板Wの反りが平坦化されて基板Wが適切に吸着保持されると、以後は真空吸引口12からの吸引のみで基板Wを吸着保持する。この構成によると、ベルヌーイ吸引口13からの吸引が必要最小限に抑えられるので、無駄な空気の消費が抑制される。また、基板Wの裏面が汚染される危険も低くなる。
【0116】
また、第1の実施の形態においては、真空吸引口12からの吸引が行われている状態(すなわち、基板Wの少なくとも一部が真空吸引口12からの吸引圧によって保持面111に吸引された状態)で各ベルヌーイ吸引口13からの吸引を開始する。この構成によると、各ベルヌーイ吸引口13からの吸引を開始した際に基板Wが位置ずれを起こすといった事態が生じにくい。
【0117】
また、第1の実施の形態においては、ベルヌーイ吸引ユニット130の本体部131と保持板11に形成された凹部112との間に隙間Qが形成されており、円柱状凹空間132から溢れ出た気体は隙間Qに沿って流れて保持板11の裏面側に排出されるようになっている。したがって、基板Wの裏面がベルヌーイ吸引口13の外縁に形成された環状突起部16の頂部と当接した状態(すなわち、ベルヌーイ吸引口13が基板Wの裏面によって塞がれた状態)となっても、円柱状凹空間132内に強い旋回流を形成し続けることができる。すなわち、ベルヌーイ吸引口13の負圧を維持し続けることができる。
【0118】
また、第1の実施の形態においては、ベルヌーイ吸引口13の径サイズd13が、円柱状凹空間132の径サイズd132よりも小さく形成される。この構成によると、基板Wの裏面における吸引圧が作用する領域が小さくなるため、ベルヌーイ吸引口13からの吸引を行うことによって基板Wの平面度を悪化させるおそれがない。
【0119】
<<第2の実施の形態>>
第2の実施の形態に係る描画装置について説明する。この実施の形態に係る描画装置は、基板Wを水平姿勢に吸着保持する基板保持部が備える保持面の構成と、基板Wを保持面に吸着保持させる態様とにおいて、第1の実施の形態と相違する。以下においては、第1の実施の形態と相違する点を説明し、同じ構成については説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0120】
<1.基板保持部10a>
基板保持部10aの構成について、図11、図12を参照しながら説明する。図11は、基板保持部10aの平面図である。図12は、基板保持部10aが備える配管系統を模式的に示す図である。
【0121】
基板保持部10aは、第1の実施の形態に係る基板保持部10と同様、平板状の外形を有し、その上面に基板Wの裏面に対向する保持面111aが形成される保持板11aを備える。この実施形態においても、保持面111aの平面度は、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値となるように形成される。また、保持面111aは、少なくとも基板Wの露光領域をカバーするサイズに形成される。また、この実施形態においても、基板Wは円形状であるとし、保持面111aも平面視円形状に形成される。
【0122】
<吸引口12a,・・,12a,13a,・・,13a>
保持面111aには、複数の吸引口12a,・・,12a,13a,・・,13aが形成される。この複数の吸引口12a,・・,12a,13a,・・,13aのうちの半分の吸引口12a,・・,12aは、真空吸引により基板Wを保持面111aに吸引する真空吸引口12aである。また、残り半分の吸引口13a,・・,13aは、ベルヌーイ吸引により基板Wを保持面111aに吸引するベルヌーイ吸引口13aである。真空吸引口12aとベルヌーイ吸引口13aとは同数個ずつ(図示の例では、7個ずつ)形成される。
【0123】
ここで、複数の真空吸引口12a,・・,12a、および、複数のベルヌーイ吸引口13a,・・,13aのレイアウトについて説明する。上記の実施の形態と同様、ここでも、保持面111aには、保持面111aの中心と同心に配置された円形領域M1と、円形領域M1と同心に配置された円環状領域M2とが規定される。円環状領域M2は、さらに、その周方向に沿って複数(図示の例では6個)の弧状領域M22,M22,・・,M22に分割されている。つまり、この実施の形態に係る保持面111aには、円形領域M1および複数の弧状領域M22,M22,・・,M22が規定されている。以下において、円形領域M1および各弧状領域M22のそれぞれを「部分領域Mi」と総称する。真空吸引口12aとベルヌーイ吸引口13aとは、保持面111aに規定される複数の部分領域Miのそれぞれに少なくとも1個ずつ(図示の例では1個ずつ)配置される。
【0124】
ただし、各弧状領域M22は互いに同じ面積とされることが好ましい。また、各弧状領域M22と円形領域M1とが互いに同じ面積とされる(つまり、各部分領域Miが同じ面積とされる)ことも好ましい。さらに、各部分領域Miが同じ面積とされる場合、各部分領域Miには、真空吸引口12aとベルヌーイ吸引口13aとが同数個ずつ配置されることが好ましい。
【0125】
各真空吸引口12aは、真空吸引口12aの個数分だけ分岐した分岐配管121aの各分岐側端部と接続されている。一方、分岐配管121aの合流側端部は気体吸引部122と接続されている。また、分岐配管121aの途中(合流側の部分)には開閉弁123aが介挿されている。気体吸引部122が稼働されるとともに開閉弁123aが開放されると、分岐配管121aを介して複数の真空吸引口12a,・・,12aのそれぞれに負圧(吸引圧)が形成される。
【0126】
各ベルヌーイ吸引口13aは、ベルヌーイ吸引ユニット130が配置された凹部112と連通している。ベルヌーイ吸引ユニット130の構成は上述したとおりである。各ベルヌーイ吸引ユニット130が備える一対の噴出ノズル134,134のそれぞれは、ベルヌーイ吸引口13aの個数分だけ分岐した分岐配管135aの各分岐側端部と接続されている。一方、分岐配管135aの合流側端部は気体供給部136と接続されている。また、分岐配管135aの途中(分岐側の各部分)には開閉弁137aが介挿されている。さらに、分岐配管135aの途中(合流側の部分)にはフィルタ(図示省略)が介挿されている。気体供給部136が稼働されるとともに、複数の開閉弁137a,・・,137aのいずれかが開放されると、分岐配管135aを介して、当該開閉弁137aが介挿されている分岐部と接続されたベルヌーイ吸引ユニット130に圧縮気体が供給される(具体的には、当該ベルヌーイ吸引ユニット130が備える一対の噴出ノズル134,134のそれぞれから圧縮気体が噴出される)。これによって、当該ベルヌーイ吸引ユニット130が配置された凹部112と連通されているベルヌーイ吸引口13aに負圧が形成される。つまり、この構成においては、複数のベルヌーイ吸引口13a,・・,13aのそれぞれに独立して負圧を形成できるようになっている。
【0127】
<土手部14a>
保持面111aには、各部分領域Miの境界に沿って土手部14aが立設される。すなわち、保持面111aには、各部分領域Miを包囲するような土手部14aが立設される。また、第1の実施の形態と同様、土手部14aにより包囲された各部分領域Mi内にはその全域にわたって複数の突起部15が満遍なく立設される(図4、図5参照)。さらに、各ベルヌーイ吸引口13aの外縁および各ピン孔18の外縁に沿って環状突起部16が立設される。ただし、図11においては、突起部15の図示を省略している。
【0128】
第1の実施の形態と同様、土手部14aの頂部と各突起部15の頂部と各環状突起部16の頂部とはすべて面一に形成されており、これら各頂部が配置される平面の平面度も、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値となるように形成される。保持面111aに平坦な基板Wが載置されると、当該基板Wの裏面が全ての土手部14aの頂部全域、全ての突起部15の頂部、および、全ての環状突起部16の頂部と当接し、各土手部14aとこれに包囲された各部分領域Miと基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。この状態で、各部分領域Miに開口された真空吸引口12aに負圧が形成されると、各密閉空間が減圧され、基板W(具体的には、少なくとも基板Wにおける露光領域を含む部分)は、その裏面が保持面111aから土手部14aの高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面111aに吸着保持されることになる。
【0129】
<圧力センサ17a>
保持面111aには、複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aが配置される。圧力センサ17aは、保持面111a上に規定される複数の部分領域Miのそれぞれに1個ずつ配置され、当該配置位置における保持面111a上の圧力を検出する。
【0130】
<リフトピン181>
基板保持部10aは、第1の実施の形態に係る基板保持部10と同様、保持面111aに対して基板Wを昇降させるための複数のリフトピン181と、保持面111aに形成され、各リフトピン181を挿通可能なピン孔18とを備える。リフトピン181およびピン孔18の構成は第1の実施の形態に係るリフトピン181と同様である。
【0131】
<吸着制御部19a>
基板保持部10aは、第1の実施の形態に係る基板保持部10と同様、基板保持部10aが備える各部を制御する吸着制御部19aを備える。吸着制御部19aは、制御部90において、例えばCPU91がプログラムPに従って所定の演算処理を行うことによって、あるいは、専用の論理回路等でハードウエア的に実現される(図7参照)。
【0132】
吸着制御部19aは、複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのそれぞれと電気的に接続されており、各圧力センサ17aからの検知信号を取得可能に構成されている。また、吸着制御部19aは、開閉弁123a、および複数の開閉弁137a,137a,・・,137aのそれぞれと電気的に接続されており、各圧力センサ17aから得られる検知信号に基づいて、各開閉弁123a,137a,137a,・・,137aを独立して開閉制御する。つまり、吸着制御部19aは、各圧力センサ17aから得られる検知信号等に基づいて、保持面111aに形成された複数の吸引口(複数の真空吸引口12a,12a,・・,12aおよび複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13a)のそれぞれにおける吸引圧の形成を制御する。この制御態様については後に具体的に説明する。
【0133】
<2.基板Wを吸着保持する処理の流れ>
基板保持部10aが基板Wを保持面111aに吸着保持する処理の流れ(図8のステップS4の処理の流れ)について説明する。この処理は、第1の実施の形態に係るステップS4の処理の流れとほぼ同様であるので、先に参照した図8を参照しながら説明する。
【0134】
保持面111aに基板Wが載置されると、吸着制御部19aは、まず、開閉弁123aを開放する。すると、複数の真空吸引口12a,12a,・・12aのそれぞれに負圧が形成される(ステップS41)。
【0135】
保持面111aに規定される部分領域Miにおいて、当該部分領域Miを包囲する土手部14aの頂部全域と基板Wの裏面とが当接している場合、土手部14aと、これに包囲されている部分領域Miと、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。したがって、この場合、当該部分領域Miに配置された真空吸引口12aに負圧が形成されると、当該密閉空間の圧力が低下する。
【0136】
基板Wが反りのない平坦な形状である場合、全ての部分領域Mi(すなわち、保持面111aの全域)において、保持面111a上の圧力が低下する。全ての部分領域Miにおいて保持面111a上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのそれぞれの出力情報から確認されると(ステップS42でYES)、吸着制御部19aは、基板Wは保持面111aに適切に吸着保持されたと判断して基板Wを吸着保持する一連の処理を終了する。
【0137】
一方、基板Wに反りが生じており平坦な形状ではない場合、少なくとも1個の部分領域Miにおいて、当該部分領域Miを包囲する土手部14aの頂部の少なくとも一部と基板Wの裏面との間に隙間が生じる。したがって、この場合、当該部分領域Miに配置された真空吸引口12aに負圧が形成されても、この隙間から負圧が逃げてしまい、当該部分領域Miにおいて保持面111a上の圧力はなかなか低下しない。真空吸引口12aからの吸引を開始してから一定の時間が経過しても、全ての部分領域Miにおいて保持面111a上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのそれぞれの出力情報から確認されない場合(つまり、吸引圧が所定値より低圧側にならない部分領域Miが1個以上存在する場合)(ステップS42でNO)、吸着制御部19aは、基板Wは保持面111aに適切に吸着保持されていない(吸着不良)と判断して、続いて、開閉弁137aを開放してベルヌーイ吸引口13aに負圧を形成する(ステップS43)。
【0138】
ステップS43の処理について具体的に説明する。上述したとおり、基板保持部10aは複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aを備えており、吸着制御部19aは開閉弁137a,137a,・・,137aを独立して開閉制御することにより各ベルヌーイ吸引口13aに独立して負圧を形成できるようになっている。ここで、全ての開閉弁137a,137a,・・,137aを開放した場合に、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧と、1個の開閉弁137aのみを開放し、他の開閉弁137a,・・,137aを閉鎖した場合に、当該開放された開閉弁137aと対応するベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧とを比べると、後者の方が低圧側となる。すなわち、後者の方が吸引力が強い。後者の場合は、気体供給部136から供給される圧縮気体が分散されず、1個のベルヌーイ吸引ユニット130に大量の圧縮気体を集中的に供給できるからである。
【0139】
そこで、吸着制御部19aは、例えば、複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aの一部を(好ましくは1個ずつ)次々と選択し、選択された一部のベルヌーイ吸引口13aのみに負圧を形成するように各開閉弁137aを開閉制御する。つまり、吸着制御部19aは、まず、複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aの一部を選択し、当該選択したベルヌーイ吸引口13aと対応する開閉弁137a(具体的には、当該ベルヌーイ吸引口13aと連通する凹部112に配置されたベルヌーイ吸引ユニット130に接続された分岐配管135aの分岐部分に介挿された開閉弁137a)を開放状態とし、その他の各開閉弁137aを閉鎖状態とする。この状態で定められた時間が経過すると、吸着制御部19aは、続いて別のベルヌーイ吸引口13aを選択し、当該選択したベルヌーイ吸引口13aと対応する開閉弁137aのみを開放状態とし、他の各開閉弁137aを閉鎖状態とする。以降も同様に開閉弁137aを次々と切り換える。これによって、複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aのそれぞれに、順番に負圧が形成されていくことになる。
【0140】
ここで、各ベルヌーイ吸引口13aに負圧を形成する順番(すなわち、ベルヌーイ吸引口13aを選択する順番)はどのように規定してもよい。例えば、図13に模式的に示されるように、まず、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに負圧を形成し(n1)、続いて、円環状領域M2に配置された複数のベルヌーイ吸引口13aのそれぞれに、反時計回り(あるいは、時計回りでもよい)の順に負圧を形成し(n2→n3→n4→・・→n7)、再び円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに負圧を形成する(n1)、という態様を採用してもよい(すなわち、n1→n2→n3→n4→・・→n7→n1→n2→・・)。この構成においては、例えば、基板Wに凸形状の反りが生じている場合、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aからの1回目の吸引が行われた時点では基板Wの中心付近を確実に吸着できなかったとしても、他のベルヌーイ吸引口13aからの吸引が次々と行われる中で基板Wは吸着されやすい部分(反り量が少ない部分)から徐々に平坦化されていくため、二回目以降に円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aからの吸引が行われる時点で、基板Wの中心付近を確実に吸着できる。
【0141】
また例えば、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aには常に負圧を形成し続け、その一方で、円環状領域M2に配置された複数のベルヌーイ吸引口13aのそれぞれに、反時計回り(あるいは、時計回りでもよい)の順に次々と負圧を形成する、という態様を採用してもよい。
【0142】
また例えば、保持面111a上における吸引圧が小さい部分領域Miに配置されたベルヌーイ吸引口13aに優先的に負圧を形成する態様としてもよい。この場合、吸着制御部19aは、まず、保持面111a上に配置された複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのうち、最も小さい吸引圧を検出した圧力センサ17aと対応するベルヌーイ吸引口13a(すなわち、当該圧力センサ17aが配置されている部分領域Miに配置されているベルヌーイ吸引口13a)をまず選択し、続いて、次に小さい吸引圧を検出した圧力センサ17aと対応するベルヌーイ吸引口13aを選択し、以降も同様の態様でベルヌーイ吸引口13aを選択する。
【0143】
吸着制御部19が上記の態様で複数の開閉弁137a,137a,・・,137aを開閉制御すると、各ベルヌーイ吸引口13に順に形成される負圧によって基板Wは徐々に平坦化される。上述した通り、ベルヌーイ吸引口13aは、保持面111aに規定される円形領域M1と、円環状領域M2とのそれぞれに少なくとも1個ずつ配置される。したがって、基板Wに凸形状、凹形状、どちらの反りが生じている場合であっても、各ベルヌーイ吸引口13aに次々と形成される負圧によって基板Wは平坦化される。
【0144】
基板Wが平坦な形状となると、上述したとおり、全ての部分領域Mi(すなわち、保持面111aの全域)において、保持面111a上の圧力が低下する。全ての部分領域Miにおいて保持面111a上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが複数の圧力センサ17a,17a,・・,17aのそれぞれの出力情報から確認されると(ステップS44でYES)、吸着制御部19aは、全ての開閉弁137a,137a,・・,137aを閉鎖して全てのベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aからの吸引を停止させる(ステップS45)。上述したとおり、基板Wは既に平坦な形状となっており、全ての部分領域Miにおいて、土手部14aと、これに包囲されている部分領域Miと、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成されているため、各ベルヌーイ吸引口13aからの吸引を停止しても、各真空吸引口12aに形成される負圧によって基板Wが保持面111aに吸着保持された状態が維持される。以上で、吸着制御部19aは、基板Wを吸着保持する一連の処理を終了する。
【0145】
<3.効果>
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、第2の実施の形態においては、保持面111a内に規定された複数の部分領域Mi(複数の弧状領域M22および円形領域M1)のそれぞれに真空吸引口12aとベルヌーイ吸引口13aとが配置されるとともに、当該各部分領域Miを包囲する土手部14aが形成される。この構成によると、各部分領域Miと基板Wの裏面との間に密閉空間を形成して、当該部分領域Mi単位で独立して基板Wの裏面を吸着保持できるので、無駄なく効率的に基板Wの反りを平坦化して、基板Wを確実に吸着保持できる。
【0146】
特に、複数の弧状領域M22のそれぞれの面積を互いに等しいものとしておけば、各弧状領域M22と基板Wの裏面との間に形成される密閉空間の体積が等しくなるので、各弧状領域M22において基板Wに同等の吸引力を作用させることができる。これによって、基板Wにどのような反りが生じていても、確実にこれを平坦化して吸着保持することが可能となる。
【0147】
<<変形例>>
<1.第1の変形例>
第2の実施の形態において、吸着制御部19aが、処理対象となる基板Wの反り形状を示す情報(反り形状情報)を、例えば入力部96(図7)を介してオペレータから受け付けることによって取得し(あるいは、保持面111aの付近に配置された光学センサ等で保持面111aに載置された基板Wの反り形状を計測することによって取得し)、当該反り形状情報に応じて、各開閉弁137aを開閉制御する構成としてもよい。
【0148】
具体的には、例えば、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wが凹形状に反っている場合、円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13aのみに負圧を形成するように各開閉弁137aを開閉制御する。すると、当該ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧によって基板Wはスムースに平坦化される。一方、処理対象となる基板Wが凸形状に反っている場合、吸着制御部19aは、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aのみに負圧を形成するように各開閉弁137aを開閉制御する。すると、当該ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧によって基板Wはスムースに平坦化される。
【0149】
<2.第2の変形例>
上記の各実施の形態において、真空吸引口12,12aの負圧(吸引圧)、ベルヌーイ吸引口13,13aの負圧(吸引圧)を調整可能としてもよい。
【0150】
具体的には、例えば第2の実施の形態において、複数の真空吸引口12a,・・,12aと気体吸引部122とをつなぐ分岐配管121aの途中(合流側の部分)に、開閉弁123aに加えて、流量調整弁124aを介挿してもよい(図14)。この構成によると、流量調整弁124aと電気的に接続された吸着制御部19aが流量調整弁124aを制御することによって、分岐配管121a内の気体の吸引量を任意の値に変更することができる。これによって、複数の真空吸引口12a,・・,12aのそれぞれに形成される負圧(吸引圧)を任意の値に変更することが可能となる。
【0151】
また、例えば第2の実施の形態において、複数のベルヌーイ吸引ユニット130,・・,130と気体供給部136とをつなぐ分岐配管135aの途中(分岐側の各部分)に、流量調整弁138aを介挿してもよい(図14)。この構成によると、各流量調整弁138aと電気的に接続された吸着制御部19aが各流量調整弁138aを制御することによって、各ベルヌーイ吸引ユニット130に供給される圧縮気体の流量を任意の値に変更することができる。これによって、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧(吸引圧)を独立して任意の値に変更することが可能となる。
【0152】
例えば、図14に示される構成例において、吸着制御部19aが、処理対象となる基板Wの厚みを示す情報(厚み情報)を、例えば入力部96(図7)を介してオペレータから受け付けることによって取得し(あるいは、保持面111aの付近に配置された光学センサ等で保持面111aに載置された基板Wの厚みを計測することによって取得し)、当該厚み情報に応じて各吸引口12a,13aに形成する負圧の値を調整する構成としてもよい。
【0153】
この場合、例えば、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wの厚みが基準値よりも薄い場合、流量調整弁124aを制御して分岐配管121a内の気体の吸引量を基準値よりも小さくする。すると、各真空吸引口12aに形成される吸引圧が基準値よりも高圧側となり(すなわち、各真空吸引口12aの吸引力が弱くなり)、薄い基板Wを破損することなく安全に吸着保持できる。一方、処理対象となる基板Wの厚みが基準値よりも厚い場合、吸着制御部19aは、流量調整弁124aを制御して分岐配管121a内の気体の吸引量を基準値よりも大きくする。すると、各真空吸引口12aに形成される吸引圧が基準値よりも低圧側となり(すなわち、各真空吸引口12aの吸引力が強くなり)、厚い基板Wも確実に吸着保持できる。
【0154】
また、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wの厚みが基準値よりも薄い場合、流量調整弁124aの制御に加えて(あるいは、当該制御に代えて)、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも小さくする。すると、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧が基準値よりも高圧側となり、薄い基板Wを破損することなく安全に吸着保持できる。一方、処理対象となる基板Wの厚みが基準値よりも厚い場合、吸着制御部19aは、流量調整弁124aの制御に加えて(あるいは、当該制御に代えて)、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも大きくする。すると、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧が基準値よりも低圧側となり、厚い基板Wも良好に吸着保持できる。
【0155】
なお、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wの厚みが非常に薄い場合、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも小さくして各ベルヌーイ吸引口13aに形成される吸引圧を基準値よりも高圧側にするとともに、開閉弁123aを閉鎖して真空吸引口12aからの吸引を停止してもよい。この場合、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧だけで、基板Wを保持面111aに吸着保持することになるため、非常に薄い基板Wであっても、これを破損せずに安全に保持面111aに吸着保持できる。
【0156】
また、図14に示される構成例において、吸着制御部19aが、処理対象となる基板Wの反り量を示す情報(反り量情報)を、例えば入力部96(図7)を介してオペレータから受け付けることによって取得し(あるいは、保持面111aの付近に配置された光学センサ等で保持面111aに載置された基板Wの反り量を計測することによって取得し)、厚み情報に加えて(あるいは、厚み情報に代えて)、当該反り量情報に応じてベルヌーイ吸引口13a、真空吸引口12aの負圧を調整する構成としてもよい。
【0157】
この場合、例えば、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wの反り量が基準値よりも小さい場合、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも小さくする。反り量が小さい場合、各ベルヌーイ吸引口13aの吸引力が比較的弱くても(すなわち、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧が基準値より高圧側にあっても)も基板Wを平坦化することができるところ、この構成によると、空気の消費量を効果的に抑えつつ、基板Wを確実に保持面111aに吸着保持できる。一方、処理対象となる基板Wの反り量が基準値よりも大きい場合、吸着制御部19aは、各流量調整弁138aを制御して分岐配管135a内の圧縮気体の流量を基準値よりも大きくする。すると、各ベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧が基準値よりも低圧側となり、反り量が大きい基板Wも良好に吸着保持できる。
【0158】
また、図14に示される構成例において、吸着制御部19aが、処理対象となる基板Wの反り形状を示す情報(反り形状情報)を、例えば入力部96(図7)を介してオペレータから受け付けることによって取得し(あるいは、保持面111aの付近に配置された光学センサ等で保持面111aに載置された基板Wの反り形状を計測することによって取得し)、厚み情報、反り量情報に加えて(あるいは、これら各情報に代えて)、当該反り形状情報に応じて各ベルヌーイ吸引口13a、真空吸引口12aの負圧を調整する構成としてもよい。
【0159】
この場合、例えば、吸着制御部19aは、処理対象となる基板Wが凸形状に反っている場合、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧が、円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧よりも低圧側となるように各流量調整弁138aを制御する。すると、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される比較的大きな吸引力によって基板Wはスムースに平坦化される。一方、処理対象となる基板Wが凹形状に反っている場合、吸着制御部19aは、円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧が、円形領域M1に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される負圧よりも低圧側となるように各流量調整弁138aを制御する。すると、円環状領域M2に配置されたベルヌーイ吸引口13aに形成される比較的大きな吸引力によって基板Wはスムースに平坦化される。
【0160】
<3.第3の変形例>
上記の各実施の形態においては、吸引力を高めるためにベルヌーイ吸引口13,13aの径サイズd13は、円柱状凹空間132の径サイズd132よりも小さく形成されていたが、ベルヌーイ吸引口13,13aの径サイズは円柱状凹空間132の径サイズd132と略同一に形成されてもよい。図15には、第1の実施の形態に係るベルヌーイ吸引口13の径サイズを円柱状凹空間132の径サイズd132と略同一に形成した場合の保持面111の様子が示されている。この構成によると、円柱状凹空間132の中心部に形成された負圧をそのまま保持面111,111a上に作用させることができる。
【0161】
<4.第4の変形例>
上記の各実施の形態においては、ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引によって基板Wが保持面111,111aに適切に吸着保持されたことが確認されると(ステップS44でYES)、各ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引を停止する(ステップS45)構成としたが、基板Wが保持面111,111aに吸着保持されたことが確認された後も、各ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引を続行してもよい。ただし、上述したとおり、各ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引を早期に停止すれば、空気の消費量を抑えることができるとともに、保持面111,111a上の基板Wが汚染される危険も小さくなるため、ベルヌーイ吸引口13,13aからの吸引はなるべく早期に停止することが好ましい。
【0162】
<5.第5の変形例>
上記の各実施の形態においては、円環状領域M2の内径は円形領域M1の外径と一致する構成とされていたが、円環状領域M2の内径は円形領域M1の外径よりも大きい構成であってもよい。
【0163】
また、上記の各実施の形態においては、保持面111,111a上に1個の円環状領域M2を形成する構成としたが、円環状領域M2をさらに複数の円環状領域に分割し、各円環状領域の周方向に沿って複数のベルヌーイ吸引口を等間隔に配列してもよい。
【0164】
<6.第6の変形例>
第2の実施の形態においては、吸着不良と判断された場合、吸着制御部19aは複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aを一個ずつ(あるいは、複数個ずつ)次々と選択し、選択された一部のベルヌーイ吸引口13aのみに負圧を形成するように各開閉弁137aを開閉制御する構成としたが(例えば図13参照)、吸着不良と判断された場合、吸着制御部19aは複数の開閉弁137a,137a,・・,137aの全てを開放状態として複数のベルヌーイ吸引口13a,13a,・・,13aの全てに負圧を形成してもよい。なお、この場合は、各開閉弁137aを分岐配管135aの各分岐部にそれぞれ設けずに、合流側の部分に1個だけ設ける構成としてもよい。
【0165】
<7.第7の変形例>
第2の実施の形態において、複数の真空吸引口12a,12a,・・,12aのそれぞれと気体吸引部122とを接続する分岐配管121aにおいて、分岐配管121aの合流側の部分に開閉弁123aを介挿する構成としたが、分岐側の各部分に開閉弁をそれぞれ介挿し、吸着制御部19aが各開閉弁を独立して開閉制御する構成としてもよい。この構成によると、複数の真空吸引口12a,・・,12aのそれぞれに独立して負圧を形成することができる。この構成において、吸着制御部19aは複数の真空吸引口12a,12a,・・,12aを一個ずつ(あるいは、複数個ずつ)次々と選択し、選択された一部の真空吸引口12aのみに負圧を形成するように各開閉弁を開閉制御する構成としてもよい。
【0166】
<8.その他の変形例>
上記の各実施形態では、空間光変調器441として変調単位である固定リボンと可動リボンとが一次元に配設された回折格子型の空間光変調器であるGLVが用いられていたが、このような形態には限られない。例えば、GLVに限らず、ミラーのような変調単位が、一次元に配列されている空間光変調器が利用される形態であってもよい。また、例えば、DMD(Digital Micromirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス:テキサスインスツルメンツ社の登録商標)のような変調単位であるマイクロミラーが二次元的に配列された空間光変調器が利用されてもよい。
【0167】
また、上記の各実施の形態においては、基板保持部10,10aが、基板Wに対して光を照射して基板Wにパターンを形成する描画装置1に搭載された態様を示していたが、基板保持部10,10aは、描画装置1以外の各種の基板処理装置、あるいは、基板搬送装置等に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0168】
1 描画装置
10,10a 基板保持部
11 保持板
111,111a 保持面
12,12a 真空吸引口
13,13a ベルヌーイ吸引口
14,14a 土手部
15 突起部
19,19a 吸着制御部
M1 円形領域
M2 円環状領域
90 制御部
W 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって、
基板の裏面に対向する保持面が形成された保持板と、
前記保持面に形成され、真空吸引により前記基板を前記保持面に吸引する1以上の真空吸引口と、
前記保持面に形成され、ベルヌーイ吸引により前記基板を前記保持面に吸引する複数のベルヌーイ吸引口と、
を備え、
前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、
前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記真空吸引口を複数個備え、
前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、
前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記保持面上の圧力を検知する圧力センサ、
を備え、
前記保持面に基板が載置されると前記真空吸引口からの吸引を開始し、
前記真空吸引口からの吸引を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する、基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する、基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記保持板の裏面側に形成され、深さ方向の底面において前記ベルヌーイ吸引口と連通する凹部と、
前記凹部の内部に配置されたベルヌーイ吸引ユニットと、
を備え、
前記ベルヌーイ吸引ユニットが、
円柱状の凹空間が形成された本体部と、
前記円柱状の凹空間に気体を噴出して前記円柱状の凹空間に旋回流を形成する噴出ノズルと、
を備え、
前記本体部が、前記凹部の深さ方向の底面および前記凹部の壁面との間に隙間を形成しつつ、前記凹部内に固定的に支持される、基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記ベルヌーイ吸引口の径サイズが、前記円柱状の凹空間の径サイズよりも小さく形成される、基板処理装置。
【請求項10】
基板を保持する基板保持装置であって、
基板の裏面に対向する保持面が形成された保持板と、
前記保持面に形成され、真空吸引により前記基板を前記保持面に吸引する1以上の真空吸引口と、
前記保持面に形成され、ベルヌーイ吸引により前記基板を前記保持面に吸引する複数のベルヌーイ吸引口と、
を備え、
前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される、基板保持装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板保持装置であって、
前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板保持装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の基板保持装置であって、
前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、
前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される、基板保持装置。
【請求項13】
請求項10に記載の基板保持装置であって、
前記真空吸引口を複数個備え、
前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、
前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板保持装置。
【請求項14】
請求項13に記載の基板保持装置であって、
前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい、基板保持装置。
【請求項15】
請求項10から14のいずれかに記載の基板保持装置であって、
前記保持面上の圧力を検知する圧力センサ、
を備え、
前記保持面に基板が載置されると前記真空吸引口からの吸引を開始し、
前記真空吸引口からの吸引を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する、基板保持装置。
【請求項16】
請求項15に記載の基板保持装置であって、
前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する、基板保持装置。
【請求項17】
請求項10から16のいずれかに記載の基板保持装置であって、
前記保持板の裏面側に形成され、深さ方向の底面において前記ベルヌーイ吸引口と連通する凹部と、
前記凹部の内部に配置されたベルヌーイ吸引ユニットと、
を備え、
前記ベルヌーイ吸引ユニットが、
円柱状の凹空間が形成された本体部と、
前記円柱状の凹空間に気体を噴出して前記円柱状の凹空間に旋回流を形成する噴出ノズルと、
を備え、
前記本体部が、前記凹部の深さ方向の底面および前記凹部の壁面との間に隙間を形成しつつ、前記凹部内に固定的に支持される、基板保持装置。
【請求項18】
請求項17に記載の基板保持装置であって、
前記ベルヌーイ吸引口の径サイズが、前記円柱状の凹空間の径サイズよりも小さく形成される、基板保持装置。
【請求項19】
基板を保持する基板保持方法であって、
a)基板の裏面を、保持板に形成された保持面に対向させた状態で、前記基板を前記保持面上に載置する工程と、
b)前記保持面に形成された1以上の真空吸引口に、真空吸引により吸引圧を形成する工程と、
c)前記保持面に形成された複数のベルヌーイ吸引口の少なくとも一つに、ベルヌーイ吸引により吸引圧を形成する工程と、
を備え、
前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される、基板保持方法。
【請求項20】
請求項19に記載の基板保持方法であって、
前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板保持方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載の基板保持方法であって、
前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、
前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される、基板保持方法。
【請求項22】
請求項19に記載の基板保持方法であって、
前記真空吸引口を複数個備え、
前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、
前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板保持方法。
【請求項23】
請求項22に記載の基板保持方法であって、
前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい、基板保持方法。
【請求項24】
請求項19から23のいずれかに記載の基板保持方法であって、
前記保持面に基板が載置されると前記b)工程を開始し、前記b)工程を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に、前記c)工程を開始する、基板保持方法。
【請求項25】
請求項24に記載の基板保持方法であって、
前記c)工程を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引を停止する、基板保持方法。
【請求項1】
基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって、
基板の裏面に対向する保持面が形成された保持板と、
前記保持面に形成され、真空吸引により前記基板を前記保持面に吸引する1以上の真空吸引口と、
前記保持面に形成され、ベルヌーイ吸引により前記基板を前記保持面に吸引する複数のベルヌーイ吸引口と、
を備え、
前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、
前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記真空吸引口を複数個備え、
前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、
前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記保持面上の圧力を検知する圧力センサ、
を備え、
前記保持面に基板が載置されると前記真空吸引口からの吸引を開始し、
前記真空吸引口からの吸引を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する、基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する、基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記保持板の裏面側に形成され、深さ方向の底面において前記ベルヌーイ吸引口と連通する凹部と、
前記凹部の内部に配置されたベルヌーイ吸引ユニットと、
を備え、
前記ベルヌーイ吸引ユニットが、
円柱状の凹空間が形成された本体部と、
前記円柱状の凹空間に気体を噴出して前記円柱状の凹空間に旋回流を形成する噴出ノズルと、
を備え、
前記本体部が、前記凹部の深さ方向の底面および前記凹部の壁面との間に隙間を形成しつつ、前記凹部内に固定的に支持される、基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記ベルヌーイ吸引口の径サイズが、前記円柱状の凹空間の径サイズよりも小さく形成される、基板処理装置。
【請求項10】
基板を保持する基板保持装置であって、
基板の裏面に対向する保持面が形成された保持板と、
前記保持面に形成され、真空吸引により前記基板を前記保持面に吸引する1以上の真空吸引口と、
前記保持面に形成され、ベルヌーイ吸引により前記基板を前記保持面に吸引する複数のベルヌーイ吸引口と、
を備え、
前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される、基板保持装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板保持装置であって、
前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板保持装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の基板保持装置であって、
前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、
前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される、基板保持装置。
【請求項13】
請求項10に記載の基板保持装置であって、
前記真空吸引口を複数個備え、
前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、
前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板保持装置。
【請求項14】
請求項13に記載の基板保持装置であって、
前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい、基板保持装置。
【請求項15】
請求項10から14のいずれかに記載の基板保持装置であって、
前記保持面上の圧力を検知する圧力センサ、
を備え、
前記保持面に基板が載置されると前記真空吸引口からの吸引を開始し、
前記真空吸引口からの吸引を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始する、基板保持装置。
【請求項16】
請求項15に記載の基板保持装置であって、
前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引口からの吸引を停止する、基板保持装置。
【請求項17】
請求項10から16のいずれかに記載の基板保持装置であって、
前記保持板の裏面側に形成され、深さ方向の底面において前記ベルヌーイ吸引口と連通する凹部と、
前記凹部の内部に配置されたベルヌーイ吸引ユニットと、
を備え、
前記ベルヌーイ吸引ユニットが、
円柱状の凹空間が形成された本体部と、
前記円柱状の凹空間に気体を噴出して前記円柱状の凹空間に旋回流を形成する噴出ノズルと、
を備え、
前記本体部が、前記凹部の深さ方向の底面および前記凹部の壁面との間に隙間を形成しつつ、前記凹部内に固定的に支持される、基板保持装置。
【請求項18】
請求項17に記載の基板保持装置であって、
前記ベルヌーイ吸引口の径サイズが、前記円柱状の凹空間の径サイズよりも小さく形成される、基板保持装置。
【請求項19】
基板を保持する基板保持方法であって、
a)基板の裏面を、保持板に形成された保持面に対向させた状態で、前記基板を前記保持面上に載置する工程と、
b)前記保持面に形成された1以上の真空吸引口に、真空吸引により吸引圧を形成する工程と、
c)前記保持面に形成された複数のベルヌーイ吸引口の少なくとも一つに、ベルヌーイ吸引により吸引圧を形成する工程と、
を備え、
前記保持面に、前記保持面の中心と同心に配置された円形領域と、前記円形領域と同心に配置された円環状領域とが規定されており、前記円形領域と前記円環状領域とのそれぞれに前記ベルヌーイ吸引口が配置される、基板保持方法。
【請求項20】
請求項19に記載の基板保持方法であって、
前記保持面の外縁に沿って立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板保持方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載の基板保持方法であって、
前記円環状領域に前記ベルヌーイ吸引口が複数配置され、
前記円環状領域に配置された複数のベルヌーイ吸引口が、前記円環状領域の周方向に沿って配列される、基板保持方法。
【請求項22】
請求項19に記載の基板保持方法であって、
前記真空吸引口を複数個備え、
前記円環状領域がその周方向に沿って分割されることにより規定される複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれに、前記真空吸引口と前記ベルヌーイ吸引口とがそれぞれ配置され、
前記複数の弧状領域および前記円形領域のそれぞれを包囲するように立設された土手部と、
前記土手部により包囲された前記保持面内の各領域に立設された複数の突起部と、
を備え、
前記土手部の頂部と前記複数の突起部の頂部とが面一に形成される、基板保持方法。
【請求項23】
請求項22に記載の基板保持方法であって、
前記複数の弧状領域のそれぞれの面積が互いに等しい、基板保持方法。
【請求項24】
請求項19から23のいずれかに記載の基板保持方法であって、
前記保持面に基板が載置されると前記b)工程を開始し、前記b)工程を開始してから定められた時間が経過しても前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側とならない場合に、前記c)工程を開始する、基板保持方法。
【請求項25】
請求項24に記載の基板保持方法であって、
前記c)工程を開始した後に前記保持面上の吸引圧が所定値より低圧側となると、前記ベルヌーイ吸引を停止する、基板保持方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−30677(P2013−30677A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167005(P2011−167005)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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